JPH0717983B2 - 高窒素ステンレス鋼焼結体の製造方法 - Google Patents

高窒素ステンレス鋼焼結体の製造方法

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JPH0717983B2
JPH0717983B2 JP63206716A JP20671688A JPH0717983B2 JP H0717983 B2 JPH0717983 B2 JP H0717983B2 JP 63206716 A JP63206716 A JP 63206716A JP 20671688 A JP20671688 A JP 20671688A JP H0717983 B2 JPH0717983 B2 JP H0717983B2
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禎公 清田
純一 太田
正和 松下
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【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、粉末治金法によって製造される高密度で、か
つ耐食性に優れた高窒素ステンレス鋼焼結体の製造方法
に関する。さらに詳しくは、外装部品に適用可能な優れ
た外観を有する耐食性に優れた高窒素ステンレス鋼焼結
体の製造方法に関する。
<従来の技術> 近年、粉末治金法による焼結部品の製造は著しい伸びを
示し、焼結部品の適用範囲が広がりつつある。なかで
も、ステンレス鋼を用いた自動車部品、電子・電気部
品、事務用部品は、形状の複雑化に伴い、製造方法も切
削加工法から粉末治金法に置き換えられつつある。
しかし、粉末治金法で製造された焼結合金には気孔が存
在し、この気孔が、耐食性や機械的特性、外観等を損ね
る欠点があった。このため、焼結合金の密度はできるだ
け高いことが必要で、一般的には密度比92.0%以上が、
外装部品では密度比96.0%以上が望まれている。
<発明が解決しようとする課題> ステンレス鋼焼結体の高密度化と耐食性の向上のため
に、各種の方法が提案されている。
例えば、の液相焼結を行うことによって高密度化を計
り、同時に耐食性を向上させるもの、高温、高圧下
(熱間等方圧加圧、HIP)で一次焼結体を再焼結するこ
とによって高密度化を図り、同時に耐食性を向上させる
もの、比較的低圧(70〜200kgf/cm2)で一次焼結体を
加圧焼結することによって高密度化を図り、同時に耐食
性を向上させるもの等がある。
また、焼結体中に、窒素を含有させる方法として、特
開昭53−125207に開示されているように、高窒素のステ
ンレス鋼の原料粉末を用いること、また、文献“CONTRO
L OF NITROGEN ABSORPTION AND SURFACE OXIDATION OF
AVSTENITIC STAINLESS STEELS IN N2−N2 ATMOSPHERES"
(Robert H,shay;1983 Annual Powder Metallurgy Conf
erence proceedings,P.411,Edited by Harbs.Nayar)で
は、H2−N2中での焼結法が開示されている。
の方法は、耐食性を改善するためにステンレス鋼粉に
他の合金元素を添加し、液相を出現させて高密度化を図
るものである。
例えば、特開昭58−213859号で示されているように、Co
やBが添加されており、焼結中にCoやBを含む液相が生
じて気孔を埋めるように、CoやBを基地中に分散した焼
結材料がある。しかし、Coは高価な金属であるため、製
品のコスト高を招き、粉末治金の長所である経済性が損
なわれる。
また、特開昭61−253349号に示されているように、Pを
添加し、同様に液相を出現させて高密度化した焼結ステ
ンレス鋼も提案されている。しかし、Pの固溶した液相
部が冷却後に脆弱な相として残るために、機械的特性が
劣化する。
従って、このような合金元素を添加し、液相焼結するこ
とによって高密度化する手法は回避されなければならな
い。
の方法は、セラミックスの焼結体製造方法として開発
された方法であるが、近年は、金属の焼結体製造にも応
用されている。具体的には、圧力媒体としては、普通は
Arガスを用い、1000〜2000気圧、1300〜1500℃の条件下
で一次焼結体を再焼結し、緻密な焼結体とする方法であ
る。
この方法により、焼結体の高密度化と耐食性の向上を図
ることができるが、1000〜2000気圧の圧力を得るために
は特別な装置が必要であり、コストが非常に高くなる。
の方法は、US.Pat.No.4591482(公表公報昭63−50087
4)に開示されている。具体的には、70〜211kgf/cm2
比較的低圧下、1350℃付近の温度で一次焼結体を再焼結
し、緻密な焼結体とする方法である。
本発明者らがこの方法を追試したところ、焼結体の高密
度化は達成されるが、脱炭反応(C+O→CO)の前に焼
結が進むため、焼結体中からCが除去されず、従って、
低炭素のステンレス鋼を得ることはできないことが明ら
かとなった。
原料粉末として低炭素のステンレス鋼粉を用い、圧縮成
形によって成形された成形体を焼結する場合には有用な
方法であるが、鋼粉を結合剤と共に射出成形し、結合剤
を除去したものを焼結するという製造方法に適用する
と、焼結前の成形体に約0.5%以上の割合で残留してい
るCを除去できない。即ち、低炭素の焼結体を得ること
はできない。
そのために、再焼結時に液相が出現して気孔が粗大化し
たり、FeやCrの炭化物が生成されるために低Cr帯が生
じ、耐食性が劣化することがある。
の前者については、マルテンサイト系ステンレス鋼焼
結体に関するものであるが、オーステナイト系ステンレ
ス鋼焼結体に適用したとする。前述したように、射出成
形法においては焼結前に約0.5%の炭素を含有してい
る。
真空中で焼結したときには、C+O→CO反応により脱炭
されるが、このとき焼結体中の窒素も脱窒される。
水素中で行った場合には脱窒は起きないが、脱炭も起き
ない。したがって、射出成形法において、その原料粉末
中の窒素濃度を高くすることは意味がない。
また前述の文献に開示されているように、N2−N2雰囲気
中で焼結すると、同様に脱炭が困難である。また、鋼粉
には、通常0.3%程度の炭素が含有されている。この酸
素は、多くは、Crの酸化物で存在している。これを還元
するためには、露点をかなり低くしなければならない。
文献に開示されているように、露点を低くするとNが多
量に含有され、耐食性に悪影響をおよぼす。
したがって、文献に開示されている方法では、高窒素で
あるが、高酸素のステンレス焼結体しか、製造すること
ができず、高耐食性のステンレス焼結体は得られない。
以上述べてきたように、ステンレス鋼焼結体の高密度化
と耐食性の向上のために提案されている方法は、いずれ
も満足なものではない。
そこで、本発明は、ステンレス鋼粉以外に合金鋼粉を添
加せず、再圧縮、再焼結の工程を行うこともなく、特別
な装置を必要とせず、96.0%以上の密度比を有する外観
と耐食性に優れた高窒素ステンレス鋼焼結体の製造方法
を提供することを目的とする。
<課題を解決するための手段> 本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、ステンレス鋼
粉と結合剤とを混練したものを成形した後、真空焼結と
N2を含む不活性混合ガス雰囲気中での加圧焼結を併用す
ることにより、高密度で、C量は低く、かつNは高濃度
に含有するステンレス鋼焼結体を得ることができ、その
結果、高度の耐食性を有する焼結体を得るに至ったもの
である。
本発明は、 Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 C :0.05重量%以下、 N :0.05〜0.40重量%、 を含み、残部Feおよび不可避的不純物元素とからなる組
成を有し、密度比96.0%以上の高窒素ステンレス鋼焼結
体を製造するに際し、 Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 を含み、残部が不可避的不純物および鉄からなるステン
レス鋼粉を用い、該鋼粉に結合剤を添加混合して成形し
た後、該成形体中の結合剤を非酸化性雰囲気中で加熱し
て除去し、続いて、温度1050〜1250℃、圧力0.1 Torr以
下の減圧下で焼結し、さらに、温度1250〜1400℃で、N2
を含む不活性混合ガス雰囲気中で、その全圧が5atm以上
で焼結することを特徴とする高窒素ステンレス鋼焼結体
の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、 Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 Mo:0.5〜4.0重量%、 C :0.05重量%以下、 N :0.05〜0.40重量%、 を含み、残部Feおよび不可避的不純物元素とからなる組
成を有し、密度比96.0%以上の高窒素ステンレス鋼焼結
体を製造するに際し、 Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 Mo:0.05〜4.0重量% を含み、残部が不可避的不純物および鉄からなるステン
レス鋼粉を用い、該鋼粉に結合剤を添加混合して成形し
た後、該成形体中の結合剤を非酸化性雰囲気中で加熱し
て除去し、続いて、温度1050〜1250℃、圧力0.1 Torr以
下の減圧下で焼結し、さらに、温度1250〜1400℃で、N2
を含む不活性混合ガス雰囲気中で、その全圧が5atm以上
で焼結することを特徴とする高窒素ステンレス鋼焼結体
の製造方法を提供するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法で製造される高窒素ステンレス鋼焼結体
は、 Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 C :0.05重量%以下、 N :0.05〜0.40重量% を含み、または、上記成分の他にさらにMoを0.5〜4.0重
量%を含み、残部Feおよび不可避的不純物元素とからな
る。
本発明の方法で製造される高窒素ステンレス鋼焼結体組
成中のCr、Ni、C、N、Moは、耐食性を左右する重要な
元素であり、各々の含有量は、以下の理由によって限定
される。
Cr:Crは、その含有量が高いほど耐食性は向上する。含
有量が16重量%未満では、所望の耐食性が得られず、一
方、25重量%を超えて添加しても、それ以上の顕著な効
果の向上は認められず、コストの点で不利となる。さら
に、Cr含有量が高いと、シグマ脆性、475℃脆性といっ
た問題が生ずる。
Ni:Niは、オーステナイト相を安定化させるために必要
な元素である。オーステナイト相が安定化すると、耐食
性および靱性等の機械的特性が向上する。含有量が6重
量%未満では、安定なオーステナイト相の生成能が乏し
く、耐食性が劣化する。一方、20重量%を越えて添加し
ても、それ以上の顕著な効果の向上は認められず、コス
トの点で不利となる。
C:Cは、その含有量が低いほど耐食性は向上する。含有
量が0.05重量%を越えると、液相が出現して気孔が粗大
化したり、FeやCrの炭化物が生成されるために低Cr帯が
生じ、耐食性が劣化する。
N:Nは、ポアーの存在する焼結体の耐孔食性を著しく改
善する元素である。含有量が0.05重量%未満ではその効
果は小さく、一方、0.4重量%を越えると、Cr窒化物が
生成されるために低Cr帯が生じ、耐食性が劣化する。
Mo:Moは、耐食性、耐酸化性改善に有効な元素である。
含有量が0.5重量%未満では効果がなく、4重量%越え
て添加しても、それ以上の顕著な効果の向上は認められ
ず、コストの点で不利となる。
尚、上記の通り、Moは耐食性、耐酸化性改善に有効な金
属であるから、Moを含有する高窒素ステンレス鋼焼結体
は、より耐食性、耐酸化性に優れる。
また、本発明の方法で製造される高窒素ステンレス鋼焼
成体は、密度比が96.0%以上である。
焼結体の密度比は、耐食性に直接影響を及ぼす因子であ
る。密度比が92.0%未満の焼結体では、残留気孔が完全
に閉塞化されてなく、表面と内部の気孔が一部連通して
いると予想され、試料内部も常に試料外部の厳しい腐食
環境にさらされることになり、耐食性が不十分となる。
さらに、92.0%未満では、一般に残留気孔系が大きくな
っており、これも耐食性に悪影響を及ぼす。従って、密
度比が92.0%以上であれば、一般的な用途に十分耐えう
る。
しかし、本発明の方法で製造される高窒素ステンレス鋼
焼結体は、特に外装部品に必要とされるさらに高度の耐
食性と鏡面性とを有するものであり、これらの特性は、
密度比96.0%以上でなければ達成されない。
次に、本発明の高窒素ステンレス鋼焼結体の製造方法に
ついて説明する。
本発明の方法は、Crを16〜25重量%、Niを6〜20重量%
含み、残部が不可避的不純物および鉄からなるステンレ
ス鋼粉を用い、または、Crを16〜25重量%、Niを6〜20
重量%、Moを0.5〜4.0重量%含み、残部が不可避的不純
物および鉄からなるステンレス鋼粉を用い、該鋼粉に結
合剤を添加混合して成形した後、該成形体中の結合剤を
非酸化性雰囲気中で加熱して除去し、続いて、温度1050
〜1250℃、圧力0.1torr以下の減圧下で焼結し、さら
に、温度1250〜1400℃で、N2を含む不活性混合ガス雰囲
気中で、その全圧が5atm以上で焼結を行う。
尚、原料としてMoを0.5〜4.0重量%を含む鋼粉を用いる
後者の方法では、一層好ましい特性の焼結体が得られ
る。
本発明の方法において、原料鋼粉中のCr、Ni量を規定す
るのは、本発明の方法で製造される高窒素ステンレス鋼
焼結体が、密度比96.0%以上となり、高耐食性をなるた
めに必要だからである。
本発明の方法では、上記の鋼粉を用い、まず成形を行う
が、鋼粉だけでは複雑な形状に成形しにくく、また、成
形時にラミネーションや割れ等の欠陥が生じる。それ
で、成形をし易くするためと、上記の欠陥が生じないた
めに、結合剤を添加混合した後に成形を行う。熱可塑性
樹脂および/またはワックスを主体とする結合剤を使用
し、必要に応じて可塑剤、潤滑剤および脱脂促進剤など
を添加する。
熱可塑性樹脂としては、アクリル系、ポリエチレン系、
ポリプロピレン系およびポリスチレン系等があり、ワッ
クス類としては、密ろう、木ろう、モンタンワックス等
に代表されるような天然ろう、および低分子ポリエチレ
ン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワック
ス等に代表されるような合成ろうがあるが、これらから
選ばれる1種あるいは2種以上を用いる。
可塑剤は、主体となる樹脂あるいはワックスとの組合せ
によって選択するが、具体的には、フタル酸ジ−2−エ
チルヘキシル(DOP)、フタル酸ジ−エチル(DEP)、フ
タル酸ジ−n−ブチル(DHP)等があげられる。
潤滑剤としては、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エ
ステル等があげられ、場合によっては、ワックス類を潤
滑剤として兼用する。
また、脱脂促進剤として、樟脳等の昇華性物質を添加す
ることもできる。
尚、結合剤の量は、後工程の成形法によって異なり、射
出成形では10重量%程度である。
鋼粉とバインダとの混合・混練には、バッチ式あるい
は、連続式のニーダが使用でき、バッチ式ニーダの中で
は加圧ニーダやパンバリーミキサー等が、また、連続式
ニーダの中では2軸押出し機等がそれぞれ有利に適合す
る。そして、混練後、必要に応じてペレタイザーあるい
は粉砕機等を使用して造粒を行い、成形用コンパウドを
得る。
成形は、射出成形が好ましい。
射出成形は、プラスチック用射出成形機、金属粉末用射
出成形機等、通常の射出成形に用いられる射出成形機を
用いて行なえばよい。
この際において、射出圧力は、通常500〜2000kgf/cm2
度である。
成形後、結合剤を除去するため、非酸化性雰囲気中で加
熱する。このときの昇温速度は5〜30℃/hrとする。非
酸化性雰囲気中で加熱するのは、酸化性雰囲気で加熱す
ると、過度に酸化され、つぎの焼結工程で還元が困難に
なるためである。また、この時の昇温速度を速くしすぎ
ると、得られた成形体に割れや膨れが生じるので好まし
くない。
結合剤を除去した後、焼結を行なう。前工程の加熱処理
終了時、結合剤の一部が残留しているが、焼結により、
残留結合剤中の炭素とステンレス鋼粉の表面に存在する
酸化被膜中の酸素との反応を促進させ、最終焼結体中の
C量を減少させる。その際、結合剤の除去程度を加減す
るか、あるいは除去後に酸化処理を行い、C/Oモル比を
最適値に、好ましくは0.3〜3.0に調節する。
第一段の焼結は、温度1050〜1250℃圧力0.1Torr以下の
条件で行う。ここで、温度および圧力条件は、本発明に
用いる原料鋼粉中に含まれるCrの挙動と関連して規定さ
れたものである。
即ち、材料の表面は、腐食環境に接している箇所であ
り、最も優れた耐食性が要求されるが、高度の耐食性を
得るためには、Crが特に重要である。Crの蒸気圧は、13
00℃で10-3Torrより高く、減圧焼結においては、減圧度
によってはCrが蒸発して表面のCr濃度が低下し、耐食性
が著しく劣化する。そこで、Cr蒸発を抑制し、Cr濃度分
布を不均一化しないようにすることが肝要である。この
ことは、本発明の焼結条件によって達成される。
また、本発明は、減圧焼結を行うので、通常の焼結工程
で用いられている水素雰囲気下における焼結に比べ、含
有Cの作用により容易にCr系酸化物の還元を促進させる
ことができ、その結果、高密度の焼結体を得ることがで
きる。
焼結作用は、鋼粉同士の接触点から始まり、金属原子の
固体拡散によって進行するが、鋼粉表面が酸化物で覆わ
れている場合は、金属原子の拡散が遮られて緻密化が進
まず、焼結体の高密度化が達成されない。つまり、高密
度を得るためにCr系酸化物を還元する必要があり、その
ために、減圧下(0.1Torr以下)で焼結を行う。このと
き、圧力が0.1Torrを超えるとC+O→COの反応が起こ
りにくくなり、鋼中は、C、Oがこりやすくなるためで
ある。また、温度1050℃未満では、Cr系酸化物の還元が
十分なされないため、酸化物が残留し、その後の焼結を
阻害する。一方、1250℃を超えると、脱炭が進まないう
ちに焼結が進んでしまい、結果として、焼結体中のC量
が多くなるので好ましくない。
第2段の焼結は、温度1250〜1400℃で、N2を含む不活性
混合ガス雰囲気中で、その全圧が5atm以上で行う。ここ
で、高窒素化および高密度化を達成させる。
前段階の低温の減圧焼結で鋼粉同士の接触点ができ、焼
結が始まっているが、さらに高温にすることにより、金
属原子の固体拡散を促進させて焼結を進め、残留気孔の
微細化と球状化を図る。この際の温度が1250℃未満で
は、焼結体の密度比の向上は顕著ではなく、また、前段
階の減圧下での焼結中に蒸発して減少した鋼粉表面のCr
を、内部からの拡散により補なうことができない。一
方、1400℃を超えて焼結した場合、一部分、融解し、形
状が崩れやすくなる。
ここでは、N2を含む不活性ガス雰囲気中で焼結を行う
が、N2は焼結体の高窒素化のために使われ、不活性ガス
は、焼結体の酸化を防ぐ役割を果たす。混合ガス中のN2
は、体積%で15%以下が好ましい。
さらに、この工程は、5atm以上の加圧下で行うが、圧力
が5atm未満であると、焼結による高密度化の効果が小さ
くなり、密度比96.0%以上の焼結体が得られない。
尚、ここまでの工程において、不活性ガスとはAr、He等
のガスであり、非酸化性雰囲気を作るために用いるガス
は、不活性ガスのほか、CH4、C3H8等の還元ガス、N2
たは燃焼排ガス等である。
<実施例> 本発明を、実施例に基づき具体的に説明する。
(実施例) 原料粉末として、Cr:18.1重量%、Ni:8.5重量%、C:0.0
3重量%、N:0.02重量%を含み、残部Feおよび不可避的
不純物元素とからなる組成を有するステンレス鋼(a)
と、原料粉末として、Cr:17.5重量%、Ni:12.6重量%、
Mo:2.5重量%、C:0.02重量%、N:0.02重量%を含み、残
部Feおよび不可避的不純物元素とからなる組成を有する
ステンレス鋼粉(b)とを用意した。これらを各々分級
し、平均粒径12μmに調整した後、熱可塑性樹脂として
ポリエチレン4重量%と、ワックスとしてパラフィンワ
ックス8重量%とを加え、加圧ニーダを用いて混練し
た。これを、射出温度150℃、射出圧力:1000kgf/cm2
射出成形を行い、40mm×20mm×2mmの成形体とした。つ
ぎに、Ar雰囲気中で、10℃/hrの昇温速度で600℃まで昇
温し、さらに保持して結合剤を除去した。さらに、1000
〜1300℃まで昇温し、圧力10-4Torrまたは1Torrで1時
間保持した後、温度を1200℃とし、N2量が1体積%また
は5体積%(他はAr)の雰囲気中で、全圧3atm、5atmま
たは50atmで2時間保持し、焼結体を得た。
冷却後、アルキメデス法による密度および真密度より密
度比を求め、また、焼結体中のC、N量を、それぞれ、
燃焼赤外線吸収法、不活性ガス融解熱伝導度法によって
分析した。Cr、Ni、Moについては、原料粉末中の組成と
ほぼ同様であるので、特に分析は行わなかった。
焼結体の外観は、肉眼にて観察した。
さらに、耐食性を評価するために、焼結体を温度50℃の
人工汗中に24時間放置した後、錆の発生の有無を実体顕
微鏡で観察した。錆が全く見られない場合を良好、少し
でも発錆したり変色している場合を発錆とした。
結果は、第1表に示した。
実施例は、焼結体の化学組成、密度比、外観および耐食
性に対する焼結条件の影響を検討したものである。
本発明例では、いずれも、得られた焼結体の化学組成お
よび密度比は適当であり、外観および耐食性は良好であ
った。一方、比較例は、得られた焼結体の化学組成また
は密度比が不適であり、そのために耐食性または外観が
不良であった。
第一段の焼結温度または圧力が不適当な場合(比較例1
〜3)は、得られた焼結体の密度比が適当であり、Nは
0.05〜0.40重量%の範囲にあったが、Cが0.05重量%超
であるため、Cr炭化物が生成して低Cr帯が生じていると
考えられ、部分的な耐食性低下によると思われる錆の発
生があった。加えて、比較例1、3は、各々焼結時の温
度が低く、または減圧不足のために、Cr系酸化物の還元
が不十分であると考えられ、そのために金属原子の固体
拡散が不十分であると考えられ、焼結体は脆い。
第二段の焼結温度または圧力が不適当な場合(比較例
4、5)は、焼結温度または圧力が低いために、得られ
た焼結体の密度比は96.0%未満となった。
そのために、外観が鏡面とならなかった。
<発明の効果> 本発明により、ステンレス鋼粉以外に合金鋼粉を添加せ
ず、再圧縮、再焼結の工程を行うこともなく、特別な装
置を必要とせずに、96.0%以上の密度比を有する外観と
耐食性に優れた高窒素ステンレス鋼焼結体の製造方法が
提供される。
本発明の方法で製造される高窒素ステンレス鋼焼結体
は、外観、耐食性および機械的性質に優れており、外装
部品等過酷な条件下に供される材料として、広く使用す
ることができる。
本発明の高窒素ステンレス鋼焼結体の製造方法は、本発
明の方法に示した原料を用い、減圧下での焼結と、N2
含む不活性混合ガス雰囲気中での加圧焼結との二段の焼
結工程を経るが、容易に実施することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/00 304 38/40 38/44 (72)発明者 松下 正和 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内 (72)発明者 桜田 一男 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内 (56)参考文献 特開 昭60−224753(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 C :0.05重量%以下、 N :0.05〜0.40重量%、 を含み、残部Feおよび不可避的不純物とからなる組成を
    有し、密度比96.0%以上の高窒素ステンレス鋼焼結体を
    製造するに際し、 Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 を含み、残部が不可避的不純物および鉄からなるステン
    レス鋼粉を用い、該鋼粉に熱可塑性樹脂および/または
    ワックスを主体とする結合剤を添加混合して射出成形し
    た後、該成形体中の結合剤を非酸化性雰囲気中で加熱し
    て除去し、続いて、温度1050〜1250℃、圧力0.1 Torr以
    下の減圧下で焼結し、さらに、温度1250〜1400℃で、N2
    を含む不活性混合ガス雰囲気中で、その全圧が5atm以上
    で焼結することを特徴とする高窒素ステンレス鋼焼結体
    の製造方法。
  2. 【請求項2】Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 Mo:0.5〜4.0重量%、 C :0.05重量%以下、 N :0.05〜0.40重量%、 を含み、残部Feおよび不可避的不純物とからなる組成を
    有し、密度比96.0%以上の高窒素ステンレス鋼焼結体を
    製造するに際し、 Cr:16〜25重量%、 Ni:6〜20重量%、 Mo:0.5〜4.0重量% を含み、残部が不可避的不純物および鉄からなるステン
    レス鋼粉を用い、該鋼粉に熱可塑性樹脂および/または
    ワックスを主体とする結合剤を添加混合して射出成形し
    た後、該成形体中の結合剤を非酸化性雰囲気中で加熱し
    て除去し、続いて、温度1050〜1250℃、圧力0.1 Torr以
    下の減圧下で焼結し、さらに、温度1250〜1400℃で、N2
    を含む不活性混合ガス雰囲気中で、その全圧が5atm以上
    で焼結することを特徴とする高窒素ステンレス鋼焼結体
    の製造方法。
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