JPH07110390A - 水素保存材およびその製造方法 - Google Patents

水素保存材およびその製造方法

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JPH07110390A
JPH07110390A JP5280194A JP28019493A JPH07110390A JP H07110390 A JPH07110390 A JP H07110390A JP 5280194 A JP5280194 A JP 5280194A JP 28019493 A JP28019493 A JP 28019493A JP H07110390 A JPH07110390 A JP H07110390A
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hydrogen
metal
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film
potential
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JP5280194A
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Keiji Kunimatsu
敬二 國松
Masafumi Kobayashi
雅史 小林
Toshihide Nakada
俊秀 中田
Shigenobu Tsutazumi
重伸 傳住
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Technova Inc
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  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 電解法により水素またはその同位体を高濃度
に吸蔵することができ、しかも吸蔵した水素またはその
同位体の放出量を制御できる水素保存材、その製造方
法、および水素保存材からの水素またはその同位体の放
出制御方法を提供する。 【構成】 電解液4中に浸した水素吸蔵性金属である陰
極3に、電解法により水素またはその同位体を吸蔵させ
る。得られた水素またはその同位体を吸蔵した陰極3の
表面に、水素の拡散係数が小さく、かつ電気化学的に電
着および溶出・脱離が可能な金属の放出障壁膜を電着に
より形成する。放出障壁膜に使用できる金属には、例え
ばAgが用いられる。水素放出量を制御するには、up
d電着電位よりも負の電位側での電着により、水素吸蔵
性金属の表面に金属の電着膜を形成し、またバルク電着
電位よりも正電位側での酸化により、電着膜の溶出・脱
離を行なって、放出障壁膜の膜厚を調整して水素または
その同位体の放出量を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水素またはその同位体
の高濃度の吸蔵およびその長期保存を可能にすると共
に、保存された水素またはその同位体の放出量の制御を
可能にする水素保存材、その水素保存材の製造方法、お
よび水素またはその同位体放出量制御方法に関する。本
発明における水素またはその同位体放出量制御技術は、
コールド・フュージョン等への応用が可能である。
【0002】
【従来の技術】1989年3月ユタ大学でポンス教授と
フライシュマン教授らにより発表されたエネルギー発生
装置は、パラジウム等の水素吸蔵性金属材料を陰極とし
白金を陽極として、直流電流を供給して重水酸化リチウ
ムLiODを含んだ重水D2 Oの電気分解を行ない、電
解において陰極で発生した重水素原子を陰極に吸蔵し続
けることによって、入力エネルギーに対して高い出力エ
ネルギーを得るものである(特公表4−506564号
公報)。
【0003】このような水素吸蔵性金属材料へ重水素を
保存および水素放出抑制させる方法には、例えば、真空
チャンバ内でパラジウム板の片側の面にMn、Si、P
b等の酸化皮膜、もしくはAuの薄膜を蒸着し、その
後、真空チャンバ内に1〜40気圧の重水素ガスを導入
し、重水素ガス中でパラジウムに重水素を吸蔵させた
後、他方の面に金の蒸着膜を形成して、Pd板の両面に
水素放出障壁膜を形成することにより、重水の保存を長
期可能にし、試料への通電加熱時に重水素が放出されな
いようにすることが特開平3−183987号公報によ
りガス法による重水素吸蔵法として知られている。
【0004】一方、電解液が収容され且つ重水素ガスが
充填された圧力容器内または常圧容器内で、触媒を担持
した反応層とガス供給層からなる陽極と、水素吸蔵性金
属である陰極とにより電解して陰極に重水素を吸蔵させ
た、いわゆる電解法による重水素吸蔵方法は、例えば、
特開平5−209976号公報により知られており、該
電解装置によれば、陽極においては、酸素を発生するこ
となく次の式(1)で示す反応が行なわれており、生成
された重水素イオンD+ が陰極に到達し、重水素原子D
として吸蔵されることが明らかにされている。
【0005】
【化1】
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のガス法によ
る重水素吸蔵技術において水素吸蔵性金属材料中の重水
素を放出するには、加熱することによりパラジウムへの
水素の溶解度を下げることによって重水素を放出するこ
とはできるが、その放出量を制御することは困難であっ
た。
【0007】本出願人は、電解法により、重水素を陰極
(パラジウム)に吸蔵し、その陰極表面にAu電着膜を
電解により形成して重水素の放出を阻止する放出障壁膜
とすることにより、長期にわたり保存できる技術を発明
し、既に出願している(特願平5−60943号)。
【0008】しかしながら、該特願平5−60943号
の発明では、Pd表面のAu電着膜が放出障壁膜として
形成されているため、水素またはその同位体(例えば、
重水素)の保存にはこの放出障壁膜は有効であるが、A
u電着膜は化学的に安定な金属であり、腐食、酸化など
に対して強い耐性を有するため、Au電着膜を電解酸化
によって溶出・脱離させて水素又はその同位体を放出さ
せることは困難であり、従って放出量を自由に制御する
ことはできなかった。
【0009】本発明者らは、放出障壁膜の膜厚を自由に
制御すれば、水素の透過と保存とを制御できる放出障壁
膜となるであろうという可能性について着目した。しか
しながら、Au電着膜は電解酸化によって溶出・脱離さ
せることはできないので、水素またはその同位体を水素
吸蔵性金属に吸蔵して、放出障壁膜を形成後に、その膜
厚を自由に調節することは極めて困難である。
【0010】そこで本発明は、上記した問題点を解決
し、吸蔵した水素またはその同位体の放出量を制御でき
る水素保存材およびその水素保存材の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決す
るために本発明は、水素またはその同位体(例えば、重
水素)が高濃度に吸蔵されている水素吸蔵性金属の表面
に、水素の拡散係数が小さく、かつ電気化学的に電着お
よび溶出・脱離が可能な金属の放出障壁膜が形成されて
いることを特徴とする水素保存材とするものである。
【0012】また本発明は、電解液中に浸した水素吸蔵
性金属に、電解法により水素またはその同位体を吸蔵さ
せ、得られた水素またはその同位体を吸蔵した水素吸蔵
性金属の表面に、水素の拡散係数が小さく、かつ電気化
学的に電着および溶出・脱離が可能な金属の放出障壁膜
を電着により形成することを特徴とする水素保存材の製
造方法とするものである。
【0013】
【作用】本発明によれば、水素吸蔵された水素吸蔵性金
属に対して、水素の拡散係数が小さく、かつ電気化学的
に電着および溶出・脱離が可能な金属のイオンを含む電
解液中で電解を行ない、電気化学的に電着および溶出・
脱離が可能な金属の放出障壁膜の形成、またはその放出
障壁膜の溶出・脱離を行なってその放出障壁膜の膜厚を
制御することができる。
【0014】本発明において放出障壁膜の膜厚を制御す
る方法は、例えばupd電着電位よりも負の電位で電解
することにより、水素吸蔵性金属の表面に金属の放出障
壁膜を形成することができ、バルク電着電位よりも正電
位側での酸化により、放出障壁膜の溶出・脱離を行なう
ことができる。この電着膜の形成または溶出・脱離の挙
動を、水素吸蔵性金属としてPdを例にし、水素の拡散
係数が小さく、かつ電気化学的に電着および溶出・脱離
が可能な金属としてAgを例にして、図1、図2に基づ
いて次に説明する。
【0015】図1は、Pd電極上にAgが電着されて形
成された、放出障壁膜を有する水素保存材を示す。31
はパラジウム電極、32はパラジウム電極31表面に電
着されたAgのアンダーポテンシャルデポジション層
(以下、upd層という)、33はさらにそのupd層
32の上に電着されて形成されたAgのバルク層であ
る。また、白丸はパラジウム電極31中のPd原子、黒
四角はAgのupd層32のAg原子、白四角はAgの
バルク層33のAg原子をそれぞれ示す。パラジウム電
極31にAgを電着した場合、まずパラジウム電極31
表面に、第1層としてupd層32が形成され、さらに
この上にバルク層33が形成される。
【0016】図2は、バルク電着電位E0 およびupd
電着電位EU と、Agのバルク層およびupd層の形
成、溶出・脱離の関係を示したものである。バルク層は
標準電極電位E0 より負電位側のオーバーポテンシャル
領域では、バルク層の形成が行なわれ、正電位側のアン
ダーポテンシャル領域ではバルク層の溶出・脱離が行な
われる。一方、upd層は、バルク層が溶出・脱離する
ような正電位側の領域でも電極表面に残っているが、u
pd電着電位EU よりもさらに正電位の領域では、up
d層は溶出・脱離される。したがって、upd電着電位
U よりも正の領域では、パラジウム電極表面には全く
Agの電着膜が存在しない。
【0017】本発明において、水素の拡散係数が小さ
く、かつ電気化学的に電着および溶出・脱離が可能な金
属の放出障壁膜の形成は、水素吸蔵性金属の全面または
部分的であってもよい。また、本発明の水素保存材での
水素またはその同位体の放出は、上記の膜厚調整に加え
て、自然発生的あるいは外部から熱や応力を加えること
により起こる。そして熱や応力を加える場合は適当な厚
さの膜が表面にあれば、吸蔵水素を非定常な状態にする
ことも可能である。
【0018】このような水素の吸蔵量をコントロールで
きる水素保存材、その製造方法、水素またはその同位体
放出量制御方法、およびその制御装置は、いわゆる、co
ld fusion による発熱現象等の応用分野に適用されるこ
とが可能である。また電解触媒として有機物の電解還元
および酸化するために使用されるのも可能である。また
水素を輸送するための容器として用いる場合は、加圧機
構や取り出すためのバルブが必要ないので装置の軽量化
及び簡素化がはかれる。
【0019】
【実施例】本発明の実施例について、図面を用いて詳細
に説明する。
【0020】水素保存材製造装置および水素放出量制御
装置 図3は、本発明の水素保存材の製造装置を兼ねた水素保
存材からの水素放出量制御装置の1例を示す。1はガラ
ス容器の電解槽であり、その内部に陽極2と陰極3が配
置されており、電解液4を収容している。
【0021】陽極2は、Pt/Pt網で構成され、円筒
型に成形されて電解槽1と同軸的に配設される。陰極3
には、水素吸蔵性金属材の一例としてPdが採用されて
おり、厚さ0.05mm、縦5mm、横8mmの矩形板
に成形されて、電解槽1の中央に配置されている。電解
液4には、0.5MのH2 SO4 溶液の60mlが使用
されている。
【0022】一方、電解槽1の近傍には参照電極槽5が
配置されており、細管6により電解槽1と参照電極槽5
が各槽の低部において通じている。その細管6の中間位
置には、電解液4の連通を切り換える切替コック61が
設けられている。参照電極槽5内には、可逆水素電極
(RHE)で構成された参照電極7が、電解液4に浸漬
されて配置されている。電解槽1の上部には、水素の拡
散係数が小さく且つ電気化学的に電着および溶出・脱離
が可能な金属のイオンを含む電解液、即ち、電解メッキ
液8を注入するための開口9が形成されており、該開口
9は蓋10により閉口できるようになっている。
【0023】11は、電解を行なうための電流源であ
り、制御装置12により、制御された電流が電解槽1内
の陽極2および陰極3に供給される。また、制御装置1
2は参照電極7にも連結されている。この電流源11お
よび制御装置12はポテンショスタットにより構成され
ている。
【0024】予備実験 本発明を実施する前に次のような実験を行なった。図1
0は、水素を吸蔵していないパラジウム電極に対して、
0.5M H2 SO4 、1mM AgNO3 の電解液中
で、陰極印加電位を300〜1500mVの範囲で5m
V/secの走査速度でスィープして印加することによ
り、パラジウム電極の表面に形成されたAg電着膜の層
数の変化を示したものである。図10によれば、650
mVより正電位領域では、Ag電着層が次の式(2)に
示す反応によって電解酸化され、Ag+ イオンとなって
溶液中に溶出・脱離し、1500mVまで達すると表面
からAg電着層は完全に除去される。
【0025】
【化2】 これに対して、650mVよりも負電位領域では、Ag
電着層の溶出・脱離は起こらず、保持される。この実験
からは、水素を吸蔵しているパラジウム電極表面に形成
されたAg放出障壁膜についても、Ag電着膜の形成お
よび溶出・脱離は同様な挙動をすると考えられる。した
がって、放出障壁膜の厚さを簡単に制御できると考えら
れる。
【0026】そこで、上記反応によって流れた電気量を
モニターすることにより、陰極の表面から溶出したAg
量を求めることができる。
【0027】水素吸蔵後に表面に放出障壁膜が形成され
た陰極に600mVの電解電位を印加した場合、放出障
壁膜は前記式(2)に示す反応では溶出・脱離せず、保
持される。ここで、陰極(パラジウム)中の吸蔵水素が
放出されるならば、次の式(3)に示す反応によって、
水素イオン(H+ )となって電解液中に溶け出る。
【0028】
【化3】 水素吸蔵実験 60mlの0.5M H2 SO4 溶液中の陽極および陰
極に−400mVの電解電位で電解を行ない、電解時間
(秒)に対する陰極(パラジウム)の水素吸蔵率(H/
Pd)を測定した。その結果を図4に黒丸で示す。別
に、電解電流−60mA/cm2 で同じように電解を行
ない、電解時間(秒)に対する陰極(パラジウム)の水
素吸蔵率(H/Pd)を測定した。その結果を図4に白
三角で示す。図4によれば、電解を開始して300秒後
に陰極(パラジムウ)に水素が飽和され、その後は一定
の水素吸蔵率(H/Pd≒0.78)となることが分か
る。なお、陰極に印加する電圧は、以下の実験において
も、すべて参照電極の電位を基準として印加されてい
る。
【0029】重水素吸蔵実験 電解液にD2 SO4 溶液を用い、前記水素吸蔵実験と同
じようにして電解を行ない、283Kにおける入力電荷
に対する陰極での重水素吸蔵率を測定した。その結果を
図5に示す。図5に示された入力電荷について、重水素
吸蔵率(D/Pd)はほぼ0.75であることが分か
る。
【0030】水素保存材の製造 前記水素吸蔵実験と同じ条件でパラジウムからなる陰極
に水素を吸蔵させた。このとき電解時間は、水素吸蔵量
が飽和量に達していることを保証するために、3600
秒(60分)とした。得られた陰極の水素吸蔵率H/P
dは約0.78であった。
【0031】陰極への水素吸蔵終了後、前記水素吸蔵率
を維持した状態で放出障壁膜を形成するために、陰極印
加電位が−400mVの条件下で、0.6M AgNO
3 の0.1mlを測りとり、電解槽へ添加した。−40
0mVで5分間電着を行なって、陰極の表面に膜厚0.
9μmのAgの電着膜を形成した。
【0032】得られた電着膜の形成された陰極の斜視図
を図6に示し、図6のA−Aにより切断した場合の断面
図を図7に示す。図6において、31はパラジウム電
極、34はパラジウム電極31の表面に形成されたAg
電着膜の放出障壁膜である。
【0033】水素保存材の水素保持試験 前記で得られた放出障壁膜を有する水素吸蔵率(H/P
d)が約0.78の水素保存材に対して、600mVの
電解電位を印加して時間の経過に対する水素吸蔵率の変
化を調べた。また、比較例として、放出障壁膜が形成さ
れていない同じパラジウムからなる水素保存材に対し
て、前記水素の保持試験と同一の条件で実験を行ない、
時間の経過に対する水素吸蔵率の変化を調べた。得られ
た結果を図8にグラフとして示す。
【0034】図8によれば、本実施例の陰極は、時間が
経過しても水素吸蔵率(H/Pd)は約0.78と変化
していないが、これに対して、放出障壁膜が形成されて
いない水素保存材は、時間の経過と共に水素の放出が生
じ、印加して500秒後には、吸蔵水素の約98.3%
が放出していることが分かる。したがって、Agの放出
障壁膜をPdからなる電極の表面に形成すれば、水素の
放出を抑制し、長期にわたる水素の高濃度保持が可能で
あることが分かる。
【0035】水素保存材の水素放出制御試験 次に、前記で得られた放出障壁膜を有する水素吸蔵率H
/Pdが約0.78のパラジウム電極に対して、0.5
M H2 SO4 、1mM AgNO3 の電解液中で陰極
印加電位を5mV/secの走査速度で600mVから
1500mVまで連続的に変化させ、さらに1500m
Vで保持して、電流密度を測定した。得られた結果を図
9にグラフとして示した。なお、図9中の右上に示すグ
ラフは、時間の経過に対する、パラジウム電極に印加し
た電解電位の変化を示している。
【0036】図9によれば、600〜820mVの印加
電位において、Agのバルク層が完全に溶出・脱離され
るが、電極表面にはAgのupd層が存在している状態
であることが分かる。また、この範囲においては、60
0〜820mVまでの酸化電流を積分して求めた電気量
と、Agのバルク層の溶出・脱離に伴う電気量がほぼ同
じになることから、印加電位が820mVに達するまで
は水素がほとんど放出されていないと理解される。そし
て、印加電位が820mVを越えた付近で電流密度が立
ち上がっているが、この部分は、水素の放出が始まった
ことを示すものと理解される。続いて、印加電位が95
0mVのとき、電流密度が立ち上がっているが、このこ
とはさらに水素放出速度が速くなったことを意味し、し
たがって、upd層の溶出・脱離が900mV辺りから
始まり、正の電位側になるほど、upd層の被覆率は小
さくなっていることが理解される。
【0037】なお、Pd表面が完全に露出するのは電位
にして、1200〜1300mV程度である。また、印
加電位が1000mVを越えると電流密度が減少する
が、これは印加電位950mVを越えた辺りから水素放
出速度は最大限に達し、その後、パラジウム電極内に吸
蔵されていた水素はどんどん放出され、その水素量は減
っていき、次第にその放出速度はパラジウム中の水素の
拡散によって決定されるようになるからである。
【0038】この水素放出制御試験によれば、陰極印加
電位を5mV/secの速さで600mVから1500
mVまで連続的にスィープさせることにより、水素の放
出速度を3段階に制御できることがわかる。また、放出
障壁膜の厚さを調節することにより、最大で約0.2A
/cm2 の電流密度の酸化電流が流れたことが分かる。
【0039】以上の実験によれば、本実施例の水素放出
量の制御方法およびその制御装置は、水素保存処理後で
も水素の放出を可能にし、その放出量を制御できる。本
実施例によれば、パラジウムで構成される陰極に印加す
る電解電位の制御によって、水素吸蔵性金属への水素の
吸蔵、水素保存材の製造、放出障壁膜の溶出を行なうの
で、全ての工程を同一の装置で行なうことができるとい
う効果を有する。
【0040】また、本実施例は、本発明の説明のために
例示したものであり、本発明はそれらに限定されるもの
ではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図
面の記載から当業者が認識することができる本発明の技
術的思想の趣旨に基づいて解釈されるべきものであり、
その変更または付加が可能である。
【0041】本発明においては、メッキ金属は、本実施
例で1例として示したAgに限定されるものではなく、
電気化学的に電着および溶出・脱離が可能な金属であ
り、使用する水素吸蔵性金属と密着性のよいもので、且
つ使用する水素吸蔵性金属よりも水素原子の拡散係数が
小さいものであればどのようなメッキ金属でもよく、例
えば、Zn、Cu、Ni、Mo、Pbその他の金属が使
用可能である。
【0042】また、電着膜を初めからピンホールのない
平滑及び均一な薄い膜でも放出制御が可能である。
【0043】また、本実施例は主として水素Hについて
の保存に係る実施例を説明しているが、重水素Dについ
ても同様に上記例が適用でき、同等の効果が得られるこ
とが理解される。
【0044】本発明においては、メッキ金属イオンの供
給を本実施例において1例として示したメッキ用水溶液
の添加の形態に限定するものではなく、メッキ金属を電
極として電解液内に配置しておき、これを電解溶出する
ことによって、メッキ金属イオンを供給する方法および
その装置も使用可能である。
【0045】本発明においては、水素保存材の製造方法
およびその製造装置、水素放出量の制御方法およびその
制御装置は、本実施例において例示した電解液の電解層
を用いた場合に限定されるものではなく、3電極構成を
とり、パラジウムのような水素吸蔵性金属を陰極とする
ものであれば何でもよく、いわゆる電解法による重水素
吸蔵方法、例えば、特開平5−209976号公報に記
載の電解セルを用いた方法およびその電解装置も使用可
能である。
【0046】
【発明の効果】本発明の水素保存材は、水素またはその
同位体が高濃度に吸蔵されている水素吸蔵性金属の表面
に、水素の拡散係数が小さく、かつ電気化学的に電着お
よび溶出・脱離が可能な金属の放出障壁膜が形成されて
いるので、水素吸蔵性金属内へ水素またはその同位体を
長期に保持し、且つ吸蔵した水素またはその同位体の放
出を制御して行なうことができる。
【0047】本発明の水素保存材の製造方法は、水素ま
たはその同位体を吸蔵した水素吸蔵性金属の表面に、水
素の拡散係数が小さく、かつ電気化学的に電着および溶
出・脱離が可能な金属の放出障壁膜を電着により形成し
ているので、簡単な製造法で水素吸蔵性金属内へ水素ま
たはその同位体を長期に保持することができ、且つ吸蔵
した水素またはその同位体の放出することができる水素
保存材を提供できる。
【0048】本発明の水素またはその同位体放出量制御
方法は、水素保存材に印加する電位を変化させることに
より、放出障壁膜の膜厚を変化させることができ、その
ため水素の放出速度を段階的に制御することができる。
【0049】本発明の水素吸蔵性金属への水素の吸蔵、
水素保存材の製造、放出障壁膜の溶出・脱離の各工程
は、全て同一の装置で行なうことができるので、本発明
の工程および装置は簡単なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Pd電極上にAgが電着されて形成された、放
出障壁膜を有する水素保存材を示す。
【図2】バルク電着電位E0 およびupd電着電位EU
と、Agのバルク層およびupd層の形成、溶出・脱離
の関係を示す。
【図3】本発明の水素保存材の製造装置を兼ねた水素保
存材からの水素放出量制御装置の1例を示す。
【図4】電解時間(秒)に対する陰極の水素吸蔵率(H
/Pd)の関係を示す。
【図5】入力電荷に対する陰極での重水素吸蔵率の関係
を示す。
【図6】本発明の水素保存材である電着膜の形成された
陰極の斜視図である。
【図7】図6のA−Aにより切断した場合の断面図であ
る。
【図8】本発明の水素保存材および比較例の時間の経過
に対する水素吸蔵率の変化を示す。
【図9】水素を吸蔵している本発明のパラジウム電極に
対して、0.5M H2 SO4、1mM AgNO3
電解液中で、陰極印加電位を600mVから1500m
Vの範囲で、5mV/secの走査速度で連続的に変化
させた場合の電流密度の変化を示す。
【図10】水素を吸蔵していないパラジウム電極に対し
て、0.5M H2 SO4 、1mM AgNO3 の電解
液中で、陰極印加電位を300〜1500mMの範囲で
5mV/secの走査速度でスィープして印加すること
により、パラジウム電極の表面に形成されたAg電着膜
の層数の酸化・脱離による変化を示す。
【符号の説明】
1 電解槽 2 陽極 3 陰極 4 電解液 5 参照電極槽 6 細管 7 参照電極 8 電解メッキ液 9 開口 10 蓋 11 電流源 12 制御装置 31 パラジウム電極 32 upd層 33 バルク層 34 放出障壁膜 61 切替コック
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中田 俊秀 北海道札幌市厚別区大谷地東3丁目5−1 アルファロジェ305 (72)発明者 傳住 重伸 北海道札幌市豊平区平岡10条1丁目22−23

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素またはその同位体が高濃度に吸蔵さ
    れている水素吸蔵性金属の表面に、水素の拡散係数が小
    さく、かつ電気化学的に電着および溶出・脱離が可能な
    金属の放出障壁膜が形成されていることを特徴とする水
    素保存材。
  2. 【請求項2】 (1)電解液中に浸した水素吸蔵性金属
    に、電解法により水素またはその同位体を吸蔵させ、 (2)得られた水素またはその同位体を吸蔵した水素吸
    蔵性金属の表面に、水素の拡散係数が小さく、かつ電気
    化学的に電着および溶出・脱離が可能な金属の放出障壁
    膜を電着により形成することを特徴とする水素保存材の
    製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1304502A2 (en) 2001-10-19 2003-04-23 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Method for measuring free-state diameter of metal ring
US6708383B2 (en) 2001-10-19 2004-03-23 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Method for setting free-state diameter of metal ring

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1304502A2 (en) 2001-10-19 2003-04-23 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Method for measuring free-state diameter of metal ring
US6708383B2 (en) 2001-10-19 2004-03-23 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Method for setting free-state diameter of metal ring
US6763602B2 (en) 2001-10-19 2004-07-20 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Method for measuring free-state diameter of metal ring

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