JPH07130981A - 半導体電子放出素子およびその形成方法 - Google Patents

半導体電子放出素子およびその形成方法

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JPH07130981A
JPH07130981A JP27332293A JP27332293A JPH07130981A JP H07130981 A JPH07130981 A JP H07130981A JP 27332293 A JP27332293 A JP 27332293A JP 27332293 A JP27332293 A JP 27332293A JP H07130981 A JPH07130981 A JP H07130981A
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JP
Japan
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diamond
layer
substrate
electron
semiconductor
Prior art date
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JP27332293A
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English (en)
Inventor
Keiji Hirabayashi
敬二 平林
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Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 絶縁性ないし半導体性結晶基体上にニッケル
{111}面単結晶層または炭化珪素{111}面単結
晶層を形成した後、少なくとも炭素を含むプラズマ中で
基体にバイアスを印加させるプラズマ処理を行ない、さ
らにその単結晶層上にダイヤモンド半導体結晶層を含む
ダイヤモンド結晶{111}面単結晶層をエピタキシャ
ル成長させて半導体電子放出素子を形成する。 【効果】 高い電子放出効率を有し、長寿命の半導体放
出素子を得ることができ、その素子を用いて、信頼性の
高いディスプレイ、EB(エレクトロンビーム)描画装
置、真空管、電子線プリンター、メモリーなどを提供す
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体電子放出素子、
特にダイヤモンド半導体層を用いた半導体電子放出素子
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体電子放出素子のうち、アバ
ランシェ増幅を用いたものとしては、半導体基板上にp
型半導体とn型半導体との接合を形成した素子(pn接
合型素子)および半導体層と金属や金属化合物のショッ
トキー接合を形成した素子(ショットキー接合型素子)
がある。
【0003】アバランシェ増幅を用いたpn接合型半導
体電子放出素子の例としては、米国特許4259678
号および米国特許4303930号に記載されているも
のがある。
【0004】この半導体電子放出素子は、半導体基板上
にp型半導体とn型半導体とを形成し、そのn型半導体
層の表面にさらにセシウムなどの金属を付着させて電子
放出部を形成したものであり、p型半導体層とn型半導
体層とにより形成されたダイオードに逆バイアス電圧を
かけてアバランシェ増幅を起こすことにより電子をホッ
ト化し、電子放出部より電子を放出するものである。
【0005】また、アバランシェ増幅を用いたショット
キー接合型の半導体電子放出素子の例としては、p型半
導体層と金属電極との接合を形成し、この接合に逆バイ
アス電圧をかけてアバランシェ増幅を起こすことにより
電子をホット化し、電子放出部より電子を放出させるも
のがある。
【0006】ところで、上記の従来例のようなアバラン
シェ増幅を利用した半導体電子放出素子から電子を放出
させる時には、高い電子放出電流を得ようとすれば、非
常に高い電流を素子にかけなければならない。通常、p
n接合から電子を放出させる場合には、1万アンペア/
cm2以上の電流密度が必要であるが、このような大電
流を流すと素子が発熱し、その素子の電子放出特性が不
安定化したり、素子寿命が短くなったりするという問題
点がある。そこで、局所的発熱の少ない電子放出素子が
望まれていた。
【0007】また、従来のpn接合型では、電子放出部
の仕事関数を低下させて逆バイアス電圧を抑えることが
できるようにするために、低仕事関数の材料を用いてい
る。そこで従来は、逆バイアス電圧をあまり大きくせず
電子放出を行なうために、セシウムなどの材料が低仕事
関数の材料として用いられていたが、セシウムのような
材料は化学的に活性であるため、半導体層の局所的発熱
による影響を受け、安定な動作を期待することが困難で
あった。このため、仕事関数低下材料として比較的安定
な材料をも使用し得るような電子放出素子が望まれてい
た。
【0008】また、従来のショットキー接合型電子放出
素子の電極材料としては、ショットキー接合を作り得る
ような材料で、しかも仕事関数が低い材料が望まれてい
た。しかし、従来の電子放出素子では、半導体の局所的
発熱により電極材料がマイグレートしやすいことや、半
導体のエネルギーギャップの大きさから、電極材料の選
択の幅が狭く、素子の安定性向上のための材料選択が良
好に行なえないという難点がある。また、電子放出部の
仕事関数を低下させるためにその電子放出部の表面にセ
シウムまたはセシウムの酸化物の層を形成する場合に
は、前述した従来のpn接合型の場合と同様な問題が生
じる。そこで、局所的な発熱が小さくショットキー電極
の材料選択の幅の広い電子放出素子が望まれていた。
【0009】以上の問題に対して、ダイヤモンド半導体
層は、常温下で物質中最大の熱伝導度を有し、広いバン
ドギャップ(5.4eV)のため耐熱性が良く、さらに
ショットキー電極の材料選択が広がる。そこで、ダイヤ
モンド半導体層を用いた電子放出素子が試みられてい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ダイヤモンド結晶は、
炭素系ガス種を原料とする気相合成法および金属溶媒を
用いた高温高圧法で合成することができる。気相合成法
の場合、一般に{100}面および{111}面からな
る多面体粒子として析出し、この多面体粒子の合体の結
果、多結晶の膜状ダイヤモンド結晶が得られる。この多
結晶ダイヤモンド膜は、表面凹凸が大きいためダイヤモ
ンド半導体層への電圧印加や電極形成が不均一になって
電子放出が不安定化したり、さらには、膜中の結晶粒界
の存在のため、結晶中での電子の加速が妨害され、効率
良く電子放出することができないことから、電子放出素
子として用いた場合、放出電子量が少ないという問題が
ある。さらに、多結晶ダイヤモンド膜の表面凹凸は、電
圧印加の不均一のため、膜の一部に電界集中が起こり、
これにより素子寿命の低下が生じる。
【0011】さらに、天然または高圧合成ダイヤモンド
単結晶基板および高圧合成立方晶窒化珪素単結晶基板上
であれば、ダイヤモンド結晶は平滑なエピタキシャル膜
として形成することができるが、これらの単結晶基板は
コスト的に高く、実用的ではない。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板上に半導
体層として少なくともダイヤモンド半導体層を形成する
半導体電子放出素子形成方法において、絶縁性ないし半
導体性結晶基体上にニッケル{111}面単結晶層また
は炭化珪素{111}面単結晶層を形成した後、少なく
とも炭素を含むプラズマ中で基体にバイアスを印加させ
るプラズマ処理を行ない、さらに該単結晶層上にダイヤ
モンド半導体結晶層を含むダイヤモンド結晶{111}
面単結晶層をエピタキシャル成長させることを特徴とす
る半導体電子放出素子形成方法およびその形成方法によ
って形成される半導体電子放出素子を提供する。
【0013】
【作用】以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】本発明に用いる半導体電子放出素子は、負
の電子親和力(Negative ElectronAffinity)を用いた
もの、電子なだれ増幅(アバランシェ増幅)を用いたも
のなどいかなるものであっても良い。
【0015】以下、アバランシェ増幅を用いたものを例
にとって本発明を説明する。
【0016】図3aおよびbは電子なだれ誘起層がn型
半導体層であるpn接合型の半導体電子放出素子におけ
るエネルギーバンド図である。図において、pはp型半
導体層、nはn型半導体層、Tは低仕事関数材料の層を
示す。図3aはp型ダイヤモンド層とn型ダイヤモンド
層とのpn接合の場合を示している。図3bはp型ダイ
ヤモンド層とダイヤモンドよりバンドギャップの小さい
n型半導体層とのヘテロ接合を用いた場合を示してい
る。図中、Eg1は、p型ダイヤモンド層のバンドギャ
ップを、Eg2はn型半導体層のバンドギャップを示
す。なお、本発明におけるp型およびn型の半導体層
は、特に言及のない限り、不純物を高濃度に含んだ、い
わゆるp+型やn+型をも意味するものとする。
【0017】図3aおよびbに示すように、p型半導体
層とn型半導体層との接合の間を逆バイアスすることに
より、真空準位Evacをp型半導体層の伝導帯Ecより低
いエネルギー準位とすることができ、大きなエネルギー
差ΔE(=Ec−Evac)を得ることができる。この状態
で、アバランシェ増幅を起こすことにより、p型半導体
層において少数キャリアであった電子を多数生成するこ
とが可能となり、電子の放出効率を高めることができ
る。また、空乏層内の電界が電子にエネルギーを与える
ために、電子がホット化されて運動エネルギーが大きく
なり、n型半導体層表面の仕事関数よりも大きなポテン
シャルエネルギーを持つ電子が散乱によるエネルギーロ
スを伴わずに表面から飛び出すことが可能となる。
【0018】本発明の半導体電子放出素子においては、
少なくともp型半導体層としてダイヤモンド層を用いる
ことにより、熱伝導性に優れ、放熱により素子の局所的
発熱が少なく、従って安定した電子放出特性を得ること
ができる。
【0019】図3aに示すようなダイヤモンド半導体の
pn接合を用いた場合、接合界面でのエネルギーバンド
の接合がスムーズで電子の散乱が少なく、良好な電子放
出特性が得られる。
【0020】図3bはp型ダイヤモンド層とダイヤモン
ドよりバンドギャップの小さいn型半導体層とのヘテロ
接合を用いた場合のエネルギーバンド図を示している。
pn接合型のアバランシェ増幅を用いた電子放出素子に
おいては、n型半導体の抵抗値を下げることにより、さ
らに発熱を低下させることができる。一般に、ダイヤモ
ンドのようなバンドギャップの大きい材料の場合は、伝
導帯の有効状態密度が小さいため、半導体の抵抗率をS
i、Geのように10-4Ω・cm程度まで下げることは
困難である。そこで、p型半導体層上にそのp型半導体
層よりバンドギャップの小さなn型半導体層を形成し
て、n型半導体層の抵抗を下げることにより、さらに発
熱を低下させることが可能となり、より安定性の高い電
子放出素子を得ることができる。
【0021】また、p型半導体層にバンドギャップの広
いダイヤモンド層を用いているため、小さな逆バイアス
電位で大きなΔEを取ることができる。このため、従来
のようにn型半導体層の表面にあえて化学的に不安定な
セシウムなどの低仕事関数材料の層を形成する必要がな
く、化学的に安定な比較的高い仕事関数の材料の層を形
成することができる。ダイヤモンドのエネルギーバンド
ギャップが5.4eVで、ホウ素を不純物とした場合の
p型半導体の活性化エネルギーが0.37eVであるた
め、n型半導体層表面に形成される材料層の仕事関数が
5.0eV以下であれば、比較的低い逆バイアス電圧の
印加でΔE>0となり、電子放出が可能となる。
【0022】図4は電子なだれ誘起層がショットキー電
極であるショットキー接合型の電子放出素子におけるエ
ネルギーバンド図である。図において、pはp型半導体
層を示し、Tはショットキー電極を示す。図4に示すよ
うに、p型半導体層および薄膜ショットキー電極との接
合の間を逆バイアスすることにより、真空準位Evac
をp型半導体層の伝導帯準位Ecより低いエネルギー準
位とすることができ、大きなエネルギー差ΔE(=Ec
−Evac)を得ることができる。
【0023】この状態で、アバランシェ増幅を起こすこ
とによって、p型半導体層においては少数キャリアであ
った電子を多数生成することが可能となり、電子の放出
効率を高めることができる。また、空乏層内の電界が電
子にエネルギーを与えるために、電子がホット化されて
格子系の温度よりも運動エネルギーが大きくなり、表面
の仕事関数よりも大きなポテンシャルを持つ電子が散乱
によるエネルギーロスを伴わずに電子放出を行なうこと
が可能となる。
【0024】p型層にダイヤモンドを用いた場合、その
大きなバンドギャップの故に、電極材料の仕事関数の許
容範囲を非常に広くすることができる。また、広い仕事
関数の範囲の材料からショットキー電極材料を選択する
ことができるため、安定に電子放出を行ない得るショッ
トキー接合を形成することができる。
【0025】本発明で述べるダイヤモンド結晶は、例え
ば以下で述べるCVD法および燃焼炎法により形成する
ことができるが、これらの方法に限定されるものではな
い。
【0026】CVD法には熱フィラメントCVD法、マ
イクロ波CVD法、有磁場マイクロ波CVD法、直流プ
ラズマCVD法、RFプラズマCVD法などがある。
【0027】上記気相合成法に用いる原料ガスの炭素源
としては、メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど
の炭化水素ガス;アルコール、アセトンなどの常温で液
体の有機化合物;一酸化炭素;ハロゲン化炭素などが挙
げられる。さらに、適宜、水素、酸素、塩素、フッ素を
含むガスを添加することもできる。
【0028】特に、欠陥および転位の少ない高品質のダ
イヤモンド結晶を形成する場合は、原料ガス中に少なく
とも水素、炭素および酸素が構成元素として含まれてい
ることが必要で、1種類の原料ガスの組成式中にこれら
元素が全て含まれていても良く、またいずれかの元素を
含む原料ガスを複数種組み合せても良い。
【0029】この場合、{(炭素源ガス流量)×(炭素
源ガス組成式中の炭素原子数)/(全原料ガス流量)}
×100の計算式で与えられる原料ガス中の炭素源濃度
を10%以下とする必要がある。ここで、炭素源ガス組
成式中の炭素原子数は、例えばメタン(CH4)なら
1、プロパン(C38)なら3、アセトン(CH3CO
CH3)なら3となる。この炭素源濃度を10%以下と
する理由は、ダイヤモンド結晶の過飽和度を抑え、特に
高さ方向の結晶成長を抑制するためである。炭素源濃度
に下限は特にないが、0.01%以下ではダイヤモンド
結晶の実用的な形成速度が得られない場合がある。
【0030】更に、原料ガス中の酸素と炭素の原子数の
比(O/C)は、好ましくは0.2≦O/C≦1.2、
より好ましくは0.5≦O/C≦1.1とする。0.2
未満では酸素の添加効果がなく、また1.2を越えると
酸素のエッチング効果で実用上使用可能なダイヤモンド
形成速度を得ることができない。上記O/C値を調節す
るために、例えば、O2、H2O、N2O等の酸素添加ガ
スを原料ガス中に添加することができる。
【0031】燃焼炎法では、酸素−アセチレン炎を用い
るが、この主たる原料ガス中の酸素とアセチレンとのモ
ル比の値は、0.8≦O2/C22≦1.0となるよう
に、好ましくは0.90≦O2/C22≦0.99とす
ることで、再現性良く、さらに比較的高い成長速度(横
幅方向の成長速度が数十μm/hr)でダイヤモンド結
晶を形成することができる。
【0032】本発明において用いられるダイヤモンド単
結晶の面方位は、{111}面とすることが必要であ
る。これは、ダイヤモンド結晶{111}が電子親和力
が小さく(−0.3eVと言われる)、電子を放出しや
すい性質を有しているためである。このため、ダイヤモ
ンド{111}面単結晶相を電子放出面として用いるこ
とにより、電子放出効率の良好な半導体電子放出素子を
形成することができる。
【0033】本発明では、ニッケル単結晶膜の膜厚を1
〜200nmの範囲に設定することが望ましい。これ
は、1nm以下では、プラズマ処理中にニッケル膜が飛
散するなどの理由でニッケル膜形成の効果がなくなり、
ダイヤモンド結晶のエピタキシャル成長が見られなくな
るためである。このため、ニッケル膜厚は1nm以上、
好ましくは2nm以上とする。また、200nm以上で
は、ダイヤモンド結晶とニッケルが反応して侵食される
ため、ダイヤモンド結晶の成長が阻害され、ダイヤモン
ド結晶析出量が減少する。ダイヤモンド形成に先立ち、
プラズマ処理法で炭素をニッケル中に拡散させた場合
は、ニッケルによるダイヤモンド結晶の侵食は抑制され
るが、ニッケル膜厚は200nm以下、好ましくは10
0nm以下、さらに好ましくは50nmとする。
【0034】ニッケル単結晶薄膜の形成方法は、公知の
真空蒸着法および高周波スパッタ法、直流スパッタ法、
マグネトロンスパッタ法、対向スパッタ法などを用いる
ことができる。形成条件は、合成法や下地基板により変
わるため、一概に決めることはできないが、例えば真空
蒸着法の場合、単結晶基体を用い、圧力を10-7Tor
r以下、基体温度を300℃として、電子銃でニッケル
を溶解して蒸着することにより、単結晶ニッケル膜を形
成することができる。
【0035】また、本発明で用いられるSiC単結晶膜
の膜厚は10nm以上とすることが望ましい。その理由
は、10nm未満ではプラズマ処理中にSiC膜が飛散
するなどのため、SiC膜形成の効果がなくなり、ダイ
ヤモンド結晶のエピタキシャル成長が見られなくなるた
めである。このため、SiC膜厚は10nm以上、好ま
しくは50nm以上とする。
【0036】SiC膜の形成方法は特定の方法に限定さ
れるものではなく、基体上に単結晶SiC層を形成でき
るのであればいかなる方法でも良いが、例えば、熱CV
D法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーテ
ィング蒸着法、高周波スパッタ法、直流スパッタ法、マ
グネトロンスパッタ法、対向スパッタ法などを用いるこ
とができる。
【0037】合成条件は、合成法によって異なるため一
概には言えないが、例えば熱CVD法の場合、C38
SiH2Cl2−H2系混合ガスを原料ガスとして、圧
力:常圧、反応温度:1050℃とすることで、シリコ
ン単結晶基体上にSiC単結晶膜を形成することができ
る。
【0038】また、本発明においてはダイヤモンド結晶
形成に先立ち、炭素源プラズマ中でニッケルおよび炭化
珪素単結晶層を形成した基体にバイアスを印加するプラ
ズマ処理を行ない、核発生密度を増加させることが望ま
しい。このプラズマ処理とは、少なくとも炭素を含有す
る原料ガスをプラズマ化し、そのプラズマ中に基体を設
置し、さらにその基体にバイアスを印加して、基体表面
を活性化してダイヤモンド結晶核を形成する方法であ
る。このプラズマ処理により、ダイヤモンド結晶のエピ
タキシャル核が多数形成されるため、ダイヤモンド結晶
の析出量が増加し、平坦性の良好なダイヤモンド単結晶
膜が形成される。
【0039】プラズマ処理法の原料ガスとしては、炭素
源としてメタン、エタン、エチレン、アセチレンなどの
炭化水素やエチルアルコール、メチルアルコール、アセ
トンなどの酸素含有の有機化合物、さらにはトリクロロ
エチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭素を用いるこ
とができ、適宜、水素、酸素、アルゴン、ヘリウムなど
のガスを添加する。このとき、炭素源ガスの添加量は全
原料ガスの4%から50%程度とする。
【0040】プラズマ発生方法としては、公知の高周波
プラズマ発生装置、マイクロ波プラズマ発生装置、EC
R(電子サイクロトロン共鳴)プラズマ発生装置などを
用いることができる。
【0041】基板に印加するバイアスは、正および負の
どちらでも良い。このバイアス印加によるダイヤモンド
結晶核形成の機構には不明な点が多いが、負バイアスの
場合、炭素源イオンが基体に衝突し、炭素がニッケル層
または炭化珪素層中に拡散して、ダイヤモンド結晶核を
形成するものと考えられる。また正バイアスの場合、基
体表面に電子照射が生じ、表面が活性化されて反応性が
高くなり、ダイヤモンド結晶核が形成されやすくなるも
のと考えられる。
【0042】基体に印加するバイアスの値は、負バイア
スの場合、−400V以上−20V以下が好ましい。−
20Vより高いとバイアス印加効果がなく、ダイヤモン
ド核形成が小さく、均一な膜を得ることができない。ま
た−400Vより低い場合は、ニッケル層または炭化珪
素層および基体のエッチングの効果が大きくなり、ダイ
ヤモンド結晶のエピタキシャル成長が生じず、多結晶ダ
イヤモンドが析出する。なお、基体に印加する負バイア
スは、一般的に直流バイアスであるが、高周波バイアス
を印加してもその自己バイアスによって負バイアスが生
じ、実質的に直流の負バイアスを印加したのと同様の効
果を有する。この時、自己バイアスの値は、前記の直流
バイアスの場合と同様とすることが好ましい。このた
め、例えば、13.56MHzの高周波バイアスを基体
に印加しながら前記プラズマ処理を行なっても良い。
【0043】さらに、正バイアスの場合、40V以上4
00V以下が好ましい。40V未満ではバイアス印加効
果がなく、また400Vより大きい場合、基板が電子照
射を受け、基体温度が上昇し、ダイヤモンド結晶がグラ
ファイト化しやすくなる。
【0044】プラズマ処理時間は、プラズマ出力、ニッ
ケルまたは炭化珪素膜厚、炭素源濃度、およびバイアス
電圧などの条件により変わり得るため一概には言えない
が、一般的には1分間から2時間程度である。
【0045】上記プラズマ処理により、基体上にダイヤ
モンド結晶核が106個/cm2から1010個/cm2
度形成され、その後に通常の気相合成ダイヤモンド形成
法を用いることにより、平坦性の良好なダイヤモンド結
晶エピタキシャル層が得られる。
【0046】さらに、ニッケル単結晶薄膜または炭化珪
素薄膜上に絶縁性マスクパターンを形成した後に、基体
のバイアスプラズマ処理を施してダイヤモンド結晶を形
成することにより、マスクパターン以外の部位に選択的
にダイヤモンド結晶をエピタキシャル成長させる選択エ
ピタキシャル成長も可能となる。この選択エピタキシャ
ル成長を用いて所定の位置に形成されたダイヤモンド結
晶層を用いて本発明の半導体電子放出素子を形成するこ
ともできる。
【0047】この時、絶縁性マスクパターンとしては、
酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、チタン酸スト
ロンチウム、酸化ジルコニアなどの種々の酸化物、窒化
物およびこれらの含有物を用いることができる。これら
のマスクパターンの形成方法には、公知の光描画法など
を用いることができる。これらの絶縁性マスクパターン
上にはプラズマ処理時のバイアス印加の効果が生じない
ため、ダイヤモンドの核発生が生じない。このため、ダ
イヤモンド結晶はマスクパターンを形成した以外の部位
にのみ選択的に形成される。
【0048】本発明で用いられる基体は、半導体ないし
絶縁性の単結晶基体であり、半導体単結晶基体として
は、シリコン単結晶、ゲルマニウム単結晶、SiC単結
晶、ガリウムヒ素単結晶、インジウム燐単結晶などを用
いることができる。縁体基体としては、水晶単結晶、ア
ルミナ単結晶、酸化マグネシウム単結晶、スピネル単結
晶、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結
晶、チタン酸ストロンチウム単結晶などを用いることが
できる。
【0049】また、p型ダイヤモンド層の作成のための
不純物としては、ホウ素などの周期律表第3族の元素を
用いることができる。ホウ素の添加方法としては、原料
ガス中にホウ素含有化合物を添加する方法およびイオン
注入法などを用いることができる。
【0050】本発明のpn接合型素子におけるn型半導
体層はできるだけ薄くすることが好ましい。n型半導体
層としてダイヤモンド層を用いる場合、ダイヤモンド中
に不純物として窒素、リンなどの周期律表第5族の元素
およびイオウなどの第6族の元素さらにはリチウム、ナ
トリウムなどのアルカリ金属などを添加して形成するこ
とができる。これらの不純物添加方法としては、原料ガ
ス中にこれらの不純物含有ガスを添加する方法およびイ
オン注入法などを用いることができる。
【0051】n型半導体層としてダイヤモンド以外の半
導体を用いる場合には、Si、Ge、SiCさらには周
期律表第2族または第3族元素と第5族または第6族元
素の化合物の半導体、さらにはアモルファスシリコン、
アモルファスシリコンカーバイドなどのアモルファス材
料を用いることができる。これらの材料は、1×10 20
atom/cm3以上の不純物を添加することが可能
で、n型半導体層の比抵抗を10-4Ω・cm程度と低く
することが可能である。
【0052】本発明の半導体電子放出素子に用いるショ
ットキー電極の材料は、p型ダイヤモンド層に対して明
確にショットキー特性を示すものである。一般に、電極
材料の仕事関数ΦWKとn型半導体に対するショットキー
バリアハイトΦBnとの間には、直線関係が成り立ってお
り(Physics of Semiconductor Devices, Sze著、27
4p,76(b),John Willey & Sons)、仕事関数が
小さくなるにつれてΦ Bnは低下する。また、一般にp型
半導体に対するショットキーバリアハイトΦBPとΦBn
の間には、ほぼΦBP+ΦBn=Eg/qの関係があるため
(qは電荷)、p型半導体に対するショットキーバリア
ハイトは、ΦBP=Eg/q−ΦBnとなる。以上のよう
に、電極材料として、仕事関数の小さな材料を用いるこ
とで、p型半導体層に対して良好なショットキーダイオ
ードを作成することができる。
【0053】本発明のショットキー接合型素子における
ショットキー電極材料としては、高温下でもマイグレー
トしにくい材料であり、またダイヤモンドのエネルギー
バンドギャップの広さ(5.4eV)から不純物元素を
ドープした場合の活性化エネルギーを減じたエネルギー
以下の仕事関数を持つ材料を使用すれば、さらに効率良
く電子放出を行なわせることができる。
【0054】不純物としてホウ素を用いた場合に使用し
得る材料としては、周期律表第1A族〜第7A族、同じ
く第2B族〜第4B族の元素のうち5.0eV以下の仕
事関数を持つ材料、また第8族、第1B族元素のうちI
r、Pt、Au、Agなどの金属、およびランタノイド
系の元素、さらに種々の金属シリサイド、金属ホウ化
物、金属炭化物の一部も使用可能である。またこれらの
元素および材料を組み合せてもよい。
【0055】これらのショットキー電極のうち、タング
ステン、タンタル、モリブデンなどの高融点金属や種々
の金属シリサイド、金属ホウ化物、金属炭化物などは、
従来の半導体電子放出素子の表面に形成されているセシ
ウムなどの低仕事関数材料に比べて化学的に安定であ
り、また、Pd、Pt、Au、Ir、Ag、Cu、Ru
などは低抵抗で、しかもマイグレートしにくいため好適
に用いられ、比較的低い真空度(1×10-3Torr程
度)でも安定な電子放出が可能である。
【0056】これらの材料の仕事関数は1.3〜5.0
eV程度であり、すべてp型半導体層に対して良好なシ
ョットキー電極となる。これらのショットキー電極材料
は電子ビーム蒸着などで極めて制御性良く半導体上に堆
積させることが可能であり、100nm以下、より好ま
しくは50nm以下の厚さに堆積することにより、ショ
ットキー接合近傍で発生したホットエレクトロンがエネ
ルギーを大きく失うことなく、ショットキー電極を通過
することができ、安定した電子放出が可能となる。
【0057】以上述べたショットキー電極を用いること
により、良好なショットキー接合型の半導体電子放出素
子が得られる。
【0058】次に、本発明の電子なだれ誘起型素子にお
いて、電子なだれ誘起層上に形成される仕事関数低下材
料としては、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップ
の広さ(5.4eV)から不純物元素をドープした場合
の活性化エネルギーを減じたエネルギー以下の仕事関数
を持つ材料を使用するのが好ましい。不純物としてホウ
素を用いた場合に使用し得る材料としては、周期律表第
1A族〜第7A族、同じく第2B族〜第4B族の元素の
うち5.0eV以下の仕事関数を持つ材料、また第8
族、第1B族元素のうちIr、Pt、Au、Agなどの
金属、およびランタノイド系の元素、さらに種々の金属
シリサイド、金属ホウ化物、金属炭化物の一部も使用可
能である。またこれらの元素および材料を組み合せても
よい。
【0059】これらの仕事関数低下材料のうち、タング
ステン、タンタル、モリブデンなどの高融点金属や種々
の金属シリサイド、金属ホウ化物、金属炭化物などは、
従来の半導体電子放出素子の表面に形成されているセシ
ウムなどの低仕事関数材料に比べて化学的に安定であ
り、またPd、Pt、Au、Ir、Ag、Cu、Ruな
どは低抵抗で、しかもマイグレートしにくいため好適に
用いられ、比較的低い真空度(1×10-3Torr程
度)でも安定な電子放出が可能である。
【0060】これらの材料は電子ビーム蒸着などで極め
て制御性良く半導体上に堆積させることが可能であり、
10nm以下、より好ましくは単原子層から数原子層の
厚さに堆積することによりホットエレクトロンがエネル
ギーを大きく失うことなくこれらの低仕事関数を持つ材
料を通過することができ、安定した電子放出を行なうこ
とが可能となる。
【0061】
【実施例】次に、本発明を実施例によって具体的に説明
する。
【0062】(実施例1)本実施例では、pn接合型電
子放出素子形成の例を図1を用いて示す。図1aは本発
明のpn接合型電子放出素子の平面図であり、図1bは
そのA−A’断面図である。
【0063】図において、101はp+型半導体基板で
あり、本実施例ではSi{111}面基板を用いた。1
02はニッケル単結晶層で、103はp型ダイヤモンド
単結晶層である。104は絶縁性選択堆積用マスクであ
り、ここではSiO2層を用いた。105はn型ダイヤ
モンド層であり、106は電極(チタン)である。10
7は絶縁層であり、108は引き出し電極である。10
9は上記Si基板101の裏面にAlを蒸着したオーミ
ックコンタクト用電極である。110は電極106と1
09との間に逆バイアス電圧Vbを印加するための電源
であり、111は電極106と引き出し電極108との
間に引き出し電圧Vgを印加するための電源である。1
12は仕事関数を低くするための材料としてのAg(仕
事関数:4.26eV)の層である。
【0064】以上の素子は、次の方法で形成した。
【0065】(1)p+型Si基板101上に、ニッケ
ル単結晶層102を形成する。ニッケル単結晶層は、公
知の真空蒸着法で形成し、形成条件は基板温度:400
℃、真空度:5×10ー8Torrとした。これにより、
ニッケル{111}面単結晶層が約20nm形成され
る。
【0066】(2)次に、図5に示すようなマイクロ波
プラズマCVD装置を用いてバイアスプラズマ処理を行
なった。図中、501は石英反応管、502は原料ガス
導入口で不図示のガスボンベおよびガスバルブ、ガス流
量調整器が接続されている。503はメッシュ電極で、
アースに接地されている。504はマイクロ波導波管で
不図示のマイクロ波電源に接続されている。505は基
体、506は基体ホルダーで、507の基板バイアス印
加用電源に接続されている。508はガス排気口で、不
図示のターボポンプおよびドライポンプ、圧力調整用バ
ルブが接続されている。プラズマ処理条件は、メタン
(25%)−水素系ガスを用い、圧力:50Torr、
マイクロ波出力:300W、基板バイアス:−80V
(直流バイアス)、処理時間:30分間とした。
【0067】(3)次に、燃焼炎法によりダイヤモンド
結晶を形成する。燃焼炎法については図6の模式図を参
照して説明する。図6は酸素−アセチレン炎バーナーを
用いた燃焼炎法を示す模式図であり、601はバーナ
ー、602は基体、603は内炎、604は外炎、60
5は基体ホルダーであって基体を冷却するために水冷さ
れている。
【0068】ガス流量はアセチレン:1.5リットル/
min、酸素:1.4リットル/minで、さらにホウ
酸(B23)をメタノールに溶解したもの(1000p
pm)を水素ガス500sccmでバブリングし、原料
ガス中にホウ素をp型不純物として導入した。基板温度
は610℃、合成時間は30分間とした。これにより、
平坦性の良好なダイヤモンド結晶膜が形成された。な
お、同様の条件で別途作成したダイヤモンド膜につい
て、反射型電子線回折装置を用いて結晶性の評価を行な
ったところ、結晶面が{111}面の単結晶ダイヤモン
ド膜であることが分かった。
【0069】(4)次に、フォトリソグラフィーのレジ
ストプロセスにより、所定の位置にSiO2マスク10
4を形成した。
【0070】(5)次いで、n型ダイヤモンド層105
を燃焼炎法で形成した。合成条件は、ガス流量をアセチ
レン:1.5リットル/min、酸素1.4リットル/
minで、さらに、五酸化リン(P25)をメタノール
に溶解したもの(1000ppm)を水素ガス500s
ccmでバブリングし、原料ガス中にリンをn型不純物
として導入し、合成時間を5分とした以外は上記(1)
と同様である。
【0071】n型ダイヤモンド層はSiO2マスク10
4上には析出せず、そのマスクの開口部(ダイヤモンド
層103露出部)にのみ選択的に析出した。
【0072】(6)次に、フォトリソグラフィー技術を
用いてTi電極106、銀層(10nm厚)112、S
iO2絶縁層107およびポリシリコン引き出し層10
8をいずれも所定の位置に形成した。
【0073】以上のように形成した半導体電子放出素子
を、10-8Pa以下の真空度まで排気した真空槽中に設
置し、電極106と109との間に逆バイアス電圧Vb
を印加するとp型ダイヤモンド層103からn型ダイヤ
モンド層105へ電子が注入され、注入電子はn型ダイ
ヤモンド層105および銀層112を通り抜け、真空領
域にしみ出し、さらに引き出し電極108と電極106
との間に引き出し電圧Vgを印加することにより、電子
を素子外部に放出することができる。
【0074】なおこの時の放出電流密度は、後述の比較
例1に比べて約10倍と大幅に向上していた。
【0075】(比較例1)シリコン単結晶基板に、ダイ
ヤモンド結晶核発生密度増加のため、基板前処理として
ダイヤモンド砥粒による傷つけ処理を行ない、さらに、
この基板に多結晶膜ダイヤモンド半導体層を直接形成し
て、それを用いる以外は実施例と同様にして半導体電子
放出素子を作成し、その放出電子量を測定した。このと
きの放出電子量は実施例1の約10分の1で、さらに、
多結晶膜の表面凹凸による電界印加の不均一化のために
素子寿命も約10分の1であった。
【0076】(実施例2)本実施例では、ショットキー
型電子放出素子形成の例を示す。図2aは形成される素
子の平面図であり、図2bはそのB−B’断面図であ
る。
【0077】図において、201はp+型半導体基板で
あり、本実施例ではSi{111}面基板を用いた。2
02はp型炭化珪素単結晶層で、203はp型ダイヤモ
ンド単結晶層である。204は絶縁性選択堆積用マスク
であり、ここではSiO2層を用いた。205はp+型ダ
イヤモンド層であり、206はショットキー電極であ
り、ここではタングステン(仕事関数:4.5eV)を
用いている。207は絶縁層であり、208は引き出し
電極である。209は上記Si基板201の裏面にAl
を蒸着したオーミックコンタクト用電極である。210
は電極206と209との間に逆バイアス電圧Vbを印
加するための電源であり、211は電極206と引き出
し電極208との間に引き出し電圧Vgを印加するため
の電源である。 この素子は、次の方法で形成した。
【0078】(1)p+型Si基板201上に、炭化珪
素単結晶層202を形成した。形成方法は公知の熱CV
D法で、形成条件は、C38−SiH4−H2系、圧力:
1気圧、基板温度:1300℃であった。これにより、
炭化珪素{111}面単結晶層が約1μm形成された。
【0079】(2)次に、実施例1の(2)と同様なマ
イクロ波プラズマCVD装置を用いてバイアスプラズマ
処理を行なった。プラズマ処理条件は、メタン(40
%)−水素系ガスを用い、圧力:25Torr、マイク
ロ波出力:250W、バイアス電圧:120V(直流バ
イアス)、処理時間30分間とした。
【0080】(3)続いて、上記の(2)と同一の装置
を用い、今度はダイヤモンド形成を行なった。形成条件
は、原料ガス流量が水素:200ml/min、メタン
2ml/min、酸素0.6ml/min、B26(濃
度100ppm、水素希釈):1ml/minで、フィ
ラメント温度2000℃、基体温度:650℃、圧力1
00Torr、合成時間:12時間とした。これによ
り、平坦性の良好なダイヤモンド結晶膜が形成された。
なお、同様の条件で別途作成したダイヤモンド膜につい
て反射型電子線回折装置を用いて結晶性の評価を行なっ
たところ、結晶面が{111}面の単結晶ダイヤモンド
膜であることが分かった。
【0081】(4)次に、フォトリソグラフィーのレジ
ストプロセスにより、所定の位置にSiO2マスク20
4を形成した。
【0082】(5)次いで、p+型ダイヤモンド層20
5を上記(3)と同様のマイクロ波プラズマCVD法で
形成した。形成条件としては、B26(濃度100pp
m、水素希釈):10ml/minとした以外は上記
(3)と同様である。
【0083】p+型ダイヤモンド層はSiO2マスク20
4上には析出せず、そのマスクの開口部(ダイヤモンド
層203露出部)にのみ選択的に析出した。
【0084】(6)次に、フォトリソグラフィー技術を
用いてタングステン電極(10nm厚)206、SiO
2絶縁層207およびポリシリコン引き出し層208を
いずれも所定の位置に形成した。
【0085】以上のように形成した半導体電子放出素子
を、実施例1と同様の真空槽中に設置し、ショットキー
電極206と209との間に逆バイアス電圧Vbを印加
するとp+型ダイヤモンド層205とショットキー電極
206との界面でアバランシェ増幅が生じ、生成したホ
ットエレクトロンはショットキー電極206を通り抜
け、真空領域にしみ出し、さらに引き出し電極208と
ショットキー電極206との間に引き出し電圧Vgを印
加することにより、電子を素子外部に放出することがで
きる。
【0086】なおこの時の放出電流密度は、後述の比較
例2に比べて約12倍と大幅に向上していた。
【0087】(実施例3〜5ならびに比較例2および
3)基板および基板処理法を表1のように変化させる以
外は、実施例2と同様にして半導体電子放出素子を作成
し、その放出電子量を測定した。その測定結果は、処理
条件および処理法とともに、表1に示した。
【0088】
【表1】 *放出効率は、比較例2を基準(=1倍)として表し
た。
【0089】表1に示した通り、実施例3〜5において
は、ダイヤモンド{111}面単結晶層が析出した。ま
た、比較例2では多結晶ダイヤモンド層の形成が、比較
例3ではダイヤモンド結晶の核発生密度が低くダイヤモ
ンド結晶粒子が点在しているのが確認された。また比較
例4では、ダイヤモンド{100}面単結晶層が析出し
た。電子放出効率については、実施例3〜5において良
好な結果が得られている。
【0090】(比較例4)ダイヤモンド形成に先立ち、
+型Si半導体基板をダイヤモンド砥粒を用いた超音
波処理で傷つけ処理を行ない、ダイヤモンド結晶の核発
生密度を高くする以外は、実施例2と同様にして半導体
電子放出素子を形成した。
【0091】なおこの時、ダイヤモンド半導体層は凹凸
の大きい多結晶膜となった。
【0092】得られた半導体電子放出素子の放出電流効
率は、実施例2の半導体電子放出素子の場合の約10分
の1以下であり、また半導体層表面の凹凸のため、電界
印加が不均一となり、素子寿命も約10分の1以下であ
った。
【0093】(実施例6)本実施例では、電子放出素子
を同一基板上に複数個形成した。
【0094】まず、実施例2と同様にシリコン{11
1}面単結晶基板上に炭化珪素{111}面単結晶膜を
形成した。次に、公知の光描画法を用いて、炭化珪素膜
上に間隔1mmで100μmの窓の開いた酸化珪素膜を
形成した。
【0095】次に実施例2と同様の条件でプラズマ処理
を行ない、同一装置内でp型ダイヤモンド単結晶層の形
成を行なった。この時、酸化珪素膜の絶縁性のため、そ
の膜上にはプラズマ処理の効果は生じないことから、ダ
イヤモンド結晶の形成は、炭化珪素膜が表面に露出して
いる部分のみに起こった。
【0096】さらに、各ダイヤモンド結晶形成部に、実
施例2と同様にp+ダイヤモンド結晶層、絶縁層、電極
などを形成し、電子放出素子を形成した。
【0097】このようにして形成した電子放出素子は、
それぞれ良好な電子放出効率を有し、また各素子間の電
子放出電流値のばらつきも、約10%以内と小さいな
ど、良好な特性を有していることがわかった。
【0098】このように形成した電子放出素子は、マル
チの電子放出素子として用いることができる。
【0099】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
り、高い電子放出効率を有し、長寿命の半導体放出素子
を得ることができる。このような半導体放出素子を用い
ることにより、信頼性の高いディスプレイ、EB(エレ
クトロンビーム)描画装置、真空管、電子線プリンタ
ー、メモリーなどを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のpn接合型電子放出素子の1実施態様
を示す模式図であり、aは平面図、bはaのA−A’断
面図である。
【図2】本発明のショットキー接合型電子放出素子の1
実施態様を示す模式図であり、aは平面図、bはaのB
−B’断面図である。
【図3】pn接合型半導体電子放出素子におけるエネル
ギーバンドを模式的に示す図であり、aはp型およびn
型ダイヤモンドによるpn接合型素子のもの、bはヘテ
ロpn接合型素子のものである。
【図4】ショットキー接合型の半導体電子放出素子にお
けるエネルギーバンドを模式的に示す図である。
【図5】マイクロ波プラズマCVD装置の模式図であ
る。
【図6】燃焼炎法の装置模式図である。
【符号の説明】
101 p+型半導体基板 102 ニッケル単結晶層 103 p型ダイヤモンド層 104 絶縁性選択堆積用マスク 105 n型ダイヤモンド層 106 電極 107 絶縁層 108 引き出し電極 109 オーミック電極 110,111 電源 112 仕事関数低下材料 201 p+型半導体基板 202 p型炭化珪素単結晶層 203 p型ダイヤモンド層 204 絶縁性選択堆積用マスク 205 p+型ダイヤモンド層 206 ショットキー電極 207 絶縁層 208 引き出し電極 209 オーミック電極 210,211 電源 501 石英反応管 502 ガス導入口 503 メッシュ電極 504 マイクロ波導入管 505 基体 506 基体ホルダー 507 基体バイアス用電源 508 ガス排気口 601 バーナー 602 基体 603 内炎 604 外炎 605 基体ホルダー

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に半導体層として少なくともダイ
    ヤモンド半導体層を形成する半導体電子放出素子形成方
    法において、絶縁性ないし半導体性の結晶基体上にニッ
    ケル{111}面単結晶層を形成した後、少なくとも炭
    素を含むプラズマ中で基体にバイアスを印加させるプラ
    ズマ処理を行ない、さらに該単結晶層上にダイヤモンド
    半導体結晶層を含むダイヤモンド結晶{111}面単結
    晶層をエピタキシャル成長させることを特徴とする半導
    体電子放出素子形成方法。
  2. 【請求項2】 基板上に半導体層として少なくともダイ
    ヤモンド半導体層を形成する半導体電子放出素子形成方
    法において、絶縁性ないし半導体性の結晶基体上に炭化
    珪素{111}面単結晶層を形成した後、少なくとも炭
    素を含むプラズマ中で基体にバイアスを印加させるプラ
    ズマ処理を行ない、さらに該単結晶層上にダイヤモンド
    半導体結晶層を含むダイヤモンド結晶{111}面単結
    晶層をエピタキシャル成長させることを特徴とする半導
    体電子放出素子形成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の方法によって形
    成される半導体電子放出素子。
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