JPH0749362B2 - 防菌剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、紙パルプ工業に関係ある工業用水や、各種工
業用の冷却水等に対し好適に使用される工業用殺菌剤に
関する。

（従来技術及びその問題点） 従来、紙パルプ工業分野における抄紙工程からの廃水、
各種産業分野における循環冷却水等種々の用水系や、工
業用水を使用して作る水性塗料、紙用塗工液、ラテック
ス、捺染糊、皮革などにあっては、それらに有害な微生
物が増繁殖しやすく、これが生産性や品質の低下の原因
となっている。

特に、紙パルプ工業分野における用水系では、最近、糸
状菌及び酵母類の増繁殖によりスライムが発生し、パル
プスラリーが流れる水路、とりわけスラリーが接する壁
面の粗い場所やチェスト、フローボックス、輸送パイ
プ、その他パルプスラリーの流速が小さくなって淀むよ
うな場所において、スライムが付着形成される。このス
ライムは、しばしば脱離し、紙切れや紙パイプ製品汚染
の原因となっているほか、微生物の繁殖による種々の障
害を発生させている。

このような障害発生は、高速マシンを使用する際には特
に大きな問題となり、著しい生産性低下及び経済損失を
招来している。

更に、金属加工油剤の冷却用循環用水系においても、微
生物が増繁殖し加工油剤の冷却性能や乳化性を阻害した
り、また、悪臭が発生し作業環境の悪化を起させ公衆衛
生上好ましくない現象をひきおこしている。

有害微生物の繁殖によるその他の障害は、水性塗料、紙
用塗工液、高分子ラテックス、製紙用パルプ、糊、皮
革、金属加工油剤などの工業用製品にもみられる。

ところで、前記用水系又は前記工業用製品における有害
微生物の発生を抑制、ないし防除する防菌剤としては、
これまで例えば有機金属化合物類、有機塩素化合物類、
有機硫黄化合物類、第４級アンモニウム塩化合物類など
が使用されてきたが、これらの化合物類は人体に対し毒
性を有し、また、悪臭や異臭を発し、更には、発泡など
の好ましくない現象を生ずる。加えて、これらの防菌剤
含有水系は、これを一般河川や海等に投流した場合には
魚介類に対し悪影響を与え、環境保全上問題を生ずる。

このような問題を解決するために、前記のように防菌剤
が用いられており、従来、種々の低毒性のものが提案さ
れている。例えば、特公昭52−14294号公報には、4,5−
ジクロル−1,2−ジチオール−３−オンが示されてい
る。しかし、この防菌剤の場合、その効果がある特定種
の微生物に限定される等防菌効果が未だ不十分である
上、防菌効果の持続性に欠けるという問題があった。

特開昭60−1105号公報によれば、4,5−ジクロル−1,2−
ジチール−３−オンに対し、３−イソチアゾロン錯化合
物を組合せた防菌剤が示されている。この防菌剤は、糸
状菌、細菌、酵母類等広範囲の菌に対して効果を示す
が、しかし、その防菌効果が弱いという問題があった。

（発明の課題） 本発明は、従来の防菌剤に見られる前記問題を解決し、
低毒性にすぐれるとともに、広範囲の微生物に対してす
ぐれた防菌効果を示す工業用防菌剤を提供することをそ
の課題とする。

（課題を解決するための手段） 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた
結果、意外なことには、4,5−ジクロル−1,2−ジチオー
ル−３−オンに対して、５−クロル−２−メチル−３−
イソチアゾロン化合物を金属錯塩ではなく、遊離化合物
の形で組合せる時にその課題を解決し得ることを見出
し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明によれば、 式（Ｉ） で表わされる５−クロル−２−メチル−３−イソチアゾ
ロン化合物と、 式（II） で表わされる4,5−ジクロル−1,2−ジチオール−３−オ
ンとからなる工業用防菌剤が提供される。

本発明の工業用防菌剤は、前記したように相互に異った
２種類の組合せからなるものであるが、各成分単独から
はとうてい予期することのできない極めてすぐれた防菌
効果を発揮し、また有害微生物である糸状菌、細菌、酵
母類に対してその種類に関係なく広い適用範囲を有す
る。

本発明においては、５−クロル−２−メチル−３−イソ
チアゾロン化合物は、錯塩で用いるのではなく、前記式
（Ｉ）で表わされる遊離の化合物の形で用いる。錯塩の
形よりも遊離の形で用いる方がすぐれた防菌効果を示す
ことは、全く予想外のことである。

式（Ｉ）で表わされる５−クロル−２−メチル−３−イ
ソチアゾロン化合物と式（II）で表わされる化合物との
配合割合（重量）は、1:10〜10:1であって、好ましくは
1:5〜5:1である。いずれか一方が少なすぎても満足でき
る効果を得ることができない。

本発明の工業用防菌剤は、基本的には上記した２成分を
均一に混合することにより調製されるが、一般的には水
溶液、溶剤溶液、乳化分散液等として使用に供される。

ここで使用することのできる溶剤としては、アルコール
系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶
剤等が例示される。また、本発明の工業用防菌剤は任意
の担体に担持して使用してもよく、使用態様に特に制限
はなく種々の方法を採用することができる。

この工業用防菌剤の使用に際しての添加量は、微生物濃
度によっても異なるが、一般的に紙パイプ工業等の分野
における用水系の場合は0.01〜100ppm、水性塗料、糊、
皮革等の分野の場合は１〜500ppmであり、この程度で良
好な防菌効果が得られる。

本発明の工業用防菌剤には、本発明の目的を阻害しない
範囲で、安定剤、界面活性剤等を添加することは何ら差
支えない。

（実施例） 次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。な
お、以下において示す部はいずれも重量基準である。

実施例 下記成分組成からなる各種防菌剤を調製した。

本発明品（Ｉ） ５−クロル−２−メチル−３−イソチアゾロン ５部 4,5−ジクロル−1,2−ジチオール−３−オン ５部 エチレングリコール 88部 ソルポール・900A ２部 比較品（Ｉ） ５−クロル−２−メチル−３−イソチアゾロン 10部 エチレングリコール 88部 ソルポール・900A ２部 比較品（II） 4,5−ジクロル−1,2−ジチオール−３−オン 10部 エチレングリコール 88部 ソルポール・900A ２部 比較品（III） ２−メチル−３−イソチアゾロンの硝酸マグネシウム錯
塩と５−クロル−２−メチル−３−イソチアゾロンの硝
酸マグネシウム錯塩との1:4（重量比）混合物 ５部 4,5−ジクロル−1,2−ジチオール−３−オン ５部 エチレングリコール 88部 ソルポート・900A ２部 比較品（IV） ２−オクチル−３−イソチアゾロン ５部 4,5−ジクロル−1,2−ジチオール−３−オン ５部 エチレングリコール 88部 ソルポート・900A ２部 試験例 次に上記で示した本発明品及び比較品の工業用防菌剤に
ついて、下記のような試験方法により微生物生育阻止濃
度、スライム発生防止効果及び防腐効果を調べた。

試験例１ 〔微生物生育阻止濃度試験〕 使用倍地としては、ペプトン0.1％、ブドー糖0.05％、
燐酸第１カリウム0.01％及び硫酸マグネシウム0.005％
の混合水溶液を用いた。試験方法は、調製培養液中に下
記供試験を懸濁させ、この一定量をきれいな試験管に取
り、その中に５、10、20、40、80ppmのおのおの規定濃
度の防菌剤を添加し、32℃にて振盪培養を行った。24時
間後の菌の繁殖によって生じた濁度により微生物の生育
度を判定した。全く菌の生育が認められないものを観察
して、その微生物の完全生育阻止濃度（ppm）とした。
その結果を第１表に示す。

なお、供試菌の菌名略号は次の通りである。

P.a:Pseudomonas aeruginosa A.a:Aerobacter aerogenes B.S:Bacillus subtilis A.v:Alcaligenes viscosus A.n:Aspergillus niger G.sp:Geotrichum sp 試験例２ 〔抄紙工程後の排水における菌増殖防止及びスライム発
生防止試験〕 某製紙工場の抄紙工程において上記本発明品及び比較品
の防菌剤を白水ビットに１日のうち２時間、３回にわた
り、水中濃度が20ppmになるように７日間添加して、白
水中の微生物の菌数を測定した。

試験方法は白水試料を滅菌水で希釈し、この一定量をシ
ャーレに採り、溶解したワックスマン寒天培地を注入
し、混和し、平板状に固化させた。恒温器内（32℃）で
２日間培養後発生する微生物コロニーをコロニー計数器
にて測定した。また、抄造時の紙切れの回数も測定し、
殺菌効果を確認した。その結果を第２表に示す。

上記第２表の結果から、本発明の工業用防菌剤は優れた
菌増殖阻止作用を有することがわかる。

試験例３ 〔製紙用塗工液における菌増殖防止試験〕 pH9.0の澱粉系塗工液にブイヨン液体培地及び予め腐敗
させた塗工液を加えて攪拌し、300ppm濃度になるように
上記の各防菌剤を添加した。

これを32℃の恒温器に５日間保存した後、各塗工液中の
生菌数を測定した。その結果を第３表に示す。

（発明の効果） 以上のように、本発明の工業用防菌剤は広範囲の有害微
生物に対してすぐれた効果を示すことがわかる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】式（Ｉ） で表わされる５−クロル−２−メチル−３−イソチアゾ
   ロン化合物と、 式（II） で表わされる4,5−ジクロル−1,2−ジチオール−３−オ
   ンとからなる工業用防菌剤。