JPH07242134A - ヘッドアップディスプレイ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】フレアー光の低減されたヘッドアップディスプ
レイを得る。 【構成】傾き角θ_w の風防ガラス７の下方に発光表示手
段が備えられていて、この発光表示手段から発せられた
情報を含む光３が、車体の風防ガラス７に備えられたコ
ンバイナー２に入射角θ₁ で入射した後に、運転者に観
察位置１で視認されるヘッドアップディスプレイにおけ
る、θ₁ とθ_w との和が略９０°であるヘッドアップデ
ィスプレイ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ヘッドアップディスプ
レイ（以下ＨＵＤとする）装置に関し、特に車両外から
のフレアー光を低減したＨＵＤに関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車内等の運転者に情報を表示する方
法として、ＨＵＤが最近用いられるようになっている。
これは、液晶表示装置等の情報投射手段から投射された
光学的情報を、自動車の風防ガラス等に組み込まれたホ
ログラムやハーフミラー等からなるコンバイナーに映
し、運転者が運転状態からほとんど視点を動かすことな
く情報を読み取れるようにしたものである。

【０００３】特に、コンバイナーとしてホログラムを用
いたものは、運転者に向かって光学的情報を回折する機
能とともにレンズ機能等を併せ持つことができるので、
光学的情報を運転者の視野方向に回折したり、あるい
は、他にレンズ等の光学系を使用せず、任意の位置に結
像したりすることが可能であり、また、前景輝度を損な
わずに高輝度の表示像が得られるという特徴があるた
め、ＨＵＤのコンバイナーとしては有効である。

【０００４】図３は、従来のＨＵＤの一例を示す概念図
である。光源４６から発し、レンズ系４４を介して透過
型液晶表示素子４５を通過した表示すべき情報を含む光
４３は、車両の風防ガラス４７に備えられたホログラム
４２に照射され、回折されて運転者に観察位置４１で視
認される。

【０００５】上記レンズ系４４はコリメーターとしての
機能を持つものであり、また、この機能はホログラム４
２に持たせることもでき、速度表示４８、警告表示４９
の表示像を遠方に結像させることも可能になる。

【０００６】また、ホログラム４２は波長選択機能を持
つので、希望する色の像が表示可能となる。通常その色
は単一であることが多いが、多重露光による多色表示も
可能であり、表示情報の量と質を向上できる。例えば、
速度表示４８を緑色、警告表示４９を赤色とすることに
よって、運転者に対してより的確に情報を伝達すること
が可能となる。

【０００７】かかるホログラフィックコンバイナーとし
ては、通常、反射型のホログラムが用いられる。この反
射型ホログラムの作製は、ホログラムの感光材料面の一
方の面から参照光、他方の面から物体光を照射して回折
格子を作製して行われる。

【０００８】ホログラムの感光材料内部では、これら２
つのレーザー光が干渉して光の明暗の干渉縞が生じ、そ
れが感光材料の屈折率または密度などの物性の違いに基
づく回折格子として記録される。この種の反射型ホログ
ラムは、光の入射角度と反射回折角度が異なる場合、そ
の回折格子面はホログラム表面に対して傾いており、表
面と平行ではない。

【０００９】図２は風防ガラス内部に封入したホログラ
ムを示す概略断面図である。２２はコンバイナーとして
機能する反射型ホログラムである。ホログラム２２の内
部には、図示のような表面に対して傾きを持った回折格
子が形成されている。ホログラム２２は風防ガラスの車
内側ガラス板２３に備えられ、ポリビニルブチラール
（ＰＶＢ）よりなる中間膜２５と共に、車外側ガラス板
２４の内側に封入され安全合わせガラスを構成してい
る。中間膜２５とホログラム２２の界面２１は、中間膜
中に含まれる可塑剤によりホログラムの特性が影響を受
けないような保護層となっている。

【００１０】発光表示手段より放射された情報を含む光
２６は、車内側ガラス板２３に対して角度θ₁ で入射
し、空気とガラスの屈折率の差により屈折しガラス内部
ではθ₁ ’の角度となる。ガラス内部に入った光はホロ
グラム２２によって運転者方向に反射回折される。ホロ
グラム内部の回折格子は表面に対して傾いているため、
回折光のガラス内部からガラス板の表面に向う角度はθ
₂ ’となり、ガラス板表面で屈折して車内側に角度θ₂
で出射し、光２７として運転者等の観察者に視認され
る。一般にθ₁ とθ₂ は車外側ガラス板表面での反射光
による二重像を防ぐため異なっており、また乗用車では
光源、コンバイナー、ドライバーの位置関係によりθ₁
＜θ₂ となっているのが通常である。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】かかるホログラムＨＵ
Ｄを備えた車両に、車外の光源から風防ガラスに向う点
線で示した外部光２８が入射するとき、その入射角θ_in
がある特定の角度の場合に、外部光２８は車内側ガラス
板２３の表面に対し角度θ₁ ’で到達し、再び角度θ
₁ ’でガラス内部方向（ホログラム２２の方向）に反射
する。この角度は情報を含む光２６のガラス内部での角
度と同じであるため、外部光はホログラム２２によって
反射回折され車内側ガラス板２３表面から角度θ₂ で出
射することになり、情報を含む光２７と共に２９のよう
に運転者等の観察者に到達する。この外部光によるノイ
ズ光をフレアー光と呼ぶ。図３の従来のＨＵＤにおいて
は、太陽などの外部光源５０からの光５１が特定の角度
で入射すれば５２のように情報を含む光４３とともに運
転者４１にフレアー光として観察されてしまう。

【００１２】このようなフレアー光が発生すると車外か
らの光の入射角度によって、明るいむらとして見えた
り、スポット状の輝点として見えたりして、ＨＵＤの表
示像の視認性を低下させるなどの悪影響をもたらす。特
に太陽光がフレアー光として観察されると、輝度が高い
ため眩惑を起こす可能性もあり安全上も問題があった。
また夜間では周囲が暗いため、昼間には気付かないよう
な街路灯などの弱い光もフレアー光として観察されてし
まい、運転する際に非常に目障りであった。このフレア
ー光は太陽や街路灯などの外部の光源を直線的に見るの
とは異なる角度で観察されるため、１つの光源が複数個
に見えることとなり、まことに目障りな存在であった。

【００１３】本発明の目的は、従来技術が有していた前
述の欠点を解決することにあり、従来知られていなかっ
たＨＵＤを新規に提供することにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明は、前述の課題に
鑑みてなされたものであり、光源と表示すべき情報を表
示する表示体とを少なくとも備えて表示すべき情報を光
として発生する発光表示手段と、車両の風防ガラスに備
えられていて前記光を車両内の観察者に向けて回折する
ホログラムからなるコンバイナーとを少なくとも備えた
ヘッドアップディスプレイにおいて、前記発光表示手段
から風防ガラスに向って入射する光の入射角θ₁ と風防
ガラスの傾き角θ_w との和が略９０°であることを特徴
とするヘッドアップディスプレイを提供するものであ
る。

【００１５】

【作用】上述したように、フレアー光は外部光が風防ガ
ラスに入射した後に、車内側ガラス板で反射してホログ
ラムに向って入射することによって生じるものである。
これだけではフレーア光の条件を満たしておらず、ホロ
グラムに向う入射角は、当然発光表示手段からの情報を
含む光がホログラムに入射する入射角と同じ時にフレア
ー光となる。すなわち、外部光が風防ガラスに入射する
入射角θ_inとθ₁とが等しくなるときに、外部光はフレ
アー光として観察者に視認される。

【００１６】本発明におけるＨＵＤは、水平方向と風防
ガラスのなす角、すなわち風防ガラスの傾き角θ_w とθ
₁ との和が略９０°となっているため、θ_w とθ₁ との
和が９０°程度のとき、外部光がフレアー光となる。し
たがって、このような外部光は略水平方向から風防ガラ
スに向う光である。そのため、太陽光等の高い位置にあ
る光源からの外部光は、フレアー光として観察者に視認
されることがない。また、先行車の尾燈のように水平以
下から入射する光についても、やはりフレアー光として
は観察されないこととなる。

【００１７】また、夕方のように太陽の高度が低い場合
や登り坂等でフレアー光の入射方向が車両に対して略水
平となった場合には、そもそもフレアー光の原因となる
光源が運転者の真正面に位置することとなり、輝度の高
いその光源により眩惑されてしまい、相対的に輝度の弱
いフレアー光は気にならなくなり、実質的にフレアー光
が低減される。

【００１８】より具体的には、図２から分かる通り、車
内側ガラス板２３の表面と車外側ガラス板２４の表面が
平行であればθ_in’とθ₁ ’は等しくなるので、θ_in＝
θ₁の場合にフレアー光が観察されることになる。そこ
で水平線３０と風防ガラスのなす角θ_w とθ₁ （θ_in）
とが、θ_in＝θ₁ ＝９０°−θ_w となる場合にフレアー
光の入射方向がちょうど水平となる。したがって、｜θ
₁ −（９０°−θ_w ）｜≦５°程度であればフレアー光
の入射方向は概ね水平とすることができる。一般の車両
の風防ガラスは曲面形状をしているため、フレアー光が
観察されるのは厳密にはθ_in＝θ₁ ではないが、ガラス
の曲率はそれほど大きくないので、目安として｜θ₁ −
（９０°−θ_w ）｜≦５°の関係式を満足していればフ
レアー光の入射方向を略水平とすることができる。

【００１９】

【実施例】以下、図面に基づいて本発明における実施例
を説明する。図１は、本発明のＨＵＤの一例を示す概念
図である。風防ガラス７の下方には発光表示手段が備え
られており、この発光表示手段は熱陰極管を用いた光源
６から発した光がコリメーターであるレンズ系４を介
し、透過型カラー液晶表示素子からなる表示体５を通過
した表示すべき情報を光３として発するものである。こ
の光３は、車体の風防ガラス７に備えられたホログラム
からなるコンバイナー２に照射されて、回折され、運転
者に観察位置１で視認される。

【００２０】上記レンズ系４はコリメーターとしての機
能を持つものであり、また、この機能はホログラムに持
たせることもでき、速度表示８、警告表示９の表示像を
遠方に結像させることも可能となる。

【００２１】また、必要に応じて表示体５とコンバイナ
ー２との間に収差補正用の別のホログラムやレンズ等を
配してもよい。

【００２２】また、ホログラムは波長選択機能を持つの
で、希望する色の像が表示可能であり、さらに、多重露
光や複数枚のホログラムの積層によって多色表示が可能
となり、表示情報の量と質の向上ができる。本実施例で
は熱陰極管の発光ピーク波長に対応する５４５ｎｍと６
１２ｎｍの光を回折する多重露光のホログラムを用い、
速度表示８を緑色、警告表示９を緑色と赤色とを混合し
アンバー色（橙色）等として表示した。その結果、運転
者に対してより的確に情報を伝達することが可能とな
る。

【００２３】風防ガラスの傾き角θ_w は４０°であり、
情報を含む光３のホログラム２への入射角θ₁ を５０°
とし、出射角θ₂ を６５°となるように露光したホログ
ラムを風防ガラスに封入した。この配置をとることによ
り｜θ₁ −（９０°−θ_w ）｜＝｜５０°−（９０°−
４０°）｜＝０°となり、図１に示すようにフレアー光
の入射方向１０は水平となることが分かる。その結果、
太陽や街路灯などの上方からの光や先行車の尾燈など下
方からの光がフレアー光として車両内に入るのを防ぐこ
とができた。

【００２４】本実施例では｜θ₁ −（９０°−θ_w ）｜
の値はちょうど０であったが、フレアー光の低減には上
記の値が０に近ければちょうど０である必要はなく、｜
θ₁−（９０°−θ_w ）｜≦５°であれば好ましくフレ
アー光を低減できる。

【００２５】また、本実施例ではフレアー光の入射方向
１０が水平であるため、夕方のように太陽１１の高度が
低い場合や登り坂等でフレアー光の入射方向が車両に対
して略水平となった場合には、そもそもフレアー光の原
因となる光源１２が運転者の真正面に位置することとな
り、輝度の高いその光源により眩惑されてしまって、相
対的に輝度の弱いフレアー光１３は気にならなくなり、
実質的にフレアー光を低減できた。

【００２６】なお、ホログラムは通常数１０ｍｍから数
１００ｍｍ角程度の面積で、数μｍから数１０μｍ程度
の厚みである。このようなホログラムは、リップマンタ
イプ等の体積・位相型のホログラムが高い回折効率を得
られるという点で望ましいが、エンボスタイプ、レイン
ボータイプ等のホログラムと呼ばれるものを広く用いる
ことができる。また、ホログラム材料としては、ポリビ
ニルカルバゾールやアクリル系などのフォトポリマー、
重クロム酸ゼラチン、光レジスト、銀塩など種々の感光
材料を用いることができる。

【００２７】本実施例ではコンバイナーとして横１５０
ｍｍ×縦２００ｍｍの大きさで、厚さが２０μｍのアク
リル系フォトポリマーよりなる感光材料を用い、体積位
相型の反射型ホログラムを用いた。

【００２８】かかるホログラムは風防ガラスに備えられ
るものであり、例えば風防ガラスの表面（車両外表面）
や車両内側表面に備えられてもよいが、特にホログラム
の保護の点に鑑みて、本実施例のように合わせガラスで
ある風防ガラスの内部に封入して用いることが好まし
い。

【００２９】本発明における発光表示手段は光を発して
表示する機能を持つものであり、液晶表示素子等のいわ
ゆる受光型表示素子からなる表示体に熱陰極管（ＨＣ
Ｔ）、冷陰極管、蛍光表示管（ＶＦ）、ハロゲンラン
プ、ＬＥＤなどからなる光源から発した光を照射するも
のであり、また、これらの機能を併せ持つものであって
もよい。

【００３０】本発明におけるコンバイナーをカラー表示
に用いる場合、この液晶表示素子としては、カラーフィ
ルターと透過型のツイストネマチック型液晶素子や、ス
ーパーツイストネマチック型液晶表示素子等からなるカ
ラー液晶表示素子等が好ましく使用でき、一つの光源か
ら発せられた光を所望の色の光として照射することがで
きる。

【００３１】このようにして複数の色の光は、同一の発
光表示手段から発することができ、これら複数の色の光
が同時に表示される場合には表示像が重なって表示さ
れ、逆にこの表示像の重なりを防ぐためには、必要に応
じてカラーフィルターと光源の組み合わせによって、あ
るいはカラー液晶表示素子を制御することによって、複
数の色の光が同時に照射されないようにしてもよい。

【００３２】また、それとは別に、受光型表示素子を用
いず、上記の光源自体をパターン化して配列し特定の情
報を光として発生するものであってもよい。受光型表示
素子に上記光源を併用したものの場合は、この受光型表
示素子と光源との間にレンズ系や曲面反射鏡等の適当な
光平行化手段、導光板等の適当な導光手段を配置しても
よい。さらに、ホログラムに光が投射されるまでの光径
路内に、必要に応じて、光偏光手段、あるいは、ＫＮＯ
₃ 等の非線形光学素子を配置してもよい。

【００３３】また本発明のＨＵＤをカラー表示とする場
合、コンバイナーから表示像までの距離は各色で同一と
すれば同一平面内にカラー表示ができ、また、色によっ
て変えた場合には表示色によって表示像の観察される距
離の異なる立体的な像を得ることができる。

【００３４】

【発明の効果】本発明によれば、θ_w とθ₁ との和が略
９０°となっていて、フレアー光の入射方向が略水平と
なるため、太陽や街路灯などの上方からの光や先行車の
尾燈などの下方からの光はフレアー光とならず、フレア
ー光として車両内に入ることを防ぐことができる。ま
た、夕方のように太陽の高度が低い場合や登り坂等でフ
レアー光の入射方向が車両に対して略水平となった場合
には、そもそもフレアー光の原因となる光源が運転者の
真正面に位置することとなり、輝度の高いその光源によ
り眩惑されてしまい、相対的に輝度の弱いフレアー光は
気にならなくなり、実質的にフレアー光を低減できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のＨＵＤの一例を示す概念図

【図２】風防ガラス内部に封入したホログラムおよびフ
レアー光の発生メカニズムを説明する概略断面図

【図３】従来のＨＵＤを示す概念図

【符号の説明】

１：運転者の観察位置 ２：コンバイナー ３：情報を含む光 ４：レンズ系 ５：表示素子 ６：光源 ７：風防ガラス ８：速度表示 ９：警告表示 １０：フレアー光の入射方向 １１：太陽などの外部光源 １２：外部光源の直接入射光 １３：運転者に観察されるフレアー光

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】光源と表示すべき情報を表示する表示体と
   を少なくとも備えて表示すべき情報を光として発生する
   発光表示手段と、車両の風防ガラスに備えられていて前
   記光を車両内の観察者の観察位置に向けて回折するホロ
   グラムからなるコンバイナーとを少なくとも備えたヘッ
   ドアップディスプレイにおいて、前記発光表示手段から
   風防ガラスに向って入射する光の入射角θ₁ と風防ガラ
   スの傾き角θ_w との和が略９０°であることを特徴とす
   るヘッドアップディスプレイ。
2. 【請求項２】θ₁ とθ_w とが、｜θ₁ −（９０°−θ
   _w ）｜≦５°の関係式を満足することを特徴とする請求
   項１のヘッドアップディスプレイ。