JP7433516B2 - コモンモードフィルタ回路 - Google Patents

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Description

本願は、コモンモードフィルタ回路に関するものである。
電圧形の電力変換回路を備えたパワーエレクトロニクス機器は、半導体素子であるパワーデバイスを高速にスイッチングさせることで矩形波状の電圧を出力し、その平均値を制御することで任意の電流波形あるいは電圧波形を生成する。電力変換回路の交流端子と基準電位になっている接地(GND)との間の電圧の平均値で定義されるコモンモード電圧が変動すると、電力変換回路と接地との浮遊容量により形成される経路すなわちコモンモード経路にコモンモード電流が流れる。コモンモード電流は誘導障害を発生させるため電力変換回路の周辺の電子回路を誤動作させるなどの悪影響を及ぼすことが知られている。そこでコモンモード電流を低減するために、電力変換回路から発生するコモンモード電圧を検出し、検出値に対し逆相の補償電圧(注入電圧)を注入することでコモンモード電圧を相殺するコモンモードフィルタ回路が提案されている。
例えば特許文献1には、電力用半導体素子のスイッチング動作に基づいて電力変換を行う際に発生するコモンモード電圧を相殺するアクティブコモンキャンセラが開示されている。特許文献1のアクティブコモンキャンセラは、三相交流配線の各相にY結線された3つのコンデンサの中性点と接地との間のコモンモード電圧を検出し、トランジスタで構成されると共に電力変換回路の入力側を駆動電源にしたプッシュプル回路により検出されたコモンモード電圧を増幅し、コンデンサを介してコモンモードトランスの一次側巻線(一次巻線)に出力する。コモンモードトランスの二次側巻線(二次巻線)は三相交流配線に接続されており、コモンモードトランスを用いて、三相交流配線の各相にコモンモード電圧と逆相で同一電圧を注入することでコモンモード電圧を相殺する。すなわち、特許文献1のアクティブコモンキャンセラは、電力変換回路から発生するコモンモード電圧に対し、逆相の補償電圧(注入電圧)をコモンモードトランスに出力することでコモンモード電圧を打ち消している。プッシュプル回路は、言わばコモンモードトランスに出力する出力電圧を生成する出力電圧生成回路である。
特許第2863833号公報(図1)
特許文献1のアクティブコモンキャンセラのようなコモンモードフィルタ回路において、コモンモードトランスの励磁インダクタンス値をLmとした場合に特定の周波数fの電圧Vを印加すると、磁束発生のためにIm=V/(2πfLm)で決まる励磁電流Imを流す必要がある。低周波の電圧を印加した場合には、励磁電流の振幅すなわち励磁電流を増大させるか、又は励磁インダクタンスを増加させる必要がある。トランスの励磁インダクタンスは、巻数の2乗に比例、鉄心断面積に比例、鉄心磁路長に反比例する。したがって、設計次第では励磁インダクタンスを増加できるが、励磁インダクタンスを大きくするとトランスの体積が増大し、構造上の制約からその対策には限界がある。低周波成分に対しては励磁インダクタンスのインピーダンスは低く制限され、短絡状態に近い状態となってしまうため、何らかの対策が必要になる。
特許文献1のアクティブコモンキャンセラでは、励磁インダクタンスを増加させずに数10kHz以下の低周波成分のコモンモード電圧を低減するには、励磁電流が増加するため出力電圧生成回路において電流容量の大きい能動素子が必要となる。電流容量の大きい能動素子は線形領域で動作するため、大電流を流すと損失が大きく発熱する。このため、特許文献1のアクティブコモンキャンセラは、低周波成分のコモンモード電圧に対処する場合に、電流容量の大きい能動素子の搭載に伴って、能動素子の冷却系が大型になり、装置が大型になる問題があった。
前述の問題は、低周波成分のコモンモード電圧に対処する場合に、出力電圧生成回路からコモンモードトランスに出力する出力電流が大幅に増加することで生じる。このため、低周波成分のコモンモード電圧の場合でも、出力電圧生成回路からコモンモードトランスに出力する出力電流の大幅な増加を防止することで、電流容量の大きい能動素子が不要となり、電流容量の大きい能動素子の搭載に伴う問題は生じない。
本願明細書に開示される技術は、低周波成分のコモンモード電圧の場合でも、出力電圧生成回路から出力される出力電流の大幅な増加を防止するコモンモードフィルタ回路を提供することを目的とする。
本願明細書に開示される一例のコモンモードフィルタ回路は、半導体素子のスイッチング動作により電力変換を行う電力変換回路が電力線に発生させるコモンモード電圧を低減するコモンモードフィルタ回路である。コモンモードフィルタ回路は、電力線に生じたコモンモード電圧を検出してコモンモード電圧の情報を含む電圧検出信号を出力する電圧検出回路と、電圧検出回路により出力された電圧検出信号における特定の周波数成分を通過させる帯域制限回路と、電力線に接続された二次巻線と一次巻線とを有し、電力線にコモンモード電圧を低減する注入電圧を重畳するコモンモードトランスと、帯域制限回路により出力された周波数成分を含む帯域制限信号に基づく信号の電圧振幅を許容値以下に低減する出力電圧を生成すると共に、出力電圧をコモンモードトランスの一次巻線に出力する出力電圧生成回路と、コモンモードトランスの一次巻線に並列に接続されると共に、出力電圧生成回路の出力端子間に接続されているコモンモードトランスを含む負荷回路の負荷インピーダンスを調整するインピーダンス調整器と、を備えている。インピーダンス調整器のインピーダンスは、当該インピーダンスを含む出力電圧生成回路の出力端子間に接続された負荷インピーダンスが最大となる周波数が、帯域制限回路の二つのカットオフ周波数の範囲内に設定されている。
本願明細書に開示される一例のコモンモードフィルタ回路は、コモンモードトランスの一次巻線に並列にされたインピーダンス調整器を備え、負荷インピーダンスが最大となる周波数が帯域制限回路の二つのカットオフ周波数の範囲内に含まれるようにインピーダンス調整器のインピーダンスが調整されているので、低周波成分のコモンモード電圧の場合でも、出力電圧生成回路から出力される出力電流の大幅な増加を防止することができる。
実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路の構成を示す図である。 図1の電力変換回路の構成を示す図である。 図1の制御回路の構成を示す図である。 図1の増幅回路の構成を示す図である。 図1の増幅回路の出力端子間に接続された負荷回路の等価回路を示す図である。 図1の帯域制限回路のゲイン特性及び図5の負荷回路のインピーダンス特性を示す図である。 図1の増幅回路の出力電流のベクトルを示す図である。 比較例のコモンモードフィルタ回路における増幅回路の出力電流のベクトルを示す図である。 図1の帯域制限回路のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第一例を示す図である。 図1の帯域制限回路のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第二例を示す図である。 図3のデジタル回路の第一例の構成を示す図である。 実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路の第一例の動作を説明するフローチャートである。 図12の位相調整工程を説明するフローチャートである。 図12の振幅調整工程を説明するフローチャートである。 実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路における位相調整によるコモンモード電圧の残留量を説明する図である。 実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路における振幅調整によるコモンモード電圧の残留量を説明する図である。 図3のデジタル回路の第一例における位相調整例を示す図である。 図3のデジタル回路の第一例における振幅調整例を示す図である。 図3のデジタル回路の第二例の構成を示す図である。 図19の探索回路の構成を示す図である。 実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路の第二例の動作を説明するフローチャートである。 図3のデジタル回路の機能を実現するハードウェア構成例を示す図である。 図19の探索回路に組込むモデルを生成する学習装置の構成を示す図である。 実施の形態2に係るコモンモードフィルタ回路の構成を示す図である。 図24の帯域制限回路群の構成を示す図である。 図24の制御回路の構成を示す図である。 図24の可変コンデンサの構成を示す図である。 図24の帯域制限回路群のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第一例を示す図である。 図24の帯域制限回路群のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第二例を示す図である。 実施の形態2に係るコモンモードフィルタ回路の動作を説明するフローチャートである。 実施の形態3に係るコモンモードフィルタ回路の構成を示す図である。 図31のLC調整器の構成を示す図である。 図31の制御回路の構成を示す図である。 図31の増幅回路の出力端子間に接続された負荷回路の等価回路を示す図である。 実施の形態3に係るコモンモードフィルタ回路の動作を説明するフローチャートである。 図35の共振周波数調整工程を説明するフローチャートである。
コモンモードフィルタ回路について、図面を参照しながら説明する。以下の図面において、同一又はこれに相当するものに同一符号を付けて説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路の構成を示す図であり、図2は図1の電力変換回路の構成を示す図である。図3は図1の制御回路の構成を示す図であり、図4は図1の増幅回路の構成を示す図である。図5は図1の増幅回路の出力端子間に接続された負荷回路の等価回路を示す図であり、図6は図1の帯域制限回路のゲイン特性及び図5の負荷回路のインピーダンス特性を示す図である。図7は図1の増幅回路の出力電流のベクトルを示す図であり、図8は比較例のコモンモードフィルタ回路における増幅回路の出力電流のベクトルを示す図である。図9は図1の帯域制限回路のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第一例を示す図であり、図10は図1の帯域制限回路のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第二例を示す図である。図11は図3のデジタル回路の第一例の構成を示す図である。図12は、実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路の第一例の動作を説明するフローチャートである。図13は図12の位相調整工程を説明するフローチャートであり、図14は図12の振幅調整工程を説明するフローチャートである。図15は、実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路における位相調整によるコモンモード電圧の残留量を説明する図である。図16は、実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路における振幅調整によるコモンモード電圧の残留量を説明する図である。図17は図3のデジタル回路の第一例における位相調整例を示す図であり、図18は図3のデジタル回路の第一例における振幅調整例を示す図である。図19は図3のデジタル回路の第二例の構成を示す図であり、図20は図19の探索回路の構成を示す図である。図21は、実施の形態1に係るコモンモードフィルタ回路の第二例の動作を説明するフローチャートである。図22は、図3のデジタル回路の機能を実現するハードウェア構成例を示す図である。図23は、図19の探索回路に組込むモデルを生成する学習装置の構成を示す図である。
実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のスイッチング動作により電力変換を行う電力変換回路2が電力線4、5に発生させるコモンモード電圧Vcmを低減するコモンモードフィルタ回路である。補償対象3と電力変換回路2とは、電力線4、コモンモードトランス16の二次巻線7、電力線5を介して接続されている。補償対象3は、例えば電力系統、電動機等である。コモンモードフィルタ回路1は、電圧検出回路11、帯域制限回路12、出力電圧生成回路66、インピーダンス調整器18、コモンモードトランス16を備えている。電圧検出回路11は、電力線4、5に生じたコモンモード電圧Vcmを検出してコモンモード電圧Vcmの情報を含む電圧検出信号sig1を出力する。帯域制限回路12は、電圧検出回路11により出力された電圧検出信号sig1における特定の周波数成分を通過させ、帯域制限信号sig2を出力する。
出力電圧生成回路66は、制御回路13と、制御回路13により出力された補償信号sig3を増幅し、増幅された出力信号sig4をコモンモードトランス16に出力する増幅回路14と、を備えている。出力電圧生成回路66の制御回路13は、増幅回路14から出力される出力信号sig4の電圧である出力電圧Vsによりコモンモード電圧Vcmが許容値(閾値Vth1)以下になるように、帯域制限回路12により出力された周波数成分を含む帯域制限信号sig2に基づく信号すなわち当該制御回路13が演算した演算出力信号sig3dの電圧振幅Vоを許容値(閾値Vth2)以下に低減する補償信号sig3を生成する。したがって、出力電圧生成回路66は、制御回路13、増幅回路14により、コモンモード電圧Vcmが許容値(閾値Vth1)以下になるように、すなわち電圧検出回路11により出力された電圧検出信号sig1の電圧振幅が減少するように、当該制御回路13が演算した演算出力信号sig3dの電圧振幅Vоを許容値(閾値Vth2)以下に低減する出力電圧Vsを生成する。
コモンモードトランス16は、電力線4、5に接続された二次巻線7と出力電圧生成回路66の出力端子間に接続された一次巻線8とを有し、電力線4、5にコモンモード電圧Vcmを低減する注入電圧Vapを重畳する。すなわちコモンモードトランス16は、出力電圧生成回路66により出力された出力電圧Vsが一次巻線8に入力されると、コモンモード電圧Vcmを低減する注入電圧Vapを電力線4、5に注入する。インピーダンス調整器18は、コモンモードトランス16の一次巻線8に並列に接続されると共に、出力電圧生成回路66の出力端子すなわち増幅回路の出力端子45s、45gの間に接続されているコモンモードトランス16を含む負荷回路60の負荷インピーダンスZtを調整する。電力線4は、u相の電力線4u、v相の電力線4v、w相の電力線4wを備えている。電力線5は、u相の電力線5u、v相の電力線5v、w相の電力線5wを備えている。コモンモードトランス16の二次巻線7は、u相の二次巻線7u、v相の二次巻線7v、w相の二次巻線7wを備えている。
交流電力を出力する場合の電力変換回路2は、ダイオード整流回路又はその他の手段を用いて直流電圧を発生する直流電圧源21、直流電圧を平滑化する直流コンデンサ22、半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6で構成された三相フルブリッジ、接地線6に接続される接地端子26と低電位側配線27bとの間に接地用のコンデンサ24を備えている。三相フルブリッジは、6個の半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6を備えている。一端がコモンモードトランス16の二次巻線7u、7v、7wの一端に接続されている三相の電力線4u、4v、4wは、それぞれ他端が電力変換回路2の交流端子25u、25v、25wに接続されている。一端が補償対象3に接続されている三相の電力線5u、5v、5wは、それぞれ他端がコモンモードトランス16の二次巻線7u、7v、7wの他端に接続されている。
電力変換回路2は、補償対象3が電力系統であれば、電力系統から電力を受電する整流動作もしくは電力系統に電力を送電する動作を行う回路である。送電する場合、直流電圧源21は、電力源に交流発電機を持つ整流回路、太陽電池、燃料電池等である。受電する場合、直流電圧源21は電力を蓄電する蓄電池である。また、電力変換回路2は、補償対象3が電動機であれば、電動機を駆動する回路である。電力変換回路2は、直流電圧源21が蓄電池であっても、直流電圧源21以外の構成は同じである。
半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力用半導体素子が用いられる。図2では、IGBTの例を示した。半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6は、IGBT、ダイオードDを備えている。ダイオードDは、IGBTに逆並列に接続されている。半導体素子Q1、Q3、Q5のコレクタは高電位側配線27aに接続されており、半導体素子Q2、Q4、Q6のエミッタは低電位側配線27bに接続されている。半導体素子Q1のエミッタと半導体素子Q2のコレクタは接続されており、半導体素子Q3のエミッタと半導体素子Q4のコレクタは接続されており、半導体素子Q5のエミッタと半導体素子Q6のコレクタは接続されている。半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のゲートに、図示しない駆動回路から駆動信号が入力される。電力変換回路2が電力を送電する場合又は電動機駆動を行う場合、三相フルブリッジは、駆動回路からの駆動信号に基づいて半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6をスイッチングして、直流電力を交流電力に変換する。電力変換回路2が電力を受電する場合、三相フルブリッジは、駆動回路からの駆動信号に基づいて半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6をスイッチングして、交流電力を直流電力に変換する。
電圧検出回路11は、三相の電力線5u、5v、5wのそれぞれにY結線接続された3個のコンデンサ9u、9v、9wの中性点n0と接地線6との間に分圧コンデンサ10が直列接続されており、分圧されたコモンモード電圧Vcmを検出する。コンデンサ9uは電力線5uと中性点n0とに接続されており、コンデンサ9vは電力線5vと中性点n0とに接続されており、コンデンサ9wは電力線5wと中性点n0とに接続されている。電圧検出回路11の検出方式は、分圧コンデンサ10がない場合における三相の電力線5u、5v、5wの中性点n0と接地線6との電圧である通常のコモンモード電圧Vcmよりも低い電圧を検出しており、分圧されたコモンモード電圧Vcmを検出する方式である。電圧検出回路11が出力する電圧検出信号sig1は、分圧されたコモンモード電圧Vcmの情報を含んでいる。分圧されたコモンモード電圧Vcmの情報は通常のコモンモード電圧Vcmの情報が反映されているので、電圧検出信号sig1は、通常のコモンモード電圧Vcmの情報を含んでいる。ここでは、通常のコモンモード電圧の符号、分圧されたコモンモード電圧の符号は、区別せずにVcmを用いる。実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、出力電圧生成回路66において増幅回路14を備えている。増幅回路14は、電圧検出回路11の分圧比、コモンモードトランス16における一次巻線8と二次巻線7との巻線比に応じて、電圧検出信号sig1の電圧振幅が電力線4、5に生じている通常のコモンモード電圧Vcmの電圧振幅を低減する電圧振幅に増幅し、増幅された出力信号sig4をコモンモードトランス16に出力する。
検出されたコモンモード電圧Vcmの情報を含む電圧検出信号sig1を帯域制限回路12に通過させ、特定の周波数帯域の信号である帯域制限信号sig2を抽出する。帯域制限信号sig2は、出力電圧生成回路66の制御回路13に入力される。帯域制限回路12がアナログフィルタである場合の制御回路13の例を図3に示した。制御回路13は、AD(Analog Digital)変換器31、デジタル回路32、DA(Digital Analog)変換器33を備えている。AD変換器31は、アナログの帯域制限信号sig2をデジタルの演算入力信号sig2dに変換する。演算入力信号sig2dはデジタル回路32に入力される。デジタル回路32は、例えばマイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等により実現されている。演算入力信号sig2dは、振幅及び位相が電圧振幅V2及び電圧位相Φ2である。デジタル回路32は、演算出力信号sig3dを出力する。演算出力信号sig3dは、振幅及び位相が電圧振幅Vo及び電圧位相Φoである。DA変換器33はデジタルの演算出力信号sig3dをアナログの補償信号sig3に変換する。制御回路13は、入力端子34s、34gから帯域制限回路12の帯域制限信号sig2を取り込み、当該制御回路13の内部信号である演算出力信号sig3dの電圧振幅Voが減少するように補償信号sig3を生成し、出力端子35s、35gから補償信号sig3を出力する。入力端子34g、出力端子35gは、接地線6に接続されており、接地電位になっている。
増幅回路14は、例えばオペレーショナルアンプ41、入力抵抗42、負帰還抵抗43を備えた反転増幅回路である。制御回路13により出力された補償信号sig3が入力端子44s、44gから入力されると、増幅回路14は補償信号sig3を増幅し、出力端子45s、45gから出力信号sig4をインピーダンス調整器18及びコモンモードトランス16の一次巻線8に出力する。出力信号sig4は、電圧及び電流が出力電圧Vs及び出力電流Isである。入力端子44g、出力端子45gは、接地線6に接続されており、接地電位になっている。オペレーショナルアンプ41の正側入力端子に、入力端子44gを介して接地電位が入力されている。オペレーショナルアンプ41の負側入力端子に、入力端子44sからの入力が入力抵抗42を介して入力され、かつオペレーショナルアンプ41の出力が負帰還抵抗43を介して入力されている。オペレーショナルアンプ41には、正側電源+Vcc、負側電源-Vccが接続されている。
出力電圧生成回路66の出力端子すなわち増幅回路14の出力端子45s、45gは、それぞれ並列接続されたインピーダンス調整器18及びコモンモードトランス16の一次巻線8の一端及び他端に接続されている。コモンモードフィルタ回路1は、出力電圧生成回路66から出力電圧Vsをインピーダンス調整器18及びコモンモードトランス16の一次巻線8に印加する。コモンモードトランス16の二次巻線7は電力線4及び電力線5に接続されており、コモンモードフィルタ回路1は、各相に共通の注入電圧Vapを注入することで電力変換回路2が発生するコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分に対し、逆相成分の注入電圧Vapを注入する。図1ではインピーダンス調整器18がコンデンサ15である例であり、すなわちインピーダンス調整器18がコンデンサ15を備えている例を示した。
次に、電圧検出信号sig1が低周波成分を含んだ場合においても、増幅回路14の出力電流Isを抑制する方法を説明する。図5に増幅回路14の出力端子間の負荷回路60の等価回路を示した。増幅回路14の出力端子45s、出力端子45g間の等価回路は、増幅回路14の負荷側の等価回路である。負荷回路60は、出力電圧生成回路66の出力端子45s、45g間に接続されているコモンモードトランス16を含む回路である。コモンモードインピーダンスZは、電力変換回路2、電力線4、電力線5、電圧検出回路11、補償対象3、と接地線6との一巡経路61の合成インピーダンスである。コモンモードインピーダンスZはLC直列共振回路のインピーダンスで表現できる。負荷回路60は、インピーダンス調整器18であるコンデンサ15、コモンモードトランス16における励磁インダクタンス値Lmを有する励磁インダクタ、コモンモードトランス16に接続される一巡経路61のコモンモードインピーダンスZが並列接続される。すなわち負荷回路60は、LC並列共振回路で表現できる。
負荷回路60のインピーダンスを負荷インピーダンスZtとする。負荷回路60の各構成物のインピーダンスについても次のようにアルファベットで表現する。励磁インダクタンス値Lmを有する励磁インダクタのインピーダンスは励磁インピーダンスZlである。したがって、コモンモードトランス16が励磁する際のインピーダンスは励磁インピーダンスZlである。インピーダンス調整器18のインピーダンスは調整器インピーダンスZstである。負荷回路60の負荷インピーダンスZtは、調整器インピーダンスZst、励磁インピーダンスZl、コモンモードインピーダンスZが並列接続された合成インピーダンスである。コモンモードインピーダンスZは、インダクタンス値La、容量値Caを有するLC直列共振回路のインピーダンスで表現できるので、コモンモードインピーダンスZは、LC直列共振回路の共振周波数を基準にした周波数成分に応じた、インダクタンス値La又は容量値Caとして考えることができる。まず、コモンモードインピーダンスZを単純化できる場合について説明する。コモンモードインピーダンスZは、コモンモードインピーダンスZの共振周波数より低い成分に関しては容量値Caを持つコンデンサとして動作し、コモンモードインピーダンスZの共振周波数より高い成分に関してはインダクタンス値Laを持つインダクタンスとして動作する。
増幅回路14から電圧がV、周波数がfの出力電圧Vsを印加する場合は、励磁インダクタンス値Lmを持つコモンモードトランス16の一次巻線8の側に式(1)で決定される励磁電流Imを流す必要がある。
Figure 0007433516000001
周波数の異なる同一振幅の電圧を印加することを想定した場合には、周波数fと励磁電流Imは反比例する。したがって、低周波のコモンモード電圧Vcmを補償する際すなわち低周波のコモンモード電圧Vcmを低減する注入電圧Vapを電力線4、5に注入する際には、励磁電流Imが増大する。前述した特許文献1の方式を適用した比較例のコモンモードフィルタ回路は、出力電圧生成回路の出力端子間にインピーダンス調整器18すなわちコンデンサ15が配置されていないため、励磁電流Imは増幅回路14からのみ供給されていた。したがって、比較例のコモンモードフィルタ回路は、低周波成分を補償するには励磁電流Imが増加するため電流容量の大きい能動素子が必要となり、電流容量の変更に伴い能動素子のコストの増大を招いていた。また、励磁電流Imを供給する能動素子は線形領域で動作する。このため、電流容量の大きい能動素子は、大電流を流すと損失が大きく発熱するため、能動素子の冷却系が大型になり、冷却系のコストも増大する。したがって、比較例のコモンモードフィルタ回路を搭載する装置は、能動素子の大容量化、冷却系の大型化に伴って、装置のコストも増大する。
これに対して、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、LC並列共振回路である負荷回路60のインピーダンス調整器18を用いて、特定の周波数において増幅回路14の出力端子45sと出力端子45gとの間に接続される負荷回路60のインピーダンスすなわち負荷インピーダンスZtを増加することで、増幅回路14の出力電流Isを抑制することが可能である。具体的には、低周波の補償を行う場合に、インピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstすなわちコンデンサ15の容量値Cを適切に設定することで、負荷インピーダンスZtが増加し、増幅回路14の出力電流Isを抑制することが可能である。負荷回路60の負荷インピーダンスZtは、調整器インピーダンスZst、励磁インピーダンスZl、コモンモードインピーダンスZが並列接続されたLC並列共振回路のインピーダンスになる。また、負荷回路60の負荷インピーダンスZtの値は、コンデンサ15の容量値C、コモンモードトランス16の励磁インダクタンス値Lm、コモンモードインピーダンスZのインダクタンス値La及び容量値Caを用いて表現できる。
図6に、帯域制限回路12のゲインGと増幅回路14に接続される負荷インピーダンスZtの周波数特性を示した。ゲインGのゲイン特性88と、負荷インピーダンスZtのインピーダンス特性89とが図6に同時に示されている。ゲイン特性88における縦軸はゲインGであり、インピーダンス特性89における縦軸は負荷インピーダンスZtである。横軸は周波数fである。最初に、コモンモードインピーダンスZは、励磁インダクタンス値Lmを有する励磁インダクタによる励磁インピーダンスZlに対して十分に大きく、無視できる場合を考える。この場合、増幅回路14に接続される負荷インピーダンスZtは、励磁インダクタンス値Lmを有する励磁インダクタと容量値Cを有するコンデンサ15とが並列接続されたLC並列共振回路のインピーダンスになる。このLC並列共振回路すなわち負荷回路60の周波数特性は、式(2)に示す共振周波数fr1の時に、負荷インピーダンスZtの値が最大値になる。
Figure 0007433516000002
したがって、帯域制限回路12の特性で決定される増幅回路14の出力電圧Vsの周波数fsと、励磁インピーダンスZlの励磁インダクタンス値Lmとコンデンサ15の容量値Cで決まる共振周波数を式(2)に示すfr1とを一致させること又は十分に近づけることで、負荷インピーダンスZtを高く保てる。増幅回路14は前述した通り帯域制限回路12から抽出された信号である帯域制限信号sig2に基づいて補償を行うため、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fhとカットオフ周波数flの間に、コモンモードトランス16の励磁インダクタンス値Lmとコンデンサ15の容量値Cとで表現されたLC並列共振回路の共振周波数fr1が入るように調整することで、増幅回路14により出力される出力電圧Vsにおける主な周波数成分は増幅回路14の負荷インピーダンスZtが高い周波数成分となる。すなわち、コモンモードフィルタ回路1は、コモンモードインピーダンスZの影響が無視できる場合、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数flとカットオフ周波数fhの間に、負荷回路60の共振周波数fr1が入るように調整することで、増幅回路14の出力端子間の負荷インピーダンスZtが高い周波数成分のみを出力することが可能となる。
次に、励磁インダクタンス値Lmに対してコモンモードインピーダンスZが十分に大きくなく、コモンモードインピーダンスZの影響が無視できない場合を考える。低周波では、コモンモードインピーダンスZの値は容量値Caとして扱える。また、高周波では、コモンモードインピーダンスZの値はインダクタンス値Laとして扱える。低周波における増幅回路14の出力端子間の負荷インピーダンスZtは、励磁インダクタンス値Lmを有する励磁インダクタと容量値Cを有するコンデンサ15と容量値Caを有するコモンモードインピーダンスZとが並列接続されたLC並列共振回路のインピーダンスになる。この低周波におけるLC並列共振回路の共振周波数は、式(3)に示す共振周波数fr2で表すことができる。高周波における増幅回路14の出力端子間の負荷インピーダンスZtは、励磁インダクタンス値Lmを有する励磁インダクタと容量値Cを有するコンデンサ15とインダクタンス値Laを有するコモンモードインピーダンスZとが並列接続されたLC並列共振回路のインピーダンスになる。この高周波におけるLC並列共振回路の共振周波数は、式(4)に示す共振周波数fr3で表すことができる。
Figure 0007433516000003
Figure 0007433516000004
励磁インダクタンス値Lmを有する励磁インダクタとインダクタンス値Laを有するコモンモードインピーダンスZとが合成された合成インダクタンスの値を合成インダクタンス値Lbとし、容量値Cを有するコンデンサ15と容量値Caを有するコモンモードインピーダンスZとが合成された合成キャパシタンスの容量値を合成容量値Cbとした場合には、増幅回路14の出力端子間の負荷インピーダンスZtは、LC並列共振回路の共振周波数が式(5)に示す共振周波数fr4で最大値になる。
Figure 0007433516000005
コモンモードインピーダンスZの影響が無視できない場合、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数flとカットオフ周波数fhの間に、コモンモードトランス16の励磁インダクタンス値Lm及びコモンモードインピーダンスZのインダクタンス値Laが合成された合成インダクタンスの合成インダクタンス値Lbと、コンデンサ15の容量値C及びコモンモードインピーダンスZの容量値Caが合成された合成キャパシタンスの合成容量値Cbとで表現されたLC並列共振回路の共振周波数fr4が入るように調整することで、増幅回路14により出力される出力電圧Vsにおける主な周波数成分は増幅回路14の負荷インピーダンスZtが高い周波数成分となる。すなわち、コモンモードフィルタ回路1は、コモンモードインピーダンスZの影響が無視できない場合、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数flとカットオフ周波数fhの間に、負荷回路60の共振周波数fr4が入るように調整することで、増幅回路14の出力端子間の負荷インピーダンスZtが高い周波数成分のみを出力することが可能となる。なお、その効果は帯域制限回路12の中心周波数と共振周波数fr4を一致させることで最大となる。
インピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstは、負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となる周波数すなわち共振周波数fr4が、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に含まれるように調整されている。したがって、負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となる周波数すなわち共振周波数fr4が、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に含まれることは、インピーダンス条件が満たされていることである。つまり、インピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstは、インピーダンス条件を満足するように調整されている。実施の形態1では、インピーダンス調整器18がコンデンサ15の例なので、インピーダンス調整器18の容量値Cは、インピーダンス条件を満たすように調整されている。
図7、図8を用いて、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1における出力電流Isのベクトルと比較例のコモンモードフィルタ回路1における出力電流Iseのベクトルとを説明する。図8に示した比較例の出力電流Iseのベクトルである電流ベクトル91eは、コモンモードトランス16の励磁電流Ilmのベクトルである電流ベクトル91aと、コモンモードトランス16の二次巻線7側に流れるコモンモード電流が等アンペアターンの法則で一次巻線8に誘起される電流Icmaのベクトルである電流ベクトル91dとの、合成ベクトルで決まっていた。ここで、低周波の出力電圧Vsを発生させた場合には励磁電流Ilmが支配的となる。
一方、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は励磁電流Ilmをコンデンサ15から供給するので、図7に示した実施の形態1の出力電流Isのベクトルである電流ベクトルは、コモンモードトランス16の二次巻線7側に流れるコモンモード電流が等アンペアターンの法則で一次巻線8に誘起される電流Icmaのベクトルである電流ベクトル91cで決まる。図7では、励磁電流Ilmのベクトルである電流ベクトル91aと、コンデンサ15からのコンデンサ電流Icのベクトルである電流ベクトル91bとが同一の大きさで方向が逆向になっており、出力電流Isと電流Icmaとが同一の大きさで方向が同じになっている状態を示した。その結果として、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、低周波のコモンモード電圧Vcmを補償する際に発生していた励磁電流Ilmの増加による増幅回路14の出力電流Isが増大することを防止することができる。その結果、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、出力電圧生成回路66の増幅回路14の容量不足は生じることがなく、低周波のコモンモード電圧Vcmを補償することが可能となる。
次に、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数flとカットオフ周波数fhを決定する方法を説明する。図9、図10に、実施の形態1の電力変換回路2が発生させるコモンモード電圧Vcmの周波数成分92a、92b、92c、92dと、帯域制限回路12のゲインGの周波数特性であるゲイン特性88との関係を示した。ここでは、電力変換回路2は一定のキャリア周波数f1で動作することを想定する。一定のキャリア周波数f1で動作する電力変換回路2は、キャリア周波数f1のコモンモード電圧Vcm及びキャリア周波数f1の奇数倍のコモンモード電圧Vcmを発生する。図9、図10にはキャリア周波数f1の周波数成分92a、3次成分周波数f3の周波数成分92b、5次成分周波数f5の周波数成分92c、7次成分周波数f7の周波数成分92dを図示している。コモンモードフィルタ回路1が搭載される装置の回路条件によっては、キャリア周波数f1の偶数倍の周波数成分も発生する。したがって、コモンモード電圧Vcmあるいはコモンモード電流の周波数解析結果から、キャリア周波数f1の整数倍の周波数成分を含むコモンモード電圧Vcmが発生する。したがって、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fh間すなわちカットオフ周波数flとカットオフ周波数fhとの間に、キャリア周波数f1あるいはキャリア周波数f1の整数倍の周波数が含まれるように設定することで、コモンモード電圧Vcm又はコモンモード電流の支配的な成分を抽出できる。図9は帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1が含まれるように設定されている例であり、図10は帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1の整数倍の周波数が含まれるように設定されている例である。図10のように設定した場合でも、負荷インピーダンスZtは、共振周波数fr4で最大値になる。なお、周波数成分92bの方が周波数成分92aよりも大きい場合には、図10のように設定することを想定しているが、特定の周波数成分を優先的に除去したい場合にはこの限りではない。
次に、制御回路13に組み込むコモンモード成分の低減機能を実現する方法について説明する。実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、特定周波数帯域のコモンモード成分すなわちコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分に対して逆相かつ同一振幅の電圧を注入電圧Vapとしてコモンモードトランス16の二次巻線7から電力線4、5に注入することで、コモンモード電圧Vcmを許容値以下に低減する。図11に、実施の形態1のデジタル回路32の第一例を示した。デジタル回路32は、コモンモード電圧Vcmの検出値に基づいて振幅演算器36及び位相演算器37で電圧振幅V2及び電圧位相Φ2を求め、その電圧振幅V2を低減するように演算出力信号sig3dの電圧位相Φoを位相調整器38で決定し、さらに演算出力信号sig3dの電圧振幅Voを振幅調整器39で決定する。デジタル回路32について詳しく説明する。
デジタル回路32は、帯域制限回路12から出力された帯域制限信号sig2のAD変換後の信号すなわち演算入力信号sig2dから帯域制限信号sig2の電圧振幅V2を演算する振幅演算器36、演算入力信号sig2dから帯域制限信号sig2の電圧位相Φ2を演算する位相演算器37、初期の電圧位相Φo又は前回出力した演算出力信号sig3dの前回電圧位相Φbから電圧位相Φoを決定する位相調整器38、初期の電圧振幅Vo又は前回出力した演算出力信号sig3dの前回の電圧振幅Vbから電圧振幅Voを決定する振幅調整器39、電圧位相Φo及び電圧振幅Voに基づいて演算出力信号sig3dの電圧波形を生成する波形生成器51を備えている。位相調整器38は探索器40aを備えており、振幅調整器39は探索器40bを備えている。振幅調整器39は、位相調整器38が位相調整の終了を示す位相調整フラグflg1を出力している場合に、前回から調整された電圧振幅Voを出力し、位相調整フラグflg1が位相調整の終了を示さない場合に、前回と同じ電圧振幅Voを出力する。
図12~図14を用いて、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例の動作を説明する。電力変換回路2の運転が始まるとコモンモード電圧Vcmが発生する。ステップS01にて、電圧検出回路11でコモンモード電圧Vcmを検出する。ステップS02にて、制御回路13のデジタル回路32はコモンモード電圧Vcmが閾値Vth1を超えているかを判定する。コモンモード電圧Vcmが閾値Vth1を超えている場合はステップS05に進み、コモンモード電圧Vcmが閾値Vth1を超えていない場合すなわちコモンモード電圧Vcmが閾値Vth1以下の場合はステップS03に進む。制御回路13は、電圧検出回路11で検出されたコモンモード電圧Vcmの情報を含んでおり、かつ帯域制限された帯域制限信号sig2から演算された電圧振幅V2と、閾値Vth1に対応する閾値とを比較してステップS02を実行する。
ステップS03にて、デジタル回路32が出力する演算出力信号sig3dの電圧振幅Vоが閾値Vth2を超えているかを判定する。電圧振幅Vоが閾値Vth2を超えている場合はステップS05に進み、電圧振幅Vоが閾値Vth2を超えていない場合すなわち電圧振幅Vоが閾値Vth2以下の場合はステップS04に進む。ステップS04にて、制御回路13は補償信号sig3の出力を停止し、増幅回路14は補償信号sig3の出力停止に伴い出力信号sig4の出力を停止し、終了する。出力信号sig4の出力停止に伴い、コモンモードフィルタ回路1は電力線4、5への注入電圧Vapの注入を停止する。ステップS04は注入電圧停止工程である。
ステップS05~ステップS09までは、コモンモードフィルタ回路1は、検出されたコモンモード電圧Vcmに基づいて、電圧位相Φо、電圧振幅Vоの少なくとも一方が調整された補償信号sig3、出力信号sig4を生成して、電力線4、5へ注入電圧Vapの注入を実行する。コモンモード電圧Vcmの検出値が閾値Vth1を超えると、出力信号sig4の出力電圧Vsの位相調整を行い、その後に出力信号sig4の出力電圧Vsの振幅調整を行う。この出力電圧Vsの調整はコモンモード電圧Vcmの検出値が閾値Vth1を超えている間は継続されるが、その一方で調整の結果である2回目以降のコモンモード電圧Vcmの検出値が低下しても、制御回路13の出力である電圧振幅Voが閾値Vth2を超えていれば電力変換回路2が運転されていることが判断できるため、出力電圧生成回路66による出力電圧Vsの出力、コモンモードトランス16による注入電圧Vapの注入は継続される。
ステップS05にて、制御回路13は位相調整が完了したかを判定し、位相調整が完了している場合はステップS06に進み、位相調整が完了していない場合はステップS07に進む。通常、初回の調整では位相調整が完了していない。ステップS07にて、デジタル回路32は位相調整工程にて電圧位相Φоを生成する。ステップS08にて、デジタル回路32は帯域制限信号sig2から演算された電圧振幅V2から変更せずに電圧振幅Vоを生成する。つまり、デジタル回路32は電圧振幅V2を電圧振幅Vоとして生成する。ステップS09にて、制御回路13は、電圧位相Φо、電圧振幅Vоを有する補償信号sig3を増幅回路14に出力する。増幅回路14は補償信号sig3が増幅された出力信号sig4をコモンモードトランス16及びインピーダンス調整器18に出力する。出力信号sig4の電圧である出力電圧Vsの振幅は、電圧振幅Vоから増幅されている。適宜、出力電圧Vsの電圧振幅はVsのまま用いる。出力電圧Vsは、位相が電圧位相Φоであり、振幅が電圧振幅はVsである。ステップS09の後にステップS01に戻る。ステップS06にて、デジタル回路32は帯域制限信号sig2から演算された電圧振幅Vоを生成する。その後、ステップS09に進む。
まず、コモンモード電圧Vcmの特定周波数成分を急速に相殺する場合を考える。第1回目の補償信号sig3を生成する際に、制御回路13は、帯域制限回路12から出力された帯域制限信号sig2と逆相かつ同一振幅の電圧位相Φо及び電圧振幅Vоを有する補償信号sig3を出力するように、初期の電圧位相Φоである初期電圧位相Φ2i、初期の電圧振幅Vоである初期電圧振幅V2iを決定する。1回目の補償信号sig3を生成する際に、前述したように電圧振幅V2から変更せずに電圧振幅Vоを生成するので、電圧振幅Vоは帯域制限信号sig2と同一である。理想的には、振幅演算器36及び位相演算器37で得られる電圧位相Φ2及び電圧振幅V2をそのまま初期値とすると、帯域制限信号sig2と逆相かつ同一振幅の電圧位相Φо及び電圧振幅Vоを有する補償信号sig3を出力できる。増幅回路14が、補償信号sig3を増幅して、電力線4、5に発生しているコモンモード電圧Vcmと逆相かつ同一振幅の注入電圧Vapが発生する出力電圧Vsを有する出力信号sig4をコモンモードトランス16に出力することは、コモンモード電圧Vcmの特定周波数成分を急速に相殺するには理想的である。
しかし、コモンモードトランス16が注入電圧Vapを発生させる前に、LC並列共振回路である負荷回路60にステップ的に電力線4、5に発生しているコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分と逆相かつ同一振幅の注入電圧Vapが発生する電圧振幅の出力電圧Vsを印加する場合又は位相を急変する場合には、LC並列共振回路である負荷回路60には過渡的に高周波の電圧が印加される。このために、負荷回路60に過電流と過電圧とが発生する場合がある。この過渡現象の影響を抑えるために、出力電圧Vsの電圧振幅及び電圧位相の調整の際に、単位時間当たりの変化量に制限をかけることが望ましい。出力電圧Vsの電圧振幅及び電圧位相を制御する補償信号sig3の電圧位相Φо及び電圧振幅Vоは、単位時間当たりの変化量に制限をかけることが望ましい。
なお、増幅回路14の出力電圧Vsの振幅は、最適値に対し、コモンモードフィルタ回路1の各部品のばらつき、環境変化により誤差が生じる。そこで、制御回路13に電圧位相Φоと電圧振幅Vоを最適化するアルゴリズムが組み込まれている。例えば、初期電圧位相Φ2i及び初期電圧振幅V2iから小さな位相幅ΔΦ及び小振幅ΔVだけ変化した電圧位相Φо及び電圧振幅Vоを更新して、その値を最適化することでコモンモード電圧Vcmの特定の周波数成分を、急激な過渡変化が生じないようにコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分を低減することができる。なお、初期電圧位相Φ2i及び初期電圧振幅V2iは、急速に相殺する場合と異なる値になっている。
電圧位相Φо及び電圧振幅Vоを最適化方法、すなわちステップS07の位相調整工程及びステップS06の振幅調整工程を説明する前に、注入電圧Vapの位相及び振幅の設定によるコモンモード電圧Vcmの残留量すなわち低減効果を図15、図16を用いて説明する。図15、図16の横軸は位相Φであり、縦軸はコモンモード電圧Vcmである。コモンモード電圧Vcmは振幅の最大値を基準にした規格化された値で示している。コモンモード電圧特性93a、94aは注入電圧Vapが電力線4、5に注入される前すなわち補償前における一つの特定周波数のコモンモード電圧Vcmの特性である。図15には、注入電圧Vapとコモンモード電圧Vcmの逆相との位相差(逆相位相差)が60°、30°、0°の場合のコモンモード電圧特性93b、93c、93dが示されている。コモンモード電圧特性93b、93c、93dにおいて、注入される注入電圧Vapはコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分と同一の電圧振幅を有している。コモンモード電圧特性93bは逆相位相差が60°の特性であり、コモンモード電圧特性93cは逆相位相差が30°の特性であり、コモンモード電圧特性93dは逆相位相差が0°の特性である。逆相位相差の最適値は0°である。逆相位相差が小さければ、特定周波数のコモンモード電圧Vcmすなわちコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分の残留量が低減されていることが確認できる。
図16には、コモンモード電圧Vcmの特定周波数成分と逆相の電圧振幅に対する注入電圧Vapの電圧振幅の割合(振幅割合)が1/3、2/3、3/3の場合のコモンモード電圧特性94b、94c、94dが示されている。コモンモード電圧特性94b、94c、94dにおいて、注入される注入電圧Vapはコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分と逆相の電圧位相を有している。コモンモード電圧特性94bは振幅割合が1/3の特性であり、コモンモード電圧特性94cは振幅割合が2/3の特性であり、コモンモード電圧特性94dは振幅割合が3/3の特性である。振幅割合の最適値は3/3である。振幅割合の振幅誤差が小さければ、コモンモード電圧Vcmの特定周波数成分の残留量は低減されていることが確認できる。
位相調整器38及び振幅調整器39に搭載される最適化方法の一例として、山登り法を用いてコモンモード電圧Vcmの特定周波数成分を最小化する方法を説明する。まず、初期電圧位相Φ2iに対し位相を位相幅ΔΦだけ変化させ、常に検出されたコモンモード電圧Vcmの前回値よりも小さくなるように電圧位相Φоを変化させる。電圧位相Φоが変化しなくなった場合、その電圧位相Φоを最適値とする。図17に、実施の形態1のデジタル回路32の第一例における位相調整例すなわち電圧位相Φоの最適化方法例を示した。電圧位相Φоの位相変化特性95とコモンモード電圧Vcmの電圧変化特性96とが同時に示されている。横軸は時間であり、位相変化特性95の縦軸は電圧位相Φоであり、電圧変化特性96の縦軸はコモンモード電圧Vcmである。図3に示した制御回路13はデジタル方式である。デジタル方式では、AD変換器31を設けコモンモード電圧Vcmを取り込み、検出値とする。AD変換器31が帯域制限信号sig2からデジタル信号に変換する演算入力信号sig2dの位相振幅Φ2及び電圧振幅V2が、デジタル回路32が処理するコモンモード電圧Vcmの検出値に相当する。
デジタル回路32は位相振幅Φ2及び電圧振幅V2に基づいて位相振幅Φо及び電圧振幅Vоを生成し、この位相振幅Φо及び電圧振幅Vоに基づいて生成された出力電圧Vsが生成される。出力電圧Vsに基づいてコモンモードトランス16が電力線4、5に注入電圧Vapが注入され、新たなコモンモード電圧Vcm検出値すなわち位相振幅Φ2及び電圧振幅V2が得られる。この検出値の振幅すなわち電圧振幅V2が低下するように、すなわちコモンモード電圧Vcmの電圧振幅が低下するように、デジタル回路32の制御周期ΔT毎の位相変化特性95の変化方向を示す極性が3回連続して同極性に変化する場合には最適点の探索を継続し、同極性変化の連続回数が3回未満で極性が反転する点を最適点とする。電圧位相Φоが最適化されたかを判定する位相判定条件は、位相幅ΔΦが3回連続して同極性に変化しないことであり、位相幅ΔΦの同極性変化の連続回数が3回未満で極性が反転することである。
電圧位相Φоの最適化方法により、最適点p1の最適値すなわち電圧位相Φоpが得られる。図17には10回の探索により最適点p1が得られた例を示した。時刻t0の電圧位相Φоは初期電圧位相Φ2iである。時刻t1で1回目の処理で初期電圧位相Φ2iに位相幅ΔΦが加算された電圧位相Φоが生成される。1回目の処理の極性は正である。位相幅ΔΦが減算される場合の極性は負である。時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6における処理は極性が正の処理であり、時刻t7、t8の処理は極性が負の処理である。時刻t9の処理すなわち9回目の処理で極性が前回と反転した正になっている。時刻t10の処理すなわち10回目の処理の際に、位相幅ΔΦの負極性変化が2回連続しており、直前の処理で正極性に反転しているので、位相判定条件が満たれていると判定される。デジタル回路32は、時刻t10の処理において位相判定条件が満たれていると判定し、前回の電圧位相Φbから変更せずに電圧位相Φоとして生成する。位相幅ΔΦの極性はコモンモード電圧Vcmの変化極性と反対に変化させる。時刻t7の処理において、前回の処理によりコモンモード電圧Vcmが増加したので、すなわちコモンモード電圧Vcmの変化極性が負から正に反転したので、位相幅ΔΦの極性は正から負に変更されている。
電圧位相Φоの最適化方法により得られた最適値すなわち電圧位相Φоpを用いることで、ある特定周波数の出力電圧Vs、注入電圧Vapはコモンモード電圧Vcmに対して位相差なく逆相を維持できる。制御回路13が生成する補償信号sig3の電圧位相Φоは、増幅回路が出力する出力信号sig4、コモンモードトランス16が電力線4、5に注入する注入電圧Vapでも変わらない。増幅回路が出力する出力信号sig4における出力電圧Vsの電圧位相Φsは電圧位相Φоと同じであり、注入電圧Vapの電圧位相は電圧位相Φоと同じである。
なお、電圧位相Φоを調整する方法としては、制御回路13に自発振用のサインテーブル(サイン波形用テーブル)を用意しておきその位相量を変化させる、又はAD変換で取り込んだデジタル信号をレジスタ、RAM(Random Access Memory)等に格納し、制御回路13で使用するまでの遅延を任意に制御するなどが考えらえる。
最適な位相探索が完了したら、電圧振幅Voの最適値の探索を行う。すなわち、位相調整工程が終了した後に、振幅調整工程が実行される。電圧振幅Voの最適化方法は、電圧位相Φоの最適化方法と同様である。まず、初期電圧振幅V2iに対し振幅を小振幅ΔVだけ変化させ、常に検出されたコモンモード電圧Vcmの前回値よりも小さくなるように電圧振幅Vоを変化させる。電圧振幅Vоが変化しなくなった場合、その電圧振幅Vоを最適値とする。図18に、実施の形態1のデジタル回路32の第一例における振幅調整例すなわち電圧振幅Vоの最適化方法例を示した。電圧振幅Vоの振幅変化特性97とコモンモード電圧Vcmの電圧変化特性98とが同時に示されている。横軸は時間であり、振幅変化特性97の縦軸は電圧振幅Vоであり、電圧変化特性98の縦軸はコモンモード電圧Vcmである。
デジタル回路32が処理するコモンモード電圧Vcmの検出値における振幅すなわち電圧振幅V2が低下するように、すなわちコモンモード電圧Vcmの電圧振幅が低下するように、デジタル回路32の制御周期ΔT毎の振幅変化特性97の変化方向を示す極性が3回連続して同極性に変化する場合には最適点の探索を継続し、同極性変化の連続回数が3回未満で極性が反転する点を最適点とする。電圧振幅Vоが最適化されたかを判定する振幅判定条件は、小振幅ΔVが3回連続して同極性に変化しないことであり、小振幅ΔVの同極性変化の連続回数が3回未満で極性が反転することである。
電圧振幅Vоの最適化方法により、最適点p2の最適値すなわち電圧振幅Vоpが得られる。図18には10回の探索により最適点p2が得られた例を示した。図18において電圧振幅Vоの最適化方法が開始される時刻は、電圧位相Φоの最適化方法が終了した時刻t10にしている。時刻t10の電圧振幅Vоは初期電圧振幅V2iである。時刻t11で1回目の処理で初期電圧振幅V2iに小振幅ΔVが加算された電圧振幅Vоが生成される。1回目の処理の極性は正である。小振幅ΔVが減算される場合の極性は負である。時刻t11、t12、t13、t14、t15、t16における処理は極性が正の処理であり、時刻t17、t18の処理は極性が負の処理である。時刻t19の処理すなわち9回目の処理で極性が前回と反転した正になっている。時刻t20の処理すなわち10回目の処理の際に、小振幅ΔVの負極性変化が2回連続しており、直前の処理で正極性に反転しているので、振幅判定条件が満たれていると判定される。デジタル回路32は、時刻t20の処理において振幅判定条件が満たれていると判定し、前回の電圧振幅Vbから変更せずに電圧振幅Vоとして生成する。小振幅ΔVの極性はコモンモード電圧Vcmの変化極性と反対に変化させる。時刻t17の処理において、前回の処理によりコモンモード電圧Vcmが増加したので、すなわちコモンモード電圧Vcmの変化極性が負から正に反転したので、小振幅ΔVの極性は正から負に変更されている。
電圧位相Φоの最適化方法は、ステップS07の位相調整工程にて実行される。ステップS07の位相調整工程の詳細は図13に示した。電圧振幅Vоの最適化方法は、ステップS06の振幅調整工程にて実行される。ステップS06の振幅調整工程の詳細は図14に示した。まず、図13に示した位相調整工程を説明する。
ステップS11にて、デジタル回路32の位相調整器38は位相調整が1回目か判定する。位相調整が1回目である場合はステップS12に進み、位相調整が1回目でない場合はステップS13に進む。ステップS12にて、位相調整器38は演算入力信号sig2dの電圧位相Φ2から電圧位相Φоを生成する。1回目の処理の際の電圧位相Φ2が初期電圧位相Φ2iである。ステップS12において生成される電圧位相Φоは、初期電圧位相Φ2iに位相幅ΔΦが加算された位相になる。1回の位相調整が終了し、ステップS08、ステップS09、ステップS01を経て再度実行されるステップS07が2回目の位相調整になる。
2回目の位相調整の場合、ステップS11からステップS13に進む。ステップS13にて、位相調整器38は位相幅ΔΦが3回連続して同極性に変化しているかを判定する(位相条件判定工程)。位相幅ΔΦが3回連続して同極性に変化している場合は、位相判定条件が満たされていない場合であり、ステップS14に進む。位相幅ΔΦが3回連続して同極性に変化していない場合すなわち位相幅ΔΦの同極性変化の連続回数が3回未満で極性が反転する場合は、位相判定条件が満たされた場合であり、ステップS15に進む。ステップS14にて、位相調整器38は前回電圧位相Φbから位相幅ΔΦだけ変化した電圧位相Φоを生成する。ステップS15にて、位相判定条件が満たされているので、位相調整器38は前回電圧位相Φbを電圧位相Φоとして生成し出力する。また、ステップS15にて、位相調整器38は位相調整の終了を示す位相調整フラグflg1を出力する。2回目の位相調整が終了し、ステップS08、ステップS09、ステップS01を経て再度実行されるステップS07が3回目の位相調整になる。位相判定条件が満たされるまで、ステップS07の位相調整工程が、ステップS08、ステップS09、ステップS01の実行を伴って繰り返される。
次に、図14に示した振幅調整工程を説明する。ステップS21にて、デジタル回路32の振幅調整器39は振幅調整が1回目か判定する。振幅調整が1回目である場合はステップS22に進み、振幅調整が1回目でない場合はステップS23に進む。ステップS22にて、振幅調整器39は演算入力信号sig2dの電圧振幅V2から電圧振幅Vоを生成する。1回目の処理の際の電圧振幅V2が初期電圧振幅V2iである。ステップS22において生成される電圧振幅Vоは、初期電圧振幅V2iに小振幅ΔVが加算された振幅になる。1回の振幅調整が終了し、ステップS09、ステップS01を経て再度実行されるステップS06の実行が2回目の振幅調整になる。
2回目の振幅調整の場合、ステップS21からステップS23に進む。ステップS23にて、振幅調整器39は小振幅ΔVが3回連続して同極性に変化しているかを判定する(振幅条件判定工程)。小振幅ΔVが3回連続して同極性に変化している場合は、振幅判定条件が満たされていない場合であり、ステップS24に進む。小振幅ΔVが3回連続して同極性に変化していない場合すなわち小振幅ΔVの同極性変化の連続回数が3回未満で極性が反転する場合は、振幅判定条件が満たされた場合であり、ステップS25に進む。ステップS24にて、振幅調整器39は前回の電圧振幅Vbから小振幅ΔVだけ変化した電圧振幅Vоを生成する。ステップS25にて、振幅判定条件が満たされているので、振幅調整器39は前回の電圧振幅Vbを電圧振幅Vоとして生成し出力する。2回目の振幅調整が終了し、ステップS09、ステップS01を経て再度実行されるステップS06が3回目の振幅調整になる。振幅判定条件が満たされるまで、ステップS06の振幅調整工程が、ステップS09、ステップS01の実行を伴って繰り返される。
実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例は、ステップS07の位相調整工程及びステップS06の振幅調整工程により最適化された電圧位相Φо及び電圧振幅Vоを有する補償信号sig3を生成し、補償信号sig3が増幅された出力信号sig4に基づいてコモンモードトランス16から電力線4,5に注入電圧Vapを注入するので、ある特定周波数の注入電圧Vapはその特定周波数のコモンモード電圧Vcmに対して逆相かつ振幅の等しい電圧にできる。その結果、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例は、コモンモード電圧Vcmにおける特定周波数の成分を大幅に抑制することが可能となる。ここで10kHz以下の低周波帯域に含まれるキャリア周波数等の特定周波数が帯域制限回路12の通過帯域すなわち2つのカットオフ周波数fl、fhの間に入るように設定することで、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例は、低周波のコモンモード電圧Vcmを大幅に低減できる。
実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例における出力電圧生成回路66は、帯域制限回路12により帯域制限信号sig2が出力される度に、帯域制限信号sig2に基づく信号の電圧位相Φoが予め定められた位相判定条件(ステップS13からステップS15に進む条件)を満たすまで出力電圧Vsの位相Φsすなわち電圧位相Φoを予め定められた位相幅ΔΦずつ調整する位相調整器38と、位相調整器38が位相調整の終了を示す位相調整フラグflg1を出力している場合に、帯域制限回路12により帯域制限信号sig2が出力される度に、帯域制限信号sig2に基づく信号の電圧振幅Voが予め定められた振幅判定条件(ステップS23からステップS25に進む条件)を満たすまで出力電圧Vsの振幅を予め定められた小振幅ΔV1ずつ調整する、すなわち出力電圧Vsの振幅を制御する電圧振幅Voを予め定められた小振幅ΔVずつ調整する振幅調整器39と、を備えている。小振幅ΔV1は、小振幅ΔVに増幅回路14の増幅率が乗算された値である。実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例は、山登り法を用いて出力電圧Vsの位相(出力電圧位相Φs)及び振幅を制御する電圧位相Φo及び電圧振幅Voを最適化することができる。
図11に示したデジタル回路32の第一例における位相調整器38及び振幅調整器39に組み込む探索器40a、40bのアルゴリズムは、帯域制限回路12で得られる特定の周波数の検出値が減少するように特定の周波数の電圧位相Φo及び電圧振幅Voを最適化することで補償信号sig3を生成する機能を有していれば、山登り法だけに限定されない。帯域制限回路12で得られる特定の周波数の検出値が減少するように特定の周波数の電圧位相Φo及び電圧振幅Voを最適化することで補償信号sig3を生成する機能は、ニューラルネットワークを用いた最適化、その他の機械学習方法を用いた最適化等によって実現されてもよい。
ニューラルネットワークを用いて電圧位相Φo及び電圧振幅Voを最適化する探索回路28を備えたデジタル回路32の第二例を図19に示した。図19に示したデジタル回路32の第二例は、デジタル回路32の第一例における位相調整器38及び振幅調整器39が調整器50に代わっている点で図11に示したデジタル回路32の第一例とは異なる。図11に示したデジタル回路32の第一例とは異なる部分を主に説明する。調整器50は、振幅演算器36で演算された電圧振幅V2、位相演算器37で演算された電圧位相Φ2から電圧位相Φo及び電圧振幅Voを生成する。調整器50は、ニューラルネットワークを用いた探索回路28を備えている。探索回路28は、例えば予め定められた調整回数による出力電圧Vsの変更により、入力である電圧振幅V2及び出力である電圧振幅Voが最小化するように学習された学習済みモデルが組込まれている。予め定められた調整回数が10回であれば、図17に示した位相調整の回数、図18に示した振幅調整の回数と同じであるが、探索回路28は、電圧位相Φo及び電圧振幅Voを同時に更新する。このため、デジタル回路32の第二例は、デジタル回路32の第一例に比べて少ない調整回数で電圧位相Φo及び電圧振幅Voの最適化を達成できる。
デジタル回路32の第二例を備えたコモンモードフィルタ回路1の第二例の動作を説明する。図21に示したフローチャートは、図12に示したフローチャートとはステップS05~ステップS08がステップS10に代わった点で異なる。異なる部分を主に説明する。ステップS10にて、デジタル回路32は、1回目の電圧位相Φo及び電圧振幅Voを生成する。ステップS09にて、制御回路13は、電圧位相Φо、電圧振幅Vоを有する補償信号sig3を増幅回路14に出力する。増幅回路14は補償信号sig3が増幅された出力信号sig4をコモンモードトランス16及びインピーダンス調整器18に出力する。1回目の出力信号sig4の出力電圧Vsに基づいてコモンモードトランス16から電力線4、5に1回目の注入電圧Vapが注入される。ステップS01に戻り、ステップS02、ステップS03を経てステップS04が実行されるまで、ステップS10の電圧位相Φо、電圧振幅Vоを更新する調整工程が繰り返される。
実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第二例における出力電圧生成回路66は、帯域制限回路12により出力された帯域制限信号sig2の電圧位相Φ2及び電圧振幅V2に基づいて出力電圧Vsの位相(出力電圧位相Φs)及び振幅を調整する調整器50を備えている。調整器50は、帯域制限信号sig2の電圧位相Φ2及び電圧振幅V2から出力電圧Vsの位相(出力電圧位相Φs)及び振幅を制御する電圧位相Φoの値及び電圧振幅Voの値を生成する学習済みモデルを構成する探索回路28を備えている。探索回路28は、帯域制限信号sig2に基づく信号の電圧振幅Voが許容値(閾値Vth2)以下に低減するまで、帯域制限信号sig2の電圧位相Φ2及び電圧振幅V2を入力として帯域制限信号sig2の電圧振幅V2が減少する出力電圧Vsの位相(出力電圧位相Φs)及び振幅を制御する電圧位相Φоの値及び電圧振幅Vоの値を生成するように学習されており、帯域制限信号sig2が出力される度に、帯域制限信号sig2から探索回路28により生成された電圧位相Φоの値及び電圧振幅Voの値に基づいて、出力電圧Vsの位相(出力電圧位相Φs)及び振幅を調整する。実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第二例は、学習済みモデルを用いて出力電圧Vsの位相(出力電圧位相Φs)及び振幅を制御する電圧位相Φo及び電圧振幅Voを最適化することができる。
探索回路28に組込むモデルは、学習装置110により生成される。学習装置110は、データ取得部111、モデル生成部112を備え、生成したモデルをモデル記憶装置113に記憶する。データ取得部111は、デジタル回路32に入力される入力データdata1、デジタル回路32から出力されるべき最適化されたデータ、すなわち期待される出力データdata2を学習用データとして取得する。入力データdata1は電圧振幅V2、電圧位相Φ2を含んでおり、出力データdata2は入力された電圧振幅V2、電圧位相Φ2に対応した期待値である電圧振幅Vos、電圧位相Φosを含んでいる。
モデル生成部112は、データ取得部111から出力される入力データdata1、出力データdata2の組合せに基づいて作成される学習用データに基づいて、電圧振幅Vo、電圧位相Φoを学習する。すなわち、デジタル回路32の入力データdata1、期待される出力データdata2から最適な電圧振幅Vo、電圧位相Φoを推論する学習済モデルを生成する。ここで、学習用データは、入力データdata1の電圧振幅V2、電圧位相Φ2、出力データdata2の電圧振幅Vos、電圧位相Φosを互いに関連付けたデータである。
モデル生成部112は、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、電圧振幅Vo、電圧位相Φoを学習する。ここで、教師あり学習とは、入力と結果のデータの組を学習装置に与えることで、それらの学習用データにある特徴を学習し、入力から結果を推論する方法をいう。
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなる中間層(隠れ層)、及び複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層、又は2層以上でもよい。
例えば、探索回路28は、図20に示すような3層のニューラルネットワークを備えている。電圧振幅V2、電圧位相Φ2がそれぞれ入力層N1、N2に入力されると、電圧振幅V2、電圧位相Φ2に重み関数wa(w11、w12、w13、w14、w21、w22、w23、w24)を掛けて中間層N3、N4、N5、N6に入力され、その結果にさらに重み関数wb(w31、w32、w41、w42、w51、w52、w61、w62)を掛けて出力層N7、N8から出力される。出力層N7、N8から出力される電圧振幅Vo、電圧位相Φoは重み関数wa、wbの値によって変わる。重み関数waは入力層N1、N2から中間層N3、N4、N5、N6に入力される際の重み関数の総称であり、重み関数wbは中間層N3、N4、N5、N6から出力層N7、N8に入力される際の重み関数の総称である。重み関数waは、入力層N1、N2と中間層N3、N4、N5、N6との組合せに応じて、w11、w12、w13、w14、w21、w22、w23、w24のいずれかになる。重み関数wbは、中間層N3、N4、N5、N6と出力層N7、N8との組合せに応じて、w31、w32、w41、w42、w51、w52、w61、w62のいずれかになる。
入力層N1から中間層N3、N4、N5、N6への重み関数waは、それぞれw11、w12、w13、w14である。入力層N2から中間層N3、N4、N5、N6への重み関数waは、それぞれw21、w22、w23、w24である。中間層N3から出力層N7、N8への重み関数wbは、それぞれw31、w32である。中間層N4から出力層N7、N8への重み関数wbは、それぞれw41、w42である。中間層N5から出力層N7、N8への重み関数wbは、それぞれw51、w52である。中間層N6から出力層N7、N8への重み関数wbは、それぞれw61、w62である。
探索回路28は、データ取得部111によって取得される入力データdata1、出力データdata2の組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、電圧振幅Vo、電圧位相Φoを学習する。すなわち、探索回路28は、入力層N1、N2に電圧振幅V2、電圧位相Φ2を入力して出力層N7、N8から出力された結果が、出力データdata2の電圧振幅Vos、電圧位相Φosに近づくように重みwaとwbを調整することで学習する。モデル生成部112は、以上のような学習を実行することで学習済モデルを生成し、モデル記憶装置113に出力する。
重み関数wa、wbの値の最適化は、例えば予め定められた調整回数による出力電圧Vsの変更により、入力である電圧振幅V2及び出力である電圧振幅Voが最小化するような入力データdata1、出力データdata2を用いて繰り返し学習を行う。図17、図18では合計20回の出力電圧Vsの生成でコモンモード電圧Vcmを低減する例を示した。探索回路28を備えたコモンモードフィルタ回路1は、山登り法による最適化方法よりも少ない出力電圧Vsの調整回数、例えば10回以下の出力電圧Vsの調整回数でも、コモンモード電圧Vcmを低減することができる。
探索回路28は、学習装置110のモデル生成部112が生成した学習済モデルが組込まれている。例えば、探索回路28は、デジタル回路32に実装されるので、学習済モデルはデジタル回路32に組込まれている。デジタル回路32は、例えばマイクロコンピュータ、DSP、FPGA等により機能が実現されている。
探索回路28を備えたコモンモードフィルタ回路1すなわちデジタル回路32の第二例を備えたコモンモードフィルタ回路1は、デジタル回路32の第一例を備えたコモンモードフィルタ回路1と同様に出力電圧Vsの変化量に制限をかけた出力電圧Vsを生成することができる。
なお、実施の形態1では、モデル生成部112が用いる学習アルゴリズムに教師あり学習を適用した場合について説明したが、これに限られるものではない。学習アルゴリズムについては、教師あり学習以外にも、強化学習、教師なし学習、又は半教師あり学習等を適用することも可能である。
また、学習用データを収集するコモンモードフィルタ回路1が搭載される装置は、1つに限定されない。補償対象3が第一の電動機である場合の学習用データと補償対象3が仕様の異なる第二の電動機である場合の学習用データとを同時使用して学習してもよい。さらに、ある補償対象3のコモンモードフィルタ回路1に関して電圧振幅Vo、電圧位相Φoを学習した学習装置110を、これとは別の補償対象3のコモンモードフィルタ回路1に適用し、当該別のコモンモードフィルタ回路1に関して電圧振幅Vo、電圧位相Φoを再学習して更新するようにしてもよい。
また、モデル生成部112に用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)を用いることもでき、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
なお、デジタル回路32の第一例における位相調整器38、振幅調整器39の機能は、図22に示すプロセッサ120、メモリ121により機能が実現されてもよい。この場合、位相調整器38、振幅調整器39は、プロセッサ120がメモリ121に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、複数のプロセッサ120および複数のメモリ121が連携して位相調整器38、振幅調整器39の各機能を実行してもよい。
今まで、電力変換回路2、補償対象3、電力線4、電力線5は、三相三線式の例で説明しているが、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、それに限らず三相四線式、単相回路等にも適用できる。
電力変換回路2の例として三相フルブリッジ変換器で説明したが、これに限定されない。電力変換回路2は交直変換機能を有していれば、例えば3レベル変換器、その他の回路構成等をとっても良い。
電圧検出回路11は、Y接続するコンデンサ9u、9v、9wと分圧コンデンサ10との分圧回路を用いてコモンモード電圧Vcmを検出する方式だけに限定されない。電圧検出回路11は、コモンモードトランスを利用したコモンモード電流検出回路にも適用可能である。この場合、電力線4、5に接続された巻線が一次巻線として機能し、コモンモードトランスの励磁インダクタンスを介して二次巻線から得られる電流を終端抵抗で電圧変換し、コモンモード電流が電圧変換されて検出される。
帯域制限回路12は、特定の周波数成分を通過させることができれば、すなわち特定の周波数成分を含む信号を抽出できれば、インダクタ、コンデンサ、抵抗、増幅回路を組み合わせたアナログ部品で構成されたアナログフィルタでもよく、デジタル部品で構成されたデジタルフィルタでもよい。帯域制限回路12がデジタルフィルタの場合は、帯域制限回路12の機能が、デジタル回路32に組込まれてもよい。この場合、電圧検出信号sig1が制御回路13に入力され、電圧検出信号sig1が制御回路13のAD変換器31でAD変換され、デジタル回路32において帯域制限されたデジタル信号である帯域制限信号sig2が生成される。
制御回路13の構成は、図3に示した構成に限定されない。制御回路13は、帯域制限回路12で得られる特定の周波数成分の帯域制限信号sig2から次回以降に検出される帯域制限信号sig2が減少するように補償信号sig3を生成する機能を有していればアナログ部品で構成してもよい。
制御回路13に組み込む探索器40bは、電圧振幅Vоを探索する際すなわち電圧振幅Vоを生成する際に、増幅回路14の出力電圧の飽和を防止するためにリミッタを備えてもよい。
増幅回路14は、図4に示した構成に限定されない。増幅回路14は、オペレーショナルアンプ41を用いた反転増幅回路の他に、非反転増幅回路、トランジスタで構成されるプッシュプル回路等でもよい。増幅回路14の入力端子44s、44gに入力される補償信号sig3の電圧を増幅して、補償信号sig3に含まれる特定の周波数成分が減少するように出力端子45s、45gから出力電圧Vsを生成する機能を有していれば、図4に示した構成以外でもよい。
コモンモードフィルタ回路1は、帯域制限回路12の出力端子を増幅回路14の入力端子44s、44gに接続し、入力された信号を演算増幅することでコモンモード電圧Vcm又はコモンモード電流が基準値以下を維持できれば、制御回路13を搭載しなくてもよい。
インピーダンス調整器18のコンデンサ15は、負荷回路60の負荷インピーダンスZtの共振周波数fr4が帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fh間に設定できる容量値に調整できれば、単一で構成しても、複数のコンデンサを直列もしくは並列接続して所望の容量値を得てもよい。
以上のように、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、半導体素子のスイッチング動作により電力変換を行う電力変換回路2が電力線4、5に発生させるコモンモード電圧Vcmを低減するコモンモードフィルタ回路である。コモンモードフィルタ回路1は、電力線4、5に生じたコモンモード電圧Vcmを検出してコモンモード電圧Vcmの情報を含む電圧検出信号sig1を出力する電圧検出回路11と、電圧検出回路11により出力された電圧検出信号sig1における特定の周波数成分を通過させる帯域制限回路12と、電力線4、5に接続された二次巻線7と一次巻線8とを有し、電力線4、5にコモンモード電圧Vcmを低減する注入電圧Vapを重畳するコモンモードトランス16と、帯域制限回路12により出力された周波数成分92a、92bを含む帯域制限信号sig2に基づく信号(演算出力信号sig3d)の電圧振幅Voを許容値(閾値Vth2)以下に低減する出力電圧Vsを生成すると共に、出力電圧Vsをコモンモードトランス16の一次巻線8に出力する出力電圧生成回路66と、コモンモードトランス16の一次巻線8に並列に接続されると共に、出力電圧生成回路66の出力端子45s、45g間に接続されているコモンモードトランス16を含む負荷回路60の負荷インピーダンスZtを調整するインピーダンス調整器18と、を備えている。インピーダンス調整器18のインピーダンス(調整器インピーダンスZst)は、当該インピーダンス(調整器インピーダンスZst)を含む出力電圧生成回路66の出力端子45s、45g間に接続された負荷インピーダンスZtが最大となる周波数(共振周波数fr4)が、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に設定されている。実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、この構成により、コモンモードトランス16の一次巻線8に並列にされたインピーダンス調整器18を備え、負荷インピーダンスZtが最大となる周波数(共振周波数fr4)が帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に含まれるようにインピーダンス調整器18のインピーダンス(調整器インピーダンスZst)が調整されているので、低周波成分のコモンモード電圧Vcmの場合でも、出力電圧生成回路66から出力される出力電流Isの大幅な増加を防止することができる。
実施の形態2.
図24は実施の形態2に係るコモンモードフィルタ回路の構成を示す図であり、図25は図24の帯域制限回路群の構成を示す図である。図26は図24の制御回路の構成を示す図であり、図27は図24の可変コンデンサの構成を示す図である。図28は、図24の帯域制限回路群のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第一例を示す図である。図29は、図24の帯域制限回路群のゲイン特性及びコモンモード電圧の周波数成分の第二例を示す図である。図30は、実施の形態2に係るコモンモードフィルタ回路の動作を説明するフローチャートである。
実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1は、電力変換回路2のキャリア周波数に応じた帯域制限回路12のカットオフ周波数fl、fhが設定されている。このため、キャリア周波数を切り換える電力変換回路2を搭載した装置への適用を考慮した場合には、キャリア周波数の変化に応じてコモンモード電圧Vcmの周波数特性が変化する。異なるキャリア周波数によって発生するコモンモード電圧Vcmを低減するためには、コモンモードフィルタ回路1は、通過帯域における中心周波数の異なる帯域制限回路12を複数備えることが望ましい。実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、電力変換回路2の異なるキャリア周波数に対応した例である。
実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1とは、帯域制限回路12、制御回路13、コンデンサ15が、複数の帯域制限回路12a、12b、12nを備えた帯域制限回路群20、制御回路30a、可変コンデンサ59に代わっている点で異なる。実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1と異なる部分を主に説明する。実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、インピーダンス調整器18が可変コンデンサ59の例であり、すなわちインピーダンス調整器18が可変コンデンサ59を備えている例である。出力電圧生成回路66は、出力電圧Vsを生成すると共に、インピーダンス調整器18の容量値を設定する設定信号sig6を出力する。
図28に複数の異なるキャリア周波数によって電力変換回路2が発生させるコモンモード電圧Vcmの周波数成分と、帯域制限回路群20におけるゲインGの周波数特性すなわち複数のゲイン特性との関係を示した。図28には、n個のキャリア周波数f1a~f1nの内、3つのキャリア周波数f1a、f1b、f1nに対応した周波数成分及びゲイン特性88a、88b、88nを示した。キャリア周波数f1aに関係するコモンモード電圧Vcmの周波数成分は、4つの周波数成分71a、72a、73a、74aを示した。キャリア周波数f1aの周波数成分71a、3次成分周波数f3aの周波数成分72a、5次成分周波数f5aの周波数成分73a、7次成分周波数f7aの周波数成分74aを図示している。ゲイン特性88aは、2つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1aが入るように設定された帯域制限回路12aのゲイン特性である。
キャリア周波数f1bに関係するコモンモード電圧Vcmの周波数成分は、4つの周波数成分71b、72b、73b、74bを示した。キャリア周波数f1bの周波数成分71b、3次成分周波数f3bの周波数成分72b、5次成分周波数f5bの周波数成分73b、7次成分周波数f7bの周波数成分74bを図示している。ゲイン特性88bは、2つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1bが入るように設定された帯域制限回路12bのゲイン特性である。キャリア周波数f1nに関係するコモンモード電圧Vcmの周波数成分は、4つの周波数成分71n、72n、73n、74nを示した。キャリア周波数f1nの周波数成分71n、3次成分周波数f3nの周波数成分72n、5次成分周波数f5nの周波数成分73n、7次成分周波数f7nの周波数成分74nを図示している。ゲイン特性88nは、2つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1nが入るように設定された帯域制限回路12nのゲイン特性である。
帯域制限回路群20に複数の帯域制限回路12a~12nが用意されており、電力変換回路2のキャリア周波数の変動に応じて、制御回路30aにおいて帯域制限回路12a~12nの出力値におけるいずれか1つを補償に用いるかが選択される。制御回路30aは、選択回路52を備えており、複数の帯域制限回路12a~12nの出力値を比較し、最大となるものを選択する。帯域制限回路群20から出力される複数の帯域制限信号sig5a~sig5nから選択された1つの帯域制限信号sigseに基づいて制御回路30aが補償信号sig3を生成する場合には、増幅回路14が出力する出力電圧Vsに含まれる周波数成分は選択された帯域制限信号sigseに応じて変化する。帯域制限回路群20に複数の帯域制限回路12a~12nから選択された帯域制限回路の符号は、12を用いる。したがって、選択された帯域制限信号sigseを通過させた帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fh間に負荷回路60の共振周波数fr4が入るように可変コンデンサ59の容量値を調整する機能を持たせることが望ましい。
可変コンデンサ59は、コンデンサとスイッチとが直列に接続された直列体55a、55b、55c、55dを複数備えている。図27では、4つの直列体55a、55b、55c、55dを備えた例を示した。可変コンデンサ59は、入力端子62s及び出力端子63sに接続された配線64aと、入力端子62g及び出力端子63gに接続された配線64bとの間に4つの直列体55a、55b、55c、55dが並列に接続されている。入力端子62s、62gはそれぞれ増幅回路14の出力端子45s、45gに接続されており、出力端子63s、63gは、それぞれコモンモードトランス16の一次巻線8の一端及び他端に接続されている。直列体55aはコンデンサ15aとスイッチ54aとが直列に接続されており、直列体55bはコンデンサ15bとスイッチ54bとが直列に接続されている。直列体55cはコンデンサ15cとスイッチ54cとが直列に接続されており、直列体55dはコンデンサ15dとスイッチ54dとが直列に接続されている。
スイッチ54aは、入力端子67aから入力される設定信号sig6aによりオン及びオフが制御される。スイッチ54b、54c、54dも同様に、それぞれ設定信号sig6b、sig6c、sig6dによりオン及びオフが制御される。スイッチ54bは、入力端子67bから入力される設定信号sig6bによりオン及びオフが制御される。スイッチ54cは、入力端子67cから入力される設定信号sig6cによりオン及びオフが制御される。スイッチ54dは、入力端子67dから入力される設定信号sig6dによりオン及びオフが制御される。設定信号の符号は、総括的にsig6を用い、区別する場合にsig6a、sig6b、sig6c、sig6dを用いる。スイッチ54a、54b、54c、54dをオンすれば、各直列体55a、55b、55c、55dはコンデンサ15a、15b、15c、15dとして動作する。スイッチ54a、54b、54c、54dをオフすれば、各直列体55a、55b、55c、55dすなわちコンデンサ15a、15b、15c、15dは開放状態(非接続状態)になり、可変コンデンサ59の容量値を低下させることができる。コンデンサ15a、15b、15c、15dの並列接続数を増加させれば可変コンデンサ59の容量値を増大でき、コンデンサ15a、15b、15c、15dの並列接続数を減少させれば可変コンデンサ59の容量値を低下させることができる。
帯域制限回路群20は複数の帯域制限回路12a~12nを備えている。図25では、n個の帯域制限回路の内、3つの帯域制限回路12a、12b、12nを示した。帯域制限回路12aは、電圧検出回路11により出力された電圧検出信号sig1におけるゲイン特性88aに応じた特定の周波数成分を通過させ、帯域制限信号sig5aを出力する。帯域制限信号sig5aは、帯域制限回路12aのゲイン特性88aに応じた周波数成分を含んでいる。帯域制限回路12bは、電圧検出回路11により出力された電圧検出信号sig1におけるゲイン特性88bに応じた特定の周波数成分を通過させ、帯域制限信号sig5bを出力する。帯域制限回路12nは、電圧検出回路11により出力された電圧検出信号sig1におけるゲイン特性88nに応じた特定の周波数成分を通過させ、帯域制限信号sig5nを出力する。帯域制限信号sig5bは帯域制限回路12bのゲイン特性88bに応じた周波数成分を含んでおり、帯域制限信号sig5nは帯域制限回路12nのゲイン特性88nに応じた周波数成分を含んでいる。帯域制限回路群20が出力する帯域制限信号の符号は、総括的にsig5を用い、区別する場合にsig5a、sig5b、sig5nを用いる。
制御回路30aは、図3に示した制御回路13とは、AD変換器31の入力側に選択回路52が追加され、可変コンデンサ59の容量値を設定する設定信号sig6を出力する設定信号生成回路53が追加されている点で異なる。制御回路13と異なる部分を主に説明する。選択回路52は複数の入力端子34sa~34snと入力端子34gを備えている。選択回路52は、入力端子34sa、34gから帯域制限回路群20の帯域制限信号sig5aを取り込み、入力端子34sb、34gから帯域制限回路群20の帯域制限信号sig5bを取り込む。選択回路52は、入力端子34sn、34gから帯域制限回路群20の帯域制限信号sig5nを取り込む。図26では、n個の入力端子34sa~34snの内、3つの入力端子34sa、34sb、34snを示し、それぞれに入力される3つの帯域制限信号sig5a、sig5b、sig5nを示した。選択回路52は、複数の帯域制限回路12a~12nから出力された複数の帯域制限信号sig5の出力値を比較し、最大となるものを選択して帯域制限信号sigseとして出力する。また、選択回路52は、どの帯域制限信号sig5a~sig5nを選択したかを示す選択情報信号ssigを出力する。AD変換器31は、アナログの帯域制限信号sigseをデジタルの演算入力信号sig2dに変換する。
設定信号生成回路53は、帯域制限回路群20の各帯域制限回路12a~12nのカットオフ周波数fl、fhに対応して、可変コンデンサ59のスイッチ54a~54dのオン又はオフにする設定信号sig6a~sig6aの状態を設定する。設定信号生成回路53は、選択された帯域制限信号sigseに対応した帯域制限回路12のカットオフ周波数fl、fhの間に、出力電圧生成回路66の出力端子45s、45g間に接続された負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となる周波数が含まれるように、予め設定されている設定信号sig6a~sig6aの状態すなわち電位レベルの組を出力する。例えば、設定信号sig6a~sig6aの電位レベルが高電位の場合にスイッチ54a~54dがオンし、設定信号sig6a~sig6aの電位レベルが低電位の場合にスイッチ54a~54dがオフする。
実施の形態2のインピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstは、実施の形態1と同様に調整される。実施の形態2のインピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstは、負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となる周波数すなわち共振周波数fr4が、選択された帯域制限信号sigseを出力した帯域制限回路群20の帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に含まれるように調整されている。また、実施の形態2のインピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstは、選択された帯域制限信号sigseを出力した帯域制限回路群20の帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に、負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となる周波数すなわち共振周波数fr4が含まれるように調整されている、と表現してもよい。選択された帯域制限信号sigseを出力した帯域制限回路群20の帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に、負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となる周波数すなわち共振周波数fr4が含まれることは、インピーダンス条件が満たされていることである。実施の形態2では、インピーダンス調整器18が可変コンデンサ59の例なので、インピーダンス調整器18である可変コンデンサ59の容量値Cは、インピーダンス条件を満たすように調整されている。
実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、選択された帯域制限信号sigseを出力した帯域制限回路群20の帯域制限回路12のゲイン特性に対応して、制御回路30が可変コンデンサ59の容量値Cをインピーダンス条件が満足するように設定することができる。その結果として、実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、電力変換回路2のキャリア周波数が変更されても出力電圧生成回路66の増幅回路14から出力される出力電圧Vsの周波数成分はインピーダンス条件を満たしているので、この出力電圧Vsによって負荷回路60の負荷インピーダンスZtが高くなり、出力電圧生成回路66から出力される出力電流の増加を防ぐことができる。
図30を用いて、実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1の動作を説明する。図30に示したフローチャートは、図12に示したフローチャートにけるステップS05に前にステップS41が追加されている点で異なる。図12に示したフローチャートと異なる部分を主に説明する。ステップS41において、制御回路30aは帯域制限回路群20の複数の帯域制限回路12a~12nがそれぞれ出力する帯域制限信号sig5の出力値が最大となる一つの帯域制限回路12を選択し、この帯域制限回路12の特性に合わせて負荷回路60の共振周波数fr4が設定されるように、すなわちインピーダンス条件を満たすように可変コンデンサ59の容量値を設定する(調整器インピーダンス設定工程)。ステップS41の調整器インピーダンス設定工程の後に、ステップS05を実行する。実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、電力変換回路2のキャリア周波数が変更されても、出力電圧生成回路66から出力される出力電流の増加を防ぐことができる。
図30に示したフローチャートは、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例の動作を説明するフローチャートに対応した例である。これは、実施の形態2の制御回路30aにおけるデジタル回路32が図11に示した第一例の場合である。実施の形態2の制御回路30aにおけるデジタル回路32は、図19に示した第二例の場合でもよい。この場合のフローチャートは、図21に示したフローチャートにけるステップS10に前にステップS41が追加されたフローチャートになる。
図28では、帯域制限回路群20のn個の帯域制限回路12a~12nのゲイン特性88a~88nは、それぞれ二つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1a~f1nが含まれるように設定されている例を示した。帯域制限回路群20のn個の帯域制限回路12a~12nのゲイン特性88a~88nは、図29に示すように、それぞれ二つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1a~f1nの整数倍の周波数が含まれるように設定されていてもよい。図29では、二つのカットオフ周波数fl、fh間にキャリア周波数f1a~f1nの整数倍の周波数f3a~f3nが含まれるように設定されている例を示した。図29のように設定した場合でも、負荷インピーダンスZtは、共振周波数fr4で最大値になる。なお、周波数成分72a~72nの方が周波数成分71a~71nよりも大きい場合には、図29のように設定することを想定しているが、特定の周波数成分を優先的に除去したい場合にはこの限りではない。
可変コンデンサ59は、容量値が所望の値に設定できれば、コンデンサ15a~15dは容量値が同一でも異なってもよい。また各直列体55a~55dにおいて複数のコンデンサを備えていてもよい。すなわち、各コンデンサ15a~15dは、複数のコンデンサが直列接続又は及び直列接続されていてもよい。また、各コンデンサ15a~15dが可変容量コンデンサ(バリアブルコンデンサ)であってもよい。各スイッチ54a~54dは、双方向の遮断及び導通する機能を持っていればよく、例えば機械スイッチ、半導体スイッチ等である。
実施の形態3.
図31は実施の形態3に係るコモンモードフィルタ回路の構成を示す図であり、図32は図31のLC調整器の構成を示す図である。図33は図31の制御回路の構成を示す図であり、図34は図31の増幅回路の出力端子間に接続された負荷回路の等価回路を示す図である。図35は実施の形態3に係るコモンモードフィルタ回路の動作を説明するフローチャートであり、図36は図35の共振周波数調整工程を説明するフローチャートである。
実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1は、出力電圧生成回路66の出力端子45s、45g間に接続される負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大になる共振周波数fr4と、出力電圧生成回路66から出力される出力電圧Vsの周波数fsとのずれを調整する機能を備えた例である。複数の周波数成分を有するコモンモード電圧Vcmから特定の一つの周波数成分のみを通過させるすなわち抽出する帯域制限回路12を用いれば、実施の形態1及び実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、抽出されたコモンモード電圧Vcmの周波数成分における周波数を有する出力電圧Vsを出力電圧生成回路66から負荷回路60に出力している。実施の形態1及び実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、負荷回路60の励磁インピーダンスZl及びコモンモードインピーダンスZが予め想定できる場合に、前述したインピーダンス条件を満たすようにインピーダンス調整器18の容量値Cが調整されていた。満たすべきインピーダンス条件は、負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となる周波数すなわち共振周波数fr4が、帯域制限回路12の二つのカットオフ周波数fl、fhの範囲内に含まれることである。実施の形態1及び実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、帯域制限回路12により抽出された周波数を有する出力電圧Vsに対して負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となるように調整されていた。つまり、実施の形態1及び実施の形態2のコモンモードフィルタ回路1は、負荷回路60の励磁インピーダンスZl及びコモンモードインピーダンスZが予め想定されている場合に、出力電圧生成回路66に接続された負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大になる共振周波数fr4と、出力電圧生成回路66から出力される出力電圧Vsの周波数fsとを、高精度で一致させること又は十分に近づけることができる。
しかし、コモンモードトランス16、インピーダンス調整器18のコンデンサ15等の製造ばらつきにより、励磁インピーダンスZlの励磁インダクタンス値Lm、インピーダンス調整器18の容量値Cのばらつきが大きい場合には、負荷回路60の共振点すなわち共振周波数fr4が所望の値から変化してしまうことが考えられる。このため、コモンモードフィルタ回路1は、負荷回路60の共振点すなわち共振周波数fr4と出力電圧生成回路66から出力される出力電圧Vsの周波数fsとのずれを調整する機能を備えることが望ましい。
図31に示した実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1は、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1とは、制御回路13及びコンデンサ15が制御回路30b及びLC調整器65に代わり、出力電圧生成回路66の出力電流Isを検出する電流検出器17及び帯域制限回路19が追加されている点で異なる。実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1と異なる部分を主に説明する。実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1は、インピーダンス調整器18がLC調整器65の例であり、すなわちインピーダンス調整器18がコンデンサ15、可変コンデンサ57、可変インダクタ58を備えている例である。出力電圧生成回路66は、電流検出器17により検出された出力電流Isの検出値に基づいて、インピーダンス調整器18の容量値及びインダクタンス値を設定する設定信号sig6を出力する。
電流検出器17は、シャント抵抗と絶縁アンプを用いた方式の検出器、非接触の磁気方式の検出器等である。電流検出器17は、出力電圧生成回路66の出力電流Isを検出し、検出電流Idの情報を含む電流検出信号sig7を出力する。検出電流Idの情報は、電流振幅、位相Φdを含んでいる。適宜、検出電流Idの電流振幅はIdのまま用いる。検出電流Idの位相Φdは、出力電流Isの電流位相と同じである。帯域制限回路19は、電流検出器17により出力された電流検出信号sig7における特定の周波数成分を通過させ、帯域制限信号sig8を出力する。帯域制限信号sig8は、特定の周波数帯域の抽出電流Idfの情報を含んでいる。抽出電流Idfの情報は、電流振幅、位相Φdを含んでいる。適宜、抽出電流Idfの電流振幅はIdfのまま用いる。抽出電流Idfの電流振幅は、検出電流Idの電流振幅と同じである。抽出電流Idfの位相は、検出電流Idと同じであり、抽出電流Idfの位相の符号はΦdを用いる。帯域制限信号sig8は制御回路30bに入力される。制御回路30bは、帯域制限信号sig8に基づいて、インピーダンス調整器18であるLC調整器65の調整器インピーダンスZstを設定する設定信号sig6をLC調整器65に出力する。
LC調整器65は、入力端子62s及び出力端子63sに接続された配線64aと入力端子62g及び出力端子63gに接続された配線64bとの間に、並列接続されたコンデンサ15、可変コンデンサ57、可変インダクタ58を備えている。可変コンデンサ57は、コンデンサとスイッチとが直列に接続された直列体55a、55bを複数備えている。可変インダクタ58は、インダクタとスイッチとが直列に接続された直列体85a、85bを複数備えている。図32では、可変コンデンサ57が2つの直列体55a、55bを備え、可変インダクタ58が2つの直列体85a、85bを備えた例を示した。可変コンデンサ57は、配線64aと配線64bとの間に2つの直列体55a、55b、が並列に接続されている。可変インダクタ58は、配線64aと配線64bとの間に2つの直列体85a、85b、が並列に接続されている。入力端子62s、62gはそれぞれ増幅回路14の出力端子45s、45gに接続されており、出力端子63s、63gは、それぞれコモンモードトランス16の一次巻線8の一端及び他端に接続されている。
直列体55aはコンデンサ81aとスイッチ54aとが直列に接続されており、直列体55bはコンデンサ81bとスイッチ54bとが直列に接続されている。直列体85aはインダクタ82aとスイッチ86aとが直列に接続されており、直列体85bはインダクタ82bとスイッチ86bとが直列に接続されている。
スイッチ54aは、入力端子67aから入力される設定信号sig6aによりオン及びオフが制御される。スイッチ54b、86a、86bも同様に、それぞれ設定信号sig6b、sig6c、sig6dによりオン及びオフが制御される。スイッチ54bは、入力端子67bから入力される設定信号sig6bによりオン及びオフが制御される。スイッチ86aは、入力端子67cから入力される設定信号sig6cによりオン及びオフが制御される。スイッチ86bは、入力端子67dから入力される設定信号sig6dによりオン及びオフが制御される。設定信号の符号は、総括的にsig6を用い、区別する場合にsig6a、sig6b、sig6c、sig6dを用いる。
スイッチ54a、54bをオンすれば、各直列体55a、55bはコンデンサ81a、81bとして動作する。スイッチ86a、86bをオンすれば、各直列体85a、85bはインダクタ82a、82bとして動作する。スイッチ54a、54bをオフすれば、各直列体55a、55bすなわちコンデンサ81a、81bは開放状態(非接続状態)になり、可変コンデンサ57の容量値を低下させることができる。コンデンサ15a、15bの並列接続数を増加させれば可変コンデンサ57の容量値を増大でき、コンデンサ15a、15bの並列接続数を減少させれば可変コンデンサ57の容量値を低下させることができる。スイッチ86a、86bをオフすれば、各直列体85a、85bすなわちインダクタ82a、82bは開放状態(非接続状態)になり、可変インダクタ58のインダクタンス値を低下させることができる。インダクタ82a、82bの並列接続数を増加させれば可変インダクタ58のインダクタンス値を低下でき、インダクタ82a、82bの並列接続数を減少させれば可変インダクタ58のインダクタンス値を増大させることができる。
図34に、実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1における、増幅回路14の出力端子間の負荷回路60の等価回路を示した。図5に示した実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1における、増幅回路14の出力端子間の負荷回路60の等価回路では、インピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstはコンデンサ15のインピーダンスのみであった。しかし、実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1のインピーダンス調整器18は、コンデンサ15、可変コンデンサ57、可変インダクタ58を備えている。このため、実施の形態3の負荷回路60は、コンデンサ15、可変コンデンサ57、可変インダクタ58、コモンモードトランス16の励磁インダクタ、一巡経路61の各インピーダンスが並列接続されたLC並列共振回路になっている。コンデンサ15、可変コンデンサ57、可変インダクタ58は、インピーダンス調整器18の構成物であり、インピーダンス調整器18の調整器インピーダンスZstは、容量値Cのコンデンサ15、容量値Ccpの可変コンデンサ57、インダクタンス値Lcpの可変インダクタ58が並列接続されたインピーダンスである。図34では、図5の等価回路に追加された可変コンデンサ57及び可変インダクタ58のコンデンサ電流Ica及びインダクタ電流Ilaも示した。
インピーダンス調整器18は、スイッチ54a、54b及びスイッチ86a、86bのオン及びオフが制御されることで、可変コンデンサ57の容量値Ccp、可変インダクタ58のインダクタンス値Lcpが調整される。インピーダンス調整器18は、容量値Cのコンデンサ15も備えているので、インピーダンス調整器18の容量値はC+Ccpになる。制御回路30bは、設定信号sig6によりインピーダンス調整器18の容量値及びインダクタンス値を調整して、負荷回路60の負荷インピーダンスZtが特定の周波数を有する出力電圧Vsに対して負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となるように調整する。インピーダンス調整器18の容量値及びインダクタンス値が調整されるこことで、負荷回路60の共振周波数fr4が調整される。したがって、制御回路30bは、特定の周波数を有する出力電圧Vsに対して負荷回路60の負荷インピーダンスZtが最大となるように負荷回路60の共振周波数fr4を調整する。
帯域制限回路12のゲイン特性で決定される特定の周波数帯域においてコモンモードインピーダンスZが励磁インピーダンスZlに対し十分に大きい場合には、コモンモードインピーダンスZが無視でき、可変コンデンサ57の容量値Ccp及び可変インダクタ58のインダクタンス値Lcpは、励磁インピーダンスZlの励磁インダクタンス値Lm及びコンデンサ15の容量値Cの誤差補正を目的としている。この場合、コモンモードトランス16の励磁インダクタンス値Lm及びコンデンサ15の容量値Cのばらつき20%を調整する場合には、インダクタンス値Lcpは励磁インダクタンス値Lmの5倍以上とすることが望ましく、容量値Ccpはコンデンサ15の容量値Cの1/5以下とすることが望ましい。ただし、コモンモードインピーダンスZの変動値が励磁インピーダンスZlに対して無視できない場合には、コモンモードインピーダンスZの変動値も誤差要因となるため、励磁インダクタンス値Lm及びコンデンサ15の容量値Cの誤差補正に限らず、コモンモードインピーダンスZの変動値に対応するように、インダクタンス値Lcp及び容量値Ccpを設定してもよい。
制御回路30aは、図3に示した制御回路13とは、アナログの帯域制限信号sig8をデジタル信号の抽出信号sig8dに変換するAD変換器31aと、LC調整器65における可変コンデンサ57の容量値Ccp及び可変インダクタ58のインダクタンス値Lcpを設定する設定信号sig6を出力する設定信号生成回路56が追加されている点で異なる。制御回路13と異なる部分を主に説明する。AD変換器31aは、入力端子34ss、34gから帯域制限回路19の帯域制限信号sig8を取り込む。AD変換器31aはアナログの帯域制限信号sig8をデジタル信号の抽出信号sig8dに変換する。抽出信号sig8dは、特定の周波数帯域の抽出電流Idfの情報、を含んでいる。
設定信号生成回路56は、抽出信号sig8dの抽出電流Idfの情報である抽出電流の電流振幅Idf及び抽出電流Idfの位相Φdに基づいて、可変コンデンサ57のスイッチ54a、54b及び可変インダクタ58のスイッチ86a、86bのオン又はオフにする設定信号sig6a~sig6aの状態を設定する。可変コンデンサ57の容量値Ccp及び可変インダクタ58のインダクタンス値Lcpを設定する工程は、負荷回路60の共振周波数を調整する工程なので、設定信号生成回路56は、共振周波数調整工程を実行する。共振周波数調整工程は、実施の形態1で説明した位相調整工程及び振幅調整工程より先に実行される。
設定信号生成回路56は、共振周波数調整工程において、出力電圧Vsの位相Φsと抽出電流Idfの位相Φdとを比較し、位相Φdが位相Φsよりも遅れている場合に容量性の容量値Ccpを負荷回路60に付加し、位相Φdが位相Φsよりも進んでいる場合に誘導性のインダクタンス値Lcpを負荷回路60に付加する。共振周波数調整工程は、位相調整工程及び振幅調整工程より先に実行されるので、帯域制限信号sig2から演算された電圧位相Φ2及び電圧振幅V2を電圧位相Φо及び電圧振幅Vоとして生成し、電圧位相Φо及び電圧振幅Vоを有する補償信号sig3が出力される。負荷回路60には補償信号sig3に基づいて、出力電圧Vsを有する出力信号sig4が出力される。このため、出力電圧Vsの位相Φsは、デジタル回路32が出力する電圧位相Φоを用いる。
図33に示したように、設定信号生成回路56は、位相Φdが電圧位相Φоよりも遅れている場合に可変コンデンサ57のスイッチ54a、54bの少なくとも1つをオンにし、位相Φdが電圧位相Φоよりも進んでいる場合に可変インダクタ58のスイッチ86a、86bの少なくとも1つをオンにする。設定信号生成回路56は、抽出電流の電流振幅Idfが閾値Ith以下になるまで、もしくは抽出電流の電流振幅Idfが最小になるまで、可変コンデンサ57のスイッチ54a、54b及び可変インダクタ58のスイッチ86a、86bのオン又はオフにする設定信号sig6a~sig6aの状態すなわち電位レベルの組を出力する。例えば、設定信号sig6a~sig6aの電位レベルが高電位の場合にスイッチ54a、54b、86a、86bがオンし、設定信号sig6a~sig6aの電位レベルが低電位の場合にスイッチ54a、54b、86a、86bがオフする。
実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1は、出力電圧生成回路66の増幅回路14が出力する出力電圧Vsの周波数fsに対し、増幅回路14の出力端子45s、45g間に接続された負荷回路60の負荷インピーダンスZtが高くなるように負荷回路60の共振点すなわち共振周波数fr4を変更できるので、前述したコモンモードトランス16、コンデンサ15等の製造ばらつきがあっても、出力電圧生成回路66から出力される出力電流Isの大幅な増加を防止することがでる。
図35を用いて、実施の形態3のコモンモードフィルタ回路1の動作を説明する。図35に示したフローチャートは、図12に示したフローチャートにけるステップS05に前にステップS51が追加されている点で異なる。図12に示したフローチャートと異なる部分を主に説明する。ステップS51において、制御回路30bは共振周波数調整工程を実行して、この共振周波数調整工程にて可変コンデンサ57の容量値Ccp及び可変インダクタ58のインダクタンス値Lcpを設定する。共振周波数調整工程は、図36のステップS52~ステップS55の各ステップが実行される。ステップS51の共振周波数調整工程の後に、ステップS05を実行する。
前述したように、共振周波数調整工程は、位相調整工程及び振幅調整工程より先に実行され、容量値Ccp及びインダクタンス値Lcpの設定は一度だけである。ステップS52にて、制御回路30bは補償信号sig3が出力中かを判定する。補償信号sig3が出力中でない場合はステップS53に進み、補償信号sig3が出力中の場合は終了する。ステップS53にて、制御回路30bは、帯域制限信号sig2から演算された電圧位相Φ2及び電圧振幅V2を電圧位相Φо及び電圧振幅Vоとして生成し、電圧位相Φо及び電圧振幅Vоを有する補償信号sig3を出力する。増幅回路14は、制御回路30bにより出力された補償信号sig3に基づいて出力信号sig4を出力する。
ステップS53が実行されることで、負荷回路60に出力電圧Vs、出力電流Isが印加される。ステップS54にて、制御回路30bは、電流検出器17にて検出され、帯域制限された出力電流Isの情報である抽出電流Idfの情報における抽出電流の電流振幅Idfが閾値Ithを超えているかを判定する。抽出電流の電流振幅Idfが閾値Ithを超えている場合はステップS55に進み、抽出電流の電流振幅Idfが閾値Ithを超えていない場合すなわち抽出電流の電流振幅Idfが閾値Ith以下の場合は終了する。ステップS55にて、制御回路30bは、抽出電流Idfの情報における位相Φdとデジタル回路32が生成した電圧位相Φоとを比較する。電圧位相Φоと抽出電流Idfの位相Φdとを比較し、位相Φdが電圧位相Φоよりも遅れている場合に容量値Ccpを増加させ、位相Φdが電圧位相Φоよりも進んでいる場合にインダクタンス値Lcpを増加させて、容量値Ccp及びインダクタンス値Lcpが設定される。
ステップS55の後にステップS54を実行する。ステップS54にて、新たに電流検出器17にて検出された出力電流Isの情報に基づく抽出電流Idfの電流振幅Idfを判定し、電流振幅Idfが閾値Ithを超えなくなるまで、すなわち電流振幅Idfが閾値Ith以下になるまで、ステップS54、ステップS55を繰り返す。ステップS51の共振周波数調整工程の後に、ステップS05を実行する。なお、図36におけるステップS54では、抽出電流の電流振幅Idfが閾値Ithを超えているかを判定条件とした例を示したが、抽出電流の電流振幅Idfが最小であるいかを判定条件にしてもよい。出力電圧生成回路66は、帯域制限回路19(第二帯域制限回路)により出力された信号すなわち帯域制限信号sig8の出力値が閾値Ith以下になるインピーダンス調整器18の容量値及びインダクタンス値を決定し、又は帯域制限信号sig8の出力値が最小になるインピーダンス調整器18の容量値及びインダクタンス値を決定し、当該容量値を設定する設定信号sig6を出力する。
図35に示したフローチャートは、実施の形態1のコモンモードフィルタ回路1の第一例の動作を説明するフローチャートに対応した例である。これは、実施の形態3の制御回路30bにおけるデジタル回路32が図11に示した第一例の場合である。実施の形態3の制御回路30bにおけるデジタル回路32は、図19に示した第二例の場合でもよい。この場合のフローチャートは、図21に示したフローチャートにけるステップS10に前にステップS51が追加されたフローチャートになる。
各スイッチ54a~54dは、双方向の遮断及び導通する機能を持っていればよく、例えば機械スイッチ、半導体スイッチ等である。
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、又は複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、又は様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1…コモンモードフィルタ回路、2…電力変換回路、4、4u、4v、4w…電力線、5、5u、5v、5w…電力線、7、7u、7v、7w…二次巻線、8…一次巻線、11…電圧検出回路、12、12a、12b、12n…帯域制限回路、15、15a、15b、15c、15d…コンデンサ、16…コモンモードトランス、17…電流検出器、18…インピーダンス調整器、19…帯域制限回路、38…位相調整器、39…振幅調整器、45s、45g…出力端子、50…調整器、57…可変コンデンサ、58…可変インダクタ、59…可変コンデンサ、60…負荷回路、66…出力電圧生成回路、71a、71b、71n…周波数成分、72a、72b、72n…周波数成分、73a、73b、73n…周波数成分、74a、74b、74n…周波数成分、92a、92b、92c、92d…周波数成分、C…容量値、Ccp…容量値、f1、f1a、f1b、f1n…キャリア周波数、f3、f3a、f3b、f3n…3次成分周波数、f5、f5a、f5b、f5n…5次成分周波数、f7、f7a、f7b、f7n…7次成分周波数、flg1…位相調整フラグ、fl…カットオフ周波数、fh…カットオフ周波数、fr4…共振周波数、Idf…抽出電流、Is…出力電流、Ith…閾値、Lcp…インダクタンス値、Lm…励磁インダクタンス値、sig1…電圧検出信号、sig2…帯域制限信号、sig3d…演算出力信号、sig5、sig5a、sig5b、sig5n…帯域制限信号、sig6、sig6a、sig6b、sig6c、sig6d…設定信号、sig8…帯域制限信号、V2…電圧振幅、Vo…電圧振幅、ΔV…小振幅、Φ2…電圧位相、Φo…電圧位相、Φs…出力電圧位相、ΔΦ…位相幅、Vap…注入電圧、Vcm…コモンモード電圧、Vs…出力電圧、Vth2…閾値(許容値)、Z…コモンモードインピーダンス、Zl…励磁インピーダンス、Zst…調整器インピーダンス、Zt…負荷インピーダンス

Claims (12)

  1. 半導体素子のスイッチング動作により電力変換を行う電力変換回路が電力線に発生させるコモンモード電圧を低減するコモンモードフィルタ回路であって、
    前記電力線に生じた前記コモンモード電圧を検出して前記コモンモード電圧の情報を含む電圧検出信号を出力する電圧検出回路と、
    前記電圧検出回路により出力された前記電圧検出信号における特定の周波数成分を通過させる帯域制限回路と、
    前記電力線に接続された二次巻線と一次巻線とを有し、前記電力線に前記コモンモード電圧を低減する注入電圧を重畳するコモンモードトランスと、
    前記帯域制限回路により出力された前記周波数成分を含む帯域制限信号に基づく信号の電圧振幅を許容値以下に低減する出力電圧を生成すると共に、前記出力電圧を前記コモンモードトランスの前記一次巻線に出力する出力電圧生成回路と、
    前記コモンモードトランスの前記一次巻線に並列に接続されると共に、前記出力電圧生成回路の出力端子間に接続されている前記コモンモードトランスを含む負荷回路の負荷インピーダンスを調整するインピーダンス調整器と、を備え、
    前記インピーダンス調整器のインピーダンスは、当該インピーダンスを含む前記出力電圧生成回路の出力端子間に接続された前記負荷インピーダンスが最大となる周波数が、前記帯域制限回路の二つのカットオフ周波数の範囲内に設定されている、
    コモンモードフィルタ回路。
  2. 前記負荷インピーダンスは、前記インピーダンス調整器のインピーダンス、前記コモンモードトランスにおける前記一次巻線及び前記二次巻線の励磁インダクタンスによる励磁インピーダンス、前記コモンモードトランスにおける前記コモンモード電圧による前記二次巻線側のコモンモードインピーダンスが並列接続された合成インピーダンスであり、
    前記インピーダンス調整器のインピーダンスは、前記負荷インピーダンスの共振周波数が前記帯域制限回路の二つのカットオフ周波数の範囲内に設定されている、
    請求項1記載のコモンモードフィルタ回路。
  3. 前記インピーダンス調整器はコンデンサを備えている、
    請求項1または2に記載のコモンモードフィルタ回路。
  4. 前記出力電圧生成回路の出力電流を検出する電流検出器を備え、
    前記インピーダンス調整器は、前記出力電圧生成回路から出力される設定信号に基づいて、容量値が変更される可変コンデンサを備えており、
    前記出力電圧生成回路は、前記電流検出器により検出された前記出力電流に基づいて、前記インピーダンス調整器の容量値を設定する前記設定信号を出力する、
    請求項1または2に記載のコモンモードフィルタ回路。
  5. 前記出力電圧生成回路の出力電流を検出する電流検出器を備え、
    前記インピーダンス調整器は、前記出力電圧生成回路から出力される設定信号に基づいて、容量値が変更される可変コンデンサ及びインダクタンス値が変更される可変インダクタを備えており、
    前記出力電圧生成回路は、前記電流検出器により検出された前記出力電流に基づいて、前記インピーダンス調整器の容量値及びインダクタンス値を設定する前記設定信号を出力する、
    請求項1または2に記載のコモンモードフィルタ回路。
  6. 前記帯域制限回路を第一帯域制限回路とし、
    前記第一帯域制限回路と同一特性を有しており、前記出力電圧生成回路の前記出力電流における特定の周波数成分を通過させる第二帯域制限回路を備え、
    前記出力電圧生成回路は、前記第二帯域制限回路により出力された信号の出力値が閾値以下になる前記インピーダンス調整器の容量値を決定し、当該容量値を設定する前記設定信号を出力する、
    請求項4記載のコモンモードフィルタ回路。
  7. 前記帯域制限回路を第一帯域制限回路とし、
    前記第一帯域制限回路と同一特性を有しており、前記出力電圧生成回路の前記出力電流における特定の周波数成分を通過させる第二帯域制限回路を備え、
    前記出力電圧生成回路は、前記第二帯域制限回路により出力された信号の出力値が閾値以下になる前記インピーダンス調整器の容量値及びインダクタンス値を決定し、当該容量値及び当該インダクタンス値を設定する前記設定信号を出力する、
    請求項5記載のコモンモードフィルタ回路。
  8. 前記帯域制限回路と異なる通過周波数帯域を有し、互いに通過周波数帯域が異なる複数の他の帯域制限回路を備え、
    前記インピーダンス調整器は、前記出力電圧生成回路から出力される設定信号に基づいて容量値が変更される可変コンデンサを備えており、
    前記出力電圧生成回路は、
    前記帯域制限回路、複数の前記他の帯域制限回路から出力される複数の帯域制限信号から出力値が最大となる前記帯域制限信号に基づいて、
    前記出力電圧を生成すると共に、前記インピーダンス調整器の容量値を設定する前記設定信号を出力する、
    請求項1または2に記載のコモンモードフィルタ回路。
  9. 前記帯域制限回路は、前記電力変換回路のキャリア周波数または前記キャリア周波数の整数倍の周波数成分を含むように二つのカットオフ周波数の範囲が設定されている、
    請求項1から7のいずれか1項に記載のコモンモードフィルタ回路。
  10. 前記帯域制限回路、複数の前記他の帯域制限回路の少なくとも一つは、前記電力変換回路のキャリア周波数の周波数成分または前記キャリア周波数の整数倍の周波数成分を含むように二つのカットオフ周波数の範囲が設定されている、
    請求項8記載のコモンモードフィルタ回路。
  11. 前記出力電圧生成回路は、
    前記帯域制限回路により前記帯域制限信号が出力される度に、前記帯域制限信号に基づく信号の電圧位相が予め定められた位相判定条件を満たすまで前記出力電圧の位相を予め定められた位相幅ずつ調整する位相調整器と、
    前記位相調整器が位相調整の終了を示す位相調整フラグを出力している場合に、前記帯域制限回路により前記帯域制限信号が出力される度に、前記帯域制限信号に基づく信号の電圧振幅が予め定められた振幅判定条件を満たすまで前記出力電圧の振幅を予め定められた小振幅ずつ調整する振幅調整器と、を備えている、
    請求項1から10のいずれか1項に記載のコモンモードフィルタ回路。
  12. 前記出力電圧生成回路は、
    前記帯域制限回路により出力された前記帯域制限信号の電圧位相及び電圧振幅に基づいて前記出力電圧の位相及び振幅を調整する調整器を備えており、
    前記調整器は、
    前記帯域制限信号の電圧位相及び電圧振幅から前記出力電圧の位相及び振幅を制御する電圧位相の値及び電圧振幅の値を生成する学習済みモデルを構成する探索回路を備えており、
    前記探索回路は、
    前記帯域制限信号に基づく信号の電圧振幅が許容値以下に低減するまで、前記帯域制限信号の電圧位相及び電圧振幅を入力として前記帯域制限信号の電圧振幅が減少する前記出力電圧の位相及び振幅を制御する電圧位相の値及び電圧振幅の値を生成するように学習されており、
    前記帯域制限信号が出力される度に、前記帯域制限信号から前記探索回路により生成された電圧位相の値及び電圧振幅の値に基づいて、前記出力電圧の位相及び振幅を調整する、
    請求項1から10のいずれか1項に記載のコモンモードフィルタ回路。
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