JPH07109122A - ヘマタイト粒子の製造方法及び該ヘマタイト粒子を用いた磁気記録用強磁性粉末の製造方法及び磁気記録媒体 - Google Patents

ヘマタイト粒子の製造方法及び該ヘマタイト粒子を用いた磁気記録用強磁性粉末の製造方法及び磁気記録媒体

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JPH07109122A
JPH07109122A JP5274750A JP27475093A JPH07109122A JP H07109122 A JPH07109122 A JP H07109122A JP 5274750 A JP5274750 A JP 5274750A JP 27475093 A JP27475093 A JP 27475093A JP H07109122 A JPH07109122 A JP H07109122A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】生産スケールの影響を受けにくい結晶子サイズ
の制御および形状制御された単分散紡錘型ヘマタイト粒
子、特に平均粒子径が1μm以下で針状比が2〜8であ
る該ヘマタイト粒子を工業的に生産する方法を提供し、
得られた該ヘマタイト粒子を強磁性粉末とし、これを使
用した高密度記録に好適な磁気記録媒体を提供するこ
と。 【構成】 硝酸第2鉄及び過塩素酸第2鉄のうち少な
くとも一方からなる第2鉄塩から生成される水酸化第2
鉄を燐酸根イオン及び塩素イオンのうちの少なくとも一
方からなるイオンの存在のもとにヘマタイト微粒子の核
晶上に析出させる単分散紡錘型ヘマタイト粒子の製造方
法、で得られた粒子から強磁性粉末または強磁性
金属粉末を製造する方法、で得た強磁性粉末およ
び/または強磁性金属粉末を磁性層に含有した磁気記録
媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、顔料、塗料、触媒、フ
ェライトの原料、磁気記録用酸化鉄の原料などとして有
用な粒子サイズ分布が非常に小さい単分散紡錘型ヘマタ
イト粒子の製法の改良とこれを原料とした磁気記録用強
磁性粉末を使用した高密度記録用の磁気記録媒体に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が
可能であること、信号の電子化が容易であり周辺機器と
の組み合わせによるシステムの構築が可能であること、
信号の修正も簡単にできること等の他の記録方式にはな
い優れた特長を有することから、ビデオ、オーディオ、
コンピューター用途等を始めとして様々な分野で幅広く
利用されてきた。
【0003】そして、機器の小型化、記録再生信号の質
の向上、記録の長時間化、記録容量の増大等の要求に対
応するために、記録媒体に関しては、記録密度のより一
層の向上が常に望まれてきた。
【0004】例えば、オーディオ、ビデオ用途にあって
は、音質及び画質の向上を実現するディジタル記録方式
の実用化、ハイビジョンTVに対応した録画方式の開発
に対応するために、従来のシステムよりも一層、短波長
信号の記録再生ができる磁気記録媒体が要求されるよう
になっている。
【0005】また、パソコンの外部記憶媒体である可撓
性非磁性支持体上に磁性層を有するフロッピーディスク
に対しても、近年のパソコンの普及、アプリケーション
・ソフトの高度化、処理情報の増大の動向から10Mバ
イト以上の高容量化が強く要求されるようになってき
た。
【0006】磁気記録媒体は、非磁性支持体上に磁性層
を形成し用途に応じて、テープ、ディスクもしくはカー
ドなどの形態にして使用されている。そして、磁性層に
は強磁性粉末を分散させた塗布液を非磁性支持体上に塗
布乾燥して得られる強磁性粉末と結合剤樹脂を主体とす
るいわゆる塗布型の磁性層と蒸着もしくはスパッタリン
グ等の真空成膜法により非磁性支持体上に真空成膜して
得られる強磁性金属薄膜より成るいわゆる金属薄膜型の
磁性層がある。
【0007】記録密度の観点からは、後者の金属薄膜型
の磁性層が優れており、古くから実用化の検討がなされ
ており、8mmビデオ用途に実用化されており、さらに
超小型のデジタルビデオシステムに使用されようとして
いる。
【0008】しかしながら、金属薄膜型磁気記録媒体
は、耐久性、走行性、耐食性等に特性上の問題があり、
問題に対処するために本来の優れた特性を充分に生かし
きれていない。また、製造コストも高く経済性にも問題
があった。一方、強磁性粉末と結合剤樹脂とを主体とす
る磁性層を有するいわゆる塗布型磁気記録媒体にあって
は、走行性、耐久性、耐食性に対しては金属薄膜型より
も優れており古くから様々な用途に実用化されてきた
が、電磁変換特性に関しては、金属薄膜型には及ばず記
録密度の向上のために幾多の努力がなされてきたが限界
があった。
【0009】塗布型の磁気記録媒体の高密度記録化のた
めに、磁性層の磁気特性を改良すること、強磁性粉末の
分散性を向上させること、磁性層の表面性を高めること
等の観点から種々の方法が検討され提案されてきた。
【0010】例えば、磁気特性を高めるために強磁性粉
末に強磁性金属粉末や六方晶系フェライトを使用する方
法が特開昭58−122623号公報、特開昭61−7
4137号公報、特公昭62−49656号公報、特公
昭60−50323号公報、US4629653号、U
S4666770号、US4543198号等に開示さ
れている。
【0011】また、強磁性粉末の分散性を高めるため
に、種々の界面活性剤(例えば特開昭52−15660
6号公報,特開昭53−15803号公報,特開昭53
−116114号公報等に開示されている。)を用いた
り,種々の反応性のカップリング剤(例えば,特開昭4
9−59608号公報,特開昭56−58135号公
報,特公昭62−28489号公報等に開示されてい
る。)を用いることが提案されている。
【0012】更に、磁性層の表面性を改良するために、
塗布、乾燥後の磁性層の表面形成処理方法を改良する方
法(例えば、特公昭60−44725号公報に開示され
ている。)が提案されている。
【0013】前記の強磁性金属粉末や六方晶系フェライ
トは高密度記録用媒体の強磁性粉末として優れている
が、金属薄膜型磁気記録媒体にはその電磁変換特性は及
ばないのが実状である。特に、六方晶系フェライトにお
いては、その飽和磁化が小さく磁性層の磁束密度が高く
できないという問題があった。また、その分散性も悪
く、表面性の優れた磁性層を得ることが難しかった。
【0014】また、磁性層の自己滅磁損失や記録滅磁損
失を軽滅して記録密度を向上させる方法として、磁性層
の厚みを強磁性金属薄膜型磁気記録媒体並に薄くしてし
かもその磁性層の平面性及び強度を確保するために下層
に比較的厚い非磁性層を設けた磁気記録媒体が特開昭5
7−198536号公報、特開昭62−154225号
公報、特開昭63−187428号公報、特開平4−3
25915号公報、特開平4−325916号公報、特
開平4−325917号公報等に開示されており特に高
域での出力に優れ強磁性金属薄膜型磁気記録媒体に近い
電磁変換特性を示した。しかし、さらに電磁変換特性を
向上させようとすると以下のような強磁性粉末の粒子形
状に係わる問題があり限界があった。
【0015】即ち、金属薄膜型と微粒子メタル(強磁性
金属)粉末を使用した塗布型媒体の磁気特性を比較した
とき、メタル粉末を使用した塗布型媒体のSFD(Swit
ching Field Destribution) が金属薄膜に比較して大き
な数値を持ち、特性が劣ってることが最近明らかになっ
ており、一方、中村らは金属薄膜媒体の電磁変換特性を
改良するためシュミレーションを行い、異方性磁界分布
を改良することに短波長出力が向上することを指摘して
いる(日本応用磁気学会誌、Vol.115,155 〜158(199
1))。異方性磁界分布はSFDと強い相関があり、異方
性磁界分布が大きいとSFD(Hc分布)が大きくなる。
【0016】強磁性金属粉末では、Hc(抗磁力)に対
しては形状異方性が大きく効いていることが知られてお
り、そして強磁性粉末の粒子サイズ分布が広くなる程H
cの分布も広くなることが知られている。このために強
磁性金属粉末の原料となる針状粒子であるゲータイト、
レピッドクロサイト、ヘマタイトなどの粒子サイズ分布
を小さくしようとする試みが絶えず継続されている。テ
ープの表面の粗さを減少し短波長出力を改良するために
微粒子の強磁性金属粉末を使用する時は、長軸長や短軸
長のバラツキがHc分布に大きな影響を与えてしまっ
た。
【0017】以上のように、従来の磁気記録媒体よりも
さらに特性を上げて記録密度を向上させるためには、強
磁性金属粉末の粒子サイズが小さくてなおかつその粒子
サイズ及び形状ができるだけ均一なものが望まれる。そ
れぞれの粒子がよく分離しており、粒子サイズ分布が非
常に小さい粒子は単分散粒子と呼ばれている。粒子サイ
ズと触媒性能や粒子間相互作用を研究するために単分散
粒子を合成する研究が進められている(例えば、表面、
29,978(1991)、同23,177(198
4))。単分散の紡錘型ヘマタイトを合成する方法は、
M.OzakiらによりJ.Colloid Inte
rface Sci.102 146〜151(198
4)に報告されている。彼等は第1の方法として、0.
02モルの塩化第2鉄と1.0×10-4〜4.0×10
-4モルのNaH2 PO4 もしくはNaH2 PO2 を含有
する液体を100±2℃で2日間保持し、粒子長0.1
2〜0.55μm、針状比2〜5.5の粒子を合成して
いる。第2の方法として、硝酸第2鉄に水酸化ナトリウ
ムを加え、水酸化第2鉄とし蒸留水で水洗を繰り返し、
0.02モルの水酸化第2鉄200cm3 中に5〜20
cm3 の1NのHClと0.5〜2.5cm3 の0.1
MのNaH2PO4 を添加し、全体を蒸留水で500c
3 とし、100±2℃で2日間保持し、粒子長0.2
7〜0.33μm、針状比3〜6の粒子を合成してい
る。第1の方法において、収量を多くするため塩化第2
鉄とNaH2 PO4 もしくはNaH2 PO2 の濃度を高
めるとβFeOOHが混入し、単一相の単分散紡錘型ヘ
マタイトが得られないと報告している。また、第2の方
法では、収量を多くしようとして硝酸第2鉄を増量し水
酸化ナトリウムを加えて水酸化第2鉄を合成するとしば
しばゲル化してしまう。そのため水洗が充分に行うこと
ができず、残存している不純物の影響で単一相のヘマタ
イトが得難くなる。
【0018】M.Ozakiらは得られた単分散紡錘型
ヘマタイトを340〜400℃で1〜3時間水素還元し
次に空気を流し240℃で1〜2時間酸化しγFe2
3 とした結果をJ.Colloid Interfac
e Sci.107 199〜203(1985)に報
告している。また発明者等は先に極端に濃厚なFe(O
H)3 ゲル(約1モル/リットル)を出発物とし、中間
生成物のβFeOOHを経て疑似立方体(平均粒径約2
μm)の単分散紡錘型ヘマタイト粒子を合成した(J.
Colloid Interface Sci.15
2、587(1992))。
【0019】M.Ozakiらの方法は、単分散紡錘型
ヘマタイトからγFe2 3 を得ているが、単分散紡錘
型ヘマタイトを生成する反応液濃度が希薄なため単分散
紡錘型ヘマタイトの収量が少なく経済的に大量に合成す
ることができない。J.Colloid Interf
ace Sci.152 587(1992)の方法で
は、紡錘型ヘマタイトが得られず、かつ微細な粒子が得
られない。
【0020】本発明者らは、水酸化第2鉄をヘマタイト
微粒子核晶およびSO4 2- または燐酸根イオンの存在下
に変換して単分散紡錘型ヘマタイト粒子を製造する方法
を見い出したことを先に開示している。またこのように
して得た単分散紡錘型ヘマタイトを出発原料とした磁性
粉および磁気記録媒体は電磁変換特性が優れていること
を見いだした(特願平5−103753号明細書、同5
−158161号明細書)。
【0021】しかしながら、工業化を狙い生産スケール
を拡大した時、得られる単分散紡錘型ヘマタイト粒子の
結晶子サイズが小さいために強磁性粉末にした場合、ド
メイン(磁区)が小さくなってしまい充分な強磁性を示
さないという欠点があった。そして、特にヘマタイト粒
子にアニール処理を加えて結晶成長をさせると工程が増
えるだけではなく粒子の焼結等を招き特性が劣化する恐
れがあり、かつヘマタイト粒子を熱処理するときに粒子
形状の均一性を保つことが困難で得られる強磁性粉末の
Hc、およびHc分布が劣ることがわかった。
【0022】工業化を狙い生産スケールを拡大した時で
も、生産スケールの影響を受けにくい微細で単分散紡錘
型ヘマタイト粒子をつくりこれを強磁性粉末とし、得ら
れた強磁性粉末を使用し走行性、耐久性、保存性等の実
用特性及び経済性にすぐれ、かつ電磁変換特性が良好で
塗布型であっても金属薄膜型磁気記録媒体に匹敵し得る
高記録密度磁気記録媒体を得ることが要望されている。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来技術
の問題点に鑑み成されたものであり、工業化を狙い生産
スケールを拡大した時でも、生産スケールの影響を受け
にくい結晶子サイズの制御および形状制御された単分散
紡錘型ヘマタイト粒子、特に平均粒子径が1μm以下で
針状比が2〜8である単分散紡錘型ヘマタイト粒子を工
業的に生産する方法を提供し、得られた単分散紡錘型ヘ
マタイト粒子を強磁性粉末とし、前記強磁性粉末を使用
した高密度記録に好適な磁気記録媒体を提供することに
有る。
【0024】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、紡錘型
ヘマタイトを工業生産スケールで熱処理する時に粒子形
状の均一性が保つことが困難で得られる強磁性粉末のH
c、およびHc分布が劣る原因を鋭意研究した。その結
果、水酸化第2鉄および核晶に共存するアニオンの種類
によりヘマタイト粒子の結晶子サイズが大きく変化する
ことを見いだした。具体的には、部分中和し遊離の第2
鉄イオンが共存する状態の水酸化第2鉄ゲル懸濁液中
に、塩化第2鉄を部分中和し、遊離の第2鉄イオンが共
存する状態の水酸化第2鉄ゲル懸濁液中にヘマタイト超
微粒子を核晶として添加しさらにアニオンとして硫酸イ
オンを添加したとき得られたヘマタイトの結晶子サイズ
は250オングストロームと極めて小さいことがわかっ
た。
【0025】ヘマタイトの結晶子サイズを支配する因子
に注目し研究した結果、核晶を添加し加水分解させヘマ
タイトを成長させる時、共存するアニオンがヘマタイト
に吸着する強度が強い場合にはヘマタイトの結晶子サイ
ズが小さくなることがわかり本発明にいたった。加水分
解の際に共存させるアニオンを各種変更してヘマタイト
への吸着強度をかえ、生成したヘマタイトの結晶子サイ
ズを測定した結果、硫酸根イオンは吸着力がつよく結晶
子サイズを大きくすることが困難なことを見いだし、逆
に原料中の硝酸イオン、過塩素酸イオン、燐酸根イオン
等のアニオンが存在していると結晶子が大きくできるこ
とがわかった。つまり加水分解させるときに共存するア
ニオンにより結晶子サイズを制御できることを見いだし
た本発明にいたった。
【0026】即ち本発明の目的は、 硝酸第2鉄及び
過塩素酸第2鉄のうち少なくとも一方からなる第2鉄塩
から生成される水酸化第2鉄を燐酸根イオン及び塩素イ
オンのうちの少なくとも一方からなるイオンの存在のも
とにヘマタイト微粒子の核晶上に析出させる単分散紡錘
型ヘマタイト粒子の製造方法、、 で得られた単分
散紡錘型ヘマタイト粒子を還元してマグネタイトとした
後に、該マグネタイトを酸化してFeOX (1.33<
x≦1.5)とすることを特徴とする強磁性酸化鉄の製
造方法、 で得られた単分散紡錘型ヘマタイト粒子
を還元してマグネタイトとした後に、該マグネタイトを
還元することを特徴とする強磁性金属粉末の製造方法、
非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤樹脂を主体と
する磁性層を設けた磁気記録媒体において、該強磁性粉
末が前記で得られた強磁性酸化鉄または前記で得ら
れた強磁性金属粉末であることを特徴とする磁気記録媒
体、及び 非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤樹脂
を主体とする非磁性層とその上に強磁性粉末と結合剤樹
脂を主体とする磁性層を設けた磁気記録媒体において、
該磁性層の膜厚が1.0μm以下であって、該強磁性粉
末が前記で得られた強磁性酸化鉄または前記で得ら
れた強磁性金属粉末であることを特徴とする磁気記録媒
体により達成できる。
【0027】本発明は、単分散紡錘型ヘマタイト粒子の
結晶子サイズおよびその形状を制御するために少なくと
も特定のアニオン、即ち、水酸化第2鉄の生成に使用す
る第2鉄由来のアニオン(即ち、硝酸イオンおよび/ま
たは過塩素酸イオン)および燐酸根イオンおよび/また
は塩素イオンからなる形状制御アニオンを使用すること
を特徴とし、ヘマタイト微粒子からなる核晶の共存下に
水酸化第2鉄を単分散紡錘型ヘマタイトに変換するもの
である。
【0028】即ち、本発明は、形状制御アニオンの種類
を選定することにより、生成されるヘマタイト粒子の結
晶子サイズおよびその形状・サイズを制御し、所望の単
分散紡錘型ヘマタイト粒子を調製することができるが、
その制御機構は、上記したように成長ヘマタイト粒子へ
の吸着強度の相違によって説明され、吸着強度の強いア
ニオンを使用すると結晶子サイズが小さくなるためと考
えられる。従って、本発明では、所定の吸着強度を有し
た形状制御アニオンを選定あるいは組み合わせることに
より所望の結晶子サイズを有した単分散紡錘型ヘマタイ
ト粒子を調製できる。
【0029】その結果、本発明は、結晶子サイズが大き
な単分散紡錘型ヘマタイト粒子を合成することができ、
強磁性粉末とする際の工業的規模での熱処理でも粒子形
状が保持できるようにすることができ、このようにして
得た強磁性粉末を磁気記録媒体の磁性層に使用すること
で、電磁変換特性の優れた高密度磁気記録媒体を提供で
きる。
【0030】本発明において、水酸化第2鉄、核晶、お
よび形状制御アニオンの相互接触のタイミングは特に制
限なく任意の組み合わせが選択できる。一般的には硝酸
イオンおよび/または過塩素酸イオンを含む第2鉄塩を
アルカリを添加(好ましくは部分中和)して水酸化第2
鉄のゲル懸濁液を生成した系に核晶分散液を添加、混合
し、次いで燐酸根イオンおよび/または塩素イオンを添
加する例を挙げることができる。尚、前記系において生
成した水酸化第2鉄を水洗して硝酸イオンおよび/また
は過塩素酸イオンを意図的に除くかあるいはそのアニオ
ン濃度を変更する処理を設けてもかまわない。
【0031】本発明において、硝酸イオンおよび/また
は過塩素酸イオンは、水酸化第2鉄を生成するために第
2鉄塩をアルカリで加水分解する際に生成したもののみ
を使用してもよいし、さらに別途、他の塩の形態で追加
添加するようにしてもよい。また、燐酸根イオンおよび
/または塩素イオンも、通常、塩の形態、例えばアルカ
リ金属塩等として使用される。これら形状制御アニオン
を遊離する塩を形状制御剤ともいう。
【0032】水酸化第2鉄を生成するためのアルカリと
しては、特に制限はないが、アルカリ金属水酸化物、特
に水酸化ナトリウムが好ましい。第2鉄塩は、アルカリ
により、部分中和されることが好ましく、アルカリは第
2鉄塩1モルに対し2.4〜3モル、好ましくは2.8
〜2.95モルの範囲で使用される。燐酸根イオンは、
通常、PO4 3- の形態をさすが、HPO4 2- 、H2 PO
4 -でもよく、またHPO3 2- 、H2 PO2 - 等も含
む。
【0033】本発明において、燐酸根イオン濃度は0.
001〜0.01モル/リットル(以下、Mと記す)、
好ましくは0.002〜0.01M、特に好ましくは
0.03〜0.008Mの範囲である。本発明におい
て、水酸化第2鉄濃度は、0.05〜2M、好ましくは
0.07〜1.5M、特に好ましくは0.08〜1.3
Mの範囲である。
【0034】例えば、硝酸第2鉄、過塩素酸第2鉄をア
ルカリで部分中和した水酸化第2鉄ゲル濃度範囲は第2
鉄塩の溶解度に限界があることとえられるゲルの粘度が
高すぎると攪拌が困難になるので2M以下とすることが
好ましい。濃度が薄い時により均一な単分散紡錘型ヘマ
タイトがえられるが、濃度の低下とともに収量が減少す
るので経済性の観点より濃度の下限が決まる。水酸化第
2鉄ゲル調製の際のNaOH等アルカリ添加量はFe3+
イオンと同当量以下でないと中間生成物であるβFeO
OHが得られず、生成するヘマタイトも単分散化しな
い。
【0035】本発明に使用される核晶は、ヘマタイト微
粒子からなるものであれば、特に制限されるものではな
いが、以下の性質を有していることが好ましい。該核晶
は、水酸化第2鉄を変換して得たものが好ましく、粒子
サイズは30〜200Å、好ましくは50〜150Å、
特に好ましくは70〜120Åで、擬似回転楕円体形状
が好ましい。粒子サイズが小さすぎると核晶としての効
果がとぼしく、大きすぎると微粒子の単分散紡錘型ヘマ
タイトが得られない。核晶の粒子サイズ分布を揃えるこ
とが有効で、水酸化第2鉄の変換生成物であるヘマタイ
ト粒子を機械的な力で粉砕し、粗粒子を除去して使用す
ることが望ましい。硝酸第2鉄および/または過塩素酸
第2鉄をアルカリで部分中和した水酸化第2鉄ゲルに核
晶を添加し変換反応させるとき反応速度を高めすぎると
新たな核生成が発生し単分散粒子がえられないことがあ
る。単分散粒子が得られる範囲で温度、圧力、時間を設
定する必要がある。
【0036】このようにして得られた単分散紡錘型ヘマ
タイト粒子につき粉末X線回折を行い(110)面より
シェラーの式を使用して結晶子サイズを算出し、本発明
の方法を評価することができる。本発明で得られるヘマ
タイトの結晶子サイズは、概ね350〜約2000Åの
範囲である。本発明においては、上述のように形状制御
アニオンの選定等の反応条件を選択することで結晶子サ
イズを制御することができ、工業的なスケールで熱処理
を行うためには結晶子サイズを400〜1800Å、よ
り好ましくは450〜1500Åとすることが好まし
い。結晶子サイズが350Åより小さいと熱処理で形状
が崩れてしまい、結晶子サイズが2000Å以上の時還
元により酸素が粒子から除去されるときに空孔を生成し
これが成長し磁気特性を劣化させるので好ましくない。
また、本発明で得られるヘマタイト粒子の透過型電子顕
微鏡観察による平均長軸長は、0.1〜1.0μm、好
ましくは0.1〜0.6μm、特に好ましくは0.1〜
0.5μmの範囲であり、針状比は、2〜10、好まし
くは2.5〜8、特に好ましくは3〜7の範囲であり、
長軸長のバラツキ(%)(長軸長の標準偏差/平均長軸
長)は、10%以下、好ましくは8%以下、特に好まし
くは5%以下である。
【0037】本発明者等は、上記のようにして得られた
単分散紡錘型ヘマタイト微粒子を用いると優れた磁気特
性を有する磁気記録用強磁性粉末を得ることができるこ
とを見出した。強磁性酸化鉄粉末を製造するに際して
は、得られた単分散紡錘型ヘマタイト粒子を還元してマ
グネタイトした後に、該マグネタイトを酸化してFeO
x(1.33<x≦1.5)を得ることができる。
【0038】ここで、該ヘマタイト粒子を還元、または
酸化する前に、ヘマタイトに焼結防止処理をすることが
有効で、焼結防止剤としては、シリカ、燐酸、アルミ−
シリカ、またはこれらを組み合わせて使用することがで
きる。
【0039】使用する焼結防止剤の量はヘマタイトに対
し0.05〜3.0重量%が好ましく、より好ましくは
0.1〜1.5重量%である。焼結防止剤の量が少な過
ぎると還元、酸化に際し形状保持効果が乏しく、多過ぎ
ると飽和磁化が小さくなり、得られる強磁性粉末の磁気
特性が劣化する。本発明においては、上記のようにして
磁気特性の良い強磁性粉末が得られるのは、本発明で得
られる単分散紡錘型ヘマタイト粒子は結晶子サイズの大
きいので、得られた単分散紡錘型ヘマタイト粒子を水素
中で還元してマグネタイトとなし、これを単に酸化また
は還元しただけで、Hc、飽和磁化(σS )、等の磁気
特性の優れた強磁性粉末を得ることができ、従来、単分
散紡錘型ヘマタイト粒子を還元するに先立ち、これをア
ニール処理したり、還元してマグネタイトにした後にア
ニール処理することによる結晶子サイズの増大化を特に
行う必要がないという利点がある。尚、必要によりヘマ
タイト粒子の還元あるいは酸化の後にアニール処理を行
ってもよい。
【0040】還元に先立ちアニール処理する場合は、ア
ニール温度は450〜800℃が好ましく、より好まし
くは500〜750℃である。アニール時間は1〜5時
間程度が好ましく処理温度との関係で選択することが望
ましい。高温で長時間アニール処理し過ぎると粒子形状
が変化してしまう。粒子を還元する方法としては周知の
水素ガス還元法、有機物を不活性ガス中で熱分解したと
き生成する還元ガスを使用する方法等を使用することが
できる。マグネタイトにした後、アニール処理する場合
は、ヘマタイトで処理する場合に比較してやや低温で処
理することが望ましく、400〜600℃で処理するこ
とが好ましい。
【0041】還元後200〜300℃で空気を流してγ
Fe2 3 とするほか、酸化度を調整してFe Ox
(1.33<x≦1.5)とすることができる。酸化度
を調整する方法としては、酸化ガス中の酸素濃度を低く
したり、酸化するときの温度を60〜150℃とするこ
となどで調整することができる。磁性酸化鉄とした後、
任意の表面処理を施すことができ、例えば、表面にCo
化合物を被着させるには周知の方法を使用することがで
きる。これらの方法は、例えば、特開昭49−7439
9号、同50−37667号。特公昭49ー49475
号各公報などに記載されている。
【0042】本発明により得られるFeOx (1.33
<x≦1.5)のX線回折測定による(110)の結晶
子サイズは、200〜500Å、好ましくは200〜4
00Å、特に好ましくは250〜350Åであり、透過
型電子顕微鏡観察による平均長軸長は、0.1〜0.8
μm、好ましくは0.15〜0.6μm、特に好ましく
は0.15〜0.5μmの範囲であり、針状比は、2〜
10、好ましくは2.5〜8、特に好ましくは3〜7の
範囲である。また、該FeOx のHcは、200〜40
0Oe、好ましくは250〜400Oe、特に好ましく
は300〜400Oeであり、σS は、70〜79em
u/g、好ましくは72〜79emu/g、特に好まし
くは75〜79emu/gの範囲である。
【0043】次に、本発明により得られた単分散紡錘型
ヘマタイトを強磁性金属粉末に変換するためには、焼結
防止剤で処理することが好ましく、焼結防止剤としては
Al、Si、Al−Si、B、Caおよびこれらを組み
合わせて使用することができる。焼結防止剤の処理量と
しては鉄に対し1〜20原子%が好ましく、より好まし
くは3〜15原子%である。焼結防止剤の被着処理方法
は、充分水洗したヘマタイト粒子を水中に分散し、焼結
防止に使用する元素を含む化合物の水溶液を添加し吸着
させたり、中和処理などにより粒子表面に沈着させ、さ
らに水洗し不純物を除去することが好ましい。磁気特性
の改良や耐候性を改良するために焼結防止剤で処理する
まえに金属元素を被着することにより、還元後合金化す
ることも好ましい。被着処理に使用する元素としては、
上記以外にCo、Ni、Mn、Cu、Sn、Cr、S
b、Nd、Y、La、Sc、Ba、Srなどがあり、単
独でも組み合わせて使用してもよい。
【0044】合金化のために使用する金属の量は合金化
可能組成領域にもよるが一般的には0.1〜30重量
%、好ましくは0.5〜30重量%である。非磁性合金
となる場合は添加量をあまり多くできないが、Co、N
iなどの遷移金属の添加量は0.1〜30重量%、好ま
しくは2〜30重量%の範囲で変化させることができ
る。Coは飽和磁化を高め、耐候性を改良する効果があ
り好ましい添加元素である。一方Ni、Cuは還元を促
進する元素なので低温で還元させることができ形状保持
効果の点で効果がある元素である。金属元素を被着処理
した時、元素を粒子内に均一に分布させるために還元に
先立ちアニール処理することも有効な手段である。アニ
ール温度としては400〜800℃、好ましくは500
〜750℃、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の範囲
で選択することができる。
【0045】ヘマタイト粒子を還元する方法としては周
知の水素ガス還元法、有機物を不活性ガス中で熱分解し
たとき生成する還元ガスを使用する方法などを使用する
ことが出来る。マグネタイトにした後、アニール処理す
る場合は、ヘマタイトで処理する場合に比較してやや低
温で処理することが望ましく、400〜600℃、好ま
しくは400〜550℃で処理することが好ましい。
【0046】ヘマタイトから金属に還元するためには純
水素を使用し、350〜550℃、好ましくは400〜
500℃で、2〜12時間、好ましくは3〜8時間還元
する。還元の進行は還元後の水素ガス中の水分を露点計
などでモニターすることで判定できる。得られた強磁性
金属粉末を磁気記録媒体用の原料として使用するために
は、得られた強磁性金属粉末の表面を酸化し安定化する
必要がある。このため還元終了後、酸素濃度を制御した
ガスを流したり、有機溶剤中で酸素含有ガスを通気した
りして、表面を徐酸化する。この時、温度計で発熱量を
モニターし急激な酸化が起きないようにする必要があ
り,また徐酸化に使用するガス中の水分は極力低いこと
が望ましい。また徐酸化する前に特開昭61−5232
7号公報に記載されている化合物で処理した後、徐酸化
することも強磁性合金粉末の飽和磁化σS を高めること
ができるので有効である。
【0047】本発明により得られる強磁性金属粉末のX
線回折測定による(110)の結晶子サイズは、100
〜250Å、好ましくは120〜200Å、特に好まし
くは120〜160Åであり、透過型電子顕微鏡観察に
よる平均長軸長は、0.05〜0.5μm、好ましくは
0.06〜0.25μm、特に0.06〜0.15μm
の範囲であり、針状比は、2〜10、好ましくは2.5
〜8、特に好ましくは3〜7の範囲である。また、該強
磁性金属粉末のHcは、1500〜2000Oe、好ま
しくは1550〜1900Oe、特に好ましくは165
0〜1900Oeであり、σS は、115〜160em
u/g、好ましくは120〜155emu/g、特に好
ましくは125〜155emu/gの範囲である。
【0048】本発明の強磁性粉末は、非磁性支持体上に
強磁性粉末と結合剤樹脂を主体とする磁性層を設けた任
意の層構成の塗布型磁気記録媒体の磁性層に使用するこ
とができる。本発明の強磁性粉末を使用するため磁性層
が単層のものであっても従来の強磁性金属粉末を使用し
た磁気記録媒体に比較してSFDが優れていることを反
映し単波長出力が優れている。
【0049】また、非磁性支持体上に非磁性粉末を結合
剤中に分散させた非磁性層を設け、その上に本発明の強
磁性粉末を結合剤中に分散した磁性層を乾燥厚みで1μ
m以下に設けた構成のものは、単波長出力が増加し単層
の場合よりも高性能な磁気記録媒体を提供することがで
きる。非磁性支持体上に2層以上の塗布層を形成させる
方法としては、非磁性支持体上の第一塗布層(非磁性支
持体に最も近い層を指し、磁性層、非磁性層を問わな
い。下層ともいう)がまだ湿潤状態にあるうちに第二塗
布層(通常、磁性層であるが非磁性層でもよい。上層と
もいう)の塗布液をその上に塗布するウェット・オン・
ウェット方式(同時重層塗布方式、特開昭61−139
929号公報、特開昭61−54992号公報等に開示
されている。)で塗布することにより、すなわち第一塗
布層が湿潤状態にあるうちに上層磁性層を形成すると、
上層の磁性層を薄層にすることが容易となり、かつ塗布
欠陥を減少することができ。さらに、各層間の密着性を
大きくすることができるので好ましい。
【0050】本発明の磁気記録媒体において、塗布層を
2層以上設けた場合、その最上層に前述した強磁性粉末
を用いることが極めて好ましい。その理由は高密度磁気
記録性能を最大限に増加させる為であり、その内容は第
一に磁気記録媒体の実用特性に必要なカーボン等の非磁
性粉末を下層にのみ添加して必要な電気伝導性を確保で
きるため、短波長磁気記録に重要な磁気記録媒体の最上
層の単位体積当りの飽和磁束密度を増加させる事ができ
る為であり、第二には最上層の表面の凹凸をなめらかに
仕上げられるためである。更に材料として単分散紡錘型
ヘマタイトを還元した比較的高価な強磁性粉末の使用量
を少なくできる為、経済的に有利である。
【0051】本発明の磁気記録媒体は、高いHc、高い
SQ、低いSFDを示すが、特に下層が非磁性層で上層
が磁性層の構成の場合は、Hcは、1500〜2000
Oe、好ましくは1600〜1900Oeの範囲であ
り、SQは、0.80〜0.92、好ましくは0.85
〜0.92の範囲であり、SFDは、0.25〜0.4
5、好ましくは0.25〜0.40、特に好ましくは
0.25〜0.36の範囲である。
【0052】本発明の磁気記録媒体における磁性層の結
合剤樹脂は、結合剤樹脂には、従来公知の熱可塑系樹
脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用
できる。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−1
00乃至150℃、数平均分子量が1000乃至200
000、好ましくは10000乃至100000、重合
度が約50乃至1000程度のものである。
【0053】このような結合剤樹脂としては、塩化ビニ
ル、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アク
ルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリ
ロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ス
チレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラ−ル、ビ
ニルアセタ−ル、ビニルエ−テル、等を構成単位として
含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴ
ム系樹脂がある。
【0054】また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂とし
てはフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化
型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アク
リル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコ−ン樹
脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイ
ソシアネ−トプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリ
オ−ルとポリイソシアネ−トの混合物、ポリウレタンと
ポリイソシアネートの混合物等があげられる。
【0055】前記の結合剤樹脂に、より優れた強磁性粉
末の分散効果と磁性層の耐久性を得るためには必要に応
じ、COOM、SO3 M、OSO3 M、P=O(OM)
2 、O−P=O(OM)2 、(以上につきMは水素原
子、またはアルカリ金属塩基)、OH、NR2 、N+
3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、など
から選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合ま
たは付加反応で導入したものを用いることが好ましい。
このような極性基の量は10-1乃至10-8モル//gで
あり、好ましくは10-2乃至10-6モル/gである。
【0056】本発明の磁気記録媒体に用いられる結合剤
樹脂は、強磁性粉末に対し、5乃至50重量%の範囲、
好ましくは10乃至30重量%の範囲で用いられる。塩
化ビニル系樹脂を用いる場合は5乃至100重量%、ポ
リウレタン樹脂を用いる場合は2乃至50重量%、ポリ
イソシアネ−トは2乃至100重量%の範囲でこれらを
組み合わせて用いるのが好ましい。
【0057】また、磁性層の強磁性粉末の充填度は、使
用した強磁性粉末の最大飽和磁化量σS 及び最大磁束密
度Bm から計算でき、即ち(Bm /4πσs )となり、
本発明においてはその値は、望ましくは1.7g/cc
以上であり、更に望ましくは1.9g/cc以上、最も
好ましくは2.1g/cc以上である。
【0058】本発明において、ポリウレタンを用いる場
合はガラス転移温度が−50乃至100℃、破断伸びが
100乃至2000%、破断応力は0.05乃至10k
g/cm2 、降伏点は0.05乃至10kg/cm2
好ましい。
【0059】本発明にもちいるポリイソシアネ−トとし
ては、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニ
ルメタンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシア
ネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−
1,5−ジイソシアネ−ト、o−トルイジンジイソシア
ネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、トリフェニルメ
タントリイソシアネ−ト等のイソシアネ−ト類、また、
これらのイソシアネ−ト類とポリアルコールとの生成
物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポ
リイソシアネ−ト等を使用することができる。これらの
イソシアネート類の市販されている商品名としては、日
本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネ−トHL,
コロネ−ト2030、コロネ−ト2031、ミリオネ−
トMRミリオネ−トMTL、武田薬品社製、タケネ−ト
D−102、タケネ−トD−110N、タケネ−トD−
200、タケネ−トD−202、住友バイエル社製、デ
スモジュ−ルL,デスモジュ−ルIL、デスモジュ−ル
N、デスモジュ−ルHL等がありこれらを単独または硬
化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せ
でもちいることができる。
【0060】本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、通
常、潤滑剤、研磨剤、分散剤、帯電防止剤、分散剤、可
塑剤、防黴剤等などを始めとする種々の機能を有する素
材をその目的に応じて含有させる。
【0061】本発明の磁性層に使用する潤滑剤として
は、ジアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1乃
至5個)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは
炭素数1乃至4個)、モノアルキルモノアルコキシポリ
シロキサン(アルキルは炭素数1乃至5個、アルコキシ
は炭素数1乃至4個)、フェニルポリシロキサン、フロ
ロアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1乃至5
個)などのシリコンオイル;グラファイト等の導電性微
粉末;二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどの無
機粉末;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン
塩化ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等の
プラスチック微粉末;α−オレフィン重合物;常温で液
状の不飽和脂肪族炭化水素(n−オレフィン二重結合が
末端の炭素に結合した化合物、炭素数約20);炭素数
12乃至20個の一塩基性脂肪酸と炭素数3乃至12個
の一価のアルコールから成る脂肪酸エステル類、フルオ
ロカーボン類等が使用できる。
【0062】中でも脂肪酸エステルがもっと好ましい。
脂肪酸エステルの原料となるアルコールとしてはエタノ
ール、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、
2−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシルアル
コール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エ
チレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレング
リコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノブチルエーテル、s−ブチルアルコール等のモノアル
コール類、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビタン
誘導体等の多価アルコールが挙げられる。同じく脂肪酸
としては酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチル
ヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン
酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン
酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、パルミト
レイン酸等の脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物が
挙げられる。
【0063】脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチル
ステアレート、s−ブチルステアレート、イソプロピル
ステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレー
ト、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシ
ルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブ
チルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、
ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブ
トキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピ
ルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエ
ーテルをステアリン酸でアシル化したもの、ジエチレン
グリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールを
ミリスチン酸でアシル化してジオールとしたもの、グリ
セリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げる
ことができる。
【0064】さらに、磁気記録媒体を高湿度下で使用す
るときしばしば生ずる脂肪酸エステルの加水分解を軽減
するために、原料の脂肪酸及びアルコールの分岐/直
鎖、シス/トランス等の異性構造、分岐位置を選択する
ことがなされる。これらの潤滑剤は結合剤100重量部
に対して0.2乃至20重量部の範囲で添加される。
【0065】潤滑剤としては、更に以下の化合物を使用
することもできる。即ち、シリコンオイル、グラファイ
ト、二硫化モリブデン、窒化ほう素、弗化黒鉛、フッ素
アルコール、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキ
ル燐酸エステル、二硫化タングステン等である。
【0066】本発明の磁性層に用いられる研磨剤として
は、一般に使用される材料で溶融アルミナ、炭化珪素、
酸化クロム(Cr2 3 )、コランダム、人造コランダ
ム、ダイアモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメ
リー(主成分:コランダムと磁鉄鉱)等が使用される。
これらの研磨剤はモース硬度が6以上である。具体的な
例としては住友化学社製、AKP−10、AKPー1
2、AKP−15、20、AKP−30、AKP−5
0、AKP−1520、AKP−1500、HIT- 5
0、HIT60A、HIT−100、日本化学工業社
製、G5、G7、S−1、酸化クロムK、上村工業社製
UB40B、不二見研磨剤社製WA8000、WA10
000、戸田工業社製TF140、TF180などが挙
げられる。平均粒子径が0.05乃至3μmの大きさの
ものが効果があり、好ましくは0.05乃至1.0μm
である。
【0067】これら研磨剤は強磁性粉末100重量部に
対して1乃至20重量部、望ましくは1乃至15重量部
の範囲で添加される。1重量部より少ないと十分な耐久
性が得られず、20重量部より多すぎると表面性、充填
度が劣化する。これら研磨剤は、あらかじめ結合剤で分
散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。
【0068】本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、前
記非磁性粉末の他に帯電防止剤として導電性粒子を含有
することもできる。しかしながら最上層の飽和磁束密度
を最大限に増加させるためにはできるだけ最上層への添
加は少なくし、最上層以外の塗布層に添加するのが好ま
しい。帯電防止剤としては特に、カーボンブラックを添
加することは、媒体全体の表面電気抵抗を下げる点で好
ましい。本発明に使用できるカ−ボンブラックはゴム用
ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、導電
性カーボンブラック,アセチレンブラック等を用いるこ
とができる。比表面積は5乃至500m2 /g、DBP
吸油量は10乃至1500ml/100g、粒子径は5
mμ乃至300mμ、pHは2乃至10、含水率は0.
1乃至10%、タップ密度は0.1乃至1g/cc、が
好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体
的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARL
S2000、1300、1000、900、800,7
00、VULCAN XC−72、旭カ−ボン社製、#
80、#60,#55、#50、#35、三菱化成工業
社製、#3950B、#3250B、#2400B、#
2300、#900,#1000,#30,#40、#
10B、コロンビアカ−ボン社製、CONDUCTEX
SC、RAVEN 150、50、40、15、ライ
オンアグゾ社製ケッチェンブラックEC、ケッチェンブ
ラックECDJ−500、ケッチェンブラックECDJ
−600などが挙などがあげられる。カ−ボンブラック
を分散剤などで表面処理したり、カーボンブラックを酸
化処理したり,樹脂でグラフト化して使用しても、表面
の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわな
い。また、カ−ボンブラックを磁性塗料に添加する前に
あらかじめ結合剤で分散してもかまわない。磁性層にカ
−ボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量
は0.1乃至30重量%で用いることが好ましい。さら
に非磁性層には全非磁性粉末に対し3乃至20重量%含
有させることが好ましい。
【0069】一般的にカ−ボンブラックは帯電防止剤と
してだけでなく、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向
上などの働きがあり、これらは用いるカ−ボンブラック
により異なる。従って本発明に使用されるこれらのカ−
ボンブラックは、その種類、量、組合せを変え、粒子サ
イズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を
もとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であ
る。使用できるカーボンブラックは例えば「カ−ボンブ
ラック便覧」カ−ボンブラック協会編を参考にすること
ができる。
【0070】本発明の磁気記録媒体の磁性層の下層に非
磁性層を形成する場合の非磁性層は、非磁性粉末を結合
剤樹脂中に分散した層である。その非磁性層に使用され
る非磁性粉末には、種々のものが使用できる。例えば、
α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−
アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α
−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、
酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸
カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが単独
または組合せで使用される。これら非磁性粉末の粒子サ
イズは0.01乃至2μが好ましいが、必要に応じて粒
子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の
非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせ
ることもできる。使用する結合剤樹脂との相互作用を大
きくし分散性を改良するために,使用する非磁性粉末が
表面処理されていてもよい。表面処理物としては、シリ
カ、アルミナ、シリカ−アルミナなどの無機物により処
理でも、カップリング剤による処理でもよい。タップ密
度は0.3乃至2g/cc、含水率は0.1乃至5重量
%、pHは2乃至11、比表面積は5乃至100m2
g、が好ましい。前記非磁性粉末の形状は針状、球状、
サイコロ状、板状のいずれでも良い。本発明に用いられ
る非磁性粉末の具体的な例としては、住友化学社製、A
KP−20、AKP−30、AKP−50、HIT−5
0、日本化学工業社製、G5、G7、S−1、戸田工業
社製、TF−100、TF−120、TF−140、石
原産業社製TT055シリーズ、ET300W、チタン
工業社製STT30,磁性酸化鉄の中間原料であるヘマ
タイト粒子などがあげられる。
【0071】本発明の磁気記録媒体の上層磁性層の下に
下層磁性層を形成する場合には、その強磁性粉末として
は酸化鉄強磁性粉末、コバルト変性酸化鉄強磁性粉末、
CrO2 、六方晶フェライト、各種金属強磁性粉末を樹
脂中に分散した、種々のものが使用できる
【0072】非磁性支持体上に2層以上の塗布層を形成
させる塗布方式について、前記のウェット・オン・ウェ
ット方式の具体的な方法としては、 (1) 磁性塗料で一般的に用いられるグラビア塗布、ロー
ル塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置に
よりまず下層を塗布し、その層がまだ湿潤状態にあるう
ちに、例えば、特公平1−46186号公報、特開昭6
0−238179合公報及び特開平2−265672号
公報に開示されている非磁性支持体加圧型エクストルー
ジョン塗布装置により上層を塗布する方法、
【0073】(2) 特開昭63−88080号公報、特開
平2−17971号公報及び特開平2−265672号
公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ
内蔵した塗布ヘッドにより、下層の塗布液及び上層の塗
布液をほぼ同時に塗布する方法、
【0074】(3) 特開平2−174965号公報に開示
されているバックアップロール付きエクストルージョン
塗布装置により、上層及び下層をほぼ同時に塗布する方
法、等が挙げられる。
【0075】ウェット・オン・ウェット方式で塗布する
場合、磁性層用塗布液と非磁性層用塗布液の流動特性は
できるだけ近い方が、塗布された磁性層と非磁性層の界
面の乱れがなく厚さが均一な厚み変動の少ない磁性層を
得ることができる。塗布液の流動特性は、塗布液中の粉
末粒子と結合剤樹脂の組み合わせに強く依存するので、
特に、非磁性層に使用する非磁性粉末の選択に留意する
必要がある。
【0076】本磁気記録媒体の非磁性支持体は、通常、
1乃至100μm、望ましくは3乃至20μm、非磁性
層としては、0.5乃至10μm、好ましくは1〜5μ
mである。最上層の厚さは、1μm以下、好ましくは
0.1〜0.5μmである。また、前記磁性層及び前記
非磁性層以外の他の層を目的に応じて形成することは、
前記磁性層を最上層にして、前記非磁性層をその下層に
する構成である限り許される。例えば、非磁性支持体と
下層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかま
わない。この厚みは0.01乃至2μm、好ましくは
0.05乃至0.5μmである。また、非磁性支持体性
の磁性層側と反対側にバックコ−ト層を設けてもかまわ
ない。この厚みは0.1乃至2μm、好ましくは0.3
乃至1.0μmである。これらの中間層、バックコ−ト
層は公知のものが使用できる。円盤状磁気記録媒体の場
合、片面もしくは両面に上記層構成を設けることができ
る。
【0077】本発明で使用される非磁性支持体には特に
制限はなく、通常使用されているものを用いることがで
きる。非磁性支持体を形成する素材の例としては、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリエチレ、ポリプロピレ
ン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポ
リアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリサルホ
ン、ポリエーテルサルホン等の各種合成樹脂のフィル
ム、およびアルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔
を挙げることができる。
【0078】本発明の目的を有効に達成するには、非磁
性支持体の表面粗さは、中心線平均表面粗さRa(カッ
トオフ値0.25mm)で0.03μm以下、望ましく
0.02μm以下、さらに望ましく0.01μm以下で
ある。また、これらの非磁性支持体は単に前記中心線平
均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突
起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に
応じて非磁性支持体に添加されるフィラ−の大きさと量
により自由にコントロ−ルされるものである。これらの
フィラ−の一例としては、Ca、Si、Tiなどの酸化
物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機樹脂微粉末が挙
げられる。本発明に用いられる非磁性支持体のウエブ走
行方向のF−5値は好ましくは5乃至50kg/m
2 、ウエブ幅方向のF−5値は好ましくは3乃至30
kg/mm2 であり、ウエブ長手方向のF−5値がウエ
ブ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に
幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでな
い。
【0079】また、支持体のウエブ走行方向および幅方
向の100℃、30分での熱収縮率は好ましくは3%以
下、さらに望ましくは1.5%以下、80℃、30分で
の熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに望ましくは
0.5%以下である。破断強度は両方向とも5乃至10
0kg/mm2 、弾性率は100乃至2000kg/m
2 が望ましい。
【0080】本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率
でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケ
トン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホ
ロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノ−
ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブチ
ルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、メチルシクロ
ヘキサノール、などのアルコ−ル類、酢酸メチル、酢酸
ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチ
ル、酢酸グリコ−ル等のエステル類、グリコ−ルジメチ
ルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサ
ン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳
香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロラ
イド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒド
リン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N,
N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用で
きる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではな
く、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解
物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。
これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好まし
くは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は必要
ならば各層間でその種類、量を変えてもかまわない。第
一層に揮発性の高い溶媒をもちい表面性を向上させる、
第一層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオ
キサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、第二層に溶
解性パラメ−タの高い溶媒を用い充填度を上げるなどが
その例として挙げられるがこれらの例に限られたもので
はないことは無論である。
【0081】本発明の磁気記録媒体は、前記強磁性粉末
と結合剤樹脂、及び必要ならば他の添加剤と共に有機溶
媒を用いて混練分散し、磁性塗料を非磁性支持体上に塗
布し、必要に応じて配向、乾燥して得られる。
【0082】本発明の磁気記録媒体の磁性塗料あるいは
非磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分
散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設け
た混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上
にわかれていてもかまわない。本発明に使用する強磁性
粉末あるいは非磁性粉末、結合剤、カ−ボンブラック、
研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料は
どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。ま
た、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加しても
かまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工
程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入
してもよい。
【0083】磁性塗料あるいは非磁性塗料の混練分散に
当たっては各種の混練機が使用される。例えば、二本ロ
ールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、
トロンミル、サンドグラインダー、ゼグバリ(Szeg
vari)、アトライター、高速インペラー分散機、高
速ストーンミル、高速衝撃ミル、ディスパー、ニーダ
ー、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機など
を用いることができる。
【0084】本発明の目的を達成するためには、従来の
公知の製造技術のを一部の工程としてを用いることがで
きることはもちろんであるが、混練工程では連続ニ−ダ
や加圧ニ−ダなど強い混練力をもつものを使用すること
により本発明の磁気記録媒体の高いBrを得ることがで
きる。連続ニ−ダまたは加圧ニ−ダを用いる場合は強磁
性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合
剤の30%以上が好ましい)および強磁性粉末100重
量部に対し15乃至500重量部の範囲で混練処理され
る。これらの混練処理の詳細については特開平1−10
6338号公報、特開昭64−79274号公報に記載
されている。本発明では、特開昭62−212933に
示されるような同時重層塗布方式を用いることによりよ
り効率的に生産することが出来る。
【0085】本発明の磁気記録媒体の磁性層中に含まれ
る残留溶媒は好ましくは100mg/m2 以下、さらに
好ましくは10mg/m2 以下であり、磁性層に含まれ
る残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほ
うが好ましい。
【0086】磁性層が有する空隙率は下層、最上層とも
好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは10容量
%以下である。非磁性層の空隙率が磁性層の空隙率より
大きいほうが好ましいが非磁性層の空隙率が5容量%以
上であれば小さくてもかまはない。
【0087】本発明の磁気記録媒体は、目的に応じ下層
と最上層でこれらの物理特性を変えることができるのは
容易に推定されることである。例えば、最上層の弾性率
を高くし走行耐久性を向上させると同時に下層の弾性率
を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを
良くするなどである。
【0088】このような方法により、支持体上に塗布さ
れた磁性層は必要により層中の強磁性粉末を配向させる
処理を施したのち、形成した磁性層を乾燥する。又必要
により表面平滑化加工を施したり、所望の形状に裁断し
たりして、本発明の磁気記録媒体を製造する。以上の最
上層用の組成物および下層用の組成物を溶剤と共に分散
して、得られた塗布液を非磁性支持体上に塗布し、配向
乾燥して、磁気記録媒体をえる。
【0089】磁性層の0.5%伸びでの弾性率はウエブ
塗布方向、幅方向とも望ましくは100乃至2000k
g/mm2 、破断強度は望ましくは1乃至30kg/c
2、磁気記録媒体の弾性率はウエブ塗布方向、幅方向
とも望ましくは100乃至1500kg/mm2 、残留
のびは望ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆ
る温度での熱収縮率は望ましくは1%以下、さらに望ま
しくは0.5%以下、もっとも望ましくは0.1%以下
である。
【0090】本発明の磁気記録媒体は、ビデオ用途、オ
ーディオ用途などのテープであってもデータ記録用途の
フロッピーディスクや磁気ディスクであってもよいが、
ドロップ・アウトの発生による信号の欠落が致命的とな
るデジタル記録用途の媒体に対しては特に有効である。
更に、下層を非磁性層とし、最上層の厚さを1μm以下
とすることにより、電磁変換特性が高い、高密度で大容
量の磁気記録媒体を得ることができる。
【0091】
【実施例】本発明の新規な特長を以下の実施例で具体的
に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。。以下に、この発明の実施例を比較例と対比して具
体的に説明する. 核晶作り(核晶液の調製) 密閉可能な2リットルガラス容器に2M FeCl3
溶液500mlに5.94N NaOH水溶液500m
lを攪拌しながら5分間で添加し,添加終了後更に20
分間攪拌し、容器を完全に密栓した。
【0092】あらかじめ100℃に加熱してあるオーブ
ンにいれ、48時間保持した。48時間後、流水で急冷
し、反応液を分取して遠心分離装置にて15000rp
mで15分間遠心分離し上澄みを捨てた。これに蒸留水
を加えて再分散して、再度遠心分離し上澄みをすてた。
このように遠心分離機を使用して水洗を4回繰り返し
た。水洗が終了したヘマタイト粒子(平均粒子径約0.
1μm)の沈殿物を濾過乾燥した。この乾燥粉末50g
に5mlの蒸留水を加えて,ライカイ機にて30分間粉
砕し、500mlの蒸留水を使用しビーカーに洗いだし
蒸留水700mlを加えたのち、さらに30分間超音波
分散した。この分散物を分取し10000rpmで30
分間遠心分離して、擬似回転楕円体形状の超微粒子ヘマ
タイト粒子(平均粒径約100Å)が分散している上澄
み液を取りだし、核晶液を得た。核晶液中の鉄濃度(ヘ
マタイトの鉄原子への換算濃度)は2000rpmであ
った。
【0093】実施例1−1〜5、比較例1−1〜2:単
分散紡錘型ヘマタイト粒子の結晶子サイズ制御 攪拌機つき反応容器に2モル/lの硝酸第2鉄180m
lをいれ、冷却し溶液の温度を5℃とする。攪拌しつつ
4.8モル/lの水酸化ナトリウム溶液180mlを1
0分間かけてゆっくり添加する。添加後さらに5分間攪
拌を継続し、核晶液180mlを添加し10分間攪拌し
た。得られた液を60mlずつ採取し、表1に示す種々
の濃度の形状制御剤(燐酸根イオンおよび/または塩素
イオンを遊離する)水溶液および/または水を所定量添
加した後あらかじめ100℃に加熱してあるオーブン中
に48時間保持した。
【0094】所定の時間保持した後、流水で急冷し、反
応液を遠心分離装置にて18000rpmで15分間遠
心分離し上澄みを捨てた。これに蒸留水を加えて再分散
して、再度遠心分離し上澄みをすてた。このように遠心
分離機を使用して水洗を3回繰り返した。次に1Mアン
モニア水を加え再分散して、遠心分離し上澄みをすて
た。これに蒸留水を加えて再分散して、再度遠心分離し
上澄みをすてた。このように遠心分離機を使用して水洗
を3回繰り返した。生成物を凍結乾燥した。この様にし
て得られた単分散紡錘型ヘマタイト粒子(試料:実1−
1〜5、比1−1〜2)を透過型電子顕微鏡で観察し平
均長軸長と針状比(長軸/短軸)と長軸長のバラツキ
(長軸長の標準偏差/平均長軸長)を求めた。また粉末
X線回折法により(110)の結晶子サイズを求めた。
これらの結果を表1に示す. 比較例1−3 1リットルガラスビーカーに2M FeCl3 水溶液1
50mlに4.8NNaOH水溶液150mlを攪拌し
ながら5分間で添加し、添加終了後更に10分間攪拌し
たのち、得られた水酸化第2鉄ゲルを40mlを200
mlの密栓可能な容器に取りだした。核晶液を20ml
攪拌しながら添加し、さらに5分後に0.12MのNa
2 SO4 水溶液20mlを添加し5分攪拌した。あらか
じめ100℃に加熱してあるオーブンにいれ、48時間
保持した。上記と同様に水洗し得られた粒子を実施例1
−1と同様に評価し、得られた結果を表1に示す。
【0095】比較例1−4 実施例1−1において、核晶液のかわりに水180ml
を使用した以外は、同様に処理した。
【0096】
【表1】
【0097】表1より、形状制御アニオンを所定に設定
することにより、所定の結晶子サイズ、所定の形状およ
び粒子サイズを有した単分散紡錘型ヘマタイト粒子が得
られることが分かる。比較例1−2〜3は、他の実施例
より結晶子サイズが小さいことが分かる。比1−4は、
核晶がないと粒子が巨大化してしまうことがわかる。
尚、試料欄の「実」は実施例、「比」は比較例を示す
(以降も同様)。
【0098】実施例2−1〜5、比較例2 攪拌機つき反応容器に2モル/lの硝酸第2鉄180m
lをいれ、冷却し溶液の温度を5℃とする。攪拌しつつ
4.8モル/lの水酸化ナトリウム溶液180mlを1
0分間かけてゆっくり添加する。添加後さらに5分間攪
拌を継続し、得られた液を60mlずつ採取した。それ
ぞれに核晶液を表2に示すのように添加しついで0.0
48MのNaH2 PO4 10mlと0.48MのNaC
l 10mlを添加した後あらかじめ100℃に加熱し
てあるオーブン中に72時間保持した。
【0099】所定の時間保持した後、流水で急冷し、反
応液を遠心分離装置にて18000rpmで15分間遠
心分離し上澄みを捨てた.これに蒸留水を加えて再分散
して、再度遠心分離し上澄みをすてた.このように遠心
分離機を使用して水洗を3回繰り返した。次に1Mアン
モニア水を加え再分散して、遠心分離し上澄みをすて
た。これに蒸留水を加えて再分散して、再度遠心分離し
上澄みをすてた。このように遠心分離機を使用して水洗
を3回繰り返した。生成物を凍結乾燥した。この様にし
て得られた単分散紡錘型ヘマタイト粒子を実施例1と同
様に評価した結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】表2より、形状制御アニオンおよび核晶濃
度により、所定の所定の結晶子サイズ、所定の形状およ
び粒子サイズの単分散紡錘型ヘマタイト粒子が得られる
ことが分かる。 実施例3−1〜5、比較例3 攪拌機つき反応容器に1モル/lの過塩素酸第2鉄18
0mlをいれ、攪拌しつつ2.7モル/lの水酸化ナト
リウム溶液180mlを10分間かけてゆっくり添加す
る。添加後さらに5分間攪拌を継続し、60mlを採取
し所定量の核晶溶液を添加し10分間攪拌した。ついで
0.048MのNaH2 PO4 10mlと0.48Mの
NaCl 10mlを添加した後あらかじめ100℃に
加熱してあるオーブン中に48時間保持した。
【0102】48時間保持した後、流水で急冷し、反応
液を遠心分離装置にて18000rpmで15分間遠心
分離し上澄みを捨てた。これに蒸留水を加えて再分散し
て、再度遠心分離し上澄みをすてた。このように遠心分
離機を使用して水洗を3回繰り返した。次に1Mアンモ
ニア水を加え再分散して、遠心分離し上澄みをすてた。
これに蒸留水を加えて再分散して、再度遠心分離し上澄
みをすてた。このように遠心分離機を使用して水洗を3
回繰り返した。生成物を凍結乾燥した。
【0103】この様にして得られた単分散紡錘型ヘマタ
イト粒子を透過型電子顕微鏡で観察し平均長軸長と針状
比(長軸/短軸)と長軸長のバラツキ(長軸長の標準偏
差/平均長軸長)を求めた。また粉末X線回折法により
(110)の結晶子サイズを求めた。これらの結果を表
3に示す.
【0104】
【表3】
【0105】表3より、形状制御アニオンおよび核晶濃
度により、所定の所定の結晶子サイズ、所定の形状およ
び粒子サイズの単分散紡錘型ヘマタイト粒子が得られる
ことが分かる。 実施例4−1〜2、比較例4−1〜2 比較例1−3、実施例2−2、実施例3−2、比較例1
−4の条件で得られた単分散紡錘型ヘマタイト(出発原
料)を電気炉に移し、電気炉の温度を400℃に保持
し、窒素ガスを2リットル/分で30分流した。380
℃になった後、水素ガスに切替え、水素ガスを2リット
ル/分流し、1時間還元した。還元終了後窒素ガスに切
替え、電気炉の温度を240℃に低下させた。次に、窒
素ガスから空気に切替え、空気を2リットル/分で1時
間流して酸化し、γFe2 3 を作った。得られた強磁
性粉末を振動試料型磁力計(VSM−5型 東英工業
製)で測定磁場強度10kOeで磁気特性を測定した。
また比表面積をカンターソーブ(カンタークロム社製)
を使用し、250℃で30分脱水処理し測定した。さら
に得られた粒子を透過型電子顕微鏡で観察し平均長軸長
と針状比(長軸/短軸)を求めた。得られたγFe2
3 のX線回折測定より(110)の結晶子サイズを算出
した。結果を表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】表4より、実施例4−1〜2は、比較例4
−1および比較例4−2に比べ磁気特性が優れているこ
とが分かる。 実施例5−1〜2、比較例5−1〜2 比較例1−3、実施例2−2、実施例3−2、比較例1
−4の条件で得られた単分散紡錘型ヘマタイト(出発原
料)を蒸留水中にヘマタイト濃度が2%となるように分
散し、硫酸コバルトをヘマタイト中のFeを100原子
%とし、Coが10原子%となるように添加し充分攪拌
混合した。この懸濁液のpHをモニターしつつ懸濁液中
にアンモニア水を添加しpHを8.0としヘマタイト表
面にCo化合物を被着した。この液中にアルミン酸ナト
リウムと珪酸ナトリウムの水溶液をヘマタイト中のFe
を100原子%としAlが5原子%、Siが1原子%と
なるように懸濁液に添加し、懸濁液のpHをモニターし
つつ懸濁液中に炭酸ガスを通気しpHを7.0としCo
被着単分散紡錘型ヘマタイト表面上にAl、Si化合物
を沈着させた。懸濁液を濾過、蒸留水で洗浄し不純物を
除去した。得られた表面処理紡錘型ヘマタイトを直径3
mmの成型板を通過させ円柱状に成型し乾燥した。
【0108】表面処理された単分散紡錘型ヘマタイトを
500gを静置式還元炉にいれ、窒素中500℃で1時
間アニール処理した。次に温度を450℃とし、水素ガ
スに切り替え水素ガスを50リットル/分流し5時間還
元した。還元終了後、窒素ガスに切り替え室温まで冷却
した。ガス混合機を使用し窒素ガス中に酸素含有ガスを
混合し、窒素中の酸素濃度を0.1体積%とし5時間接
触させ、ついで強磁性金属粉末の上部の温度をモニター
し50℃を越えない様にしつつ酸素濃度を増加し、酸素
濃度を21%まであげ強磁性粉末の徐酸化を行いこの状
態で5時間保った。得られた強磁性金属粉末を振動試料
型磁力計(VSM−5型 東英工業製)で測定磁場強度
10kOeで磁気特性を測定した。また比表面積をカン
ターソーブ(カンタークロム社製)を使用し、250℃
で30分脱水処理し測定した。さらに得られた強磁性金
属粉末を透過型電子顕微鏡で観察し平均長軸長と針状比
(長軸/短軸)を求めた。得られた強磁性金属粉末のX
線回折測定より(110)の結晶子サイズを算出した。
結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】表5より、実施例5−1〜2は、比較例5
−1〜2に比べ磁気特性が優れていることが分かる。 実施例6−1〜2、比較例6−1 実施例5で得られた強磁性金属粉末を使用し以下の条件
でテープ化し、磁気特性、電磁変換特性を測定した。 (上層用組成物) 強磁性金属粉末(表6に記載) 100部 結合剤樹脂 塩化ビニル共重合体 14部 (−SO3 Na基を1×10-4eq/g含有、重合度 300) ポリエステルポリウレタン樹脂 4部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、 −SO3 Na基 1×10-4eq/g含有) α−アルミナ(平均粒子サイズ 0.1μm) 3.5部 カーボンブラック(平均粒子サイズ 100nm) 0.5部 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 200部 (下層用組成) 針状α−Fe2 3 80部 (平均粒子長0.25μm、平均針状比12、Al−Si処理、 BET法による表面積 35m2 /g、pH4.0) カーボンブラック 20部 (平均一次粒子径 16nm、 DBP吸油量 80ml/100g、 BET法による表面積 250m2 /g、 pH8.0) 結合剤樹脂 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 10部 (−N(CH3 3 + Cl- の極性基を5×10-6eq/g含有、 モノマー組成比 86:13:1 重合度 400) ポリエステルポリウレタン樹脂 8部 (基本骨格:1,4−BD/フタル酸/HMDI 分子量: 10200 水酸基: 0.23×10-3eq/g含有 −SO3 Na基:1×10-4eq/g含有) ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2.5部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 200部 上記の下層用組成物及び上層用組成物のそれぞれをニー
ダーで混練した後,サンドグラインダーを使用して分散
した。得られた分散液にポリイソシアネートを下層の塗
布液には5部、上層の塗布液には 6部を加え、さらに
メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤
を20部加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを
使用して濾過し,非磁性層形成用および磁性層形成用の
塗布液を調製した。
【0111】得られた下層用の塗布液を乾燥後の厚さが
2μmとなるように塗布し、さらにその直後下層用塗布
層がまだ湿潤状態にあるうちに、その上に磁性層の厚み
が0.4μmとなるように厚さ7μmのポリエチレンテ
レフタレート支持体上に湿式同時重層塗布を行い,配向
処理を行う場合は両層がまだ湿潤状態にあるうちにSm
−Co磁石(表面磁束3000ガウス)とソレノイド電
磁石(表面磁束1500ガウス)により強磁性粉末の磁
場配向を行って乾燥させた。次いで金属ロールより構成
される7段カレンダーでロール温度を90℃にしてカレ
ンダー処理を施して,ウェッブ状の磁気記録媒体を得、
それを8mm幅にスリットして8mmビデオテープのサ
ンプルを作成した 磁気特性は東英工業製の振動試料型磁力計VSMー5を
使用し、印加磁場5kOeで測定した。
【0112】富士写真フィルム(株)製8mmビデオデ
ッキ、FUJIX8 を使用して5MHzと10MHz
の信号を記録し、これらの信号を再生した時の再生出力
をオシロスコープから読み取って測定した。出力は富士
写真フィル製のスーパーDCテープに対する相対値で表
した。測定結果を以下の表6に示す。
【0113】
【表6】
【0114】表6より、実施例6−1〜2は、比較例6
−1に比べ磁気特性(Hc、SQ、およびSFD)及び
電磁変換特性が優れていることが分かる。即ち、結晶子
サイズが大きい微粒子単分散ヘマタイトから合成した強
磁性金属粉末は結晶子サイズが250Åの微粒子単分散
ヘマタイトから合成した強磁性金属粉末に比較して粉末
の状態ではHc、比表面積の顕著な差があり、強磁性金
属粉末の結晶子サイズから判断してヘマタイトの結晶子
サイズが250Åであった強磁性金属粉末は一部焼結が
進行しているようである。これを反映してテープ化した
ときSQ、SFDに差が認められ、結晶子サイズが大き
いヘマタイトより得た強磁性金属粉末を使用したテープ
は単波長出力が大きい。これはHcが高い以外にSFD
が優れていることを反映しているせいであると推察され
る。
【0115】
【発明の効果】本発明は、水酸化第2鉄をヘマタイト粒
子に変換するに際し、水酸化第2鉄と共存する特定の微
粒子ヘマタイト及び形状制御アニオンを選定したことに
より、長軸長が極めて小さい単分散紡錘型ヘマタイト微
粒子の結晶子サイズを所望に制御、特に大きくなるよう
に制御することができるので、これを原材料に得られる
強磁性酸化鉄および強磁性金属粉末の磁気特性を顕著に
改善することができる。また、本発明は、単分散紡錘型
ヘマタイト粒子の針状比も所望に制御できるので、得よ
うとする強磁性粉末の形状制御が容易に行えるという利
点があり、種々の目的に応じた磁気記録媒体を製造する
上で非常に有効な手段を提供できる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年1月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正内容】
【0021】しかしながら、工業化を狙い生産スケール
を拡大した時、得られる単分散紡錘型ヘマタイト粒子の
結晶子サイズが小さいためにヘマタイト粒子を熱処理す
るときに粒子形状の均一性を保つことが困難で得られる
強磁性粉末のHc、およびHc分布が劣ることがわかっ
た。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、紡錘型
ヘマタイトを工業生産スケールで熱処理する時に粒子形
状の均一性が保つことが困難で得られる強磁性粉末のH
c、およびHc分布が劣る原因を鋭意研究した。その結
果、水酸化第2鉄および核晶に共存するアニオンの種類
によりヘマタイト粒子の結晶子サイズが大きく変化する
ことを見いだした。具体的には、塩化第2鉄を部分中和
し、遊離の第2鉄イオンが共存する状態の水酸化第2鉄
ゲル懸濁液中にヘマタイト超微粒子を核晶として添加し
さらにアニオンとして硫酸イオンを添加したとき得られ
たヘマタイトの結晶子サイズは250オングストローム
と極めて小さいことがわかった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正内容】
【0110】表5より、実施例5−1〜2は、比較例5
−1〜2に比べ磁気特性が優れていることが分かる。 実施例6−1〜2、比較例6−1 実施例5で得られた強磁性金属粉末を使用し以下の条件
でテープ化し、磁気特性、電磁変換特性を測定した。 (上層用組成物) 強磁性金属粉末(表6に記載) 100部 結合剤樹脂 塩化ビニル共重合体 14部 (−SO3 Na基を1×10-4eq/g含有、重合度 300) ポリエステルポリウレタン樹脂 4部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、 −SO3 Na基 1×10-4eq/g含有) α−アルミナ(平均粒子サイズ 0.1μm) 3.5部 カーボンブラック(平均粒子サイズ 100nm) 0.5部 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 200部 (下層用組成) 針状α−Fe2 3 80部 (平均粒子長0.25μm、平均針状比12、Al−Si処理、 BET法による表面積 35m2 /g、pH6.0) カーボンブラック 20部 (平均一次粒子径 16nm、 DBP吸油量 80ml/100g、 BET法による表面積 250m2 /g、 pH8.0) 結合剤樹脂 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 10部 (−N(CH3 3 + Cl- の極性基を5×10-6eq/g含有、 モノマー組成比 86:13:1 重合度 400) ポリエステルポリウレタン樹脂 8部 (基本骨格:1,4−BD/フタル酸/HMDI 分子量: 10200 水酸基: 0.23×10-3eq/g含有 −SO3 Na基:1×10-4eq/g含有) ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2.5部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 200部 上記の下層用組成物及び上層用組成物のそれぞれをニー
ダーで混練した後,サンドグラインダーを使用して分散
した。得られた分散液にポリイソシアネートを下層の塗
布液には5部、上層の塗布液には 6部を加え、さらに
メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤
を20部加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを
使用して濾過し,非磁性層形成用および磁性層形成用の
塗布液を調製した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正内容】
【0114】表6より、実施例6−1〜2は、比較例6
−1に比べ磁気特性(Hc、SQ、およびSFD)及び
電磁変換特性が優れていることが分かる。即ち、結晶子
サイズが大きい微粒子単分散ヘマタイトから合成した強
磁性金属粉末は結晶子サイズが250Åの微粒子単分散
ヘマタイトから合成した強磁性金属粉末に比較して粉末
の状態ではHc、比表面積の顕著な差があり、強磁性金
属粉末の結晶子サイズから判断してヘマタイトの結晶子
サイズが250Åであった強磁性金属粉末は一部焼結が
進行しているようである。これを反映してテープ化した
ときSQ、SFDに差が認められ、結晶子サイズが大き
いヘマタイトより得た強磁性金属粉末を使用したテープ
波長出力が大きい。これはHcが高い以外にSFD
が優れていることを反映しているせいであると推察され
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 1/11

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硝酸第2鉄及び過塩素酸第2鉄のうち少
    なくとも一方からなる第2鉄塩から生成される水酸化第
    2鉄を燐酸根イオン及び塩素イオンのうちの少なくとも
    一方からなるイオンの存在のもとにヘマタイト微粒子の
    核晶上に析出させる単分散紡錘型ヘマタイト粒子の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 燐酸根イオン濃度が0.001〜0.0
    1モル/リットルである請求項1記載の単分散紡錘型ヘ
    マタイト粒子の製造方法。
  3. 【請求項3】 水酸化第2鉄が請求項1記載の第2鉄塩
    をアルカリで部分中和したゲル懸濁液状態で存在するこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載の単分散紡錘型
    ヘマタイト粒子の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項で得られた
    単分散紡錘型ヘマタイト粒子を還元してマグネタイトと
    した後に、該マグネタイトを酸化してFeOX (1.3
    3<x≦1.5)とすることを特徴とする強磁性酸化鉄
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項で得られた
    単分散紡錘型ヘマタイト粒子を還元してマグネタイトと
    した後に、該マグネタイトを還元することを特徴とする
    強磁性金属粉末の製造方法。
  6. 【請求項6】 非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤樹
    脂を主体とする磁性層を設けた磁気記録媒体において、
    該強磁性粉末が請求項4で得られた強磁性酸化鉄または
    請求項5で得られた強磁性金属粉末であることを特徴と
    する磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤樹
    脂を主体とする非磁性層とその上に強磁性粉末と結合剤
    樹脂を主体とする磁性層を設けた磁気記録媒体におい
    て、該磁性層の膜厚が1.0μm以下であって、該強磁
    性粉末が請求項4で得られた強磁性酸化鉄または請求項
    5で得られた強磁性金属粉末であることを特徴とする磁
    気記録媒体。
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