JP3224457B2 - 高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗料密着性に優れた溶接缶用素材 - Google Patents

高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性および塗料密着性に優れた溶接缶用素材

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JP3224457B2 JP18615493A JP18615493A JP3224457B2 JP 3224457 B2 JP3224457 B2 JP 3224457B2 JP 18615493 A JP18615493 A JP 18615493A JP 18615493 A JP18615493 A JP 18615493A JP 3224457 B2 JP3224457 B2 JP 3224457B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高速シーム溶接性、耐食
性、耐熱性および塗料密着性に優れた皮膜構造を有する
溶接缶用素材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、スードロニック法に代表されるシ
ーム溶接製缶法の実用化が急速に進展している。この溶
接製缶法の拡大に対処するため、溶接缶用材料として種
々の素材が開発され実用に供されている。これまで開発
された溶接缶用素材としては次のものが上げられる。 鋼板表面に片面当たり150〜2500mg/m2
Niめっき層とCr換算量で2〜15mg/m2 のクロ
メート被膜層で形成されている溶接缶用素材(特開昭5
6−169788号公報) 鋼板上に重量比でNi/Ni+Fe=0.02〜0.
50の範囲の組成で厚さ10〜5000ÅのFe−Ni
合金層とその上に100〜1000mg/m2のSnめ
っき層を設け、リフロー処理を行ってCr換算量で5〜
20mg/m2 のクロメート被膜層を設ける方法(特開
昭60−17099号公報)
【0003】まず、のNiめっき/クロメート処理鋼
板はSnを用いないTFS型の溶接缶用材料として、実
用上充分良好な溶接性を有しその優れた耐熱性、塗料密
着性および塗装後耐食性から大量に実用に供されてい
る。また、のNi系の下地処理を有する薄Snめっき
型の材料(以下『LTS』と称す)は、より一層の溶接
性の向上を狙い塗装焼付け後に、軟質、低融点の金属S
n(以下『free−Sn』と称す)を確保し、耐食性
はNi系の下地処理により確保でき、最近実用に供され
てきた。これらの材料は、何れも良好な溶接性と塗装後
耐食性を備えた優れた溶接缶用素材であり、内容物等使
用される用途に応じて使い分けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、更により一層の
製缶技術の進歩と製缶コストダウンが相俟って、原板素
材の薄手化と高温短時間での塗装焼付けおよびシーム溶
接の高速化が強く要請されている。即ち、原板素材の薄
手化は現状の板厚0.20〜0.24mmから0.20
mm以下の薄手化が要請され、高温短時間焼付けでは現
状の塗料の焼付け条件200〜210℃×10minか
らSnの融点(232℃)以上の温度まで数十秒で昇温
させ、その間に塗料の焼付けを行うという高温短時間焼
付けが強く要請されている。シーム溶接の高速化は、溶
接機のハードの検討により従来の40〜60m/min
のワイヤースピードから70〜100m/minという
高速化が計画されている。しかし、これらの薄手化と高
温短時間焼付け及び高速シーム溶接という条件に前記の
公知技術を適応した場合には、以下のような問題点が発
生する。
【0005】まず、のNiめっき/クロメート鋼板は
板厚の薄手化に伴い十分な溶接強度と良好な溶接外観が
得られる適性溶接範囲が非常に狭くなるという問題があ
る。これは、溶接電流が増加し十分な溶接強度が得られ
る前に溶融金属が飛び出し(以下『散り』と称す)、塗
装後耐食性および溶接強度の劣化が生じるという問題で
ある。高温短時間焼付けに対してはNiめっき/クロメ
ート処理鋼板はその良好な耐熱性により十分対応可能で
あり、良好な塗装後耐食性を確保可能である。
【0006】一方、のLTS型の材料は薄手化に伴う
溶接性の劣化は、缶内外面相当のSnめっき量をコント
ロールすることにより回避できるが、高温短時間焼付け
を行うと塗料の焼付け温度がSnの融点を越えるため、
表層のSnが溶融し塗装後耐食性が顕著に劣化するとい
う問題が発生する。本発明はこれらの問題点に対処する
ため、高温短時間焼付けを行い高速シーム溶接を行った
場合に十分広い適性溶接範囲を有しかつ良好な塗料密着
性と塗装後耐食性を発揮する溶接缶用材料を提供せんと
するものである。特に、本発明はめっき原板として薄手
材を使用した場合に良好な溶接性を確保するのに極めて
顕著な効果を発揮する。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは溶接缶用素材
の適正な表面被膜構造について検討した結果、高速溶接
時においても散りの発生がなく十分な溶接強度が得られ
る広い適性溶接範囲を確保するには溶接極輪/材料界面
および材料/材料界面の接触抵抗を極力低減させること
であることが判明した。接触抵抗を低減させるには塗装
焼付け後のfree−Sn残留量が最も効果的ではある
が、材料表層の全面にfree−Snが存在するとSn
めっき層は耐熱性に劣るため高温短時間焼付けを行った
場合free−Snが溶融し、良好な塗料後耐食性を確
保することが困難である。
【0008】これらの問題を解決し溶接缶用材料として
実用的な性能を両立させるためには以下の様な手段が最
も有効であることが判明した。即ち、高温短時間焼付け
でSnめっき層が完全に溶融し塗装後耐食性の顕著な劣
化を招く事なく接触抵抗を低減させるためには、Snめ
っき層を線状に存在させる事により大きな効果があるこ
とが判った。更に、線状Snめっき層の下層には耐熱性
に優れたNiめっき層を設ける事により、高温短時間焼
付けに十分耐えられ良好な塗料密着性と塗装後耐食性を
確保できる事を見いだした。つまり、良好な溶接性と高
温短時間焼付けに耐え得る良好な耐熱性を確保するには
鋼板表面にNiめっき層その上に線状のSnめっき層を
設ける事がポイントとなる。
【0009】また、良好な塗料密着性と塗装後耐食性を
確保するためには線状Snめっき層の上にクロメート被
膜層を設けなければならないが、水和酸化Cr層は絶縁
体であり微量存在する金属Crは高融点のためクロメー
ト被膜は溶接性にはマイナス要因である。そのため、ク
ロメート被膜は良好な塗料密着性と塗装後耐食性を確保
できる必要最小量に規制しなければならない。本発明者
らは、これらの考え方を基本に詳細に検討した結果、薄
手材で高温短時間焼付け可能な溶接缶用材料として優れ
た溶接性、塗料密着性、塗装後耐食性を有する溶接缶用
材料が得られる事を知見した。
【0010】本発明はその知見に基づいてなされたもの
で、その要旨は鋼板表面に片面当たり、2〜2500m
g/m2 のNiめっき層を有し、その上に幅0.05〜
100μm、めっき量10〜2800mg/m2 、面積
占有率0.2〜90%の線状のSnめっき層を有し、更
にその上にCr換算で1〜50mg/m2 のクロメート
被膜を形成した高速シーム溶接性、耐食性、耐熱性およ
び塗料密着性に優れた溶接缶用素材を提供することにあ
る。
【0011】
【作用】本発明においてめっき原板としては特に規制さ
れるものではなく、通常、容器材料として使用される鋼
板を用いる。めっき原板の製造法、材質なども特に規制
されるものではなく、通常の鋼片製造工程から熱間圧
延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質等の工程を経て製造さ
れる。更に、このめっき原板は必要とされる缶体強度お
よび板厚に応じて冷間圧延後、焼鈍を行ってから再冷間
圧延(即ち2CR法)する工程で製造してもよい。ま
ず、良好な耐熱性、塗料密着性を発揮する被膜構成につ
いて述べる。
【0012】前述したように求められている耐熱性はS
nの融点以上まで数十秒で昇温する高温短時間焼付けで
あり、この焼付け条件に耐えて良好な塗装後耐食性を確
保するには、少なくともSnより高い融点を有する金属
のめっきを施さなければならない。また、耐熱性のみで
はなく良好な耐食性、塗料密着性と線状Snめっき層に
より確保した良好な溶接性を損なわない特性も備えてお
かなくてはならない。
【0013】本発明者らは種々の検討を重ねた結果、N
iめっき層を施すことによりこれらの問題点を解決でき
ることを見いだした。即ち、Ni金属の1450℃とい
う高い融点を有効に活用することにより、高温短時間焼
付けに耐え得る良好な耐熱性が発揮でき、良好な塗装後
耐食性と溶接性が確保できることが判明した。特に、溶
接性については上層の線状Snにより得られる良好な溶
接性を損なうことなく、更にNi金属の優れた鍛接性に
より良好な溶接性を発揮することが判明した。鍛接性と
は溶接時に完全に金属が溶融して強い溶接強度を発揮す
るほかに、金属が完全に溶融することなく高温時の加熱
圧着により強い接合強度が得られる特性であり、Ni金
属は特に鍛接性が優れている金属である。
【0014】また、Niめっき層は良好な耐食性を確保
するという点からも重要である。Ni金属自体は極めて
良好な耐食性を示すが、鋼板上にNiめっきを施す場合
にはめっき層のピンホール部でFeとNiの局部電池を
形成し、Feが溶解するため鋼板に孔食が発生する。つ
まり、良好な耐食性を確保するためにはNiめっき層の
ピンホールを低減させることがポイントである。更に、
塗料密着性に関しては線状Snが析出していないNiめ
っき層にクロメート被膜が生成した部分で良好な密着性
が確保可能である。線状Sn析出部で良好な塗料密着性
が確保しにくい理由は、塗料焼付け部に脆弱な酸化錫が
生成しそれが製缶加工等のダメージにより破壊され塗装
剥離の原因になるからである。Niめっき層ではそのよ
うな脆弱な酸化膜は生成せず良好な塗料密着性を確保す
ることができる。
【0015】このNiめっき量については、適性めっき
量として2〜2500mg/m2 に規制される。Niめ
っき量が2mg/m2 未満ではめっき層のピンホールが
多く良好な耐食性を確保することが出来なく、良好な耐
熱性も確保することができない。また、Niめっき量が
2500mg/m2 を越えるとめっき層のピンホールが
減少することによる耐食性及び耐熱性の向上効果が飽和
すると共に経済的なデメリットが発生する。Niめっき
を施す方法としては特に規制しないが、通常施されてい
るワット浴、硫酸浴、塩化物浴等のめっき浴が適性であ
る。
【0016】次に良好な溶接性を発揮できる被膜構成の
作用効果について述べる。溶接性は散りの発生がなく、
十分な溶接強度が得られる適性溶接範囲が広いほど溶接
性は良好と評価される。シーム溶接性の向上には電極/
材料界面および材料/材料界面での接触抵抗の低減が最
も効果がある。その理由は、電極/材料および材料/材
料界面での接触抵抗が高いと溶接時に電流が集中するた
め、局部的な発熱が起こり散りが発生する。つまり、溶
接強度を確保するために溶接電流を増加させていった場
合、十分な溶接強度が得られる前に局部発熱が起こった
場所で散りが発生するため、適性溶接範囲が存在しなく
なり溶接性は不良と評価される。これに対し、電極/材
料および材料/材料界面の接触抵抗が低い場合には、電
流が集中するために起こる局部的な発熱が起こりにく
く、散りの発生なく十分な溶接強度が得られるため溶接
性は良好と評価される。
【0017】このようなシーム溶接性の傾向は、特に溶
接スピードが増加した高速溶接の際に顕著に現れる。つ
まり、従来のワイヤースピードで40〜60m/min
という遅い溶接スピードでは接触抵抗がそれほど低くな
くても適性溶接範囲は存在する。しかし、70〜100
m/minと速い溶接スピードとなると単位時間当たり
の溶接入熱量が多くなるため散りが発生し易くなり、適
性溶接範囲は狭くなる。高速溶接時にも広い溶接範囲を
有するためには、接触抵抗のより一層の低減が必要とな
ってくる。このように、電極/材料および材料/材料界
面での接触抵抗を低減させるには、これまでの公知の技
術であるNiめっき後クロメート処理を施すと言う被膜
構成のみでは不十分であり、Niめっき層の上層にSn
めっき層を線状で付与することが接触抵抗の低減には非
常に有効であることが判明した。
【0018】つまり、良好な溶接性を発揮できる被膜構
成としては鋼板表面にまずNiめっきを施し、その上に
線状Snめっきを施し、更にクロメート被膜を設けると
いう被膜構成が適正である。Niめっき層の上層に線状
Snめっき層を設ける事により、接触抵抗が低減でき良
好な溶接性が確保できる理由は以下のように考えられ
る。
【0019】(1)軟質なSn金属がNiめっき層の下
層に存在することにより、溶接時に極輪から加えられる
加圧力により極輪/材料及び材料/材料間での接触面積
が広がり、接触抵抗が大量に低減できる。 (2)Sn金属が低融点のため溶接時の発熱により容易
に溶解し、極輪/材料および材料/材料間の接触面積を
広げる効果が大であり、接触抵抗が減少するため溶接時
の局部的な電流の集中が防げる。
【0020】上記の作用効果を少ないSnめっき量で得
るためにはSnめっき層は通常の平滑なめっき層では困
難であり、Snめっき層を線状にすることが重要であ
る。それは、平滑なSnめっき層では高温短時間塗装焼
付け時にSnめっき層が全て合金化するため、軟質、低
融点のfree−Snが残留しなくなり接触抵抗の低減
効果が発揮できなくなる。Snめっき層の合金化は鋼板
とSnめっき層の界面で高さ方向に進行するため、線状
Snめっき層であれば高温短時間焼付け後においても良
好な溶接性を発揮するfree−Sn残留量を確保可能
である。
【0021】したがって、良好な溶接性を得るために線
状Snめっきが施されるが、そのめっき量は10〜28
00mg/m2 に規制される。これは、線状Snめっき
量が10mg/m2 未満では高温短時間焼付け時に合金
化が進行し、free−Sn残留量が十分確保できない
ため、特に単位時間当たりの入熱量の大きな高速溶接時
に良好な溶接性を発揮できない。また、線状Snめっき
量が2800mg/m 2 を越えると、free−Sn残
留効果が飽和すると共に低融点のfree−Snが多く
残留し過ぎるため、後述するように上層にNiめっき層
を設けてもSnの融点を越える温度まで達する高温焼付
けを行うと、Sn金属が溶融し耐食性が顕著に劣化す
る。つまり、高温焼付けに耐え得る耐熱性が確保できな
くなる。
【0022】また、線状Snめっきの幅は0.05〜1
00μmに規制される。これは、めっき層の幅が0.0
5μm未満では高温短時間焼付けによる高さ方向への合
金化の進行によりfree−Snが残留しなくなり、良
好な溶接性が確保できなくなる。また、めっき層の幅が
100μmを越えると溶接性向上効果が飽和し経済的メ
リットが無くなると共に、耐熱性が劣化するため高温焼
付けにより、Sn金属が溶融し塗装後耐食性が劣化する
からである。
【0023】更に、線状Snめっきの面積占有率は0.
2〜90%に規制される。これは、線状Snめっきの面
積占有率が0.2%未満では溶接時に極輪から加えられ
る加圧力による極輪/材料及び材料/材料間での接触面
積の広がりが小さくなり、接触抵抗を低減する効果が低
くなるため良好な溶接性が確保できなくなる。したがっ
て、線状Snめっきの面積占有率は0.2%以上に規制
する必要がある。また、面積占有率が90%を越えると
溶接性向上効果が飽和し経済的メリットが無くなると共
に、高温短時間焼付け時に線状Sn析出部で生成した脆
弱な酸化錫が塗料密着性を劣化させるためである。
【0024】このように、良好な溶接性と耐熱性を両立
させ得る線状Snめっき層の適性かつ経済的なめっき量
は10〜2800mg/m2 、幅は0.05〜100μ
m、面積占有率は0.2〜90%である。鋼板上に線状
Snめっきを施す方法は規制しないが以下のような方法
が望ましい。Sn2+イオンの希薄な酸性水溶液中で流速
を付与し低電流密度によりSnめっきを行えば、鋼板上
に線状Snめっき層が形成可能である。例えば、Sn2+
イオン量は1〜400g/lの酸性溶液中で0.1〜3
0A/dm2 の電流密度でSnめっきを行うことが望ま
しい。
【0025】引き続き、このような被覆層を有しためっ
き鋼板に対して、塗料密着性、塗装後耐食性の向上を目
的としてクロメート処理が施される。クロメート被膜は
缶内面に対しては缶内容物が塗膜を通過して塗膜下で腐
食が進行するアンダーカッティングコロージョンの防
止、缶外面に対しては貯蔵時に塗膜下で発生する糸状錆
いわゆるフィリフォームコロージョンなどの耐錆性の向
上に効果がある。
【0026】このようなクロメート被膜が形成されてい
ることにより、長時間にわたり塗膜の密着性が劣化せ
ず、良好な耐食性、耐錆性が保持される。また、クロメ
ート被膜は硫黄化合物を含む食品、例えば魚肉、畜産物
などの場合にみられる鋼板の表面の黒変即ち硫化黒変を
防止する効果が大きい。このように、クロメート被膜は
特に塗装されて用いられる場合には性能向上に効果が大
きいが、溶接性に対してはマイナス要因である。ここで
言うクロメート被膜とは水和酸化クロム単一の被膜、即
ち本来のクロメート被膜といま一つは下層に金属クロム
層、上層に水和酸化クロム層の二層よりなる被膜の二つ
の場合を指している。水和酸化クロム被膜は電気的に絶
縁体のため電気抵抗が非常に高く、金属クロムも融点が
高くかつ電気抵抗も高いので、両者とも溶接性を劣化せ
しめるマイナス要因である。
【0027】そのため、良好な塗装性能と実用的に溶接
性を劣化せしめない適正なクロム付着量が非常に重要と
なる。本発明においてクロム付着量は金属クロム換算で
片面当たり1〜50mg/m2 が選定される。即ち、ク
ロム付着量が1mg/m2 未満では、塗料密着性の向
上、アンダーカッティングコロージョンなどの塗膜下腐
食の防止に効果が得られないので、1mg/m2 以上の
クロム付着量が望ましい。一方、付着量が50mg/m
2 を越えると接触抵抗が著しく増加し、局部的な発熱に
よる散りが発生し易くなり溶接性が劣化する。そのため
クロム付着量は50mg/m2 以下に規制される。
【0028】クロメート処理は各種のクロム酸のナトリ
ウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の水溶液による浸
漬処理、スプレー処理、電解処理などいずれの方法で行
っても良いが、特に陰極電解処理が優れている。とりわ
け、クロム酸にSO4 2- イオン、F- イオン(錯イオン
を含む)あるいはそれらの混合物を添加した水溶液中で
陰極電解処理が最も優れている。クロム酸の濃度は特に
規制しないが、20〜200g/lの範囲で十分であ
る。
【0029】添加するアニオンの量はCr6+の1/30
0〜1/25好ましくは1/200〜1/50の時、最
良のクロメート被膜が得られる。アニオンの量がCr6+
1/300以下では均質かつ均一で塗装性能に大きく影
響する良質のクロメート被膜が得られない。また、1/
25以上では生成するクロメート被膜中に取り込まれる
アニオンの量が多くなり、塗装性能、特に塗料二次密着
性が劣化する。添加されるアニオンは硫酸、硫酸クロ
ム、フッ化アンモン、フッ化ソーダの化合物などの形態
でクロム酸浴中へ添加される。
【0030】浴温は特に規制するものでは無いが、30
〜70℃の範囲が作業性の点から適切な温度範囲であ
る。陰極電解電流密度は5〜100A/dm2 の範囲で
十分である。処理時間は、前記処理条件の任意の組み合
わせにおいてクロム付着量が前記に示した1〜50mg
/m2 の範囲に入るように設定する。
【0031】そして、上記付着量の範囲において二層型
クロメート被膜における金属クロム層と水和酸化クロム
層の比は特に規制しないが0.6≦水和酸化クロム/金
属クロム≦3の範囲が望ましい。即ち、金属クロムに対
して水和酸化クロムの量が少ない場合、金属クロム層上
の水和酸化クロム層の均一被覆性が劣るため塗料密着性
が劣化する傾向にある。一方、金属クロム層に比べ水和
酸化クロム層が多い場合、水和酸化クロム層中に含有さ
れるアニオン及びCr6+イオンが多くなり、塗装後高温
環境にさらされた場合にこれらのイオンの溶出が起こ
り、塗膜下で微小膨れ、いわゆるブリスターが発錆し易
くなるので好ましくない。したがって、水和酸化クロム
と金属クロムの構成比率を上記のごとく0.6〜3の範
囲に設定することが好ましい。
【0032】以下に本発明の実施例についての実施材及
び比較材を表1に、またその結果を表2に示す。冷間圧
延もしくは焼鈍後の2回圧延により、所定の板厚に調整
しためっき原板を5%苛性ソーダ中で電解脱脂し水洗後
10%硫酸中で電解酸洗し、表面活性後表面処理を行っ
た。先ず、(1)に示す条件でNiめっきを行い、次に
(2)に示す条件で線状Snめっきを施し、引き続き
(3)−(A)〜(C)に示す処理浴でクロメート被膜
を生成させたものを作製した。
【0033】
【表1】
【0034】 (1)Niめっき条件 めっき浴組成 NiSO4 ・6H2 O 75g/l NiCl2 ・6H2 O 140g/l H3 BO3 30g/l めっき浴温 50℃
【0035】 (2)線状Snめっき処理 めっき浴組成 SnSO4 10〜30g/l H2 SO4 60g/l めっき浴温 60℃ 電流密度 0.1〜30A/dm2 (電解時間はSnめっき量 に応じて調整) 線状Snめっきの粒径はSnSO4 量および電流密度に
より調整
【0036】(3)クロメート処理浴 (A)CrO3 100g/l SO4 2- 0.6g/l (B)Na2 Cr2 7 24g/l pH 4.5 (C)CrO3 80g/l SO4 2- 0.05g/l Na2 SiF6 2.5g/l NH4 F 0.5g/l 上記処理材について、以下に示す(A)〜(G)の各項
目について実施し、その性能を評価した。
【0037】
【表2】
【0038】(A)接触抵抗の測定 シーム溶接性に大きな影響を与える接触抵抗値をCF型
電極のスポット溶接機を用いて測定した。測定用試験片
は、高温短時間での塗装焼付けを想定して310℃まで
20secで昇温する条件で焼付けを行った。CF型電
極を用いた接触抵抗測定方法を以下に示す。用いた電極
はクロム銅製で先端径4.5mmφのものである。試験
片2枚を電極間に配置し、エアーシリンダーにより20
0kgfに加圧した状態で電極間に1Aの定電流を通電
し、その時の電極/電極間、電極/鋼板間、鋼板/鋼板
間の電圧降下をナノボルトメーターで測定することで冷
間での静抵抗を求めた。
【0039】(B)シーム溶接性 試験片は高温短時間での塗装焼付け条件を想定して32
0℃まで23secで昇温する条件で焼付けを行い、以
下の溶接条件でシーム溶接性を評価した。ラップ代0.
5mm、加圧力45kgf、溶接ワイヤースピード80
m/minの条件で、電流を変更して溶接を実施し、十
分な溶接強度が得られる最小電流値と散りなどの溶接欠
陥が目立ち始める最大電流値からなる適正電流範囲の広
さおよび溶接欠陥の発生状況から総合的に判断して評価
した。
【0040】(C)碁盤目テスト 試験片の缶内面側に相当する面にエポキシフェノール系
塗料を55mg/dm 2 塗布し、更に缶外面に相当する
面にクリヤーラッカーを40mg/dm2 塗布し、29
0℃まで15secで焼付け条件で乾燥硬化した。引き
続き、各々の面に1mm間隔でスクラッチを入れ、計1
00個の碁盤目を作製し、速やかにテープ剥離し、その
剥離状況を評価した。
【0041】(D)UCC(アンダーカッティングコロ
ージョン)評価テスト 試験片の缶内面に相当する面の塗装後耐食性を評価する
ため、缶内面側に相当する面に缶用エポキシフェノール
(フェノールリッチ)塗料を片面当たり50mg/dm
2 塗布し、310℃まで18secで昇温する条件で焼
付けを行った。その後、塗装板の鉄面に達するようにス
クラッチを入れ、1.5%クエン酸−1.5%食塩混合
液である試験液中に大気開放価55℃×4日間浸漬し
た。試験終了後、速やかにスクラッチ部および平面部を
テープで剥離して、スクラッチ部近傍の塗膜下腐食状
況、スクラッチ部のピッティング状況および平面部の塗
膜剥離状況を判断して総合的に評価した。
【0042】(E)耐硫化黒変テスト 缶内面側に相当する面に(D)と同様の塗装を行い、1
t曲げを施した試験片を市販の鯖水煮を均一化したもの
の中にいれ、115℃×90minのレトルト処理を行
った。試験後に、曲げ加工部および平面部の硫化黒変状
況を評価した。
【0043】(F)フィリフォームコロージョンテスト 缶外面に相当する面の糸状鯖性を評価するため、クリヤ
ーラッカーを40mg/dm2 塗布し、280℃まで1
7secで昇温する焼付け条件で乾燥硬化した。引き続
き、ナイフで鉄面に達するまでスクラッチを入れ、35
℃で5%の塩水噴霧を1時間施し、速やかに水洗後25
℃で相対湿度85%で2週間放置し、糸状錆性を評価し
た。
【0044】(G)実缶テスト 試験片の缶内面側に相当する面にエポキシフェノール系
塗料を55mg/dm 2 塗布し、更に缶外面に相当する
面にクリヤーラッカーを40mg/dm2 塗布した後、
320℃まで22secで昇温する焼付け条件で乾燥硬
化した。引き続き、シーム溶接機を用いて缶胴を製作し
溶接部をエポキシ系樹脂で補修し、オレンジジュースと
コーラを充填後、♯25ブリキ製の缶蓋を巻締め、38
℃で12ケ月保管した。試験終了後、内容物を取り出し
鉄溶出量および缶内面側(平坦部と溶接部)の腐食状況
を観察した。
【0045】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によって、高
温短時間焼付けを行い高速シーム溶接を行った場合に十
分広い適性溶接範囲を有し、かつ耐食性、耐熱性および
塗料密着性に優れた溶接缶用素材を提供することにあ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−133398(JP,A) 特開 昭60−17100(JP,A) 特開 昭60−56074(JP,A) 特開 昭60−208494(JP,A) 特開 平4−128386(JP,A) 特開 平4−247897(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 11/38

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板表面に片面当たり、2〜2500m
    g/m2 のNiめっき層を有し、その上に幅0.05〜
    100μm、めっき量10〜2800mg/m2 、面積
    占有率0.2〜90%の線状のSnめっき層を有し、更
    にその上にCr換算で1〜50mg/m2 のクロメート
    被膜を形成したことを特徴とする高速シーム溶接性、耐
    食性、耐熱性および塗料密着性に優れた溶接缶用素材。
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