JPH0734205Y2 - エンジンのオイルパン構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はシリンダブロックの下端に締結されるオイルパ
ンの後端がミッションケースに締結されるされるように
なっているエンジンのオイルパン構造に関するものであ
る。

〔従来の技術〕

従来、例えば特開昭62-247158号公報に示されるよう
に、シリンダブロックの後端にミッションケースが連結
されて構成されるパワープラントに対し、アルミダイカ
スト等で形成されたオイルパンを上記シリンダブロック
とミッションケースの双方に連結するようにしたオイル
パン構造は知られている。すなわちこの構造は、シリン
ダブロックの下端にオイルパンを締結するとともに、こ
のオイルパンの後端にミッションケースの前端下部の周
縁部に沿った合わせ面を形成し、この部分とミッション
ケースをボルト締結したものである。この構造による
と、上記パワープラントがオイルパンにより補強され、
パワープラントの振動が抑制される。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、従来のこの種の構造におけるオイルパンとミ
ッションケースとの締結箇所は、通常、第４図に示すよ
うに、ボルト９′がオイルパン１側からミッションケー
ス３へ締着され、つまり、オイルパン１の後端部にバカ
穴状のボルト挿通孔が設けられ、これに挿通されたボル
ト９′が、ミッションケースに設けられたネジ孔に締着
されるようになっている。一方、シリンダブロックとミ
ッションケースとの締結箇所では、両者の形状の関係
で、ボルト４がミッションケース３側から、その前端部
に設けられたボルト挿通孔を通して、シリンダブロック
２に設けられたネジ孔に締着されるようになっている。
従ってオイルパンとミッションケースとの締結箇所は、
シリンダブロックとミッションケースとの締結箇所とボ
ルト締結方向が逆になっている。

しかしこのように上記両締結箇所でボルト締結方向が逆
になっていると、各締結箇所ではそれぞれ締結に応じて
ボルト挿通孔（バカ穴）が設けられている部分が大きく
圧縮されることから、シリンダブロックおよびオイルパ
ンとミッションケースとの接合面は、ボルト締結に伴
い、極端に示すと第４図中の一点鎖線のように変形す
る。つまりシリンダブロックに締結されるミッションケ
ース上部側とオイルパンに締結されるミッションケース
下部側とで接合面が互いに逆方向に変位した形（Ｓ字
形）に変形し、その中間部にパワープラントの曲げ変形
に対して節となる部分が生じ、このため、パワープラン
トの曲げ方向の振動を抑制する作用が低下する。また、
シリンダブロックおよびこれに連結したオイルパンに対
してミッションケースを締結する際に、上部側と下部側
とではボルト締結操作を逆方向から行なわなければなら
ないので、組付け時の作業性が悪いという欠点もある。

さらに、従来の構造では、ミッションケースに対するオ
イルパンの締結部分自体の剛性向上の面でも、改善の余
地があった。

本考案はこのような事情に鑑み、ミッションケースに対
するオイルパンの締結部分の剛性を高めるとともに、シ
リンダブロックおよびオイルパンとミッションケースと
の接合面の締結に伴う変形を抑制して、パワープラント
の振動を抑制する作用を高めることができ、また組付け
時の作業性等の面でも有利なエンジンのオイルパン構造
を提供するものである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は上記のような目的を達成するため、シリンダブ
ロックの下端に締結されるオイルパンの後端にミッショ
ンケースの周縁部に沿う合わせ面を形成し、オイルパン
の後端とミッションケースを締結するようにしたエンジ
ンのオイルパン構造において、オイルパン後端の、ミッ
ションケース周縁下端部に対応する部分に、略水平方向
のリブを設け、このリブの両端に、螺合部材締着用のボ
ス部を設けるとともに、この各ボス部よりそれぞれシリ
ンダブロックとの合わせ面まで上方へ延びる縦方向のリ
ブを設け、かつオイルパンとミッションケースとを締結
する螺合部材がミッションケース側からオイルパンへ締
着されるように上記オイルパン後端のボス部にネジ孔を
形成したものである。

〔作用〕

上記構成によると、一般にシリンダブロックとミッショ
ンケースとの締結箇所は螺合部材がミッションケース側
からシリンダブロックへ締着されるようになっているの
に対し、上記オイルパンとミッションケースとの締結箇
所でも螺合部材がミッションケース側から締着されるよ
うにしていることにより、これらの締結方向が統一され
る。また、このようにミッションケース側からオイルパ
ンへ螺合部材を締着するためのネジ孔を形成したオイル
パン後端の上記ボス部が、上記略水平方向のリブおよび
上記縦方向のリブにより補強され、締結剛性が高められ
る。

〔実施例〕

本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図において、１はアルミダイカスト等で形成された
オイルパン、２はエンジンのシリンダブロック、３はミ
ッションケースである。上記シリンダブロック２とミッ
ションケース３とは、ミッションケース３前端の上部周
縁部3aとシリンダブロック２後端との接合部分の複数箇
所においてボルト４で締結され、このミッションケース
３とシリンダブロック２とを締結する各ボルト４は、ミ
ッションケース３側から、その上部周縁部3aに設けられ
たボルト挿通孔を通してシリンダブロック３に設けられ
たネジ孔に締着されている。

上記オイルパン１は、図に示す例では縦置きエンジンに
適用する場合のステアリングシャフトとの干渉防止等の
ため、前方側が浅底、後方側が深底に形成されている。
上記オイルパン１の上端部周辺にはシリンダブロック２
に対する締結用のフランジ部５が設けられ、その複数箇
所がボルト６でシリンダブロック２に締結されている。
また、オイルパン１の後端部には略半円形のフランジ部
７が設けられ、その後端面によってミッションケース３
前端の下部周縁部3bに沿う合わせ面８が形成されてい
る。そしてこの後端部の複数箇所においてオイルパン１
とミッションケース３とがボルト（螺合部材）９により
締結されている。このオイルパン１とミッションケース
３との各締結箇所においても、ボルト９がミッションケ
ース３側からオイルパン１に締着されることにより、そ
の締結方向がシリンダブロック２とミッションケース３
との締結方向と同方向となっている。

オイルパン１とミッションケース３との締結部分の構造
を第２図および第３図によって具体的に説明すると、オ
イルパン１後端の、ミッションケース３周縁下端部に対
応する部分には、オイルパン１の内部に突出して略水平
方向に延びるリブ11が設けられている。このリブ11の両
端に、ネジ孔12を有するボス部13が設けられており、上
記ネジ孔12はミッションケース３との合わせ面８に開口
している。そして、オイルパン１とミッションケース３
とを締結するボルト９が、上記ネジ孔12に対応するミッ
ションケース下部周縁部3bの所定箇所に設けられたボル
ト挿通孔14を通して、上記ネジ孔12に締着されている。
また、上記各ボス部13よりそれぞれ、オイルパン１上端
のシリンダブロック２との合わせ面まで上方へ延びる縦
方向のリブ15が設けられている。

当実施例において上記縦方向のリブ15は、シリンダブロ
ック２への締結用のボルト16を挿通させるボス部を兼ね
ており、リブ15の下端にはボルト座面15aが形成されて
いる。そしてこの部分でオイルパン１をシリンダブロッ
ク２に締結するボルト16は、上記リブ15よりも長く形成
され、下方から上記リブ15に挿通された状態でシリンダ
ブロック２に締着されている。

なお、オイルパン１の後端には、上記の略水平方向のリ
ブ11の両端に設けられたボス部13のほかにも、フランジ
部７の適宜数箇所にネジ孔17が設けられ、これらの箇所
でもミッションケース３側からボルト９が締着されるよ
うになっている。

このようなオイルパン構造によると、オイルパン１とミ
ッションケース３とが、オイルパン１に設けられたネジ
孔12,17にミッションケース３側から締着されたボルト
９によって締結され、その締結方向がシリンダブロック
１とミッションケース３との締結方向と同方向となって
いることにより、締結時の接合面の変形が抑制される。
つまり、シリンダブロック１とミッションケース３の前
端上部との締結箇所およびオイルパン１とミッションケ
ース３の前端下部との締結箇所においてそれぞれ、ボル
ト締結に伴ってボルト挿通孔が設けられている側が圧縮
されても、これらの締結方向が同方向であるため、ミッ
ションケース３の上部と下部とで接合面が逆方向に変位
するようなことがなく、従来構造による場合に生じる第
４図に一点鎖線で示したような変形が抑制される。

また、ミッションケース３の周縁下端部に沿うオイルパ
ン１の後端下部には、パワープラントの曲げ方向の力が
大きく作用するが、この部分では略水平方向のリブ11の
両端にボス部13が設けられ、さらにこの各ボス部13から
上方に延びる縦方向のリブ15が設けられていることによ
り、これらのリブ13,15で補強されてこの部分の締結剛
性が高められる。

とくに当実施例のように、上記縦方向のリブ15を利用し
てシリンダブロック２への締結用のボルト16をこのリブ
15に挿通した状態でシリンダブロック２に締着しておけ
ば、ボルト16によるシリンダブロック２との締結力がオ
イルパン１の下部にまでおよび、上記ボス部13が設けら
れている部分の剛性がより一層高められることとなる。

〔考案の効果〕

以上のように本考案は、オイルパンの後端とミッション
ケースを締結する構造において、オイルパン後端のミッ
ションケース周縁下端部に対応する部分に設けた略水平
方向のリブの両端に螺合部材締着用のボス部を設け、こ
の各ボス部から上方へ延びる縦方向のリブを設け、かつ
オイルパンとミッションケースとを締結する螺合部材が
ミッションケース側からオイルパンへ締着されるように
上記ボス部にネジ孔を形成しているため、オイルパンと
ミッションケースとの締結方向がシリンダブロックとミ
ッションケースとの締結方向と同方向となって、シリン
ダブロックおよびオイルパンとミッションケースとの接
合面の締結に伴う変形を抑制できるとともに、締結部分
自体の剛性を高めることができる。従って、パワープラ
ントの振動抑制効果を高めることができる。また上記の
ようにシリンダヘッドおよびオイルパンに対するミッシ
ョンケースの締結方向が同一方向に統一されることによ
り、組付け時の作業性が向上される等の効果も得られる
ものである。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図は本考案の一実施例を示すもので、第
１図はオイルパンとシリンダブロックおよびミッション
ケースを締結した状態の側面図、第２図はオイルパンの
背面図、第３図は第２図のIII-III線に沿った断面図で
あり、また第４図は従来構造を示す側面図である。 １……オイルパン、２……シリンダブロック、３……ミ
ッションケース、８……合わせ面、９……ボルト、11…
…略水平方向のリブ、12……ネジ孔、13……ボス部、15
……縦方向のリブ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダブロックの下端に締結されるオイ
   ルパンの後端にミッションケースの周縁部に沿う合わせ
   面を形成し、オイルパンの後端とミッションケースを締
   結するようにしたエンジンのオイルパン構造において、
   オイルパン後端の、ミッションケース周縁下端部に対応
   する部分に、略水平方向のリブを設け、このリブの両端
   に、螺合部材締着用のボス部を設けるとともに、この各
   ボス部よりそれぞれシリンダブロックとの合わせ面まで
   上方へ延びる縦方向のリブを設け、かつオイルパンとミ
   ッションケースとを締結する螺合部材がミッションケー
   ス側からオイルパンへ締着されるように上記オイルパン
   後端のボス部にネジ孔を形成したことを特徴とするエン
   ジンのオイルパン構造。