JPH0628429U - 往復動用オイルシール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 簡単な構造で、大気側の流体の密封側への進
入に対する密封性および軸偏心に対する追従性を向上さ
せた往復動用オイルシールを提供する。 【構成】 少なくとも密封側Ｏの流体を封止するシール
リップ７と大気側Ａの流体を封止するダストリップ１６
とを有する往復動用オイルシール１５において、ダスト
リップ１６のダストリップ先端部１７より密封側Ｏに、
所定の締代を有する環状の凸部１８を少なくとも１つ設
けたことを特徴とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、往復動用オイルシールに係り、特に、軸方向に相対移動する２つの 部材の往復動部分からの封止流体の漏洩を防止する往復動用オイルシールに関す る。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、自動車、オートバイあるいは種々の機械等に用いられるショックアブ ソーバ等の往復機構には、オイル等の密封流体の漏洩を防止する往復動用オイル シールが多用されている。

【０００３】 図６はこの種の従来の往復動用オイルシール１の一般的なものの要部を示すも のであり、互いに往復運動をするハウジング２とロッド３との間に装着されよう になっている。この往復動用オイルシール１は、金属等により製せられた断面略 Ｌ字状の環状の補強環４にゴム様弾性体等からなるシール本体５が一体に固着さ れている。そして、このシール本体５には、前記補強環４の外周側に位置し、ハ ウジング２に対して適宜な締代を有する外周面６が形成されるとともに、シール 本体２の補強環４より内側には、図中上方の密封側Ｏに延出し、所望の密封流体 の漏洩を防止するするシールリップ７と、図中下方の大気側Ａに延出し、大気側 のダストあるいは泥水等の密封側への進入を防止するダストリップ８とが形成さ れている。

【０００４】 前記シールリップ７の図中上端部内周面には、内側に向かって所定の締代を有 する主リップ先端部９が形成されるとともに、その下方に、主リップ先端部９の 締代より小さい締代を有し、ロッド３に向かって頂点をなす断面略三角形形状若 しくは頂点をアール形状とした補助リップ先端部１０が形成されている。そして 、前記シールリップ７の外周面の前記主リップ先端部９に対応する位置に周方向 に形成された装着溝１１内には所望のスプリング１２が装着され、前記主リップ 先端部９と補助リップ先端部１０とを径方向内方に所望の緊迫力によりロッド３ に対して締付けるようになされている。また、前記ダストリップ８の図中下端部 内周面には、内側に向かって所定の締代を有するダストリップ先端部１３が形成 されている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、前述した従来の往復動用オイルシール１においては、装着状態 において、ダストリップ８がロッド３に対して軸方向に接触面積が大きいべた当 たりをし、ダストリップ８のダストリップ先端部１３に緊迫力を集中させること ができず、緊迫力がロッド３の軸方向に分散し、大気側のダストあるいは泥水等 の密封側への進入に対する密封性（耐ダスト性）およびロッド３の軸偏心に対す る追従性に劣るという問題点があった。

【０００６】 このような問題点を解決するためには、図７に示すように、ダストリップ８ａ の外周部にスプリング１４を装着した往復動用オイルシール１ａとすればよいが 、このような往復動用オイルシール１ａとした場合には、部品点数が多くなると ともに、ダストリップ８ａの全体の大きさが大きくなり、経済的負担の増加を招 くばかりでなく、近年の小型化、省スペース化という要求に対し逆行するという 問題点があった。

【０００７】 本考案はこれらの点に鑑みてなされたものであり、前述した従来のものにおけ る問題点を克服し、簡単な構造で、大気側の流体の密封側への進入に対する密封 性および軸偏心に対する追従性を向上させた往復動用オイルシールを提供するこ とを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

前述した目的を達成するため本考案の往復動用オイルシールは、少なくとも密 封側の流体を封止するシールリップと大気側の流体を封止するダストリップとを 有する往復動用オイルシールにおいて、ダストリップのダストリップ先端部より 密封側に所定の締代を有する環状の凸部を少なくとも１つ設けたことを特徴とし ている。

【０００９】

【作用】

前述した構成からなる本考案の往復動用オイルシールによれば、ダストリップ のダストリップ先端部より密封側に所定の締代を有する環状の凸部を形成するこ とで、ダストリップがロッドに対してロッドの軸方向に接触面積が大きいべた当 たりを確実に防止し、ダストリップのダストリップ先端に緊迫力を集中させるこ とができ、大気側のダストあるいは泥水等の密封側への進入に対する密封性（耐 ダスト性）および軸偏心に対する追随性を向上させることができる。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図１から図５により説明する。なお、前述した従来の ものと同一ないしは相当する構成については、図面中に同一の符号を付し、その 説明は省略する。

【００１１】 図１は本考案による往復動用オイルシールの要部を示す縦断面図である。

【００１２】 図１に示すように、本実施例の往復動用オイルシール１５は、金属等により製 せられた断面略Ｌ字状の環状の補強環４にゴム様弾性体等からなるシール本体５ が一体に固着されている。そして、このシール本体５には、前記補強環４の外周 側に位置し、ハウジング２に対して適宜な締代を有する外周面６が形成されると ともに、シール本体５の補強環４より内側には、図中上方の密封側Ｏに延出し、 所望の密封流体の漏洩を防止するするシールリップ７と、図中下方の大気側Ａに 延出し、大気側のダストあるいは泥水等の密封側への進入を防止するダストリッ プ１６とが形成されている。

【００１３】 前記シールリップ７の図中上端部内周面には、内側に向かって所定の締代を有 する主リップ先端部９が形成されるとともに、その下方の所定位置に、主リップ 先端部９の締代より小さい締代を有し、ロッド３に向かって頂点をなす断面略三 角形形状若しくは頂点をアール形状とした補助リップ先端部１０が形成されてい る。そして、前記シールリップ７の外周面の前記主リップ先端部９に対応する位 置に周方向に形成された装着溝１１内には所望のスプリング１２が装着され、前 記主リップ先端部９と補助リップ先端部１０とを径方向内方に所望の緊迫力によ り締付けるようになされている。

【００１４】 また、前記ダストリップ１６の図中下端部内周面には、内側に向かって所定の 締代を有するダストリップ先端部１７が形成されるとともに、ダストリップ１６ のダストリップ先端部１７より図中上方の密封側Ｏの所定位置に、適宜な締代を 有する環状のロッド３に向かって頂点をなす断面略三角形形状の凸部１８が１つ 形成されている。

【００１５】 なお、前記ダストリップ１６に形成する凸部１８の位置および形状並びに数等 は、装着状態において、ダストリップ１６のダストリップ先端部１７に緊迫力が 集中可能であればよく、特に、本実施例に限定されるものではない。

【００１６】 また、図２に示すようにダストリップ１６ａに装着溝１１を形成し、スプリン グ１４を装着させた往復動用オイルシール１５ａとすることも可能である。ただ し、この場合には、部品点数が多くなるとともに、ダストリップ１６ａの全体の 大きさが大きくなり、経済的負担が増加し、小型化、省スペース化に向かないと いう問題点がある。

【００１７】 つぎに、前述した構成からなる本実施例の往復動用オイルシールの作用につい て具体的な実験例を例示して説明する。

【００１８】 実験例１ 本実施例の往復動用オイルシールと従来の往復動用オイルシールとの装着状態 におけるダストリップの緊迫力の分布について比較実験を行なった。

【００１９】 図３のａおよびｂに実験結果を示す。

【００２０】 図３は、装着状態における本実施例のダストリップの緊迫力の分布を示す説明 図であり、同図ａに示す本実施例のダストリップ１６の緊迫力の分布の方が、従 来のダストリップ８の緊迫力の分布を示す同図ｂに比較して、ダストリップ先端 部１７の緊迫力の軸方向の範囲が狭いとともに、緊迫力の大きさが大きいことが 判明した。

【００２１】 すなわち、本実施例の往復動用オイルシール１５のダストリップ１７のダスト リップ先端部１７の緊迫力のロッド軸方向の範囲が狭いということは、ダストリ ップ先端部１７に緊迫力を集中させることができるということであり、大気側Ａ のダストあるいは泥水等の密封側Ｏへの進入に対する密封性（耐ダスト性）を確 実に向上させ、長期間に亘り安定した密封性を維持できるという効果を奏する。 また、緊迫力が大きくなることにより、ロッド３の軸偏心に対する追随性を確実 に向上させる効果を奏する。

【００２２】 以下、本実施例の往復動用オイルシールの密封性および軸偏心に対する追随性 について実験例を例示する。

【００２３】 実験例２ 図示しないショックアブソーバに試料となる往復動用オイルシールを装着し、 大気側に泥水を配置して、その泥水の密封側に進入する進入量を、同一条件にお いて調査するダストリップの密封性の比較試験を行なった。

【００２４】 前記試料となる往復動用オイルシールとしては、従来のダストリップ８を有す る往復動用オイルシール１（図６）を試料Ａとし、従来のダストリップ８ａにス プリング１４を有する往復動用オイルシール１ａ（図７）を試料Ｂとし、本実施 例のダストリップ１６を有する往復動用オイルシール１５（図１）を試料Ｃとし 、本実施例のダストリップ１６ａにスプリング１９を有する往復動用オイルシー ル１５ａ（図２）を試料Ｄとした。そして、ショックアブソーバのロッド３の一 往復を１サイクルとし、１００万サイクル時点と、２００万サイクル時点におけ る泥水進入量を求めた。

【００２５】 図４に試験結果を示す。この試験結果からも明白なように、本実施例の往復動 用オイルシール１５（試料Ｃ）は、従来の往復動用オイルシール１（試料Ａ）に 比べ密封性が格段に向上するとともに、ダストリップにスプリングを有する往復 動用オイルシール１ａ，１５ａ（試料Ｂおよび試料Ｄ）と同等の密封性を有する ことが判明した。

【００２６】 実験例３ 図示しないショックアブソーバに試料となる往復動用オイルシールを装着し、 ロッドの軸偏心量と追随可能なロッド速度との関係について調査する軸偏心に対 する追随性の比較試験を行なった。

【００２７】 前記試料となる往復動用オイルシールとしては、前記実験例２と同様に、従来 のダストリップ８を有する往復動用オイルシール１（図６）を試料Ａとし、従来 のダストリップ８ａにスプリング１４を有する往復動用オイルシール１ａ（図７ ）を試料Ｂとし、本実施例のダストリップ１６を有する往復動用オイルシール１ ５（図１）を試料Ｃとし、本実施例のダストリップ１６ａにスプリング１４を有 する往復動用オイルシール１５ａ（図２）を試料Ｄとした。

【００２８】 図５に試験結果を示す。図５において、各試料の線分より下側が軸偏心に対し て追随可能な領域を示し、上側が追随不可能な領域を示す。この試験結果からも 明白なように、本実施例の往復動用オイルシール１５（試料Ｃ）は、従来の往復 動用オイルシール１（試料Ａ）に比べ軸偏心に対する追随性が格段に向上すると ともに、従来のダストリップ８ａにスプリング１４を有する往復動用オイルシー ル１ａ（試料Ｂ）と同等の軸偏心に対する追随性を有することが判明した。また 、本実施例のダストリップ１６ａにスプリング１４を有する往復動用オイルシー ル１５ａ（試料Ｄ）を用いると、軸偏心に対する追随性をより向上させることが できることが判明した。

【００２９】 なお、本考案は前述した実施例に限定されるものではなく、必要に応じて種々 の変更が可能である。

【００３０】

【考案の効果】

以上説明したように本考案の往復動用オイルシールによれば、ダストリップの ダストリップ先端に緊迫力を集中させることができ、大気側のダストあるいは泥 水等の密封側への進入に対する密封性（耐ダスト性）およびロッドの軸偏心に対 する追随性を確実に向上させることができるという実用的な効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る往復動用オイルシールの一実施例
の要部を示す縦断面図

【図２】本考案に係る往復動用オイルシールの他の実施
例の要部を示す図１と同様の図

【図３】装着状態におけるダストリップの緊迫力の分布
を示す説明図であり、ａは本考案に係る往復動用オイル
シールのダストリップの緊迫力の分布を示し、ｂは従来
の往復動用オイルシールのダストリップの緊迫力の分布
を示す

【図４】ダストリップの密封性の試験結果を示す線図

【図５】ロッドの軸偏心量と追随可能なロッド速度との
関係を示す線図

【図６】従来の往復動用オイルシールの一実施例の要部
を示す縦断面図

【図７】従来の往復動用オイルシールの他の実施例の要
部を示す図６と同様の図

【符号の説明】

２ ハウジング ３ ロッド ４ 補強環 ５ シール本体 ６ 外周面 ７ シールリップ ９ 主リップ先端部 １０ 補助リップ先端部 １１ 装着溝 １２ スプリング １４ スプリング １５、１５ａ 往復動用オイルシール １６、１６ａ ダストリップ １７ ダストリップ先端部 １８ 凸部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも密封側の流体を封止するシー
   ルリップと大気側の流体を封止するダストリップとを有
   する往復動用オイルシールにおいて、ダストリップのダ
   ストリップ先端部より密封側に、所定の締代を有する環
   状の凸部を少なくとも１つ設けたことを特徴とする往復
   動用オイルシール。