JPH053713U - ボール式減速機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ボールを使用した簡素な構造の減速機を提供
すること。 【構成】 減速機は、側面に長円状の溝を具えた駆動円
板と、側面に波状をしたサイクロイド曲線の溝を具えた
従動円板と、前記サイクロイド曲線の溝の波の数より偶
数個少ない複数のボールと、円上に配設され前記ボール
を遊嵌保持する貫通孔を具えたボール保持円板とを有
し、前記長円状の溝と前記サイクロイド曲線の溝とで前
記複数のボールを挟持した構成になっている。駆動円板
を回転させると、ボールは長円状の溝に沿って駆動円板
の回転方向に転動しようとする。しかし、ボールは貫通
孔に規制され転動が阻止される。このため、ボールに対
し溝の半径が駆動円板の回転にともなって変化するよう
な状態になり、ボールは、駆動円板の中心に対し、接近
離間移動を繰り返し、この繰り返しで溝の波状の部分を
押圧し、従動円板に回転力を発生させる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、ボールを使用した減速機に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、減速機として、図１２、図１３に示すように、ボールを動力伝達素子に 用いた減速機がある。 この減速機２０は、偏心距離ｅのカム２１を有する駆動軸２２と、オルダム継 手のようなボール式オルダム機構２３と、ハイポ（内転）サイクロイド曲線の溝 ２４が形成されカム２１に具えられたリング状の偏心板２５と、このハイポサイ クロイド曲線の波の数より偶数だけ波の数が少ないエピ（外転）サイクロイド曲 線の溝２６を具えた従動円板２７と、従動円板２７と一体の従動軸２８とで構成 されている。偏心板２５と従動円板２７はボール２９を介して対向している。

【０００３】 駆動軸２２を回転させると、偏心板２５は、オルダム機構２３によって自転が 規制された状態で、カム２１によって半径ｅの円を描きながら公転する。即ち、 偏心板２５は、偏心運動をする。偏心板２５が溝２４の波の数だけ公転すると、 従動円板２７は、溝２６とボール２９によって、前記波の数の差だけ回転させら れる。

【０００４】 なお、ハイポサイクロイド曲線とは、図１４に示すように、半径Ｒの基準円Ａ とＲａ＝Ｒ＋ｅ（但し、ｅは前記偏心距離であり正の値である。）の関係を有す る半径Ｒａの円ＲＡに沿って半径ｅの円を内転動させて得られる曲線ＨＳである 。 エピサイクロイド曲線とは、図１５に示すように、半径Ｒの基準円ＡとＲｂ＝ Ｒ−ｅ（但し、ｅは前記偏心距離であり正の値である。）の関係を有する半径Ｒ ｂの円ＲＢに沿って半径ｅの円を外転動させて得られる曲線ＥＳである。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、このような差動減速機は、次の問題点を有している。 (1)偏心板の偏心運動は、振動の発生原因となる。 (2)偏心板と従動円板の溝加工に手間がかかる。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

本考案は、側面に長円状の溝を具えた駆動円板と、側面に波状をしたサイクロ イド曲線の溝を具えた従動円板と、前記サイクロイド曲線の溝の波の数より偶数 個少ない複数のボールと、円上に配設され前記ボールを遊嵌保持する貫通孔を具 えたボール保持円板とを有し、前記長円状の溝と前記サイクロイド曲線の溝とで 前記複数のボールを挟持した減速機により、前記の課題を解決したものである。

【０００７】

【作用】

減速機は、ボール保持円板を固定し、従動円板を出力側として使用する場合と 、従動円板を固定し、ボール保持円板を出力側として使用する場合がある。 先ず、駆動円板を入力側、従動円板を出力側とし、さらに、ボール保持円板を 固定して使用する場合について説明する。 駆動円板を回転させると、ボールは長円状の溝に沿って駆動円板の回転方向に 転動しようとする。しかし、ボールは貫通孔に規制され転動が阻止される。この ため、ボールに対し長円状の溝の半径が駆動円板の回転にともなって変化するよ うな状態になり、ボールは、駆動円板の中心に対し、接近離間移動を繰り返す。 ボールは駆動円板の中心に対して接近離間移動を繰り返すとき、サイクロイド 曲線の溝の波状の部分を押圧し、従動円板に回転力を発生させる。 従動円板は、駆動円板がサイクロイド曲線の波の数だけ回転する間に、サイク ロイド曲線の波の数（Ｚ１）とボールの数（Ｚ２）との差の数（Ｚ１−Ｚ２）だ け駆動円板と同方向に回転する。 即ち、減速機は、［（Ｚ１−Ｚ２）／Ｚ１］の減速比をもって回転力を伝達す る。

【０００８】 次に、駆動円板を入力側、ボール保持円板を出力側とし、従動円板を固定して 使用する場合について説明する。 駆動円板を回転させると、ボールは固定の従動円板のサイクロイド曲線の溝に 沿って駆動円板の回転方向に転動しようとする。ボールは駆動円板の溝にも係合 しているため、常時、従動円板の溝と従動円板の溝との交わり部分にいなければ ならない。 このため、ボールは、駆動円板の長円状の溝によって回転力を受け、移動しよ うとするが、従動円板のサイクロイド曲線の溝によってこの移動が阻止されるよ うな状態になり、駆動円板の回転より遅く、従動円板の溝と従動円板の溝との交 わり部分に案内され、駆動円板の回転方向とは逆方向に移動する。 ボールは移動しながら、貫通孔を介してボール保持円板を回転させる。 ボール保持円板は、駆動円板がサイクロイド曲線の波の数だけ回転する間に、 サイクロイド曲線の波の数（Ｚ１）とボールの数（Ｚ２）との差の数（Ｚ２−Ｚ １）だけ駆動円板とは逆方向に回転する。 即ち、減速機は、［（Ｚ２−Ｚ１）／Ｚ２］の減速比をもって回転力を伝達す る。 なお、（Ｚ２−Ｚ１）の符号は負になるが、これは、ボール保持円板の回転方 向が駆動円板とは逆方向であることを示す。

【０００９】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 ボール式減速機４０は、図１に示すように、主に、駆動円板４１と、ボール保 持円板４２と、従動円板４３と、複数のボール４４とを有している。

【００１０】 駆動円板４１は、一方の側面に入力軸孔５１が他方の側面に長円状の溝５２が 形成されいる。図３に示すように、長円５３の長径の半径はＲｙ、短径の半径は Ｒｘである。又、長径となす角度θの所における半径Ｒｃは、 Ｒｃ＝［（Ｒｙ＋Ｒｘ）／２］＋［（Ｒｙ−Ｒｘ）ｃｏｓ２θ／２］である。 即ち、溝５２の形状は上記の式で表わされる曲線になっている。

【００１１】 ボール保持円板４２は、図４に示すように、ボール４４が遊嵌する複数の貫通 孔６１を具え、ケーシング６２と一体になっている。貫通孔６１は、図４に示す ように、半径Ｒｓ＝［（Ｒｙ＋Ｒｘ）／２］の円６３上に配設されている。 又、貫通孔６１の半径Ｒｕはボール４４の半径をＲｐとすると、Ｒｕ＝｛Ｒｐ ＋［（Ｒｙ−Ｒｘ）／２］｝である。貫通孔６１及びボール４４の数は、後述す るサイクロイド曲線の溝の波の数より２つ少ない、２０である。

【００１２】 従動円板４３は、一方の側面に出力軸７１が、他方の側面に波状をしたハイポ （内転）サイクロイド曲線の溝７２が形成され、ベアリング７３によってケーシ ング６２に回転自在に設けられている。溝７２の波の数は、図５に示すように、 貫通孔６１及びボール４４の数より２つ多い、２２である。 このハイポサイクロイド曲線は、半径Ｒｗ（＝Ｒｓ＋ｆ）の円（図示省略）に 沿って半径ｆ（＝Ｒｙ−Ｒｘ）の円（図示省略）を内転動させて得られる曲線で ある。 なお、長円５３、円６３、溝７２の中心Ｂ１，Ｂ２，Ｂ３は互いに一致してい る。このため、溝７２はボール保持円板４２を間にして長円状の溝５２と対向し ている。

【００１３】 ケーシング６２にはバックラッシュ調整用のナット８１が設けられており、こ のナット８１を回転させることによって、長円状の溝５２とハイポサイクロイド 曲線の溝７２とに挟さまれたボール４４の挟圧力の調整が行なえるとともに、バ ックラッシュを少なくすることができる。 図２、図３、図５に図示したボール４４は、溝５２，７２に接触している部分 のみ図示してある。このため、円の直径は小さくなっている。

【００１４】 次に動作を説明する。 減速機４０は、２通りの使用方法がある。第１の使い方は、ボール保持円板４ ２（ケーシング６２）を固定し、従動円板４３を従動装置（図示省略）に連結し て使う使い方である。第２の使い方は、従動円板４３を固定し、ボール保持円板 ４２（ケーシング６２）を従動装置に連結して使う使い方である。 先ず、駆動円板４１を入力側、従動円板４３を出力側とし、さらに、ボール保 持円板４２を固定した場合について、図６乃至図１１を基にして説明する。 なお、回転前の駆動円板４１の溝５２の長半径Ｒｙに対応する位置にある貫通 孔６１１とボール４４１を注目して説明する。 図６乃至図１１において、直線Ｃ１は従動円板４３のスタート位置、直線Ｃ２ は従動円板４３の回転位置を示している。又、ボール４４１，４４は二重の円で 示してあるが、内側の小円は溝５２，７２に接触する部分であり、外側の大円は ボール自身の外形である。

【００１５】 駆動円板４１を左回転させると、ボール４４１は長円状の溝５２に沿って左方 向に転動しようとする。しかし、ボール４４１は貫通孔６１１に規制され転動が 阻止される（図６参照）。このため、ボール４４１に対する溝５２の半径が駆動 円板４１の回転にともなって短くなり、ボール４４１は、駆動円板４１の中心Ｂ １の方へ移動する（図７乃至図１１参照）。この移動距離は上記ｆ（＝Ｒｙ−Ｒ ｘ）である。 ボール４４１は、駆動円板４１の中心Ｂ１の方へ移動しながら溝７２の凹状部 ７４を押圧し、従動円板４３を左回転させる（図７乃至図１１参照）。 ボール４４１に対する溝５２の半径が最も短いＲｙになると、凹状部７４の最 も低い部分が、ボール４４１のところまで移動させられる（図１１参照）。

【００１６】 その後、ボール４４１に対する溝５２の半径が長くなると、ボール４４１は、 駆動円板４１の中心Ｂ１から離れる方へ移動しながら溝７２の凸状部７５を押圧 し、従動円板４３に回転を継続させる。 このようにして、ボール４４１は、溝５２によって駆動円板４１の中心Ｂ１に 対して接近離間を繰り返させられながら、溝７２の凹状部７４、凸状部７５を交 互に押圧して従動円板４３を回転させる。

【００１７】 従動円板４３は、駆動円板４１がサイクロイド曲線の波の数だけ回転する間に 、サイクロイド曲線の波の数（２２）とボール４４の数（２０）との差の数（２ ２−２０＝２）だけ駆動円板４１と同方向に回転する。 即ち、減速機４０は、［（２２−２０）／２２］＝（１／１１）の減速比をも って回転力を伝達することになる。

【００１８】 次に、駆動円板４１を入力側、ボール保持円板４２（ケーシング６２）を出力 側とし、従動円板４３を固定した場合の動作について説明する。 駆動円板４１を回転させると、ボール４４は固定の従動円板４３の溝７２に沿 って駆動円板４１の回転方向に転動しようとする。しかし、ボール４４は駆動円 板４１の溝５２にも係合しているため、駆動円板４１の溝５２と従動円板４３の 溝７２との交わり部分にいなければならない。又、従動円板４３の溝７２は、波 の曲率半径が駆動円板４１の溝５２の円弧の曲率半径より小さく形成されている 。

【００１９】 このため、ボール４４は、溝５２によって転動力を受けるが、溝７２によって この転動が阻止されたような状態で駆動円板４１の回転より遅く、溝５２と溝７ ２との交わり部分に案内されて移動する。 ボール４４は移動にともなって、貫通孔６１を介してボール保持円板４２を駆 動円板４１の回転方向とは逆方向に回転させる。 これによって、ボール保持円板４２と一体のケーシング６２は回転し、従動装 置（図示省略）を駆動する。ケーシング６２と従動装置は、ベルト機構、歯車機 構（図示省略）等によって連結されている。 なお、ボール保持円板４２は、駆動円板４１がサイクロイド曲線の波の数だけ 回転する間に、ボール４４の数（２０）とサイクロイド曲線の波の数（２２）と の差の数（２０−２２＝−２）だけ回転する。 即ち、減速機４０は、［（２０−２２）／２０］＝（−１／１０）の減速比を もって回転力を伝達する。 負の符号は、ボール保持円板４２の回転方向が駆動円板４１の回転方向とは逆 方向であることを示す。

【００２０】

【考案の効果】

本考案のボールしき減速機は、次の効果を奏する。 (1)駆動円板と従動円板が全部のボールを挟持しているため、側面全体がボー ルに噛合している状態になり、剛性を高くすることができる。 (2)ボールが転動するため、伝動効率を高めることができる。 (3)偏心運動をする部材がないため、振動を少なくすることができる。 (4)各ボールが受持つトルク伝達力が、常に略々軸対称になっているため、重 量バランスに優れており、このことによっても振動を少なくすることができる。 (5)バックラッシュが少なく、正転、逆転の回転方向の変更を円滑に行なうこ とができる。 (6)部品点数が少なく、構造を簡素化することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例のボール式減速機の正面断面図
である。

【図２】駆動円板の長円の溝と、ボールと、従動円板の
ハイポサイクロイド曲線の溝との係合状態を示した図で
ある。

【図３】駆動円板の長円の溝と、ボールとの係合状態を
示した図である。

【図４】ボール保持円板の貫通孔と、ボールとの係合状
態を示した図である。

【図５】ボールと、従動円板のハイポサイクロイド曲線
の溝との係合状態を示した図である。

【図６】動作説明図である。

【図７】動作説明図である。

【図８】動作説明図である。

【図９】動作説明図である。

【図１０】動作説明図である。

【図１１】動作説明図である。

【図１２】従来のボール式減速機の正面断面図である。

【図１３】偏心板と従動円板の斜視図である。

【図１４】ハイポサイクロイド曲線の図である。

【図１５】エピサイクロイド曲線の図である。

【符号の説明】

４０ ボール式減速機 ４１ 駆動円板 ４２ ボール保持円板 ４３ 従動円板 ４４ ボール ５２ 長円状の溝 ６１ 貫通孔 ６３ 円 ７２ ハイポサイクロイド曲線の溝（サイクロイド曲線
の溝）

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】 側面に長円状の溝を具えた駆動円板と、
   側面に波状をしたサイクロイド曲線の溝を具えた従動円
   板と、前記サイクロイド曲線の溝の波の数より偶数個少
   ない複数のボールと、円上に配設され前記ボールを遊嵌
   保持する貫通孔を具えたボール保持円板とを有し、前記
   長円状の溝と前記サイクロイド曲線の溝とで前記複数の
   ボールを挟持したことを特徴とする、ボール式減速機。