JPH06116747A - 高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗料密着性に優れた溶接缶用素材 - Google Patents

高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗料密着性に優れた溶接缶用素材

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JPH06116747A
JPH06116747A JP26838092A JP26838092A JPH06116747A JP H06116747 A JPH06116747 A JP H06116747A JP 26838092 A JP26838092 A JP 26838092A JP 26838092 A JP26838092 A JP 26838092A JP H06116747 A JPH06116747 A JP H06116747A
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weldability
plating
welding
corrosion resistance
coating
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JP26838092A
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English (en)
Inventor
Tomoya Oga
智也 大賀
Shigeru Hirano
茂 平野
Takashi Ichikawa
敬士 市川
Toshinori Katayama
俊則 片山
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗
料密着性に優れた溶接缶用材料の提供。 【構成】 鋼板表面に片面当たり、2〜150mg/m
2 のNiメッキ層を有し、その上に粒径0.2〜12.
0μのSnメッキ粒子を10〜2800mg/m 2 で点
在したSnメッキ層、更にその上にクロム換算で1〜5
0mg/m2 のクロメート被膜を形成させたことを特徴
とする高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗料密
着性に優れた溶接缶用材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高速シーム溶接性、耐食
性、耐熱性および塗料密着性に優れた被膜構成を有する
溶接缶用素材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、スードロニック法に代表されるシ
ーム溶接製缶法の実用化が急速に進展している。この溶
接製缶法の拡大に対処するため、溶接缶用材料として種
々の材料が開発され実用に供されている。これまで開発
された溶接缶材料としては次のものが挙げられる。 (1)鋼板表面に片面当たり150〜2500mg/m
2 のNiメッキ層とクロム換算で2〜15mg/m2
クロメート被膜層で形成されている溶接缶用材料(特開
昭56−169788号公報) (2)鋼板上に重量比でNi/Ni+Fe=0.02〜
0.50の範囲の組成で厚さ10〜5000ÅのFe−
Ni合金層とその上に100〜1000mg/m2 のS
nメッキ層を設け、リフロー処理を行ってクロム換算料
で5〜20mg/m2 のクロメート被膜層を設ける方法
(特開昭60−17099号公報)
【0003】更に、最近では (3)鋼板表面に片面当たり150〜2500mg/m
2 のNiメッキ層、その上に粒径0.2〜4.0μのS
nメッキ粒子を10〜400mg/m2 点在した錫メッ
キ層、更にその上に1〜50mg/m2 のクロメート被
膜を有する溶接缶用材料 (4)鋼板表面に片面当たり150〜2500mg/m
2 のNiメッキ層、その上に粒径0.2〜12.0μの
Snメッキ粒子を400〜2800mg/m2 点在した
錫メッキ層、更にその上に1〜50mg/m2 のクロメ
ート被膜を有する溶接缶用材料も開発されている。
【0004】まず、(1)のNiメッキ/クロメート処
理鋼板は錫を用いないTFS型の溶接缶用材料として、
実用上充分良好な溶接性を有しその優れた耐熱性、塗料
密着性および塗装後耐食性から大量に実用に供されてい
る。また、(2)のNi系の下地処理を有する薄錫メッ
キ型の材料(以下『LTS』と称す)は、より一層の溶
接性の向上を狙い塗装焼き付け後に軟質、低融点の金属
錫(以下『free−Sn』と称す)を確保し、耐食性
はNi系の下地処理により確保でき、最近実用に供され
てきた。これらの材料は、いずれも良好な溶接性と塗装
後耐食性を備えた優れた溶接缶用材料であり、内容物等
使用される用途に応じて使い分けられている。(3)、
(4)の粒状Sn/Niメッキ鋼板は、良好な溶接性、
耐熱性、塗料密着性を有しているが、まだ実用には供さ
れていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年さらにより一層の
製缶技術の進歩と製缶コストダウンが相俟って、原板素
材の薄手化と高温短時間での塗装焼き付けおよびシーム
溶接の高速化が強く要請されている。即ち、原板素材の
薄手化は現状の板厚0.20〜0.24mmから0.2
0mm以下の薄手材が要請され、高温短時間焼き付けで
は現状の塗料の焼き付け条件200〜210℃×10m
inから錫の融点(232℃)以上の温度まで数十秒で
昇温させその間に塗料の焼き付けを行うという高温短時
間焼き付けが強く要請されている。シーム溶接の高速化
は、溶接機のハードの検討により従来の40〜60m/
minのワイヤースピードから70〜100m/min
という高速化が計画されている。しかし、これらの薄手
化と高温短時間焼き付けおよび高速シーム溶接と言う条
件に前記の公知技術を適用した場合には、以下のような
問題が発生する。
【0006】まず、Niメッキ/クロメート処理鋼板は
板厚の薄手化に伴い、十分な溶接強度と良好な溶接外観
が得られる適正溶接範囲が非常に狭くなるという問題が
ある。これは、溶接電流が増加し十分な溶接強度が得ら
れる前に溶融金属が飛び出し(以下『散り』と称す)、
塗装後耐食性および溶接強度の劣化が生じるという問題
である。高温短時間焼き付けに対しては、Niメッキ/
クロメート処理鋼板はその良好な耐熱性により十分対応
可能であり、良好な塗装後耐食性を確保可能である。一
方、LTS型の材料は薄手化に伴う溶接性の劣化は、缶
内外面相当面の錫メッキ量をコントロールすることによ
り回避できるが、高温短時間焼き付けを行うと塗料の焼
き付け温度が錫の融点を越えるため、表層の錫が溶融し
塗装後耐食性が顕著に劣化するという問題が発生する。
【0007】また、(3)の被膜構成を有する粒状Sn
/Niメッキ鋼板では、従来の溶接スピードでは良好な
溶接性を確保可能であるが、溶接スピードが増加すると
適正溶接範囲が狭くなり、シーム溶接の高速化には十分
対応できない。更に、(4)の被膜構成を有する粒状S
n/Niメッキ鋼板では、製缶時に不可避的に発生する
地鉄に達するスクラッチ傷が入った場合には、スクラッ
チ部より地鉄が溶解し、孔食を起こし易いという問題点
が有る。本発明はこれらの問題に対処するため、高温短
時間焼き付けを行いシーム溶接を行った場合に十分広い
適正溶接範囲を有し、かつ良好な耐食性、塗料密着性と
塗装後耐食性を発揮する溶接缶用材料を提供せんとする
ものである。特に、本発明はメッキ原板として薄手材を
使用した場合に良好な溶接性を確保するのに極めて顕著
な効果を発揮する。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは溶接缶用材料
の適正な表面被膜構成について検討した結果、溶接時に
おいても散りの発生がなく十分な溶接強度が得られる広
い適正溶接範囲を確保するには溶接極論/材料界面およ
び材料/材料界面の接触抵抗を極力低減させることであ
ることが判明した。接触抵抗を低減させるには塗装焼き
付け後のfree−Sn残留量が最も効果的ではある
が、材料表層の全面にfree−Snが存在すると錫メ
ッキ層は耐熱性に劣るため高温短時間焼き付けを行った
場合free−Snが溶融し、良好な塗装後耐食性を確
保することが困難である。
【0009】これらの問題を解決し、溶接缶用材料とし
て実用的な性能を両立させるためには以下のような手段
が最も有効であることが判明した。即ち、高温短時間焼
き付けで錫メッキ層が完全に溶融し塗装後耐食性の顕著
な劣化を招く事なく接触抵抗を低減させるためには、錫
メッキ層を粒状で点在させることが大きな効果があるこ
とが判った。更に、粒状Snメッキ層の下層には耐熱性
の良好なNiメッキ層を設けることにより、高温短時間
焼き付けに十分耐えられ良好な塗料密着性と塗装後耐食
性を確保できることを見いだした。つまり、良好な溶接
性と高温短時間焼き付けに耐え得る良好な耐熱性を確保
するには鋼板表面にNiメッキ層その上に粒状の錫メッ
キ層を設けることがポイントとなる。
【0010】この際、重要なポイントは、製缶時に発生
するスクラッチ傷部での孔食性を向上させるため、下層
のNiメッキ量を厳重にコントロールする必要がある。
つまりNiメッキ量が多すぎると、むしろスクラッチ傷
部での孔食が進行し易く穴明きに至ることがあり、これ
を回避するためには下層のNiメッキ量は低めにコント
ロールされなくてはならない。また、高速溶接性を向上
させるには、粒状Snメッキ層のメッキ量と粒径を厳密
にコントロールする必要があるが、これについてはユー
ザーでの使用条件によって材料の最適被膜構成を決定し
なくてはならない。また、良好な塗料密着性と塗装後耐
食性を確保するには粒状Snメッキ層の上にクロメート
被膜層を設けなくてはならないが、水和酸化クロム層は
絶縁体であり微量存在する金属クロムは高融点のためク
ロメート被膜は溶接性にはマイナス要因である。そのた
め、クロメート被膜は良好な塗料密着性と塗装後耐食性
を確保できる必要最少量に規制しなければならない。
【0011】本発明者らはこれらの考え方を基本に詳細
に検討した結果、薄手材で高温短時間焼き付け可能な溶
接缶用材料として優れた溶接性、耐食性、塗料密着性、
塗装後耐食性を有する溶接缶用素材が得られることを発
見した。本発明はその知見に基づいてなされたもので、
その要旨は鋼板表面に片面当たり、2〜150mg/m
2 のNiメッキ層を有し、その上に粒径0.2〜12.
0μのSnメッキ粒子を10〜2800mg/m2 で点
在したSnメッキ層、更にその上にクロム換算で1〜5
0mg/m2 のクロメート被膜を形成させた高速シーム
溶接性、耐食性、耐熱性および塗料密着性に優れた溶接
缶用素材を提供することにある。
【0012】
【作用】以下に本発明について詳細に説明する。本発明
において、メッキ原板としては特に規制されるものでは
なく、通常、容器材料として使用される鋼板を用いる。
メッキ原板の製造法、材質なども特に規制されるもので
はなく、通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間
圧延、焼鈍、調質などの工程を経て製造される。更に、
このメッキ原板は必要とされる缶体強度および板厚に応
じて冷間圧延後焼鈍を行ってから再冷間圧延(即ち2C
R法)する製造工程で製造してもよい。まず、良好な耐
熱性、塗料密着性を発揮する被膜構成について述べる。
前述したように求められている耐熱性は、錫の融点以上
まで数十秒で昇温する高温短時間での塗料焼き付けであ
り、この焼き付け条件に耐えて良好な塗装後耐食性を確
保するには、少なくとも錫よりも高い融点を有する金属
のメッキを施さなくてはならない。また、耐熱性のみで
はなく良好な耐食性、塗料密着性と粒状錫メッキ層によ
り確保した良好な溶接性を損なわない特性も備えておか
なくてはならない。
【0013】本発明者らは種々の検討を重ねた結果、N
iメッキ層を施すことによりこれらの問題点を解決する
ことができることが判明した。即ち、Ni金属の145
0℃という高い融点を有効に活用することにより、高温
短時間焼き付けに耐え得る良好な耐熱性が発揮でき、良
好な塗装後耐食性と溶接性が確保できることが判った。
特に、溶接性については上層の粒状錫により得られる良
好な溶接性を損なう事なく、更にNi金属の優れた鍛接
性により良好な溶接性を発揮することが判明した。鍛接
性とは溶接時に完全に金属が溶融して強い溶接強度を発
揮するほかに、金属が完全に溶融することなく高温時の
加熱圧着により強い接合強度が得られる特性であり、N
i金属は特に鍛接性が優れている金属である。
【0014】また、Niメッキ層は良好な耐食性を確保
するという観点からも重要である。Ni金属自体は極め
て良好な耐食性を示すが、鋼板上にNiメッキを施す場
合にはメッキ層のピンホール部でFeとNiの局部電池
を形成し、Feが溶解するため鋼板に孔食が発生する。
つまり、良好な耐食性を確保するにはNiメッキ層のピ
ンホールを低減させることがポイントである。また、製
缶時に鉄面に達するようなスクラッチ傷が発生した場合
には、傷部でFeとNiの局部電池を形成し孔食を起こ
すが、後述するようにNiメッキ量によって孔食速度は
変わってくるので孔食性に関してはNiメッキ量を厳密
にコントロールする必要がある。
【0015】更に、塗料密着性に関しては粒状Snが析
出していないNiメッキ層にクロメート被膜が生成した
部分で良好な密着性が確保可能である。粒状Sn析出部
で良好な塗料密着性が確保しにくい理由は、塗料焼き付
け時に脆弱な酸化錫が生成しそれが製缶加工等のダメー
ジにより破壊され塗膜剥離の原因になるからである。N
iメッキ層ではそのような脆弱な酸化膜は生成せず良好
な塗料密着性を確保することができる。
【0016】このNiメッキ量については、適正メッキ
量として2〜150mg/m2 に規制される。Niメッ
キ量が2mg/m2 未満では、メッキ層のピンホールが
多く良好な耐食性を確保することができなく、良好な耐
熱性も確保することができない。また、Niメッキ量が
150mg/m2 を越えるとメッキ層のピンホールが減
少することによる耐食性向上効果は有るが、製缶ライン
を通過する際に不可避的に発生する地鉄に達するような
スクラッチ傷が発生した場合には、むしろ孔食が発生し
やすい。これは、スクラッチ傷部でNiメッキ層と地鉄
の間で局部電池が生成されNi金属の電位が貴なため地
鉄が溶解する腐食反応が進行するためであるが、この際
Niメッキ量が150mg/m2 を越えるようなメッキ
量の多い場合にその腐食反応速度が大きく孔食が発生し
易くなる。Niメッキを施す方法としては特に規制しな
いが、通常実施されているワット浴、硫酸浴、塩化物浴
等のメッキ浴が適正である。Niメッキ層のピンホール
を低減させるためには、メッキ時の電流密度は比較的高
い方が好ましく、5A/dm2 以上の電流密度でNiメ
ッキすることが好ましい。
【0017】次に、良好な溶接性を発揮する被膜構成の
作用効果について述べる。溶接性は散りの発生がなく、
十分な溶接強度が得られる適正溶接範囲が広ければ広い
ほど溶接性は良好と評価される。シーム溶接性の向上に
は電極/材料界面および材料/材料界面での接触抵抗の
低減が最も効果がある。その理由は、電極/材料および
材料/材料界面での接触抵抗が高いと溶接時に電流が集
中するため、局部的な発熱が起こり散りが発生する。つ
まり、溶接強度を確保するために溶接電流を増加させて
いった場合、十分な溶接強度が得られる前に局部発熱が
起こった場所で散りが発生するため、適正溶接範囲が存
在しなくなり溶接性は不良と評価される。これに対し、
電極/材料および材料/材料界面の接触抵抗が低い材料
の場合には、電流が集中するために起こる局部的な発熱
が起こりにくく、散りの発生なく十分な溶接強度が得ら
れるため溶接性は良好と評価される。
【0018】材料の溶接性は溶接速度によっても大きく
影響され、単位時間当たりの入熱量の大きな溶接速度の
高い場合にはより一層の接触抵抗の低減が要請され、S
nメッキ量を比較的多くメッキする必要がある。このよ
うに電極/材料および材料/材料界面での接触抵抗を低
減させるにはこれまでの公知技術であるNiメッキ後ク
ロメート処理を施すという被膜構成のみでは不十分であ
り、Niメッキ層の上層に錫メッキ層を粒状で付与する
ことが接触抵抗の低減には非常に有効であることが判明
した。つまり、良好な溶接性を発揮できる被膜構成とし
ては鋼板表面にまずNiメッキを施し、その上に粒状錫
メッキを施し、更にクロメート被膜を設けるという被膜
構成が適正である。
【0019】Niメッキ層の上層に粒状錫メッキ層を設
けることにより、接触抵抗が低減でき良好な溶接性が確
保できる理由は以下のように考えられる。 1)軟質な錫金属がNiメッキ層の下層に存在すること
により、溶接時に極輪から加えられる加圧力により極輪
/材料および材料/材料間での接触面積が広がり、接触
抵抗が大幅に低減できる。 2)錫金属が低融点のため溶接時の発熱により容易に溶
解し、極輪/材料及び材料/材料間の接触面積を広げる
効果が大であり、接触抵抗が減少するため溶接時の局部
的な電流の集中が防げる。
【0020】上記の作用効果を少ない錫メッキ量で得る
ためには錫メッキ層は通常の平滑なメッキ層では困難で
あり、錫メッキ層を粒状にすることが重要である。それ
は、平滑な錫メッキ層では高温短時間塗装焼き付け時に
錫メッキ層が全て合金化するため、軟質低融点のfre
e−Snが残留しなくなり接触抵抗の低減効果が発揮で
きなくなる。錫メッキ層の合金化は鋼板と錫メッキ層の
界面で高さ方向に進行するため、粒状錫メッキ層であれ
ば高温短時間焼き付け後においても良好な溶接性を発揮
するfree−Sn残留量を確保可能である。
【0021】従って、良好な溶接性を得るために粒状錫
メッキ層が施されるが、そのメッキ量は10〜2800
mg/m2 に規制される。これは、粒状錫メッキ量が1
0mg/m2 未満では高温短時間焼き付け時に合金化が
進行し、free−Sn残留量が十分確保できないため
良好な溶接性を発揮できない。また、粒状錫メッキ量が
2800mg/m2 を越えると、free−Sn残留効
果が飽和すると共に低融点のfree−Snが多く残留
し過ぎるため、後述するように上層にNiメッキ層を設
けても錫の融点を越える温度まで達する高温焼き付けを
行うと、錫金属が溶融し耐食性が顕著に劣化する。つま
り、高温焼き付けに耐え得る耐熱性が確保できなくな
る。
【0022】更に、粒状錫メッキのサイズは粒径0.2
〜12.0μに規制される。これは、粒径が0.2μ未
満では高温短時間焼き付けにより、高さ方向への合金化
の進行によりfree−Snが残留しなくなり、良好な
溶接性が確保できなくなる。また、その粒径が12.0
μを越えると溶接性向上効果が飽和し経済的メリットが
なくなると共に、耐熱性が劣化するため高温焼き付けに
より、錫金属が溶融し塗装後耐食性が劣化するからであ
る。このように、良好な溶接性と耐熱性を両立させ得る
粒状錫メッキ層の適正かつ経済的なメッキ量とその粒径
は10〜2800mg/m2 および0.2〜12.0μ
である。鋼板上に粒状錫メッキ層を施す方法は特に規制
しないが、以下のような方法が好ましい。Sn2+イオン
の希薄な酸性水溶液中で低電流密度により錫メッキを行
えば、鋼板上に粒状錫メッキ層が形成可能である。例え
ば、Sn2+イオン量は1〜400g/lの酸性溶液中で
0.1〜30A/dm2 の電流密度で錫メッキを行うこ
とが好ましい。
【0023】引き続き、このような被覆層を有したメッ
キ鋼板に対して、塗料密着性、塗装耐食性の向上を目的
としてクロメート処理が施される。クロメート被膜は缶
内面に対しては缶内容物が塗膜を通過して塗膜下で腐食
が進行するアンダーカッティングコロージョンの防止、
缶外面に対しては貯蔵時に塗膜下で発生する糸状錆いわ
ゆるフィリフォームコロージョンなどの耐錆性の向上に
非常に効果がある。このようなクロメート被膜が形成さ
れていることにより、長時間にわたり塗膜の密着性が劣
化せず、良好な耐食性、耐錆性が保持される。また、ク
ロメート被膜は硫黄化合物を含む食品、例えば魚肉、畜
産物などの場合に見られる鋼板の表面の黒変即ち硫化黒
変を防止する効果が大きい。
【0024】このように、クロメート被膜は特に塗装さ
れて用いられる場合には性能向上に効果が大きいが、溶
接性に対してはマイナス要因である。ここで言うクロメ
ート被膜とは水和酸化クロム単一の被膜即ち本来のクロ
メート被膜と、いま一つは下層に金属クロム層、上層に
水和酸化クロム層の二層よりなる被膜の二つの場合を指
している。水和酸化クロム被膜は電気的に絶縁体のため
電気抵抗が非常に高く、金属クロムも融点が高くかつ電
気抵抗も高いので、両者とも溶接性を劣化せしめるマイ
ナス要因である。
【0025】そのため、良好な塗装性能と実用的に溶接
性を劣化せしめない適正なクロム付着量が非常に重要と
なる。本発明においてはクロム付着量は金属クロム換算
で片面当たり1〜50mg/m2 が選定される。即ち、
クロム付着量が1mg/m2 未満では、塗料密着性の向
上、アンダーカッティングコロージョンなどの塗膜下腐
食の防止に効果が得られないので、1mg/m2 以上の
クロム付着量が望ましい。一方、50mg/m2 を越え
ると接触抵抗が著しく増加し、局部的な発熱による散り
が発生し易くなり溶接性が劣化する。そのため、クロム
付着量は50mg/m2 以下に規制される。
【0026】クロメート処理は各種のクロム酸のナトリ
ウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の水溶液による浸
漬処理、スプレイ処理、電解処理などいずれの方法で行
っても良いが、特に陰極電解処理が優れている。とりわ
け、クロム酸にSO4 2- イオン、F- イオン(錯イオン
を含む)あるいはそれらの混合物を添加した水溶液中で
の陰極電解処理が最も優れている。クロム酸の濃度は特
に規制しないが、20〜200g/lの範囲で充分であ
る。
【0027】添加するアニオンの量はCr6+の1/30
0〜1/25好ましくは1/200〜1/50の時、最
良のクロメート被膜が得られる。アニオンの量がCr6+
の1/300以下では均質かつ均一で塗装性能に大きく
影響する良質のクロメート被膜が得られない。また、1
/25以上では、生成するクロメート被膜中に取り込ま
れるアニオンの量が多くなり、塗装性能特に塗料二次密
着性が劣化する。添加されるアニオンは硫酸、硫酸クロ
ム、弗化アンモン、弗化ソーダの化合物などの形態でク
ロム酸浴中へ添加される。浴温は特に規制するものでは
ないが、30〜70℃の範囲が作業性の点から適切な温
度範囲である。陰極電解電流密度は5〜100A/dm
2 の範囲で充分である。処理時間は、前記処理条件の任
意の組み合わせにおいて、クロム付着量が前記に示した
1〜50mg/m2 の範囲に入るように設定する。
【0028】そして、上記付着量の範囲において二層型
クロメート皮膜における金属クロム層と水和酸化クロム
層の比は特に規制しないが0.6≦水和酸化クロム/金
属クロム≦3の範囲が好ましい。即ち、金属クロムに対
して水和酸化クロムの量が少ない場合、金属クロム層上
の水和酸化クロム層の均一被覆性が劣るため塗料密着性
が劣化する傾向にある。一方、金属クロム層に比べ水和
酸化クロム層が多い場合、水和酸化クロム層中に含有さ
れるアニオンおよびCr6+イオンが多くなり、塗装後高
温環境にさらされた場合にこれらイオンの溶出が起こ
り、塗膜下で微小膨れ(いわゆるブリスター)が発錆し
易くなるので好ましくない。従って、水和酸化クロムと
金属クロムの構成比率を上記のごとく0.6〜3の範囲
に設定するのが好ましい。
【0029】以下に本発明の実施例について述べ、その
結果を表1及び表2に示す。冷間圧延もしくは焼鈍後の
2回圧延により、所定の板厚に調整したメッキ原板を5
%苛性ソーダー中で電解脱脂し水洗後10%硫酸中で電
解酸洗し、表面活性化後表面処理を行った。まず、
(1)に示す条件でNiメッキを行い、次に(2)に示
す条件で粒状錫メッキを施し、引き続き(3)−(A)
〜(C)に示す処理浴でクロメート被膜を生成させたも
のを作成した。 (1)Niメッキ条件 メッキ浴組成 NiSO4 ・6H2 O 80g/l NiCl2 ・6H2 O 180g/l H3 BO3 30g/l メッキ浴温 50℃ 電流密度 20A/dm2 (電解時間はNiメッキ量に応じて 調整)
【0030】 (2)粒状錫メッキ処理 メッキ浴組成 SnSO4 10〜30g/l H2 SO4 80g/l メッキ浴温 60℃ 電流密度 0.1〜30A/dm2 (電解時間はSnメッ キ量に応じて調整) 錫メッキの粒径はSnSO4 量および電流密度により調
【0031】(3)クロメート処理浴 (A) CrO3 120g/l SO4 2- 0.8g/l (B) Na2 Cr2 7 24 g/l pH 4.5 (C) CrO3 85g/l SO4 2- 0.05g/l Na2 SiF6 2.7g/l NH4 F 0.6g/l
【0032】上記処理材について、以下に示す(A)〜
(G)の項目について実施しその性能を評価した。 (A)接触抵抗の測定 シーム溶接性に大きな影響を与える接触抵抗値をCF型
電極のスポット溶接機を用いて測定した。測定用試験片
は、高温短時間での塗装焼き付けを想定して290℃ま
で18secで昇温する条件でbakingを行った。
CF型電極を用いた静抵抗測定方法を以下に示す。用い
た電極はクロム銅製で先端径4.5mmφのものであ
る。試験片2枚を電極間に配置し、エアーシリンダーに
より200kgfに加圧した状態で電極間に1Aの定電
流を通電し、その時の電極/電極間、電極/鋼板間、鋼
板/鋼板間の電圧降下をナノボルトメーターで測定する
ことで、冷間での静抵抗を求めた。
【0033】(B)シーム溶接性 試験片は、高温短時間での塗装焼き付けを想定して31
0℃まで21secで昇温する条件でbakingを行
い、次の溶接条件でシーム溶接性を評価した。ラップ代
0.5mm、加圧力45kgf、溶接ワイヤースピード
40m/minの従来スピード条件と90m/minの
高速溶接条件の2水準で、電流を変更して溶接を実施
し、十分な溶接強度が得られる最小電流値と『散り』な
どの溶接欠陥が目立ち始める最大電流値からなる適正電
流範囲の広さ、および溶接欠陥の発生状況から総合的に
判断して評価した。
【0034】(C)碁盤目テスト 試験片の缶内面に相当する面にエポキシフェノール系塗
料を55mg/dm2塗布し、更に缶外面に相当する面
にクリヤーラッカーを40mg/dm2 塗布し、290
℃まで15secで昇温する焼き付け条件で乾燥硬化し
た。引き続き、各々の面に1mm間隔でスクラッチを入
れ、計100個の碁盤目を作成し速やかにテープ剥離
し、その剥離状況を評価した。
【0035】(D)UCC(アンダーカッティングコロ
ージョン)評価テスト 缶内面に相当する面の塗装後耐食性を評価するため、缶
内面側に相当する面に缶用エポキシフェノール(フェノ
ールリッチ)塗料を片面当たり50mg/dm 2 塗布
し、310℃まで18secで昇温する条件で焼き付け
を行った。その後塗装板の鉄面に達するようにスクラッ
チを入れ、1.5%クエン酸−1.5%食塩の混合液で
ある試験液中に大気開放下で55℃×4日間浸漬した。
試験終了後、速やかにスクラッチ部および平面部をテー
プ剥離して、スクラッチ部近傍の塗膜下腐食状況、スク
ラッチ部の孔食状況および平面部の塗膜剥離状況を評価
しそれらを総合的に判定した。
【0036】(E)耐硫化黒変性テスト 缶内面側に相当する面に(E)と同様の塗装を行い、1
t曲げを施した試験片を市販の鯖水煮を均一化したもの
の中に入れ、115℃×90minのレトルト処理を行
った。試験後、曲げ加工部および平面部の硫化黒変状況
を評価した。 (F)フィリフォームコロージョンテスト 缶外面側に相当する面の糸状錆性を評価するため、クリ
ヤーラッカーを40mg/dm2 塗布し、280℃まで
17secで昇温する焼き付け条件で乾燥硬化した。引
き続き、ナイフで鉄面に達するスクラッチを入れ、35
℃で5%の塩水噴霧を1時間施し、速やかに水洗乾燥後
25℃で相対湿度85%で2週間放置し、糸状錆性を評
価した。
【0037】(C)実缶テスト 試験片の缶内面側に相当する面にエポキシフェノール系
塗料を55mg/dm 2 塗布し、更に缶外面に相当する
面にクリヤーラッカーを40mg/dm2 塗布した後、
320℃まで22secで昇温する焼き付け条件で乾燥
硬化した。引き続き、製缶時に発生するスクラッチ傷を
想定しナイフで鉄面に達するスクラッチ傷を入れた場合
とコントロールとしてスクラッチ傷を入れない缶ブラン
クを作成した。これらの缶ブランクをシーム溶接機を用
いて、缶胴を製作し溶接部をエポキシ系樹脂で補修を行
い、オレンジジュースとコーラを充填後♯25ブリキ製
の塗装缶蓋を巻き絞め、38℃で12ケ月保管した。試
験終了後、内容物を取り出し鉄溶出量および缶内面側の
腐食状況を観察、評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によって薄手
材で高温短時間焼き付け可能な溶接缶用材料として、高
速シーム溶接性、耐食性、耐熱性及び塗装密着性に優れ
た溶接缶用材料を得ることが出来た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C25D 15/02 E // C25D 3/12 101 (72)発明者 片山 俊則 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新 日本製鐵株式会社八幡製鐵所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板表面に片面当たり、2〜150mg
    /m2 のNiメッキ層を有し、その上に粒径0.2〜1
    2.0μのSnメッキ粒子を10〜2800mg/m2
    で点在したSnメッキ層、更にその上にクロム換算で1
    〜50mg/m2 のクロメート被膜を形成させたことを
    特徴とする高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗
    料密着性に優れた溶接缶用素材。
JP26838092A 1992-10-07 1992-10-07 高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗料密着性に優れた溶接缶用素材 Withdrawn JPH06116747A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4855850A (en) * 1986-12-27 1989-08-08 Copal Company Limited Disk drive apparatus with disk rotating means
JP2006213946A (ja) * 2005-02-02 2006-08-17 Murata Mfg Co Ltd ニッケルめっき液、電子部品の製造方法、及び電子部品

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US4855850A (en) * 1986-12-27 1989-08-08 Copal Company Limited Disk drive apparatus with disk rotating means
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JP4678194B2 (ja) * 2005-02-02 2011-04-27 株式会社村田製作所 電子部品の製造方法、及び電子部品

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