JPH06313333A - 梁用の埋設型枠構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 長手方向で突き合わせ接合される型枠構成体
の接合部が、梁の亀裂誘発原因になる事態を防止し、か
つ、亀裂が発生したとしても、その亀裂の進行を抑止で
きる梁用の埋設型枠構造を提供する。 【構成】 少なくとも梁底用の型枠材６と梁側部用の型
枠材７とに分割されたプレキャスト製の型枠構成体３Ａ
を、それぞれ長手方向に接合して梁用の埋設型枠を構成
するに際し、梁底型枠材６どうしの接合位置ｔと梁側部
型枠材７どうしの接合位置ｐを、それぞれ長手方向で位
置を異ならせて、接合線をジグザグ状にしている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、建築物の梁を構築する
ためのプレキャスト製の埋設型枠構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】一度あるいは数度の使用で捨てられる木
製のコンクリートパネルによる構築に比べて資源の無駄
がなく、しかも、プレキャスト製の型枠を打ち放しにす
ることで工期の短縮が達成されることから、柱や梁ある
いは壁などの構築に埋設型枠が広く用いられる傾向にあ
る。

【０００３】この内の壁用の埋設型枠は、上下辺が壁面
高さに相当する短尺幅の平板状の型枠材を幅方向に並べ
て、これらを突き合わせ接合することで構成される。角
筒の形状を呈する柱用の埋設型枠は、コーナー部の近傍
において周方向で例えば４個に分割して成る型枠材、即
ち、幅方向両側にコーナー用の屈曲部を連設した一対の
浅いＵ字溝形状の型枠材と、これの屈曲部間にわたる２
枚の平板状の型枠材とを、これらの端部を互いに突き合
わせ接合することで構成される。

【０００４】深いＵ字溝の形状を呈する梁用の埋設型枠
も、コーナー部の近傍において周方向で例えば３個に分
割して成る型枠材、即ち、幅方向両側にコーナー用の屈
曲部を連設した浅いＵ字溝形状の型枠材と、２枚の平板
状の型枠材とを、これらの端部を互いに突き合わせ接合
することで構成される。

【０００５】このように、壁用ならびに柱・梁用の埋設
型枠を複数個の型枠材に分割するのは、型枠材を互いに
重ね合わせることで保管スペースが狭くて済む上に運搬
の面でも好適なものとなり、また単品が軽量化されるこ
とで取り扱いの面でも優れたものとなるからであるが、
長尺物の梁用の埋設型枠については、これの運搬ならび
に取り扱いの面で更に優れたものにする上で、これを長
手方向において複数個の型枠構成体に分割して、これら
の型枠構成体を突き合わせ接合させる形態をとってい
る。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ここで問題となるのは
梁用の埋設型枠の構造である。即ち、従来の梁用埋設型
枠の構造は、図３，４に示すように、長手方向で３個に
分割された型枠構成体１１Ａを、コーナー用の型枠部分
１２を連設した浅いＵ字溝形状の梁底型枠材１３と、２
枚の梁側部用の型枠材１４とに分割して、これらの端部
を互いに突き合わせ接合させて柱用埋設型枠１５に架設
させる形態をとっているが、このとき、型枠構成体１１
Ａ，１１Ａどうしの端部の突き合わせ接合位置、言い換
えれば、梁底型枠材１３，１３どうしの接合位置ｈと梁
側部型枠材１４，１４どうしの接合位置ｉを互いに一致
させていたのである。

【０００７】しかし、このように梁底用と梁側部用の型
枠材間の接合線を一直線に連ねていると、梁に荷重がか
ゝって梁下部側に引っ張りの応力が作用し、梁底用の型
枠材１３，１３間にこれを互いに離間させるように応力
がかゝった場合に、この梁底用型枠材の接合部と直線状
の接合状態にある梁側部用の型枠材１４にも、それの接
合部間において型枠材１４，１４を互いに離間するよう
に応力がかゝり、このとき、梁側部用の型枠材１４が梁
底用の型枠材１２の離間に対して何らバックアップする
ように機能しないことから、梁底用型枠材１３，１３の
接合部を起点にして梁に亀裂が入り易くなり、更に、接
合線が一直線に連なっているために、この接合線に沿っ
て亀裂が進行し易い問題があったのである。

【０００８】本発明は、極めて簡単かつ合理的な改良に
よって、亀裂を誘発し難い上に、たとえ亀裂を誘発した
としても、それの進行を効果的に抑止できる梁用の埋設
型枠構造を提供することを目的としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明による梁用の埋設
型枠構造は、少なくとも梁底用の型枠材と梁側部用の型
枠材とに分割されたプレキャスト製の型枠構成体を、そ
れぞれ長手方向に接合して構成される梁用の埋設型枠構
造であって、梁底型枠材どうしの接合位置と梁側部型枠
材どうしの接合位置を、それぞれ長手方向で位置を異な
らせた点に構成上の特徴がある。尚、梁底型枠材どうし
の接合位置は梁の長さ方向中央位置にないことが望まし
い。

【００１０】

【作用】上記の特徴構成によれば、型枠構成体の端部の
突き合わせ接合線がジグザグ状であって、梁底用の型枠
材どうしの接合部には、梁側部型枠材の面部分が存する
ことから、梁に曲げ荷重がかゝって梁底用の型枠材を互
いに離間させるように応力が作用しても、上記の梁側部
型枠材の面部分が梁底型枠材の離間に対してバックアッ
プするように機能することから、梁底用型枠材の接合部
が梁に対する亀裂の誘発原因になることが防止される。
また、梁底用型枠材の接合部で梁の亀裂が発生したとし
ても、型枠構成体の端部の突き合わせ接合線がジグザグ
状であるから、接合線に沿っての亀裂の進行が効果的に
抑止される。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１はプレキャスト製の梁用埋設型枠１を示し、
この梁用の埋設型枠１は所定の間隔を隔てて立設配置さ
れた一対のプレキャスト製の柱用埋設型枠２，２にわた
って架設されている。

【００１２】柱用の埋設型枠２は、図２に示すように角
筒形状を呈するものであって、この実施例では、それぞ
れが柱長さに相当する寸法のＬ字状の４個のコーナー用
型枠材３…と、このコーナー用型枠材３の端面に突き合
わせ接合される４枚の平板状の型枠材４…とに分割し、
かつ、突き合わせの接合面には互いに噛合する凹凸部
ａ，ｂを形成し、更に、平板状の型枠材４の内面側には
補強用の突条リブｃを長手方向全長にわたって形成して
成るもので、接着剤を介して端部の凹凸部ａ，ｂを突き
合わせ噛合させて一体化させている。

【００１３】尚、柱用の埋設型枠２として、これをコー
ナー用型枠材を平板状の型枠材に一体連設した一対の浅
いＵ字溝形状の型枠材と、この一対のコーナー用型枠材
にわたる２枚の平板状の型枠材とに分割して、これらの
端部を互いに突き合わせ接合させる構成にして実施可能
である。

【００１４】梁用の埋設型枠１は、深いＵ字溝の形状を
呈するものであって、この梁用の埋設型枠１は、図１に
示すように、梁長手方向において３個の型枠構成体１Ａ
に分割されており、その分割点は、梁に曲げ荷重がかゝ
った際の曲げ応力と引っ張り応力の切り換わり点の近傍
で、かつ、最も長い中間部の型枠構成体１Ａの長さが運
搬に適した長さとなるように設定している。

【００１５】そして型枠構成体１Ａのそれぞれは、コー
ナー部の近傍において周方向で例えば５個の型枠材５〜
７に分割して成り、より詳しくは、Ｌ字状の２個のコー
ナー用型枠材５，５と、このコーナー用型枠材５，５間
に位置して突き合わせ接合される平板状の梁底用の型枠
材６、及び、コーナー用型枠材５の他側辺に立ち上げ接
合される２枚の平板状の梁側部用の型枠材７，７とに分
割して、それぞれ突き合わせの接合面には互いに噛合す
る凹凸部ｄ，ｅを形成し、かつ、梁底型枠材６と梁側部
型枠材７の内面側には、補強用の突条リブｆを長手方向
全長にわたって形成して成るもので、接着剤を介して端
部の凹凸部ｄ，ｅを突き合わせ噛合させて一体化させて
いる。

【００１６】長手方向両側の型枠構成体１Ａについて
も、その一端側を図２に示すように、梁側部型枠材７の
端部に、柱用埋設型枠２のコーナー用型枠材３の凹凸部
ａ，ｂに噛合する凹凸部７ａを形成（コーナー用型枠材
５の端部にも同様の凹凸部が形成されているが、図面に
は明示されていない。）し、更に、図１に照らして明ら
かなように、型枠構成体１Ａのそれぞれにおいて、梁側
部型枠材７の長さに対して、コーナー用型枠材５と梁底
型枠材６の長さを例えば１０ｃｍほど異ならせて、型枠
構成体１Ａ，１Ａどうしの接合位置、より具体的には、
梁側部型枠材７どうしの接合位置ｐに対して、コーナー
用型枠材５どうしの接合位置ｒと梁底型枠材６どうしの
接合位置ｔを、それぞれ長手方向で位置を異ならせてい
る。

【００１７】尚、上記の実施例では、コーナー用型枠材
５どうしの接合位置ｒと梁底型枠材６どうしの接合位置
ｔを同じにしているが、この接合位置ｒ，ｔについても
長手方向で位置を異ならせるもよい。

【００１８】上記の構成において、梁用の埋設型枠１内
に梁鉄筋を配置し、柱用の埋設型枠２内にも柱鉄筋を配
置し、かつ、各型枠１，２内にコンクリートを打設する
ことによって、それぞれ型枠１，２が一体化された梁・
柱が構築されるのであるが、梁については、それの型枠
構成体１Ａの端部の突き合わせ接合線がジグザグ状にな
って、梁底型枠材６どうしの接合部には、梁側部型枠材
７の面部分が存することになるから、梁に曲げ荷重がか
ゝって梁底用の型枠材６，６を互いに離間させるように
応力が作用しても、上記の梁側部型枠材７の面部分が梁
底型枠材６，６の離間に対してバックアップするように
機能することで、梁底用型枠材６，６の接合部が梁に対
する亀裂の誘発原因になることが防止される。

【００１９】また、梁底用型枠材６，６の接合部で梁の
亀裂が発生したとしても、型枠構成体１Ａの端部の突き
合わせ接合線がジグザグ状であるから、接合線に沿って
の亀裂の進行が効果的に抑止される。

【００２０】尚、梁用の型枠構成体１Ａとして、例えば
上記コーナー用型枠材５を梁底型枠材６の幅方向両側に
一体連設した浅いＵ字溝形状の型枠材と、これのコーナ
ー用型枠材５に立ち上げ接合される２枚の平板状の梁側
部型枠材７とに分割する構成や、上記コーナー用型枠材
５を梁側部型枠材７の下端側に一体連設した一対のＬ字
状の型枠材と、これのコーナー用型枠材５，５間に突き
合わせ接合される１枚の平板状の梁底型枠材６とに分割
する構成にして、梁底型枠材どうしの接合位置と梁側部
型枠材どうしの接合位置を、それぞれ長手方向で位置を
異ならせての実施も可能である。

【００２１】いずれの実施例においても、梁の下端で、
梁の長さ方向中央位置に引張応力が最も発生するので、
梁底型枠材どうしの接合位置は、梁の長さ方向中央位置
にないようにすることが望ましい。また梁側部型枠材７
どうしの接合位置ｐと、梁底型枠材６どうしの接合位置
ｔとのずれは、２０ｍｍ程度であっても有効である。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明による梁用
の埋設型枠構造によれば、複数個に分割されて長手方向
で突き合わせ接合される型枠構成体の接合線をジグザグ
にするように、梁底型枠材どうしの接合位置と梁側部型
枠材どうしの接合位置を、それぞれ長手方向で位置を異
ならせる合理的な改良技術によって、型枠材の接合部が
亀裂の誘発原因となる事態が防止されるようになり、ま
た、亀裂が発生したとしても、その亀裂の進行を効果的
に抑止できるに至ったのである。

【図面の簡単な説明】

【図１】柱用埋設型枠に梁用埋設型枠を架設した側面図
である。

【図２】柱用埋設型枠に対する梁用埋設型枠の架設部を
示す斜視図である。

【図３】従来例の柱用埋設型枠に梁用埋設型枠を架設し
た側面図である。

【図４】従来例の柱用埋設型枠に対する梁用埋設型枠の
架設部を示す斜視図である。

【符号の説明】

１Ａ…型枠構成体、６…梁底型枠材、７…梁側部型枠
材、ｐ，ｔ…接合位置。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 舟崎 護 東京都港区芝２丁目32番１号 株式会社長 谷工コーポレーション内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも梁底用の型枠材と梁側部用の
   型枠材とに分割されたプレキャスト製の型枠構成体を、
   それぞれ長手方向に接合して構成される梁用の埋設型枠
   構造であって、梁底型枠材どうしの接合位置と梁側部型
   枠材どうしの接合位置を、それぞれ長手方向で位置を異
   ならせてあることを特徴とする梁用の埋設型枠構造。
2. 【請求項２】 梁底型枠材どうしの接合位置が梁の長さ
   方向中央位置にないことを特徴とする請求項１に記載の
   梁用の埋設型枠構造。