JPH043299B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 本発明は凹版印刷機に関するものである。

〔従来技術〕

輪転印刷機の一種として凹版印刷機が知られて
いる。第１図は従来におけるこの種凹版印刷機の
概要側面図であつてこれを同図に基いて説明する
と、紙１が積載された給紙装置２とその前方の印
刷装置３との間には、給紙装置２のサツカ機構で
上層から１枚ずつ送り出される紙１を受けて印刷
見当を合わせる差板４と、差板４上の紙１を咥え
て揺動するスイング装置５とが配設されている。
印刷ユニツト３には、爪６と爪台７とからなる３
組の咥え爪装置８（以下爪８と略称する）が外周
部を円周方向に３等分する位置に配設された圧胴
９が軸架されており、これにはほゞ同径の凹版胴
１０と、ほゞ1/3径の渡し胴１１および排紙胴１
２が対接されている。このうち渡し胴１１には爪
８と同じ構成の１組の爪が設けられており、スイ
ング装置５から咥え替えた紙１を圧胴９の爪８に
咥え替えさせるように構成されている。また排紙
胴１２と同軸上のスプロケツトと図示しないスプ
ロケツトとの間には左右一対の排紙チエーン１３
が張架されており、これには圧胴９の爪８から紙
１を咥え替えて排紙チエーン１３の走行とともに
搬送する排紙爪が設けられている。さらに凹版胴
１０の周面には、非画線部としての平面と画線部
としての凹部とで形成された凹版が装着されてい
る。凹版の表面には、複数個の着肉ローラ１４が
対接されており、これにはインキ壷１５内で回転
する壷ローラ１６が対接されている。１７は壷ロ
ーラ１６に対接しインキ壷１５から流出するイン
キをならす振りローラである。さらに凹版胴１０
の斜め下方には、洗浄液１８が蓄えられた洗浄液
槽１９内で回転するワイピングローラ２０が対接
されている。なお、ワイピングローラ２０は図に
矢印で示すように凹版胴１０と同方向に回転して
いる。

以上のように構成された従来の凹版印刷機にお
いて、凹版胴１０上の凹版面には、各インキ壷１
５から壷ローラ１６で引き上げられて振りローラ
１７でならされた３色のインキが着肉ローラ１４
によつて塗布されている。この場合凹版には画線
部である凹部はもとより非画線部である平面にも
インキが塗布されるが、この凹版面にはワイピン
グローラ２０で引き上げられた洗浄液１８が供給
されており、また凹版面とワイピングローラ２０
の周面とが対接点において互に逆方向へ周回して
いるので、非画線部のインキが拭き取られ画線部
である凹部にのみインキが残る。一方、渡し胴１
１から圧胴９、排紙チエーン１３へと順次咥え替
えられて搬送される紙８には、両胴９，１０間を
通過するときに1ton／cm²というような大きな印圧
が加えられるので、凹版凹部のインキが紙８に転
写されて凹版印刷が施される。

以上のように構成された従来の凹版印刷機にお
いて、凹版上の余分なインキを拭き取るワイピン
グ方式としてはソルベント方式と水性方式とがあ
るが、ソルベント方式は主としてトリクロールエ
チレン等を使用するため人体に有害であり、有機
溶剤の処理が困難であるところから近年は水性方
式が広く用いられている。この水性方式において
は、洗浄液１８として水に炭酸ソーダ，ロート
油，界面活性剤を添加した溶液が用いられ、この
洗浄液１８と拭き取つたインキとが混合してワイ
ピングローラ２０の周面に付着した液は、洗浄液
槽１９内に設けたブラシや樹脂研摩材等によつて
液中に洗い落される。しかしながらこのような従
来のワイピング装置においては多くの問題点が残
されている。

すなわち、水性方式とは言え全く無害ではなく
洗浄後の排液中に含まれる有機物の処理が困難で
あつて現在はこれを焼却によつて処理しているが
水を焼却するために無駄なエネルギを大量に浪費
しなければならない。また、洗浄液の組成、温度
等が印刷物の品質に即影響するので、これを管理
できる液の循環機能や温度制御機能が必要であ
り、これら付属装置のために印刷機全体がコスト
高になつていた。さらに、洗浄液１８と拭き取つ
たインキとの混合液が洗浄液槽１９の底部へへど
ろ状に沈澱し、これが洗浄液１８を汚濁させたり
組成変化させたりして印刷物の品質低下や液交換
による作業能率低下の要因となつているばかりで
なく、非画線部に塗布されたインキはワイピング
ローラ２０で拭き取られてほとんどが再生不能と
なるので、きわめて大量のインキを無駄に浪費す
るという欠点があつた。

〔発明の概要〕

本発明は以上のような点に鑑みなされたもの
で、シリコン液を蓄えた容器内で回転する元ロー
ラと凹版胴上の凹版面に対接する塗布ローラおよ
びこれら両ローラの間で対接周面を互に逆方向へ
周回させるローラとを備えたシリコン塗布装置を
凹版用着肉装置と圧胴、凹版胴対接点との間に設
け、凹版用着肉装置に対する凹版胴回転方向下流
側にワイピングペーパを添接させたワイピングロ
ーラを対接させて凹版胴周面の周回方向と逆方向
へ微速送りするように構成することにより、非画
線部にのみ塗布させたシリコンでインキを反発さ
せて凹状画線部にのみ着肉させ、インキ消費量の
節減を計るとともに、有害で汚濁した洗浄液を用
いないことによる公害防止と印刷物の品質向上を
計つた革新的な凹版印刷機を提供するものであ
る。以下本発明の実施例を図面に基いて詳細に説
明する。

〔実施例〕

第２図は本発明に係る凹版印刷機の概要側面図
である。図において第１図と同じ符号を付したも
のはこれと同じ構成であるからその詳細な説明を
省略する。図に矢印Ａで示す方向に回転する凹版
胴１０の周面には、非画線部としての平面と画線
部としての凹部とからなる凹版が装着されており
この凹版の表面には、全体を符号２１で示す凹版
用着肉装置の着肉ローラ１４が対接されている。
着肉装置２１に対して凹版胴１０の回転方向上流
側であつてかつ着肉装置２１と圧胴９との間に
は、全体を符号２２で示すシリコン塗布装置が設
けられている。このシリコン塗布装置２２はシリ
コン液２３を蓄える容器２４を備えており、シリ
コン液２３には原動側から駆動されて図に矢印Ａ
で示す方向に回転しシリコン液２３を引き上げる
元ローラ２５が浸漬されている。一方凹版胴１０
の上方には凹版胴１０の１つの有効面長と同じ周
長を有し原動側から駆動されて図に矢印Ｂで示す
方向に凹版胴１０と同周速で回転する塗布ローラ
２６が、周面を凹版胴１０上の凹版面に対接させ
て軸架されている。元ローラ２５と塗布ローラ２
６との間には、調量ローラ２７と移しローラ２８
とが周面を対接させて配設されており、調量ロー
ラ２７と元ローラ２５、および移しローラ２８と
塗布ローラ２６はそれぞれ互に周面を対接させて
いる。これら両ローラ２７，２８は原動側から駆
動されて図に矢印Ｃ，Ｄで示す方向にそれぞれ回
転している。すなわち元ローラ２５と調量ローラ
２７とは同方向に回転しており、したがつてその
対接点において両ローラ２５，２７の周面は互に
逆方向へ周回して滑つている。また、調量ローラ
２７と移しローラ２８、移しローラ２８と塗布ロ
ーラ２６、および塗布ローラ２６と凹版胴１０は
それぞれ反対方向へ回転している。また、各ロー
ラ２５，２７，２８および凹版胴１０間には互の
接触圧を調整する調整手段がそれぞれ設けられて
おり、さらに各ローラ２５，２７，２８には塗布
ローラ２６と同周速にしたりこれよりも低周速に
したりする変速手段が付設されている。符号２９
で示すものは軸受で軸支されて元ローラ２５上に
自重ないしはばね手段で圧接されて載置され元ロ
ーラ２５上のシリコン液被膜をならすライダロー
ラである。

一方、着肉装置２１に対する凹版胴１０回転方
向下流側であつて着肉装置２１と圧胴９との間に
は、全体を符号３０で示しシリコン塗布装置で凹
版の非画線部に塗付されたシリコン液を拭き取る
ワイピング装置が配設されている。このワイピン
グ装置３０は、ワイピングローラ３１とこれに添
接されたワイピングペーパ３２とで構成されてお
り、ワイピングローラ３１はワイピングペーパ３
２を介して凹版胴１０上の凹版面に対接されてい
る。ワイピングローラ３１は硬度85゜ないし99゜の
高硬度を有する合成ゴムで形成されており、ワイ
ピングペーパ３３は吸湿性と引張り強度を有する
紙で形成されている。そしてワイピングペーパ３
３はドラム状に巻き取られてリールスタンドに掛
けられており、これから図に矢印Ｅで示す方向に
引き出された紙端は、ワイピングローラ３１に添
接されたのち折り返してワインダにより微速で巻
き取られている。すなわち、ワイピングペーパ３
３は凹版面との対接点において凹版周面の周回方
向とは逆方向へ微速送りされている。またこのワ
イピング装置３０にはワイピングペーパ３２と凹
版との接触圧およびワイピングペーパ３２の送り
速度との調整手段が設けられている。

以上のように構成された凹版印刷機の動作を説
明する。差板４上へ送り出されてスイング装置５
の爪で咥えられた紙１は圧胴９の爪８に咥え替え
られ、圧胴９の回転によりその周面に巻き付けら
れて凹版胴１０との間を通過したのち、排紙チエ
ーン１３の爪に咥え替えられて搬送排出される。
一方、凹版胴１０上の凹版面にはシリコン塗布装
置２２によつてシリコン液２３が塗布される。す
なわち、元ローラ２５が回転すると、容器２４内
のシリコン液２３が引き上げられて元ローラ２５
の周面にシリコン液２３の被膜を形成させ、この
被膜はライダローラ２９によつてならされたのち
調量ローラ２７で膜厚が調整され、移しローラ２
８を経て塗布ローラ２６に転移して凹版面に塗布
される。この場合、余分なシリコン液２３がライ
ダローラ２９で掻き落されるとともに、元ローラ
２５と調量ローラ２７とが対接点において逆方向
に周回して滑つているので、シリコン液２３は薄
い均一な被膜となつて凹版面に塗布される。また
シリコン液２３は被膜が薄いことにより凹版の凹
部である画線部には塗布されず、平面である非画
線部にのみ塗布される。さらに凹版胴１０が矢印
Ａ方向に回転すると、凹版面には３組の着肉装置
２１によつてインキが塗付されるが、シリコン液
２３がインキを受容しない性質を有しているの
で、インキはシリコン液２３が塗布された非画線
部に塗付されず、凹部である画線部にのみ詰めら
れるようにして塗布される。凹版胴１０がさらに
回転すると、凹版面にはワイピングペーパ３２が
対接していて逆方向へ滑りながら微速送りされて
いるので、非画線部に塗布されたシリコン液２３
はワイピングペーパ３２によつて拭き取られる。
この場合ワイピングローラ３１が高硬度であるか
らよく拭き取られる。このようにして画線部にの
みインキを残した凹版が凹版胴１０の回転によつ
て圧胴９との対接点に達するので、紙８には両胴
９，１０間に加えられる大きな印圧のもとで凹版
刷りが施される。使用後のワイピングペーパ３２
はワインダで巻き取られて再使用されるが、安価
なものであるから１回で使い捨てにしてもよい。

なお、本実施例では元ローラ２５と塗布ローラ
２６との間に２個のローラ２７，２８を設けた例
を示したが１個でもよく３個以上でもよい。また
本実施例では対接点でのローラ周面の周回方向を
互に逆方向にして滑らせる箇所を元ローラ２６と
の間に１箇所設けた例を示したが、２箇所以上設
けてもよい。さらに本実施例ではワイピングロー
ラ３１を合成ゴムで形成した例を示したが、天然
ゴムでもよく、またPVA樹脂やPVC樹脂にすれ
ば耐用度も増してさらに効果がある。

〔発明の効果〕

以上の説明により明らかなように本発明によれ
ば凹版印刷機において、シリコン液を蓄えた容器
内で回転する元ローラと凹版胴上の凹版面に対接
する塗布ローラおよびこれら両ローラの間で対接
周面を互に逆方向へ周回させるローラとを備えた
シリコン塗布装置を凹版用着肉装置と圧胴，凹版
胴対接点との間に設け、凹版用着肉装置に対する
凹版胴回転方向下流側にワイピングペーパを添接
させたワイピングローラを対接させて凹版胴周面
の周回方向と逆方向へ微速送りするように構成し
非画線部にのみ塗布されたシリコン液でインキを
反発させて画線部にのみインキを付着させ、非画
線部のシリコン液をワイピングペーパで拭き取る
ように構成することにより、インキが画線部にの
み消費されるので、その消費量が著しく節減され
て印刷コストの低減を計ることができるとともに
洗浄液を使用しないことにより有機溶剤等による
公害が解消されて作業の安全性が向上し、汚濁洗
浄液等による印刷障害の虞がなく印刷物の品質が
向上する。また、洗浄液の温度制御や組成管理の
ための付属設備を必要としないことにより設備費
の節減と操作性の向上を計ることができ、さらに
有機物の処理等に消費される無駄なエネルギがな
くなる等その効果がきわめて顕著である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の凹版印刷機の概要側面図、第２
図は本発明に係る凹版印刷機の概要側面図であ
る。 ９……圧胴、１０……凹版胴、２１……凹版用
着肉装置、２２……シリコン塗布装置、２３……
シリコン液、２４……容器、２５……元ローラ、
２６……塗布ローラ、２７……調量ローラ、２８
……移しローラ、３０……ワイピング装置、３１
……ワイピングローラ、３２……ワイピングペー
パ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シリコン液を蓄える容器と、前記シリコン液
   に浸されて回転する元ローラと、凹版胴上の凹版
   面に周面を対接させて回転する塗付ローラと、前
   記元ローラと塗付ローラとの間にあつて互に周面
   を対接させこれら対接点のうちの少なくとも１つ
   の対接点における互の周面の周回方向が逆方向で
   ある少なくとも１個のローラとを備えたシリコン
   塗布装置を凹版用着肉装置に対する凹版胴回転方
   向の上流側でこの凹版胴と圧胴との間に設けると
   ともに、ワイピングローラに凹版とほゞ同幅のワ
   イピングペーパを添接させてこのワイピングロー
   ラを前記凹版用の着肉装置に対する凹版胴回転方
   向の下流側において前記ワイピングペーパを介し
   凹版面に対接させ、ワイピングローラの回転によ
   りワイピングペーパを凹版周面の周回方向と逆方
   向へ微速送りすることを特徴とする凹版印刷機。