JPH045358Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、予め成型した後に金型内へ挿入し、
金型内に射出された成型用樹脂に模様を付するの
に適した転写シートに関する。

射出成型時に模様を付するための転写シートの
基材としては種々のものが試みられてはいるが未
だ充分なものは得られていないのが実情である。
従来、試みられた転写シートの基材の代表例はナ
イロンフイルム、ポリエチレンテレフタレートフ
イルム（延伸）、延伸ポリプロピレンフイルム、
ポリ塩化ビニルフイルムである。しかし、ナイロ
ンフイルムは成型性及び耐熱性は優れているもの
の長尺印刷時には伸びやすい欠点があり、ポリエ
チレンテレフタレートフイルム（延伸）は長尺印
刷時には伸びにくく、即ち、寸法安定性が優れて
いるが、成型性は不充分である。延伸ポリプロピ
レンフイルムは成型自体は可能であるものの成型
可能な温度範囲が狭く、得られる成型シートも厚
みムラが多い上、フイルムの耐熱性も充分でな
く、更にポリ塩化ビニルフイルムは硬質のものを
選択すれば寸法安定性があり、成型性も優れてい
るが、反面、耐熱性が劣る。

一般的に、射出成型の際に模様付けを行なうた
めの転写シートの基材は、寸法安定性があり、成
型性（例えば100℃程度に加熱して真空成形でき
る程度の成型性）、及び射出成型の際に接触する
射出された樹脂の温度に耐えるだけの耐熱性を要
するが、これらすべての性質を備えたものは得ら
れていなかつた。

本考案者等は上記のような従来技術の欠点を解
消しようとして種々の検討を行なつた結果、寸法
安定性及び成型性を有する合成樹脂フイルム層
と、耐熱性及び真空成形性を有する合成樹脂フイ
ルム層とを積層して転写シートの基材とすること
により、従来技術の欠点がことごとく解消される
ことを見い出して本考案に到達した。

即ち、本考案は、寸法安定性及び成型性を有す
る第１の合成樹脂フイルム層、耐熱性及び成型性
を有する第２の合成樹脂フイルム層からなる積層
体上の第２の合成樹脂フイルム層上に印刷模様層
が積層されていて、該積層体は常温から70℃迄の
温度範囲に於いて、印刷等の加工処理に伴う張力
負荷に対して実質的に伸びのない寸法安定性を有
し、100℃以上の温度で真空成形できる程度の成
形性、並びに射出成形で射出された溶融樹脂と接
触しても熱変形やふくれの無い耐熱性を有し、か
つ総厚みが50〜200μｍであつて、そのうち第２
の合成樹脂フイルム層の厚みが総厚みの20〜50％
であることを特徴とするものである。

更に上記転写シートにおいて、必要に応じ印刷
模様層上に接着剤層を積層したり、上記積層体上
の第２の合成樹脂フイルム層と印刷模様層との間
に剥離層を積層することができる。

図を参照しながら本考案の転写シートを更に詳
細に説明すると、第１図に示すように本考案の最
も好ましい態様である転写シートＡは寸法安定性
及び成型性を有する第１の合成樹脂フイルム層１
と耐熱性及び真空成形性を有する第２の合成樹脂
フイルム層２とからなる２つの合成樹脂フイルム
層どうしが接着剤層３を介して積層されており、
以上の各層からなる積層体４の合成樹脂フイルム
層２側には更に剥離性層５が形成されており、剥
離性層５の表面には印刷模様層６、更に、接着剤
層７が順に形成されているものである。

上記における各層１〜６について次に説明す
る。

第１の合成樹脂フイルム層１は、第２の合成樹
脂フイルム層２を支持して積層体４を補強し、積
層体４に（必要に応じて剥離性層を介して）印刷
の際に必要な寸法安定性を付与すると共に、第２
の合成樹脂フイルム層２と同等か、もしくは積層
時に実質的に低下しない程度の成型性を備えてい
る必要がある。第１の合成樹脂フイルム層１の具
体的材料としてはポリ塩化ビニル樹脂フイルム
（特に無可塑〜5PHRの硬質のもの）、ポリメチル
メタクリレート樹脂フイルム等のアクリル樹脂フ
イルム、無延伸のポリエチレンテレフタレート樹
脂フイルム、もしくは無延伸のポリプロピレン樹
脂フイルム等を挙げることができる。

第２の合成樹脂フイルム層２は成型性を有し、
射出成型の際に射出された溶融樹脂の熱により変
形やふくれを生じない程度の耐熱性を有している
ことが必要である。第２の合成樹脂フイルム層２
の具体的材料としては６−ナイロンもしくは６，
６−ナイロン等のポリアミド樹脂フイルム、ポリ
メチルメタクリレート等のアクリル樹脂フイル
ム、アクリルニトリル樹脂フイルム、ポリアリレ
ート樹脂フイルム、ポリカーボネート樹脂フイル
ム、セルロースジアセテート、セルローストリア
セテートもしくはセルロースアセテートブチレー
ト等のセルロース系樹脂フイルム等を挙げること
ができる。

接着剤層３は第１の合成樹脂フイルム層１と第
２の合成樹脂フイルム層２の両層を積層するもの
であつて、転写シートの成型の際や射出成型の際
に剥離やずれがなく、転写シートの成型の際に第
１及び第２の合成樹脂フイルム層と同様に伸びる
ことができるものであることが必要である。接着
剤層３の具体的材料としてはポリ酢酸ビニル樹脂
系、ポリビニルアルコール樹脂系、ポリビニルア
セタール樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリア
クリル酸エステル樹脂等のアクリル系、ポリエチ
レン樹脂系、もしくは、セルロース樹脂系等の熱
可塑性樹脂接着剤、又は、ニトリルゴム系、スチ
レンゴム系、もしくは、ブチルゴム系等のエラス
トマー接着剤等を挙げることができる。

積層体４を製造するには第１及び第２の合成樹
脂フイルム層を構成する各合成樹脂フイルムの接
着面の一方もしくは両方に接着剤を塗布した後、
ドライラミネート等のラミネートを行なうか、接
着剤を溶融して押し出し、両側から各合成樹脂フ
イルムを圧着する等の方法によつて行なえばよ
い。

積層体４は印刷の際の寸法安定性として、温度
70℃以下の雰囲気で、伸びが0.1％以下であるこ
とが必要であり、又、100℃以上の温度での成形
性、並びに射出成型の際の溶融樹脂の温度でふく
れや熱変形のない耐熱性が要求される。

その理由は、本願考案の目的とする用途に於い
ては、転写シートの基材に印刷する際、インキ
乾燥温度として通常最高70℃程度の雰囲気中に置
かれるが、フイルム伸縮による多色刷の見当ズレ
が0.1mm以下であれば実用上目立たない事、射
出成形に先立つ真空成形等の予備の成形では通常
100℃以上の温度下で金型形状へ成形される事、
射出成形転写時には基材シート表面は射出成形
樹脂によつて通常100℃以上の温度下におかれ、
この時基材フイルムに変形、ふくれがあると成形
体上の模様が歪んだり、皺が入つたりする事、の
ためである。

上記の観点から積層体４の厚みは50〜200μｍ、
好ましくは50〜100μｍである。又、積層体４の
うちの第２の合成樹脂フイルム層の厚みは積層体
４の厚みの20〜50％、好ましくは30〜50％であ
る。ここで積層体４の厚みが下限未満であると取
り扱いにくいし、又、上限を越えると成型して成
型シートとするときに不均一な厚みになりやす
い。又、第２の合成樹脂フイルム層の厚みが下限
未満であると、成型シートとしたときにしわが入
りやすく、上限を越えると成型性が低下する傾向
がある上、概して耐熱性の高い樹脂フイルムは高
価であるのでコスト増加となる。

剥離性層５は積層体４の層２側の表面に剥離性
を付与するものであり、例えば、ポリメタクリル
酸エステル樹脂類等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビ
ニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリルニ
トリル−スチレン共重合樹脂、ポリスチレン樹
脂、もしくはアクリルニトリル−ブタジエン−ス
チレン共重合樹脂等の熱可塑性樹脂、又は塩化ゴ
ム等のうちから加熱転写時に剥離性がすぐれ、そ
れ以前の例えば転写シートの成型の段階では剥離
性の小さいものを、後記印刷模様層との接着性を
考慮しつつ適宜に選択して使用し形成する。

印刷模様層６は通常のインキ及び印刷方によつ
て形成したものであり、インキのべヒクルとして
は例えば、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン
−酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重
合樹脂、もしくはポリ（メタ）アクリル酸エステ
ル樹脂等のアクリル樹脂のうちから適宜に選択す
る。

接着剤層７は転写に際して射出された樹脂と転
写シートＡの印刷模様層６との接着力を高めるも
のであつて、具体的な材料としては積層体４にお
ける接着剤層３を構成するものと同様なものを挙
げることができる。

以上においては本考案の最も好ましい例につい
て説明したが、第１図の転写シートＡにおいては
以下に述べるように各層のうちの１つもしくは幾
つかを省略することもできる。

(イ) まず、積層体４の中間層である接着剤層３は
第１及び第２の合成樹脂フイルム層が各層の熱
融着、高周波接着等により接着剤層を介さなく
ても積層可能なときはこれを省いてもよい。

(ロ) 次に、剥離性層５は第２の合成樹脂フイルム
層と印刷模様層６との間が、各々の材料の選択
により剥離性を有するときはこれを省くことが
できる。要するに積層体４の印刷模様６側の表
面が加熱転写時に剥離性を有していればよい。

(ハ) 更に接着剤層７は加熱転写時に印刷模様層６
と射出された成型用樹脂とを接着させ、成型体
表面に印刷模様層を接着させるためのものであ
るが、接着剤層７は感熱接着的に作用するので
印刷模様中のベヒクルによつても、或いはベヒ
クルの一部もしくは前部を接着剤層７を構成す
る材料と置き換えるかのいずれにより、印刷模
様層を接着剤層として兼ねさせることができる
ので、このような場合には接着剤層７を省くこ
とができる。

以上の本考案によれば転写シートの基材とし
て、印刷模様とは反対の側に寸法安定性及び成型
性を有する第１の合成樹脂フイルム層を、又、印
刷模様側に耐熱性及び成型性を有する第２の合成
樹脂フイルム層をそれぞれ用いて積層して得た積
層体であり、該積層体は常温から70℃迄の温度範
囲に於いて、印刷等の加工処理に伴う張力負荷に
対して実質的に伸びのない寸法安定性を有し、
100℃以上の温度で真空成形できる程度の成型性、
並びに射出成形で射出された溶融樹脂と接触して
も熱変形やふくれの無い耐熱性を有し、かつ総厚
みが50〜200μｍであつて、そのうち第２の合成
樹脂フイルム層の厚みが総厚みの20〜50％である
構成を採用したことにより、転写シートを製造す
る際の印刷工程での寸法安定性がすぐれており多
色印刷を行つても見当ズレが目立たず、かつ、転
写シートの真空成形等の成形性もすぐれ、更に成
形した転写シートを用いて射出成形しても注型樹
脂熱による成形体表面に模様の歪み、皺等の支障
なく模様を付することが可能である。

又、本考案の転写シートは寸法安定性がすぐれ
ているので、従来、ホツトスタンピングを行なつ
た後、寸法、位置精度を要する文字、記号、模様
等をシルクスクリーンで直接成形体上へ印刷して
いたのを、一つの転写シート上に必要な印刷をす
べて位置を合わせて行なつておくことにより、一
度の転写で可能にすることができる。

実施例 厚み100μｍのポリ塩化ビニル樹脂フイルム
（硬質）の片面にポリアミド樹脂系接着剤をグラ
ビアコートし、塗布面に厚み40μｍの６−ナイロ
ンフイルムをドライラミネートした。得られた複
合フイルムの６−ナイロンフイルム側にポリメチ
ルメタクリレート樹脂をベヒクルとする各組成物
を用いて剥離性層、印刷模様層、接着剤層を形成
して転写シートとした。

得られた転写シートを真空成型により成型し、
成型シートを金型内に載置し、射出成型を行なう
ことにより模様の付いた成型体を得た。

上記において転写シートの印刷見当ずれ、真空
成型時及び射出成型時の不良はなかつた。

比較のため140μｍの厚みのポリ塩化ビニル樹
脂フイルムの単独、及び140μｍ厚みの６−ナイ
ロンフイルムをそれぞれ用いた以外は上記と同様
に行なつたところ、ポリ塩化ビニル樹脂フイルム
を用いると印刷見当ずれ及び真空成型時の不良は
なかつたが射出成型時に転写シート基材に孔があ
いてしまい、成型体に模様の付かない部分ができ
てしまい、又、６−ナイロンフイルムを用いると
真空成型及び射出成型自体は行なえたが転写シー
トの印刷見当ずれのため、成型体に付された模様
は色ずれが生じていた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の転写シートの模式的な断面図
である。 １……第１の合成樹脂フイルム層、２……第２
の合成樹脂フイルム層、３……接着剤層、４……
積層体、５……剥離性層、６……印刷模様層、７
……接着剤層。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 寸法安定性及び成形性を有する第１の合成樹
   脂フイルム層、耐熱性及び成形性を有する第２
   の合成樹脂フイルム層からなる積層体上の第２
   の合成樹脂フイルム層上に印刷模様層が積層さ
   れていて、該積層体は常温から70℃迄の温度範
   囲に於いて、印刷等の加工処理に伴う張力負荷
   に対して実質的に伸びのない寸法安定性を有
   し、100℃以上の温度で真空成形できる程度の
   成形性、並びに射出成形で射出された溶融樹脂
   と接触しても熱変形やふくれの無い耐熱性を有
   し、かつ総厚みが50〜200μｍであつて、その
   うち第２の合成樹脂フイルム層の厚みが総厚み
   の20〜50％であることを特徴とする転写シー
   ト。 (2) 更に、印刷模様層上に接着剤層が積層されて
   いることを特徴とする実用新案登録請求の範囲
   の第(1)項記載の転写シート。 (3) 更に、該積層体上の第２の合成樹脂フイルム
   層と印刷模様層との間に剥離層が積層されてい
   ることを特徴とする実用新案登録請求の範囲の
   第(1)項又は第(2)項記載の転写シート。