JPH069913Y2 - 内装材の取付構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ａ．産業上の利用分野 本考案は、自動車等に用いられる内装材の取付構造の改
良に関するものである。

ｂ．従来の技術 周知の如く、自動車には外観性向上等の目的のために各
種の内装材（ガーニッシュ）が樹脂クリップ等にて取付
けられる。従来では、樹脂クリップを用いた内装材の取
付構造として、通常、第６図及び第８図に示すような２
通りの構造を採用している。

第６図に示す取付構造の場合は、一体成形品から成るい
わゆるワンピース式の樹脂クリップ１が締結手段として
用いられる。この樹脂クリップ１を用いて内装材２を取
付部３に取付ける際には、内装材２の裏面に設けられた
クリップ受け４内に樹脂クリップ１のフランジ状頭部１
ａを装着し、この頭部１ａから突出した複数の弾性片１
ｂから成る係合部１ｃを取付部３の係合孔５内にクリッ
ク係合させるようにしている（第７図参照）。

また、第８図に示す取付構造の場合には、フランジ状の
頭部６ａ及び複数の弾性片６ｂを有するクリップ本体６
と、このクリップ本体６の挿通孔６ｃに差し込まれる軸
状部材７とから成るいわゆるツーピース式の樹脂クリッ
プ８が用いられる。この樹脂クリップ８を用いて内装材
２を取付部３に取付ける際には、第９図に示すように、
内装材２に形成された挿通孔９内にクリップ本体６の弾
性片部６ｂを挿通してその頭部６ａを内装材２の凹部10
の座面10a上に配置し、内装材２から突出している前記
弾性片部６ｂを取付部３の係合孔５に挿入する。そし
て、前記クリップ本体６の挿通孔６ｃ内に差し込まれた
軸状部材７を第10図に示すように下方に押圧することに
よって前記弾性片部６ｂを外方に押し拡げ、これにて内
装材２を取付部３に固定するようにしている。

ｃ．考案が解決しようとする問題点 しかしながら、上述の如き従来の取付構造は次のような
問題点がある。

すなわち、第６図に示す取付構造の場合には、内装材２
の外観面に樹脂クリップ１が露出しないため、デザイン
上の利点はあるが、その反面、内装材２の取付作業時に
樹脂クリップ１の位置を確認できないことに加えて、樹
脂クリップ１がクリップ受け４から脱落し易いため、取
付作業を容易かつ円滑に行なうことができないという問
題点がある。しかも、樹脂クリップ１はワンピース式の
ものであるため、樹脂クリップ１を一度取付けた後はそ
の取外しが極めて難かしく、無理して着脱を繰り返した
場合には、樹脂クリップ１や内装材２等の破損を招くこ
とがある。

また、第８図に示す取付構造の場合には、内装材２の挿
通孔９を通して取付部３に対する内装材２の固定位置を
確認できるので取付作業が容易であり、軸状部材７を第
11図に示す如く装着位置からさらに下方に押し込むこと
により内装材２の取外しも容易に行なうことができる。
しかし、内装材２の外観面にクリップ８の座面10a及び
樹脂クリップ８が露出するため、デザイン上好ましくな
く、使用できる箇所が限定されてしまうという問題点が
ある。しかも、内装材２の凹部10内に塵埃がたまり易い
という不都合もある。

本考案はこのような種々の問題点を解決するためになさ
れたものであって、その目的は、ツーピース式のクリッ
プの長所である脱着性の良さを生かしたまま外観性の向
上を図り得ると共に、内装材２の取付作業時にクリップ
の脱落を確実に防止し得て容易かつ能率的に取付作業を
行なうことができるような内装材の取付構造を提供する
ことにある。

ｄ．問題点を解決するための手段 既述の問題点を解決するために、本考案では、一端側に
形成されたフランジ状の頭部及び他端側に形成された複
数の弾性片をそれぞれ具備するクリップ本体と、前記複
数の弾性片を外方へ押し拡げるために前記クリップ本体
の挿通孔に差し込まれる軸状部材とから成るツーピース
式のクリップを用いて、内装材を所定箇所に取付けるた
めの構造において、一端が開口された長孔を有するクリ
ップ受けを前記内装材の裏面に一体的に設けると共に、
前記長孔に対応する前記内装材の所定箇所に小孔を形成
し、前記長孔の開口を通して前記クリップ本体を前記長
孔内に嵌入して前記クリップ本体の頭部を前記クリップ
受けの座面に係合させた状態の下で、前記軸状部材を前
記内装材の小孔を通して前記クリップ本体の挿通孔に差
し込むことにより、前記内装材の取付けを行なうように
している。

以下、本考案の一実施例に付き第１図〜第５図を参照し
て詳細に説明する。

本実施例は、第１図に示す如く、自動車のインストルメ
ントパネル12の上面12aに取付けられる内装材13の取付
構造に関するものであって、この内装材13はインストル
メントパネル12内に配設されたスピーカー（図示せず）
に対応した所定箇所に４つのクリップ14にて固定されて
いる。なお、上述の内装材13は例えば合成樹脂製の矩形
の板状材から成るものであって、スピーカーの音響効果
を損なわないように多数の小孔15が形成されている。さ
らに、クリップ14がそれぞれ装着される内装材13の四隅
には、その裏面側に、ほぼＵ字状の側壁17aと、舌片状
の底壁17bとから成るクリップ受け17が一体成形されて
おり、前記底壁17bには、クリップ受け17の開口の側に
一端が開放されたＵ字状の長孔18が形成されている。そ
して、内装材13にはこの長孔18に対応する箇所に、後述
の軸状部材よりも僅かに大径の小孔21が形成されてい
る。

一方、内装材13の取付けに用いられるクリップ14は、第
２図及び第３図に示すように、合成樹脂製のクリップ本
体（グロメット）19と、このクリップ本体19とは別個の
合成樹脂製の軸状部材20とから成るツーピース式のもの
であって、これらの部材19，20は後述の如く互いに嵌合
的に組み合わされて使用されるようになっている。

上述のクリップ本体19は、所定の円筒面上に配列された
４つの弾性片19aと、この弾性片19aの基端に連結された
フランジ状の頭部19bと、弾性片19aの自由端において内
径側に向けられた係合爪19cと、互いに隣接する弾性片1
9aの間に形成されたスリット19dと、前記頭部19bから係
合爪19cに至るまで貫通する中央挿通孔19eとをそれぞれ
具備している。なお、これらのスリット19dは90°の等
角度間隔で配設されている。

一方、上述の軸状部材20は、一端が円柱状の押圧操作部
20aとなされると共に他端が円錐形状部20bとなされてお
り、前記円錐形状部20bの大径箇所に係合凹部20cが形成
されると共に、この係合凹部20cと前記押圧操作部20aと
の間にくびれ部20dが形成されている。

しかして、軸状部材20は、その円錐形状部20bがクリッ
プ本体19の頭部19bの側から中央挿通孔19e内に差し込ま
れ、これによりクリップ本体19と軸状部材20とが互いに
嵌合状態の下で組み合わせられて１つのクリップ14が構
成されるようになっている。

次に、上述のクリップ14を用いて内装材13をインストル
メントパネル12に取付ける際の作業に付き述べる。

まず、内装材13のクリップ受け17にクリップ本体19を次
のようにして装着する。すなわち、第２図に示すように
クリップ本体19を矢印方向に水平移動させてその弾性片
19aをクリップ受け17の長孔18内に嵌入し、クリップ本
体19の中央貫通孔19eが内装材13の小孔21に対応するよ
うに配置する。その後、内装材13の小孔21を通してクリ
ップ本体19の中央貫通孔19e内に軸状部材20を円錐形状
部20bの側から挿入し、第３図に示す如くその円錐形状
部20bが係合部材19の係止爪19cに近接した状態とする。
なおこの状態の下では、４つの弾性片19aの外周面は所
定の直径の円筒面上に配されている。しかして、弾性片
13aがクリップ受け17の長孔18に貫通されると共にクリ
ップ本体19の頭部19bがクリップ受け17の底壁17bの座面
17c上に係合して落下が防止される一方、クリップ本体1
9の頭部19bから上方に突出している軸状部材20の押圧操
作部20aが内装材13の小孔21に嵌合されているので、こ
れらの部材13，19，20間の係合作用にてクリップ14の水
平方向への移動が防止された状態となされる。

このようにしてクリップ14を脱落防止状態で内装材13に
組付けた後に、クリップ受け17から下方へ突出している
クリップ本体19の弾性片19aを取付部23の挿通孔24内に
差し込み、次いで軸状部材20の押圧操作部20aを下方へ
指で押圧する。これに伴い、軸状部材20が下方へ移動さ
れるため、この際の軸状部材20の円錐形状部20bとクリ
ップ本体19の係止爪19cとの係合作用にて前記係合爪19c
が外径方向に押し拡げられ、第４図に示すように係合凹
部20c内にクリック係合される。

その結果、４つの弾性片19aの一部にて膨出部26が構成
され、この膨出部26とクリップ本体19の頭部19bとの間
に取付部23とクリップ受け17の底壁17bとが互いに重ね
合せ状態で挾持されることとなり、これにより内装材13
が取付部23に固定される。

なお、この固定状態の下では、軸状部材20の押圧操作部
20aの頂面20eは第４図に示すように内装材13の表面と同
じ平面上に配置され、内装材13の表面と前記頂面20eと
が面一となされる。

このような構成の取付構造によれば、クリップ本体19を
クリップ受け17に装着した後に軸状部材20を第３図に示
す如く内装材13の小孔21を通してクリップ本体19の中央
貫通孔19e内に差し込むことにより、クリップ14の脱落
が確実に防止された状態の下でクリップ14をクリップ受
け17に仮止めすることができる。また、クリップ受け17
及びクリップ本体19は内装材13の裏面側に配され、内装
材13の表面に露呈されるのは軸状部材挿通用の小孔21及
び軸状部材20の頂面20eだけであるため、外観性の向上
を図ることができる。

さらに、上述の如き利点を有する上に、ツーピース式の
クリップ14の長所である脱着性の良さを備えている。す
なわち、第４図に示す如き取付状態の下で軸状部材20を
下方に押し込み、クリップ本体19の係合爪19cと軸状部
材20の係合凹部20cとの係合を解除して前記係合爪19cを
軸状部材20のくびれ部20dに係合させ、係合部材19の弾
性片19aを第５図に示す如く円筒面上に弾性復帰させる
ことにより、内装材13の取外しを容易に行なうことがで
きる。

また、軸状部材20としては、既存のものの頭部のみの部
分を単に延設したものを用いることができるので、特別
な設計を要することがなく、従って設計に当ってコスト
面でも有利である。

以上、本考案の一実施例に付き延べたが、本考案は既述
の実施例に限定されることなく、本考案の技術的思想に
基いて各種の変形及び変更が可能である。

例えば、実施例で用いたクリップ14に限ることなく、ク
リップ本体の挿通孔に軸状部材を差し込む型式のもので
あれば、どのような構成のものであってもよい。また、
本考案は自動車の内装材に限らず、各種の内装材の取付
構造に適用可能である。

ｅ．考案の効果 以上の如く、本考案は、クリップ本体（グロメット）と
軸状部材とから成るツーピース式のクリップを用いると
共に、内装材の小孔を通して内装材の裏面のクリップ受
けに装着させたクリップ本体の挿通孔内に軸状部材を差
し込むようにしたものであるから、クリップ受けの座面
とクリップ本体の頭部との間の係合作用によりクリップ
の落下が防止されると共に、クリップ本体からの軸状部
材の突出部分と内装材の小孔との間の係合作用により内
装材に対して平行な方向の移動が防止されることとなる
ため、内装材の取付作業時にクリップをクリップ受けに
脱落することなく確実に仮止めすることが可能となる。
従って、クリップの脱落等の支障を来たすことなく容易
にかつ能率良く内装材の取付作業を行なうことができ
る。しかも、クリップ受けを内装材の裏面に設け、内装
材の表面（外観側）には軸状部材挿通用の小孔のみを設
ければ済むようにしたので、外観性の向上を図ることが
可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第５図は本考案の一実施例を示すものであっ
て、第１図は自動車のインストルメントパネルの斜視
図、第２図は内装材の取付構造の分解斜視図、第３図は
内装材にクリップを仮止めした状態を示す断面図、第４
図は内装材を取付部に固定した状態を示す断面図、第５
図は内装材の取外し時の状態を示す断面図、第６図及び
第７図は従来の取付構造の一例を示すものであって、第
６図は第２図と同様の斜視図、第７図は第４図と同様の
断面図、第８図〜第11図は従来の取付構造の別例を示す
ものであって、第８図は第２図と同様の斜視図、第９
図，第10図及び第11図は第３図，第４図及び第５図とそ
れぞれ同様の断面図である。 12……インストルメントパネル、 13……内装材、14……クリップ、 17……クリップ受け、17c……座面、 18……長孔、19……クリップ本体、 19a……弾性片、 19b……フランジ状の頭部、19c……係合爪、 19d……スリット、19e……中央挿通孔、 20……軸状部材、20a……押圧操作部、 20b……円錐形状部、20c……係合凹部、 20d……くびれ部、20e……頂面、 21……小孔、23……取付部、 24……挿通孔、26……膨出部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】一端側に形成されたフランジ状の頭部及び
   他端側に形成された複数の弾性片をそれぞれ具備するク
   リップ本体と、前記複数の弾性片を外方へ押し拡げるた
   めに前記クリップ本体の挿通孔に差し込まれる軸状部材
   とから成るツーピース式のクリップを用いて、内装材を
   所定箇所に取付けるための構造において、一端が開口さ
   れた長孔を有するクリップ受けを前記内装材の裏面に一
   体的に設けると共に、前記長孔に対応する前記内装材の
   所定箇所に小孔を形成し、前記長孔の開口を通して前記
   クリップ本体を前記長孔内に嵌入して前記クリップ本体
   の頭部を前記クリップ受けの座面に係合させた状態の下
   で、前記軸状部材を前記内装材の小孔を通して前記クリ
   ップ本体の挿通孔に差し込むことにより、前記内装材の
   取付けを行なうようにしたことを特徴とする内装材の取
   付構造。