JPH0313004B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、軸方向の切削をおこなうドリルおよ
び軸方向切削と水平方向の切削をおこなうエンド
ミルなどの転削工具に関し、さらに詳細には該工
具の軸方向切削を効果的におこなえるようにした
ものである。

［従来の技術］ 従来、ドリルやエンドミルなど工具の軸方向切
削を自転しながら切削する工具は、切刃の中心部
分の切刃構成は軸方向切削に必ずしも適するもの
ではなかつた。

すなわち、ドリルにおいては軸中心部の回転が
極端に遅い部分に大きな負のすくい角が形成され
てあつたり、エンドミルにあつては工具の中心部
から外周部までを直線状の切刃で構成されてい
る。

［従来技術の問題点］ 前記したドリルにあつては喰い付き性が悪く、
求芯性に問題を有して精度の高い加工穴が得られ
難いのと、切削時にスラスト荷重が著しく増大し
てドリルの中心部切刃の摩耗が進展し、寿命を大
きく低下させている。

また、前記したエンドミルにあつては工具の中
心部から外周部に至るまで直線的な切刃であるた
めに、切削時において回転が極端に遅い中心部切
刃と周速の高い外周部切刃とが同時に被削面にベ
タ当たりするような状態で切削が開始される。

このため中心部切刃に大きな切削負荷が加えら
れるのと同時に生成されてくる切屑は、高熱で切
刃中心部に向かう程厚くなつて切刃に溶着し易い
ものとなる。

以上のようなことから中心部切刃の摩耗を大き
く促進させたり切刃の欠損を多発させたりして効
果的な穿孔切削を阻害している。

［発明の目的］ 本発明は、上記した問題点を解決するためにな
したもので、ドリルまたはエンドミルなど軸方向
の切削をおこなう工具の切刃中心部分を改良し、
切削時のスラスト荷重を低下させ、かつ求芯性を
あげるのと共に、中心部分の切刃の摩耗または欠
損を防止できる転削工具を提供することを目的と
するものである。

［問題点を解決するための手段］ 本発明は、前々記した問題点を下記する構成に
よつて解決したものである。

すなわち、工具本体に一対の外周切刃と切屑排
出溝と、その端面には逃げ面が所定の逃げ角を有
して形成されてあり、しかも該端面には前記本体
の軸中心を基準に所定の間隔を有して軸中心に向
かつて傾斜する凹部が設けられてあり、該凹部の
工具回転後方側の傾斜面と工具回転前方側のすく
い面とがなす稜線部を工具の中心部切刃とし、か
つ逃げ面とすくい面とが形成する稜線部を中心部
切刃とし、前記した中心部切刃と中心側切刃と外
周側切刃とを折線状に連続形成させたものであ
る。

［発明の作用］ 本発明は、上記したような構成にしたことによ
つて、工具の端面に形成される軸方向切削に有効
である切刃（穿孔刃）は、中心部切刃と中心側切
刃と外周切刃側切刃の３段切刃となり、特に中心
部切刃ならびに中心側切刃の軸方向すくい面のす
くい角を零またはプラスあるいはゆるやかなマイ
ナスとなる。

中心部切刃ならびに中心側切刃を以上のように
なしたことによつて初期切削時の被削材に対する
この工具の喰い付き性が大巾に高められ、その後
の穴加工を精度の高いものにするし、従来ドリル
のように穿孔時の「押しつぶし」や「こすり破
壊」の連続するようなことが防止でき、スラスト
負荷を大きく減少させて切刃の摩耗や欠損を減じ
させながら低負荷で切削する。

また、有効切刃が長く、しかも工具の中心部ま
で切刃が形成できる折線状の３段切刃としたこと
によつて、穿孔時に生成される切屑は該切刃に沿
つたきわめて折れ易く排出性の高いものになつて
中心部切刃や中心側切刃などに切屑の溶着するこ
とが極端に少なくなり、これによる不具合も解消
するものである。

［実施例］ 以下、本発明の実施例を添付した図面にもとづ
いて説明する。

図は、いずれも本発明になる転削工具を示した
もので、第１図はドリルに応用したものであつ
て、そのａは中心部の底面図で、ｂはａのＡ矢視
による側面図、ｃはａのＢ矢視による側面図、第
２図と第３図は硬質合金を切刃としたドリルに応
用したもので、第２図は要部の正面図、第３図は
第２図の底面図、第４図は第３図の詳細図であつ
て、そのａは底面図、ｂはａのＡ矢視による側面
図、ｃはａのＢ矢視による側面図、ｄはａのＣ矢
視による側面図、第５図は別の実施例によるもの
で、ａは切刃要部の底面図、ｂはａの側面図、第
６図はさらに別の実施例を示したもので、ａは切
刃要部の底面図、ｂはａの側面図などである。

第１図において、ドリル本体１には一対の外周
側切刃１１，１１ａと切屑排出溝１２，１２ａ
と、端面には逃げ面１３，１３ａが所定の逃げ角
を有して形成されている。

そして、工具の中心１０を基準に図ｃに示す如
く間隔Ｓ（0.02mm〜ドリル径×0.3mm）を有して工
具の中心１０側に向かつて傾斜角θ（５度〜175
度、実施例は120度）を有して形成した凹部を有
し、この凹部の工具回転方向Ｒ後方側の傾斜面１
５，１５ａと工具回転方向Ｒ前方側のすくい面１
６，１６ａとがなす稜線部を中心部切刃１４，１
４ａとし、前記した逃げ面１３，１３ａとすくい
面１６，１６ａとがなす稜線部を中心側切刃１
７，１７ａとさせ、前記した外周側切刃１１，１
１ａと中心側切刃１７，１７ａと中心部切刃１
４，１４ａとは３段的で折線状に連続形成させて
ある。

以上、述べたように中心部切刃１４，１４ａを
傾斜面１５，１５ａとすくい面１６，１６ａとに
よつて凹設させたので該切刃は工具中心１０まで
形成でき、かつそのすすくい面は工具の軸方向に
対して零またはプラス、あるいはゆるやかなナイ
ナス角など切削条件によつて任意のすくい角が設
定できるので従来から問題となつていた工具の中
心部を効率よく切削できるようになり、しかも前
記したように中心部から外周部に至るまで有効的
な３段状の切刃が形成できて切削時に生成される
切屑は巾広く薄く折れ易いものとなつて切屑排出
性を大きく高め切屑による不具合を解消するもの
である。

次に、第２図と第３図とによつて硬質合金以外
の金属から形成したシヤンク１ａの先端部所定位
置のチツプ座に一対の硬質合金製のチツプ２，２
ａをロウ付け、または機械的に固着した転削工具
に本発明を応用したものについて述べる。

工具中心１０ａを基準に工具回転方向Ra前方
側に突出する円弧状の切刃１００，１００ａと直
線状または曲率が前記円弧状切刃より小さい弧
状、あるいは波形などの切刃２００，２００ａと
を連続的に形成させたものにおいて、前記円弧状
切刃１００，１００ａのほゞ中央部から前記した
実施例と同様の間隔Ｓと傾斜角θを付与した傾斜
面１５０，１５０ａを凹設し、この傾斜面とすく
い面１６０，１６０ａとがなす稜線部を中心部切
刃１４０，１４０ａとさせ、これと中心部側切刃
１７０，１７０ａと外周側切刃１１０，１１０ａ
とを連続的に形成させた３段切刃としても前記し
た実施例の転削工具と同様の作用と効果を有し、
かつ切屑ポケツト３００，３００ａが大きく形成
できるので切削時の切屑排出性は、さらに向上す
る。

次に、第５図ａ，ｂによつてエンドミルに本発
明を応用した例について述べる。

図は、切刃の要部を示したもので、同図のａは
底面図であつて、ｂはａの側面図である。

工具中心部１０ｂに切刃始端を有する主チツプ
２ｂと、切刃始端が前記工具中心から離れた位置
にある補助チツプ２ｃとからなつて、工具回転方
向Rbの前方側に凸の中心部切刃と直線状の外周
部切刃を設けてあつて、工具中心１０ｂを基準に
前々記した実施例と同様の間隔Ｓと傾斜角θを付
与した傾斜面１５０ｂ，１５０ｃを凹設し、この
傾斜面とすくい面１６０ｂ（一方を省略）とがな
す稜線部を中心部切刃１４０ｂ，１４０ｃとさ
せ、これと中心部側切刃１７０ｂ，１７０ｃと外
周側切刃１１０ｂ，１１０ｃとを連続的に形成さ
せたものであつて、この構成によつても前々記し
た効果を有しながら軸方向切削ならびに半径方向
切削がきわめて良好におこなえるエンドミルとな
る。

また、第６図ａ，ｂに示したものは、一対の切
刃の始端部を工具中心から所定量離間させたドリ
ルの切刃の要部を示したものであつて、その構成
は上記してきた実施例と同様に工具中心１０ｃを
基準に間隔Ｓと傾斜角θを付与した傾斜面１５０
ｄ，１５０ｅを凹設し、この傾斜面とすくい面１
６０ｃ（一方を省略）とがなす稜線部を中心部切
刃１４０ｄ，１４０ｅとさせ、これと中心側切刃
１７０ｄ，１７０ｅと外周側切刃１１０ｄ，１１
０ｅとを連続形成させても上記してきた実施例と
同様の作用と効果を有する。

［発明の作用］ 本発明になるドリルと、比較のための従来ドリ
ルを用意して以下のテストをした。

ドリル径は、いずれも20mmである。使用機械は
タテ型フライス盤で、その馬力は7.5KWである。
そして被削材はS55C（HB170〜200）で、その板
厚は50mmである。

また切削条件は、回転数850rpm、１回転当り
の送り量は0.3mm／rev、切削方法は湿式で、エマ
ルジヨンタイプの水溶性切削油（×４倍に希釈）
を用い、給油方法はドリルの内部から強制給油し
た。

以上によるテスト結果は、本発明のドリルは15
ｍ切削後の中心部切刃の二番摩耗巾は従来ドリル
の約1/5であつた。

また、切削時のスラスト抵抗を測定した結果、
本発明ドリルは従来ドリルの約85％であつた。

本発明は、以上述べたように転削工具の切刃中
心部を凹ませて、この凹ませた部分の一方側を切
刃とさせ、これを中心側切刃と外周側切刃とに３
段的に連続形成させたことによつて、該工具の中
心部まで有効切刃が形成できてスムースな穿孔切
削がおこなえるようになり、これによつて切削抵
抗を軽減せしめ、切刃の摩耗または欠損を防止で
きたのと同時に、工具中心部まで切刃の形成が可
能になつたので初期切削時の求芯性が高くなり、
加工時の芯振れがきわめて少なくなつて精度の高
い加工穴が得られるようになつたものである。

【図面の簡単な説明】

図は、いずれも本発明になる転削工具を示した
もので、第１図はドリルに応用したものであつ
て、そのａは中心部の底面図で、ｂはａのＡ矢視
による側面図、ｃはａのＢ矢視による側面図、第
２図と第３図は硬質合金を切刃としたドリルに応
用したもので、第２図はその要部の正面図、第３
図は第２図の底面図、第４図は第３図の詳細図で
あつて、そのａは底面図、ｂはａのＡ矢視による
側面図、ｃはａのＢ矢視による側面図、ｄはａの
Ｃ矢視による側面図、第５図は別の実施例による
もので、ａは切刃要部の底面図、ｂはａの側面
図、第６図はさらに別の実施例を示したもので、
ａは切刃要部の底面図、ｂはａの側面図などであ
る。 １，１ａ……本体、１１，１１ａ，１１０，１
１０ａ，１１０ｂ，１１０ｃ，１１０ｄ，１１０
ｅ……外周側切刃、１３，１３ａ……逃げ面、１
４，１４ａ，１４０，１４０ａ，１４０ｂ，１４
０ｃ，１４０ｄ，１４０ｅ……中心部切刃、１
５，１５ａ，１５０，１５０ａ，１５０ｂ，１５
０ｃ，１５０ｄ，１５０ｅ、……傾斜面、１６，
１６ａ，１６０，１６０ａ，１６０ｂ，１６０ｃ
……すくい面、１７，１７ａ，１７０，１７０
ａ，１７０ｂ，１７０ｃ，１７０ｄ，１７０ｅ…
…中心側切刃、Ｒ，Ra，Rb……工具回転方向。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 本体に一対の外周切刃と切屑排出溝と、その
   端面には逃げ面を所定の逃げ角を有して形成さ
   れ、しかも該端面には前記本体の軸中心を基準に
   所定の間隔を有して軸中心方向に向かつて傾斜す
   る凹部が設けられてあり、該凹部の工具回転後方
   側の傾斜面と工具回転前方側のすくい面とがなす
   稜線を工具の中心部切刃とし、かつ逃げ面とすく
   い面とが形成する稜線を中心側切刃とし、前記し
   た中心部切刃と中心側切刃と外周側切刃とを折線
   状に連続形成させたことを特徴とする転削工具。