JPH0545297U - 遊星歯車装置の荷重等配機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 遊星歯車装置において遊星歯車の位置誤差に
起因した荷重の不均衡状態を是正するための新規な荷重
等配機構を提案すること。 【構成】 遊星歯車装置１において、その遊星軸９−１
と、遊星歯車軸受け１０−１の内レース１０ａとの間に
は、約１５乃至２０μｍの環状隙間２１が形成され、そ
こに油膜層２２が形成されている。遊星歯車３−１は、
遊星軸９−１に対して浮動状態に取り付けられている。
この環状隙間２１によって遊星歯車３−１の位置誤差が
吸収されて、荷重等配状態が形成される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は遊星歯車装置に関し、加工誤差に起因する遊星歯車への荷重不均衡を 是正するための荷重等配機構に関するものである。

【０００２】

【従来の技術および考案が解決しようとする課題】

遊星歯車装置においては、加工誤差に起因して遊星歯車に対して荷重が不均衡 に作用するおそれがある。このため、遊星歯車装置には、この荷重不均衡を是正 するための荷重等配機構を備える必要がある。

【０００３】 本考案の課題は、遊星歯車装置において新規な構成の荷重等配機構を提供する ことにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

上記の課題を解決するために、本考案の遊星歯車装置においては、遊星歯車軸 受の内レースと遊星軸との間に、約１５μｍから約２０μｍの範囲の環状隙間を 形成すると共に、この環状隙間に油膜層を形成した構成を採用している。

【０００５】

【作用】

遊星歯車軸受の内レースと遊星軸との間には、油膜層が形成された環状隙間が 形成されている。したがって、遊星歯車は、油膜剛性によって遊星軸に対して浮 動状態にあるので、半径方向に移動可能である。遊星歯車の組み付け位置に誤差 があり、荷重不均衡状態が発生した場合には、荷重の等配状態が形成される方向 に向けて、遊星歯車が極く僅かに移動する。この結果、荷重等配状態が形成され る。

【０００６】

【実施例】

以下に、図１乃至図３を参照して本考案の実施例を説明する。

【０００７】 まず、図１および図２を参照して、本例の遊星歯車装置の全体構成を説明する 。本例の遊星歯車装置１は、遊星歯車を支持しているキャリアが二分割型の形式 のものである。この遊星歯車装置１の基本構成要素は通常の遊星歯車装置と同一 であり、太陽歯車２と、これに噛み合った４個の遊星歯車３−１、３−２、３− ３、３−４と、これらの遊星歯車を回転自在に支持している二分割型キャリア４ と、遊星歯車と噛み合っている内歯車５から構成されている。

【０００８】 内歯車５において、内歯５ａの両側には左右対象に、半径方向の外側に引っ込 んだ環状の第１および第２の内周面５ｂ、５ｃが形成されている。内歯車５の内 部には、同心状態に太陽歯車２が形成されている入力ピニオン軸６が配列されて いる。

【０００９】 太陽歯車２が形成されている入力ピニオン軸６と内歯車５との間の環状空所に は、全体として円環形状をした二分割型キャリア４が装着されている。このキャ リア４は、装置軸線１ａの方向における一方の側に位置する第１のキャリア片７ と、他方の側に位置する第２のキャリア片８から構成され、これらは後述のよう に締結用ボルトによって相互に締結されている。これらのキャリア片７、８の外 周面には、内歯車５に形成されている上記の第１および第２の内周面５ｂ、５ｃ に対峙する第１および第２の外周面７ａ、８ａがそれぞれ形成されている。さら に、これらのキャリア片７、８の相互に接触している側の端面には、円周方向に 向けて９０度間隔で互い違いにそれぞれ２本ずつの遊星軸９−１、９−３および ９−２、９−４（図においては９−１、９−４のみを示す。）が突出している。 これらの遊星軸の先端面は、他方の側のキャリア片の端面に突き当たった状態と なっている。

【００１０】 ここに、これらの遊星軸のうち、第１のキャリア片７から突出している遊星軸 ９−１、９−３には、遊星歯車軸受であるシェル型ニードルベアリング１０−１ 、１０−３（図においては１０−１のみを示す。）をそれぞれ介して、遊星歯車 ３−１、３−３が回転自在に取付けられている。同様に、第２のキャリア片８か ら突出している遊星軸９−２、９−４には、シェル型ニードルベアリング１０− ２、１０−４（図においては１０−４のみを示す。）をそれぞれ介して、遊星歯 車３−２、３−４が回転自在に取付けられている。

【００１１】 次に、第１のキャリア片７には、４本の遊星軸９−１乃至９−４のそれぞれに 一致する位置に締結用ボルトの貫通孔１１−１、１１−２、１１−３、１１−４ （図においては１１−１、１１−４のみを示す。）が形成され、第２のキャリア 片８には、締結用ボルトの取付け孔１２−１、１２−２、１２−３、１２−４（ 図においては１２−１、１２−４のみを示す。）が形成されている。これら第１ および第２のキャリア片７、８は、第１のキャリア片７の側から取り付けた締結 用ボルト１３−１、１３−２、１３−３、１３−４によって相互に締結されてい る。さらに、これらのキャリア片７、８は、遊星歯車と干渉しない円周方向の位 置において、締結用ボルト１４−１、１４−２、１４−３、１４−４によっても 相互に締結された状態にある。

【００１２】 このように相互に締結された第１および第２のキャリア片７、８は、それぞれ 、第１および第２の外周面７ａ、８ａと、内歯車５の側の第１および第２の内周 面５ｂ、５ｃの間に装着したボールベアリング１５、１６を介して、内歯車５の 側に回転自在に支持されている。

【００１３】 次に、図３を主に参照して、本例の遊星歯車装置１における荷重等配機構を説 明する。図３には、遊星歯車３−１の支持部分を取り出して示してある。この図 に示すように、遊星軸９−１と、この外周に配置されているニードルベアリング １０−１の内レース１０ａとの間には、環状隙間２１が形成されている。一般的 な遊星歯車装置においては、この内レース１０ａは遊星軸９−１に対して焼きば め、圧入等の方法で固定される。しかし、本例においては、遊星軸９−１の外径 に対して、内レース１０ａの内径を約１５μｍから約２０μｍ程度大きく加工し てある。したがって、遊星軸９−１に内レース１０ａを組み付けた状態において は、約１５μｍから約２０μｍの幅の環状隙間２１が形成される。この環状隙間 ２１内には潤滑油が充填され、これによって油膜層２２が形成されている。その 他の遊星歯車３−２、３−３、３−４の支持機構も同様の構成とされている。

【００１４】 このように本例の遊星歯車装置１においては、遊星歯車３−１、３−２、３− ３、３−４は、ベアリング１０−１、１０−２、１０−３、１０−４および油膜 層２２が形成された環状隙間２１を介して、遊星軸９−１、９−２、９−３、９ −４に対して回転自在に取付けられている。したがって、遊星歯車は、油膜層２ ２の油膜剛性によって遊星軸に対して浮動状態に取付けられている。加工誤差な どに起因して、遊星歯車に位置誤差が発生している場合、この状態で遊星歯車に 荷重が作用すると、不均衡な荷重伝達状態となる。しかし、このような不均衡荷 重状態が発生すると、浮動状態にある遊星歯車は、不均衡荷重によって半径方向 に移動して適正位置に位置決めされる。すなわち、荷重等配状態が形成されるこ とになる。

【００１５】 なお、本考案を、二分割型キャリアを備えた遊星歯車装置を例に挙げて説明し たが、本考案は、その他の形式の遊星歯車装置に対しても同様に適用できること は勿論である。

【００１６】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案の遊星歯車装置においては、遊星軸と遊星歯車軸 受けとの間に油膜層が形成された環状隙間を形成した構成を採用している。した がって、遊星歯車は遊星軸に対して油膜層の油膜剛性により浮動状態にあり、荷 重等配状態を形成する方向に移動可能である。よって、本考案によれば、遊星歯 車装置における荷重等配機構を簡単な構成により実現することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例の遊星歯車装置における遊星
歯車等の円周方向の配列状態を示す模式図である。

【図２】本考案の一実施例の遊星歯車装置を、図１のＩ
Ｉ−ＩＩ線で切断した断面を平面に展開した状態で示す
縦断面図である。

【図３】図２に示す遊星歯車装置の遊星歯車の支持部分
を取り出して示す部分断面図である。

【符号の説明】

１・・・遊星歯車装置 ２・・・太陽歯車 ３−１、３−２、３−３、３−４・・・遊星歯車 ４・・・二分割型キャリア ５・・・内歯車 ７・・・第１のキャリア片 ８・・・第２のキャリア片 ９−１、９−４・・・遊星軸 １０−１、１０−４・・・ニードルベアリング ２１・・・環状隙間 ２２・・・油膜層

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 遊星歯車装置における遊星歯車軸受の内
   レースと遊星軸との間に、約１５μｍから約２０μｍの
   範囲の環状隙間が形成され、この環状隙間には油膜層が
   形成されていることを特徴とする遊星歯車装置の荷重等
   配機構。