JPH0781315B2 - プレキヤスト鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁とによる複合構造の構築工法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はプレキヤスト鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁とか
ら構成された複合構造の構築工法に係るものである。

（従来の技術） 柱は鉄筋コンクリート造で、梁は鉄骨梁とする複合構造
は、梁がＳ造であるため、大スパン架構の構造物の場合
には鉄骨鉄筋コンクリート造の梁や、鉄筋コンクリート
造の梁に比して経済的に設計でき、また柱については軸
力をコンクリート断面で負担できるため、鉄骨造の柱よ
り経済的に設計できる等の利点がある。

またこのような複合構造においては、柱をプレキヤスト
化することによって、現場での施工を鉄骨工事と同様に
行なうことができるので、柱を場所打ちコンクリートで
施工するよりも、現場作業が著しく簡略化される。

（発明が解決しようとする課題） しかしながら、鉄骨造梁の応力を鉄筋コンクリート造柱
に伝達するためには、柱も鉄骨鉄筋コンクリート造にす
る等の工夫が必要で、このため第５図に示すように鉄骨
造の梁（ａ）と一体化されたプレキヤスト柱（ｂ）を採
用すると、柱の形状が複雑で、部材の製造、運搬に多く
の手間を必要とする。

図中（ｃ）は柱主筋を示す。

またプレキヤスト柱と鉄骨梁とが一体となっている場
合、鉄骨がコンクリートで固結されているため、柱・梁
の建方を行なう場合、通常の鉄骨フレームの建方に比し
て接合部の微調整が困難で、梁を高力ボルトで接合する
場合に難点があり、更にまたプレキヤスト柱の接合部も
梁の接合が完了するまでは固定できないため、仮設工事
が煩雑であった。

本発明は前記従来技術の有する問題点に鑑みて提案され
たもので、その目的とする処は、柱が鉄筋コンクリート
造、梁が鉄骨造で構成された複合構造において、柱をプ
レキヤスト化し、更に柱・梁の接合方法を簡略化し、現
場での省力化、工期の短縮を図るとともに、柱・梁交差
部での応力の伝達が確実に行なわれる複合構造の構築工
法を提供する点にある。

（課題を解決するための手段） 前記の目的を達成するため、本発明に係るプレキヤスト
鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁とによる複合構造の構築工
法は、平面において十字またはＴ字型に組立てられた鉄
骨梁のうち、柱を貫通する中央交差部を除いた梁鉄骨に
コンクリートを予め打設して、上端部がスラブ厚分だけ
欠截された断面を有し、且つ頂面に肋筋の一部が突設さ
れた中央部が鉄骨構造で、梁端が鉄骨鉄筋コンクリート
構造に構成されたプレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁
部を構成するとともに、相対する同梁部間に亘って柱部
分を貫通する梁鉄筋を接続してなる柱・梁交差部材にお
ける前記各プレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁部を、
プレキヤスト鉄筋コンクリート柱の柱頭部に載架し、前
記柱・梁交差部材の鉄骨梁にスパン中間部分の鉄骨を接
合したのち、前記柱・梁交差部材及び鉄骨梁に亘ってプ
レキヤストコンクリート床板を載架し、同床板上及び柱
・梁交差部分のコンクリートを打設するように構成され
ている。

前記柱・梁交差部材におけるプレキヤスト鉄骨鉄筋コン
クリート梁部の中央交差部を挟んで相隣る鉄骨梁の各ウ
エブ間に亘って柱のフープ筋が接続されている。

（作用） 本発明によれば柱をプレキヤスト鉄筋コンクリート造と
し、同柱を所定位置に立設した後、柱頭に前記柱・梁交
差部材における十字またはＴ字型に組立てられた鉄骨梁
のうち、中央交差部を除いた部分に予めコンクリートを
打設して構成されたプレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート
梁部を載架し、前記柱・梁交差部材の鉄骨梁端部にスパ
ン中間部分の鉄骨梁を接合したのち、同鉄骨梁と前記柱
・梁交差部材に亘って床板を載架し、同床板上と、柱・
梁交差部分のコンクリートを打設するものであるが、こ
の際、前記柱を挟んで相対するプレキヤスト鉄骨鉄筋コ
ンクリート梁部間に亘って梁鉄筋が柱部分を貫通するよ
うに接続されているので、柱・梁交差部に打設されたコ
ンクリートと前記プレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁
部とが一体に接合される。また同プレキヤスト鉄骨鉄筋
コンクリート梁部はその頂面がスラブ厚分欠截され、且
つ同面に肋筋の一部が突設されているので、前記床板上
に打設されたスラブコンクリートと一体化される。

請求項２の発明は、前記柱・梁交差部材における中央交
差部を挟んで相隣るプレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート
梁部の鉄骨梁の各ウエブ間に亘って柱のフープ筋が接続
されているので、柱・梁交差部に打設されたコンクリー
トを介して、前記プレキヤスト鉄筋コンクリート柱と柱
・梁交差部材とが一体に接合される。

（実施例） 以下本発明を図示の実施例について説明する。

（Ａ）はプレキヤスト鉄筋コンクリート柱、（１）は同
柱（Ａ）の柱主筋で柱頭部より十分に長く突出してお
り、下端部には柱主筋接合用スリーブ（２）が内蔵され
ている。

（Ｂ）は柱・梁交差部材で、平面において十字またはＴ
字型に組立てられた鉄骨梁（３）のうち、前記柱（Ａ）
を貫通する中央交差部を除いた梁鉄骨に予めコンクリー
トを打設して、上端部がスラブ厚分だけ欠截されたプレ
キヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁部（４）を構成し、相
対する同梁部（４）（４）間に、柱部分を貫通する梁鉄
筋（５）を接続し、前記梁部（４）の頂面に肋筋（６）
の一部を突出せしめるとともに、中央交差部を挟んで相
隣る鉄骨梁（３）のウエブ部間に、柱のフープ筋（７）
を溶着して構成されている。

従って前記柱・梁交差部材（３）は中央部が鉄骨構造
で、梁端が鉄骨鉄筋コンクリート構造に構成されてい
る。

而して所定の位置において、前記柱（Ａ）の下部に内蔵
されている柱主筋接合用スリーブ（２）に床（Ｃ）上に
おける柱位置から突出している主筋（１′）を挿入し、
前記スリーブ（２）内に無収縮モルタル（８）をグラウ
トし、前記柱（Ａ）を固定する（第１図参照） 図中（９）は敷モルタルである。

次いで前記柱（Ａ）の柱頭に、梁鉄骨（３）の下部フラ
ンジと前記柱（Ａ）の柱頭部との間に間隙が存するよう
に、前記柱・梁交差部材（Ｂ）を設置し、しかるのち相
対する柱・梁交差部材（Ｂ）の鉄骨梁（３）間にスパン
中間部分の鉄骨梁（図示せず）を溶接またはボルトを介
して取付ける。

次いで第２図の矢印に示すように半製品プレキヤストコ
ンクリート床板（Ｄ）を、前記柱・梁交差部材（Ｂ）及
び中間鉄骨梁上に載架し、同部材（Ｂ）におけるプレキ
ヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁（４）の梁上端筋（10）
を配筋したのち、前記床板（Ｄ）上のスラブコンクリー
ト（11）及び柱・梁交差部分の柱・梁接合コンクリート
（12）を打設し、以下前記の工程を繰返して上階の建方
を行なう。

前記実施例によれば鉄骨梁（３）の応力は、前記プレキ
ヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁（４）部を介してプレキ
ヤスト鉄筋コンクリート柱（Ａ）へ伝達されるので、柱
・梁交差部の力学的性状が著しく改善され、鉄筋コンク
リート造柱と鉄骨梁とよりなる複合構造の設計が十分に
可能となる。

この点について更に詳述すると、柱・梁で構成された軸
組構造においては地震時の水平力₁Q₁,₂Q₂に抵抗するた
めに柱と梁は剛に接合されることが絶対条件で、柱・梁
交差部が剛接合の場合、図６に示すように軸組に生じる
地震荷重による曲げ応力は、柱、梁とも端部が大きく、
中央部が小さくなる。

このため柱・梁交差部材Ａにおける曲げ応力の大きい梁
端部を鉄骨鉄筋コンクリート構造とし、曲げ応力の小さ
い梁中央部を鉄骨構造としたものである。

柱を鉄筋コンクリート造、梁を鉄骨構造とした異種構造
では、何等の処置をも施されない場合、柱の応力が梁に
伝達されない。しかし鉄筋コンクリート造の柱の応力を
鉄骨鉄筋コンクリート造の梁に伝達することは、前記
柱、梁の構造材料から判断しても容易であり、また鉄骨
鉄筋コンクリート部材の応力を徐々に鉄骨構造部材に伝
達することも容易であり、このことは解析的にも実験的
にも明らかとなっている。

また前記のように柱・梁交差部及び梁部材の３つに分割
され柱・梁交差部材を構成するプレキヤスト部材は第３
図及び第４図に示すように、単純な形状であるため、部
材の製造、運搬組立が容易であり、部材コストが節減さ
れる。

（発明の効果） 本発明によれば前記したように、平面において十字また
はＴ字型に組立てられた梁鉄骨のうち、柱を貫通する中
央交差部を除いた各梁鉄骨にコンクリートを予め打設し
て、上端部がスラブ厚分だけ欠截された断面を有し、且
つ頂面に肋筋の一部が突設された中央部が鉄骨構造で、
梁端が鉄骨鉄筋コンクリート構造に構成されたプレキヤ
スト鉄骨鉄筋コンクリート梁部を構成し、相対する同梁
部間に亘って柱部分を貫通する梁鉄筋を接続して柱・梁
交差部材を構成し、同部材における前記各プレキヤスト
鉄骨鉄筋コンクリート梁部を、プレキヤスト鉄筋コンク
リート柱の柱頭部に載架し、同柱頭部に前記各プレキヤ
スト鉄骨鉄筋コンクリート梁部で囲繞された柱・梁交差
部分の空間を形成し、相隣る前記柱・梁交差部材の鉄骨
梁間にスパン中間鉄骨梁を接合したのち、同鉄骨梁及び
前記柱・梁交差部材にプレキヤストコンクリート床板を
架渡し、同床板上及び前記柱・梁交差部分の空間にコン
クリートを打設したので、床板上のコンクリートは柱・
梁交差部材に前記プレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁
部の頂部に突設された肋筋を介して一体化され、また前
記柱・梁交差部分の打設コンクリートは、同部を挟んで
相対するプレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁部間に接
続された梁鉄筋を介して同梁部と柱とを一体的に接合
し、柱・梁間の応力の伝達が確実に行なわれる。

本発明の工法によれば梁部分は鉄骨造で、鉄筋継手やコ
ンクリート打設の作業がないので、揚重機用の通路等、
平面的に後施工部分が残っても梁の取付は簡単で、同一
接合方法で建方ができるため、現場労務の省力化が図ら
れ、工期が著しく短縮される。

また鉄骨梁の応力は、前記プレキヤスト鉄骨鉄筋コンク
リート梁の断面を介してプレキヤスト鉄筋コンクリート
柱に伝達されるため、柱・梁交差部の力学的性状は著し
く改善され、柱を鉄筋コンクリート造、梁を鉄骨造とす
る複合構造の設計が十分に可能となる。

また各プレキヤスト部材は形状が単純で、部材の製造、
運搬が容易で、コストが節減される。

請求項２の発明は、前記柱・梁交差部材における中央交
差部を挟んで相隣る鉄骨梁の各ウエブ間に亘って柱のフ
ープ筋が接続されたことによって、柱・梁交差部材と前
記柱とが柱・梁交差部の後打ちコンクリートでより確実
に一体化されるようにしたものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るプレキヤスト鉄筋コンクリート柱
と鉄骨梁とによる複合構造の構築工法の一実施例の実施
状況を示す縦断面図、第２図はその平面図、第３図はプ
レキヤスト鉄筋コンクリート柱の斜視図、第４図は柱・
梁交差部材の斜視図、第５図は従来の複合柱の斜視図、
第６図は柱・梁軸組構造における地震時の曲げモーメン
ト図である。 （Ａ）……プレキヤスト鉄筋コンクリート柱、 （Ｂ）……柱・梁交差部材、（Ｃ）……床、 （３）……鉄骨梁、 （４）……プレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁、 （５）……梁鉄筋、（６）……肋筋、 （７）……フープ筋、（10）……梁上端筋、 （11）……スラブコンクリート、 （12）……柱・梁接合コンクリート。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】平面において十字またはＴ字型に組立てら
   れた鉄骨梁のうち、柱を貫通する中央交差部を除いた梁
   鉄骨にコンクリートを予め打設して、上端部がスラブ厚
   分だけ欠截された断面を有し、且つ頂面に肋筋の一部が
   突設された、中央部が鉄骨構造で梁端が鉄骨鉄筋コンク
   リート構造に構成されたプレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリ
   ート梁部を構成するとともに、相対する同梁部間に亘っ
   て柱部分を貫通する梁鉄筋を接続してなる柱・梁交差部
   材における前記各プレキヤスト鉄骨鉄筋コンクリート梁
   部を、プレキヤスト鉄筋コンクリート柱の柱頭部に載架
   し、前記柱・梁交差部材の鉄骨梁にスパン中間部分の鉄
   骨を接合したのち、前記柱・梁交差部材及び鉄骨梁に亘
   ってプレキヤストコンクリート床板を載架し、同床板上
   及び柱・梁交差部分のコンクリートを打設することを特
   徴とするプレキヤスト鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁とに
   よる複合構造の構築工法。
2. 【請求項２】前記柱・梁交差部材における中央交差部を
   挟んで相隣る鉄骨梁の各ウエブ部間に亘って、柱のフー
   プ筋が接続された請求項１記載のプレキヤスト鉄筋コン
   クリート柱と鉄骨梁とによる複合構造の構築工法。