JP7445572B2 - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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Description
シートベルトは、乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトにより、シートに着座している乗員がシートから変位しないように拘束する。エアバッグ装置は、シートに着座する乗員の周囲で展開し、シートの着座位置から変位した乗員に作用する可能性がある大きな衝撃を吸収する。これらの乗員保護装置を使用することにより、車両は、乗車している乗員を保護することができる。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるとは限らない。たとえばシートに着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシートの横方向へ倒れる乗員についてのシートの着座位置からの変位について、適切に衝撃を吸収することは難しい。このため、車両では、シートの周りに、それぞれの衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けている。
また、袋体は、様々な乗員の体形に対応するなどのために、シートの着座位置にいる乗員のたとえば上体から少し離れた位置において展開する。展開した袋体は、乗員のたとえば上体が明らかに動いてから、その衝撃を吸収するように機能し始める。この場合、展開した袋体は、既に動き始めている乗員のたとえば上体についての大きな衝撃を吸収する必要がある。
しかも、本発明では、シートの背部の上には、右袋体と左袋体との間に立設部材が立設される。右袋体および左袋体は、シートの背部と立設部材との間で展開を開始し、引込装置により引かれることにより立設部材を押し上げる。これにより、右袋体および左袋体は、シートの背部の中央の近くにおいて展開できる。右袋体と左袋体との間から、乗員の上体や両肩が抜け出し難くなる。しかも、このような乗員の上体や両肩の抜け出しを抑制するために右袋体および左袋体をシートの背部の中央の近くにおいて展開しているにもかかわらず、これら右袋体および左袋体がシートの背部の中央へ向かう勢いを、立設部材を押し上げることにより抑制できる。右袋体および左袋体が乗員の首部や顎部に対して左右から勢い良く当たることを抑制できる。乗員の首部の近くにおいて右袋体および左袋体が展開しているにもかかわらず、乗員の首部や顎部に対する影響を抑えることができる。頭部や頸部に対して強い力を作用させ難くなる。
また、シートに着座する乗員の首部や頭部の周りには、最終的に右袋体と左袋体とが位置するため、衝撃が作用した場合の頭部の振れを抑制できる。
これらの作用により、本発明では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突だけでなく、斜め衝突やオフセット衝突などにおいても、右袋体および左袋体により、乗員がシートの着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体および左袋体により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体および左袋体は、シートの着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の説明図である。自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、公共交通用のバス、電車、個人用のパーソナルモビリティ、パーソナルモビリティを乗せる架台装置、がある。自動車1は、手動運転または自動運転できるものでもよい。
図1(A)は、自動車1の模式的な側面図である。図1(B)は、図1(A)の自動車1の上面図である。図1には、自動車1とともに、自動車1に乗車している乗員が図示されている。
自動車1は、車体2、を有する。車体2は、複数のシート4が前向きで配置される乗員室3を有する。シート4は、座部5と、座部5の後縁から上へ立設する背部6と、を有する。乗員は、その腰部および腿を座部5に載せ、その上体の背中を背部6に当ててシート4に着座する。
シートベルト装置は、シート4に着座している乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトを有する。シートベルトは、衝突の際にシート4に着座している乗員がシート4からずれて変位しないように乗員をシート4に拘束する。
エアバッグ装置は、シート4に着座する乗員の周囲で展開する袋体を有する。袋体は、たとえばシート4の前側において展開する。乗員の上体は、衝突の際にシート4に背をつけている着座位置からたとえば前へ倒れるが、展開している袋体に当たることにより衝撃が吸収される。乗員に作用する衝撃を吸収できる。
これらのシートベルト装置や、エアバッグ装置により、自動車1は、乗車している乗員を保護することができる。
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員の胸部を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃が入力された際に、乗員の胸部に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な位置およびタイミングに展開して衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切に衝撃を吸収できるとは限らない。たとえばシート4に着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシート4の横方向へ倒れる乗員についてのシート4の着座位置からの車幅方向への変位について、衝撃を吸収することは難しい。このため、自動車1では、シート4の周りに、複数の衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けることになる。シート4の周りには、衝突形態に対応する数の多数のエアバッグ装置が設けられることになる。この場合、乗員を保護するための装置の構造および制御は、複雑化する。
このように乗員保護装置10には、さらなる改善が求められている。
本実施形態では、このような効果を実用的に期待することができる乗員保護装置10について説明する。
図3の乗員保護装置10は、ステレオカメラ11、赤外線カメラ12、LiDAR13、加速度センサ14、通信装置15、GPS受信機16、および、エアバッグ装置17、を有する。エアバッグ装置17は、右袋体21、左袋体22、インフレータ23、後述する立設部材、巻取装置26、および、これらが接続される制御部27、を有する。これら乗員保護装置10の各センサおよび各装置は、自動車1に設けられる不図示の車ネットワークにより、制御部27に接続されてよい。
赤外線カメラ12は、たとえばステレオカメラ11と同様に乗員室3の前部において前向きに配置される。赤外線カメラ12は、車外の人や他の移動体などを撮像した赤外線画像を撮像する。
LiDAR13は、たとえば車体2の前部において前向きに配置される。LiDAR13は、前方へ向かって光を照射し、車体2の前方の車外の人による反射光に基づいて、被写体の方向、距離、速度などを取得する。
加速度センサ14は、車体2に設けられる。加速度センサ14に作用する加速度を検出する。車体2が人などの移動体に当たると、加速度センサ14は、通常の走行では生じないような大きな加速度を検出する。この場合、加速度センサ14は、衝突検出を出力してよい。この場合、加速度センサ14は、車体2と他の動体との接触を予測または検出する衝突検出部として機能する。
通信装置15は、無線通信により他の移動体、たとえば他の自動車や歩行者の他の通信装置、道路沿いに配置される基地局、などと通信する。通信装置15は、他の通信装置から、他の移動体の現在位置、移動方向、移動速度などを取得してよい。
GPS受信機16は、GPS衛星などから電波を受信し、自車の現在位置、移動速度、などを取得する。
制御部27としてのCPUは、たとえば自動車1の走行中の場合に、または自動車1に乗員が乗車している場合に、図4の処理を繰返し実行する。
これにより、制御部27としてのCPUは、自動車1の衝突が検出または予測された場合に、乗員保護装置10の右袋体21および左袋体22を展開できる。
図5は、本発明の実施形態に係る乗員保護装置10の右袋体21および左袋体22についてのシート4での収容状態の説明図である。
図5(A)は、シート4の前面図である。図5(B)は、シート4の側面図である。図5(C)は、シート4の上面図である。
そして、右袋体21および左袋体22は、展開時の圧力によりシート4の表面を形成するシートカバーを破って、シート4の外へ突出する。右袋体21の上部および左袋体22の上部は、シート4の背部6の上面を破って、シート4の背部6の上へ突出する。シート4の外へ突出する右袋体21および左袋体22は、シート4から左右へ展開することができる。最終的には、シート4から右へ展開した右袋体21は、シート4の背部6の右上面からシート4の座部5の右側部分にかけて延在するように展開できる。シート4から左へ展開した左袋体22は、シート4の背部6の左上面からシート4の座部5の左側部分にかけて延在するように展開できる。
同様に、左袋体22はシート4の背部6から座部5にかけてシート4の左縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート4の外へ突出した後の左袋体22の長さは、左袋体22の両端が固定されているシート4の背部6の左上部から座部5の左前部分までの直線距離より長くなる。左袋体22は、2つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、左袋体22は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図2のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
そして、乗員の左右で撓んだままに展開される右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の前面や左右の両肩に対して密着するようには展開し難い。
図6において、シート4の背部6に収容されている巻取装置26は、説明のためにシート4の背部6の後側に示している。
また、撓んで展開することにより、右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の上体などにより前への移動を阻害されることなく、着座している乗員の上体より前へ移動することができる。右袋体21および左袋体22は、それらが固定される二点の間において撓んで展開することにより、着座している乗員の上体の前に展開できる。
ただし、右袋体21および左袋体22は、この段階でも撓んだ状態にあるため、シート4に着座している乗員の上体を拘束することは難しい。
そして、巻取装置26により巻き取られるテザー25は、右袋体21に設けられるリング24を通して、その先端が左袋体22に接続される。巻取装置26は、遅くとも図6(B)の状態においてテザー25の巻き取りを開始する。
図7(A)において、右袋体21および左袋体22は、図6(C)のように、着座している乗員の上体の前に展開している。展開した右袋体21と左袋体22とは、シート4に着座している乗員の上体の両肩から前面にかけて沿ってこれらに密着するように略棒状に展開している。
シート4は、図8(A)に示すように、シート4の背部6の上に設けられるヘッドレスト7と、ヘッドレスト7を背部6の上に高さ調整可能に支持するように設けられるヘッドレストステー8と、を有する。図8(A)は、シート4を前から見た図である。
ヘッドレストステー8の軸部31は、シート4の背部6の上において上下動可能に設けられる。
左右一対の擦接部32,33は、シート4の背部6の中央側より左右方向の外側が上となる傾斜面を有する。これらの傾斜面は、シート4の車幅方向に対して外側が上となるように傾斜している。これらの傾斜面は、シート4の背部6の上面と対向する。なお、傾斜面は、全体的に外側が上がるように傾斜しているものであればよく、たとえばその全体が平面であっても、曲面であってもよい。
背部6と左右一対の擦接部32,33との間で展開を開始した右袋体21および左袋体22は、たとえば巻取装置26によりテザー25が巻き取られることにより、最終的には図6(B)から図6(C)に示すように、シート4の背部6についての左右方向の中央へ向かって移動する。
このように展開した右袋体21および左袋体22は、ヘッドレストステー8およびヘッドレスト7を押し上げるようにして、ヘッドレストステー8の軸部31へ向かって移動する。このため、展開した右袋体21および左袋体22の移動の速度は、減速され得る。
しかも、本実施形態では、シート4の背部6の上には、右袋体21と左袋体22との間に立設部材としてのヘッドレストステー8が立設される。右袋体21および左袋体22は、シート4の背部6とヘッドレストステー8との間で展開を開始し、巻取引装置26により引かれることによりヘッドレストステー8を押し上げる。これにより、右袋体21および左袋体22は、シート4の背部6の中央の近くにおいて展開できる。右袋体21と左袋体22とが首部のすぐ脇に隣接するように展開することにより、右袋体21と左袋体22との間から、乗員の上体や両肩が抜け出し難くなる。しかも、このような乗員の上体や両肩の抜け出しを抑制するために右袋体21および左袋体22をシート4の背部6の中央の近くにおいて展開しているにもかかわらず、これら右袋体21および左袋体22がシート4の背部6の中央へ向かう勢いを、ヘッドレストステー8の押し上げにより抑制できる。右袋体21および左袋体22が乗員の首部や顎部に対して左右から勢い良く当たることを抑制できる。乗員の首部の近くにおいて右袋体21および左袋体22が展開しているにもかかわらず、乗員の首部や顎部に対する影響を抑えることができる。頭部や頸部に対して強い力を作用させ難くなる。
また、シート4に着座する乗員の首部や頭部の周りには、最終的に右袋体21と左袋体22とが位置するため、衝撃が作用した場合の頭部の振れを抑制できる。
これらの作用により、本実施形態では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突だけでなく、斜め衝突やオフセット衝突などにおいても、右袋体21および左袋体22により、乗員がシート4の着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体21および左袋体22により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体21および左袋体22は、シート4の着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の乗員保護装置10について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略する。以下の説明では、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
擦動ブレーキ34は、シート4の背部6の内部に設けられ、シート4の背部6の内部においてヘッドレストステー8の軸部31と擦接する。
この際、上へ押し上げられるヘッドレストステー8の軸部31は、擦動ブレーキ34と擦接する。擦動ブレーキ34は、ヘッドレストステー8の軸部31が上へ移動しないように、軸部31の上下動を抑制する。
このように展開した右袋体21および左袋体22は、擦動ブレーキ34により上下動が抑制されているヘッドレストステー8およびヘッドレスト7を押し上げるようにして、ヘッドレストステー8の軸部31へ向かって移動する。このため、展開した右袋体21および左袋体22の移動の速度は、減速され得る。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、それぞれの両端がシート4の背部6の上部とシート4の左右のアームレスト部とに固定されてよい。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、たとえばシート4の背部6の上で連結されて、一体化されてもよい。
この他にもたとえば、右袋体21および右袋体21は、前巻きに巻いた状態でシート4に設けられても、蛇腹状に折り畳まれてシート4に設けられても、よい。これらの場合であっても、たとえばシート4の左右に反射板を設け、袋体を反射板に当てて前へ移動させるようにすれば、右袋体21および右袋体21は、シート4の背部6から前広がりとなるように斜前方向へ向かって、またはシート4についての左右の両側へ向かって展開を開始することができる。
Claims (5)
- 車両において乗員が着座するシートの背部の上から展開して、前記シートに着座する乗員の上体の両肩から前面にかけて沿うように展開可能な右袋体および左袋体と、
前記右袋体および前記左袋体を展開するインフレータと、
前記シートの背部の上において前記右袋体と前記左袋体との間に上へ可動可能に立設され、展開する前記右袋体および前記左袋体と接触することが可能な立設部材と、
前記右袋体および前記左袋体を後へ引く引込装置と、
を有し、
前記右袋体および前記左袋体は、前記シートの背部と前記立設部材との間で展開を開始し、前記引込装置により引かれることにより前記立設部材を上へ押し上げる、
車両の乗員保護装置。
- 前記立設部材は、前記シートの背部の中央から上へ突出する軸部と、前記軸部の上部から左右両側へ突出する左右一対の擦接部と、を有し、
左右一対の前記擦接部は、前記シートの背部の上において、展開する前記右袋体および前記左袋体と擦接する、
請求項1記載の、車両の乗員保護装置。
- 左右一対の前記擦接部は、前記シートの背部の中央側より左右方向の外側が上となる傾斜面を有する、
請求項2記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記立設部材は、前記シートの背部の上において上下動可能に設けられ、
前記立設部材の上下動を抑制する擦動ブレーキ、を有する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記右袋体は、前記シートの前記背部の右上部と前記シートの座部の右側部分とに固定され、前記シートの前記背部の右上部から前記シートの座部の右側部分にかけて延在するように展開し、
前記左袋体は、前記シートの前記背部の左上部と前記シートの座部の左側部分とに固定され、前記シートの前記背部の左上部から前記シートの座部の左側部分にかけて延在するように展開する、
請求項1から4のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
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