JPH0146245B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、工作物に穴を形成する環状刃物に関
する。

環状刃物に共通した問題として、摩耗と、切削
歯部の半径方向で内方縁の欠けがある。この問題
は、切削時、上記歯部の内周面と、刃物が切り取
る工作物の中心円板部の外周面の間に金属の切屑
が頻繁に詰まることに起因すると考えられてい
る。これらの切屑は次第に増加し、刃物の先端縁
近傍で刃物の内周面に溶着する。歯部内周面に金
属が堆積すると、非常に大きな摩耗を生じる結
果、刃物を回転させるに必要なトルクが増大す
る。また、熱の発生が更に促進されるのみなら
ず、摩耗が過度になり、欠けや破損による機能の
停止が早められる。

本発明の目的は、刃物の内周面周囲に切屑が溜
まることによる摩耗、欠け、並びに破損の問題を
解消することを目的とする。

本発明は特に、刃物が形成しつつある中心円板
部に対する刃物内周面の面接触が最少限になるよ
うに環状刃物を形成することを目的とする。

本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明と図
面の説明から明らかになろう。

図面において、本発明による刃物が全体を符号
１０で示されている。この刃物１０は上端にシヤ
ンク１２を具え、環状の側壁１４が上記シヤンク
１２から下方に延びている。この側壁１４の下端
には、円周方向に離間した複数の切削用歯部１６
が形成される一方、側壁１４には上記歯部１６の
間で、半径方向の深さが側壁１４の厚さの略1/2
に等しい螺旋溝１８が上方に形成されている。従
つて各螺旋溝１８は、半径方向でウエブ２０に並
置されている。本発明の好適な図示実施例では、
各歯部１６に、半径方向と円周方向でずれた３個
の切刃、つまり内方切刃２２、中間切刃２４、及
び外方切刃２６が形成されている。内方切刃２２
と中間切刃２４は各ウエブ２０の下端に形成され
ており、ウエブ２０の隣接部近傍には、上記両切
刃２２，２４により生じる切屑を収容する内方溝
２８、及び外方溝３０が形成されている。内方切
刃２２は、上記内方溝２８の後面２７の下端で画
定され、中間切刃２２は、外方溝３０の後面２９
の下端で画定されている。一方、外方切刃２６
は、前記螺旋溝１８の後面３１の下端で画定され
ている。

内方切刃２２と中間切刃２４は円周方向の肩部
３２で相互に結合され、中間切刃２４と外方切刃
２６はアール部３４で相互に結合されている。前
記各歯部１６には、切刃２２，２４，２６から円
周方向で後方に、例えば約8゜〜10゜上方に傾斜し
た方向に延びる１対の二番取り面３６，３８が形
成されていることから、これら３個の切刃２２，
２４，２６は上下方向でずれている。更に、上記
二番取り面３６は、半径方向で内方に且軸線方向
で上方に傾斜し、二番取り面３８は、半径方向で
外方に且軸線方向で上方に傾斜している。そし
て、これら二番取り面３６，３８は、稜部４０で
相接している。刃物１０に作用する切屑荷重が大
きい場合には、二番取り面３６を半径方向で水平
面に対して＋10゜〜−3゜傾斜させ、二番取り面３
８を半径方向で約20゜〜25゜傾斜させるのが望まし
い。

各切刃２２，２４，２６を、刃物１０の１回転
当りの切削深さ以上の距離だけ上下方向でずらす
と、各切刃２２，２４，２６は、各々別個の切屑
を切出す。これらの切屑は、切刃２２，２４が半
径方向で傾斜しているため、前記内方溝２８、外
方溝３０を経て上方に送られ、螺旋溝１８に達す
る。同様に、外方切刃２６により生じた切屑は、
隣接した螺旋溝１８から上方に送られるから、結
果として全ての切屑は、傾斜した螺旋溝１８を介
して円滑に容易に上方に排出される。

第２図に示すように、側壁１４の内周面は、空
隙４２を画定するように半径方向で外方に二番取
りされており、これにより、各歯部１６の内方切
刃２２から円周方向で後方に、且上方に延びる狭
いマージンａが残される。上記空隙４２は、円筒
形の刃物で側壁１４の内周面から金属を取除いて
形成するのが望ましく、その場合には、円周方向
の円弧４４の一部により二番取り部が画定され
る。二番取りによる空隙４２の半径方向の最大深
さは約0.13mm〜0.64mm（0.005〜0.025インチ）の
間で、望ましくは約0.25mm〜0.38mm（約0.010〜
0.015インチ）の範囲とする。空隙４２に詰まろ
うとする切屑を逃がすためには、上記二番取り部
を次の歯部１６の内方溝２８まで後方に延ばし、
第２図に符号４６で示すような逃がし路を形成す
る必要がある。マージンａの円周方向の幅につい
ては、約0.25mm〜1.52mm（約0.010〜0.060インチ）
の間で、望ましくは約0.38mm（約0.015インチ）
とする。マージンａはまた、空隙４２を、内方切
刃２２に向かう方向に次第に狭くなるように円筒
形の刃物で形成した場合には、約0.25mm程度の幅
とするのが望ましい。しかし、半径方向の深さが
実質的に一様な溝として上記空隙４２を加工した
場合には、歯部１６の強度が大きく低下するのを
防ぐために、マージンａの幅を、空隙４２の半径
方向の深さに応じて約0.25mm（0.010インチ）以
上にする必要がある。

各内方溝２８の後面２７は、水平面に対して約
60゜後方上方に傾斜している。前述の通り、この
後面２７の下端は二番取り面３６との協働によ
り、内方切刃２２を画定する。マージンａは、二
番取り面３６を研削して歯部１６を鋭利にする際
に実質的に幅が一定に保持されるように、内方溝
２８の上記後面２７と平行な方向の幅が実質的に
一様になるように形成するのが望ましい。そのよ
うなマージンａの一様な幅は、二番取りによる空
隙４２を形成する切削工具を、その軸線が切刃２
２の前部すくい面を形成する内方溝２８の後面２
７と略平行な方向で、刃物１０の中心軸線に対し
て傾斜するように方向づけることで得られる。第
３図において、破線４８は、空隙４２の円弧４４
を生じる傾斜刃物の概略を水平面内で示す。二番
取り部である空隙４２は、側壁１４の高さ全体に
亙つて上方に延ばしてもよいが、マージンａの高
さを、歯部１６の上下方向の寸法に略対応させた
場合に所望の結果が得られる。例えば第３図に示
すように、二番取り部が画定する空隙４２を、外
方溝３０の上端より若干上方まで延ばす。

既に述べたように、上述した一般的な種類の環
状刃物の使用に際しては、刃物側壁の内周面と、
刃物が形成する中心円板部の外周面との間に切屑
が詰まるという問題がある。この問題は、狭いマ
ージンａを設けたことにより実質的に解消され
る。即ち、刃物内周面と中心円板部の間に切屑が
入り込んだとしても、これには狭いマージンａに
より高い単位圧力が作用するから、切屑は破断さ
れるが、少くとも十分に摩滅し、空隙４２に排出
された後、逃がし路４６を介して次の内方溝２８
まで半径方向で外方に送られる。このように、刃
物内周面と円板部外周面の間に切屑が溜まること
が、狭いマージンａを設けたことにより防止さ
れ、それに起因する問題が解決される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明による環状刃物の側面図、第２
図はその下端を示す要部平面図、第３図は第１図
３−３線の断面図である。 １０……環状刃物、１４……側壁、１６……歯
部、１８……螺旋溝、２２，２４，２６……切
刃、２８，３０……溝、２７……溝２８の後面、
２９……溝３０の後面、４２……空隙、ａ……マ
ージン、４６……逃がし路。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 本体に略円筒形の側壁を設け、この側壁の下
   端周囲に複数の歯部を円周方向で離間させて形成
   する一方、上記側壁の外周面周囲には、隣接する
   上記歯部の間から上方に延びる複数の螺旋溝を形
   成し、上記各歯部には、半径方向に延びる少くと
   も１個の切刃を設け、該切刃で切出される切屑
   を、半径方向で外方に且上方に前記螺旋溝内に排
   出し得るように、前記側壁の内周面から半径方向
   で外方に螺旋溝まで延びる溝を設け、これら各溝
   には、各切刃の半径方向で内方部分から上方に延
   びる半径方向の後面を設け、前記各歯部の内周面
   を半径方向で外方に二番取りすることにより、歯
   部の内周面と、環状刃物により工作物に形成され
   つつある中心円板部との間に円周方向の空隙を画
   定し、この空隙を、前記各溝の後面から円周方向
   で離間させることにより、各歯部の内周面に、各
   切刃の半径方向での前記内方部分から後方上方に
   延びる狭いマージンを形成したことを特徴とする
   環状刃物。 ２ 各歯部に少くとも２個の半径方向で離間した
   切刃を設け、溝の前記後面を、半径方向で内方の
   切刃から上方に延ばしたことを特徴とする、特許
   請求の範囲第１項に記載の環状刃物。 ３ 空隙を、各歯部上で、次の歯部の溝まで円周
   方向で後方に延ばすことにより、各空隙から次の
   溝に至る切屑逃がし路を形成したことを特徴とす
   る、特許請求の範囲第２項に記載の環状刃物。 ４ 空隙の半径方向の最大寸法を、約0.13mm〜
   0.64mm（0.005〜0.025インチ）としたことを特徴
   とする、特許請求の範囲第３項に記載の環状刃
   物。 ５ マージンの円周方向の幅を約0.13mm〜1.52mm
   （約0.005〜0.060インチ）としたことを特徴とす
   る、特許請求の範囲第４項に記載の環状刃物。 ６ 空隙を、少くとも溝の上端まで上方に延ばし
   たことを特徴とする、特許請求の範囲第５項に記
   載の環状刃物。 ７ 空隙を、円柱の弧状部分により画定したこと
   を特徴とする、特許請求の範囲第６項に記載の環
   状刃物。 ８ マージンの円周方向の幅を、約0.25mm〜0.38
   mm（約0.010〜0.015インチ）としたことを特徴と
   する、特許請求の範囲第７項に記載の環状刃物。 ９ 空隙の半径方向の最大寸法を、約0.25mm〜約
   0.38mm（約0.010〜0.015インチ）としたことを特
   徴とする、特許請求の範囲第８項に記載の環状刃
   物。 １０ 溝の前記後面を、円周方向で後方に上方に
   傾斜させる一方、マージンの幅を、上下方向で実
   質的に一様としたことを特徴とする、特許請求の
   範囲第６項に記載の環状刃物。