JPH0469098B2 - - Google Patents

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JPH0469098B2
JPH0469098B2 JP296685A JP296685A JPH0469098B2 JP H0469098 B2 JPH0469098 B2 JP H0469098B2 JP 296685 A JP296685 A JP 296685A JP 296685 A JP296685 A JP 296685A JP H0469098 B2 JPH0469098 B2 JP H0469098B2
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JP
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fibers
pva
asbestos
hydraulic
denier
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JP296685A
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JPS61163150A (ja
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Tsuneo Genma
Akio Mizobe
Masaki Okazaki
Isao Sakuragi
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Publication date
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Publication of JPH0469098B2 publication Critical patent/JPH0469098B2/ja
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B16/00Use of organic materials as fillers, e.g. pigments, for mortars, concrete or artificial stone; Treatment of organic materials specially adapted to enhance their filling properties in mortars, concrete or artificial stone
    • C04B16/04Macromolecular compounds
    • C04B16/06Macromolecular compounds fibrous

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  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Ceramic Engineering (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Structural Engineering (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Curing Cements, Concrete, And Artificial Stone (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
A 本発明の技術分野 本発明は、極細で強度が高く、耐水性のすぐれ
た扁平なポリビニルアルコール系繊維を用いた、
石綿を使用しなくても本質的に機械的性能のすぐ
れた水硬性無機質抄造製品と、そのような抄造製
品を得るための製造方法に関するものである。 B 従来技術とその問題点 ポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)
系極細繊維製造の試みはこれまでになされてき
た。 例えば特公昭47−31376号公報記載の方法は、
完全ケン化PVAと低ケン化PVAを常法により混
合紡糸し、延伸熱処理した通常デニールの繊維を
叩解によりフイブリル状の極細とした製紙用繊維
を得んとするものである。この方法は大きな側鎖
を有する部分ケン化PVAを使用するために延伸
しにくく、かつ結晶化が著しく阻害される。従つ
て叩解前においてすらも強度が低くく、耐水性も
低いが、さらに機械的な叩解により非晶中の分子
及び結晶の配向が乱されたり結晶が破壊されるた
めに、その傾向はいつそう助長されることにな
る。 また特開昭54−77720号公報にも極細繊維の製
造方法が開示されている。これも、高ケン化
PVAと低ケン化PVAを混合紡糸する方法で、得
られた通常デニールの繊維より低ケン化PVAを
水洗により溶解除去し、1/数10〜1/数100デ
ニールの極細繊維を得んとするものである。この
製造法と前者製造法との差は通常デニールを極細
デニールにする手段が、叩解という機械的な力を
借りて低ケン化PVAを溶出させつつフイブリル
化するか、水洗により著しく膨潤させて洗い出す
かの差であり、低強度で耐水性が低いという繊維
物性には変りない。 また特公昭58−38526号公報に記載の方法も同
様で、部分ケン化PVAとして低重合度PVAを使
用することに特徴があるが、得られる繊維物性は
同様で低強力、低耐水性である。この特許公報の
実施例にはPVA系の極細フイブリルが例示され
ているが、水洗前の通常デニール繊維においても
わずか3.4g/drと記載されている。 更に、特開昭54−30930号公報に記載の方法は、
低ケン化PVAのかわりに非晶性の水溶性高分子
を使用するものであるが、基本的には同様であ
る。 いづれにしても公知の極細PVA繊維は、強度
成分となる結晶性PVAに低結晶性で水への易溶
性高分子を混合紡糸した通常デニールのPVA繊
維から何等かの方法で易溶解性成分を溶出除去し
つつ極細化する方法であり、得られる繊維はいづ
れも強度、耐水性が低いことに加えて溶解除去す
る工程が必要なこと、溶解除去成分が損失となる
こと等のために高価なものとなる。 以上の如く高強度、高耐水性のPVA系極細繊
維は今まで知られていないが、加えて扁平である
該PVA系繊維は想像だに出来ないものであつた
といつても過言ではない、何故ならば、湿式紡糸
によるPVA系繊維の歴史は、高強力、高耐水性
の繊維を得るためにいかに断面の円形性を上げて
均質化をはるかにあつたからである。PVA系繊
維の湿式法による最初の工業的製造方法は、通常
のPVA水溶液を高濃度芒硝浴で紡糸する方法で
あり、現在においても操業生産品の大部分はこの
方法によつている。かかる方法によるPVA系繊
維は、断面充実度が50%程度のスキン層とコアー
層を有する不均一構造であつて、強度は、高い場
合でも8g/dr程度であり、通常5〜7g/drで
ある。 かかる扁平で不均一な断面を円形に近づけて高
強力を得ようとした最初の試みは凝固浴を濃厚ア
ルカリにすることであつた(繊維学会誌昭和37年
18巻183頁)。本方法によれば、断面充実度は70%
を越えて、スキン、コアのない均一構造となり、
強度も延伸倍率を高めることにより10g/dr以上
を得ることが可能となつた。更には、原液中へ硼
酸を添加したPVA原液をアルカリ性凝固浴中へ
紡糸する方法が発明され(特公昭47−61685号、
同46−11456)、断面充実度は70%以上、強度も11
g/dr以上と改善された。その他にも種々の方法
が開示されているが、いづれも、高強力、高耐水
性を得る手段として繊維の断面充実度を上げる方
法がとられたか、あるいは高強力なPVA系繊維
を得ようとして結果として断面充実度が上がつた
かである。かかる歴史的流れのなかで極細、扁平
で高強力、高耐水性のPVA系繊維が知られよう
はずがない。 一方かくの如き極細、扁平で性能のすぐれた安
価なPVA系繊維のニーズが高まつている。その
典型的な例がセメント硬化体のような脆性物質や
プラスチツクのような低強力塑性物質の補強分野
である。 補強硬化は、基本的には繊維の強度が高いこと
が重要であるが、加えて、マトリツクスとの接着
力も大きな因子である。繊維を細くし、扁平化す
ることは、マトリツクスとの接触面積を著しく増
加させることになり、従つて接着力が大きく向上
し、補強硬化を高めることになる。さらに成形の
際の工程通過性を著しく改善する。 マトリツクスが水硬性物質の場合は特に耐水性
も重要である。即ち成形中や凝結過程で比較的高
温水にさらされるので、繊維が膨潤しその結果強
度が著しく低下するようなことがあつてはならな
い。かくの如き要求特性は公知のPVA系極細繊
維では、とうてい満し得ない。 セメント等の水硬性脆性無機物質を繊維で補強
した製品の代表例に石綿スレート板があり、該ス
レート板は、繊維質の石綿とセメントのような水
硬性物質とを主成分とする複合体である。 その主たる製造方法は、石綿等の繊維成分とセ
メント等の水硬性結合成分を他の添加剤と共に5
〜30重量%の水分散液(抄造スラリー)とした
後、これを丸網又は長網上に抄き上げ、脱水後成
型、硬化、乾燥して製品とする湿式抄造法がとら
れている。この方法は簡単な設備で生産性が高
く、高強度の安価な不燃材を提供するものであ
り、かかる製品は建築材料として幅広い分野で多
量に使用されている。 かかる水硬性無機質抄造製品での石綿の役割
は、 (1) 抄造工程における高生産性付与硬化 (a) 併用される繊維質の均一な分散性の付与 (b) 水硬性物質を主とする粒子状物質の補捉と
適当な水性の付与 (c) メーキングロールや成型ロールでの層間剥
離や、水割れ現象の防止 (d) 表面平滑性、プレス成型時の型付け性の付
与 (e) グリーンシートの強力向上(取扱性の向
上) (2) 製品物性の確保(水硬性物質の補強) (a) 曲げ、引張り、衝撃強度等の機械的物性の
向上。 (b) 寸法安定性の付与 (c) 耐ひび割性、耐久性の向上 と言われている。さらに例えば不燃性を損わない
等水硬性物質の本来有している特長をほとんど低
上させることがない。加えて非常に高価な物質で
ある。 かくの如く無機質抄造製品における石綿の役割
は極めて重要であり、すぐれた物性を有する安価
な該製品は石綿の存在なしにはあり得ないとまで
言われる所以である。 石綿のかかるすぐれた特性は、石綿がフイブリ
ル状物質であること、水硬性物質との親和性に富
むこと、高強力、高ヤング率であること、無機繊
維であること、保水性が高いこと等に起因する。
一方石綿は、該石綿を含有する製品を製造する時
及び加工、施工する時に空気中にその粉塵を発生
する。近年石綿の微細な粉塵が人体に吸引される
と、肺がん等を引き起こす可能性が指摘され、そ
の使用はしだいに法規制等により制限されはじ
め、使用禁止の方向へ向う気配すらある。さらに
石綿産出国が特定国に偏在しており、又資源枯渇
の問題もある。かかる状況下で、多量に石綿を含
む水硬性無機質抄造製品にかわつて石綿を全く含
まずに石綿使用時と同等の高生産性と高性能を有
する水硬性無機質抄造製品の提供が強く望まれ
る。 従来から石綿を他の物質で代替することにより
湿式抄造法で製品を作る試みがなされてきたが充
分ではなく、ごく限定的な用途に使用されている
のである。その理由は、既述の如き石綿のすぐれ
た特性を有する代替物質が存在しないことによ
る。 水硬性物質等の捕捉性を高めるには、繊維が、
石綿繊維束と同様に細いという物理的要件に加え
て、水硬性物質と親和性が強いという化学的要件
が必要である。石綿は、0.02〜0.03μの微細なフ
イブリル状物質が集束してなる繊維束でありその
太さは、解綿程度により異なるが、0.5〜数μと
いわれている。しかしその集束は完全なものでは
なく、フイブリル状のヒゲが出ている繊維束とな
つているので、水硬性物質の捕捉に非常に好都合
に出来ている。従つて代替物は、単に石綿繊維束
と同程度の太さであればよいということにはなら
ない。 また補強性を高める繊維自体の引張り強度が高
いこと、硬化後の水硬性物質との接着力にすぐれ
ていること即ち水硬性物質との親和性のよいこと
及び繊維が出来るだけ細いこと、ひび割れ拘束性
を高めるために繊維間の間隔が出来るだけ小さい
こと即ち細いこと、繊維の物性が成形過程や使用
中に変化しないこと等が必要である。さらに表面
性、プレス時の型つけ性の点では、繊維の分散性
が良好なること、細いこと、しなやかなこと(同
じ物性なら細い方がしなやか)である必要があ
る。 従つて石綿を代替する繊維の具備すべき条件
は、繊維が出来るだけ細く、表面積大で強度が高
く、耐水性、耐久性にすぐれていて、水硬性物質
との親和性、接着性にすぐれ、分散性が良いこと
ということになる。 水硬性物質の捕捉性という観点から天然パルプ
がよく検討されている。この場合叩解を高度にす
すめることにより、セメント等の水硬性物質の捕
捉性は向上するが、それでも石綿には及ばない。
一方、補強効果という点では、もともと強度の低
いパルプが叩解により著しく損傷を受けるために
ほとんど効果がない。さらには硬化体中で劣化す
ることがよく知られている。合成パルプも石綿代
替としての検討がなされている。例えばポリエチ
レン系のSWP(三井ゼフパツク製)がそうである
が、水硬性物質の捕捉性という点では、フイブリ
ル状で石綿に似ている点はあるが、疎水性という
こともあつて石綿より劣り、不満足である。さら
に補強性という点では、補強に必要な強度が低い
ことに加えて、SWP自身が疎水性のために水硬
性物質との接着が悪く補強効果を有しない。さら
に抄造スラリー工程で合成パルプ自身がフロツク
を形成して抄造性を低下させたり、製品の外観品
位を損なう結果となる。 またアラミドパルプも石綿代替として話題にな
つているが、ブレーキシユー等の他の分野ならと
もかく、少なくとも石綿スレート板で代表される
水硬性無機質抄造製品における石綿代替にはなり
得ない。即ち水硬性物質の捕捉性はフイブリル状
であるという点で石綿に似てはいるが、疎水性と
いうこともあつて石綿より劣り充分でない。補強
性という点では、ポリエチレン系パルプと同様疎
水性のために水硬性物質との親和性に乏しく、接
着が悪く、そのために水硬性無機質抄造製品の破
断に際しアラミドパルプの引抜けが起こり、本来
有している高強度が全く利用されていない結果と
なり、補強効果がほとんど発揮されない。また非
常に高価であることも難点である。 一方、補強効果ということを力点において耐ア
ルカリガラスがよく検討されているが、耐アルカ
リガラスと言えども耐久性には問題があり、加え
て太い繊維なので水硬性物質の捕捉性はほとんど
ない。 高強力な繊維としてカーボン繊維、アラミド繊
維が検討されているが、繊維自体の強度は高いも
のの水硬性物質との接着性が悪く補強性に乏し
い。またガラス繊維と同様、水硬性物質の捕捉性
はないし加えて非常に高価である。 アクリル系繊維の検討もなされている。例えば
特開昭51−20222号公報によると、湿式紡糸され
たアクリル系繊維は、表面のヒダが多いためにセ
メントとの接着性にすぐれており、破断に際し繊
維の切断が起こり、補強効果が高いとしている。
しかし繊維の強度自体が低いために繊維が切れて
も大きな補強効果は期待できないし、さらにセメ
ントの捕捉性もない。 また英国特許第2075076号公報によれば、太さ
が0.1〜1dtex(0.09〜0.9dr)、強度20〜80CN/tex
(2.3〜6.8g/dr)のアクリル系繊維が水硬性物
質の捕捉性、補強性という点ですぐれており、石
綿代替となり得るとしている。しかしながら水硬
性物質の捕捉性は、繊維の形状のみに支配される
ものではなく、水硬性物質との親和性も重要な因
子である。アクリル系繊維は、本来疎水性である
ので石綿に比べて親和性はかなり劣り、従つて捕
捉性も劣る。さらに重要なことは、該英国特許の
表1に記述の如く、繊維自身の強度が石綿に比べ
て著しく小さく、従つて補強効果がかなり劣るこ
とは心至である。また、該英国特許で注目すべき
ことは、PVA系極細繊維についての記述である。
既述の如く、公知の極細デニールPVA系繊維は
全て強度が低く、耐水性が低いが、該英国特許に
は一頁44〜52行に「PVA系繊維の場合1dex
(0.9dr)以下のものは耐水性が低く、セメントサ
スペンジヨン(スラリー)中で部分的に溶解し、
補強効果がない」と記載されている。 以上の述べた如くすぐれた特性を有する石綿を
代替する満足な繊維は存在しないのが現状であ
る。 C 本発明の目的 石綿代替における代表的な例として、極細、扁
平で高強度、高耐水性のPVA系繊維が望まれて
おり、又石綿をとりまくきびしい環境の中で石綿
なしの水硬性無機質湿式抄造製品の出現が望まれ
ている。 かかる状況下で本発明の目的は、従来の抄造法
によつて石綿なしで容易な生産が可能でかつ得ら
れた製品の引張り、曲げ強度、衝撃強度等の機械
的な性能にすぐれ、かつ外観品位のよい、耐ひび
われ性、耐久性のすぐれた画期的な無石綿水硬性
無機質抄造製品及びその製造方法を提供せんとす
るものである。 D 本発明の構成 まず本発明に用いられるPVA系極細繊維及び
その製造方法について述べる。 本発明に用いられる性能のすぐれたPVA系極
細繊維は、公知の高価な溶解除去法によるもので
はなく、通常の紡糸方法にても、特定の条件を採
用することにより製造可能である。 即ち本発明に用いられる単繊維デニールが0.05
〜0.5drであり引張り強度が9.0g/dr以上で水中
軟化点105℃以上断面充実度が70%以下を満足す
るPVA系繊維であり、かかるPVA系繊維は、特
定な条件下でなされる湿式紡糸において得られる
ものであり、以下に詳細を説明する。 まず、使用するPVAは、平均重合度が1200〜
3000、ケン化度が96%以上(後述のアルカリ性凝
固浴中でほぼケン化される程度のケン化度以上)
のものであり、該PVAに対して0.5〜5重量%の
硼酸もしくは硼酸塩と、溶解後の原液PHが5以下
になるような量の酸等と共に、常法により水に溶
解し、8〜14重量%の比較的うすい溶液とし、紡
糸原液とする。濃度が8%未満では紡糸不能とな
り、また14%を越えると金板調子が著しく悪化す
る上に断面の扁平な繊維が得られない。 該紡糸原液を、単孔直径が0.02〜0.04mmの細孔
径口金よりバスドラフト1〜−60%の範囲内でア
ルカリ性高濃度塩類浴へ吐出させ曳糸する。バス
ドラフトとは次式で定義されるものである。 バスドラフト%=離浴速度−吐出速度/吐出速度×10
0 なお上記離浴速度は第1ローラー速度のことで
ある。湿式紡糸用口金の孔径は、溶融紡糸、乾式
紡糸のそれに比し一般に小さいが、PVA系繊維
の湿式紡糸の場合は、これまでの常識では0.05mm
が最低とされており、それ以下では紡糸調子が著
しく不安定となる。本発明者等は、極細繊維を得
るには口金孔径をさらに小さくすることが必要で
あると考え、紡糸調子向上方法について種々の検
討を行つた。その結果、原液の過を高度に行つ
て異物をなくすことも必要であるが、それ以上に
バスドラフトを10〜−60%にすることが安定な紡
糸を確保する上で非常に重要であることを見い出
した。しかしながら孔径が0.02mm以下ではやや不
安定であつた。凝固浴組成も紡糸調子及び単繊維
断面の扁平化に重要な影響を及ぼすもので、アル
カリ性高濃度塩類浴でなければならない。アルカ
リ性高濃度塩類浴とは、100g/以下、1g/
以上の苛性アルカリを含む250g/以上飽和
までの塩類溶液を意味し、塩としては芒硝、硫安
が好ましく用いられる。苛性アルカリが、1g/
未満であれば紡糸調子が悪化しまた100g/
を越えると断面が円形に近づき、断面充実度が70
%を越えるし、紡糸調子もあまりよくない。塩類
の濃度が250g/未満であると紡糸調子が悪く、
単繊維の膠着が起こり、好ましくない。 断面充実度は後述の如く70%を越えると特に湿
式抄造工程におけるセメントの捕捉性が悪化し好
ましくない。更にマイクロフイルター等に使用す
る場合は捕捉効率が低下する。また繊維のしなや
かさも、断面充実度が70%を越えると急速に低下
するので柔軟性を求められる用途では好ましくな
い。本発明での繊維の断面充実度とは、以下の如
くして得られるものを意味する。3×3×10mm位
のコルクの直方体を作り、中央に切込みを入れ、
その中に繊維束を挿入し、次に安全カミソリの刃
にて0.1〜0.3mm位の厚さに切断する。その薄片を
顕微鏡を用い、写真撮影し、約100mm2に拡大描写
し、各々の断面積Fを求める。次に描写断面中最
も広い幅Bをもつて直径として円を描き、この円
の面積を求め、次の式により断面の充実度を算出
する。 断面充実度=4F/B2π×100(%) 次に吐出量は、デニールが0.05〜0.5drになる
ように調整する。0.05dr以下では繊維が細すぎて
紡糸筒内で切れたりして安定な生産が出来ない
し、また使用面からも、例えばセメント、プラス
チツクの補強や製紙用を考慮した場合、分散上の
問題より1mm以下に切断する必要があるが、その
ような切断は、工業的に不可能であり意味がな
い。また0.5drを越えては期待する細デニールの
効果が充分でない。 かかる紡糸後の繊維は、ローラー延伸後中和
し、引続いて残存硼酸が0.1〜0.6%/PVAになる
ように水洗し、芒硝浴中で湿熱延伸するか、また
はローラー延伸後中和し、湿熱延伸して残存硼酸
を0.1〜0.6%/PVAとなす。残存硼酸が0.6%/
PVAより大では延伸性が著しく阻害され、所望
の強度、耐水性を得ることが出来ない。また0.1
%/PVAより小にするには、厳しい水洗条件を
取らざるを得ず、従つて繊維が著しく膨潤し、品
質の低下を招くことになる。湿潤部の全延伸倍率
は少なくとも3倍は行う。 しかる後に乾燥を行い、引続き全延伸倍率が10
倍以上になるように乾熱延伸をする。さらに必要
に応じ熱収縮、熱処理を行い水中軟化点を105°以
上まで上昇さす。10倍以上の延伸をしないと9.0
g/dr以上の強度が得られない。引張強度が9.0
g/dr以下では、補強用繊維としてはその効果が
充分でなく、また一般的な産業資材としての適性
も欠くことになる。 水中軟化点は、特にセメント等の水硬性物質の
補強用途に用いる場合重要であり105℃より低い
場合には成形工程で膨潤が起こり、本来の強度が
低下し、従つて補強効果が著しく低下することに
なる。また一般的な用途においても水径で後加工
する場合が多く、105℃未満では加工処理後の乾
燥で繊維が膨潤し強度低下をきたしたり、表面が
一部溶解し膠着する等の問題を引き起こす結果と
なる。尚本発明で水中軟化点とは、次の測定法に
よつて求めたものである。 水中軟化点:繊維束デニールが約1000drになる
ように任意に取り出し、引揃えた上で繊維束デニ
ールの1/500gのおもりを一端につけて、目盛板
上におもりより10cmのところに固定する。これを
水のはいつた加圧可能なガラス管に垂直にして水
中に浸漬する。常温より約1分間に1℃の速度で
昇温し、繊維束が10%収縮するか又は溶断する時
の温度。 以上の如き条件の組合せにおいて得られる
PVA系繊維のみがデニールが0.05〜0.5dr、強度
9.0g/dr以上、水中軟化点105℃以上、断面充実
度70%以下のすぐれた物性を有しているものであ
り、加えて本発明によれば従来の湿式製造設備工
程で製造可能で、かつ紡糸調子が非常に良好なた
めに生産性が高く、通常デニールのPVA系繊維
とあまり変らないコストで極細繊維が出来るとい
う大きな特長を有している。 次に本発明の性能のすぐれた石綿を含まない水
硬性無機質抄造製品及びその製造方法について述
べる。 特徴とするところは、石綿代替繊維として高強
度で耐水性のすぐれた扁平な極細PVA系繊維を
使用するところにあり、該PVA系極細繊維は、
種々の特性を有する石綿を完全に代替しうるとい
う画期的な事実を見い出したものである。即ちデ
ニールが0.05〜0.5dr強度9.0g/dr以上、水中軟
化点105℃以上、断面充実度70%以下のPVA系極
細繊維を単に従来の湿式抄造法における石綿のか
わりに使用するのみで、石綿使用時と同等の高生
産性と高性能を有する水硬性無機質抄造製品を得
ることが可能となつたのである。以下詳細に説明
をする。 石綿の最も重要な役割の第1は、水硬性物質等
の粒状物質の捕捉である。石綿は既述の如く0.5
〜数μの繊維束でさらにフイブリル状のヒゲを有
するために物理的に捕捉性にすぐれていることに
加えて、その化学構造より水硬性物質との親和性
が良好なために化学的にも捕捉しやすい物質であ
る。PVA系繊維は本来分子内に水酸基を有して
いるために、化学的にはセメント等の水硬性物質
との親和性にすぐれている。従つてあとは物理的
に捕捉しやすい形態を取りさえすればよいことに
なる。 そこで種々のデニールのサンプルを作成し、湿
式抄造法にて水硬性物質の捕捉性を検討したとこ
ろ、0.05〜0.5dr(円換算の直径として2〜5μ)で
あつて、かつ断面充実度が70%以下の場合のみが
ほぼ石綿並の捕捉性を有することを見い出し、本
発明に到つたものである。石綿束の太さ数μ程度
にPVA系繊維の太さを併せるだけでは石綿束の
ヒゲの部分に相当するものがないために不充分で
あつた。そこでPVA極細繊維の側面を若干でも
フイブリル化されることを試みてみたが、フイブ
リル化するものの、もつれが起つたり、本来有す
る強度、耐水性が低下したために目的を達成出来
なかつた。次に繊維を扁平化することを試みたと
ころ、驚ろくべきことに断面充実度を70%以下に
すると全くパルプを使用せずしてほぼ石綿並の捕
捉性を有することを見い出したものである。 石綿並の捕捉性を有するための必要充分条件
は、PVA系繊維のデニールが0.05〜0.5drである
こと、断面充実度が70%以下であることであつ
て、いづれかの条件がこの範囲をはずれると目的
を達成しえない。 デニールは0.05〜0.5drであるが、好ましくは
0.2dr以下である。なお0.05dr以下は、繊維の製
造がしがたく、仮に製造出来ても分散性という点
から1mm以下に切断する必要があり現時点では工
業的に不可能であまり意味がない。但し、切断技
術が開発されるとおもしろい領域である。 また断面充実度は70%以下が必要であるが、製
造可能なる範囲内で小さければ小さい程よい。 石綿を使用しない湿式抄造製品の抄造はパルプ
を使用することが常識となつてきているが本発明
によれば全くパルプを使用せずして石綿使用時と
同等の抄造性を得ることが可能となつた。 石綿の重要な役割の第2は水硬性物質の補強で
ある。引張り、曲げ強力等の機械的物性を上げる
には繊維が高強力高耐水性であつて、水硬性硬化
体との接着にすぐれていることが不可決である。 接着性という点ではPVA系繊維が有する水酸
基の存在により化学的にすぐれた接着性を有する
が、比表面積を大にして水硬性物質との硬化体の
接触面積を大きくすることも重要である。デニー
ルを小さくしかつ扁平化することは接着面積を著
しく増大し、補強硬化を増す。0.5dr以下、断面
充実度70%以下で、理由はわからないが、両者の
相乗的作用とも思われる程の大きな補強硬化を呈
する。 繊維の強度は、9.0g/dr以上なければ石綿を
代替するに必要な補強効果を上げることはむづか
しい。 さらには耐水性は、製造、加工工程中、あるい
は使用中に物性変化を起こさせないための重要な
物性である。抄造スラリー中で膨潤し、強力低下
を起こしてはならず、また凝結過程での水和熱に
よる温度上昇にも耐えなければならない。そのた
めには少なくとも水中軟化点は105℃以上なけれ
ばならない。 石綿の補強効果で重要なものに耐ひび割れ性が
あるが、無石綿水硬性抄造製品の物性中で最も懸
念されているものである。かかる耐ひび割れ性を
上げるには、繊維の強度、ヤング率、水硬性硬化
体との接着性に加えて、繊維の本数が重要であ
り、かかる特性がいづれも一定値以上なければな
らない。強度9.0g/dr以上、0.05〜0.5dr、断面
充実度70%以下の極細かつ扁平であるPVA系繊
維のみがかかる特性を満足し、石綿と同等のひび
割防止効果を有する。また繊維が細く扁平である
ことが得られる抄造製品表面の平滑性をよくし、
プレス時のかたづけ性をよくする。さらにメーキ
ングロールや成型ロールでの層間剥離や、しわ、
水割れ現象を防止することに寄与している。 以上の如く、強度9.0g/dr以上、水中軟化点
105℃以上、断面充実度70%以下の0.05〜0.5drの
PVA系極細繊維を使用した水硬性無機質抄造製
品は、無石綿でありながら石綿を含んだ製品とほ
ぼ同等の性能を有するものである。かかる水硬性
無機質抄造製品は通常湿式抄造法にて石綿のかわ
りに該PVA系繊維を用いるだけで製造可能であ
る。 即ちPVA系極細繊維と水硬性物質とが濃度5
〜30%になるように水を加えてパルパー等で均一
な分散液(スラリー)にする。 PVA系繊維の添加量は0.5〜5%が好ましく、
より好ましくは1〜2%である、0.5%未満では
添加効果がなく、5%を越えると、分散性が悪化
し、セメント等の捕捉性、補強性は逆に低下し、
表面平滑性を損い層間剥離や水割れ現象を惹起す
ることになる。 またアスペクト比も分散性と補強性との兼合い
で限定されねばならない。100〜1500が好ましく、
より好ましくは300〜800である。100より小さい
と繊維の引抜けが起きて補強効果が小さくなり、
1500を越えると分散不良となり好ましくない。 かかるPVA系繊維と水硬性物質からなるスラ
リーを丸網又は長網に抄き上げ適当な脱水、成
型、硬化、乾燥、必要応じ着色等の加工を経て、
製品を得ることが出来る。 本発明によるPVA系繊維と水硬性物質のみで
充分な工程通過性と物性を有する湿式抄造製品を
得ることが可能であるが、より向上するためにあ
るいは石綿スレート製品よりもすぐれた生産性、
物性を与えるために、必要に応じ他の物質を単独
又は組合せで併用使用することが可能である。 たとえば水硬性物質の歩留りをさらに向上させ
ようと思えば、凝集剤を使用することができる。
添加量は200ppm以下が好適であり、一般的な市
販の凝集剤で充分である。200ppm以上ではフエ
ルト汚れを生じたり、水性がよすぎたりして均
一なグリーンシートを得ることがむづかしい。 水硬性物質の捕捉性PVA系極細繊維の分散性
表面性等の向上をはかるために、パルプを併用す
ることもできる。添加量は、0.2〜5%で、より
好ましくは0.5〜3%である。5%を越えると寸
法安定性が悪化し、又耐久性の懸念がある。さら
に難燃性が低下し嵩比重を上げにくい等の問題を
生ずる。0.2%以下の添加でも構わないが、この
物質による改善効果は期待出来ない。パルプとし
ては、種々の叩解度の天然パルプやポリエレン、
アラミド等の合成パルプを単独あるいは2種以上
を混ぜて使用することが出来る。パルプの効果を
引き出すポイントは、パルプの水分散液にPVA
系繊維を添加することであり、その逆は好ましく
ない。パルプの水硬性物質補促性、PVA系繊維
分散性向上効果は非常に大きく、PVA系極細繊
維との相乗効果があると考えざるを得ない。 平均粒子径1×10-2〜1×10-5mmの無機成形材
を併用することも出来る。該無機成形材の平均粒
子径とは、粒子状の物質の混合、粒子の最大径の
平均を意味し、また繊維状物質の場合はその繊維
長の平均を意味するものである。かかる無機成形
材の効果は種々あるが、いわば調味料的であつて
PVA系極細繊維、水硬性物質その他の添加材と
の微妙な相乗作用により、安定生産への寄与と共
に、物性の向上、商品価値の向上への寄与が大き
い。例えばPVA系極細繊維の分散性、水硬性物
質の捕捉性の向上、過度な水性の付与、抄造フ
リースの積層性向上、メーキングロールでの水わ
れ現象防止、しわや亀裂発生の防止、表面平滑性
の向上、プレス成型時の型つけ性付与効果があ
る。かかる無機成形材の添加量は1〜20%であ
り、より好ましくは2〜8%である。20%を越え
ると、添加量が多すぎて逆に物性を低下せしめ
る。一方、1%未満添加の場合障害はないが、こ
の物質が発揮する効果は期待できない。平滑粒子
径は1×10-2〜1×10-5mmが好ましい。1×10-2
mm以上では添加効果がなく、また1×10-5mm以下
では抄造時のシリンダーの目を詰めて好ましくな
く、又経済的でもない。 無機質成型材の種類は天然の石灰石粉、重質炭
カル、または合成して得られる軽微性炭カル、極
微細炭カルと呼ばれる炭酸カルシウムから選ばれ
るもの、その他塩基性炭酸マグネシウムドロマイ
ドなど炭酸塩からなる粉末を用いることができ
る。更に粘土鉱物で代表される珪酸塩化合物例え
ば天然のカオリン、クレー、ボールクレー、ろう
石クレー、パイロフイライト、ベントナイト、モ
ンモリロナイト、ノントロナイト、サポメイト、
セリサイト、ゼオライト、ネフエリンシナイト、
タルク等の板状又は薄板状のもの更にアタパルジ
ヤイト、セピオライト、ワラストナイト等の繊維
状又は針状のものを用いることができる。また合
成品として、合成珪酸アルミ、合成珪酸カルシウ
ムも用いることができる。珪酸としては天然品の
珪藻土、珪石粉等がある。また合成品としては、
含水微粉珪酸、無水微粉珪酸、ホワイトカーボン
と呼ばれるもの、工業用副生物あるいは廃棄物と
してシリカダスト、シリカフユーム、フライアツ
シユも用いることができる。 雲母も5〜30%の範囲で併用使用できる。雲母
は、PVA系極細繊維の分散性を向上させると共
に、極細繊維との相乗効果により、水硬性物質等
の粒状物質の捕捉性を向上させると共に、バツト
水位が適当に保れた、均一なグリーンシートが出
来る。さらに製品の寸法安定性、耐ひび割性の向
上、火災時に加熱された時のひび割れ防止効果を
有する。添加率は5〜30%で、より好ましくは8
〜15%である。5%未満の添加でも構わないが、
雲母の添加効果がほとんど期待できない。30%を
越えるとクリーンシートに可撓性がなくなり、
種々の弊害をきたす。雲母はアスペクト比が20
(フレークの直径/フレークの厚さ)以上で粒子
直径が30〜5000μmで板状形態を有していれば化
学組成、結晶形、産地、粉砕法等により何等制限
を受けるものではない。例えば白雲母、金雲母、
黒雲母、鱗雲母、ソーダ雲母、合成雲母類等から
適宜選択される。 0.5〜10%の人造無機繊維も併用使用できる。
かかる物質は、PVA系極細繊維あるいは他の添
加材と相乗して、水硬性粒子状物質等の抄造スラ
リー中の固形分の捕捉性を向上させる。またグリ
ーンシートに適度の硬さを付与し、製品が加熱さ
れた時に発生するひび割れ防止効果にも寄与す
る。0.5%以下では効果はなく、10%を越えると
グリーンシートが硬くなりすぎて沿形性に欠け、
メーキングロールよりシートを展開する時にひび
がはいつたり、型つけ性が悪化し好ましくない。
人造無機繊維は、いわゆる人造の無機繊維であれ
ばなんでもよく、例えばガラス系繊維、シラス繊
維、スラグウール、ロツクウール、セラミツク繊
維等がある。 10%以下の2価又は3価の金属水酸化物も併合
使用可能である。該金属水酸化物は、製品が加熱
された際の有機物の燃焼による発熱を吸収する効
果があり、10%以下で用いることが出来る。10%
を越えると製品物性が低下する等好ましくない、
2価又は3価の金属水酸化物の典型的な例とし
て、アルミニウム、鉄、マグネシウム、亜鉛の水
酸化物がある。該水酸化物の粒子は微細な程好ま
しく、特に原料スラリー中でコロイド状態で存在
する場合がよい。 本発明に使用する水硬性無機物は、例えば普通
ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメ
ント、超早強ポルトランドセメント、白色ポルト
ランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント
等のポルトランドセメントや高炉セメント、シリ
カセメント、フライアツシユセメント等の混合セ
メント、アルミナセメント、超速硬セメント、コ
ロイドセメント、油井セメント等の特殊セメント
がある。さらに半水セツコウ、水和セツコウとス
ラグとの混合水硬物、マグネシア等であるが、こ
れに限定されるものではなく、水硬性無機質であ
れば何れでもよい。 その他一般的な充填材を使用できる。例えば軽
量化材としての中空パーライト、シラスバレーン
や膨脹性の混和剤等である。 また他の補強繊維との組合せも可能である。特
に耐火性を要求される場合は、耐アルカリガラ
ス、カーボン繊維、セラミツク繊維等の無機繊維
との組合せが有効である。通常デニールのPVA
系繊維、アクリル繊維、ポリアミド、アラミド系
繊維の併用も可能であり、また特に耐衝撃性を向
上させるにはポリオレフイン、ポリアミド系繊維
の組合せが有効である。 以下実施例をもつて説明する。 実施例1〜2、比較例1〜2 重合度1750、ケン化度99.0モル%のPVAを、
硼酸、酢酸をPVAに対してそれぞれ1.5、0.3重量
%の量で加えて共に溶解し、13重量%(粘度90℃
で8ポイズ、PH4.5)の水溶液として紡糸原液と
した。 この紡糸原液を、孔直径0.03mm、孔数10000の
口金よりカ性ソーダ50g/、芒硝300g/の
凝固浴中へ吐出させ糸篠を形成せしめた。この時
の吐出量を変更して、バスドラフトを−10%(実
施例1)、−40%(実施例2)、+20%(比較例1)、
−70%(比較例2)とした。離浴速度10m/分と
し、ローラー間で2.5倍に延伸し中和後1.8倍の湿
熱延伸を施した後、残存硼酸が0.3%/PVAにな
るように水洗し、さらに集束処理を行なつて全延
伸倍率を12.6倍とし、2%の熱収縮を施した。紡
糸調子は10錘で8時間連続紡糸を行い、判断し
た。品質測定結果を含めて表−1に示した。 実施例3、比較例3〜4 重合度1650、ケン化度99.9モル%のPVAを硼
酸、酢酸をPVAに対してそれぞれ2.0、0.3重量%
の量で加えて共に溶解し、濃度を11重量%(実施
例3)7重量%(比較例3)、16重量%(比較例
4)の各水溶液(PHはいずれも4.5)を作成し、
紡糸原液とした。該原液を、孔直径0.03mm、孔数
10000の口金を用い、カ性ソーダ20g/、芒硝
350g/の凝固浴へ吐出させて糸篠を形成せし
めた。バスドラフトは−40%とし、離浴速度は10
m/分とした。この紡糸繊維を2倍にローラー延
伸し、中和後水洗して残存する硼酸を0.4%/
PVAとし、芒硝浴で処理し、延伸倍率を4.5倍の
湿熱延伸を施した。さらに乾燥後乾燥延伸をして
全延伸倍率を12.5倍とした。但し12.5倍の延伸が
できないものは、切断延伸倍率を求めてその8割
の倍率とした。引続き2%の熱収縮を施し、芒硝
洗滌、オイリング、乾燥後、品質を測定した。そ
の結果を表−2に示した。 実施例4〜6、比較例5〜6 実施例2において、凝固浴のカ性ソーダ、芒硝
の濃度をそれぞれ70g/、270g/(実施例
4)、30g/、300g/(実施例5)、10g/
、330g/(実施例6)、110g/、230g/
(比較例5)、70g/、230g/(比較例
6)とした以外は全く実施例2と同条件で試験を
行つた結果を表−3にまとめた。
【表】
【表】
【表】 以上、実施例はすべて紡糸調子良好で、断面充
実度70%以下の高強力、高耐水性の極細繊維が得
られるのに比し、比較例は何等かの問題点を有す
る。 実施例7〜8、比較例7 重合度1800、ケン化度97.5%のPVAを、硼酸
1.5重量%(PVAに対して)と共に溶解し、酢酸
を添加してPH4.0、粘度9ポイズ(90℃)の紡糸
原液を調整した。 該紡糸原液を孔数6000より紡出し、糸篠を形成
せしめるに際し、デニール及び断面充実度をかえ
るために、原液濃度13〜16%、バスドラフト0〜
40%、孔径0.02〜0.04mmの範囲内で、また凝固浴
のカ性ソーダ、芒硝濃度を変更した。凝固した糸
篠を中和、湿熱延伸後水洗を行い残存硼酸を0.5
%/繊維とした。なお湿潤部の全延伸倍率は、
5.0倍にした。しかる後に乾燥し、強度が13.3
g/drになるような乾燥延伸(最終延伸倍率はい
ずれも10倍以上)を行い、また水中軟化点が115
℃以上になるように熱処理し、オイリング後乾燥
し巻取つた。 繊維のデニール及び断面充実度は、0.2dr、65
%(実施例7)0.4dr、63%(実施例8)、0.2dr、
80%(比較例7)とした。かかる繊維をアスペク
ト比500になるように切断して、丸網湿式抄造法
(ハチエツク法)にして固形分としてPVA系繊維
2%、残部ポルトランドセメントの組成で濃度15
%のスラリーを作成し、白水で割りながら厚さ6
mmのセメント板を抄造した。なお抄造に際し、
50ppmの市販のアニオン系凝集剤を使用した。
(市川毛織のIKフロツクT−210) 比較例 8〜9 常法によりデニール0.7dr(比較例8)、1.0dr
(比較例9)、強度13.5g/dr、水中軟化点115℃
のPVA系繊維を作成し、実施例7〜8と同じ方
法でセメント板を作成した。 参考例 1 石綿(6級)12%、パルプ1%、残部ポルトラ
ンドセメントの組成で、実施例7〜8と同方法で
石綿セメント板を作成した。実施例7〜8、比較
例7〜9、参考例1の実験結果を表−4にまとめ
た。
【表】 なお表−4中の曲げ強度は、繊維の真の補強性
を比較するために歩留り補正をしたものである。 実施例7〜8は、わずか2%の本発明の極細繊
維を使用するのみでかつ全くパルプを含まずして
従来の石綿セメント板(参考例1)と同等のセメ
ント捕捉性と補強効果を示したが、比較例はかな
り低いことが明瞭である。特に比較例7は、デニ
ールは本発明の範囲内にあつても断面充実度が範
囲外ならば満足すべき結果が得られないことを示
している。 実施例9〜10、比較例10 実施例1〜2に準じ、全延伸倍率を変更して強
度13.0g/dr(実施例9)、11.0g/dr(実施例
10)、8.5g/dr(比較例10)と変更したPVA繊維
を作成し、セメント板による補強効果をみた結果
を表−5にまとめた。なおデニールは全て0.2dr
とし、水中軟化点は113〜115℃とほぼ同じにし
た。 実施例11〜12、比較例11 実施例1〜2に準じて、デニール0.15dr、強度
11〜11.5g/drのPVA繊維で延伸温度、熱処理
温度を変更して、水中軟化点が110°(実施例11)、
115°(実施例12)、100°(比較例11)なる試料を作
成し、セメント板にて補強効果をみた。その結果
を表−5にまとめた。
【表】 実施例9〜12は、従来の石綿セメント板(参考
例1)とほぼ同等の補強効果を示すが、比較例は
低い。なおセメント歩留はいづれも91〜94%であ
つた。 実施例 13〜20 (1) 使用原料の説明 PVA系繊維:実施例1〜2と同方法で製造
したデニール0.2dr、強度13.5g/dr、水中軟
化点116℃、断面充実度62%の繊維で3mmに切
断したものを使用 パルプ;カナデイアンフリーネス、100mlの
針葉樹未晒パルプ ベントナイト;平均粒子径1.5×10-3mmのも
のを無機成形材として使用 マイカ;(株)クラレ製のソゾライトマイカ40−
ZK(平均アスペクト比60) スラグウール;平均直径4×10-3mmのものを
あらかじめシエアーを加えた後、ふるい分けし
て0.5〜2mmにしたものを使用 水酸化アルミニウム;住友アルミニウム社の
C−303を使用 凝集剤;市川毛織のIKフロツクT−201 (2) 配合組成;表−6にまとめた。 (3) セメント板の製造方法 実施例13:所定量のPVA繊維、ポルトラン
ドセメント及び白水をスラツシヤー付パルパー
に投入し、短時間撹拌後、チエストへ移送し、
約100g/の抄造用スラリーとする。 かかるスラリーを、約50ppmの凝集剤及び必
要量の割水を添加しつつ抄造槽(バツト)へ導
入し、60メツシユの丸網にて抄き上げ、メーキ
ングロールに巻き取り、切断後の生板を20Kg/
cm2で加成成形した。養生は50℃で24時間の湿空
養生後、気乾状態で4週間放置とし、6mm厚さ
のセメント板を得た。 実施例14〜20:それぞれの添加剤をパルパー
に投入撹拌分散後、PVA繊維及びポルトラン
ドセメントを加えて実施例13と同方法にて実施
した。 (4) 評価方法 分散性 分散性は、繊維状物質の抄造スラリー中にお
ける分散状態を意味し、該抄造スラリーを丸網
へ抄き上げる際の丸網上のデコボコ状態を観察
し、デコボコの少い非常に良好な分散状態を
◎、デコボコの多い分散不良状態を×とし、そ
の間を2ランクにわけて○、△とした。 バツト内水位 充分均一なシートを抄き上げ可能な場合を
◎、水位がほとんどとれず均一なシートが出来
ない場合または水が悪過ぎてバツトより抄造
スラリーがオーバーフローするような状態を
×、その中間ランクを○、△として定性的に判
断した。 セメント捕捉性 セメントや無機成形材等の抄造スラリー中の
固形分の捕捉率を意味し、抄造槽内の抄き上げ
前のスラリー濃度(W1)と丸網を通して排出
された排水濃度(W2)から(1−W2/W1)×100 %として求めた。 型付け性 メーキングロール後の生板に通常の波形成形
を施して、ひび割の発生及び縮み皺の状態を観
察し、ひび割や皺のないものを◎、ひどくひび
割が出、かつ縮み皺の出るものを×、その間を
2ランクに分けて○、△とした。 曲げ強度 JIS A1408「建築ボード類の曲げ試験法」に
より測定し、抄造方法(タテ方向)とその直角
方向(ヨコ方向)の平均値で示した。水硬性物
質等の捕捉率が変わると補強繊維の配合量が実
質的に変化したことになるので、真の補強性を
比較するために水硬性物質等固形分の捕捉率を
100%となるように補正を加えた曲げ強度を示
した。 耐ひび割性 1ケ月間気乾状態に放置した板材を巾4.0cm、
長さ±30cmになるように切り出し、中央部に巾
2cmを残すように両側から1cmずつ直角に切り
込みを入れる。そしてスパン28cmとなるように
両側に2個ずつの孔をあけ、5mmのボルトナツ
トで厚さ3mmのステンレススチール板に固定す
る。これをこのまま20℃の水中へ1昼夜浸漬後
室温で1昼夜風乾する。更に40℃の熱風乾燥機
にて1昼夜乾燥し、更に100℃の乾燥機へ2時
間投入し、その時のひび割発生の割合を観察す
る。ひび割幅が0.05mm以上をひび割とみなし、
タテ方向、ヨコ方向の試験片の総数に対し、ひ
び割の発生した数の割合で示した。ひび割発生
の全然起らないもの◎、20%未満を○、20〜40
%を△、40%以上のもの×とした。 難燃性 JIS A−1321の「建築物の内装材料及び工法
の難燃性試験方法」に依り基材試験及び表面試
験を行い判定した。 (5) 結果 表−6にまとめた。 実施例13は、本発明のPVA系極細繊維とセ
メントよりなるセメント板であるが、参考例1
の従来の石綿セメント板とほぼ同等の抄造性、
製品物性を有することがわかるが、さらに本発
明のそれぞれの添加剤を加えることにより、抄
造性、製品物性が一層向上し、従来の石綿セメ
ント板よりすぐれたものも得ることが出来る。 パルプ(実施例14)、ベントナイト(実施例
15)の添加により、PVA繊維の分散性、抄造
固形分(主としてセメント)の捕捉性、パツト
水位、層間剥離性、型つけ性、表面平滑性が改
善された。さらに分散性向上の結果のためか曲
げ強度も向上した。 マイカ(実施例16)の添加により、PVA繊
維の分散性、バツト水位の改善により、均一な
製品が得られて表面平滑性が向上した。さらに
特徴的なことは、難燃性試験のうち特に表面試
験に有効であること即ち加熱時の亀裂防止に効
果的なことである。 実施例17の無機人造繊維ロツクウールは、単
独での効果は小さく無機成形材又はパルプとの
併用効果により抄造性、製品物性の改善が出来
る。 水酸化アルミニウムは難燃性試験のうち基材
試験に有効である。実施例18は、有機成分が多
いために燃焼時の発熱量が多く、基材試験に不
合格であるが、水酸化アルミニウムを添加した
実施例19は発熱が押えられ合格となる。 実施例20は石綿セメント板と同等又はそれ以
上の抄造性、製品物性を有する配合例である。
【表】
【表】 E 本発明の効果および用途 本発明に用いられる繊維は、極細で強度が高
く、耐水性の優れた扁平なるPVA繊維であり、
かつ安価に製造できるために無機質水硬性物質の
抄造分野へ用いると、湿式抄造製品における石綿
代替の問題は解決され、無石綿使用時と同じ設備
によつて高能率生産が可能となり、性能的にも石
綿含有抄造製品と同等又はそれ以上のものを得る
ことが出来るようになつた。 本発明によつて得られるかゝる無石綿水硬性無
機質抄造製品は、従来からの石綿含有製品の代替
として利用できるのは当然であるが、石綿を含有
しないということでその用途は更に拡がることが
期待できる。 用途例の一部を述べるならば石綿を含有しない
波形板、シングル等の屋根材及び建築物や船舶な
どに用いられる平板、パーライト板、サイデイン
グ材、カーテンウオール、耐火間仕切壁、外装パ
ネル等の内外装材あるいは無石綿管等がある。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 単繊維が0.05〜0.5デニールで、引張り強度
    9.0g/デニール以上、水中軟化点105℃以上、単
    繊維の断面充実度が70%以下であるポリビニルア
    ルコール系極細繊維で強化された水硬性無機質抄
    造製品。 2 ポリビニルアルコール系繊維のアスペクト比
    が200〜1500であつて、その含量が抄造固形分に
    対して0.5〜5重量%である特許請求の範囲第1
    項記載の水硬性無機質抄造製品。 3 平均粒径1×10-2〜1×10-5mmの無機成形材
    を含む特許請求の範囲第1項記載の水硬性無機質
    抄造製品。 4 雲母を含む特許請求の範囲第1項記載の水硬
    性無機質抄造製品。 5 パルプを含む特許請求の範囲第1項記載の水
    硬性無機質抄造製品。 6 人造無機繊維を含む特許請求の範囲第1項記
    載の水硬性無機質抄造製品。 7 2価又は3価の金属の酸化物を含む特許請求
    の範囲第1項記載の水硬性無機質抄造製品。 8 単繊維が0.05〜0.5デニール、引張り強度9
    g/デニール以上、水中軟化点105℃以上、単繊
    維の断面充実度70%以下のポリビニルアルコール
    系繊維および水硬性無機物質を含むスラリー液を
    丸網又は長網により湿式抄造する水硬性無機質抄
    造製品の製造方法。 9 ポリビニルアルコール系繊維のアスペクト比
    が200〜1500である特許請求の範囲第8項記載の
    製造方法。 10 スラリー液が、無機成形材、雲母およびパ
    ルプから選ばれる少なくとも1種の化合物を含む
    水分散液にポリビニルアルコール系繊維および水
    硬性無機物質を添加して撹拌分散したものである
    特許請求の範囲第9項記載の製造方法。 11 スラリー液が人造無機繊維を含む特許請求
    の範囲第10項記載の製造方法。 12 スラリー液が2価又は3価の金属水酸化物
    を含む特許請求の範囲第10項記載の製造方法。
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