JPH0610395Y2 - 鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置、詳しくはピアノ等
の鍵盤蓋においてダンパとバランサとを備えた鍵盤蓋開
閉装置に関する。

（従来の技術） 従来の鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置としては、例えば第６
図〜第８図に示すような各種のものが知られていた。

第６図は所定重量の重り（バランサ）を鍵盤蓋の後端部
に埋め込んだものである。

すなわち、鍵盤蓋１はその側面に突設した回動軸３を回
動中心として回動自在に支持されている。バランサであ
る重り５はその鍵盤蓋１の後端部に埋設されており、鍵
盤蓋１が開いた状態ではその鍵盤蓋１をほぼ直立した状
態に保持している（開方向に付勢している）。

第７図は鍵盤蓋の溝部分へ板バネを押し当てるように作
用させ、「開」の状態から「閉」の状態へ移行する際の
抵抗として働かせるものである。

第８図は鍵盤蓋の閉じ方向の回動に対して抵抗力（ブレ
ーキ力）を発揮するロータリダンパを装着したものであ
る（特願昭６１−１８６２１２号明細書参照）。

従って、この鍵盤蓋１にあっては、閉じようとするとロ
ータリダンパ９が徐々に大きな抵抗力を発生することと
なる。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、このような従来の鍵盤蓋開閉装置にあっ
ては、いずれも以下のような欠点を有していた。

すなわち、第６図に示す開閉装置にあっては、鍵盤蓋の
閉動作中においての初期抵抗は満足し、また、開いた状
態での安定感は有するものの、自然落下的に閉じる場合
の後半での衝撃の吸収は充分ではないという欠点があっ
た。これは一旦重りに抗して所定重量の鍵盤蓋が閉じ方
向に回動し始めると、加速度が生じ、これに対して抵抗
力は後半において大きくならないからである。

また、第７図に示す装置にあっては、板バネは開から閉
状態へ移行する際の抵抗力として作用していたため、鍵
盤蓋が閉じる場合、その後半部分に対しての衝撃力の緩
和作用が充分でないという問題点が生じていた。また、
鍵蓋の脱着の際に、バネに合わせて装着するのが面倒で
あるという欠点もあった。

さらに、第８図に示す装置にあっては、ロータリダンパ
を使用しているため、閉じる場合の抵抗力はその開き角
度が小さくなるに従って大きくすることもできるが、開
いた状態、及びこの開状態から閉じ始めた初期の状態で
は未だ抵抗力が小さいため、その場合に安定感に乏しい
という問題点が生じていた。

（問題点を解決するための手段） そこで、本考案は、ロータリダンパ（２９）と、バラン
サ（４５）とを有する鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置であっ
て、ロータリダンパ（２９）は、鍵盤蓋（２３）を楽器
本体（２１）に回動自在に支持するものであり、鍵盤蓋
（２３）が閉方向に回動してその開き角度が小さくなる
にしたがって、その回動に対する抵抗力を増大させるも
のであり、バランサ（４５）は、ロータリダンパ（２
９）のダンパ軸（３３）から所定距離だけ離間した位置
において、鍵盤蓋（２３）の厚肉端部に埋設され、鍵盤
蓋（２３）の開放時、その閉方向への回動に対する抵抗
力を付与するものである鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置を提
供することにより、上記問題点を解決するものである。

（作用及び効果） 本考案によれば、鍵盤蓋の開いた状態及び閉じる場合の
初期状態ではバランサが鍵盤蓋を開く方向に付勢してい
る（閉じようとする動作に対しての抵抗力を与えてい
る）。そして、鍵盤蓋の開き角度が徐々に小さくなる
と、バランサに加えてロータリダンパが作用し、閉じ方
向の回動に対しての抵抗力を大きくする。これらの結
果、鍵盤蓋の開いた状態から閉じ始めの段階では閉じる
方向への回動に対する初期抵抗がバランサによって生じ
て安定した状態を保持できる。また、その後の鍵盤蓋の
閉じ動作に対しては、ロータリダンパによりその閉じる
場合の抵抗力は徐々に大きくなるため、衝撃力を緩和し
円滑にその鍵盤蓋を閉じることができる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図〜第５図は、本考案に係る鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉
装置をピアノに適用した一実施例を示すものである。

これらの図において、２１は楽器本体（ピアノの腕木）
であり、２３はこの腕木２１に回動自在に支持された鍵
盤蓋である。鍵盤蓋２３は大略そのピアノの鍵盤を覆う
平坦な板状部材により形成されており、腕木２１に支持
される側の端部（以下、基端部）２５は厚肉で、演奏者
側の端部（以下、先端部）２７はＬ字形に屈曲してしか
も薄肉で、それぞれ形成されている。

また、この鍵盤蓋２３の基端部２５において、その左右
両端（鍵の配列方向の両端）には一対のロータリダンパ
２９がそれぞれ同軸的に取り付けられている。すなわ
ち、このロータリダンパ２９によって鍵盤蓋２３は腕木
２１に回動自在に支持されているのである。

ロータリダンパ２９は、第３図に示すように、円筒形の
ケース３１と、このケース３１内にケース３１に対して
相対的に回動自在に支持挿入されたダンパ軸３３と、こ
のダンパ軸３３の外周面に巻回された密巻のスプリング
３５と、から構成されている。すなわち、このダンパ軸
３３はケース３１の開口部を閉止する閉止板３７に回動
自在に支持されているとともに、このダンパ軸３３の一
端部はこの閉止板３７から突出している。

さらに、このダンパ軸３３の突出した一端部は平坦に切
削されている。３３Ａはその平坦面である。

このスプリング３５の一端は上記ケース３１の開口部内
壁に形成した円弧溝３９内に配設されてその円弧溝３９
の壁面に係止可能に設けられている。すなわち、この円
弧溝３９はケース３１の円周方向において所定角度（例
えば４５度）に亘り形成され、この円弧溝３９内では上
記スプリング３５の一端は自由に回動することができる
ようになされているのである。

ケース３１から突出したダンパ軸３３の一端部は、上記
腕木２１の内側面に固着した金具４１に係合している。
すなわち、金具４１にはＵ字形の凹溝４３が形成されて
おり、この凹溝４３内にダンパ軸３３の一端部が挿入さ
れて回り止めされているのである。また、ケース３１は
上記鍵盤蓋２３に埋設して取り付けられている。さら
に、上記スプリング３５が巻付けられたダンパ軸３３の
外周面及び閉止板３７による軸受部には、それぞれ所定
の粘性を有する例えばシリコン系のオイルやグリース等
が塗布されている。

ここで、再び第１図及び第２図に示すように、この鍵盤
蓋２３の厚肉の基端部２５（ロータリダンパ２９の埋設
部）には、鉛等からなる重り４５が埋設されている。ま
た、この重り４５はダンパ軸３３から所定距離だけ離れ
て配置されている。この重り４５は鍵盤蓋２３の回動軸
３３から偏位して配されているため、蓋２３が開いた状
態では、第５図に実線で示すように、重り４５はこの鍵
盤蓋２３に対して図中時計回り方向にこれを付勢してい
る。バランサである。

従って、この実施例にあっては、鍵盤蓋２３の開閉は以
下のように行われることとなる。

まず、鍵盤蓋２３を開ける場合は、この鍵盤蓋２３を手
で持ち上げる。この場合、鍵盤蓋２３はダンパ軸３３を
回動の中心として上方に向かって所定の角度だけ回動す
る（この回動角度を以下鍵盤蓋２３の開き角度とす
る）。そして、このとき、ロータリダンパ２９は、その
スプリング３５が拡開するため、ほとんどその回動に対
して抵抗力を生じない。従って、抵抗力としてはロータ
リダンパ２９の粘性抵抗と鍵盤蓋２３及び重り４５の重
量のみとなっている。これは、ロータリダンパ２９のス
プリング３５が開く方向に上記回動力が作用し、このス
プリング３５による抵抗力は殆ど生じないためである。

そして、この鍵盤蓋２３が開いた状態ではバランサであ
る重り４５がこの蓋２３を開方向に付勢しているため、
鍵盤蓋２３は安定した状態、姿勢を維持している。容易
に倒れないのである。

一方、この鍵盤蓋２３を閉じる場合は、手によって、ま
たは、その蓋２３の自重によって、上述とは逆の方向に
鍵盤蓋２３を回動する。第４図は所定角度だけ回動した
状態（図中二点鎖線）を示している。この結果、ロータ
リダンパ２９のケース３１もその方向に回転する。この
ため、ダンパ軸３３に対してこのケース３１は相対的に
回転することになる。この場合、その回動に対する抵抗
力は、ロータリダンパ２９によって生じるのは粘性抵抗
であるが、粘性抵抗は速度に比例して抵抗力が増す為初
期動作ではその力は小さく、主として重り４５による抵
抗力（モーメント）が作用している。従って、この状態
までは鍵盤蓋２３の回動に対してもバランサ４５による
安定した抵抗力を付与していることとなる。

そして、所定の角度だけケース３１が回動すると、スプ
リング３５の一端が円弧溝３９の壁面に当接する。その
結果、ダンパ軸３３に巻回されたスプリング３５も所定
の滑りを生じた後、そのケース３１の回動によりダンパ
軸３３を締め付ける方向に力が作用することになる。

すなわち、スプリング３５がダンパ軸３３を締め付ける
ことになり、ケース３１の回動が大きくなるに従って
（鍵盤蓋２３の開き角度が小さくなるとともに）その締
め付け力は大きくなる。この結果、上記鍵盤蓋２３の閉
じる場合の抵抗力が徐々に大きくなる（開き角度の減少
に比例して大きくなる）。

従って、鍵盤蓋２３の閉止直前では極めてゆっくりとそ
の蓋２３は閉じられる。すなわち、ロータリダンパ２９
の作用により鍵盤蓋２３の閉止の際、その開き角度が大
きい閉止初期は抵抗力が小さくて、一定の角度まで回動
した後の終期ではその抵抗力が大きくなり、結果として
鍵盤蓋２３は初めはスムーズに最後は極めてゆっくりと
閉じられるのである。第５図はこの閉止状態（図中二点
鎖線）を示している。

なお、上記重り４５は分割して鍵盤蓋２３の基端部２５
に埋設しているため、鍵盤蓋２３自体の重量のばらつき
等を適宜吸収することができる。すなわち、分割した重
りの一部を任意に脱着すればよいのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置の一実
施例を示すその概略分解斜視図、 第２図は一実施例に係る鍵盤蓋の概略斜視図、 第３図は一実施例に係るロータリダンパを示すその正面
断面図、 第４図は一実施例に係る鍵盤蓋がわずかに閉じた状態を
示すその側面図、 第５図は同じく一実施例に係る鍵盤蓋がほぼ閉じた状態
を示すその側面図、 第６図は従来の鍵盤蓋の開閉装置を示すその側面図、 第７図は従来の鍵盤蓋の開閉装置の他の例を示すその側
面図、 第８図は従来の鍵盤蓋の開閉装置のさらに他の例を示す
その側面図である。 ２１……腕木（楽器本体）、 ２３……鍵盤蓋、 ２９……ロータリダンパ、 ４５……重り（バランサ）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ロータリダンパ（２９）と、バランサ（４
   ５）とを有する鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置であって、 ロータリダンパ（２９）は、鍵盤蓋（２３）を楽器本体
   （２１）に回動自在に支持するものであり、鍵盤蓋（２
   ３）が閉方向に回動してその開き角度が小さくなるにし
   たがって、その回動に対する抵抗力を増大させるもので
   あり、 バランサ（４５）は、ロータリダンパ（２９）のダンパ
   軸（３３）から所定距離だけ離間した位置において、鍵
   盤蓋（２３）の厚肉端部に埋設され、鍵盤蓋（２３）の
   開放時、その閉方向への回動に対する抵抗力を付与する
   ものである 鍵盤楽器の鍵盤蓋開閉装置。