以下に、本発明に係るタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
以下の説明では、本発明に係るタイヤの一例として、空気入りタイヤ1を用いて説明する。タイヤの一例である空気入りタイヤ1は、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
また、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、例えば、小型トラックに装着して用いられる、いわゆるライトトラック用ラジアルタイヤになっている。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド踏面3として形成され、トレッド踏面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、トレッド踏面3にタイヤ周方向に延びる主溝30が複数形成されており、この複数の主溝30により、トレッド部2の表面には複数の陸部20が画成されている。本実施形態では、主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されており、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、ビード部10が配置されている。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配置されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配置されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
また、トレッド部2にはベルト層14が配設されている。ベルト層14は、複数のベルトプライ141~143が積層される多層構造によって構成されており、本実施形態では、2層のベルト141、142と、1層のベルトカバー層143とが積層されている。
ベルト層14を構成するベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、15°以上55°以下)になっている。また、2層のベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層のベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。つまり、2層のベルト141、142は、それぞれのベルト141、142が有するベルトコードが互いに交差する向きで配設される、いわゆる交差ベルトとして設けられている。
ベルトカバー層143は、2層のベルト141、142のタイヤ径方向外側に配置されており、2層のベルト141、142をタイヤ周方向に覆ってベルト141、142を補強する補強層として設けられている。ベルトカバー層143は、タイヤ周方向に略平行でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示省略)がコートゴムで被覆されることにより形成されている。ベルトカバー層143が有するコードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなり、コードの角度はタイヤ周方向に対して±5°の範囲内になっている。ベルトカバー層143は、略平行に並ぶ複数のコードをコートゴムで被覆したストリップ材を、2層のベルト141、142のタイヤ径方向外側からタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けることにより構成される。
本実施形態では、ベルトカバー層143は、ベルト141、142が配設されるタイヤ幅方向における範囲の全域に亘って配設されており、ベルト141、142のタイヤ幅方向端部を覆っている。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルトカバー層143のタイヤ径方向外側に配設されている。
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
図2は、図1のA-A矢視図である。トレッド踏面3に形成される4本の主溝30は、タイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配置されている。4本の主溝30は、いずれもタイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に繰り返し屈曲している。即ち、4本の主溝30は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅することにより、ジグザグ状に形成されている。
また、トレッド踏面3には、主溝30の他に、タイヤ幅方向に延びる横溝40が複数形成されており、横溝40は、少なくとも一端が主溝30に開口している。各横溝40は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に傾斜しており、さらに、一部の横溝40は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に屈曲している。トレッド踏面3には、これらの複数の主溝30と横溝40とにより、複数の陸部20が区画されている。各陸部20は、主溝30によってタイヤ幅方向に区画されると共に、横溝40によってタイヤ周方向に区画される、ブロック状の陸部20として形成されている。
これらのように、陸部20を区画する主溝30と横溝40とのうち、主溝30は、溝幅が1.5mm以上になっており、溝深さが2mm以上20mm以下の範囲内になっている。なお、主溝30の溝幅は、15mm以下であるのが好ましく、さらに、主溝30は、摩耗末期を示すウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する溝であるのがより好ましい。また、横溝40は、溝幅が2mm以上10mm以下の範囲内になっており、溝深さが2mm以上20mm以下の範囲内になっている。
図3は、図2のB部詳細の模式図である。なお、図3は、突部60についての説明図であるため、主溝30と横溝40とについては簡略化しており、主溝30はタイヤ周方向に延在し、横溝40はタイヤ幅方向に延在するものとして図示している。主溝30と横溝40との交差部50には、突部60が配置されている。ここでいう交差部50には、主溝30における横溝40が開口している部分の主溝30の延在方向における位置になっている。さらに、交差部50には、主溝30における横溝40が開口している部分の主溝30の延在方向における位置から、主溝30の延在方向における両側に横溝40の溝幅Dgと同じ大きさの長さとなる範囲も含まれる。また、交差部50は、主溝30に対して主溝30の溝幅方向における両側から横溝40が開口することにより、主溝30と横溝40とが十字状に交差する十字状の交差部50と、主溝30に対して主溝30の溝幅方向における片側から横溝40が開口することにより、主溝30と横溝40とがT字状に交差するT字状の交差部50とのいずれの形態も含む。図3では、主溝30と横溝40とが十字状に交差する十字状の交差部50を示している。
交差部50に配置される突部60は、主溝30と横溝40との1つの交差部50に、少なくとも2つが配置されている。突部60は、略板状の形状で形成されており、横溝40の溝壁45における主溝30への開口端46から主溝30内に向かって形成されている。この場合における横溝40の溝壁45の開口端46は、横溝40の溝壁45における主溝30が位置する側の端部になっている。換言すると、横溝40の溝壁45の開口端46は、横溝40の溝壁45と主溝30の溝壁35とが交差する部分になっている。交差部50に配置される複数の突部60はそれぞれ、突部60における横溝40の溝壁45の開口端46側の反対側の端部である先端部61が、主溝30内で終端している。
本実施形態では、突部60は、1つの横溝40が有する一対の溝壁45における主溝30へのそれぞれの開口端46から主溝30内に向かう、一対の突部60を備えている。これらの突部60は、突部60が形成される横溝40の溝壁45の開口端46に接続される主溝30の溝壁35に対する角度θpが、90°≦θp≦180°の範囲内になっている。
なお、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpは、90°≦θp≦180°の範囲内であるのが好ましい。また、複数の突部60は、突部60同士の間で主溝30の溝壁35に対する角度θpが互いに異なっていてもよい。本実施形態では、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpは、いずれの突部60も約90°になっており、横溝40の溝壁45から横溝40の延在方向に連続して形成されている。このため、一対の突部60は、互いに略平行に配置されている。
図4は、図3のC-C矢視図である。主溝30は、主溝30を延在方向に見た断面視において、溝壁35と溝底37とが曲線部38によって接続されている。曲線部38は、主溝30の断面視において、曲率半径が、例えば、0.5mm以上5mm以下の範囲内となる円弧状の形状で溝壁35と溝底37とを接続している。このため、主溝30の溝底37は、主溝30の溝幅方向における幅が、曲線部38を有さない場合と比較して小さくなって形成されている。また、本実施形態では、横溝40の溝深さは、主溝30の溝深さHgと同じ大きさになっている、このため、横溝40の溝底47は、主溝30への横溝40の開口部分では、主溝30の溝底37から連続する面として形成されている。
主溝30と横溝40との交差部50に配置される突部60は、主溝30の溝深さ方向における突部60の高さHpと主溝30の溝深さHgとが、Hp≦Hgの関係を満たしている。詳しくは、突部60は、主溝30の溝底37からトレッド踏面3側に向かって形成されており、突部60は、主溝30の溝底37からの高さHpが、主溝30の溝深さHg以下の大きさになっている。このため、突部60は、主溝30におけるトレッド踏面3側の開口部分からタイヤ径方向外側に突出することなく、主溝30内に配置されている。
また、突部60は、主溝30の溝幅方向における突部60の突出量Wpが、主溝30の溝幅Wgに対して、10%以上90%以下の範囲内になっている。この場合における突部60の突出量Wpは、突部60における横溝40の溝壁45の開口端46、或いは主溝30の溝壁35に接続される側の端部である接続端部62から、突部60の先端部61までの、主溝30の溝幅方向における突部60の最大幅Wpになっている。
本実施形態では、1つの交差部50に配置される一対の突部60のそれぞれの突出量Wpの大きさは、ほぼ同じ大きさになっている。一対の突部60における一方の突部60の突出量Wp1と他方の突部60の突出量Wp2とを比較した場合、突出量Wp1と突出量Wp2とは、互いに50%以上100%以下の範囲内であるのが好ましい。
突部60は、主溝30の溝幅方向における突出量Wpが主溝30の溝幅Wgよりも小さくなっており、1つの交差部50に配置される一対の突部60は、1つの横溝40が有する一対の溝壁45の開口端46から、主溝30内に向かって形成されている。このため、一対の突部60のそれぞれの先端部61は、主溝30が有する一対の溝壁35における、突部60が接続される側の溝壁35の反対側の溝壁35から離間している。これにより、1つの交差部50に配置される一対の突部60は、主溝30の延在方向視においてシースルーとなる部分である周方向シースルー部65を有して配置されている。周方向シースルー部65は、主溝30内を主溝30の延在方向に見た際に、一対の突部60の双方が配置されていない部分になっている。主溝30の溝幅方向における周方向シースルー部65の幅Wsは、主溝30の溝幅Wgに対して、10%以上90%以下の範囲内であるのが好ましい。
また、1つの交差部50に配置される複数の突部60は、突部60同士の最短距離Dp(図3参照)と、主溝30の溝幅Wgとが、Wg>Dpの関係を満たしており、さらに、1つの交差部50に配置される複数の突部60は、突部60同士の最短距離Dpと、横溝40の溝幅Dgとが、Dg≧Dp≧0.1*Dgの関係を満たしている。
また、本実施形態では、一対の突部60は、横溝40の溝壁45から横溝40の延在方向に連続して形成されているため、一対の突部60は、横溝40の溝幅方向に離間している。これにより、1つの交差部50に配置される一対の突部60は、横溝40の延在方向視においてシースルーとなる部分である幅方向シースルー部66(図3参照)を有して配置されている。幅方向シースルー部66は、横溝40内を横溝40の延在方向に見た際に、一対の突部60の双方が配置されていない部分になっている。
図5は、図3に示す突部60の斜視図である。板状の形状で形成される突部60は、トレッド踏面3側から主溝30の溝底37側に向かうに従って厚みが大きくなっている。このため、突部60は、主溝30の深さ方向におけるトレッド踏面3側の端部の位置での厚みが最も薄くなっており、主溝30の溝底37に接続される位置での厚みが最も厚くなっている。
なお、突部60は、主溝30の溝底37に接続される部分付近に隅Rが形成されており、突部60における主溝30の溝底37に対する接続部分が補強されている。同様に、突部60は、接続端部62付近にも隅Rが形成されており、突部60における主溝30の溝壁35に対する接続部分も補強されている。また、突部60は、接続端部62付近で補強されている部分以外は、接続端部62側から先端部61側にかけて、厚みがほぼ一定になっている。
主溝30の深さ方向における位置によって厚みが変化して形成される突部60は、突部60の高さHpの1/2の位置M(図4参照)での突部60の最大厚みGaが、横溝40の溝幅Dgに対して、0.25*Dg≦Gaの関係を満たしている。なお、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaは、横溝40の溝幅Dgに対して、0.25*Dg≦Ga≦Dgの関係を満たすのが好ましい。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ライトトラック用ラジアルタイヤであるため、主に小型トラックに装着して使用される。空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で装着する。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド踏面3のうち下方に位置するトレッド踏面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド踏面3と路面との間の水が主溝30や横溝40等に入り込み、これらの溝でトレッド踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド踏面3は路面に接地し易くなり、トレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
ここで、車両が走行する路面には、石100(図6参照)が落ちていることがあり、車両の走行時には、このような路面上の石100が、トレッド踏面3の主溝30や横溝40に入り込むことがある。例えば、多くの石100が散在する路面を車両で走行した場合、路面上の石100が主溝30や横溝40に入り込み易くなる。特に、主溝30は、空気入りタイヤ1の回転時に路面に対して開口し続けるため、路面上において、タイヤ幅方向における位置が主溝30と同じ位置に位置する石100は、主溝30に入り込み易くなっている。その際に、石100の大きさが、主溝30の溝幅より小さい場合は、石100が主溝30に入り込んだとしても、石100は主溝30からすぐに排出される。また、石100の大きさが、主溝30の溝幅より大幅に大きい場合は、石100は主溝30に入り込み難くなっている。
これに対し、石100の大きさが、主溝30の溝幅より若干大きい場合は、回転する空気入りタイヤ1の主溝30が石100上に位置した際に、主溝30のタイヤ幅方向両側の陸部20が接地荷重によって弾性変形をすることにより、石100は主溝30に入り込み易くなる。特に、主溝30と横溝40とが交差する部分では、主溝30のみや横溝40のみの部分と比較して開口面積が大きくなっているため、石100は主溝30と横溝40とが交差する部分に入り込み易くなっている。
このように、主溝30の溝幅より若干大きい石100が、陸部20の弾性変形によって主溝30と横溝40とが交差する部分に入り込んだ場合、石100には、弾力性によって陸部20或いは主溝30から付与される圧力により、主溝30に保持される状態が維持される。即ち、石100は主溝30に噛み込まれ、主溝30で石噛みが発生する。
主溝30で石噛みが発生した場合、主溝30内の石は、空気入りタイヤ1が回転することによって路面に接触した際に、主溝30の溝底37方向への力が路面から石100に対して作用し、石100は、この力によって主溝30の溝底37方向へ移動して溝底37に接触し易くなる。主溝30に噛み込まれた石100が、路面から作用する力によって主溝30の溝底37に対して大きな力で接触した場合、溝底37は損傷する虞がある。
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、主溝30と横溝40との交差部50に突部60が配置されているため、石噛みが発生し難くなっている。図6は、主溝30に石100が入り込んだ状態を示す模式図である。つまり、路面上の石100は、主溝30と横溝40とが交差する部分に入り込み易くなっているが、本実施形態では、主溝30と横溝40との交差部50に突部60が配置されているため、主溝30と横溝40とが交差する部分に入り込もうとする石100は、突部60に当接する。このため、路面上の石100が主溝30と横溝40とが交差する部分に入り込もうとする場合でも、石100は突部60に当接することにより、主溝30内には入り込まずに、主溝30から排出される。
その際に、突部60は、主溝30と横溝40との1つの交差部50に少なくとも2つが配置されているため、主溝30に入り込もうとする石100に対する反力を、複数の突部60で発生することができ、主溝30に入り込もうとする石100を、より確実に排出することができる。これにより、主溝30での石噛みは抑制され、主溝30で石噛みが発生した際における、主溝30の溝底37の損傷が抑制されるため、石噛みに対する性能である石噛み性能が向上する。
ここで、主溝30は、濡れた路面の走行時に路面上の水を主溝30に流すことにより、トレッド踏面3と路面との間の水を排水する役割を果たすが、主溝30内に突部60が配置されている場合、主溝30を流れる水の流れを突部60が遮ってしまう虞がある。この場合、主溝30での排水性が低下するため、濡れた路面の走行時における走行性能であるウェット性能が低下し易くなる虞があるが、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、突部60は、先端部61が主溝30内で終端している。これにより、主溝30内で水が流れる際における水の流路を確保することができ、主溝30での排水性を確保することができる。これらの結果、ウェット性能を維持しつつ、石噛み性能を向上させることができる。
また、1つの交差部50に配置される複数の突部60は、主溝30の延在方向視においてシースルーとなる周方向シースルー部65を有して配置されているため、濡れた路面の走行時に主溝30で水が流れる際における流れ易さを、より確実に確保することができる。これにより、交差部50に突部60が配置される状態においても、主溝30での排水性をより確実に確保することができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
また、1つの交差部50に配置される複数の突部60は、横溝40の延在方向視においてシースルーとなる幅方向シースルー部66部分を有して配置されているため、濡れた路面の走行時に、横溝40に入り込んだ水を横溝40に沿って流れ易くすることができる。これにより、交差部50に突部60が配置される状態においても、横溝40に入り込んだ水を横溝40から主溝30に流れ易くすることができ、濡れた路面の走行時における排水性を、より確実に確保することができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
また、突部60は、主溝30の溝幅方向における突部60の突出量Wpが、主溝30の溝幅Wgに対して、10%以上90%以下の範囲内であるため、主溝30内を流れる水の流路を確保しつつ、主溝30に入り込もうとする石100を突部60によってより確実に排出することができる。つまり、突部60の突出量Wpが、主溝30の溝幅Wgに対して10%未満である場合は、突部60の突出量Wpが小さ過ぎるため、主溝30に入り込もうとする石100がある場合に、石100が突部60に接触し難くなったり、石100に対する反力を突部60で発生し難くなったりする虞がある。この場合、主溝30に入り込もうとする石100を、突部60によって効果的に排出し難くなる虞がある。また、突部60の突出量Wpが、主溝30の溝幅Wgに対して90%より大きい場合は、突部60の突出量Wpが大き過ぎるため、主溝30内を水が流れる際における水の流路を確保し難くなり、主溝30での排水性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、突部60の突出量Wpが、主溝30の溝幅Wgに対して10%以上90%以下の範囲内である場合は、主溝30内を水が流れる際における水の流路を確保しつつ、主溝30に入り込もうとする石100を、突部60によってより確実に排出することができる。この結果、より確実にウェット性能を維持しつつ、石噛み性能を向上させることができる。
また、突部60は、突部60の高さHpと主溝30の溝深さHgとが、Hp≦Hgの関係を満たすため、車両の走行時における突部60の損傷を抑制することができる。つまり、突部60の高さHpが、主溝30の溝深さHgに対してHp>Hgである場合は、突部60が主溝30内からトレッド踏面3側に突出することになるため、車両の走行時に突部60が路面に接触し、突部60が損傷し易くなる虞がある。例えば、突部60が路面に接触することによって突部60がもげた場合、主溝30に入り込もうとする石100を突部60によって排出し難くなるため、主溝30での石噛みを抑制し難くなる虞がある。
これに対し、突部60の高さHpが、主溝30の溝深さHgに対してHp≦Hgである場合は、突部60が主溝30内からトレッド踏面3側に突出することを抑制できるため、車両の走行時における突部60の損傷を抑制することができる。これにより、主溝30に入り込もうとする石100を、突部60によって長期に亘って排出可能とすることができる。この結果、より確実に石噛み性能を向上させることができる。
また、1つの交差部50に配置される突部60同士の最短距離Dpと、主溝30の溝幅WgとがWg>Dpの関係を満たし、突部60同士の最短距離Dpと、横溝40の溝幅DgとがDg≧Dpの関係を満たすため、突部60同士の間隔が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、主溝30に入り込もうとする石100に対して、1つの交差部50に配置される複数の突部60のそれぞれを接触させることができ、複数の突部60によって石100を主溝30からより確実に排出することができる。
さらに、突部60同士の最短距離Dpと、横溝40の溝幅Dgとが、Dp≧0.1*Dgの関係を満たすため、主溝30や横溝40での排水性を、より確実に確保することができる。つまり、突部60同士の最短距離Dpと、横溝40の溝幅Dgとの関係が、Dp<0.1*Dgである場合は、突部60同士の最短距離Dpが小さ過ぎるため、主溝30内や横溝40内を水が流れる際に、突部60同士の間を流れ難くなる虞がある。この場合、濡れた路面を走行した際における、主溝30や横溝40での排水性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、突部60同士の最短距離Dpと、横溝40の溝幅Dgとが、Dp≧0.1*Dgの関係を満たす場合は、突部60同士の最短距離Dpが小さくなり過ぎることを抑制でき、主溝30内や横溝40内を水が流れる際に、突部60同士の間を水が流れ易くすることができる。これにより、濡れた路面を走行した際における、主溝30や横溝40での排水性を、より確実に確保することができる。これらの結果、より確実にウェット性能を維持しつつ、石噛み性能を向上させることができる。
また、突部60は、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaが、横溝40の溝幅Dgに対して、0.25*Dg≦Gaの関係を満たすため、主溝30に入り込もうとする石100を突部60によってより確実に排出することができる。つまり、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaが、横溝40の溝幅Dgに対して0.25*Dg>Gaである場合は、突部60の最大厚みGaが小さ過ぎるため、突部60の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、主溝30に入り込もうとする石100に対する反力を突部60で発生し難くなる虞があり、石100を突部60によって効果的に排出し難くなる虞がある。
これに対し、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaが、横溝40の溝幅Dgに対して、0.25*Dg≦Gaの関係を満たす場合は、主溝30に入り込もうとする石100を、突部60によってより確実に排出することができる。この結果、より確実に石噛み性能を向上させることができる。
さらに、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaが、横溝40の溝幅Dgに対して、0.25*Dg≦Ga≦Dgの関係を満たす場合は、主溝30内や横溝40内を流れる水の流路を確保しつつ、主溝30に入り込もうとする石100を突部60によってより確実に排出することができる。つまり、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaが、横溝40の溝幅Dgに対してGa>Dgである場合は、突部60の最大厚みGaが大き過ぎるため、主溝30内や横溝40内を水が流れる際における水の流路を確保し難くなり、主溝30や横溝40での排水性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaが、横溝40の溝幅Dgに対して、0.25*Dg≦Ga≦Dgの関係を満たす場合は、主溝30内や横溝40内を水が流れる際における水の流路を確保しつつ、主溝30に入り込もうとする石100を、突部60によってより確実に排出することができる。この結果、より確実にウェット性能を維持しつつ、石噛み性能を向上させることができる。
また、突部60は、トレッド踏面3側から主溝30の溝底37側に向かうに従って厚みが大きくなるため、突部60の剛性をより確実に確保することができる。これにより、主溝30に入り込もうとする石100を、突部60によってより確実に排出することができる。また、突部60の厚みが、トレッド踏面3側から主溝30の溝底37側に向かうに従って大きくなることにより、空気入りタイヤ1の製造時に金型を用いて突部60を成形する際に、突部60を形成するゴムを金型内に流れ易くすることができる。これにより、石100の排出を適切に行うことのできる突部60を、主溝30と横溝40との交差部50により確実に形成することができる。この結果、より確実に石噛み性能を向上させることができる。
また、突部60は、突部60が接続される主溝30の溝壁35に対する角度θpが、90°≦θp≦180°の範囲内であるため、主溝30に入り込もうとする石100を、突部60によってより確実に主溝30から排出することができる。つまり、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpが、90°>θpである場合は、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpが小さ過ぎるため、1つの交差部50に配置される突部60同士の距離が大きくなり易くなる虞がある。この場合、主溝30に入り込もうとする石100に対して、1つの交差部50に配置される複数の突部60を接触させ難くなる虞がある。また、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpが、180°<θpである場合は、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpが大き過ぎるため、突部60が横溝40内に入り込む配置になり易くなる虞がある。この場合、主溝30に入り込もうとする石100に対して突部60を接触させ難くなる虞がある。
これに対し、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpが、90°≦θp≦180°の範囲内である場合は、主溝30に入り込もうとする石100に対して、1つの交差部50に配置される複数の突部60のそれぞれをより確実に接触させることができ、複数の突部60によって、石100を主溝30からより確実に排出することができる。この結果、より確実に石噛み性能を向上させることができる。
また、突部60は、1つの横溝40が有する一対の溝壁45におけるそれぞれの開口端46から主溝30内に向かう一対を備えるため、主溝30と横溝40とのの交差部50に入り込もうとする石100を、一対の突部60によってより確実に排出することができる。この結果、より確実に石噛み性能を向上させることができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態では、突部60は、接続端部62側から先端部61側にかけて厚みが一定になっているが、突部60の厚みは変化していてもよい。図7は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突部60が接続端部62から先端部61にかけて厚みが変化して形成される場合の説明図である。突部60は、例えば、図7に示すように、接続端部62側から先端部61側に向かって、厚みが小さくなって形成されていてもよい。突部60に石100が接触した場合、突部60には石100からの荷重が作用するが、突部60における接続端部62側の厚みを、先端部61側の厚みより大きくすることにより、石100から荷重が作用した際における応力を軽減することができる。これにより、応力が過大になることに起因して突部60が損傷することを抑制でき、突部60の耐久性を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、1つの交差部50に配置される一対の突部60は、横溝40の溝壁45から横溝40の延在方向に連続して形成されているが、突部60は、横溝40の溝壁45から連続して形成されていなくてもよい。図8は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突部60が横溝40の延在方向に対して傾斜して形成される場合の説明図である。図9は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突部60が横溝40の延在方向に対して傾斜しつつ厚みが変化して形成される場合の説明図である。1つの交差部50に配置される一対の突部60は、例えば、図8に示すように、横溝40の延在方向に対して、横溝40の溝幅方向における内側に向かう方向に傾斜していてもよい。また、突部60が、横溝40の延在方向に対して横溝40の溝幅方向における内側に向かう方向に傾斜して形成される場合は、図9に示すように、接続端部62側から先端部61側に向かって、厚みが小さくなって形成されていてもよい。
つまり、突部60は、当該突部60が形成される横溝40の開口端46に接続される主溝30の溝壁35に対する角度θpが90°より大きく、180°よりも小さい範囲内で形成されることにより、横溝40の溝壁45に対して傾斜して形成されていてもよい。
なお、突部60の角度θpは、横溝40の溝壁45における開口端46から、突部60の先端部61にかけて引いた仮想線である突部60の中心線Cpと、主溝30の溝壁35でなす角度を、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θpとし、突部60は、横溝40の延在方向に対して傾斜する場合でも、この角度θpが、90°≦θp≦180°の範囲内であればよい。
さらに、一対の突部60は、相対角度θrが0°以上180°未満の範囲内であるのが好ましい。即ち、1つの交差部50に配置される一対の突部60は、それぞれの突部60の中心線Cp同士の相対角度θrが、0°以上180°未満の範囲内であるのが好ましい。一対の突部60は、相対角度θrが0°以上180°未満の範囲内となって配置されることにより、主溝30に入り込もうとする石100に対して、一対の突部60の双方をより確実に接触させることができ、一対の突部60によって、石100を主溝30からより確実に排出することができる。この結果、より確実に石噛み性能を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、突部60の高さは一定であるが、突部60の高さは変化していてもよい。図10は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、1つの突部60内で高さが変化する場合の説明図である。突部60は、図10に示すように、接続端部62側から先端部61側に向かうに従って、主溝30の溝底37からの高さが低くなっていてもよい。換言すると、突部60は、突部60の先端部61側から接続端部62側に向かうに従って、主溝30の溝底37からの高さが高くなっていてもよい。主溝30の溝底37からの突部60の高さを、突部60の先端部61側よりも、接続端部62側の高さを高くすることにより、石100からの荷重が突部60に作用した際における、接続端部62付近で発生する応力を軽減することができる。これにより、応力が過大になることに起因して突部60が損傷することを抑制でき、突部60の耐久性を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、突部60は、1つの横溝40が有する一対の溝壁45における主溝30へのそれぞれの開口端46に、一対の突部60が配置されているが、突部60は、これ以外の形態で配置されていてもよい。図11は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、一対の突部60が互いに異なる横溝40の溝壁45の開口端46に接続される場合の説明図である。1つの交差部50に配置される一対の突部60は、例えば、図11に示すように、十字状の交差部50における、斜めに対向する横溝40の溝壁45の開口端46に、それぞれ接続されていてもよい。即ち、一対の突部60は、いわゆる、はす向かいに位置する横溝40の溝壁45の開口端46にそれぞれ接続され、はす向かいの位置から、主溝30の溝幅方向に延びて形成されていてもよい。
図12、図13は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、一対の突部60が互いに異なる横溝40の溝壁45の開口端46に接続されると共に横溝40の延在方向に対してそれぞれ傾斜する場合の説明図である。また、一対の突部60が、十字状の交差部50における、はす向かいに位置する横溝40の溝壁45の開口端46にそれぞれ接続される場合は、図12、図13に示すように、互いの突部60が位置する方向に向かって延びて形成されていてもよい。また、一対の突部60が、互いの突部60が位置する方向に向かって延びて形成される場合は、突部60は、図12に示すように、一定の厚みで形成されていてもよく、図13に示すように、突部60の延在方向における位置によって厚みが変化していてもよい。
図14は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、一対の突部60が主溝30の溝幅方向に対向する位置で互いに異なる横溝40の溝壁45の開口端46に接続される場合の説明図である。また、一対の突部60が、異なる横溝40の溝壁45における開口端46に接続される場合は、図14に示すように、主溝30を挟んで対向する横溝40が有するそれぞれの溝壁45の開口端46における、主溝30の溝幅方向において対向する開口端46に接続されていてもよい。つまり、一対の突部60は、主溝30の延在方向における位置がほぼ同じ位置となって、主溝30の溝幅方向における両側に配置されていてもよい。
また、上述した実施形態では、突部60は、1つの交差部50に一対が配置されているが、突部60は、交差部50に2つ以外の数で配置されていてもよい。図15は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、1つの交差部50に突部60が4つ配置される場合の説明図である。突部60は、例えば、図15に示すように、主溝30と横溝40との交差部50に4つが配置されていてもよい。つまり、十字状の交差部50では、横溝40の溝壁45における主溝30への開口端46は、4箇所に形成されているが、突部60は、十字状の1つの交差部50に形成される4箇所の開口端46の全てに、それぞれ別々の突部60が接続されていてもよい。突部60は、主溝30と横溝40との1つの交差部50に少なくとも2つが配置されていればよい。
また、上述した実施形態では、突部60が配置される交差部50の一例として、主溝30と横溝40とが十字状に交差する交差部50に突部60が配置される形態を説明しているが、突部60が配置される交差部50は、十字状の交差部50以外であってもよい。突部60が配置される交差部50は、例えば、主溝30に対して主溝30の溝幅方向における片側から横溝40が開口することにより、主溝30と横溝40とがT字状に交差するT字状の交差部50であってもよい。また、突部60が配置される交差部50を形成する主溝30と横溝40との相対的な角度は、90°以外や、図2で図示する角度以外であってもよい。また、上述した実施形態では、主溝30は4本が形成されており、各主溝30はジグザグ形状になっているが、主溝30の数や形状は、これ以外であってもよい。
また、上述した実施形態では、突部60は、接続端部62側から先端部61側に向かって直線状に形成されているが、突部60は、直線状以外の形状で形成されていてもよく、突部60は、例えば、接続端部62と先端部61との間で湾曲したり屈曲したりしていてもよい。突部60は、交差部50や溝の形態や、突部60の形状に関わらず、主溝30と横溝40との1つの交差部50に少なくとも2つが配置され、複数の突部60のそれぞれ横溝40の溝壁45における開口端46側の反対側の先端部61が、主溝30内で終端していればよい。
また、上述した実施形態では、本発明に係るタイヤの一例として空気入りタイヤ1を用いて説明したが、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤ1以外であってもよい。本発明に係るタイヤは、例えば、気体を充填することなく使用することができる、いわゆるエアレスタイヤであってもよい。
[実施例]
図16A、図16Bは、タイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記のタイヤについて、従来例のタイヤと、本発明に係るタイヤと、本発明に係るタイヤと比較する比較例のタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、濡れた路面での走行性能であるウェット性能と、石噛みの発生のし難さについての性能である石噛み性能とについての試験を行った。
性能評価試験は、空気を充填して使用する空気入りタイヤを用いて行い、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/85R16 B4Nサイズのタイヤをリムサイズが16×5 1/2Jのリムホイールにリム組みし、空気圧を600kPaに調整して、2Dトラックの評価車両に試験タイヤを装着して評価車両で走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、ウェット性能については、ECE R117-02(ECE Regulation No.117 Revision 2)に準拠してウェット路面での制動テストを行い、ウェットグリップ制動性能を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほどウェット路面での制動性能に優れ、ウェット性能が高いことを示している。なお、ウェット性能は、指数が97以上であれば、従来例に対してウェット性能の低下が抑制されているものとする。
また、石噛み性能については、試験タイヤを装着した評価車両でオフロードを10時間走行した後にオンロードを2時間走行した際の、主溝30内に残存する石100の個数を数え、主溝30に噛み込まれている石100の個数の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほど主溝30に噛み込まれている石100の数が少なく、石噛み性能に優れていることを示している。
性能評価試験は、従来のタイヤの一例である従来例のタイヤと、本発明に係るタイヤの一例である実施例1~14、16~20と、本発明に係るタイヤと比較するタイヤの一例である比較例1、2と、参考例15との23種類のタイヤについて行った。このうち、従来例のタイヤは、主溝30と横溝40との交差部50に突部60が配置されていない。また、比較例1のタイヤは、主溝30と横溝40との交差部50に、突部60が1つだけ配置されている。また、比較例2のタイヤは、主溝30と横溝40との交差部50に、突部60が2つ配置されているものの、突部60の先端部61は主溝30内で終端していない。
これに対し、本発明に係るタイヤの一例である実施例1~14、16~20は、主溝30と横溝40との交差部50に少なくとも2つの突部60が配置され、突部60の先端部61は主溝30内で終端している。さらに、実施例1~14、16~20と、参考例15に係るタイヤは、周方向シースルー部65や幅方向シースルー部66の有無、主溝30の溝幅Wgに対する突部60の突出量Wp、突部60の高さHpと主溝30の溝深さHgとの関係、突部60同士の最短距離Dpと主溝30の溝幅Wgとの関係、突部60同士の最短距離Dpと横溝40の溝幅Dgとの関係、突部60の高さHpの1/2の位置Mでの突部60の最大厚みGaと横溝40の溝幅Dgとの関係、突部60はトレッド踏面3側から主溝30の溝底37側に向かうに従って厚みが大きくなるか否か、主溝30の溝壁35に対する突部60の角度θp、横溝40が有する一対の溝壁45の開口端46から主溝30内に向かう一対の突部60を備えるか否かが、それぞれ異なっている。
これらのタイヤを用いて性能評価試験を行った結果、図16A、図16Bに示すように、実施例1~14、16~20に係るタイヤは、従来例や比較例1、2に対して、ウェット性能の低下を抑制しつつ、石噛み性能を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1~14、16~20に係るタイヤは、ウェット性能を維持しつつ、石噛み性能を向上させることができる。