JPH0232438Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、着色塗装に適した装飾用透光性合
成樹脂板、特に表面に着色塗装を施すことによつ
て生じる美的効果を利用し、透光性装飾板として
各種装飾用に用いられる合成樹脂板に関する。

この種装飾板としては従来より、塩化ビニル単
独重合体よりなる透光性合成樹脂板が一般に用い
られている。これは、塩化ビニル単独重合体が各
種の物理的、化学的性質に優れているため、着色
塗装を施す際、インクや塗料の使用に対し樹脂表
面が侵されることがないうえ、インクや塗料の密
着性、定着性も良好であるという理由に基づくも
のである。

しかし、塩化ビニル単独重合体は、加工温度が
熱分解温度に近く適正加工温度範囲が狭い上に、
ゲル化速度が遅い等の種々の加工上の問題を有し
ており、エンボス成形、真空成形、圧空成形等の
熱加工を施すことに不適である。

このため、装飾板の表面に凹凸模様や波形模様
を施したり、装飾板を折曲成形して形状的装飾効
果を併有せしめる必要のあるような場合は、専ら
塩化ビニル単量体と他の単量体との共重合によつ
て得られる塩化ビニル系共重合体よりなる透光性
合成樹脂板が用いられている。これは、塩化ビニ
ル単量体との他の単量体とを共重合させることに
よつて、加工温度が下がつて熱可塑動性が増し、
適正加工温度範囲が拡張されると共に、軟化温度
が下がつて熱変形が大きくなること等により、熱
成形性が大幅に改善されることによるものであ
る。

ところが反面、この種の塩化ビニル系共重合体
からなる樹脂板は、耐化学薬品性、耐油溶剤性な
どの点で劣るため、その表面にインクや塗料で着
色塗装を施した場合、それらに含む溶剤、とりわ
けケトン系溶剤によつて表面が侵されるという新
たな欠点が派生し、特にインクや塗料が透光性の
ものである場合には透過色が塗りむら状を呈し、
外観が著しく損われ装飾性に劣るものとなるとい
うような問題が生じている。

この考案は、上記のような事情に鑑みてなされ
たものであつて、塩化ビニル単独重合体の有する
欠点と、塩化ビニル系共重合体の有する欠点とを
相互に補完して、着色塗装を施した際にも表面が
侵されることなく、インクや塗料の密着性、定着
性が良好でかつ熱成形性にも優れた、着色塗装に
適した装飾用透光性合成樹脂板を提供することを
目的とする。

この目的達成のためにこの考案は、熱成形性の
良好な塩化ビニル系共重合体からなる透光性基板
の表面に、塩化ビニル単独重合体からなる薄膜状
ないし薄板状の透光性表面被覆層を積層一体化し
て積層板円構成したことを特徴とするものであ
る。

以下、この考案の構成を図示実施例について詳
しく説明する。

第１図および第２図において、１は本考案に係
る装飾用透光性合成樹脂板を示し、この合成樹脂
板１は、基板２と、基板２の表面に積層一体化さ
れた表面被覆層３とによつて構成されている。

基板２は熱成形性の良好な塩化ビニル系共重合
体よりなるものであり、無色透明のものを用いる
のが一般的であるが、更に装飾性を上げるために
着色透明のものを用いても良い。この基板２とし
て用いる前記塩化ビニル系共重合体を構成するた
めの塩化ビニル単量体の相手としては、エチレ
ン、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル、塩化ビ
ニリデン、アクリル酸またはメタクリル酸および
そのエステル、マレイン酸とそのエステル、アク
リロニトリルなどをあげることができる。なかで
も、塩化ビニル−エチレン共重合体または塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体をもつて基板を構成す
るときは、それらが、透明性に優れているため、
光を充分透過し得て優れた美観を表出しうるもの
であり、とりわけ塩化ビニル−エチレン共重合体
よりなる基板は更に表面の平滑性に優れ、艶も良
い点で好適である。

一方表面被覆層３は、塩化ビニル単独重合体よ
りなるものであり、無色透明のもの、着色透明の
ものいずれであつても良い。前記したように、塩
化ビニル単独重合体は熱成形性に劣るため、この
緋覆層３の厚さは、基板２の有する良好な熱成形
性を損わないように薄膜状ないしは薄板状に形成
されるものであり、特に0.5mm以下の厚さとする
のが好適である。

上記被覆層３は、加熱加圧によつて基板２の表
面に積層一体化される。この加熱加圧は、塩化ビ
ニル単独重合体よりなる被覆層３が熱分解しない
温度範囲で行われることはいうまでもない。

かかる構成を有する合成樹脂板１に、図柄４な
どの着色塗装を施す場合には、第３図に示すよう
に被覆層３側の表面に施すものである。この被覆
層３を構成している塩化ビニル単独重合体は耐薬
品性、耐油溶剤性優れており、ケトン系溶剤を含
まないインク、塗料で塗装する場合は勿論のこ
と、それらを含むもので塗装する場合にあつても
表面が侵されることがなく、かつ塗材の密着性、
定着性も良い。従つて、インクや塗料が透光性の
ものであつても、塗りむら状を呈することなく綺
麗な着色状態を顕出できる。尚、着色インクとし
て一般にケトン系溶剤を含むものが使用されるの
は、着色インクの樹脂表面への密着性、定着性が
良好なためである。

一方、合成樹脂板１に熱加工によつて凹凸模様
５や波形模様などを施す場合には、基板２へ施す
こととなる。塩化ビニル系共重合体は熱成形性に
優れているため、美麗な凹凸模様などを容易に形
成することができる。尚、凹凸模様や波形模様の
形成は被覆層３を基板２に積層一体化する工程で
同時的に行つても良い。

第４図および第５図はこの考案に係る合成樹脂
板１に着色塗装を施してステンド調の外観を表出
する装飾板とした場合の具体例を示している。

而して、該装飾板において、塩化ビニル単独重
合体よりなる被覆層３の表面には、黒色の着色イ
ンクによつて境界画線６が肉盛状に形成され、該
境界画線６を除く部分の板面には、着色インクに
よつて少なくとも透光性のものを含む着色塗装
７，７′，７″…が形成されている。かつこの着色
塗装７，７′，７″…はステンド調の装飾効果を出
すために、境界画線６を隔てて相互に色彩を異に
したものとなされている。

一方、塩化ビニル系共重合体よりなる基板２の
裏面には装飾効果を高めるために、凹凸模様５が
施されている。

上記のような装飾板は、被覆層表面に描かれた
境界画線６と着色塗装７，７′，７″…とによつて
ステンド調の雰囲気がかもし出され、透過光が凹
凸模様５によつて屈折、拡散することも相俟つて
ステンド調の装飾性に優れた意匠的外観を表出し
うるものとなつている。

以上説明したように、この考案に係る着色塗装
に適した装飾用透光性合成樹脂板は、その片面が
塩化ビニル単独重合体よりなる透光性被覆層で形
成されているから、この被覆層の表面に着色塗装
を施すことによつて、侵食性のインクや塗料を使
用した場合であつても表面の侵食が防止され、む
らのない美しい外観の着色塗装仕上り状態を得る
ことができると共に、インクや塗料の定着性も極
めて良好で綺麗な着色状態を顕出できる。

また、表面被覆層を薄板状ないしは薄膜状に形
成したから、塩化ビニル系共重合体よりなる基板
の熱成形性が損われることがなく、全体を任意な
形に容易に熱成形することが可能であり、また基
板裏面に凹凸模様や波形模様などをも自由に施す
ことができる。従つて、着色塗装による着色効果
と熱加工によつて施される形状的装飾効果とをも
つて、両者が調和した装飾性の極めて高い外観を
表出するものとなすことができ、各種の装飾板と
しての利用範囲を著しく拡大し汎用性の向上をは
かることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の一実施例を示す斜視図、第
２図はその断面図、第３図は第１図に示した合成
樹脂板の表面に着色塗装を施すと共に、裏面に凹
凸模様を形成した状態を示す斜視図、第４図は本
考案合成樹脂板をもつてステンド調装飾板を構成
した状態の斜視図、第５図はその一部断面図であ
る。 １……合成樹脂板、２……基板、３……表面被
覆層、４……図柄、５……凹凸模様、６……境界
画線、７，７′，７″……着色塗層。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 熱成形性の良好な塩化ビニル系共重合体から
   なる透光性基板の表面に、塩化ビニル単独重合
   体からなる薄板状ないしは薄膜状の透光性表面
   被覆層が積層一体化されてなることを特徴とす
   る着色塗装に適した装飾用透光性合成樹脂板。 (2) 基板が塩化ビニル−エチレン共重合体からな
   る実用新案登録請求の範囲第１項記載の着色塗
   装に適した装飾用透光性合成樹脂板。 (3) 基板が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体から
   なる実用新案登録請求の範囲第１項記載の着色
   塗装に適した装飾用透光性合成樹脂板。 (4) 表面被覆層が厚さ0.5mm以下である実用新案
   登録請求の範囲第１項ないし第３項のいずれか
   １に記載の着色塗装に適した装飾用透光性合成
   樹脂板。