JPH0372856B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は車両、特に前輪駆動の自動車の動力伝
達機構における前進・後退可能な遊星歯車装置の
クラツチ装置に関する。

ドイツ国特許第3204891号に開示される従来の
クラツチ装置の場合、前進・後退可能な遊星歯車
装置および２個の摩擦デイスククラツチが連続的
に動作が変化するプーリ駆動装置の第１のプーリ
の固定心車側に配設され、前進用のクラツチを作
動するサーボピストンのサーボシリンダが前記固
定心車の背面側に固結されている。一方第１のプ
ーリの可動心車には流体調整装置の軸方向に固定
される調整ピストン内に可動心車の軸方向案内部
として機能する背部へ延びたシリンダ部が設けら
れる。前記調整ピストンは可動心車のシリンダ部
を軸方向に案内する調整ピストンの第２の部材に
より支承される。この周知のクラツチ装置におい
ては、軸方向および半径方向の寸法が相対的に大
となる上遊星歯車装置および２クラツチの前方か
つ固定心車の側部に流圧トルクコンバータとして
の別個の始動クラツチ装置を設ける必要があり、
更に寸法が大になる欠点があつた。

一方米国特許第4342238号に開示された周知ク
ラツチ装置によれば、遊星歯車装置および２個の
摩擦デイスクラツチが流圧調整装置の背部かつ連
続的に可動なプーリ駆動装置の第１のプーリの可
動心車の側部に配設される。流圧調整装置の調整
ピストンが可動心車の背側部に固結され、軸方向
に固定される調整シリンダが動力伝達機構のハウ
ジングの胴部に隣接して配設され、前記胴部は遊
星歯車装置のピニオン支承体のボス部により支承
され、かつ後退用のクラツチを作動するサーボピ
ストンのサーボシリンダとして機能する背部へ延
びたシリンダ部を有する。前進用のクラツチを作
動するサーボピストンは流圧調整装置の位置と軸
方向に対向した遊星歯車装置の軸方向に最外側の
位置より更に背部へ配置される。従つてこの周知
クラツチ装置の場合も、軸方向および半径方向の
寸法が相対的に大きくなり更に連続的に動作が可
変のプーリ駆動装置の前方かつ固定心車の側部に
流圧トルクコンバータとしての別個の始動クラツ
チ装置を設けねばならず、更に寸法が大にある欠
点があつた。

しかして本発明の目的はクラツチ装置を含む動
力伝達機構全体の軸方向および半径方向の寸法を
小さくし、且負荷状態や停車時の地面の状態、更
には出力に関係なく良好に始動可能な自動車に好
適に使用され得る前進・後退歯車装置のクラツチ
装置を提供することにある。

本発明によれば、前進用の摩擦デイスククラツ
チを作動するサーボ装置と連続的に可動のプーリ
駆動装置の第１のプーリを調整する流体調整装置
とを好適に組み合わせて構成することにより、ク
ラツチ装置を含む動力伝達機構全体の軸方向の寸
法が大巾に減少できる。この構成により、製造も
簡潔となりかつ簡単な流体供給機構と同時にクラ
ツチ装置を含む動力伝達機構全体を取付可能であ
り、２個の摩擦デイスククラツチのサーボ装置の
流体供給機構および流圧調整装置を好適に制御で
きるので、流体トルクコンバータとしての別個の
始動クラツチを設ける必要がない。

以下本発明を好ましい実施例に沿つて説明す
る。図示の動力伝達機構のクラツチ装置全体は軸
方向および半径方向の寸法が極めてコンパクトに
なるように構成される。動力伝達機構の入力シヤ
フト１はエンジンの駆動シヤフトに対し軸方向に
整合されており、従つて入力シヤフト１はエンジ
ンにより直接駆動される。入力シヤフト１は摩擦
デイスク式の前進用のクラツチ２および摩擦板式
の後退用のクラツチ３を介し遊星歯車装置４に連
係される。前進および後退用のクラツチ２，３を
選択的に作動させることにより遊星歯車装置４に
おいて切り換え動作が行なわれ、動力伝達機構が
前進方向又は後退方向に駆動される。一方連続的
に作動状態が変化し得るプーリ駆動装置５の主プ
ーリが入力シヤフト１に対し同軸に配設され流体
調整装置６を介し調整可能に設けられている。前
記入力シヤフト１により流体ポンプ７が駆動され
る。流体ポンプ７は動力伝達機構のハウジング内
にかつ入力シヤフト１のクラツチと反対側の他端
部に配設され、前記ハウジングのカバーロツクか
ら調整動作可能に設けられている。プーリ駆動装
置５の第２のプーリ９には流圧調整装置６と異な
る構成の調整装置８が連設されており、第２のプ
ーリ９に動力伝達機構における入力シヤフト１と
平行な第２の主軸が連結されている。第２のプー
リ９の駆動により出力歯車装置１０が駆動され、
これに伴い更に出力歯車装置１０が差動歯車装置
１１と連動可能に連結されているので差動歯車装
置１１が駆動される。一方自動車の前輪を駆動す
る車軸シヤフトが差動歯車装置１１と共動可能に
固設されており、差動歯車装置１１の作動により
前記車軸シヤフトが駆動されることになる。従つ
て、入力シヤフト１は動力伝達機構の他の主軸を
なす前記車軸シヤフトに対しても平行に位置す
る。

入力シヤフト１には遊星歯車装置４の一体のピ
ニオン支承体１２が装着される。すなわちピニオ
ン支承体１２にはボルト１３上で互いに噛み合う
ピニオンギヤ１４ａ，１４ｂが支承され、一のピ
ニオンギヤ１４ａは太陽歯車１５と、他方のピニ
オンギヤ１４ａはピニオンギヤ１４ｂを介し遊星
歯車装置４のリングギヤ１６と噛み合つている。
太陽歯車１５はプーリ駆動装置５の第１のプーリ
用の中空の駆動シヤフト１７に固定され、駆動シ
ヤフト１７は針状のころ軸受１８を介して入力シ
ヤフト１上に支承されている。

前進および後退用のクラツチ２，３は夫々複数
の摩擦デイスクで構成されている。更に詳述する
にクラツチ２には第１の群の摩擦デイスクを支承
する第１の支承体１９が包有され、第１の支承体
１９自体はピニオン支承体１２に対し固設され
る。クラツチ２にはまたサーボシリンダ２０と一
体に形成された第２の群の摩擦デイスクを支承す
る第２の支承体が包有され、サーボシリンダ２０
内にはクラツチ２を作動するサーボピストン２１
が内装される。クラツチ２がサーボピストン２１
を介し作動されたとき、ピニオン支承体１２はピ
ニオンギヤ１４ａおよび太陽歯車１５を介しプー
リ駆動装置５の駆動シヤフト１７に連結され、こ
れにより動力伝達機構が前進方向に駆動されるこ
とになる。一方後退用のクラツチ３には第１の群
の摩擦デイスクを支承する第１の支承体２２が包
有され、第１の支承体２２自体は遊星歯車装置４
のリングギヤ１６に固設される。第２の群の摩擦
デイスクを支承する第２の支承体は動力伝達機構
のハウジングにより形成され、前記ハウジングの
前面壁によりサーボシリンダ３７が区画されてお
り、サーボシリンダ３７内にはクラツチ３を作動
するサーボピストン２３が内蔵される。サーボピ
ストン２３は流体圧を受けクラツチ３が必要に応
じて作動されると、リングギヤ１６が固定されリ
ングギヤ１６が遊星歯車装置４の連係部材として
機能するので、プーリ駆動装置５の駆動シヤフト
１７は互いに噛み合うピニオンギヤ１４ｂ，１４
ａおよび前記ピニオンギヤ１４ａと噛み合う太陽
歯車１５を介し駆動されて、動力伝達機構は後退
方向に駆動されることになる。

またサーボシリンダ２０はシートメタルで形成
されておりかつ遊星歯車装置４の太陽歯車１５の
ボスに設けられた拡大部に固設され、且前記拡大
部によりプーリ駆動装置５の第１のプーリに対す
る肩部２４が形成される。前記拡大部に対して更
にシートメタル片が固設され、これにより第１の
プーリに対する流体調整装置６の調整ピストン２
５が形成される。調整ピストン２５は又サーボシ
リンダ２０に対し固設され、且調整ピストン２５
およびサーボシリンダ２０の２部材相互は、前記
２部材の間に空間２６が区画されると共に前記空
間２６がサーボピストン２１を作動する流体の流
路の一部をなすよう設けられている。またサーボ
シリンダ２０および流体調整装置６の調整ピスト
ン２５は流体調整装置６６の調整シリンダ２７に
より囲繞され、調整シリンダ２７自体はプーリ駆
動装置５の第１のプーリの軸方向に移動可能な心
車２８の背面部に固結され、心車２８自体は固定
の心車２９と共に駆動シヤフト１７に一体形成さ
れている。且心車２８は太陽歯車１５のボス拡大
部により形成される肩部２４と当接保持されてい
るボスを具備するので、駆動シヤフト１７を軸方
向に調整し駆動シヤフト１７に螺着される調整ナ
ツト３０を固定することによりプーリ駆動装置５
の第１のプーリが固定位置にされる。

サーボシリンダ２０および調整ピストン２５の
間に区画される空間２６は、太陽歯車１５のボス
内および駆動シヤフト１７内を貫通する開口部３
１を介し流体導入用のチヤネル３２と連通され
る。チヤネル３２自体は中空の駆動シヤフト３３
内に形成され、流体ポンプ７は入力シヤフト１に
より駆動される駆動シヤフト３３を介し作動され
る。また流体ポンプ７を駆動する駆動シヤフト３
３は、プーリ駆動装置５の駆動シヤフト１７に沿
つて位置せしめられ、駆動シヤフト３３および１
７により流体導入用の別のチヤネルをなす環形空
間３４が区画されるよう構成される。前記環形空
間３４は、駆動シヤフト１７に設けられた開口部
３５および第１のプーリの心車２８のボスに設け
られた開口部を介し流体調整装置６と連通され
る。したがつて好適に制御されつゝ流体がチヤネ
ル３２からサーボシリンダ２０の開口部３２′を
介し供給されると、前進用のクラツチ２が作動可
能となり、又第２の流体導入チヤネルをなす環形
空間３４から流体が供給されると、プーリ駆動装
置５の第１のプーリの心車２８が軸方向に変位さ
れうるので、プーリ駆動装置５の第１および第２
のプーリ間において動力を伝達する駆動ベルト３
６を半径方向内側又は外側へ移動することにより
動力伝達比を連続的に変化できる。

上述のような流体の制御は又後退用のクラツチ
３のサーボピストン２３に対しても行なわれ得、
この場合サーボシリンダ３７にも導入用開口部
（図示せず）が設けられることは理解されよう。
したがつて前進および後退用のクラツチを作動す
るサーボ装置に対する流体の導入、およびプーリ
駆動装置の第１のプーリの流体調整装置に対する
流体の導入を周知の方法で制御することにより、
流体トルクコンバータとして別個の始動クラツチ
を必要とせずに自動車を好適に始動でき、動力伝
達機構のクラツチ装置の軸方向の寸法を大巾に小
さくできる。したがつて本発明の動力伝達機構の
クラツチ装置は前輪駆動の自動車の２サイドフレ
ーム間に好適に取付可能である。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の動力伝達機構のクラツチ装置の
断面図である。 １……入力シヤフト、２，３……クラツチ、４
……遊星歯車装置、５……プーリ駆動装置、６…
…流体調整装置、７……流体ポンプ、８……調整
装置、９……第２プーリ、１０……出力歯車装
置、１１……差動歯車装置、１２……ピニオン支
承体、１３……ボルト、１４ａ，１４ｂ……ピニ
オンギヤ、１５……太陽歯車、１６……リングギ
ヤ、１７……駆動シヤフト、１８……ころ軸受、
１９……第１の支承体、２０……サーボシリン
ダ、２１……サーボピストン、２２……第１の支
承体、２３……サーボピストン、２４……肩部、
２５……調整ピストン、２６……空間、２７……
調整シリンダ、２８，２９……心車、３０……調
整ナツト、３１……開口部、３２……チヤネル、
３２′……開口部、３３……駆動シヤフト、３４
……環形空間、３５……開口部、３６……駆動ベ
ルト、３７……サーボシリンダ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 夫々サーボピストンおよびサーボシリンダを
   介し作動され遊星歯車装置を切り換え動力伝達機
   構を前進、並びに後退方向に駆動可能な前進およ
   び後退用の摩擦デイスククラツチと、第１および
   第２のプーリと前記２プーリ間に動力を伝達する
   駆動ベルトとを有した連続的に動作が可変のプー
   リ駆動装置と、前記遊星歯車装置が連結された太
   陽歯車を支承する入力駆動シヤフトと、前記入力
   駆動シヤフトに固結される固定心車に対する調整
   ピストンおよび調整シリンダを有した流体調整装
   置とを備え、前記第１および第２のプーリは夫々
   固定の心車および可動の心車を有し前記第１のプ
   ーリの少なくとも前記可動の心車は前記流体調整
   装置を介し、位置調整可能に設けられ、前記遊星
   歯車装置が前記前進用クラツチが作動されるとき
   前記入力駆動シヤフトに連結されるピニオンギヤ
   を支承するピニオン支承体と前記後退用クラツチ
   が作動されるとき前記動力伝達機構のハウジング
   に連結されるリングギヤとを有し前記遊星歯車装
   置を介し前記動力伝達機構が前進並びに後退方向
   に駆動可能に設けられ前記流体調整装置の調整ピ
   ストンは前記前進用のクラツチを作動する前記サ
   ーボピストンの前記サーボシリンダに対し軸方向
   において固定されるよう固結され、前記サーボピ
   ストンは前記第１のプーリの前記可動心車に固結
   された前記調整シリンダにより少なくとも一部が
   囲繞されてなる、動力伝動機構のクラツチ装置。 ２ 前進用のクラツチを作動するサーボピストン
   のサーボシリンダおよびプーリ駆動装置の第１の
   プーリに対し設けられる流体調整装置の調整ピス
   トンが夫々シートメタルで作られかつ遊星歯車装
   置の太陽歯車のボスに固結されてなる特許請求の
   範囲第１項記載のクラツチ装置。 ３ 遊星歯車の太陽歯車のボスがプーリ駆動装置
   の第１のプーリの可動心車のボスの肩部をなして
   なる、特許請求の範囲第１項記載のクラツチ装
   置。 ４ 前進用のクラツチを作動するサーボピストン
   のサーボシリンダと流体調整装置の調整ピストン
   との間に流体用の空間が区画されかつ前記空間が
   サーボピストンと連通する流体導入チヤネルの一
   部をなしてなる特許請求の範囲第１項記載のクラ
   ツチ装置。 ５ 流体用の空間が遊星歯車装置の太陽歯車のボ
   スに設けられた開口部とプーリ駆動装置の中空の
   入力駆動シヤフトの別の開口部とを介し流体導入
   チヤネルと連通され、前記流体導入チヤネルは前
   記遊星歯車装置のピニオン支承体により、駆動可
   能に設けられかつ中空の前記入力駆動シヤフト内
   に配設される中空のポンプ駆動シヤフトにより区
   画されてなる特許請求の範囲第４項記載のクラツ
   チ装置。 ６ ポンプ駆動シヤフトと前記ポンプ駆動シヤフ
   トを囲繞するプーリ駆動装置の入力駆動シヤフト
   とにより環形空間が区画され、前記環形空間は前
   記入力駆動シヤフトに設けられた開口部と前記プ
   ーリ駆動装置の可動心車のボス部に設けられた別
   の開口部とを介し、流体調整装置と連通する流体
   導入チヤネルと連通されてなる特許請求の範囲第
   ５項記載のクラツチ装置。 ７ 後退用クラツチを作動するサーボピストンの
   サーボシリンダが動力伝達機構のハウジングの前
   面壁に一体に形成されてなる特許請求の範囲第１
   項記載のクラツチ装置。 ８ 遊星歯車装置のピニオン支承体が針状のころ
   軸受を介しプーリ駆動装置の入力駆シヤフトによ
   り支承され、かつエンジンの駆動シヤフトに対し
   軸方向に直結される動力伝達機構の入力シヤフト
   と一体に形成されてなる特許請求の範囲第１項記
   載のクラツチ装置。