JPH0754270Y2 - 光拡散層を有する転写シートおよび絵付け成形品 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 【産業上の利用分野】

本考案は、光拡散層を有する転写シートに関し、それを
用いて製造した絵付け成形品を包含する。

【従来の技術】

種々の家電機器や機械装置の操作パネルとして、プラス
チックの成形品が広く使用されている。この種の操作パ
ネルにはパイロットランプのついたものが多く、従って
成形品は、その内側においたLED（発光ダイオード）や
豆電球などからの光がよく透過すると同時に拡散して、
広い角度からランプの点灯を確認することができるもの
でなければならない。 このようなパイロットランプつきパネルとする成形品
は、LEDなどが発光しているのを見る、いわば窓となる
部分を除く全面に転写シートで絵付けを行ない、その
後、窓の部分に光拡散効果のあるフィルムを貼るか、既
知の光拡散効果をもつインキを印刷するかして得られ
る。そして、この窓部分の光学的性能としては、高い光
透過率と高い透過光拡散効果を両方をもつことが要求さ
れる。上記した転写後にフィルムの貼りつけや印刷を行
なう製造法は面倒であるから、一度の転写工程で絵付け
を行なうとともに、所望の部分に光拡散性を与えること
が望ましい。 それを実現する転写シートとして、転写台紙の所定部分
を離型性マットインキでマット処理したものや、印刷層
の所定部分に、光を散乱させる粒子を添加した、いわゆ
るマットインキの印刷を施したものを使用することが試
みられた。ところが、前者は、マット処理で形成する凹
凸を大きくすると転写台紙と印刷層との剥離が困難にな
るし、転写層表面の光拡散を利用するため、光拡散を十
分な値にすると光透過率が低下してしまい、両立しな
い。後者は、多量のマット材をインキに充填すると光の
透過度が低下するし光拡散性との両立が困難になるう
え、印刷適性が悪くなるという悩みがある。さらに致命
的な欠点として、既存のマット剤入りインキは、その上
に接着剤層や透明表面層を重ね刷りしたり、転写時に熱
や圧力を加えたりして表面が平滑になると、透過光に対
する光拡散性が著しく低下することが判明した。このよ
うなわけで、十分な光透過率および拡散効果をもつ絵付
け成形品を、一度の転写で得るには至っていない。

【考案が解決しようとする課題】

本考案の目的は、所望の部分に十分な光透過率および光
拡散性を付与できる光拡散層を有する転写シートを提供
することにある。その転写シートを使用して絵付けした
成形品、とくにパイロットランプをそなえた機器操作パ
ネルを提供することも、本考案の目的に含まれる。

【課題を解決するための手段】

本考案の光拡散層を有する転写シートは、第１図に示す
ように、表面に所定のパターンの微細凹凸部（11）を有
する転写台紙（１）上に、転写台紙から剥離しやすく剥
離後は着色インキ層を保護する透明表面層（２）、着色
インキ層（３）および透明接着剤層（４）を順に設けて
なり、着色インキ層が、転写台紙の微細凹凸部に対応す
る部分を透明マットインキ（31）で、他の部分をグロス
インキ（32）で印刷したものである。 転写台紙は、常用のプラスチックフィルム、たとえば、
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレ
ート等のポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、
ポリイミド、ポリサルホンなどのフィルム、または上質
紙、パーチメント紙のような紙の表面に上記プラスチッ
クの層を形成したものを使用すればよい。価格および耐
熱性の点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好
適である。これらのフィルムに、エポキシ樹脂、メラミ
ン樹脂またはウレタン樹脂などを塗布して離型性を向上
させたものが好ましい。フィルムの厚さは一般に６〜20
0μ、好ましくは12〜75μである。 転写台紙の表面に所定のパターンで微細凹凸部を形成す
るに当っては、後記する透明マットインキ層自体の光拡
散性がマット剤の添加量に対する制限から不足になる分
を、凹凸表面の乱反射で補足するのに足りるような形
状、表面粗さをえらぶ。形成法には、既知の手段がいく
つかあり、それらに従えばよい。たとえば、上記のよう
なフィルムの平滑な面に透明表面層と離型性を有するツ
ヤ消しインキでパターン印刷をすることや、フィルムを
ブラスト処理したりエンボス加工を施したりして全面を
凹凸にしてから、所定のパターンを残してそれ以外の部
分に通常のインキで印刷をし、平滑にすることである。
あるいは、エンボス版を用いて、フィルム上にパターン
状に凹凸をエンボスする手法もある。 表面層は、転写台紙から剥離しやすく、要求される表面
物性をもった合成樹脂を塗布して設ける。たとえば、ア
クリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素
化ポリオレフィン、塩化ゴム、環化ゴムまたはニトロセ
ルロールなどを適宜の溶媒に溶解したものを0.2〜５
μ、好ましくは0.5〜２μの厚さ（乾燥時）に塗布す
る。 着色インキ層は、マットインキとグロスインキとからな
る。マットインキは、透明で透過光に対して拡散性を有
するもの、たとえばアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バ
リウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズなどのマット
材をビヒクルに分散してなるインキである。インキビヒ
クルと異なる屈折率を有し、それとは非相溶性の樹脂の
ビーズを分散させたものでもよい。そのような組み合わ
せの例を示せば、ビヒクルとして塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合体やアクリル樹脂の場合はテフロンやポリフッ
化ビニリデンのビーズを、またビヒクルがポリエチレン
の場合は前記したものに加えて、ポリエチレン、ポリプ
ロピレンなどのビーズをマット材として使用する。 マット材の粒径は、平均３〜８μｍが適当であり、下限
未満では光拡散性が低く、上限を超えると光透過性と印
刷適性が低下する。 マット材の添加量は、光の拡散性の点からは50重量％以
上が好ましいが、その反面、インキ粘度増大による印刷
適性の低下や、塗膜の脆化が起るため、添加量を１〜50
重量％の範囲からえらび、光拡散性の不足を転写台紙か
ら賦形される微細凹凸で補うようにする。 いずれの場合も、光源からの光を着色するため、必要に
応じ染料を加えてもよい。 グロスインキとはマットインキに対する名称で、マット
材を含有しない一般の印刷インキのことである。グロス
インキは用途に応じて、透明なものと隠蔽性のものとを
適宜選択して使用する。 マットインキ、グロスインキとも、ビヒクルには表面層
と同系の樹脂をえらぶことが、表面層と着色層との接着
を良好に得る上で好ましい。 着色インキ層は、二以上の色のインキを用いて設けても
よいことはいうまでもない。印刷は、グラビア印刷、ス
クリーン印刷など既知の手法によればよい。 透明接着剤は、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合体、ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン
系樹脂などから、被転写体の材質に応じて適当なものを
えらぶ。接着剤層の厚さは、0.1〜10μの範囲内で薄く
て足りればその方がよいが、接着の確実さからいって、
0.5〜２μ程度がよい。 本考案の光拡散層を有する絵付け成形品は、上記した転
写シートを用いてプラスチック成形品に絵付けしたもの
であって、第２図に示すように、プラスチックの成形品
である基材（５）上に、接着剤層（４）、着色インキ層
（３）、および表面に所定のパターンの微細凹凸部をも
つ表面層（２）からなる印刷層を転写してなり、着色イ
ンキ層が表面層の微細凹凸部の下になる部分をマットイ
ンキ（31）で、他の部分をグロスインキ（32）で印刷し
たものである。 基材への転写は、熱ロールを使用するなど従来と同じ方
法によって実施でき、基材の射出成形と同時に転写する
絵付け射出成形の手法によってもよいことはもちろんで
ある。 第２図に示した例は、基材の側に光源（６）があって、
表面層の側からそれを見る配置であるが、これと逆に、
表面層の側に光源があって基材の側からそれを見る配置
であってもよい。

【作用】

本考案の転写シートは、転写台紙の表面に付与した所定
のパターンの微細凹凸によって表面層に凹凸を与えたこ
と、および着色インキ層の一部をマットインキで形成し
たことによって、所望の部分に高い光拡散性を実現し
た。つまり、表面層に微細凹凸を与えただけ、あるいは
マットインキ層を設けただけでは不十分であった光拡散
性を、両方の手段を併用することによって、十分なもの
にした。 本考案の絵付け成形品は、光源からの光が通過する部分
に上記した高い光拡散性を有する層を設けてあるので、
LEDなどからの光をよく拡散する。

【実施例】

厚さ38μのポリエチレンテレフタレートフィルム「Ｓタ
イプ」（ダイアホイル製）に、厚さ1.5μのメラミン樹
脂「EX114D」（大日精化工業製）の塗膜を一面に設け、
さらにツヤ消しインキ「マットコート＋マット硬化剤」
（昭和インク工業製）をグラビア法でパターン印刷し
て、所定のパターンの微細凹凸部を有する転写台紙を用
意した。 上記の転写台紙上に、厚さが１μとなるように、アクリ
ル系樹脂の透明塗料「ハクリニス46−７」（同）をグラ
ビアコートした。その上に、ツヤ消しインキを印刷した
部分に対応する部分に、マットインキとして、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂の混合物からな
るビヒクルに、平均粒径５μｍの炭酸カルシウム50重量
％を分散させたものを、その他の部分にグロスインキと
して、マットインキと同じビヒクルで炭酸カルシウムに
代えてカーボンブラックを添加したものを、それぞれグ
ラビア印刷し、ついで接着剤「HS32G」（同）を１μの
厚さにグラビアコートして、本考案の転写シートを得
た。 成形用金型内に上記の転写シートを置いて、透明なAS樹
脂を射出成形した。成形品を離型して、転写台紙を剥離
して本考案の絵付け成形品を得た。

【考案の効果】

本考案の転写シートは、その印刷層を転写するだけで、
成形品に絵付けを行なうと同時に、パイロットランプの
窓の部分のように、高い光拡散性を要求される部分を設
けることができる。従来の転写シートとちがい、接着剤
層の重ね刷りとか、転写時に加わる熱や圧力によりマッ
トインキ層の平滑化が起っても、透過光の拡散性が低下
することがない。 上記の転写シートを使用して得た本考案の絵付け成形品
は、高い光透過性と同時に高い光拡散性を示す部分を有
し、操作パネルとして、パイロットランプの確認などが
広い角度から容易に行なえる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の転写シートの構成を説明するため
の、模式的な断面図である。 第２図は、本考案の絵付け成形品の代表的な例である、
パイロットランプ窓を有する操作パネルを説明するため
の、第１図と同様な図である。 １…転写台紙 11…微細凹凸部 ２…表面層 ３…着色インキ層 31…マットインキ、32…グロスインキ ４…接着剤層 ５…基材

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】表面に所定のパターンの微細凹凸部（11）
   を有する転写台紙（１）上に、転写台紙から剥離しやす
   く剥離後は着色インキ層を保護する透明表面層（２）、
   着色インキ層（３）および透明接着剤層（４）を順に設
   けてなり、着色インキ層が、転写台紙の微細凹凸部に対
   応する部分を、透明で透過光に対して拡散性を有するマ
   ットインキ（31）で、他の部分をグロスインキ（32）で
   印刷したものである光拡散層を有する転写シート。
2. 【請求項２】転写台紙の微細凹凸部が、平滑なフィルム
   に所定のパターンでツヤ消しインキを印刷して形成した
   ものである請求項１の転写シート。
3. 【請求項３】プラスチックの成形品である基材（５）上
   に、透明接着剤層（４）、着色インキ層（３）、および
   表面に所定のパターンの微細凹凸部をもつ透明表面層
   （２）からなる印刷層を転写してなり、着色インキ層
   が、表面層の微細凹凸部の下にある部分を、透明で透過
   光に対して拡散性を有するマットインキ（31）で、他の
   部分をグロスインキ（32）で印刷したものである光拡散
   層を有する絵付け成形品。