JPH0524324B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は内熱機関の吸気弁に係り、特に内熱
機関の運転に伴つて加熱される吸気弁の昇温を極
力抑え、吸入空気の加熱による膨張を抑えること
によつて気筒への吸入空気の吸入効率を向上させ
た内熱機関の吸気弁に関する。

［従来の技術］ 近年シリンダ壁面、ピストン頂面及びシリンダ
ヘツド下面をセラミツク等の断熱材料で覆つて断
熱し、エンジンの熱効率を向上させようとした断
熱エンジンが開発されている。

第３図には本出願人が先に提案した「断熱エン
ジン構造」（特開昭60−90955号公報）を示してあ
る。

同図に示されるようにシリンダヘツドａの下半
分には、シリンダの対面する部分に、シリンダに
対して同軸上の円筒部ｂが形成されており、この
円筒部ｂにはセラミツクスから成る逆カツプ状の
ヘツドライナｃが嵌合されている。この逆カツプ
状のヘツドライナｃの外面と円筒部ｂの壁面b₁と
の間には半径方向に所定の間隔の空間部ｄが形成
されている。

これらの構成により「断熱エンジン構造」が構
成される。

［発明が解決しようとする問題点］ 上述の「断熱エンジン構造」は、空間部ｄを形
成することにより、ヘツドライナｃからシリンダ
ヘツドａへの熱伝導を抑え、その結果として断熱
効率を高めるものであり、またその断熱効率をさ
らに向上させるために、円筒部ｂの壁面b₁を熱反
射面としている。

しかしながら、このようにして断面性能を高め
た「断熱エンジン構造」にあつても次の問題点が
ある。

上記提案にあつても気筒で発生する熱で吸気弁
の気筒側露出面が加熱されるために、吸気弁ｅの
弁傘部e₁の高熱によつて吸気が体積膨張を起し、
気筒への吸気の吸入効率が低下し、エンジンの諸
性能が低下する問題が生じていた。これは早急に
解決すべき問題点として指摘されている。

［問題点を解決するための手段］ この発明は上記問題点を解決することを目的と
しており、この発明は吸気ポートを開閉する吸気
弁の気筒露出面にこれを覆うように空気を取り込
んだ繊維質の断熱ガススケツト層を設け、その断
熱ガスケツト層の外側にこれを覆つて気密に封止
する硬質の断熱層を設けて内熱機関の吸気弁を構
成したものである。

［作用］ 吸気弁の気筒側露出面を被つて積層された断熱
ガスケツト層、この断熱ガスケツト層に取り込ま
れている空気及び断熱層は、気筒から吸気弁への
入熱を遮断するから、吸気弁の弁傘部の昇温が極
力阻止される。この結果、吸気弁の開時に気筒内
に吸入される吸気が加熱されなくなり、加熱によ
る体積膨張が抑えられる。したがつて気筒には必
要量の吸気が吸入されることになり、実質的に吸
入効率が向上しエンジンの諸性能が向上される。

［実施例］ 以下にこの発明の内熱機関の吸気弁の好適一実
施例を添付図面に基づいて説明する。

第１図に示されるようにシリンダヘツド１内に
は、シリンダボデイ２内に形成された気筒３内に
連通するように吸気通路４が形成される。

シリンダヘツド１内には、上記吸気通路４の吸
気ポート５を開閉する鉄製の吸気弁６が昇降自在
に設けられている。

さて吸気弁６は第１図及び第２図に示すように
構成される。この吸気弁６の気筒側露出面６ｅに
は、その軸芯位置に、気筒３側へ延びたボス部７
が一体に形成されている。このボス部７には後述
する断熱層８が嵌合されて固定される。断熱層８
は、この実施例では窒化珪素等のセラミツクを焼
成させて所定形状に形成されるもので、その形状
は断面コ字形で、中央部に上記ボス部７の基端面
外周を包囲する係合部９を有している。したがつ
て、断熱層８の係合部９の半径方向外方には環状
の凹部１０が形成されることになる。この凹部１
０は、後述する断熱ガスケツト層１１を収容する
もので、この実施例にあつて断熱ガスケツト層１
１はまずチタン酸カリウムの繊維材を形成し、こ
のチタン酸カリウムの繊維材を上記凹部１０に係
合して収容される形状に積層させて形成される。
ここで繊維材を積層させて断熱ガスケツト層１１
を形成することは当然、積層中に空気が含まれる
ことになるからこの空気によつて断熱性能を向上
させることができる。また繊維材を積層すること
は、当然断熱ガスケツト層１１が軸方向に圧縮可
能であるから繊維長さ、積層高さを調節すること
によつて、ガスケツトとして充分な圧縮代を得る
ことができる。この場合必要な圧縮代を考慮した
上で、積層中に充分な空気を取り込んであるよう
に配慮されることは当然である。また、このよう
に形成された断熱ガスケツト層１１を収容する凹
部１０の深さ（断熱ガスケツト層１１の厚さ方向
を指す）は、断熱層８の外周部で、上記吸気弁６
の気筒側露出面６ｅに着座する基端面１２、及び
この基端面１２に対して略同一平面上にある上記
係合部９の基端面１３がその気筒側露出面６ｅに
着座したときに、充分な圧縮代を得るように定め
られる。

さて、上記凹部１０に断熱ガスケツト層１１を
収容した状態で、断熱層８の係合部９に、吸気弁
６のボス部７を係合させ固定する方法としては、
上記ボス部７を気筒３側へ適当量貫通させ、その
ボス部７の貫通部分をカシメ処理する方法と、そ
の貫通部分をろう付け或は貫通部分を溶融させて
固定する方法とがあるが、いずれかの方法で固定
を行う。溶融にあつては吸気弁６が鉄製で、断熱
層８及び断熱ガスケツト層１１が耐熱材料である
から問題はない。固定後、ボス部７の気筒側端面
１４及び固定処理部にはジルコニア等のセラミツ
クにてコーテイングが施され断熱膜１５が形成さ
れる。

ところで、断熱層８の外径は吸気弁６の外径と
同一とし、また断熱層８及び断熱ガスケツト層１
１の高さもできるだけ小さく抑えて、吸気弁６の
慣性質量を小さくすることにも、充分な配慮が施
される。

次に作用を説明する。

気筒で発生した熱は吸気弁６の断熱層８でまず
断熱される。しかし、断熱層８はこの断熱層８を
通過する熱の全てを断熱することができるもので
はないから、多少の入熱は生じる。断熱層８を通
過した熱は空気を含む断熱ガスケツト層１１によ
り、そのほとんどが断熱されるから、吸気通路４
内に露出された部分の吸気弁６の表面温度の上昇
は阻止されることになる。また、ボス部７の断熱
膜１５によつて熱伝導を妨げられる。

このように、吸気弁６の吸気通路４内露出部分
の表面温度の上昇が阻止されるから、吸気弁６の
開時に気筒３内に吸入される空気の体積膨張がな
くなり、気筒への吸入効率が実質的に向上する。

［発明の効果］ 以上説明したことから明らかなようにこの発明
の内撚機関の吸気弁によれば次の如き優れた効果
を発揮できる。

(1) 吸気ポートを開閉する吸気弁の気筒露出面に
これを覆うように空気を取り込んだ繊維質の断
熱ガスケツト層を設け、その断熱ガスケツト層
の外側にこれを覆つて気密に封止する硬質の断
熱層を設けて吸気弁の気筒露出側面からの入熱
及び熱伝導を妨げることがきるようにしたの
で、吸入空気の加熱による体積膨張を抑えるこ
とができ、気筒への吸気の吸入効率を大巾に向
上できる。

(2) 熱焼性能，出力性能等のエンジンの諸性能を
向上できる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の好適一実施例を示す縦断面
図、第２図は第１図の要部詳細断面図、第３図は
関連技術としての断熱エンジン構造を示す縦断面
図である。 図中、１はシリンダヘツド、２はシリンダボデ
イ、３は気筒、４は吸気通路、５は吸気ポート、
６は吸気弁、６ｅは気筒側露出面、７はボス部、
８は断熱層、９は係合部、１０は凹部、１１は断
熱ガスケツト層、１５は断熱膜である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 吸気ポートを開閉する吸気弁の気筒露出面に
   これを覆うように空気を取り込んだ繊維質の断熱
   ガスケツト層を設け、その断熱ガスケツト層の外
   側にこれを覆つて気密に封止する硬質の断熱層を
   設けたことを特徴とする内熱機関の吸気弁。 ２ 上記断熱層が窒化珪素等のセラミツク材料か
   ら構成されてその断熱層の軸芯に係合穴を有する
   と共に、該係合穴を包囲する内側面を環状に窪ま
   せて上記断熱ガスケツト層を係合し収容する凹部
   を有し、上記吸気弁が、上記係合穴に嵌合されて
   それら断熱ガスケツト層及び断熱層を吸気弁の気
   筒露出面に固定するボス部を有して構成された上
   記特許請求の範囲第１項記載の内熱機関の吸気
   弁。 ３ 上記断熱ガスケツト層がチタン酸カリウムの
   繊維材から構成された上記特許請求の範囲第１項
   記載の内熱機関の吸気弁。 ４ 上記ボス部が、そのボス部の先端面にジルコ
   ニア等のセラミツクを被覆された上記特許請求の
   範囲第２項記載の内熱機関の吸気弁。