JPS632577Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はエンジンの燃焼室構造に関するもので
ある。

最近、ガソリンエンジンにおいて、ノツキング
を生ずることなく燃費を稼ぐ目的で、燃焼室の一
部を形成するシリンダヘツド部に、その面積の50
％以上を占める平面部と、燃焼凹部とを設け、
吸，排気弁のうちの一方の弁の弁孔を上記平面部
に、他方の弁の弁孔を上記燃焼凹部にそれぞれ形
成し、燃焼凹部に点火栓を臨ませ、かつ、ピスト
ン頂面を上記平面部と平行な平面とした燃焼室構
造が開発させている。この構造は、燃焼室をコン
パクト化し、上記燃焼凹部において混合気を高圧
縮すると共に、圧縮行程終期にピストン頂面と上
記平面部との間隙から上記燃焼凹部に導入される
スキツシユ流により燃焼速度を速めることによ
り、ノツキング等の異常燃焼を防止しつつ高圧縮
化を図るようにしたものである。

従来のこの種構造のエンジンは、特開昭54−
91608号公報にみられるように、燃焼凹部（同公
報中においていう部分燃焼室）を、その中心線が
シリンダ中心線と平行となり、底面がピストン頂
面と平行となる断面円形に形成し、その底面に吸
気弁の弁孔を設けていたが、この形状によると次
ような欠点があつた。すなわち、上記燃焼凹部を
その全体にわたつて一定断面の円孔状とすると、
その底壁の弁孔に装備した弁が開くときに弁と燃
焼凹部内周面との間隙が非常に狭くなり、吸気が
絞られるため、絞り損失により出力および燃費が
阻害されることとなる。そこで、上記公報に示さ
れた構造では、上記燃焼凹部の中間部を膨出させ
て絞り損失を避けるようにしているが、これでは
燃焼凹部の加工が複雑化し、コストアツプになる
と共に、燃焼凹部のコンパクト化を阻害する。ま
た、かかる構造では、吸，排気ポート間の肉厚が
薄くなるため、各ポートまわりへの冷却水通路の
配設が困難になり、各ポートに対する冷却効果が
損なわれる。さらに、シリンダヘツド部の平面部
と直角に燃焼凹部が形成されているため、スキツ
シユ流が燃焼凹部にスムーズに導入されにくく、
スキツシユ流が燃焼凹部に入り込む際乱流を生じ
て燃焼効率を低下させていた。

また、この種の燃焼室構造において燃焼性をよ
り一層高めるためには、燃焼室内に吸気スワール
を生じさせることが望ましいが、上記公報に示さ
れた構造では、燃焼凹部の底壁に開口した吸気弁
孔から吸気がシリンダ軸方向（シリンダヘツド面
に垂直な方向）に流入するため、吸気スワールを
発生させることが難しいという問題も残されてい
た。

本考案はこれらの事情に鑑み、この種タイプの
エンジンにおいて従来構造による欠点を解消する
もので、燃焼凹部の加工を容易にしながら、燃焼
凹部の弁孔に装備した弁の絞り損失を軽減し、か
つ、吸，排気ポート間に、弁孔近くまで冷却水通
路を配設するに必要なスペースを確保し得て冷却
効果も高めることができ、また、圧縮行程で上記
燃焼凹部にスキツシユ流をスムーズに導入し得、
その上、この種のコンパクト化された燃焼室構造
において従来では困難であつた充分な吸気スワー
ルの発生を可能にして燃焼効率も格段に高められ
るエンジンの燃焼室構造を提供するものである。

以下、本考案を図に示す実施例に基づいて説明
する。

図において、１はシリンダブロツク、２はシリ
ンダブロツク１のシリンダ孔１ａに嵌入したピス
トン、３はシリンダヘツドであつて、ピストンの
頂面２ａと、シリンダ孔１ａの内周面と、シリン
ダヘツド３のシリンダ孔１ａに面するシリンダヘ
ツド部とで燃焼室が形成される。この燃焼室の一
部を形成するシリンダヘツド部に、ヘツド部面積
の50％以上を占める平面部４と、燃焼凹部５とが
設けられている。そして、上記平面部４に排気弁
６の弁孔７が形成され、上記燃焼凹部５に吸気弁
８の弁孔９が形成されており、各弁孔７，９は排
気ポート７′および吸気ポート９′にそれぞれ連通
している。

上記燃焼凹部５の底壁５ａは、シリンダ半径方
向の外方に向かうに従つてピストン２頂面に近付
き、かつ、その延長線がシリンダ孔１ａの外周縁
近傍においてシリンダヘツド面と交叉するように
傾斜し、一方、該底壁５ａを取囲む燃焼凹部５の
側壁５ｂは、該底壁５ａと90゜以上の角度で交叉
するようにシリンダヘツド面に対して傾斜してい
る。つまり、上記燃焼凹部５は、シリンダヘツド
の下端の前記平面部４に沿つたシリンダヘツド面
に対し、シリンダ内方部所定位置で最も深く上方
に凹陥し、この位置からシリンダ孔１ａの上端周
辺部の所定箇所までにわたり燃焼凹部５がしだい
に浅くなるように底壁５ａを傾斜させて形成する
と共に、側壁５ｂを前記平面部４から鈍角に立ち
上がらせて底壁５ａに90゜以上の角度で交わるよ
うに形成する。こうして、第１図に示す断面でみ
て略三角形に燃焼凹部５が形成されている。

上記燃焼凹部５の底壁５ａと側壁５ｂの形成範
囲およびこれらの傾斜角度は、要求される圧縮率
に応じた燃焼凹部５の容積が得られるように定め
られる。また、燃焼凹部５の底壁５ａが上記のよ
うに傾斜していることに対応して、上記底壁５ａ
に開口した弁孔９に連らなる吸気ポート９′下流
部のシリンダヘツド面に対する角度が小さくな
る。この点を有効に利用して吸気時に燃焼室内で
効果的にスワールを発生させるため、第２図に示
すように、燃焼凹部５の底壁５ａに設けられる吸
気弁８の弁孔９の開口方向をシリンダ中心に対し
てオフセツトし、この方向に対応させて上記底壁
５ａを所定範囲にわたり形成し、かつ、この底壁
５ａのシリンダ周辺に近い位置に上記弁孔９を設
けている。

燃焼凹部５の底壁５ａに設けられた弁孔９に
は、弁軸８が上記底壁５ａと直交するように吸気
弁８が装備され、また、前記平面部４に設けられ
た弁孔７には、弁軸６ａが平面部４に直交するよ
うに排気弁６が装備されている。１０，１１は上
記各弁孔８，９に装着されたバルブシートであ
る。また、１２は点火栓で、燃焼凹部５に臨ま
せ、望ましくは燃焼凹部５のマス中心に臨ませて
設けられる。

吸，排気ポート９′，７′のまわりには冷却水通
路１３が設けられる。この場合、燃焼凹部５の側
壁５ｂが、前記平面部４から立ち上がるにつれて
排気ポート７′からしだいに遠ざかるように傾斜
しているため、吸，排気ポート９′，７′間のブリ
ツジ部分にも、各弁孔９，７の近くまで冷却水通
路１３を形成することが容易に可能となる。

次に、エンジン作動中のこの燃焼室構造による
作用を説明する。

まず、吸気行程においては、前記吸気弁８が作
動して燃焼凹部５の底壁５ａに設けられた弁孔９
が開かれ、吸気ポート９′からシリンダ孔１ａ内
に混合気が吸入される。この際、上記底壁５ａが
傾斜し、これと直交する方向に沿つて吸気弁８が
シリンダ孔１ａの斜め内方に向けて移動すること
により、その移動に伴つて吸気弁８がシリンダ孔
１ａの周壁からしだいに離間する。従つて、吸気
弁８とシリンダ孔周壁との間での絞り損失が小さ
く、スムーズに混合気がシリンダ孔１ａ内に流入
し得て充填効率の悪化が防止される。また、吸気
弁８の弁孔９をシリンダ中心に対してオフセツト
した状態で燃焼凹部５の底壁５ａに設けた場合、
上記底壁５ａの傾斜によつて吸気ポート９′のシ
リンダヘツド面に対する角度を小さくし得るた
め、吸気流によるシリンダ孔１ａ内のスワールが
強化され、燃焼効率の向上に寄与する。

また、圧縮行程においては、ピストン２が上死
点に達したとき、第１図に示すようにピストン２
の頂面２ａと前記平面部４とが微細な間隙をもつ
て対面し、この間隙からスキツシユ流が前記燃焼
凹部５に流入し、該燃焼凹部５で混合気が高圧縮
される。そして、点火栓１２により着火されて混
合気が燃焼する。この際、燃焼凹部５の側壁５ｂ
および底壁５ａが前述のように傾斜しているた
め、スキツシユ流が燃焼凹部５にスムーズに導入
されて乱流が少なくなり、乱流によるヒートロス
が軽減され、燃焼効率が向上される。さらに、点
火栓１２を燃焼凹部５のマス中心に臨ませておけ
ば、燃焼凹部５の全体にわたつて速かに火が拡が
り、燃焼効率の向上およびノツキングの防止に一
層効果的である。

以上説明したように、本考案のエンジンの燃焼
室構造によると、シリンダヘツド部に部分的に設
けられた燃焼凹部の底壁を、半径方向外方に向か
うに従つてピストン頂面に近づき、かつ、その延
長線がシリンダ外周縁近傍においてシリンダヘツ
ド面と交叉するように傾斜させる一方、該底壁を
取囲む側壁を該底壁と90゜以上の角度で交叉する
ようにシリンダヘツド面に対して傾斜させてある
ため、従来のこの種燃焼凹部を備えた構造と比
べ、燃焼凹部の加工が簡単で、かつ、コンパクト
に燃焼凹部を形成し得、しかも、機能的にも優れ
ている。とくに、燃焼凹部の底壁に設けられた吸
気弁の開弁時の絞り損失を小さくし得、また、圧
縮行程における燃焼凹部へのスキツシユ流の導入
をスムーズにして燃焼効率を高め、さらに、吸，
排気両ポートへの冷却水通路の配設が容易で冷却
効率も良くすることができる。その上、上記のよ
うに傾斜した燃焼凹部底壁に吸気弁の弁孔を設け
ることにより、燃焼室への吸気流入方向をシリン
ダヘツド面の方向に近付けるように傾斜させると
ともに、上記吸気弁の弁孔の開口方向をシリンダ
中心に対してオフセツトさせているため、燃焼室
をコンパクト化しつつ吸気スワールも効果的に発
生させ、燃焼性をより一層高めることができる。
このように種々の優れた効果を奏するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の燃焼室構造の実施例を示す要
部の断面図、第２図は第１図の−線から見た
シリンダヘツド部の底面図である。 １……シリンダブロツク、１ａ……シリンダ
孔、３……シリンダヘツド、４……平面部、５…
…燃焼凹部、５ａ……燃焼凹部底壁、５ｂ……燃
焼凹部側壁、７，９……弁孔、１２……点火栓。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 燃焼室の一部を形成するシリンダヘツド部に、
   ヘツド部面積の50％以上を占める平面部と、燃焼
   凹部とを備え、上記平面部に排気弁の弁孔を形成
   し、上記燃焼凹部の底壁に吸気弁の弁孔を形成す
   ると共に該燃焼凹部に点火栓を臨ませ、かつ、ピ
   ストン頂面を上記平面部と平行な平面としたエン
   ジンにおいて、上記燃焼凹部の底壁を、半径方向
   外方に向かうに従つてピストン頂面に近付き、か
   つ、その延長線がシリンダ外周縁近傍においてシ
   リンダヘツド面と交叉するように傾斜させる一
   方、該底壁を取囲む側壁を該底壁90゜以上の角度
   で交叉するようにシリンダヘツド面に対して傾斜
   させ、さらに上記吸気弁の弁孔の開口方向をシリ
   ンダ中心に対してオフセツトさせ、かつ、吸気弁
   の移動方向をシリンダ軸に対し斜め内方としたこ
   とを特徴とするエンジンの燃焼室構造。