JPH07227B2 - 浸漬ノズル及びその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、非金属介在物に起因する閉塞を防ぐためのガ
ス吹き込み構造を有する鋳造用の浸漬ノズルとその製造
方法に関する。

〔従来の技術〕

近年、鋼等の溶融金属の連続鋳造において、アルミナ等
非金属介在物のノズル注出孔壁への付着に起因するノズ
ル閉塞の防止を目的として、浸漬ノズルの筒部を介して
不活性ガス等を溶融金属に吹き込みながら鋳造する鋳造
用ノズルが多用されている。

その一例として、特開昭56-102357号公報に記載の浸漬
ノズルがある。これは、ノズル本体の軸線方向に環状断
面のガス吹込用中空室を形成し、この中空室からガスを
浸漬ノズルの注出孔内を流れる溶湯中に吹き込む構成で
ある。その中空室から吹き込まれるガスによって、浸漬
ノズルの内壁にアルミナ等の非金属介在物が付着するこ
とを防ぐことができる。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかし、このようなガス吹込型浸漬ノズルにあっても、
非金属介在物が吐出口部に付着することに対しては、ガ
ス吹き込みによる効果は不充分である。そして、この吐
出口部に非金属介在物が付着することに起因して、連続
鋳造に使用される回数に限りがある。

そこで、本発明の目的は、その吐出口部においても非金
属介在物が付着することを当該部分におけるガス吹出し
によって防止する浸漬ノズルと、そのようなガス吹き出
し機構をもつ浸漬ノズルを簡単に製造する製造方法を提
供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明の浸漬ノズルは、上記目的を達成するために、ノ
ズル本体の軸線方向に網状細孔を内蔵配置し、同網状細
孔をノズルの吐出口に開口した構造とした。

そして、かかる構造を有する浸漬ノズルは、未焼成の耐
火材からなるノズル本体に、有機質の線材からなる網状
体を、ノズル本体の軸線方向に形成したガス吹き込み用
環状中空室に連続する状態で内蔵配置し、同ノズル本体
を加熱して前記有機質の線材からなる網状体を炭化，揮
発又は収縮させることにより前記内蔵配置箇所に網状細
孔を形成した後、ノズル本体に穿孔加工を施して前記網
状細孔が開口する吐出口を形成することによって製造す
る。

本発明において使用する網状細孔形成材料としては、焼
成により炭化，揮発又は収縮することによって空間を生
ずる物質からなる網状物が用いられる。たとえば、天然
繊維，有機繊維，ポリエチレン,PVA,塩化ビニル等有機
化学物質、フェノール樹脂，フラン樹脂等の線材が使用
される。この細孔形成材料は、繊維状物をクロス或いは
井桁状に編成したり、簾状に組み合わせた網状体として
使用される。また、この網状体を層状に折り重ねて用い
ることもできる。

他方、中空室成形材料としては、ボール紙，布，和紙等
の有機繊維からなる筒状，板状物，又はワックス，ゴ
ム，アクリル，ポリエチレン，塩化ビニル，スチロール
等の有機化学物質からなる筒状，板状物などがある。ま
た、これらの有機繊維又は有機化合物質を予め成形した
ガス透過体材質又は本体材質にて予め成形した円筒体に
塗布し或いは巻き付けてもよい。或いは、内壁部材に被
せた細孔形成材料に対して、焼成，加熱等の処理を施す
ことにより、中空室に相当するスリットを形成すること
もできる。

〔実施例〕

実施例１ 第１図は、本発明の浸漬ノズルの構造を具体的に示した
ものである。鋳造用ノズルは、注出孔Ａを画成する内壁
部材１とノズル本体の外表面を形成する外壁部材２との
間に中空室３を設けている。この内壁部材１は、上方が
ガス透過性の材料1aで、下方がガス不透過性の材料1bで
形成されている。そして、ガス不透過性材料1bの外周に
は、中空室３に連通する網状細孔４が形成されている。
この網状細孔４は、浸漬ノズルの下部に形成された吐出
口５に開口している。また、外壁部材２には、ガス吹き
込みのために前記中空室３につながる孔部を設け、そこ
にガス吹き込み用ソケット６を埋め込んでいる。なお、
スラグによる鋳造用ノズルの侵食を防ぐために、スラグ
レベルSLに相当する位置の外壁部材２に保護層７を設け
ている。

このノズルに吹き込まれた不活性ガス等の一部は、中空
室３の内側壁を構成するガス透過性材料1aを貫通して注
出孔Ａ内に吹き込まれ、注出孔Ａ内壁にアルミナ等の非
金属介在物が付着することを防ぐ。また、吹き込まれた
ガスの一部は、中空室に連通する網状細孔４を介して、
吐出口５の内壁全周に分布する細孔開口部から噴出さ
れ、該吐出口５に非金属介在物が付着することを防ぐ。

吐出口５の内壁全周にわたって微細な網状細孔が設けら
れているので、吐出口５内壁の全周からガス微細気泡と
して噴出し、溶融金属の流れに乗り吐出口壁を洗う。こ
れにより、吐出口５を非金属介在物の付着から保護す
る。この場合、網状細孔に対向して吐出口５が穿孔され
るので、きめの細かい細孔を所期の位置へ正確に容易に
形成できる。なお、網状細孔を多層にして、穿孔された
吐出口５の内周面に網状細孔の開口部が複数列で並ぶよ
うにしても良い。従って、上記吐出口部のガス吹き込み
をきめ細かく均一に行うことができるので、吐出口５の
閉塞防止はより有効になる。

第２図は、本実施例の浸漬ノズルを製造する方法を工程
順に示すものである。

第２図ａに示す予備備形成された未焼成の耐火材からな
る円筒状のガス透過性材料1aの全長の約半分にわたっ
て、その外周全体の直径に0.2mmの有機質の線材からな
る開き目5mmの網4aを被せ或いは巻き付ける（第２図
ｂ）。

該ガス透過性材料1aの残りの半分の外周全体に、ワック
スと網の境界が重なるように所定厚さのワックス８を塗
布した（第２図ｃ）後、注出孔を形成する芯金の所定の
位置に網状物4aを上にして固定し、本体を形成するゴム
型を被せ、該ゴム型とガス透過性材料1a及び芯金との空
間にノズル本体を形成するアルミナ黒鉛質と坏土とパウ
ダー部を強化するためのジルコニア−黒鉛質の坏土とを
投入し、蓋をしてシールした後ラバープレスにより加圧
成形した。本成形体を還元焼成しノズル素材を得た（第
２図ｄ）。このノズル素材の外周及び全長を所定の寸法
に加工した後、網状の細孔部を形成した部分に吐出口５
を穿孔し（第２図ｅ）、ワックスを塗布して製作した中
空室３につながるように孔９を設け（第２図ｆ）、この
孔９にガス吹き込み用ソケット６を埋め、浸漬ノズルを
得た。

この浸漬ノズルを鋼の連続鋳造に供したところ、総量67
5トンの鋼の鋳造に供され鋳込み作業に支障をきたすこ
となく鋳造でき、使用後のノズルの吐出部の付着物は従
来の略1/3に少なくなっていることが確認できた。これ
に対し、従来の浸漬ノズルでは吐出部のノズル閉塞によ
り540トンで鋳造不能となった。

実施例２ 第３図は、本発明にかかる浸漬ノズル他実施例とその製
造工程を示すものである。

直径0.3mmの天然繊維からなる開き目7mmの網4aを、円筒
状に保形するためのガイド筒10に被せた（第３図ａ）。
該害と筒10を、ガイド筒が注出孔中心軸と偏芯すること
を防止するためのガイド筒支え（図示せず）と共に注出
孔を形成する芯棒11に取りつけ、予めセットしてある本
体成形用ゴム型12の空間にアルミナ−黒鉛質坏土13及び
ジルコニア−黒鉛質坏土14を所定量，所定部位に投入し
（第３図ｂ）、充填した後ガイド筒支えを抜き、次いで
芯棒11とガイド筒10の間の空間にアルミナ黒鉛質坏土を
さらに投入し充填した後、円筒状の網4aを残したままガ
イド筒10を抜いて蓋をした後でシールしてラバープレス
にて加圧成形した（第３図ｃ）。

この成形体を還元焼成した後、外周及び全長を加工し
（第３図ｄ）、ノズルのフランジ下に網状細孔に達する
よう孔９を設け、ガス吹き込み用金属ソケットを埋め込
んだ。また、網状の細孔の設置部位の所定位置に吐出口
５を開孔し、浸漬ノズルを得た（第３図ｅ）。

本ノズルを用い、上ノズルから閉塞防止用不活性ガスを
吹き込みながら鋳造を行った。この結果、従来900トン
で吐出部閉塞により鋳造作業に支障をきたす場合があっ
たが、本ノズルでは、総量1050トンの鋳造作業に何等の
障害も与えなかった。

実施例３ 第４図は、本体を形成するアルミナ−黒鉛材質で予め筒
状に成形した内筒内壁部材１の一部に、直径0.3mmのポ
リエチレンの線材からなる開き目6mmの円筒状の網4aを
被せ、該網状物4aに連結するよう幅30mm,厚さ1mmのワッ
クス8aをフランジ下部まで塗布した。これにより、網状
物4aへのガス導入路15形成部が設けられた（第４図
ｂ）。該筒状体を注出孔成形用芯金の所定位置に固定し
た後、本体を成形するゴム型を被せ、本体及びパウダー
ライン部強化部を形成するアルミナ−黒鉛質坏土とジル
コニア−黒鉛質坏土を投入，充填後蓋をし、シールした
後ラバープレスに投入し加圧成形した。

本ノズルをコークスに埋めて還元焼成した後、外周及び
長さを所定寸法に加工した（第４図ｂ）後、網状物によ
り成形された網状細孔部に吐出口５を、またフランジ下
ワックスにより形成されたガス導入路15につながるよう
小孔をそれぞれ穿孔した（第４図ｃ）。ガス導入路15の
一端に設けられた孔９にはガス吹込管を接続する金属ソ
ケット６を埋め込み、浸漬ノズルを得た。このようにし
て製造された浸漬ノズルは、通常120トン鋳造するとノ
ズル吐出口部の閉塞を起こすブルームCCにおいて180ト
ンの鋳造を行った場合にあっても、吐出口の閉塞を何等
起こすことなく鋳造することが可能になった。

実施例４ 上記の各実施例においては、単に網状細孔４を設けた場
合を説明したが、この網状細孔４を通過するガスの分布
状態を制御するような手段を講じても良い。

第５図は、吐出孔５の上部にあたる部分に切り欠き部17
を形成した網状物4aを使用したものを示す。

この切り欠き部17によってこの部分のガス通過が遮断さ
れ、吐出孔５の上部からのガス噴出がなくなり、下部・
側部から噴出することになる。これに代わって、吐出孔
５の上部には開き目の大きい網状物を、下部には開き目
の小さい網状物を配置し、或いは吐出孔５の上部に使用
する網状物の線径を小さく、吐出孔５の下部に使用する
線径を大きくすることによって吐出孔５の下部から噴出
するガス量を吐出孔５の上部から噴出するガス量よりも
多くすることができる。

このようにしてガス噴出孔を任意の箇所に形成すること
ができ、吐出孔５の周辺からのガス噴出分布状態を任意
に制御できるため本発明の浸漬ノズルは吐出孔５におけ
る付着物の分布状態に応じて、例えば、吐出孔５下部に
付着が多い場合は当該部位からのガス噴出量を多くする
等の制御が容易となる。

〔発明の効果〕

以上に説明したように、本発明によれば、鋳造ノズルの
吐出口に、ガス吹き込み用中空室から延在する網状に連
結した細孔の開口部を臨ましているので、その吐出口が
アルミナ等の非金属介在物によって閉塞することがな
い。また、その網状に連結した細孔は、加熱時における
有機質線材の炭化，揮発は収縮により容易に成形するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明鋳造用ノズルの構造を説明するものであ
る。 第２〜４図は鋳造用ノズルの製造工程を示す例である。 第５図は他の実施例における鋳造用ノズルを示す。 1:内壁部材、2:外壁部材、3:中空室 4:網状細孔、5:吐出口 6:ガス吹込み用ソケット、7:保護層 8:ワックス、9:孔、10:ガイド筒 11:芯棒、12:ゴム型 13:アルミナ−黒鉛質坏土 14:ジルコニア−黒鉛質坏土、15:ガス導入路 16:端部、17:切り欠き部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永田 博志 福岡県北九州市八幡西区西鳴水２丁目１― 19 (72)発明者 井上 幸生 福岡県北九州市門司区柳町１丁目８―19 (56)参考文献 特開 昭50−23332（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−102357（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−93545（ＪＰ，Ａ) 特公 昭57−20057（ＪＰ，Ｂ２)

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ノズル本体の軸線方向に網状細孔を内蔵配
   置し、同網状細孔をノズルの吐出口に開口してなる浸漬
   ノズル。
2. 【請求項２】未焼成の耐火材からなるノズル本体に、有
   機質の線材からなる網状体を、ノズル本体の軸線方向に
   形成したガス吹き込み用環状中空室に連続する状態で内
   蔵配置し、同ノズル本体を加熱して前記有機質の線材か
   らなる網状体を炭化，揮発又は収縮させることにより前
   記内蔵配置箇所に網状細孔を形成した後、ノズル本体に
   穿孔加工を施して前記網状細孔が開口する吐出口を形成
   する浸漬ノズルの製造方法。