JPH07145547A - 人工芝およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、ソフトで易滑性の球転がりのよい表
面タッチの改善された人工芝およびその製造方法を提供
せんとするものである。本発明によれば、サッカー等の
スポーツ用グランドとしてより好適なものを提供するこ
とができる。 【構成】本発明の人工芝は、断面が太細形状の数珠状扁
平モノフィラメントパイルが植毛されてなるカットパイ
ル人工芝であって、かつ、該カットパイルの葉部先端が
複数に分割されていることを特徴とするものであり、ま
た、かかる人工芝の製造方法は、断面が太細形状の数珠
状扁平モノフィラメントパイルを基布に植毛してカット
パイル人工芝を形成した後、該パイルに衝撃を与えて、
該パイル葉部の少なくとも先端を複数に分割することを
特徴とするものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ソフトで易滑性の球転
がりのよい表面タッチの改善された人工芝およびその製
造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、スポーツ人口の増大とともにスポ
ーツ施設の充実が計られている。従来スポーツ施設の表
面材はクレーやアンツカーや天然芝が主流であった。し
かしそうした天然の表面材はメンテナンスが大変である
こと、また天然芝の場合プレーによる痛みがひどく頻度
の高い利用には無理があった。そこで数多くの人工の全
天候型表面材が開発されてきた。それらはメンテナンス
フリーで快適なスポーツ空間を提供している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、人工表面材は
コストの制約からクレーやアンツカーや天然芝の人体に
優しい特性が必ずしも十分に発揮されていないのが実情
である。人工表面材の中で特に天然に近い外観、特性を
有するのが人工芝である。サッカーなどの従来天然芝で
行われていたスポーツでは、ボールの転がり特性やスラ
イディング等のプレー性から、人工芝が好適な表面材で
あると言える。しかし、従来のスポーツ用人工芝は、耐
久性を重視するあまり、人工芝のパイルの繊度を大きく
し、厚くし、そのため表面タッチが大変硬いものになる
傾向があって、たとえばテニスなどプレーヤーの肌に芝
が直接触れるチャンスの少ないスポーツでは問題なかっ
たが、サッカーのようにスライディングや転倒の多いス
ポーツでは、チクチク感があって、肌触りが硬く、すり
傷などの負傷を起こし易いものであった。一方、パイル
の繊度が小さい場合、すなわち断面厚さが薄く柔らかな
場合、パイルに腰がないためパイルがしっかり立毛せ
ず、貧弱な外観になり、耐摩耗性も大変悪化する問題が
あった。

【０００４】本発明は、かかる従来人工芝の固い表面タ
ッチを改善し、ソフトで易滑性の球転がりのよい表面タ
ッチの改善された人工芝およびその製造方法を提供せん
とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、上述の課題を
解決するために次のような手段を採用する。

【０００６】すなわち、本発明の人工芝は、断面が太細
形状の数珠状扁平モノフィラメントパイルが植毛されて
なるカットパイル人工芝であって、かつ、該カットパイ
ルの葉部先端が複数に分割されていることを特徴とする
ものであり、また、かかる人工芝の製造方法は、断面が
太細形状の数珠状扁平モノフィラメントパイルを基布に
植毛してカットパイル人工芝を形成した後、該パイルに
衝撃を与えて、該パイル葉部の少なくとも先端を複数に
分割することを特徴とするものである。

【０００７】

【作用】本発明の人工芝の葉部を構成するパイル素材
は、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレ
ン、ナイロン６、６６、塩化ビニリデン、ナイロン共重
合物、ポリエステル、またはこれらポリマーのブレンド
品などを使用することができるが、中でも、異種ポリマ
ーのブレンド品や硬いポリマー、たとえばポリプロピレ
ン、ポリエステルなどが分割のし易さに優れている点で
好ましい。異種ポリマーのブレンド品としては、たとえ
ばポリプロピレンとナイロン、ポリエチレン、ポリエス
テルとナイロン等の組み合わせがよい。ブレンドの組合
わせ比率に特に制限はないが、たとえば、ポリプロピレ
ンの場合では、ポリプロピレンの比率が５０〜９０％程
度のパイルは比較的硬く、それが１０〜５０％のパイル
は比較的柔らかくしなやかで且つ耐久性の良好なパイル
を提供することができる。かかるモノフィラメントパイ
ルの分割される前の一本の繊度は、好ましくは少なくと
も３００デニール、さらに好ましくは５００〜９００デ
ニールの範囲のものがよい。

【０００８】本発明の人工芝は、かかる特定なパイルを
タフトにより形成されたもの、あるいはダブルラッセル
編機により編成し、中央部をカットして得られるものな
ど、カットパイルにより構成されるものである。

【０００９】本発明の人工芝に用いられるモノフィラメ
ントパイルの断面は、偏平状で、太細の凹凸断面で、典
型的には数珠状形状を有するものである。かかる凹凸
は、好ましくは少なくとも５個、さらに好ましくは６〜
８個の凸部を有する数珠状形状のものがよい。しかも、
本発明の人工芝の最終製品では、該パイルからなる葉部
は、その先端が複数に分割されている点に特徴を有す
る。分割の数は多いほど好ましいが、特に人工芝を構成
するパイルの５０％以上のパイルが、それぞれのパイル
が有する凸部個数の少なくとも７０％が分割されている
場合、優れた上述効果を達成するものである本発明の基
本的な思想を図１により説明する。図でわかるように、
人工芝の葉の部分の基布に固定されている部分、すなわ
ち、本発明の数珠状扁平モノフィラメントパイルは、根
元の部分１は大きな繊度を維持し、しっかりとした幹の
構造を有しているが、葉の先端部分２は分割されて、細
繊度化されている。かかる形状とすることによって、腰
があるにも拘らず天然の芝の有するソフトで易滑性のあ
る性質を付与し得たものである。本発明の該パイルから
なる人工芝は根元部分１が太いので、立毛性がよく、し
っかりした弾性のある丈夫な人工芝を提供することがで
きる。また、先端部２が分割され、実質的に細繊度パイ
ルになっているので、肌に触れた感覚が極めてソフト
で、スライディングした時の人体への損傷も軽減される
特徴を発揮するものである。

【００１０】本発明でいう、パイルが複数に分割された
状態とは、たとえば、後述の図２のような針状物で擦過
して分割したもので、場合によっては、擦過して形成さ
れた傷痕跡を有するものである。かかる分割の数には制
限はないが、分割数が多いほど、また、細繊度であるほ
ど、ソフトで易滑性のある性質を増大させることがで
き、天然芝の性質に近いものを提供することができる。
葉部の分割葉は、いろいろな太さのものが混在していて
もよい。

【００１１】かかる分割葉は、上述の扁平モノフィラメ
ントパイルの断面が、図３のような数珠状形状のものが
好ましいが、たとえば、複数の凸状筋を有する形状また
は扁平断面に複数の溝状筋を有するものなどの原糸形状
を有するものであってもよい。かかる扁平モノフィラメ
ント（原糸デニール＝３００〜９００デニール）から、
たとえば１デニール程度の細繊度から３００デニールの
範囲でランダムな太さを有する分割葉が形成される。さ
らに具体的に説明すると、４１５デニールの扁平モノフ
ィラメントは、０．７〜０．８mmの巾で、厚さ１００μ
を有するものであり、人工芝の葉全体の少なくとも７０
％は、５０〜１５０デニールの分割葉で構成されたもの
となる。

【００１２】本発明の太細断面の数珠状扁平モノノフィ
ラメントパイルは、図３のように、太い部分６と薄い部
分７を有する扁平糸であるが、太細断面の最大と最小の
厚さの比が好ましくは１．５以上であり、また、最小の
厚さが、好ましくは０．０５mm以下、さらに好ましくは
０．０３mm以下であるパイルを用いることにより、容易
でかつ分割される部分が比較的薄い部分に集中した分割
葉を有するパイルを提供することができる。太細の繰り
返し数は、多い程割繊しやすく、好ましくは０．２mm以
下、さらに好ましくは０．１mm以下の繰り返し単位で繰
り返されているものがよい。このようなパイル設計にす
ることにより、分割性（割繊性）に優れたパイルを提供
することができる。

【００１３】かかる分割葉を形成する方法としては、た
とえば、図２のような割繊用ロールのような衝撃機構を
有するものが使用される。かかる衝撃機構を有する手段
としては、図２の針状物で擦過する手段、棒状体で打撃
する手段および強撚する方法から選ばれた少なくとも１
種の手段を採用することができる。特に好ましくは針状
物で擦過する手段が簡便で、かつ本発明の目的を安定、
かつ確実に達成できる点で好ましい。

【００１４】本発明の人工芝は、上述の特定な数珠状扁
平モノフィラメントパイルを基布に植毛してカットパイ
ルを形成した後、このカットパイル３を多数の針状物４
により衝撃を与えて割繊し、人工芝の葉の部分の、好ま
しくは途中から先端部まで複数に分割する方法が採用さ
れる。この方法は、多数の針状物４が円周上に多数植え
込まれたロール５を高速度で回転させ、その針状物４の
先端をカットパイル３に突き刺さし、回転力によりパイ
ルを引き裂く方法である。使用する針状物については、
特に制限はないが、剛性が高くしっかりした、焼き入れ
鋼、ステンレススチール等の材質でつくられたものの方
が割繊効率がよいので好ましい。針の先端は鋭利である
ほどよいが、上述のように割繊しやすいように設計され
たパイルであれば、それほど鋭利である必要はない。

【００１５】また、人工芝のパイル表面に、シリコン変
性物を付着処理すると、優れた易滑性を有する人工芝を
提供することができ、さらに天然芝のような感触を付与
することができる。また、安全性も向上し、擦り傷や火
傷の発生を抑制する効果を発揮する。かかるシリコン変
性物としては、アミノ変性、エポキシ変性またはアルキ
ル変性のシリコン等を使用することができる。かかるシ
リコン変性物の塗布量は、好ましくは平方メートルあた
り３０〜２５０グラムが好ましい。また、かかるシリコ
ン変性物の付着処理は、人工芝のバッキイング材の乾燥
工程で塗布し、１００〜１３０℃の乾燥機で乾燥して固
定せしめる方法を採用するのが好ましい。また、該人工
芝の滑性が経時的に減少した場合は、その都度、常温硬
化型の上記シリコン変性物を塗布するのが好ましい。

【００１６】

【実施例】次に実施例により、本発明をさらに詳しく説
明する。

【００１７】実施例１、２ ナイロン６６のモノフィラメントで単糸の繊度が４００
デニールで断面形状が図３の円形部とそれをつなぐ部分
からなるものでつなぎの部分の厚みが３５ミクロンのも
のを用い、総デニール３、２００デニールとし、３本引
き揃え、１００回／m の撚りをいれ、１５０℃のスチー
ムでセットした。この糸を用い、タフトし、人工芝を形
成した。引き続き、裏面にはバッキング材としてスチレ
ンーブタジエンーラバーのエマルジョンを塗布したもの
で、パイル側にはアミノ変性シリコン、１００ g／ m²
割合でスプレーした人工芝と、スプレーしない人工芝を
用意し、しかる後、これらの人工芝を１３０℃の加熱炉
で乾燥した。これらの人工芝のパイル部分を図２に示す
針を植え込んだロールを５００ｒｐｍの高速で回転させ
て衝撃を与えて、割繊を行った。この２種類の人工芝
を、いずれもサッカーフィールドに敷設した。

【００１８】その結果、プレーヤーの評価はいずれの場
合もソフトで好評であった。スライディング性について
はシリコン処理品が良好との評価であったが、シリコン
なしでも通常のプレーには何の問題もないとの結果であ
った。

【００１９】実施例３、４ ポリプロピレンの６００デニールのモノフィラメントで
断面形状が実施例１と同様とした。通常の方法によりタ
フティングし、カットパイル人工芝を作成した。次いで
ＳＢＲラテックスによりバッキング加工を行った。バッ
キングの乾燥のための１３０℃に設定した加熱炉通過さ
せたが、その直前に該人工芝パイル側にアミノ変性シリ
コンを１３０ g／ m² 散布した。このパイルを通常の起
毛機のブラシで叩いたところ、極めて容易に分割でき
た。出来上がった人工芝は外観も触感も大変ソフトなも
のであった。

【００２０】また、実施例４として、同じ糸の総繊度６
０００デニールの糸として、これに２５０回／m の撚を
入れ、セット・タフトして人工芝を作成した。この人工
芝は強い撚によりカットパイルのカット部分が、すでに
複数に分割されたパイルとなっていた。この人工芝も実
施例３と同様にソフトな感触のものであった。

【００２１】

【発明の効果】本発明の人工芝は、豊かな弾性があるに
もかかわらず、表面のタッチが極めてソフトで、易滑性
に富み、スライディングや転倒しても擦り傷、火傷の発
生が抑制される安全な人工芝を提供することができる。
したがって、本発明によれば、サッカー等のスポーツ用
グランドとして、より好適な人工芝を提供することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この図は、本発明の人工芝を構成する芝の葉部
を示す模式図である。

【図２】この図は、本発明の人工芝の葉部の先端を分割
する方法の一例を示す模式図である。

【図３】この図は、本発明に用いる原糸パイルの断面形
状の一例を示す模式図である。

【符号の説明】

１：モノフィラメントパイルの根元部 ２： 〃 先端部 ３：カットパイル ４：針状物 ５：ロール ６：モノフィラメントパイルの太い部分 ７： 〃 細い（薄い）部分

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 断面が太細形状の数珠状扁平モノフィラ
   メントパイルが植毛されてなるカットパイル人工芝であ
   って、かつ、該カットパイルの葉部先端が複数に分割さ
   れていることを特徴とする人工芝。
2. 【請求項２】 太細形状が、少なくとも５個の凸部を有
   する数珠状形状である請求項１記載の人工芝。
3. 【請求項３】 断面の太細が、その最大と最小の太細比
   が１．５以上である請求項１記載の人工芝。
4. 【請求項４】 断面の太細の最小の厚さが、０．０５mm
   以下である請求項１記載の人工芝。
5. 【請求項５】 数珠状扁平モノフィラメントパイルが、
   少なくとも３００デニールである請求項１記載の人工
   芝。
6. 【請求項６】 パイルが、シリコン変性物によりコーテ
   ィングされている請求項１記載の人工芝。
7. 【請求項７】 人工芝を構成するパイルの５０％以上
   が、凸部個数の７０％以上分割されたパイルである請求
   項１記載の人工芝。
8. 【請求項８】 断面が太細形状の数珠状扁平モノフィラ
   メントパイルを基布に植毛してカットパイル人工芝を形
   成した後、該パイルに衝撃を与えて、該パイル葉部の少
   なくとも先端を複数に分割することを特徴とする人工芝
   の製造方法。
9. 【請求項９】 衝撃を与える手段が、針状物で擦過する
   か、または、棒状体で打撃するか、または、強撚する方
   法から選ばれた少なくとも１種の手段である請求項８記
   載の人工芝の製造方法。