JPH05320749A - 超高強度鋼の製造方法 - Google Patents

超高強度鋼の製造方法

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JPH05320749A
JPH05320749A JP15268292A JP15268292A JPH05320749A JP H05320749 A JPH05320749 A JP H05320749A JP 15268292 A JP15268292 A JP 15268292A JP 15268292 A JP15268292 A JP 15268292A JP H05320749 A JPH05320749 A JP H05320749A
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JP
Japan
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steel
temperature
bainite
weight
cooling
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JP15268292A
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Satoshi Tagashira
聡 田頭
Toshiro Yamada
利郎 山田
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 引張強さが1600〜2300N/mm2級で且
つ延性の良好な超高強度鋼を得る。 【構成】 C:0.4〜1.0 重量%, Si:1.2〜3.0 重量
%, Mn:0.3〜2.0 重量%, Cr:0.2〜1.5重量%, 残
部Feおよび不可避的不純物元素からなる鋼を,場合に
よってはさらに0.05〜0.5 重量%のMo, 0.05〜0.5 重
量%のVまたは0.01〜0.5 重量%Nbのいずれか1種ま
たは2種以上を含有させた鋼を,Ac3変態点以上の温度
に加熱して完全にオーステナイト化したうえ,この温度
からTTT線図のノーズを通過する速度よりも大きな冷
却速度でMs点以上で350℃未満の温度まで冷却し,
この温度域に10〜60分間恒温保持した後に室温まで
空冷または空冷以上の冷却速度で冷却することからな
る,ベイナイトと残留オーステナイトを主相とした複合
組織を有し且つ引張強さが1600〜2300N/mm2
超高強度鋼の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,ベイナイトと残留オー
ステナイトを主相とする複合組織を有する,引張強さ1
600〜2300N/mm2(ニュートン/mm2) 級の超高強度
鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高い強度が要求される機械構造部品用の
鋼材としては,従来より高炭素鋼を用いた焼入焼戻し材
や, ベイナイト鋼材が多く使用されてきた。しかし,こ
れらの鋼材は概して靭性には乏しく, 延性や耐衝撃性の
要求される部材に対して使用する場合には,その使用条
件が著しく制約されたり, 場合によっては靭性の欠如を
部材の寸法の増加で補うことが余儀なくされ,このため
に重量の増加を来していることが少なくなかった。
【0003】従来より,高炭素鋼を用いて高強度材を製
造する場合, 1600N/mm2以上の引張強さ (以下,T
Sと略称することがある)に強化しようとすれば,焼入
れ−焼戻し処理を行なうのが一般的であるが,この方法
では高い延性−靭性を得ることはできない。通常の焼入
れ焼戻し材が靭性に乏しいのは,金属組織がマルテンサ
イトやベイナイトを主体とする硬質の組織であることに
よる。
【0004】この問題を解決すべく,特公昭58-42246号
公報において,ベイナイトと残留オーステナイトの混合
組織とすることにより高強度を保ちながら延性を改善す
る方法が提案された。従来のベイナイト鋼ではTSが1
200N/mm2級では全伸びが約10%程度であるのに対
し,この方法によれば,同じ1200N/mm2級で約30%
の全伸びが得られるものであった。
【0005】また特開平3-215623号公報には,同じく金
属組織をベイナイトと残留オーステナイトの混合組織に
することによってTSが1500N/mm2級で30%程度の
伸びを得る方法が示された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記公報に提案された
方法では,高強度と言ってもTSは最大でも約1600
N/mm2までである。例えば後者の公報の実施例では16
4kgf/mm2のものが最大であり,これ以上のTSを得る
ことは困難であった。
【0007】本発明はこの問題点を解決し,TSが16
00〜2300N/mm2級で延性の良好な超高強度鋼を得
ることを目的としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,C:0.
4〜1.0 重量%, Si:1.2〜3.0 重量%, Mn:0.3〜2.0
重量%, Cr:0.2〜1.5重量%, 残部Feおよび不可避
的不純物元素からなる鋼を,さらにはこの鋼に0.05〜0.
5 重量%のMo, 0.05〜0.5 重量%のVまたは0.01〜0.5
重量%Nbのいずれか1種または2種以上を含有させた
鋼を,Ac3変態点以上の温度に加熱して完全にオーステ
ナイト化したうえ,この温度からTTT線図のノーズを
通過する速度よりも大きな冷却速度でMs点以上で35
0℃未満の温度まで冷却し,この温度域に10〜60分
間恒温保持した後に室温まで空冷または空冷以上の冷却
速度で冷却することからなる,ベイナイトと残留オース
テナイトを主相とした複合組織を有し且つ引張強さが1
600〜2300N/mm2の超高強度鋼の製造方法を提供
する。
【0009】
【作用】本発明に従う成分組成の鋼を下部ベイナイト領
域に恒温保持すると著しく微細な下部ベイナイトと残留
オーステナイトの混合組織が生成し,残留オーステナイ
トのTRIP現象 (変態誘起塑性:Transformation Ind
uced-Plasticity)によってTSが1600〜2300N/
mm2級でありながら,伸び(El)が10〜20%の良好な強
度−延性バランスをもつ超高強度鋼が得られる。すなわ
ち,本発明法に従って製造された鋼が非常に優れた強靭
性を示すのは残留オーステナイトのTRIP現象によ
る。
【0010】本発明において,残留オーステナイトと下
部ベイナイトからなる複合組織が得られるのは,Siの
作用が大きい。すなわちSiを多量に含む炭素鋼をベイ
ナイト変態させると,Siが炭化物の生成を抑制する作
用を有するので,未変態オーステナイト中にベイナイト
中の炭素原子が排出され,このために未変態オーステナ
イト中の炭素濃度が上昇し,マルテンサイト変態点 (M
s点) が室温以下に低下する。このため,鋼を室温まで
冷却してもマルテンサイトは生成せず,ベイナイトと残
留オーステナイトの混合組織が得られる。
【0011】Siを含まない鋼では,ベイナイト変態の
進行と同時に炭化物の析出を伴うので,未変態オーステ
ナイト中への炭素原子の濃縮は不充分で,残留オーステ
ナイトとベイナイトの混合組織を得ることができない。
【0012】一方, Siは黒鉛化を助長する元素であり,
多量の炭素を含有する鋼の場合には軟化焼鈍時などに
黒鉛化を生ずる危険性が大きいので,これを抑制するた
めに黒鉛化抑止力の大きい元素を添加しなくてはならな
い。ただし, 黒鉛化抑止元素はベイナイト組織の靭性を
阻害するものであってはならない。
【0013】また単純にC-Si-Mnだけの化学成分から
なる鋼では,残留オーステナイトとベイナイトの混合組
織を得ることはできるが,ベイナイト変態の速度が速い
ために適切な残留オーステナイト量に制御することが難
しい。したがって適切な残留オーステナイト量を得るた
めにはベイナイト変態を抑制し,かつ延性に対して有効
な残留オーステナイトを生成するような適切なその他の
合金元素を添加しなければならない。
【0014】また, 下部ベイナイトと共存して残留オー
ステナイトが変態誘起塑性の現象を示すためには, 残留
オーステナイト中の炭素濃度は1.5%以上必要である
が,単純なC-Si-Mn系の鋼を当該ベイナイトの恒温変
態温度領域に保持してもこのように高い炭素濃度を得る
ことはできない。
【0015】前記の目的を達成するには,このようなこ
とを総合的に勘案して,鋼の成分組成を決めることが必
要なるが, 本発明者らは,これらの点に関する基礎的研
究の結果,C-Si,Mnに加えてCr,さらににMo, V,
Nb等を適量添加した鋼を用いれば,黒鉛化抵抗を向上
させることができ, かつベイナイト変態処理時に微細な
下部ベイナイトが生成し,安定な残留オーステナイトと
微細な下部ベイナイトからなる複合組織が生成し,強度
−延性バランスの非常に優れたTSが1600〜230
0N/mm2級の超高強度鋼が得られることを見い出した。
【0016】本発明に従う鋼の各成分の作用とその含有
量範囲の規制理由について以下に説明する。
【0017】Cは, オーステナイト安定化元素であり,
ベイナイト変態に不可欠な元素である。その添加量は,
最終的に生成する残留オーステナイト量に大きく影響
し,C添加量が0.4%未満では高強度を得ることはでき
ない。またC量が1.0%を超えると,生成する残留オー
ステナイト量が多すぎて,かえって強度が低下する。し
たがって, 適切な残留オーステナイト量を得るために
は,C量は0.4〜1.0%の範囲にする必要がある。本発明
鋼において,望ましい残留オーステナイト量は15〜3
0容積%である。
【0018】Siは,炭化物の生成を抑制する元素であ
り,C濃度が高い安定な残留オーステナイトを得るため
には不可欠な元素である。Si量が1.2 %未満では上記
の効果は希薄であり, 反対にSi量が3.0 %を超える
と,ベイナイト変態が著しく抑制されるばかりでなく,
熱間圧延−冷間圧延等の鋼の製造工程で著しい困難を伴
うようになる。従ってSi量は1.2〜3.0%の範囲に限定
される。
【0019】Mnはオーステナイト安定化元素であり,
焼入性を向上させることによってパーライト等の生成を
抑止する作用を供する。しかしMn量が0.3%未満では焼
入性が不充分で,鋼の板厚が厚い場合には中心部の冷却
速度が遅いためにパーライトなどを生成することがあ
り,この場合には充分な残留オーステナイトが得られな
くなる。またMn量が2.0%を超えるとベイナイト変態の
速度が遅くなってやはり充分な残留オーステナイトを得
られなくなる。このためMn量は0.3〜2.0%に限定す
る。
【0020】Crは,熱延材の軟化焼鈍中に起こる黒鉛
化を抑制するのに有効に作用する元素であり,またベイ
ナイト変態を遅らせて残留オーステナイトの得られる領
域を広げる作用を有する元素である。黒鉛化を防止する
ためにはCr量は最低0.2%は必要であるが,1.5%を超
えて添加しても黒鉛化の抑止にはそれ以上の効果は望め
ないばかりか,軟化焼鈍時のセメンタイトの球状化を困
難にし,ベイナイト自体の塑性を劣化させる傾向がある
ためにCr量は0.2〜1.5%に限定する。
【0021】MoとVは,ベイナイトの変態の形態を大
きく変える元素であり, 適量添加することによってベイ
ナイト組織を微細化させる作用を供し,これによりTS
と靭性を高める効果を奏する。さらにVは,鋼をオース
テナイト域に加熱した場合のオーステナイト粒径を微細
化する効果もあり, Vを適量添加すると, ベイナイト変
態を促進させることもできる。
【0022】Moは0.05%未満の添加量ではベイナイト
の微細化効果は少なく, また0.5%を越えて添加しても
それ以上の微細化は望めず, かえって健全なベイナイト
の生成に障害をもたらすために0.05〜0.5%に限定する
必要がある。またVは0.05%以下の添加ではベイナイト
の微細化効果は少なく, また0.50%を越えて添加しても
それ以上の効果は望めないばかりか,Moの場合と同じ
くかえって健全なベイナイトの生成に障害となるために
0.05〜0.5%に限定する必要がある。
【0023】Nbは,オーステナイト域に加熱した場合
のオーステナイト粒径を微細化する効果によりベイナイ
ト変態を促進し,かつ微細で靭性の高いベイナイトを生
成させる作用を有する元素である。しかし添加量が0.01
%未満ではオーステナイト粒径を微細化する効果は少な
く, ベイナイトの微細化には十分な効果を発揮しない
し,0.5%を越えて添加してもそれ以上の効果は望めな
いので0.01〜0.5%に限定する。
【0024】次に, 本発明法の熱処理条件について説明
する。
【0025】本発明鋼の製造にあたっては,通常は,上
記の成分組成範囲の鋼を通常の熱間圧延, 軟化焼鈍, 冷
間圧延等を適宜施して鋼帯または鋼板を製造し,これを
ベイナイト変態処理に供する。黒鉛化傾向を抑制した本
発明鋼では通常の工程で製造する限りにおいては黒鉛化
を生ずる恐れは少ない。このベイナイト変態処理は,鋼
帯または鋼板に限らず,特殊な場合には,線材や条材に
も適用でき,また一次加工した材料にも適用可能であ
る。
【0026】本発明に従うベイナイト変態処理は,まず
鋼をAc3点以上の温度域に加熱して完全にオーステナイ
ト化する。そして,この状態から,TTT線図のノーズ
を通過する速度よりも大きい冷却速度でMs点(マルテ
ンサイト変態開始点)以上,350℃未満の範囲の温度
まで冷却し,この温度域に10〜60分間恒温保持した後に
室温まで空冷または空冷以上の冷却速度で冷却する。
【0027】TTT線図のノーズを通過する速度よりも
大きい冷却速度とは, オーステナイト単相の組織からM
s点〜350℃未満の温度域に焼入れする際に, フエラ
イトやパーライトが生成しないような冷却速度のことで
ある。本発明の化学成分を有する鋼の場合では,50℃
/sec以上の冷却速度があればフエライトやパーライトが
生成することはない。
【0028】恒温処理温度はMs点〜350℃未満とし
なければならない。350℃未満で恒温処理することに
より,ベイナイトは下部ベイナイトとして生成する。下
部ベイナイトは,この温度域以上で生成する上部ベイナ
イトに比べると,より針状の形態を有する点で区別がで
き硬さが一層高い。本発明鋼が超高強度と靭性を発揮す
るのは,この下部ベイナイトと残留オーステナイトの極
めて微細な混合組織を有し, 残留オーステナイトがTR
IP現象を示すことにある。
【0029】TRIP現象は残留オーステナイトの安定
性, すなわち歪誘起変態の起こり易さに関わっており,
塑性変形中に適度に変態して歪の分散を起こさしめるよ
うな適度な安定性が必要になる。残留オーステナイトの
安定性は,主に炭素濃度によって決まる。通常,残留オ
ーステナイトとして存在し得るためには炭素濃度1.0〜
1.2%が必要であるが,TRIP現象を示す安定性を得
るには,より高濃度な炭素原子の濃縮が必要である。特
に本発明が目標とするような高強度鋼の場合には, 更に
高濃度で安定な残留オーステナイトが必要になる。それ
は以下の理由による。
【0030】恒温処理温度が350℃未満で生成した下部
ベイナイトは非常に硬度が高いが,残留オーステナイト
はそれ自体は比較的軟質であるために,歪は残留オース
テナイトに集中する。このため,ベイナイトが軟質な場
合に比べて歪誘起変態が一層起こりやすくなる。本発明
鋼のように1600〜2300N/mm2級の超高強度にお
いては,硬質な下部ベイナイトと共存してTRIP現象
を示すためには残留オーステナイト中の炭素濃度は1.5
%以上必要となる。
【0031】本発明者らは, 恒温保持温度と残留オース
テナイト中の炭素濃度の関係について研究を行った結
果, 本発明鋼ではC-Si-Mn 系にCrさらにはMo,V,
Nb等の炭化物形成元素を添加することにより,恒温保
持温度が350℃を下回ると炭素濃度が1.5%を超える
残留オーステナイトが得られることがわかった。すなわ
ち,本発明で規定する成分範囲の鋼を350℃未満の温
度で恒温保持を行うことにより,残留オーステナイトの
TRIP現象を利用した超高強度鋼が得られることがわ
かった。
【0032】なお,恒温保持温度がMs点より低いと焼
入マルテンサイトが生成し,ベイナイトと残留オーステ
ナイトの混合組織が生成しない。このために高延性を得
ることができない。一方, 保持温度が350℃以上では
1600N/mm2以上の引張強さは得ることはできない。
したがって恒温保持する温度はMs点以上,350℃未満と
する必要がある。
【0033】この恒温保持温度域に保持する時間は10
〜60分であればよい。本発明で規定する成分の鋼は,
当該温度域における保持時間が10分未満ではベイナイ
ト変態量が不充分であり, 未変態オーステナイト中の炭
素濃度は1.5 %に到達しないことがある。この場合には
高強度ではあるが延性に乏しくなる。一方,恒温変態時
間を60分を超えて余り長くすると,残留オーステナイ
トが分解して炭化物が析出し,このために炭素濃度が再
び低下し,延性が低下するようになる。したがってMs
点以上350℃未満の温度域に保持する時間は10〜6
0分とするのがよい。
【0034】いったんこの恒温保持温度域に該時間保持
した後は,室温まで冷却するに際には,1℃/sec以上の
冷却速度であれば組織変化をきたすこともないので,空
冷以上の冷却速度であれば問題ない。
【0035】
【実施例】表1に供試鋼の化学成分値 (重量%) を示
す。これらのうちNo.A,B,C,D,E,F,Gおよ
びHは, いずれか一つの成分の含有量が本発明で規定す
る範囲を外れる比較鋼であり,No.I,J,K,L,M
およびNは本発明の成分組成範囲内の鋼である。いずれ
も通常の熱間圧延,軟化焼鈍,冷間圧延を経て厚さ1mm
の鋼板とした。
【0036】各比較鋼A〜Hと本発明鋼I〜Nを,それ
らのAc3変態点以上の温度に加熱して完全にオーステナ
イト化したのち,TTT線図のノーズを通過する速度よ
りも大きい冷却速度でMs点〜350℃の範囲の温度まで冷
却し,この温度域に10〜60分間恒温保持した後に室温ま
で2℃/秒の冷却速度で冷却した。各供試鋼の熱処理条
件を表2の処理No.に示した。各々の処理No.の具体的な
条件は表3に示したものである。また本発明鋼I〜Jに
ついて,恒温処理条件が本発明で規定する範囲を外れる
熱処理を施した。その具体的な条件は表3の処理No.6
〜8に示した。
【0037】これらの処理を施した各鋼の機械的性質(J
IS 13B号に従う引張試験値) と, 残留オーステナイト量
および残留オーステナイト中の炭素濃度を測定し,その
結果を表2に示した。表2において,比較材とは前記比
較鋼に本発明で規定する範囲の熱処理を施した材料,本
発明材とは本発明に従う成分組成を有する鋼に本発明で
規定する範囲の熱処理を施した材料,そして比較例とは
本発明に従う成分組成を有する鋼に本発明の範囲外の条
件で熱処理を施したものである。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】表2の結果から次のことがわかる。
【0042】比較材A2はCrの含有量が低く且つMo,
V, Nbも添加しない鋼を熱処理したものであるが,鋼
板製造時の軟化焼鈍時に黒鉛化を起こしてしまったの
で,充分にオーステナイト化ができず,このめたに強度
が低い。すなわち比較鋼Aは黒鉛化抵抗が小さい。
【0043】比較材B2は強度が低い。これは鋼中の炭
素量が低いことによる。
【0044】比較材C2は強度,延性(伸び)がともに
低い。これは, 鋼中の炭素量が過多であるために残留オ
ーステナイト量が多くなりすぎたからである。
【0045】比較材D5は延性が低い。これはSi量が
過少であるためにベイナイト変態が速く進行し,30分間
の恒温保持によって残留オーステナイトが0%となった
からである。
【0046】比較材E5も延性が低い。これはMn量が
過多であるためにベイナイト変態が遅くなりすぎ,また
ベイナイトの形態も粗大なものとなったからである。
【0047】比較材F5はCr量を本発明で規定するよ
り多量に含有させた鋼を熱処理したものであるが,延性
が低い。これはCr量が過多であるためにベイナイト変
態が遅くなりすぎ,ベイナイト自身の靭性が低下したも
のである。
【0048】比較材G2はV量が過多であるために健全
なベイナイト組織が生成せず,靭性が低く。また比較材
H2もMo量が過多であるために健全なベイナイト組織
が生成せず,靭性が低い。すなわち,硬さが高い割に伸
びが低く,耐力も低い。
【0049】これに対し, 本発明材のI2,I4,I
5,J1,J2,J3,K2,L2,M2およびN2
は,いずれも引張強さ1600〜2300 N/mm2の超強度を示し
且つ伸びが10%以上である。また0.2%耐力も 900 N/m
m2以上を示している。したがって本発明によれば,超高
強度を具備しながら延性に優れ,強度−延性バランスの
よい材料が得られたことがわかる。なお,本発明材の場
合には,いずれも残留オーステナイト中の炭素濃度は1.
5 %以上となっており,また残留オーステナイト量もほ
ぼ15%以上,30%以下の適正範囲にある。
【0050】しかし, 本発明で規定する化学成分値範囲
の鋼でも,比較例I8,I9,J6およびJ7に見られ
るように,本発明で規定する熱処理条件が外れると超高
強度と靭性を同時に満足することはできない。
【0051】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなように,本発
明によればTSが1600〜2300N/mm2で延性が優
れた超高強度鋼が得られる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.4〜1.0 重量%, Si:1.2〜3.0
    重量%, Mn:0.3〜2.0 重量%, Cr:0.2〜1.5 重量
    %, 残部Feおよび不可避的不純物元素からなる鋼を,
    Ac3変態点以上の温度に加熱して完全にオーステナイト
    化したうえ,この温度からTTT線図のノーズを通過す
    る速度よりも大きな冷却速度でMs点以上で350℃未
    満の温度まで冷却し,この温度域に10〜60分間恒温
    保持した後に室温まで空冷または空冷以上の冷却速度で
    冷却することからなる,ベイナイトと残留オーステナイ
    トを主相とした複合組織を有し且つ引張強さが1600
    〜2300N/mm2の超高強度鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】 C:0.4〜1.0 重量%, Si:1.2〜3.0
    重量%, Mn:0.3〜2.0 重量%, Cr:0.2〜1.5 重量
    %, さらに,0.05〜0.5 重量%のMo, 0.05〜0.5 重量
    %のVまたは 0.01〜0.5 重量%Nbのいずれか1種また
    は2種以上を含有し, 残部がFeおよび不可避的不純物
    元素からなる鋼を, Ac3変態点以上の温度に加熱して完
    全にオーステナイト化したうえ, この温度からTTT線
    図のノーズを通過する速度よりも大きな冷却速度でMs
    点以上で350℃未満の温度まで冷却し,この温度域に
    10〜60分間恒温保持した後に室温まで空冷または空
    冷以上の冷却速度で冷却することからなる,ベイナイト
    と残留オーステナイトを主相とした複合組織を有し且つ
    引張強さが1600〜2300N/mm2の超高強度鋼の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 残留オーステナイトは,炭素濃度が1.5
    重量%以上である請求項1または2に記載の超高強度鋼
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 残留オーステナイトは,全体に占める容
    積が15〜30容積%である請求項1,2または3に記
    載の超高強度鋼の製造方法。
  5. 【請求項5】 当該超高強度鋼は,10%以上の伸びを
    有するものである請求項1,2,3または4に記載の超
    高強度鋼の製造方法。
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Cited By (12)

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