JPH07138648A - 方向性けい素鋼板の鉄損低減方法および低鉄損方向性けい素鋼板 - Google Patents

方向性けい素鋼板の鉄損低減方法および低鉄損方向性けい素鋼板

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JPH07138648A
JPH07138648A JP5246864A JP24686493A JPH07138648A JP H07138648 A JPH07138648 A JP H07138648A JP 5246864 A JP5246864 A JP 5246864A JP 24686493 A JP24686493 A JP 24686493A JP H07138648 A JPH07138648 A JP H07138648A
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groove
steel sheet
iron loss
annealing
oriented silicon
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JP5246864A
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Inventor
Michiro Komatsubara
道郎 小松原
Yasuyuki Hayakawa
康之 早川
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 方向性けい素鋼板表面に溝を設けて、磁区を
細分化し鉄損を低減する技術を改善する。 【構成】 方向性けい素鋼冷延板の表面に、溝を構成す
る側壁の鋼板表面に対する傾斜角が5°以上となる部分
の側壁全体に占める溝深さ方向での比が60%以上となる
形状で鋼板の圧延方向を横切る向きに延びる溝を、圧延
方向に間隔を置いて複数形成し、該溝内にAlもしくはAl
化合物を付着した後、脱炭・1次再結晶焼鈍を施して、
AlもしくはAl化合物をAl2O3 系焼結体となし、その後、
鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し最終仕上焼鈍を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鉄損の低い方向性け
い素鋼板の製造方法に関し、特に鋼板表面に溝を設け
て、磁区を細分化し鉄損を低減する技術についての開発
研究の成果を以下に述べる。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は、主として変圧器、
その他の電気機器の鉄心として利用され、その磁化特性
が優れていること、特に鉄損( 1.7Tの最大磁束密度で
50Hzの周波数で交番磁化したときの鉄損であるW17/50
や、1.5 Tの最大磁束密度で60Hzの周波数で交番磁化し
たときの鉄損であるW15/60 で代表される)の低いこと
が要求されている。このためには、第一に鋼板中の2次
再結晶粒を (110)[001] 方位、いわゆるゴス方位に高度
に揃えることが必要であり、第二には最終製品の鋼中に
存在する不純物や析出物をできるだけ減少させる必要が
ある。かかる配慮の下に製造される方向性けい素鋼板
は、今日まで多くの改善努力によって、その鉄損値も年
を追って改善され、最近では板厚 0.23mm の製品でW
17/50 の値が 0.83 W/Kg ,W15 /60 の値が 0.35 W/
1bの低鉄損のものが得られている。
【0003】鉄損低減の手法として、鋼板表面に物理的
な手段で不均一性を導入し、磁区の幅を細分化する技術
が開発された。例えば、特公昭57−2252号公報に
は、最終製品板表面に、圧延方向にほぼ直角にレーザ−
ビームを数mm間隔に照射し、鋼板表層に高転位密度領域
を導入することにより、磁区の幅を微細化し、鉄損を低
減する技術が提案されている。同様にプラズマジェット
を局部的に鋼板表層に導入し、磁区幅を微細化し、鉄損
を低減する技術も提案されている。しかしながら、これ
らの技術は鋼板の打抜き加工、せん断加工、巻き加工な
どの後に施される歪取焼鈍やコーティングの焼付け処理
などの熱処理によって導入された歪が解放されるため、
鉄損低減効果が減殺される欠点を有する。
【0004】これに対して、特開平1−211903
号、同2−294427号および同3−138318号
各公報には、最終仕上焼鈍後の鋼板表面に突起付きロー
ルを押しあてへこみを設けたり、へこみ加工による歪エ
ネルギーを利用してへこみの直下に微細結晶粒を形成さ
せ、へこみおよび微細粒の作用により、歪取焼鈍によっ
ても効果が減殺されない耐熱型磁区細分化の技術が提案
されている。しかし、これらの技術はロール表面の突起
の摩耗や破損が甚だしく、安定して効果を持続させるこ
とが困難であり、さらに突起の押しあて量の制御が難し
く、へこみ量や、付加される歪量の制御が難しいため、
すなわち、微細結晶粒の発現が安定しないところに問題
点があった。
【0005】また、特開平1−252728号公報に
は、最終仕上焼鈍後の鋼板の表面被膜を、超音波振動で
線状に除去し、その後、電解エッチングを施して、溝を
形成し、磁区細分化を行う低鉄損方向性けい素鋼板の製
造技術が開示されている。この技術は鉄損低減効果も大
きくかつ安定しているが、表面被膜がセラミックからな
るため、被膜の除去が難しく、超音波加工技術を用いて
も能率が悪く、また最終的に、余分なコーティング塗布
工程も必要とするところから、工業的に実施されるまで
に至っていない。
【0006】一方、特開平3−69968号公報には、
脱炭・1次再結晶焼鈍の前に、線状刻み目(溝)を鋼板
表面に導入し、脱炭・1次再結晶焼鈍および最終仕上焼
鈍を行って純化を促進する技術が、また特開平4−88
121号公報には最終冷延後、印刷によってエッチング
レジストを線状に塗布した後エッチングで線状の溝を形
成し、しかる後、該レジストを除去し、脱炭・1次再結
晶焼鈍および最終仕上焼鈍を行なう磁区細分化技術が、
それぞれ提案されている。
【0007】これらの技術は、最終仕上焼鈍前に溝を形
成させるため、歪取焼鈍などの熱処理に対する磁気特性
の安定化の面では優れているものの、鉄損低減効果の面
で不安定で、特にW15/60 といった中磁束密度の領域で
の鉄損低減効果において所期の目標効果が得られないこ
とがあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、最終冷延
後に溝を形成して脱炭・1次再結晶焼鈍および最終仕上
焼鈍を行なう磁区細分化技術において、しばしば鉄損の
低減効果が十分に得られない問題を解消し、安定してか
つ優れた鉄損低減効果を得る低鉄損方向性けい素鋼板の
製造方法について提案するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者らは上記目的を達
成するため、以下の実験を行った。すなわちけい素鋼の
冷延板に、幅 200μm 、深さ20μm で圧延方向と直角に
延びる溝を圧延方向に間隔4mmで繰返して形成し、脱炭
・1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し、積層して最
終仕上焼鈍を施した鋼板、および同一の冷間圧延板を
用い、溝の形成に先立ち、脱炭・1次再結晶焼鈍を行な
い、その後、焼鈍分離剤を塗布し、積層して最終仕上焼
鈍を施したのち、超音波振動および電解エッチングで幅
200μm、深さ20μm で圧延方向と直角に延びる溝を圧
延方向に間隔4mmで繰返して形成した鋼板の磁気特性
を測定した結果について表1に示す。同表に示すよう
に、脱炭および1次再結晶焼鈍前に溝を形成させた鋼板
では、特に中磁束密度での鉄損W15/60 における低下
が顕著であった。
【0010】
【表1】
【0011】この原因を探究するべく鋭意研究を重ねた
結果、鉄損の低減、特に中磁束密度の鉄損領域において
は、溝の断面形状が重要であり、上記の鋼板では冷間
圧延板に設けた初期の溝の形状が最終的には保存されて
いないためであることを新規に見出した。
【0012】ここで、前述の実験で得た最終仕上焼鈍後
の鋼板について、その溝断面形状を図1(a)〜(c)
に示す。同図(a)は最終仕上焼鈍後に幅200 μm 、深
さ20μm の溝を形成した鋼板の溝断面形状であり、同
図(b)は脱炭・1次再結晶焼鈍前の冷間圧延板に、幅
200μm 、深さ20μm の溝を形成した最終仕上焼鈍後の
鋼板の溝断面形状である。また、同図(c)は、前述
の実験において、冷間圧延板に幅 200μm 、深さ20μm
の溝を形成させた直後の鋼板の溝断面形状を示したもの
である。同図(b)の鋼板は、同図(a)の例に比較し
て、溝の側壁の傾斜が鋼板表面に対して緩い傾斜をなす
ことが判る。さらに、この側壁の傾斜の緩慢化は、最終
仕上焼鈍途中において発生したことが同図(c)と比較
することにより突き止められた。これは、高温焼鈍時に
おけるフォルステライト被膜形成および鋼の軟化によっ
て、鋼板表面が粘性流動を起こし、表面エネルギーを低
減すべく、溝の平滑化現象が発生するからである。
【0013】そして、溝の側壁の傾斜が緩慢になること
で鉄損低減効果が失効する理由は次のように考えられ
る。すなわち、溝を形成することにより鉄損が低減する
のは図2(a) に示すように、溝の側壁に磁束(図中の矢
印)の不連続に起因する自由磁極(図中の+および−
印)が生成するため、静磁エネルギーが増加して、この
エネルギーを低減しようとして磁区が細分化されるため
である。
【0014】ところが、溝の側壁の傾斜が緩慢な場合、
壁に生成する自由磁極の密度が低くμ* 効果(磁気を担
うスピンの向きが壁面に平行となり、静磁エネルギーを
低下させる効果)とも相俟って、静磁エネルギーの増加
量が減少する。したがって、磁区の細分化が効果的に実
現されなくなり、鉄損低減効果があまり期待できなくな
る。
【0015】発明者らは、鉄損低減効果が得られる溝の
側壁の適正な傾斜について検討した結果、溝の側壁の傾
斜としては鋼板表面に対して垂直であることが好ましい
が、図3(a)に示す側壁の鋼板表面に対する角度(以
下、側壁傾斜角と示す)θとして5°以上であれば、鉄
損低減の効果が十分得られることがわかった。但し、図
3(a)においては、溝の全体を図示するため、深さ方
向と水平方向の倍率比を10対1で示してある。
【0016】しかしながら、実際の溝形状は実に多様で
あり、すべての側壁傾斜角θを5°以上に制御すること
は難しい。そこで、側壁傾斜角が5°以上の部分の側壁
全体での占有率と鉄損低減効果との関係について検討し
た。すなわち、図3(b)に示すように、側壁傾斜角θ
が25°の領域とθ<5°の領域に区別し、溝の深さ方向
で投影したθ≧5°の領域の長さdの側壁全体の投影長
o に対する比率(d/do )×100 %;以下、深さ比
率と示す)基いて調査した。この際、側壁傾斜角θ≧5
°の領域の深さ比率としては両側壁の深さ比率の平均値
を採った。この結果、θ≧5°の側壁部分の深さ比率が
60%以上あれば、鉄損低減効果として十分な値が得られ
るとの知見が得られた。
【0017】次に、上記の適正な溝形状を最終仕上焼鈍
後も、維持する手法について鋭意研究を行った。すなわ
ち、溝を酸化物の焼結体で充填することを着想し、種々
の酸化物の充填を試みたが、いずれも、良好な結果が得
られなかった。これは、多くの酸化物が最終仕上焼鈍に
おいて、鋼中のSiによって還元される結果、初期の溝の
形状を保持できないからであった。また、鋼中Siによっ
て還元されない、後述の酸化物を除く特定の酸化物につ
いては、溝への充填後の焼結が困難であり、結局は最終
仕上焼鈍後の鋼板表面地鉄の形状を保持できず、また、
焼結を促進しようとして高温熱処理を施した場合は、最
終仕上焼鈍における2次再結晶が不良となる結果に終わ
った。
【0018】そこで、発明者らは、酸化物の溝への充填
を断念し、金属または化合物を溝へ充填し、脱炭・1次
再結晶焼鈍時に酸化物焼結体となる手法を着想した。種
々の実験の結果、この手法に対しては、AlもしくはAl化
合物の溝への充填が極めて有効であることを見出し、こ
の発明を完成させた。
【0019】すなわち、この発明は、方向性けい素鋼冷
延板の表面に、溝を構成する側壁の鋼板表面に対する傾
斜角が5°以上となる部分の側壁全体に占める溝深さ方
向での比が60%以上となる形状で鋼板の圧延方向を横切
る向きに延びる溝を、圧延方向に間隔を置いて複数形成
し、該溝内にAlもしくはAl化合物を付着した後、脱炭・
1次再結晶焼鈍を施して、AlもしくはAl化合物をAl2O3
系焼結体となし、その後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布
し最終仕上焼鈍を行うことを特徴とする方向性けい素鋼
板の鉄損低減方法である。
【0020】また、この発明は、鋼板表面における金属
相と酸化物相との界面に、圧延方向と直交する向きに対
して0〜30°の傾きで延びる線状の溝を圧延方向に2〜
30mmの間隔で複数設け、各溝は、幅:30〜1000μm およ
び深さ:5〜50μm であり、さらに溝の側壁の鋼板表面
に対する傾斜角が5°以上となる部分の側壁全体に占め
る溝深さ方向での比が60%以上である形状に成ることを
特徴とする低鉄損方向性けい素鋼板である。
【0021】次に、この発明に係る方向性けい素鋼板の
製造方法について詳細に説明する。この発明の素材は、
公知の製鋼方法、例えば転炉、電気炉などによって製鋼
し、さらに造塊−分塊法または連続鋳造法などによって
スラブ(鋼片)としたのち、熱間圧延によって得られる
熱延コイルを用いる。得られた熱延板は、Siを2.0〜4.5
wt%程度含有する組成であることが必要である。すな
わち、Siが2.0 wt%未満では鉄損の劣化が大きく、また
4.5 wt%を超えると、冷間加工性が劣化するからであ
る。その他の成分については、方向性けい素鋼板の素材
成分であれば、いずれも適用可能である。
【0022】次に冷間圧延により、最終目標板厚とする
が、冷間圧延は、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回の冷
間圧延により行なわれる。このとき、必要に応じて熱延
板焼鈍や、冷間圧延に替わる温間圧延や、圧延パス間で
の時効処理を施すこともできる。
【0023】次いで、最終板厚とされた冷間圧延板に対
して、その表面に溝を形成する。溝を形成する手法とし
ては、特開平2−294427号公報に開示される、線
状の突起歯をプレスする方法や特公平3−69968号
公報に開示されている、レーザービーム、放電加工、機
械的なケガキ等、いずれでも可能であるが、溝形状をこ
の発明のように正しく制御するためには、例えば特開平
4−88121号公報に開示される、エッチングレジス
トを印刷し、電解エッチングで溝を形成する技術が最適
である。
【0024】ここで、冷間圧延板の表面に溝を設ける領
域は、線状とすることが必要で、線状の形は、直線、波
線、破線および点線のいずれであってもかまわない。さ
らに、線状溝の方向としては圧延方向と直交する向きに
対して0〜30°の傾き、すなわち圧延方向と直交する向
きかこの向きからのずれが±30゜以内の角度とすること
が必要で、ずれが30゜を超えると磁区細分化効果が得ら
れない。また、溝は圧延方向に繰返し設けることが必要
で、その間隔の適正値は2〜30mmである。間隔が2mm未
満の場合はヒステリシス損の増加を招いて、鉄損が逆に
劣化し、一方30mmを超える場合は十分な鉄損低減効果が
得られない。
【0025】溝の断面形状はこの発明の要件のひとつで
あり、溝の幅として30〜1000μm 、溝の深さとして5〜
50μm とすることが必要である。溝の幅が30μm 未満の
場合は鉄損低減効果が乏しく、逆に1000μm を超える場
合は、ヒステリシス損が増加し、鉄損の劣化を招く。さ
らに、溝の深さが5μm 未満の場合は、鉄損低減効果に
乏しく、一方50μm を超える場合にはヒステリシス損の
増加を招き、鉄損が劣化する。
【0026】さらに、溝の側壁傾斜角を厳密に制御する
ことが、特に必要とされる。すなわち、側壁傾斜角とし
て5゜以上となる部分の割合が側壁全体に対する深さ比
率として60%以上である溝を形成する。傾斜角が5゜未
満であると、磁区細分化効果がほとんど発現せず、また
5゜以上となる側壁部分の深さ比率が60%未満である
と、磁区細分化が有効になされず、所定の鉄損低減効果
が得られない。
【0027】そして、上記のように制御された溝を鋼板
表面に有する冷間圧延板の溝部にAlもしくはAl化合物を
付着させ、該AlもしくはAl化合物を次工程の脱炭・1次
再結晶焼鈍においてAl2O3 系の焼結体となす点が、この
発明の最も特徴とするところである。
【0028】AlもしくはAl化合物としては、次工程の酸
化性雰囲気中で酸化物となって酸化物の焼結が進行する
ような物質ならば何れでも良く、例えばAlめっき、Alペ
ースト、活性Al2O3, AlCl3, Al(OH)3, Al(NO3)3, 9H2O,
AlN, AlPO4, K2Al2(SO4)4,Al(OH)2CC17H35COO), Al2(S
O4)3nH2O 等のAlもしくはAl化合物などが有利に適合す
る。
【0029】かかる物質の溝への付着は溝の形成直後で
も、また別工程において行っても良く、溝への付着方法
における手段も問わない。また、溝への付着量も、溝を
充填する程度が好ましくかつ簡便でもあるが、必ずし
も、溝内を充填させる必要もない。すなわち、最終仕上
焼鈍において、溝形状を保持できるに足りる量が、溝中
に付着していれば十分である。
【0030】かかる物質を溝中に付着させた鋼板は、酸
化性雰囲気で脱炭および1次再結晶焼鈍に供されるが、
これも、通常の脱炭および1次再結晶焼鈍の条件で十分
である。鋼板表面にサブスケールが形成され、このサブ
スケールと鋼板表面に塗布された焼鈍分離剤が最終仕上
焼鈍中に固相反応し、フォルステライト被膜を形成す
る。
【0031】しかしながら、溝中に付着したAlもしくは
Al化合物は、活性Al2O3 を除いて酸化が進行し、Al2O3
系の焼結体となる。また活性Al2O3 においては、結晶化
ならびに焼結が進行する。
【0032】これらの溝中に存在するAl2O3 系焼結体
は、次工程の最終仕上焼鈍において、焼鈍分離剤と反応
し、MgO, Al2O3系の酸化物焼結体を溝中に生成するが、
脱炭および1次再結晶焼鈍時に形成されるサブスケール
と異なり、脱炭および1次再結晶焼鈍後にも所定の溝形
状を保持することが可能である。かかる作用によって、
磁区細分化効果を十分に発揮できるわけである。
【0033】最終仕上焼鈍後の鋼板は、通常の場合と同
様、そのまま製品として使用される場合、またさらに上
塗コーティングを施して製品として使用され、良好な磁
気特性を安定して示す。
【0034】さらに、この発明の方向性けい素鋼板にお
いては、溝部においてMgO, Al2O3系の酸化物が存在し、
鋼板の地鉄相と表面酸化物相との界面が、下記の特徴的
な形状をなすものである。
【0035】すなわち、地鉄相と表面酸化物相との界面
が線状の溝形状をなし、この溝の幅として30〜1000μm
、深さとして5〜50μm であり、溝の側壁傾斜角が5
゜以上である部分の深さ比率として60%以上であるこ
と、かつ、かかる線状の溝の方向が圧延方向と直交する
向きに対して0〜30゜の向きをなし、溝の間隔が圧延方
向に2〜30mmであることを必要とする。
【0036】ここに、地鉄と酸化物界面における溝は、
幅が30μm 未満または深さが5μm未満の場合は鉄損低
減作用に乏しく、逆に幅が1000μm または深さが50μm
を超える場合はヒステリシス損が増加し、鉄損の劣化を
招く。また、溝断面の壁の傾斜角が5゜以上となる深さ
比率が60%未満である場合は、壁面に自由磁極が十分に
形成されず、所定の鉄損低減効果が得られない。
【0037】
【実施例】
実施例1 Si : 3.2wt%を含有する方向性けい素鋼素材を、常法に
従って厚み0.23mmの冷間圧延板とし、次いで鋼板表面に
幅:200 μm のスリットを圧延方向と直交する向きに設
けかつ圧延方向でのスリット部間隔が4mmピッチとなる
ようにエッチングレジストを印刷し、かつ電流密度と電
解液流速を調整して20μm の深さの溝をエッチングし
た。このとき、エッチング溝の側壁傾斜角が5゜以上の
部分の深さ比率は82%であった。このコイルを2分割
し、一方はAlペーストを溝に充填し(発明例)、他方は
そのままで(比較例)、エッチングレジストを除去し、
湿水素雰囲気中で840 ℃で2分間の脱炭・1次再結晶焼
鈍を施した。さらに両者はMgOを主成分とする焼鈍分離
剤を塗布した後、コイル状に巻取り、2次再結晶と1200
℃および5時間の純化焼鈍とからなる最終仕上焼鈍を施
した。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去し、800 ℃で
2分間の平坦化焼鈍を兼ねて張力コーティングを焼付け
た。両者の磁気特性を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】また、両者の製品板について溶融苛性ソー
ダにて表面のコーティングおよび酸化物を除去し地鉄面
を裸出し、溝断面形状を測定したところ、図4(a) に実
施例および同図(b) に比較例を示すように、両者におい
て顕著な差異が生じ、実施例の場合は側壁傾斜角が5゜
以上の深さ比率が79%であったのに対し、比較例の場合
は52%に低下していた。
【0040】実施例2 Si : 3.3wt%を含有する方向性けい素鋼素材を、常法に
従って厚み0.23mmの冷間圧延板とした後、実施例1と同
様にして溝を形成するに当たり、電解エッチングの電流
密度と電解液流速を変化させて、コイルの長手方向の各
位置において種々の形状の溝を形成した。すなわち、各
溝の側壁傾斜角が5゜以上の部分の深さ比率はそれぞ
れ、18%、26%、43%、64%、78%、94%であった。か
かるコイルの溝部に活性アルミナの微粒子を充填した
後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、コイル
状に巻取り、最終仕上焼鈍を施した。最終仕上焼鈍後は
未反応分離剤を除去して、平坦化焼鈍を兼ねて800 ℃、
1分間で張力コーティングを焼付けた。コイルの各部の
磁気特性と、コーティングおよび酸化物を除去した状態
の側壁傾斜角が5゜以上の部分の深さ比率とを表3およ
び図5にそれぞれ示す。
【0041】
【表3】
【0042】実施例3 Si : 3.2wt%を含有する方向性けい素鋼素材を、常法に
従って厚み0.20mmの厚みの冷間圧延板とし、次いでエッ
チングレジストを印刷するに際し、鋼板の一部はスリッ
ト部の幅を10, 20, 30, 50, 100, 500, 1000, 1500, 20
00μm と変更し、電解エッチングの深さは各々14〜18μ
m とした。また、残る鋼板はスリット部の幅を200 μm
とし、電解エッチングの電気量を変更し、エッチング深
さを2,3,5,15, 20, 50, 60, 100 μm と変更し
た。これらの溝はいずれも、圧延方向と直交する向きか
ら10゜傾いた方向に延びる線状とし、圧延方向での間隔
は4mmとした。また、電解エッチングの電流密度および
電解液流速を制御して、溝の側壁傾斜角が5゜以上の深
さ比率をいずれも80%前後とした。
【0043】これらの鋼板はレジストを除去した後、溝
部にAlN を充填し、湿水素雰囲気中で脱炭・1次再結晶
焼鈍を施した。その後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤
を塗布しコイル状に巻取った後、最終仕上焼鈍に供し
た。最終仕上焼鈍後は、未反応分離剤を除去した後、平
坦化焼鈍を兼ねて840 ℃、1分間で張力コーティングを
焼付けた。これらの製品の溝形状と鉄損との関係を、図
6および図7に示す。
【0044】
【発明の効果】この発明においては、鋼板地鉄と表面酸
化物との界面に溝を有する低鉄損の方向性けい素鋼板に
おいて、溝の断面形状を規制し、しかも最終仕上焼鈍後
も、かかる溝形状が維持できるように、脱炭・1次再結
晶焼鈍前に特定の物質を溝内に付着することによって、
極めて良好な鉄損特性を安定して得ることができ、工業
的に有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】最終仕上焼鈍による溝断面形状の変化を示す図
である。
【図2】溝断面の壁の傾斜が壁に生成する自由磁極密度
に影響を及ぼすことを説明するための図である。
【図3】壁の傾斜角および傾斜角5゜以上の部分の深さ
比率を定義する図である。
【図4】製品板の地鉄と表面酸化物との界面における溝
断面形状について測定した結果を示す図である。
【図5】溝の壁の傾斜角5゜以上の部分の割合と磁気特
性との関係を示す図である。
【図6】溝の深さと製品の鉄損との関係を示す図であ
る。
【図7】溝の幅と製品の鉄損との関係を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性けい素鋼冷延板の表面に、溝を構
    成する側壁の鋼板表面に対する傾斜角が5°以上となる
    部分の側壁全体に占める溝深さ方向での比が60%以上と
    なる形状で鋼板の圧延方向を横切る向きに延びる溝を、
    圧延方向に間隔を置いて複数形成し、該溝内にAlもしく
    はAl化合物を付着した後、脱炭・1次再結晶焼鈍を施し
    て、AlもしくはAl化合物をAl2O3 系焼結体となし、その
    後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し最終仕上焼鈍を行う
    ことを特徴とする方向性けい素鋼板の鉄損低減方法。
  2. 【請求項2】 鋼板表面における金属相と酸化物相との
    界面に、圧延方向と直交する向きに対して0〜30°の傾
    きで延びる線状の溝を圧延方向に2〜30mmの間隔で複数
    設け、各溝は、幅:30〜1000μm および深さ:5〜50μ
    m であり、さらに溝の側壁の鋼板表面に対する傾斜角が
    5°以上となる部分の側壁全体に占める溝深さ方向での
    比が60%以上である形状に成ることを特徴とする低鉄損
    方向性けい素鋼板。
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