JPH07278832A - 低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法 - Google Patents
低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
る被膜を表面に有することで、鉄損が改善された一方向
性珪素鋼板、およびその製造方法を提供する。 【構成】 鋼板最表面にほう酸アルミニウム、ほう珪酸
ガラスを主成分とする被膜、またほう酸アルミニウム、
ほう酸鉄、ほう珪酸ガラスを主成分とする被膜を有する
ことを特徴とする。特に大きな張力付与のためには、結
晶質ほう酸アルミニウムを含有するのが効果的である。
また、ほう酸、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸化珪
素前駆体化合物を含む懸濁液を塗布、所定の温度で焼き
付け、酸化物被膜を形成せしめることを特徴とする製造
方法を提示した。
Description
に大きな張力を付与する被膜を表面に有することによ
り、鉄損が低減された一方向性珪素鋼板、およびその製
造方法に関する。
01〕を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄芯材料と
して多用されており、特にエネルギーロスを少なくする
ために鉄損の小さい材料が求められている。一方向性珪
素鋼板の鉄損を低減する手段としては、仕上げ焼鈍後の
鋼板表面にレーザービームを照射して局部的な歪を与
え、それによって磁区を細分化する方法が特開昭58−
26405号公報に開示されている。また鉄芯加工後の
歪取り焼鈍(応力除去焼鈍)を施した後もその効果が消
失しない磁区細分化手段が、例えば特開昭62−861
75号公報に開示されている。
結晶磁気異方性が大きいため、外部張力を付加すると磁
区の細分化が起こり、鉄損の主要素である渦電流損失を
低下させることができる。したがって、5%以下の珪素
を含有する一方向性珪素鋼板の鉄損の低減には鋼板に張
力を付与することが有効であり、1.5kgf/mm2 程度ま
での張力付与によって効果的に鉄損が低減できることが
知られている。この張力は通常、表面に形成された被膜
によって付与される。
工程で鋼板表面の酸化物と焼鈍分離剤とが反応して生成
するフォルステライトを主体とする1次被膜、および特
開昭48−39338号公報等に開示されたコロイド状
シリカとりん酸塩とを主体とするコーティング液を焼き
付けることによって生成する2次被膜の2層の被膜によ
って板厚0.23mmの場合で1.0kgf/mm2 程度の張力
が付与されている。したがって、これら現行被膜の場
合、より大きな張力付与による鉄損改善の余地は残され
ているものの、被膜を厚くすることによる付与張力の増
加は占積率の低下をもたらすため好ましくない。
もうひとつの方法として、仕上げ焼鈍後の鋼板表面の凹
凸や表面近傍の内部酸化層を除去して鏡面仕上げを行
い、その表面に金属メッキを施す方法が特公昭52−2
4499号公報に、さらにその表面に張力被膜を形成す
る方法が例えば特公昭56−4150号公報、特開昭6
1−201732号公報、特公昭63−54767号公
報、特開平2−213483号公報等に開示されてい
る。これらの場合においても、被膜による鋼板への張力
付与の大きい方が鉄損改善効果が大きい。
鋼板に大きな張力が付与できる被膜が望まれていた。こ
れに対して発明者らは、主成分としてほう酸アルミニウ
ム、あるいはほう酸アルミニウム結晶と非晶質酸化物と
が混在した被膜を表面に有する方向性電磁鋼板を提案し
てきた。しかしながら、これらの被膜においては、化学
的安定性が若干劣る場合があり、また特に鏡面仕上げを
行った鋼板に対しては、製造条件によっては被膜との界
面に酸化層が形成され、良好な特性の一方向性珪素鋼板
が得られない場合があった。
技術における問題点を解決し、化学的に安定で、鋼板に
大きな張力を付与する被膜を表面に有することにより、
鉄損が低減された一方向性珪素鋼板、およびその製造方
法を提供することを目的とする。
に、ほう酸アルミニウム、およびほう珪酸ガラスを主成
分とする被膜を、仕上げ焼鈍が完了した鋼板表面に形成
してなる一方向性珪素鋼板を要旨とする。また、鋼板最
表面に、ほう酸アルミニウム、ほう酸鉄、およびほう珪
酸ガラスを主成分とする被膜を有してなる低鉄損一方向
性珪素鋼板を要旨とする。なかでも、ほう酸アルミニウ
ムがAlx By O3(x+y)/2(0.1≦(y/x)≦5)
なる化学式で表記される結晶質ほう酸アルミニウムであ
る上記被膜を形成した低鉄損一方向性珪素鋼板を要旨と
する。
アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化合物を含
有する懸濁液を、仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼
板表面に塗布、500〜1350℃の温度で焼き付け、
酸化物被膜を形成せしめること、また、鉄化合物を加え
た懸濁液を用い、同様のプロセスによって酸化物被膜を
形成せしめることを特徴とする低鉄損一方向性珪素鋼板
の製造方法を要旨とする。また、上記鋼板の製造方法に
おいて、酸化アルミニウム前駆体化合物として酸化アル
ミニウム前駆体ゾル、酸化珪素前駆体化合物として酸化
珪素前駆体ゾルを用いることを特徴とする方法を要旨と
する。さらに酸化珪素前駆体ゾルとしてSiO2 ・nH
2 O、またはSiOp (OH)q なる化学式で表記され
るシリカゾル、および/またはコロイダルシリカ、なか
でも特に、アルキルシリケート、および/またはアルキ
ルシリケート加水分解物を用いる、鉄損の低い一方向性
珪素鋼板の製造方法を要旨とする。
アルミニウム、およびほう珪酸ガラスを主成分とする被
膜を有している。従来より、電磁鋼板への張力付与には
熱膨張係数の小さい被膜材質を選択し、鋼板との熱膨張
係数差によって冷却時に生じる応力を利用していた。し
かしながら、熱膨張係数差だけではなく、被膜材質のヤ
ング率も鋼板への張力付与に影響を及ぼす因子であるこ
とが指摘されている。
ウムは前記要件を満たし、鋼板への大きな張力付与をも
たらしていると推定される。一般にほう酸アルミニウム
と呼ばれるAl2 O3 −B2 O3 系酸化物は9Al2 O
3 ・B2 O3 ,2Al2 O3・B2 O3 の2つの平衡相
化合物が存在し、鋼板への張力付与に効果的であること
を見いだした。しかしながら、ほう酸アルミニウムは、
製造条件によっては前述の2つの平衡相のほかに両者の
中間組成、あるいはその近傍の組成を取る場合がある。
これは、2つの平衡相が同じ結晶構造を持ち、格子定数
がほぼ同じであるためAl,Bの各イオンサイト間で容
易に置換が生じ、準安定相を形成するためであると考え
ている。
て、Alx By O3(x+y)/2で表記した場合に0.1≦
(y/x)≦5の範囲であることを見い出し、このいず
れであっても全く問題がなく、効果的に張力が付与でき
ることを確認した。このうち、特に張力付与に効果的な
組成として、0.1≦(y/x)≦2が好ましく、より
好ましくは0.2≦(y/x)≦1の組成範囲である。
これらのほう酸アルミニウムは、通常、組成とはあまり
関係なく数nm〜数十nm以上の結晶子サイズとなる場合が
多く、大きな張力付与のためには結晶質であることが好
ましい。一方で、ほう酸アルミニウムが十分な結晶性を
有しておらず、非晶質に近い状態であった場合、鋼板へ
の付与張力は結晶質であった場合と比較して低下するも
のの、従来被膜と比較してはるかに大きな張力付与が可
能であるため、本発明の態様として特に支障なく用いら
れる。
は、ほう珪酸ガラスも主成分として含有する。これは塗
布液中のほう酸と酸化珪素前駆体および/または鋼板成
分中の珪素とが反応して生成したものであるが、被膜中
においてはマトリックス様相として存在している場合が
多いと考えられ、ほう酸アルミニウム成分を主体とした
被膜に散見される微小気孔等を低減させている。この効
果により、焼き付け時に生じる界面酸化の問題を緩和し
ていると推定している。
あるが、これ以外に他の成分が混入している場合であっ
ても一向に差し支えない。これらは、被膜中の他の成
分、また不純物等から不可避的に混入する場合、あるい
は塗布液中に意図的に添加する場合とがある。成分とし
ては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属元素
等が一般的であるが、他にもガラス形成酸化物元素、修
飾酸化物元素等が考えられる。なかでは、Feのように
ガラス中に混入することで被膜全体の化学的安定性を高
める効果を有する元素もあり、塗布液中に添加すること
で積極的に被膜の特性を改善することができる。
は、ほう酸アルミニウム、ほう珪酸ガラスを主成分とし
て含有しているが、ここでいう主成分とは、被膜全体に
対する体積割合にして50%以上を指している。より好
ましい含有率としては、同様に被膜全体に対する体積割
合として70%以上である。被膜中において、主成分以
外の成分については特に限定を受けるものではないが、
一般的にはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属
等の結晶質化合物である。特に、鉄の結晶質化合物の含
有は被膜の化学的安定性を著しく高めることができる。
なかでも、ほう酸鉄(Fe3 BO5 )をほう酸アルミニ
ウム、ほう珪酸ガラスと同様に被膜中に主成分として含
有することで、鋼板への大きな張力付与、被膜の化学的
安定性、界面酸化抑制のいずれにも大きな効果を有する
良好な被膜が得られる。
とほう珪酸ガラスとの含有割合は、より大きな被膜張力
が得られるという観点から、ほう酸アルミニウムが、ほ
う酸アルミニウムとほう珪酸ガラスとを合わせたものに
対する体積割合にして60%以上、好ましくは80%以
上である。また、ガラス成分が極端に少ないと前述の優
れた被膜特性が得られないため、好ましいガラス成分の
量として、ほう酸アルミニウムとほう珪酸ガラスとを合
わせたものに対する体積割合にして5%以上、好ましく
は10%以上である。また、ほう酸鉄を含有する場合に
おいては、3種の主成分がそれぞれ最低でも主成分全体
に対する体積割合で5%以上含有していることが好まし
く、さらに好ましくは10%以上である。
鋼板最表面に上述の被膜を有しているが、被膜を形成し
ている母材鋼板については、2次再結晶が完了している
ものであれば特に制限を受けない。通常、母材として一
般的に用いられている鋼板は、仕上げ焼鈍(2次再結晶
焼鈍)時に形成されたフォルステライト質の1次被膜を
有する鋼板、1次被膜を酸洗等の方法によって除去し、
金属表面を露出させた鋼板、あるいはさらにその表面を
研磨等によって平坦化した鋼板、フォルステライト質被
膜が生成しない条件下で仕上げ焼鈍(2次再結晶焼鈍)
を行い、金属表面を露出させた鋼板、あるいはさらにそ
の表面を平坦化した鋼板等である。本発明の一方向性珪
素鋼板の被膜は、厚すぎる場合には占積率が低下するた
め目的に応じてできるだけ薄いものが良く、鋼板厚さに
対して5%以下の厚さが好ましい。より好ましくは2%
以下である。また張力付与の観点からは、極端に薄くて
は十分な効果が得られず、0.1μm以上が好ましい。
を好適に製造する方法について述べる。ほう酸、酸化ア
ルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化合物を含む
懸濁液を作製する。ほう酸はH3 BO3 で表されるオル
トほう酸が作業性、価格等の点から最も好ましいが、H
BO2 で表されるメタほう酸、B2 O3 で表される酸化
ほう素、あるいはこれらの混合物も用いることができ
る。酸化アルミニウムはもとより、ベーマイトのような
Al2 O3 ・mH2 Oで表記される酸化アルミニウムの
水和物、水酸化アルミニウム等を指す。
をはじめとする各種のアルミニウム塩類も好適に用いら
れる。酸化珪素前駆体化合物も同様に焼き付け後に酸化
珪素となる化合物の総称であり、酸化珪素の水和物、酸
化水酸化珪素、各種珪素化合物等が好適に用いられる。
これらの原料を分散媒に分散させて懸濁液(スラリー)
を作製する。分散媒は水が最も好適であるが、他の工程
で特に支障がなければ有機溶媒、あるいはこれらの混合
物が使用できる。スラリーを作製した時点で原料中のあ
る種のものは溶解する可能性があるが、これは一向に差
し支えない。
のコーター、ディップ法、スプレー吹き付け、あるいは
電気泳動等、従来公知の方法によって仕上げ焼鈍が完了
した一方向性珪素鋼板表面に塗布する。ここでいう仕上
げ焼鈍が完了した鋼板とは、:従来公知の方法で仕上
げ焼鈍を行って、表面にフォルステライト質の1次被膜
が形成された鋼板、:1次被膜および付随的に生成し
ている内部酸化層を酸に浸漬して除去した鋼板、:
で得た鋼板に水素中で平坦化焼鈍を施した鋼板、あるい
は化学研磨、電解研磨等の研磨を施した鋼板、:被膜
生成に対して不活性であるアルミナ粉末等、または塩化
物等の微量添加物を添加した従来公知の焼鈍分離剤を塗
布し、1次被膜を生成させない条件下で仕上げ焼鈍を行
った鋼板、等を指す。
℃で焼き付けることによって表面に酸化物被膜を形成す
る。焼き付け時の雰囲気は窒素等の不活性ガス雰囲気、
窒素−水素混合雰囲気等の還元性雰囲気が好ましく、空
気、あるいは酸素を含む雰囲気は鋼板を酸化させる可能
性があり好ましくない。雰囲気ガスの露点については特
に制限はない。焼き付け温度は500℃未満の場合、塗
布した前駆体が酸化物とならない場合があり、また焼き
付け温度が低いため十分な張力が発現せず好ましくな
い。一方、1350℃を超える場合、特に大きな不都合
はないものの経済的でなく、より好ましくは1250℃
以下である。
酸、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化
合物に鉄の化合物を含む懸濁液を塗布液として用いる方
法である。ここで使用する鉄の化合物は、焼き付け後に
酸化鉄となる化合物であれば特に支障なく用いることが
でき、例えば酸化鉄、Fe2 O3 ・aH2 Oのような酸
化水酸化鉄、水酸化鉄はもとより、硝酸鉄、塩化鉄、硫
酸鉄のような各種の鉄の化合物も好適に用いることがで
きる。なかでも特に、分散媒に可溶性の鉄化合物、ある
いは分散媒に溶けない鉄化合物であっても分散後の粒子
径の細かい化合物粒子が特に好適に用いられる。好まし
い粒子径としては、1μm以下、より好ましくは0.5
μm以下である。塗布以後の工程は、前述のほう酸、酸
化アルミニウム前駆体化合物、酸化珪素前駆体化合物の
混合懸濁液を用いる、第1の製造方法と同様で差し支え
ない。
前駆体、酸化珪素前駆体としていわゆるゾルとよばれる
微粒子分散系を用いることにより薄くて均一、かつ密着
性の良い被膜が得られる場合がある。これは表面に非金
属物質が存在せず、金属面上に直接被膜を形成するよう
な場合に特に顕著である。かかるときには上述の微粒子
分散系ゾル、あるいは可溶性成分を含んだゾルが好適に
用いられる。用いるゾルの粒子径としては、あまり細か
すぎると、乾燥時のひび割れ、剥離等が生じ易くなり、
所定の厚さの被膜形成が困難となるため、好ましくは1
0nm以上、より好ましくは15nm以上である。
アルミニウム前駆体として上述のベーマイトゾル、およ
び/またはアルミナゾルとよばれているものが作業性、
あるいは価格の点から特に好適に用いられる。一方、酸
化珪素前駆体ゾルとしては種々のものが使用可能である
が、SiO2 ・nH2 O、またはSiOp (OH)qな
る化学式で表記されるシリカゾル、および/またはコロ
イダルシリカがやはり作業性、価格の点から好適に用い
られる。なかでも、酸化珪素前駆体ゾルとしてSi(O
Cz H2z+1)4 なる化学式のアルキルシリケート、およ
び/またはその加水分解物が好適に用いられる。アルキ
ルシリケートは金属アルコキシドの1種であるが、加水
分解が比較的緩慢であり、前駆体として安定した性状が
得られる。
って珪素の水酸化物、あるいは酸化珪素の水和物を形成
するが、ある種の被膜を形成する場合においては、アル
キルシリケートをそのまま用いるより、この加水分解物
を用いた方が好ましいケースが存在する。このような場
合には、加水分解後の前駆体ゾルが好適に用いられる。
これには、あらかじめ加水分解した後、他の成分と混
合する方法、他の成分と混合しつつ加水分解を並行さ
せ、必要に応じて熟成を加える、等いくつかの方法が考
えられるが、本発明ではこのいずれであっても特に支障
はない。
は、なかでも加水分解速度の速い、炭素数zの少ないも
のであり、好ましくはz≦3程度であるが、z=1のメ
チルシリケートは加水分解によって生成するメチルアル
コールに有害性が存在するため、z=2のエチルシリケ
ートが特に好適に用いられる。酸化珪素、酸化アルミニ
ウムの前駆体ゾルの使用においても、前述のスラリート
同様に分散媒、特に水に分散させて使用することが可能
である。特に良好な分散性を得るために、酸、アルカリ
等の添加による塗布液のpH制御等はしばしば用いられ
る手法であり、本発明においても特に支障なく行うこと
ができる。また、鋼板への塗布性を改善するための極微
量の界面活性剤等の添加についても全く問題ない。以下
に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかか
る実施例にのみ限定されるものではない。
0.4μm)、酸化珪素微粉末を表1に示した割合に秤
量し、これに蒸留水を加えてスラリーを作製した。これ
を、Siを3.2%含有する厚さ0.2mmの仕上げ焼鈍
が完了した一方向性珪素鋼板(フォルステライト質の1
次被膜あり)に片面4g/m2 となるように塗布、乾燥
後、H2 を3 vol%含有するN2 雰囲気中で1000
℃、5分間焼き付けることによって表面に酸化物被膜を
形成した。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・B2 O3 )のほう酸アル
ミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体積
割合で50%以上含有し、その他若干の未反応酸化珪素
も含んでいることがわかった。20mmφの円柱の周囲
に、その角度が180度となるように巻き付け試験を行
い、その剥離状況から評価した被膜の密着性は極めて良
好であった。被膜の化学的安定性は、被膜を形成した鋼
板を、そのまま100mlの沸騰蒸留水中に10分間浸漬
し、その前後の重量変化によって評価し、いずれの組成
も、50cm2 の鋼板あたり5mg未満の重量変化であっ
た。また、沸騰蒸留水中への被膜成分の溶け出しも、い
ずれの組成とも分析検出限界以下であった。片面の被膜
を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張力、
および磁気特性を表1に記した。表1の結果から、いず
れも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られている
ことがわかる。
nm)、コロイダルシリカ(平均粒径:15nm)を固形分
相当で表2に示した割合に混合し、これに必要に応じて
蒸留水を加えて混合ゾルを作製した。これを、Siを
3.2%含有し、酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として
塗布し、2次再結晶と同時に鏡面化処理を施した厚さ
0.2mmの一方向性珪素鋼板に片面4g/m2 となるよ
うに塗布、乾燥後、H2 を10 vol%含有するN2 雰囲
気中で850℃、3分間焼き付けることによって表面に
酸化物被膜を形成した。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・B2 O3 )のほう酸アル
ミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体積
割合で50%以上含有していることがわかった。実施例
1と同様に評価した被膜の密着性、化学的安定性はいず
れの組成とも極めて良好であった。鋼板への付与張力、
および磁気特性を表2に記した。表2の結果から、いず
れも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られている
ことがわかる。また、被膜を形成した鋼板の断面を研磨
し、SEMによって観察したところ、いずれの組成とも
被膜−鋼板界面に顕著な酸化層は観察されなかった。
う酸、ベーマイト粉末(平均粒径/50nm)、コロイダ
ルシリカ(平均粒径:15nm)、FeOOH粉末を、固
形分相当で表3に示した割合に混合し、これに蒸留水を
加えて混合ゾルを作製した。これを、Siを3.2%含
有する厚さ0.2mmの仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪
素鋼板(フォルステライト質の1次被膜あり)に片面4
g/m2となるように塗布、乾燥後、H2 を1 vol%含
有するN2 雰囲気中で900℃、1分間焼き付けること
によって表面に酸化物被膜を形成した。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・B2 O3 )のほう酸アル
ミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相、ほう
酸鉄(Fe3 BO5 )を体積割合で50%以上含有して
いることがわかった。実施例1と同様に評価した被膜の
密着性、化学的安定性は極めて良好であった。片面の被
膜を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張
力、および磁気特性を表3に記した。表3の結果から、
いずれも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られて
いることがわかる。
m)、エチルシリケートを、固形分相当で表4に示した
割合に混合し(ただしエチルシリケートは、最終的に得
られる酸化物換算)、これに微量の塩酸を滴下した蒸留
水を加えて混合ゾルを作製した。これを、Siを3.2
%含有し、酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として塗布
し、2次再結晶と同時に鏡面化処理を施した厚さ0.2
mmの一方向性珪素鋼板に片面4g/m2 となるように塗
布、乾燥後、H2 を3 vol%含有するN2 雰囲気中で8
50℃、2分間焼き付けることによって表面に酸化物被
膜を形成した。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・B2 O3 )のほう酸アル
ミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体積
割合で50%以上含有することがわかった。20mmφの
円柱の周囲に、実施例1と同様に評価した被膜の密着
性、化学的安定性は極めて良好であった。片面の被膜を
除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張力、お
よび磁気特性を表4に記した。表4の結果から、いずれ
も著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られているこ
とがわかる。また被膜−鋼板界面には、顕著な酸化層は
観察されなかった。
ることによって、化学的に安定で、かつその張力付与効
果によって鉄損が著しく改善された一方向性珪素鋼板、
およびその製造方法を提供する。特に、従来から用いら
れている1次被膜を有する鋼板、あるいは著しい低鉄損
化を目的とした鏡面化鋼板のいずれに対しても良好な特
性を示し、汎用性の観点からも工業的効果は甚大であ
る。
ウムは前記要件を満たし、鋼板への大きな張力付与をも
たらしていると推定される。一般にほう酸アルミニウム
と呼ばれるAl2 O3 −B2 O3 系酸化物は9Al2 O
3 ・2B2 O3 ,2Al2 O3 ・B2 O3 の2つの平衡
相化合物が存在し、鋼板への張力付与に効果的であるこ
とを見いだした。しかしながら、ほう酸アルミニウム
は、製造条件によっては前述の2つの平衡相のほかに両
者の中間組成、あるいはその近傍の組成を取る場合があ
る。これは、2つの平衡相が同じ結晶構造を持ち、格子
定数がほぼ同じであるためAl,Bの各イオンサイト間
で容易に置換が生じ、準安定相を形成するためであると
考えている。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・2B2 O3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体
積割合で50%以上含有し、その他若干の未反応酸化珪
素も含んでいることがわかった。20mmφの円柱の周囲
に、その角度が180度となるように巻き付け試験を行
い、その剥離状況から評価した被膜の密着性は極めて良
好であった。被膜の化学的安定性は、被膜を形成した鋼
板を、そのまま100mlの沸騰蒸留水中に10分間浸漬
し、その前後の重量変化によって評価し、いずれの組成
も、50cm2 の鋼板あたり5mg未満の重量変化であっ
た。また、沸騰蒸留水中への被膜成分の溶け出しも、い
ずれの組成とも分析検出限界以下であった。片面の被膜
を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張力、
および磁気特性を表1に記した。表1の結果から、いず
れも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られている
ことがわかる。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・2B2 O3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体
積割合で50%以上含有していることがわかった。実施
例1と同様に評価した被膜の密着性、化学的安定性はい
ずれの組成とも極めて良好であった。鋼板への付与張
力、および磁気特性を表2に記した。表2の結果から、
いずれも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られて
いることがわかる。また、被膜を形成した鋼板の断面を
研磨し、SEMによって観察したところ、いずれの組成
とも被膜−鋼板界面に顕著な酸化層は観察されなかっ
た。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・2B2 O3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相、ほ
う酸鉄(Fe3 BO5 )を体積割合で50%以上含有し
ていることがわかった。実施例1と同様に評価した被膜
の密着性、化学的安定性は極めて良好であった。片面の
被膜を除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張
力、および磁気特性を表3に記した。表3の結果から、
いずれも著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られて
いることがわかる。
結果から、得られた被膜は、結晶質(2Al2 O3 ・B
2 O3 、または9Al2 O3 ・2B2 O3 )のほう酸ア
ルミニウム、ほう素と珪素を主成分とするガラス相を体
積割合で50%以上含有することがわかった。20mmφ
の円柱の周囲に、実施例1と同様に評価した被膜の密着
性、化学的安定性は極めて良好であった。片面の被膜を
除去し、板の曲がりから測定した鋼板への付与張力、お
よび磁気特性を表4に記した。表4の結果から、いずれ
も著しく鉄損の低い一方向性珪素鋼板が得られているこ
とがわかる。また被膜−鋼板界面には、顕著な酸化層は
観察されなかった。
Claims (8)
- 【請求項1】 鋼板最表面に、ほう酸アルミニウム、お
よびほう珪酸ガラスを主成分とする被膜を有してなる低
鉄損一方向性珪素鋼板。 - 【請求項2】 鋼板最表面に、ほう酸アルミニウム、ほ
う酸鉄、およびほう珪酸ガラスを主成分とする被膜を有
してなる低鉄損一方向性珪素鋼板。 - 【請求項3】 ほう酸アルミニウムがAlx By O
3(x+y)/2(0.1≦(y/x)≦5)なる化学式で表記
される結晶質ほう酸アルミニウムである請求項1または
2に記載の低鉄損一方向性珪素鋼板。 - 【請求項4】 仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼板
表面に、ほう酸、酸化アルミニウム前駆体化合物、およ
び酸化珪素前駆体化合物を含む懸濁液を塗布、乾燥後、
500〜1350℃の温度で焼き付け、酸化物被膜を形
成せしめる低鉄損一方向性珪素鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼板
表面に、ほう酸、酸化アルミニウム前駆体化合物、酸化
珪素前駆体化合物、および鉄化合物を含む懸濁液を塗
布、乾燥後、500〜1350℃の温度で焼き付け、酸
化物被膜を形成せしめる低鉄損一方向性珪素鋼板の製造
方法。 - 【請求項6】 酸化アルミニウム前駆体化合物が酸化ア
ルミニウム前駆体ゾル、酸化珪素前駆体化合物が酸化珪
素前駆体ゾルである請求項4または5に記載の低鉄損一
方向性珪素鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 酸化珪素前駆体ゾルが、SiO2 ・nH
2 OまたはSiOp(OH)q なる化学式で表記される
シリカゾル、および/またはコロイダルシリカである請
求項4ないし6のいずれかに記載の低鉄損一方向性珪素
鋼板の製造方法。 - 【請求項8】 酸化珪素前駆体ゾルが、アルキルシリケ
ート、および/またはアルキルシリケート加水分解物で
ある請求項4ないし7のいずれかに記載の低鉄損一方向
性珪素鋼板の製造方法。
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