JPH0648534B2

JPH0648534B2 - 磁気記録フレキシブルディスク用ポリエステルフイルムの製造法

Info

Publication number: JPH0648534B2
Application number: JP15982387A
Authority: JP
Inventors: 正広細井; 久浜野
Original assignee: Teijin Ltd
Current assignee: Teijin Ltd
Priority date: 1987-06-29
Filing date: 1987-06-29
Publication date: 1994-06-22
Anticipated expiration: 2009-06-22
Also published as: JPS644921A

Description

【発明の詳細な説明】産業上の利用分野本発明は磁気記録フレキシブルディスク用ポリエステル
フイルムの製造法に関し、更に詳しくは温湿度による寸
法変化が小さくかつ温湿度の膨脹率の面内異方性が小さ
い磁気記録フレキシブルディスク用ポリエステルフイル
ムの製造法に関する。

従来技術とその問題点磁気記録フレキシブルディスクは、通常、二軸配向ポリ
エステルフイルムをベースとし、この表面に磁性微粒子
をバインダーとともに塗布して、或は真空蒸着，スパッ
タリング，メッキなどの方法で磁性金属薄膜層を形成し
て磁性層を設けることで製造される。

近年、ディスクを用いた磁気記録・再生装置は、磁気記
録の高密度化，高信頼化が進められ、これに伴ってフレ
キシブルディスクにも、(イ)記録に歪みが生じないよう
な機械的強度，(ロ)記録再生時の不測の熱によって寸法
変化をきたさないような耐熱寸法安定性，(ハ)磁性層の
薄層化によって電磁変換特性が低下しないような優れた
表面平坦性，(ニ)トラック１周における出入力電圧の変
動が小さい面内等方性，換言すれば優れたモジュレーシ
ョン等の特性がますます要求され、これら特性の改善さ
れたディスクの開発が要望されている。

これら特性のうち、例えばモジュレーションの改善を、
ディスクの製造過程で磁性層の磁性材料の磁化容易軸を
ランダマイザーを用いて等方化することで行うことが提
案されている（特開昭60-193137 号）。

しかしながら、モジュレーションはベースフイルムの歪
み等によって悪化することがあり、上記提案のように未
固化状態の磁性層をランダマイザーによって無配向化し
てもその効果は小さい。ベースフイルムに起因するモジ
ュレーションの悪化はフレキシブルディスクを温湿度の
変化を伴う雰囲気や、高温度または低温度の雰囲気下で
使用する場合に特に問題となる。この悪化理由として、
二軸配向ポリエステルフイルムは一般に温度や湿度の変
化に伴って寸法変化（伸縮）を生じ、しかも寸法変化が
等方的に起らないこと、換言すると二軸配向ポリエステ
ルフイルムに温度，湿度の膨脹率の異方性があることが
挙げられている。

また、フレキシブルディスクはこの上限使用温度を51.5
℃から60℃程度に拡大することが求められ、この60℃で
の使用に耐えられるような寸法安定性，電磁変換特性等
を備えることが要望されている。この使用温度の拡大は
ベースフイルムの上記寸法変化（伸縮）を大きくし、ま
た上記異方性を大きくする要因となる。

熱収縮率や寸法変化の小さいフレキシブルディスクを得
る手段として、従来から、ベースフイルムやディスクを
裁断し、これら複数枚を重ね合せた状態で弛緩熱処理す
る方法が提案されている（特開昭59-127233 号）。この
熱処理は全く無緊張下で実施される点で理想的であるも
のの、連続的に磁性層を形成したウエブを処理できず、
この為作業性や生産効率が低いという別の問題をかかえ
ている。

また、二軸延伸ポリエステルフイルムの幅方向（横方
向）の熱収縮率や寸法変化を小さくする方法として、フ
イルム製造工程における熱固定過程で制限収縮を与える
方法が知られている。しかし、フイルムの長手方向（縦
方向）についてはフイルムの微少な変形しか示さないフ
イルムを製造することは、通常の二軸延伸熱固定方式で
は困難である。

そこで、フイルム長手方向の寸法安定性を向上する方法
として熱固定後のフイルムを弛緩熱処理する方法が提案
されている。例えば、特開昭53-96072号公報では、二軸
延伸ポリエステルフイルムを幅方向に１〜10％の制限収
縮を与えながら熱固定し、次いで浮游処理方式によって
120 〜160 ℃の温度で弛緩熱処理する方法が提案されて
いる。しかし、本発明者の検討結果によれば、この方法
によって得られるポリエステルフイルムは、60℃，80％
ＲＨの雰囲気下においたときに異外にも幅方向（横方
向）に伸長するという挙動を示し、この結果面内の寸法
変化の異方性が大きくなり、所望される寸法安定性を有
し得ないことが明らかとなった。

発明の目的本発明は、この問題を解決し、室温から60℃程度の温度
までの高湿度雰囲気に置かれた場合にも寸法変化が極め
て小さくその面内異方性が小さい磁気記録フレキシブル
ディスク用ポリエステルフイルムの製造法を提供するこ
とにある。

発明の構成・効果本発明の目的は、本発明によれば、二軸延伸熱固定した
ポリエステルフイルムをステンターでフイルム横方向に
伸長を与えながら該熱固定温度より低い温度で熱処理し
て60℃，80％ＲＨの温湿度条件下に72時間保持した際の
縦方向収縮率が0.05〜0.2 ％でありかつ横方向収縮率が
該縦方向収縮率より0.02〜0.2 ％大きい熱処理フイルム
とし、次いで該熱処理フイルムをこの走行張力を4.0 〜
10kg/cm²に保ちながら空気力による浮游処理方式によっ
て、非接触の状態で90〜110 ℃の温度で５秒以上弛緩熱
処理して前記の収縮率を両方向とも0.03％以下にするこ
とを特徴とする磁気記録フレキシブルディスク用ポリエ
ステルフイルムの製造法によって達成される。

本発明におけるポリエステルとはポリエチレンテレフタ
レート，ポリエチレン−2,6 −ナフタレンジカルボキシ
レート，ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレー
ト等に代表される芳香族ポリエステルであり、これらは
ホモポリマーでも良く、コポリマー（共重合成分は20モ
ル％以下が好ましい）でも良い。ポリエステルの分子量
は通常のもので良く、特に限定はない。またポリエステ
ルは任意の添加剤を含有していてもよい。

本発明における二軸延伸熱固定したポリエステルフイル
ムは、ポリエステル溶融物をダイより押出し、急冷固化
した後、縦方向に3.0 〜4.5 倍，次いで横方向に3.0 〜
4.5 倍に延伸し、更に熱固定する方法によって製造でき
る。延伸倍率は、縦方向を3.0 〜3.7 倍とし、かつ横方
向を縦方向より0.1 〜0.3 倍高くするのが、更に好まし
い。この二軸延伸ポリエステルフイルムはバランスタイ
プが好ましい。熱固定温度は180 〜240 ℃であることが
好ましい。ここで、この熱固定温度は熱固定処理時或は
熱固定処理ゾーンの最高温度を云う。この温度範囲を著
しく離れた温度で熱固定しても、フイルムの熱膨脹率が
フレキシブルデイスクで要望される値を外れる場合が生
じるので、好ましくない。

本発明においては二軸延伸熱固定したポリエステルフイ
ルムを先ずステンターにおいて幅方向に伸長，特に１〜
７％の伸長を与えながら該熱固定の温度より低い温度で
熱処理し、60℃，80％ＲＨの温湿度条件下に72時間保持
した際の縦方向収縮率が0.05〜0.2 ％でありかつ横方向
収縮率が該縦方向収縮率より0.02〜0.2 ％大きい熱処理
フイルムとする。この熱処理は２段目の熱固定処理とも
云うことができる。例えば、ステンターの熱固定ゾーン
（区域）の後半でトウアウト処理すれば、トウアウトす
る以前の熱固定処理（前半の処理）とトウアウトしての
熱固定処理（後半の処理）とに分けることができ、前者
が上記の熱固定に該当し、後者が上記の熱処理に該当す
る。幅方向に伸長を与えながらの熱処理は、熱固定温度
より低い温度、好ましくは20〜50℃低い温度で行う。熱
処理温度が熱固定温度より低くないと、伸長の過程で高
次構造が破壊されるためか、熱膨脹率の異方性が拡大す
るので、好ましくない。一方、熱処理温度が低すぎる
と、伸長時にフイルムの破断が起り易くなるという問題
がある。

本発明においては、次に、以上のようにして熱処理した
フイルムをテンタークリップから外し、浮游熱処理方式
によって非接触状態で弛緩熱処理を行う。この弛緩熱処
理においては、フイルム走行張力を4.0 〜10kg/cm²に保
ち、90〜110 ℃の温度で５秒以上加熱する。この温度が
90℃より低いと、実用的な時間内に所望の熱収縮率まで
低下させるのが困難であり、一方110 ℃より高いとフイ
ルムに波打ちが生じるようになり、好ましくない。好ま
しい処理時間は10秒以上である。この上限は特に限定さ
れないが、弛緩処理の効果は60秒までの間で飽和に達す
る傾向にあるから、60程度以下、実用的には20秒程度で
良い。またフイルム走行張力が4.0 kg/cm²より小さい
と、フイルム走行が不安定となり、一方10kg/cm²より大
きいと弛緩処理の効果が発現しなくかつフイルムの波打
ちを生じるので、好ましくない。

熱処理したフイルムをステンタークリップから外した
後、一旦冷却して両側端部を切断除去してロール状に巻
取り、ロールから巻出して浮游弛緩処理する方法も上記
と同様に可能であるが、連続して処理する方が効率的で
ある。

弛緩熱処理の方式は空気圧による浮上，浮游方式の従来
公知のものを使用できる。この方法は、たとえば特開昭
53-96072号公報に詳細に記述されている。

本発明によって得られるポリエステルフイルムは、その
上に磁性層を設けることで長尺状ウエブとすることがで
きる。このウエブを製造する方法は従来からの方法例え
ば酸性塗料を用いる方法を用いることができる。磁性塗
料は公知のものが使用できる。例えばγ−Ｆｅ_２Ｏ_３の
粉末，セルロースアセテートブチレート，エポキシ樹
脂，レシチン，シリコーン油等をメチルイソブチルケン
ト，トルエン等の溶媒で溶解・分散せしめたものが適用
できる。磁性塗料の乾燥も公知の手段，条件が適用でき
る。また、磁性層が平滑化するように施すカレンダー処
理も公知の手段、公知の処理条件を適用することができ
る。磁性層が形成された磁気記録媒体の巻取も公知の巻
取設備がそのまま使用できる。

本発明によって得られるポリエステルフイルムは、次の
利点を有する。

1. 60℃までの熱履歴によってモジュレーションの悪化
を生じない磁気記録フレキシブルディスクを製造するこ
とができる。

2. 5.25インチのディスクとした場合において96ＴＰＩ
（トラック／インチ）とするものではサーボ機構なしで
もトラッキングずれによるミッシングパルスを生じな
い。

3. フレキシブルディスクのくり返し使用，熱履歴によ
って生じる寸法変化が実質的に無いのでセントラルホー
ルの歪によるクランプ異常及びそれによるディスクの破
損がなくなる。

実施例次に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明する。な
お、例中の記号ＭＤとはフイルムの長手方向（縦方向）
を示し、ＴＤとは幅（横）方向を示す。また、フイルム
特性は次の方法で測定，評価した。

(1) 熱収縮率熱収縮率の測定方向に対して幅10mm，長さ350 mmのフイ
ルムをたんざく状に切り出し、約300 mm間隔の標点を付
ける。このサンプルを25℃，50％ＲＨの恒温恒湿室に24
時間保持後、読取顕微鏡により標点間の長さを読む。次
いで、このサンプルを60℃，80％ＲＨに保持された恒温
恒湿槽に３日間保持して後取り出し、上記の25℃，50％
ＲＨの恒温恒湿室に24時間保持し、再び標点間の長さを
測定する。寸法の変化率（熱収）は、収縮量を元の標点
間の長さで割って100 分率で示したものである。

なお、各種条件処理のフイルムの面内での寸法変化率を
求めるため、フイルムの面内で角度30度毎に上記のよう
にサンプルを切り出し、熱収縮率を測定したが、いずれ
の場合にも熱収縮率の最大，最少値は元のフイルムＭ
Ｄ，又はＴＤに一致していた。このため、表における値
はＭＤ，ＴＤで示す。

(2) フイルムの表面性約１ｍの幅，長さ３ｍのサンプルを平らなテーブル面上
に広げ、フイルムの波打ちの状態から評価する。

波打ちが大きいものを不良，波打ちがなく未処理フイル
ム（弛緩熱処理しないもの）と変らぬ場合を良，とす
る。

実施例１〜３及び比較例１〜３ポリエチレンテレフタレートを溶融してダイスリットよ
り押出し、冷却固化した後、縦方向に3.6 倍延伸し、続
いてステンターにて横方向に3.7 倍延伸し、更に該テン
ターの熱固定ゾーンの前半で最高温度215 ℃で熱固定
し、該ゾーンの後半で幅方向に３％の伸長を与えながら
180 ℃の温度で熱処理した。得られたフイルムの厚みは
75μであった。このフイルムの熱収縮率（60℃，80％Ｒ
Ｈ，72時間）は縦方向が0.090 ％，横方向が0.120 ％で
あった。次いで、この熱処理フイルムを、該熱固定ゾー
ンに連結させた空気力浮游弛緩熱処理装置にて、走行張
力6.8 kg/cm²，熱処理時間20秒，表１に示す温度で弛緩
処理を施した。

これらのフイルムの60℃，80％ＲＨ，３日（72時間）保
持後の収縮率は表１に示す。この収縮率の値が小さいほ
ど寸法安定性がすぐれていることを意味し、また、ＭＤ
とＴＤの値の収縮率の差が小さいほど異方性が小さいこ
とを示している。

表１から明らかな様に80℃以下の処理温度では、熱収縮
率（60℃，80％ＲＨ，３日）は未処理とあまり変らず効
果が無い。また、130 ℃の処理では熱収縮率は極めて小
さくなるけれども平面性が悪くなる。これらの結果か
ら、弛緩熱処理の温度条件は90〜110 ℃を要することが
わかる。

実施例４〜８及び比較例４弛緩熱処理時間を表２に示すように変更する以外は実施
例３と同様に行った。その結果を表２に示す。

これらの結果から、弛緩熱処理の時間は５秒以上を要す
ることがわかる。

実施例９〜11及び比較例５弛緩熱処理時のフイルム走行張力を表３に示すように変
更する以外は実施例７と同様に行った。その結果を表３
に示す。

表３から明らかなように、走行張力が2.0 kg/cm²程度に
小さいと、熱収縮率は小さくなるが（この場合、フイル
ムは収縮せずに伸長する。数値の前のマイナスはフイル
ムが伸長したことを示す。）、安定なフイルムの走行が
できず、フイルムは蛇行してしわが入る。

実施例12及び比較例６〜８ステンター熱固定ゾーンの後半での熱処理時に７％の伸
長を与える以外は実施例７と同様に行った。その結果を
実施例７の結果と一緒に表４に示す。

一方、比較のため、上記熱処理時に伸長を与えないまた
は制限収縮を与える以外は上記と同様に行った。その結
果を表３に併記する。

表４から明らかなように、制限収縮を与えたフイルムを
弛緩熱処理した場合には60℃，80％ＲＨ，３日保持後の
熱収縮率は縦方向（ＭＤ）が小さくなるが横方向（Ｔ
Ｄ）にはむしろ伸長して異方性が増大する。

一方伸長を付与したフイルムは熱収縮が小さく、かつそ
の異方性も小さくて優れている。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】二軸延伸熱固定したポリエステルフイルム
をステンターでフイルム横方向に伸長を与えながら該熱
固定温度より低い温度で熱処理して60℃，80％ＲＨの温
湿度条件下に72時間保持した際の縦方向収縮率が0.05〜
0.2 ％でありかつ横方向収縮率が該縦方向収縮率より0.
02〜0.2 ％大きい熱処理フイルムとし、次いで該熱処理
フイルムをこの走行張力を4.0 〜10kg／cm²に保ちなが
ら空気力による浮游処理方式によって、非接触の状態で
90〜110 ℃の温度で５秒以上弛緩熱処理して前記の収縮
率を両方向とも0.03％以下にすることを特徴とする磁気
記録フレキシブルディスク用ポリエステルフイルムの製
造法。