JPH06173120A - ピッチ系炭素繊維の製造方法 - Google Patents

ピッチ系炭素繊維の製造方法

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JPH06173120A
JPH06173120A JP22960293A JP22960293A JPH06173120A JP H06173120 A JPH06173120 A JP H06173120A JP 22960293 A JP22960293 A JP 22960293A JP 22960293 A JP22960293 A JP 22960293A JP H06173120 A JPH06173120 A JP H06173120A
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fiber
carbon fiber
tow
treatment
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JP22960293A
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Akira Nakakoshi
明 中越
Iwao Yamamoto
巌 山本
Akihiko Yoshitani
明彦 葭谷
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Mitsubishi Kasei Corp
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Mitsubishi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高特性のピッチ系炭素繊維の製造方法を提供
する。 【構成】 異方性ピッチから炭化及び/又は黒鉛化した
炭素繊維を製造する方法において、異方性ピッチを溶融
紡糸し、得られたピッチ単繊維を集束して得られるピッ
チ繊維トウを、受器に積載した状態で不融化処理し、更
に受器に積載したまま、水蒸気を含有する不活性ガス雰
囲気中での炭化処理を行って炭素繊維を形成させる工程
を包含し、必要に応じて、その後水蒸気を含有しない不
活性ガス中で炭化及び/又は黒鉛化処理をするピッチ系
炭素繊維の製造方法。 【効果】 開繊性及びストランド強度が向上するため、
毛羽発生が防止され、製品の品質及び生産効率が向上す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はピッチ系炭素繊維の製造
法に関するものであり、より詳しくは開繊性に優れ、高
ストランド強度を有し、かつ毛羽立ちのない炭素繊維の
製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は、比強度及び比弾性率が高い
材料であり、高性能複合材料のフィラー繊維として注目
されている。現在、炭素繊維はポリアクリロニトリル
(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維とピッチ類を
原料とするピッチ系炭素繊維が製造されているが、一般
に開発が先行していたためにPAN系がより広く使用さ
れ、高強度、高弾性の高特性炭素繊維としても主にPA
N系炭素繊維が種々の工夫を加えて使用されている現状
にある。しかしながら、PAN系炭素繊維は、更に高弾
性化することには限界がある点で難点を有している。ま
た、その原料であるPANが高価であること、原料当り
の炭素繊維の収量が低いという難点も有している。そこ
で、近年、より高弾性な特徴を有し、より広範な用途の
期待されるピッチ系炭素繊維の高特性化が種々検討され
ている。ピッチ系炭素繊維の高特性化は、従来紡糸原料
として使用していた等方質ピッチの代りに、原料ピッチ
を加熱処理して、異方性が発達し、配向しやすい分子種
が形成されたピッチ、いわゆるメソフェーズピッチを使
用する方法(特公昭49−8634号公報)が提案され
て以来、主に紡糸ピッチの性状を調節することによって
行われている。例えば、特開昭49−19127号公報
には、原料ピッチを不活性ガス雰囲気下に加熱処理して
高度に配向されたメソフェーズを形成し、このメソフェ
ーズを40〜90重量%含有するピッチを紡糸ピッチと
する方法が提案されている。しかし、かかる方法により
等方質の原料ピッチをメソ化するには長時間を要するの
で、特開昭54−160427号公報には、あらかじめ
原料ピッチを十分量の溶媒で処理しておくことにより、
短時間でメソ化を行う方法を提案している。すなわち、
原料ピッチをベンゼン、トルエン等の溶媒で処理してそ
の不溶分を得、それを230〜400℃の温度で10分
以下の短時間加熱処理して、高度に配向され、光学的異
方性部分が7.5重量%以上で、キノリン不溶分が25
重量%以下のいわゆるネオメソフェーズを形成し、この
ネオメソフェーズピッチを紡糸ピッチとする方法を提案
している。このようにして得られた紡糸ピッチを溶融紡
糸して、ピッチ繊維を得、次いで不融化、炭化、あるい
は、更に黒鉛化することにより高強度、高弾性等の高特
性炭素繊維が製造される。ところで、こうして得られる
炭素繊維は、通常エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェ
ノール樹脂等のマトリックス樹脂に含浸され、いわゆる
プリプレグとし、これを種々の成形法にて成形し、繊維
強化プラスチックとしてレジャー・スポーツ用や、各種
工業用資材として用いられている。したがって前記炭素
繊維強化プラスチックの機械的特性を充分に発現させる
ためには、一本一本の炭素繊維自体の高強度、高弾性等
の機械的特性と同時に、炭素繊維がマトリックス樹脂中
で、良好に分散し、炭素繊維自体の機械的特性が充分に
発揮されることが重要な要因となる。換言すれば、炭素
繊維の強度や弾性率がいかに大きくても該繊維トウのマ
トリックス樹脂中での分散が不良では、炭素繊維強化プ
ラスチックの機械的機能は不充分なものになってしまう
ということである。そこでまずマトリックス樹脂中での
分散性に対しては使用する炭素繊維トウを構成する単繊
維同士の融着がないこと、すなわち該トウが充分に開繊
されなければならない。ここで「繊維トウ」とは、多数
のフィラメントからなる繊維の束で、よりのかかってい
ないもの、あるいはよりのかかっているものをいう。
【0003】次にマトリックス樹脂中の分散性に対して
必須の要因となる炭素繊維トウの単繊維間融着防止ある
いは該トウの開繊について述べる。前記のピッチ系炭素
繊維製造工程において不融化処理された不融化繊維ト
ウ、及び炭化又は黒鉛化処理された炭素繊維トウは、前
の工程で用いられた集束剤、サイジング剤等の油剤や各
工程での繊維自体の熱変質などのために単繊維同士が融
着し、品質むらを呈したり、マトリックス樹脂中での単
繊維分散が不均一となり、複合材料の均質性を損ったり
するので、不融化、炭化又は黒鉛化のいずれかの段階
で、しなやかで融着のない状態に開繊しなければならな
い。従来、融着のない炭素繊維トウを得る方法としては
ピッチ繊維表面に無機微粒子を付着させてから不融化処
理する方法(特開昭62−28411号、同61−16
0422号)、不融化処理後、高周波の機械的振動を施
して繊維の表面を浄化する方法(特公昭62−8521
号)、ピッチ繊維又は不融化繊維表面を液体で洗浄する
方法(特開平1−282315号)等が提案されてい
る。また、不融化繊維トウ又は炭素繊維トウの開繊方法
としては、繊維トウに乱気流処理を施す方法、バー、ワ
イヤー、回転ピン等のガイドにジクザクに屈曲させなが
ら通過させる方法、凸状の曲面を有するロールの曲面に
接触させる方法(特開昭55−57015号)、2個以
上のテーパーローラーの傾斜面に当接させる方法(特開
昭61−124645号)、及び流体中で開繊する方法
(特開昭57−89638号)等が提案されている。ま
た、この他に、炭素繊維又は不融化繊維の表面を、酸素
を含有するガス等で処理し、開繊又は炭素繊維の強度を
向上させる方法(特開昭61−215716号、同63
−165523号、同63−175122号)が知られ
ている。これらはいずれも酸素を含む不活性ガス中で炭
素繊維を処理し、表面を若干エッチングすることにより
目的を達するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来の方
法、例えば、無機微粒子を付着させる方法や繊維表面を
洗浄する方法では、繊維表面を傷付けるため、毛羽の発
生や、繊維トウの破断、あるいは繊維トウの不ぞろい等
の問題がある。また、機械的な開繊方法では、設備コス
トが高い割には開繊効果が不充分である。更にまた、繊
維表面を酸素を含有するガス等で処理する方法では、酸
素ガスは、炭素繊維と大きな発熱を伴って反応するため
に、反応の制御が難しく、一部のフィラメントで過酸化
反応が進行し、充分に満足でき、高いストランド強度を
有する炭素繊維を得ることができなかった。本発明の目
的は、これら問題点のない、高特性のピッチ系炭素繊維
の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明はピッチ系炭素繊維の製造方法に関する発明であっ
て、異方性ピッチから炭化及び/又は黒鉛化した炭素繊
維を製造する方法において、異方性ピッチを溶融紡糸
し、得られたピッチ単繊維を集束して得られるピッチ繊
維トウを、受器に積載した状態で不融化処理し、更に受
器に積載したまま、水蒸気を含有する不活性ガス雰囲気
中での炭化処理を行って炭素繊維を形成させる工程を包
含することを特徴とする。
【0006】本発明者らは、ピッチ系炭素繊維トウの開
繊及びストランド強度向上を図る方法について鋭意検討
を重ねた結果、ピッチ単繊維を集束して得られるピッチ
繊維トウを、受器に積載した状態で、不融化処理し、更
に受器に積載したまま、水蒸気を含有する不活性ガス雰
囲気中での炭化処理(以下、「水蒸気炭化処理」とい
う)を行うことにより、開繊性が良好で、かつ毛羽立ち
がなく、高ストランド強度を有する炭素繊維トウを製造
できるという画期的な方法を見出した。更にかくして得
られた炭素繊維を、水蒸気を含有しない不活性ガス雰囲
気下、前記水蒸気炭化処理の温度より高い温度で炭化処
理及び/又は黒鉛化処理することにより繊維トウの強
度、弾性率をその使用目的に応じて自由に制御すること
ができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】一般的な炭素繊維トウの引張強度を、マト
リックス樹脂中での分散性を含めて評価する方法とし
て、炭素繊維の樹脂含浸ストランドの試験法(JIS
R 7601−1986 6.6.2)があり、本発明
はこの方法での強度が、高強度である炭素繊維の製造方
法に関するものであり、あるいは炭素繊維の単繊維の試
験法(JIS R 7601−1986 6.6.1)
により求めた単繊維自体の強度に匹敵する樹脂含浸スト
ランド強度を発現する炭素繊維の製造法に関するもので
ある。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
用いる炭素繊維を得るための紡糸ピッチとしては、配向
しやすい分子種が形成されており、光学的に異方性の炭
素繊維を与えるようなものであれば特に制限はなく、前
記のような従来の種々のものが使用できる。これら紡糸
ピッチを得るための炭素質原料としては、例えば、石炭
系のコールタール、コールタールピッチ、石炭液化物、
石油系の重質油、タール、ピッチ又はナフタレンやアン
トラセン等の芳香族炭化水素の触媒反応による重合反応
生成物等が挙げられる。これらの炭素質原料にはフリー
カーボン、未溶解石炭、灰分、触媒等の不純物が含まれ
ているが、これらの不純物はろ過、遠心分離、あるいは
溶剤を使用する静置沈降分離などの周知の方法であらか
じめ除去しておくことが望ましい。また、前記炭素質原
料を例えば、加熱処理した後、特定溶剤で可溶分を抽出
する方法、あるいは水素供与性溶剤、水素ガスの存在下
に水素添加する方法等で予備処理を行っておいても良
い。
【0009】本発明においては、40%以上、好ましく
は70%以上、更に好ましくは90%以上の光学的異方
性組織を含む炭素質原料が好適である。このためには前
記炭素質原料あるいは予備処理を行った炭素質原料を、
必要に応じて通常350〜500℃、好ましくは380
〜450℃で、2分〜50時間、好ましくは5分〜5時
間、窒素、アルゴン、水蒸気等の不活性ガス雰囲気下、
あるいは、吹込み下に加熱処理することもできる。
【0010】本発明でいうピッチの光学的異方性組織割
合は、常温下、偏光顕微鏡でのピッチ試料中の光学的異
方性を示す部分の面積割合として求めた値である。具体
的には、例えばピッチ試料を数mm角に粉砕したものを
常法に従って約2cm直径の樹脂の表面のほぼ全面に試
料片を埋込み、表面を研磨した後、表面全体をくまなく
偏光顕微鏡(倍率100倍)下で観察し、試料の全表面
積に占める光学的異方性部分の面積の割合を測定するこ
とによって求める。
【0011】上記のような紡糸ピッチを用いて溶融紡糸
し、ピッチ繊維を得るのであるが、ピッチ単繊維の断面
構造はランダム配向であることが望ましい。ここでラン
ダム配向であるとは、実質的にラジアル配向でないこと
を意味する。これは後で述べる水蒸気炭化処理を行う際
に繊維軸方向に伸びるくさび状のクラックの発生を抑え
るために重要である。
【0012】このようなランダム配向を有するピッチ繊
維を得る紡糸方法としては、例えば、紡糸ピッチを網目
層を通過させた後、紡糸ノズルへ供給し紡糸する方法が
ある。ここで網目層とは、紡糸ピッチ流通路内であっ
て、紡糸ノズルより上流部に配設されたものであり、溶
融状態の紡糸ピッチが該層を通過することにより、紡糸
ピッチの流れを細分化し、かつ該層を通過する間に紡糸
ピッチのメソフェーズの積層状態が乱れ、その結果実質
的にラジアル配向でない繊維断面構造を有するピッチ繊
維を与えるものである。網目層を構成する網としては、
具体的には350〜400℃程度の温度に充分耐えられ
るような、ステンレス鋼、銅、アルミニウム等の金属材
料、又はセラミック、ガラス、黒鉛等の無機質材料の微
細な繊維を平織、綾織あるいは畳織したものである。ま
た金属の平板に無数の小孔を打ち抜いたもの、あるいは
金属板に成型工具でスリットを入れて、それを引張って
得られるいわゆるエキスバンドメタルのようなものも使
用される。網目の大きさは、目開きが大きすぎると得ら
れる繊維の断面構造を細分化してラジアル配向でない構
造とする効果が減少するので、目開きは小さいもの程好
ましい。具体的には目開きが50メッシュより小さいも
の、好ましくは100メッシュより小さいもの、更に好
ましくは200メッシュより小さなものが用いられる。
これらの網は1枚でもよく、5枚程度まで重ねて用いる
こともできるが、網目層の厚さとして2mm以下となる
よう構成することが好ましい。
【0013】溶融紡糸によって得られたピッチ繊維は、
単繊維としての破断強度が低く、ガイド、ローラー等で
の毛羽の発生を防止するため、集束剤で集束してピッチ
繊維トウを得る。ここで集束剤としては、ピッチ繊維の
一部を溶解したり、不融化処理の際に繊維同士を接着又
は融着させたりすることの少ないものが必要であり、例
えばシリコーン油の水エマルジョンが好ましい。またシ
リコーン油のみで使用することも可能であるが、ピッチ
繊維に対するシリコーン油の付着量を制御するためには
シリコーン油の水エマルジョンとして使用することが望
ましい。
【0014】具体的なシリコーン油としては、通常ジメ
チルポリシロキサンが用いられるが、このジメチルポリ
シロキサンに種々の基を導入して変性したものも用いら
れる。具体的には、例えばメチルフェニルポリシロキサ
ン、ハイドロジェンポリシロキサンが挙げられるが、そ
の他エポキシ基、エチル基、プロピル基等のアルキル
基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、フェニ
ル基、ポリエーテル基の1種又は2種以上で変性したも
のが用いられる。また、これらのシリコーン油は、1種
又は2種以上の混合物を用いてもよい。シリコーン油の
水エマルジョンは周知の混合装置、例えば高速ミキサ
ー、コロイドミル、ホモゲナイザー等を用いてシリコー
ン油が0.1〜35重量%となるように水と混合するこ
とによって調製される。エマルジョンの形成に当って
は、シリコーン油の濃度が高くなって良好なエマルジョ
ン状態が維持できなくなる場合は乳化剤を0.25〜2
重量%添加すればよい。乳化剤は従来公知のものでよ
く、ソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタンパル
ミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオ
キシエチレンソルビタンカプロン酸エステル、ポリオキ
シエチレンラウリン酸エステル、アセチル化モノグリセ
リド、アセチル化グリセリルモノステアレート及びポリ
オキシエチレンラノリン誘導体等の非イオン系乳化剤、
アルキル硫酸エステル、ナトリウムラウリルサルフェー
ト、ナトリウムセチルサルフェート、ジアルキルスルホ
サクシネート、ジ−2−エチルヘキシルスルホサクシネ
ート(ナトリウム塩)等のアニオン系乳化剤、又は塩化
アルキルピリジニウム等のカチオン系乳化剤が例示され
る。
【0015】次に上記のピッチ繊維トウを受器に積載す
る。受器の材質としては、次に行われる不融化処理及び
/又は水蒸気炭化処理に耐えるものであればよく、例え
ば、金属材質のもの、セラミック材質のもの、あるいは
アルミナ繊維によるもの等が挙げられ、形状としては処
理を均一に行わせるため、網状のものが望ましい。受器
に積載する方法としては、ピッチ繊維トウの嵩密度が
0.5kg/リットル以下でかつ嵩高さが200mm以
下、好ましくは嵩密度が0.3kg/リットル以下でか
つ嵩高さが80mm以下であることが望ましい。0.5
kg/リットルを超える嵩密度及び/又は200mmを
超える嵩高さに積載した場合には次に行われる不融化の
際に発生する酸化熱を除熱することが極めて困難であり
均質な処理が行えないからである。
【0016】次に受器に積載されたピッチ繊維トウは受
器に積載されたまま不融化処理される。ピッチ繊維の段
階では糸の強度が1〜5kg/mm2 程度と低く、張力
をかけて取扱うとフィラメントの切断が避け難いため、
受器に積載したまま処理することが毛羽立ちのない炭素
繊維を得るのに有効である。不融化処理は通常空気、オ
ゾン、二酸化窒素等の酸化性雰囲気中で行う。処理温度
としては150〜300℃が望ましい。150℃未満で
は反応速度が遅いため、極めて長時間を要し、工業的に
不利である。また300℃を超える温度では酸化による
発熱量が大きくなりすぎて除熱がうまくできず、均質な
処理が困難である。また100℃以上の温度域での昇温
速度は、0.1℃/分以下であることが望ましい。0.
1℃/分を超える速度で昇温を行った場合、単位時間当
りの発熱量が大きくなり均質な処理が困難である。
【0017】不融化処理によって得られた不融化繊維ト
ウは、受器に積載された状態のまま、あるいは別の耐熱
受器に移し変えて受器に積載された状態のまま水蒸気炭
化処理を行う。水蒸気炭化処理は、窒素ガス、アルゴン
ガス等の不活性ガスと水蒸気濃度が通常0.5%以上、
好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは、0.5〜
10%の水蒸気との混合ガス雰囲気下で、通常500〜
1800℃、好ましくは900〜1300℃、特に好ま
しくは、1100〜1300℃の温度範囲において通常
1分〜48時間、好ましくは5分〜3時間で加熱処理さ
れる。以上のような方法で不融化繊維を水蒸気含有雰囲
気下で加熱処理することにより、該繊維の開繊とストラ
ンド強度との大幅な向上が達成される。
【0018】本発明の方法によれば繊維がよく開繊さ
れ、各単繊維のマトリックス樹脂中での分散性が向上
し、ストランド強度が向上するが、また各単繊維単位で
みる単繊維強度も向上しており、これは、単繊維間の融
着により発生した表面欠陥を水蒸気ガスかエッチングに
より除去したことによる効果も含まれていると推定され
る。従来技術でも表面欠陥等をエッチングにより除去し
ようとした試みは前述のごとくなされてきたが、いずれ
も酸素ガス等の大きな発熱を伴う方法によるものであっ
た。
【0019】本発明で用いる水蒸気ガスが、特に大きな
効果を示すのは、炭素繊維表面の炭素と水蒸気との反応
が、500〜1800℃程度の温度では吸熱反応か又は
微少な発熱反応であることにより、特に過酸化等による
強度劣化を起こさないためであると推定される。ここで
水蒸気ガスによる反応効果の指標として下記式(数1)
で定義される「水蒸気反応重量減少率」を用いることが
できる。
【0020】
【数1】水蒸気反応重量減少率(%)={1−WB /W
A }×100
【0021】WA :不活性ガス雰囲気中で炭化処理した
繊維の単位長さ当りの重量 WB :不活性ガス雰囲気に水蒸気を加えた雰囲気中で水
蒸気炭化処理した繊維の単位長さ当りの重量
【0022】本発明における効果として、開繊性に優
れ、かつ高ストランド強度を有する炭素繊維を得るに
は、この水蒸気炭化処理での重量減少率の値が、通常1
%以上、好ましくは3%以上となるように水蒸気炭化処
理の温度と時間を組合せて設定することが望ましい。
【0023】以上のように水蒸気炭化処理を行って得ら
れた炭素繊維は、更に弾性率を高める等の必要に応じて
水蒸気を含有しない不活性ガス雰囲気中での炭化処理及
び/又は黒鉛化処理を行うことができる。また、上記炭
化処理及び/又は黒鉛化処理の後、必要に応じて、表面
処理及び/又はサイジング処理を周知の方法に従って行
うこともできる。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例
によって限定されるものではない。
【0025】実施例1 コールタールピッチを熱処理することにより軟化点30
0℃、かつ偏光顕微鏡下で観察した光学的異方性割合が
95%の紡糸ピッチを調製した。これをノズル径0.1
mm、孔数4000の紡糸口金を用い口金温度330℃
で溶融紡糸し、得られた12μmのピッチ繊維にシリコ
ーン系の油剤を付着させ集束した。このピッチ繊維トウ
をステンレス鋼金網製の受器に嵩密度0.2kg/リッ
トル、嵩高さ50mmになるよう積載し、100℃から
0.02℃/分の昇温速度で220℃まで昇温し、10
時間空気中で加熱処理することにより不融化繊維トウを
得た。この不融化繊維トウを受器に積載した状態のま
ま、水蒸気を12%含む窒素ガス雰囲気中で950℃、
滞留時間5分の条件で水蒸気炭化処理した。水蒸気反応
重量減少率は5%であった。かくして得られた炭素繊維
は繊維同士の融着がなくマトリックスのエポキシ樹脂中
に含浸し、130℃、30分で乾燥硬化させ、該トウの
長手方向に対する横断面を顕微鏡により観察すると単繊
維がエポキシ樹脂マトリックス中に均一に分散し、優れ
た均質性を示し、かつ毛羽立ちもなく、また取扱い性も
良好であった。
【0026】また、得られた繊維トウの単繊維物性及び
樹脂含浸ストランド物性をJISR 7601の方法に
より測定したところ下記の通りであった。 単繊維物性 糸径 11.0μm 引張り強さ 190 kgf/mm2 引張り弾性率 12 tonf/mm2 樹脂含浸ストランド物性 引張り強さ 220 kgf/mm2 引張り弾性率 13 tonf/mm2 更にこの炭素繊維をアルゴン雰囲気中で2500℃、滞
留時間30秒で黒鉛化処理した。得られた繊維は、毛羽
立ちがなく、取扱い性に優れたものであった。得られた
繊維の物性は下記の通りであった。 単繊維物性 糸径 9.7μm 引張り強さ 350 kgf/mm2 引張り弾性率 67 tonf/mm2 樹脂含浸ストランド物性 引張り強さ 340 kgf/mm2 引張り弾性率 71 tonf/mm2
【0027】実施例2 実施例1で得られたピッチ繊維トウをアルミナ繊維製の
受器に嵩密度0.2kg/リットル、嵩高さ50mmに
なるように積載し、130℃から0.01℃/分の昇温
速度で220℃まで昇温し、2時間空気中で加熱処理す
ることにより不融化繊維トウを得た。この不融化繊維ト
ウを受器に積載した状態のまま水蒸気を1%含む窒素ガ
ス雰囲気中で1200℃、滞留時間60分の条件で水蒸
気炭化処理した。水蒸気反応重量減少率は6%であっ
た。得られた繊維トウの物性は下記の通りであった。 単繊維物性 糸径 10.5μm 引張り強さ 315 kgf/mm2 引張り弾性率 21 tonf/mm2 樹脂含浸ストランド物性 引張り強さ 310 kgf/mm2 引張り弾性率 22 tonf/mm2 更にこの炭素繊維をアルゴン雰囲気中で2500℃、滞
留時間30秒で黒鉛化処理した。得られた繊維の物性は
下記の通りであった。 単繊維物性 糸径 9.6μm 引張り強さ 405 kgf/mm2 引張り弾性率 70 tonf/mm2 樹脂含浸ストランド物性 引張り強さ 380 kgf/mm2 引張り弾性率 72 tonf/mm2
【0028】比較例1 実施例1で得られた不融化繊維トウを、500g/mm
2 の張力を付加して線状に走行させながら水蒸気を15
%含む窒素ガス雰囲気中で1200℃、滞留時間25秒
の条件で加熱処理しようとしたが、繊維トウの糸切れが
激しく発生したため繊維物性を測定するに至らなかっ
た。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、ピッチ系炭素繊維の弱
点の一つとされてきた開繊性とストランド強度に対して
大幅な向上が達成される。また、ぜい弱なピッチ繊維の
取扱いに対して、充分配慮することにより、工程中での
毛羽発生が防止され製品の品質が向上するばかりでな
く、生産効率が向上し、製造コストの大幅な低減化を実
現することができる。また、本発明で得られた炭素繊維
は開繊性に優れているので、加工中に単繊維の一部が切
断したり、毛羽立ったりすることがなく、各種繊維強化
複合材に非常に有用である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 異方性ピッチから炭化及び/又は黒鉛化
    した炭素繊維を製造する方法において、異方性ピッチを
    溶融紡糸し、得られたピッチ単繊維を集束して得られる
    ピッチ繊維トウを、受器に積載した状態で不融化処理
    し、更に受器に積載したまま、水蒸気を含有する不活性
    ガス雰囲気中での炭化処理を行って炭素繊維を形成させ
    る工程を包含することを特徴とするピッチ系炭素繊維の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の工程で得た炭素繊維
    を、水蒸気を含有しない不活性ガス雰囲気中で炭化処理
    及び/又は黒鉛化処理する請求項1に記載のピッチ系炭
    素繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023008273A1 (ja) * 2021-07-26 2023-02-02 東レ株式会社 炭素繊維束およびその製造方法

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