JPH0343054Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は動力伝達装置，特に４輪駆動車用動力
伝達装置における切換スリーブの支持構造に関す
る。

〔従来技術〕

この種の動力伝達装置の一形式として、第１の
ケーシング内に収容されて変速機から入力される
動力を分割して前輪駆動系および後輪駆動系へ出
力する前後輪用差動装置と、前記第１のケーシン
グの一側に組付けた第２のケーシング内に収容さ
れて前記差動装置の同ケーシング内に延出する一
方の出力軸上に位置し同出力軸から入力される動
力を前記両駆動系の一方へ出力する方向変換歯車
と、前記出力軸上にスプライン嵌合にて組付けら
れ軸方向の摺動により同出力軸と前記差動装置の
ケース側または前記方向変換歯車との連結を断続
する切換スリーブと、この切換スリーブに常時係
合し外部操作により同切換スリーブを摺動させる
シフトフオークを備えてなる動力伝達装置があ
る。かかる動力伝達装置は例えば本出願人の出願
に係る特願昭58−224876号，実願昭59−28099号
等にて示されている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ところで、かかる動力伝達装置の組付けに当つ
ては、前記差動装置を第１のケーシングに収容し
て支持するとともに、第２のケーシングに方向変
換歯車を収容して支持し、かつ切換スリーブをシ
フトフオークに係合させてサブアツセンブリの状
態にて組付け、この状態の第２のケーシングを第
１のケーシングの一側に組付ける。この際、第２
のケーシングに組付けた切換スリーブを第１のケ
ーシングの一側から突出する出力軸上にスプライ
ン嵌合する必要があるが、切換スリーブと出力軸
上のスプラインの位相がずれていることがしばし
ばあり、また切換スリーブはシフトフオークに係
合して支持されているにすぎないためその位置調
節が難しい。このため、切換スリーブと出力軸上
のスプラインの位相がずれていてこれら両者のス
プライン嵌合が不可能な場合、第２のケーシング
を大きく揺することにより切換スリーブの位置調
節を行い、これら両者をスプライン嵌合している
のが実状である。従つて、このような組付作業の
作業性は決してよくなく、その作業性の向上が望
まれている。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案はかかる問題に対処すべく、前記したこ
の種の動力伝達装置における前記方向変換歯車ま
たはこれを支持する支持部材と前記切換スリーブ
との互に対向する部位に、同切換スリーブを前記
方向変換歯車または支持部材に対して径方向に位
置決めする位置決め手段と、軸方向へ移動可能か
つトルク伝達可能に連結する連結手段を設けてい
る。

〔考案の作用・効果〕

これにより、本考案においては、切換スリーブ
をサブアツセンブリの状態で第２のケーシングに
組付けたとき、同切換スリーブは位置決め手段と
連結手段とにより前記方向変換歯車または支持部
材に同軸的かつトルク伝達可能に支持される。こ
のため、切換スリーブは安定した状態に支持され
るとともに、方向変換歯車と噛合するドライブピ
ニオン等を外部から回転操作することにより回転
されてスプラインの位相の調節をすることができ
る。従つて、本考案によれば、両ケーシングを組
付ける際に前記差動装置の出力軸のスプラインと
切換スリーブのスプラインとの位相がずれている
場合には、切換スリープのスプラインの位相を容
易に調節して同切換スリーブを出力軸にスプライ
ン嵌合できるため、組付作業の作業性が向上する
とともにその信頼性も向上する。

〔実施例〕

以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明
するに、第１図には本考案に係る支持構造を採用
した動力伝達装置が示されている。この動力伝達
装置は横置前エンジン式の動力伝達装置で、この
動力伝達装置においては図示しないエンジンの側
部にクラツチ装置を介してトランスミツシヨン１
０が取付けられている。トランスミツシヨン１０
は、終減速機と一体の横置前エンジン式の前輪駆
動用動力伝達装置として公知のもので、クランク
軸と同軸的な入力軸１１とこれに平行な出力軸１
２を備えている。なお、クランク軸および入力軸
１１は車体幅方向（横方向）に延びている。

本実施例においては、トランスミツシヨン１０
のケーシング１３内の従来終減速機が配設されて
いた部位に、前後輪用差動装置たる中間差動装置
２０と前輪用差動装置３０とが配設されている。

中間差動装置２０は、入力される動力を分割し
て前輪駆動系および後輪駆動系へ出力する傘歯車
式の差動装置で、トランスミツシヨン１０の出力
軸１２に設けた出力ギヤ１４に常時噛合するリン
グギヤ１５を一体的に支持している。この中間差
動装置２０はそのケース２１にてトランスミツシ
ヨン１０のケーシング１３に回転可能に支持され
ており、このケース２１内に前輪用差動装置３０
が配設されている。この中間差動装置２０におい
ては、左側サイドギヤ２２が前輪用差動装置３０
のケース３１と一体的に形成されており、また右
側サイドギヤ２３には中空シヤフト部２３ａが形
成されている。この中空シヤフト部２３ａは、図
示しないエンジンの後方にてトランスミツシヨン
１０のケーシング１３の一側に組付けた第２のケ
ーシングたる付加ハウジング１６内に突出してい
る。前輪用差動装置３０は中間差動装置２０の一
側にてこれと同軸的に配置されており、その左側
サイドギヤ３２が中間差動装置２０のケース２１
を回転可能に貫通し、かつ同サイドギヤ３２に動
力伝達可能に連結した左側フロントアクスル４１
がケーシング１３を液密的かつ回転可能に突出し
ている。また、右側サイドギヤ３３は前輪用差動
装置３０のケース３１を回転可能に貫通してお
り、同サイドギヤ３３に動力伝達可能に連結した
右側フロントアクスル４２が中間差動装置２０の
右側サイドギヤ２３の中空シヤフト部２３ａを貫
通して付加ハウジング１６の右端部を液密的かつ
回転可能に突出している。

この付加ハウジング１６内には、円錐上のマウ
ントケース４３が回転可能に支持されている。こ
のマウントケース４３は中間差動装置２０の中空
シヤフト部２３ａの先端部外周に動力伝達可能に
組付けられていて、その大径先端外周部には方向
変換歯車たる後輪駆動用リングギヤ４４が取付け
られている。このリングギヤ４４は中間差動装置
２０から入力される動力を方向変換して後輪側へ
出力すべく機能するもので、付加ハウジング１６
に回転可能に支持したドライブピニオン４５に常
時噛合している。なお、ドライブピニオン４５
は、車両の中央にてその前後方向に位置し、図示
しない公知のプロペラシヤフトおよび後輪用終減
速機を介してリヤアクスルに動力伝達可能に連結
されている。この付加ハウジング１６内には、リ
ングギヤ４４と中間差動装置２０との間にて中空
シヤフト部２３ａの外周に切換スリーブたるカツ
プリングスリーブ４６が配設されている。このカ
ツプリングスリーブ４６は中空シヤフト部２３ａ
の外周に軸方向へのみ摺動可能にスプライン嵌合
していて、中間差動装置２０のケース２１と係脱
してケース２１と中空シヤフト部２３ａとの連結
を断続する。なお、カツプリングスリーブ４６は
第２図に示すようにシフトフオーク４７に常時係
合していて、シフトフオーク４７を固定したシヤ
フト４８の軸方向移動とデイテント機構４９の位
置決め作用にて間欠的に摺動し、中空シヤフト部
２３ａと連結しまたは非連結となる。

これにより、エンジンの駆動力がクランク軸か
らクラツチ装置を介してトランスミツシヨン１０
の入力軸１１へ入力されると、変速ギヤ組のいず
れかのギヤ組で変速されて出力軸１２に伝達され
る。この駆動力は、出力ギヤ１４からリングギヤ
１５を介して中間差動装置２０に入力され、カツ
プリングスリーブ４６により次のように出力され
る。

(1) カツプリングスリーブ４６が中間差動装置２
０のケースとは連結していない場合には（第１
図示上側参照）、ケース２１と右側サイドギヤ
２３とは非連結状態にある。このため、中間差
動装置２０に入力された駆動力はサイドギヤ２
２，２３に分割されて出力し、左側サイドギヤ
２２からは前輪用差動装置３０（前輪側）に伝
達されかつ右側サイドギヤ２３からはリングギ
ヤ４４（後輪側）に伝達される。従つて、当該
動力伝達装置は車両を中間差動装置２０の差動
機能を有効にした状態で４輪駆動を可能とす
る。

(2) カツプリングスリーブ４６がケース２１と連
結している場合には（第１図示下側参照）、ケ
ース２１と右側サイドギヤ２３とが連結状態に
ある。このため、中間差動装置２０に入力され
た駆動力は両サイドギヤ２２，２３に分割され
て出力し前輪および後輪側へ伝達されるが、中
間差動装置２０の差動機能は無効となる。従つ
て、当該動力伝達装置は車両を中間差動装置２
０の差動機能を無効にした状態で４輪駆動可能
とする。

しかして、本実施例においては第３図〜第５図
に示すように、マウントケース４３のボス部４３
ａの一端に中空シヤフト部２３ａと同心的な環状
凹所４３ｂが形成されている。この環状凹所４３
ｂは、カツプリングスリーブ４６の端部に設けた
環状突起部４６ａが軸方向に抜差し可能に嵌挿さ
れる大きさに形成されていて、カツプリングスリ
ーブ４６を径方向に位置決めする。従つて、これ
ら凹所４３ｂと突起部４６ａとは、カツプリング
スリーブ４６をマウントケース４３に対して径方
向に位置決めする手段として機能する。また、マ
ウントケース４３の環状凹所４３ｂには軸方向に
突出する連結ピン４３ｃが植設されている。この
連結ピン４３ｃはカツプリングスリーブ４６の環
状突起部４６ａに設けた凹所４６ｂに抜差し可能
に嵌挿される大きさに形成されていて、カツプリ
ングスリーブ４６をトルク伝達可能に連結する。
従つて、これら連結ピン４３ｃと凹所４６ｂと
は、カツプリングスリーブ４６をマウントケース
４３に対して軸方向へ移動可能かつトルク伝達可
能に連結する手段として機能する。

このように構成した動力伝達装置においては、
中間差動装置２０および前輪用差動装置３０を収
容して支持したケーシング１３の一側に、マウン
トケース４３，リングギヤ４４，ドライブピニオ
ン４５，シヤフト４８，シフトフオーク４７，カ
ツプリングスリーブ４６等を収容して支持した付
加ハウジング１６が組付けられる。この組付け時
において、ケーシング１３の一端からは右側サイ
ドギヤ２３の中空シヤフト部２３ａが突出してい
て、中空シヤフト部２３ａ上にカツプリングスリ
ーブ４６およびマウントケース４３をスプライン
嵌合させて付加ハウジング１６をケーシング１３
の一端に組付けられる。

ところで、かかる組付け時カツプリングスリー
ブ４６はシフトフオーク４７およびマウントケー
ス４３により支持され、特にマウントケース４３
に対してはこれら両者の環状凹所４３ｂと環状突
起部４６ａとにより径方向に位置決めされ、さら
に連結ピン４３ｃと凹所４６ｂとにより軸方向へ
移動可能かつトルク伝達可能に連結されている。
このため、カツプリングスリーブ４６は安定した
状態で支持され、かつドライブピニオン４５を外
部からの回転操作により回転可能であるため、中
空シヤフト部２３ａとの間にスプラインの位相に
ずれがある場合にはこれを容易に調節でき、中空
シヤフト部２３ａに対してスプライン嵌合を容易
に行うことができる。従つて、かかる組付作業の
作業性が向上するとともにその信頼性も向上す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る支持構造を採用した動力
伝達装置の横断面図、第２図は同装置の拡大部分
縦断面図、第３図は同装置の拡大要部横断面図、
第４図はマウントケースの一端面図、第５図はカ
ツプリングスリーブのマウントケースに対向する
一端面図である。 符号の説明、１０……トランスミツシヨン、１
３……ケーシング、１６……付加ハウジング、２
０……中間差動装置、３０……前輪用差動装置、
４３……マウントケース、４３ｂ……環状凹所、
４３ｃ……連結ピン、４４……リングギヤ、４６
……カツプリングスリーブ、４６ａ……環状突起
部、４６ｂ……凹所、４７……シフトフオーク。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 第１のケーシング内に収容されて変速機から入
   力される動力を分割して前輪駆動系および後輪駆
   動系へ出力する前後輪用差動装置と、前記第１の
   ケーシングの一側に組付けた第２のケーシング内
   に収容されて前記差動装置の同ケーシング内に延
   出する一方の出力軸上に位置し同出力軸から入力
   される動力を前記両駆動系の一方へ出力する方向
   変換歯車と、前記出力軸上にスプライン嵌合にて
   組付けられ軸方向の摺動により同出力軸と前記差
   動装置のケース側または前記方向変換歯車側との
   連結を断続する切換スリーブと、この切換スリー
   ブに常時係合し外部操作により同切換スリーブを
   摺動させるシフトフオークを備えてなる動力伝達
   装置において、前記方向変換歯車またはこれを支
   持する支持部材と前記切換スリーブとの互に対向
   する部位に、同切換スリーブを前記方向変換歯車
   または支持部材に対して径方向に位置決めする位
   置決め手段と、軸方向へ移動かつトルク伝達可能
   に連結する連結手段を設けたことを特徴とする動
   力伝達装置における切換スリーブの支持構造。