(第1実施形態)
<プリンタの全体構成>
第1実施形態に係るプリンタ1(本発明の「画像記録装置」)は、用紙S(本発明の「被記録媒体」)に対する画像の記録のほか、画像の読み取りなども行うことが可能な、いわゆる複合機である。プリンタ1は、図1に示すように、記録部2(図2参照)、給送部3、排出部4、読取部5、操作部6、表示部7などを備えている。また、プリンタ1の動作は、制御装置50(図6(a)参照)によって制御されている。
記録部2は、プリンタ1の内部に設けられており、用紙Sに対する画像の記録を行う。なお、記録部2については、後程詳細に説明する。給送部3は、記録部2に用紙Sを給送するための部分である。給送部3は、サイズの異なる複数種類の用紙Sを収容することができるようになっており、これら複数種類の用紙Sのうちのいずれかを選択的に記録部2に給送する。排出部4は、記録部2により画像の記録が行われた用紙Sが排出される部分である。読取部5は、スキャナなどであって、原稿の読み取りを行う。操作部6は、ボタン等を備えており、ユーザは、操作部6のボタンを操作することによって、プリンタ1に対して必要な操作を行う。表示部7は液晶ディスプレイなどであって、プリンタ1の使用時に必要な情報を表示する。
次に、記録部2について説明する。記録部2は、図2~図5に示すように、キャリッジ11、インクジェットヘッド12(本発明の「記録ヘッド」)、搬送ローラ対13、9つのプレート14、プラテン15、8つの排出ローラ対16、9つの拍車17、ホルダ19などを備えている。ただし、図2では、搬送ローラ対13、プレート14、プラテン15、排出ローラ対16、拍車17などの図示を省略している。また、図3では、プレート14や後述のリブ20等を見やすくするために、キャリッジ11を二点鎖線で図示し、実際にはキャリッジ11に隠れて見えない、キャリッジ11よりも下側に配置された部材を実線で図示している。また、図3では、キャリッジ11を支持するガイドレールなどの図示を省略している。
図2に示すように、キャリッジ11は、左右方向に平行に延びる2本のガイドレール21,22に取り付けられており、このガイドレール21,22に沿って左右方向に移動可能である。また、キャリッジ11には、駆動ベルト23が取り付けられている。駆動ベルト23は、2つのプーリ24,25に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ24はキャリッジモータ56(図6(a)参照)に連結されている。そして、キャリッジモータ56を正転及び逆転させると、プーリ24,25が回転することによって駆動ベルト23が走行し、キャリッジ11が左右方向を走査方向として往復移動する。より具体的には、キャリッジ11は、キャリッジモータ56が正転すると右端から左端に向かうFWD方向に移動し、キャリッジモータ56が逆転すると左端から右端に向かうRVS方向に移動する。
ホルダ19は、キャリッジ11よりも前方に配置されている。ホルダ19には、4つのインクカートリッジ26が着脱可能に装着される。プリンタ1では、ユーザによるインクカートリッジ26の着脱作業をプリンタ1の前面側から行うことができる。4つのインクカートリッジ26には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。
インクジェットヘッド12は、キャリッジ11に搭載されており、キャリッジ11とともに走査方向に往復移動する。このインクジェットヘッド12は、ヘッド本体12aと、バッファタンク12bとを有する。バッファタンク12bにおける、インクジェットヘッド12の搬送方向の中間位置よりも搬送方向の下流側位置には、チューブジョイント28が設けられている。そして、チューブジョイント28には、4本の供給チューブ27それぞれの一端が接続されている。4本の供給チューブ27は、可撓性を有するチューブである。この4本の供給チューブ27それぞれの他端は、ホルダ19に装着された4つのインクカートリッジ26のそれぞれに接続されている。ホルダ19に装着された4つのインクカートリッジ26内のインクは、供給チューブ27を経て、バッファタンク12bに供給される。また、4本の供給チューブ27は、チューブジョイント28との接続箇所から左側に延びて、プリンタ1内のインクジェットヘッド12よりも左側において曲がって向きを変えて右側に延びる湾曲部分27aを有している。
ヘッド本体12aは、バッファタンク12bの下部に取り付けられている。ヘッド本体12aは、不図示の流路ユニットと不図示のアクチュエータとを有する。流路ユニットには、その下面である吐出面12a1に形成された複数のノズル10を含む内部流路が形成されている。この内部流路は、バッファタンク12bと連通しており、複数のノズル10は、バッファタンク12bから内部流路を介して供給されたインクを吐出する。また、吐出面12a1は、前後方向及び左右方向に対して平行な水平面である。
複数のノズル10は、図3に示すように、走査方向と直交する搬送方向(前後方向)に一定のノズル間隔Gで長さLnにわたって配列されることによりノズル列9を形成している。そして、複数のノズル10からは、右側のノズル列9を形成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。アクチュエータは、各ノズル10内のインクに個別に、吐出エネルギーを付与するためのものである。例えば、アクチュエータは、ノズル10に連通する図示しない圧力室の容量を変化させてインクに圧力を付与するものや、加熱により圧力室内に気泡を発生させてインクに圧力を付与するものである。ただし、アクチュエータの構成自体は公知のものであるため、ここではこれ以上の詳細な説明は省略する。
また、本実施形態において、用紙Sに画像を記録するために、一吐出周期内にノズル10から吐出可能なインクの吐出量は5種類(特大滴、大滴、中滴、小滴、不吐出)である。つまり、プリンタ1では、5階調の記録を行うことが可能である。本実施形態では、アクチュエータを制御して、一吐出周期内にノズル10から吐出させる液滴の数、及び、一液滴当たりの液滴量(体積)の少なくとも何れか一方を変えることで、一吐出周期内にノズル10から吐出させるインクの吐出量を調整している。ここで、吐出周期とは、走査方向(左右方向)の解像度に対応する単位距離だけキャリッジ11が移動するのに要する時間である。
また、図2に示すように、プリンタ1内には、キャリッジ11よりも前方の位置に、4本の供給チューブ27を支持する接触部材29が設けられている。接触部材29は、4本の供給チューブ27の湾曲部分27aを側方から接触して支持する接触面29aを有している。接触面29aは、図2(a)に示すようにキャリッジ11が移動可能範囲における左側端部範囲内に位置する状態において、供給チューブ27の湾曲部分27aの湾曲形状に沿って、供給チューブ27の曲げの外側部分に接触可能に延在している。したがって、4本の供給チューブ27は、湾曲しながら接触面29aに接触して、その湾曲した姿勢を保持している。一方で、図2(b)に示すように、キャリッジ11が左側端部範囲よりも右側に位置する状態においては、4本の供給チューブ27は、接触面29aには接触しない。
図5に示すように、搬送ローラ対13は、インクジェットヘッド12よりも搬送方向における上流側に配置されている。搬送ローラ対13は、上側ローラ13aと下側ローラ13bとを有し、これらのローラで、給送部3から給送された用紙Sを上下方向からニップして搬送方向に搬送する。上側ローラ13aは、搬送モータ57(図6(a)参照)によって駆動される駆動ローラである。下側ローラ13bは、上側ローラ13aの回転に連動して回転する従動ローラである。
プラテン15は、搬送ローラ対13の搬送方向における下流側に、吐出面12a1と対向して配置されている。プラテン15は、画像の記録時のキャリッジ11の移動可能範囲の全長にわたって走査方向に延びている。また、プラテン15は、搬送方向における上流側の端部に設けられ、走査方向に延びた揺動軸15aに揺動自在に支持されているとともに、図示しないばねなどに付勢されることによって、用紙Sが搬送されていない状態において、図中実線で示した位置に位置づけられている。
9つのプレート14は、搬送ローラ対13と重なる位置から、搬送ローラ対13よりも搬送方向の下流側の位置まで延びており、走査方向に等間隔で配列されている。各プレート14は、搬送方向の下流側の端部に、用紙Sを上方から押えるための押さえ部14aを有している。搬送ローラ対13により搬送される用紙Sは、プレート14とプラテン15との間を通過する。このとき、用紙Sは、プレート14の押さえ部14aにより上方から押えられる。また、プラテン15は、プレート14によって押えられた用紙Sによって下方に押され、図5に一点鎖線で示したように、揺動軸15aを中心に揺動する。また、このとき、プラテン15は、用紙Sの厚みが大きい場合ほど大きく揺動する。これにより、プラテン15の上面は、用紙Sの厚みが大きい場合ほど吐出面12a1から離れることになる。その結果として、用紙Sの種類に関わらず、プラテン15の上面に配置された用紙Sと、吐出面12a1との間の上下方向の離間距離(以下、ギャップ)を略同じにすることができる。
プラテン15の上面には、8つのリブ20が形成されている。8つのリブ20は、それぞれが搬送方向に延び、走査方向において、隣接するプレート14の間に位置するように、等間隔で配列されている。リブ20は、それぞれ、プラテン15の上面からプレート14の押さえ部14aよりも上方まで突出しているとともに、プラテン15の搬送方向の上流側の端部から搬送方向の下流側に向かって延びている。これにより、リブ20は、押さえ部14aが用紙Sを押さえる位置よりも上方で、用紙Sを下方から支持している。
8組の排出ローラ対16は、インクジェットヘッド12よりも搬送方向の下流側に配置されている。また、排出ローラ対16は、走査方向の位置が、リブ20とほぼ同じとなっている。各排出ローラ対16は、上側ローラ16aと下側ローラ16bとを有し、これらのローラで、搬送ローラ対13から用紙Sを受け取って、用紙Sを上下方向からニップして搬送方向にさらに搬送する。また、排出ローラ対16は、用紙Sを排出部4に向けて排出する。下側ローラ16bは搬送モータ57(図6(a)参照)によって駆動される駆動ローラである。上側ローラ16aは拍車であり、下側ローラ16bの回転に連動して回転する従動ローラである。ここで、上側ローラ16aは、記録後の用紙Sの記録面と接触するが、上側ローラ16aは、外周面が平坦なローラではなく拍車であるため、用紙S上のインクが付着しにくい。
9つの拍車17は、搬送方向における排出ローラ対16よりも下流側に配置され、用紙Sを上方から押さえている。また、9つの拍車17は、走査方向の位置が、9つのプレート14の押さえ部14aとほぼ同じとなっている。また、拍車17は外周面が平坦なローラではなく拍車であるので、用紙S上のインクが付着しにくい。
なお、プレート14及び排出ローラ対16の数、並びに、リブ20及び拍車17の数は一例であり、これらの数は上記とは異なっていてもよい。プレート14及び排出ローラ対16の数、並びに、リブ20及び拍車17は、それぞれ、少なくとも1つずつあればよい。
そして、用紙Sは、8つのリブ20及び8つの下側ローラ16bによって下方から支持され、9つのプレート14の押さえ部14a及び9つの拍車17によって上方から押さえられることによって曲げられ、図4(a),(b)に示すように、走査方向に沿った波形状となっている。
また、波形状となった用紙Sは、走査方向において、各リブ20及び排出ローラ対16が配置された位置が、高さが極大となる山頂点Ptとなる。また、用紙Sは、走査方向において、各プレート14の押さえ部14a及び拍車17が配置された位置が、高さが極小となる谷頂点Pbとなる。つまり、用紙Sは、山頂点Ptを中心として吐出面12a1側に突出した山部分と、谷頂点Pbを中心として山部分よりも吐出面12a1から離れて窪んだ谷部分とが、交互に並ぶ波形状となっている。
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置50によって制御される。図6(a)に示すように、制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)54等を備える。ASIC54には、インクジェットヘッド12、給送部3、キャリッジモータ56、搬送モータ57等が電気的に接続されている。
ROM52には、CPU51が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM53には、プログラム実行時に必要なデータや、用紙Sに記録させる画像に関する画像データIM等が一時的に記憶される。
画像データIMは、図6(b)に示すように、用紙S上に形成する複数のドット(インクが着弾しない不吐出ドットを含む)に対応する複数のドット要素Eを有している。詳細には、画像データIMは、互いに直交するX方向及びY方向に並んだ複数のドット要素Eによって形成される。X方向及びY方向は、それぞれ、走査方向及び搬送方向に対応している。各ドット要素Eには、対応するドットを形成する際にノズル10から吐出させるインクの吐出量が設定されている。詳細には、各ドット要素Eは、上記5種類の吐出量(特大滴、大滴、中滴、小滴、不吐出)のうちの何れか1つが設定される。この5種類の吐出量は、特大滴、大滴、中滴、小滴、不吐出の順に吐出量が多い。また、不吐出は、吐出量が零である。つまり、不吐出が設定されたドット要素Eに対応するドットは、インクが着弾しない不吐出ドットである。また、画像データIMは、複数のラインデータLを有している。ラインデータL各々は、用紙S上の走査方向に配列された複数のドットに対応する複数のドット要素Eからなるデータである。なお、図6(b)に示す画像データIMでは、特大滴が設定されたドット要素Eを「4」、大滴が設定されたドット要素Eを「3」、中滴が設定されたドット要素Eを「2」、小滴が設定されたドット要素Eを「1」、不吐出が設定されたドット要素Eを「0」として図示している。
制御装置50は、インクジェットヘッド12、給送部3、キャリッジモータ56、搬送モータ57等を制御して、上記画像データIMに係る画像を用紙Sに記録する記録処理等の各種処理を行う。なお、制御装置50は、CPU51のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC54のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU51とASIC54とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置50は、1つのCPU51が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU51が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置50は、1つのASIC54が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC54が処理を分担して行うものであってもよい。
(記録処理のフロー)
以下、用紙Sに画像を記録する際に、制御装置50が行う記録処理について説明する。本実施形態では、プリンタ1に記録を行うことを指示する記録指令が入力されると、制御装置50が、図7のフローに沿って処理を行うことにより、用紙Sへの画像の記録を行う。
図7に示すように、制御装置50は、まず、RAM53に記憶された記録対象の画像データIM(以下、補正前の画像データIMとも称す)を補正する画像データ補正処理を実行する(S1)。この画像データ補正処理は、用紙S上に記録される画像の画質劣化を目立ち難くするための処理である。この画像データ補正処理については、後で詳細に説明する。この後、制御装置50は、給送部3を制御して、記録部2に用紙Sを供給させる給紙処理を実行する(S2)。この給紙処理では、用紙Sは記録開始位置まで搬送される。記録開始位置とは、用紙Sのうちの最初に画像が記録される領域と、インクジェットヘッド12の吐出面12a1とが対面する位置である。
続いて、制御装置50は、吐出処理を実行する(S3)。吐出処理では、制御装置50は、キャリッジモータ56を制御してキャリッジ11を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド12を制御して複数のノズル10から所定の吐出タイミングでインクを吐出させて用紙S上にドットを形成する記録パスを行わせる。より詳細には、吐出処理では、インクジェットヘッド12の各ノズル10は、S1の画像データ補正処理後の画像データIM(以下、補正後の画像データIMとも称す)の何れかのラインデータLに対応付けられる。そして、各ノズル10から、吐出周期の各々において、対応するラインデータLのドット要素Eに設定された吐出量のインクを吐出させて用紙S上にドットを形成する。これにより、用紙S上には、走査方向に沿って並ぶ複数のドットからなる1ライン分の画像(以下、ライン画像とも称す)がノズル10毎に記録される。
なお、上述したように、用紙Sは走査方向に沿った波形状となっているため、吐出面12a1とのギャップは走査方向に沿って変化する。また、キャリッジ11の移動中にノズル10からインクが吐出されるため、ノズル10から吐出されたインクには慣性力が作用する。このため、インクの飛翔方向は、真下方向とはならず、キャリッジ11の移動方向の成分も含む方向となる。以上により、吐出タイミングの間隔を一定にすると、走査方向のドットの間隔は一定とはならない。そこで、記録パスでは、ドットを形成する用紙S上の走査方向の位置ごとに、吐出面12a1とのギャップに応じて、ノズル10からインクを吐出させる吐出タイミングを調整している。なお、この吐出タイミングの調整は、用紙Sが想定の波形状に保持されているものとして行われる。
続いて、制御装置50は、搬送処理を実行する(S4)。搬送処理では、制御装置50は、搬送モータ57を制御して、搬送ローラ対13及び排出ローラ対16に、用紙Sをノズル列9の長さLnだけ搬送させる搬送動作を行わせる。これにより、図8(a)に示すように、用紙S上において、連続する2回の記録パスにおける、先行の記録パスでドットが形成される第1ドット形成範囲KL、及び、後続の記録パスでドットが形成される第2ドット形成範囲KPは互いに重ならずに搬送方向に隣接することになる。
そして、用紙Sへの画像の記録が完了していないときに(S5:NO)、S3の処理に戻る。これにより、用紙Sへの画像の記録が完了するまで、記録パスと搬送動作とが交互に繰り返される。
用紙Sへの画像の記録が完了したときには(S5:YES)、制御装置50は、排紙処理を実行する(S6)。排紙処理では、制御装置50は、搬送モータ57を制御して、搬送ローラ対13及び排出ローラ対16により、用紙Sを排紙部4に排出させる。
ここで、本実施形態では、記録処理の記録モードとして、片方向記録モード及び双方向記録モードの2種類有している。そして、制御装置50は、記録処理において、片方向記録モード及び双方向記録モードいずれかの記録モードで選択的に画像の記録を行う。以下、これら片方向記録モード及び双方向記録モードについて説明する。
片方向記録モードは、キャリッジ11を走査方向の一方側(本実施形態では、RVS方向)に移動させるときにのみ、複数のノズル10からインクを吐出させる記録モードである。従って、片方向記録モードでは、1枚の用紙Sに画像を記録する際に行われる全記録パスにおいて、各連続する2回の記録パスのキャリッジ11の移動方向は同じとなる。つまり、各連続する2回の記録パスにおいて、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向と、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向とは同一となる。
双方向記録モードは、キャリッジ11を走査方向の一方側と他方側(本実施形態では、RVS方向とFWD方向)のいずれに移動させるときにも、複数のノズル10からインクを吐出させる記録モードである。従って、双方向記録モードでは、1枚の用紙Sに画像を記録する際に行われる全記録パスにおいて、記録パスのキャリッジ11の移動方向は交互に変わる。つまり、各連続する2回の記録パスにおいて、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向と、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向とは異なる。
片方向記録モードでは、キャリッジ11をRVS方向へ移動させて1回の記録パスを実行した後、次の記録パスを開始する前に、キャリッジ11をFWD方向へ移動させるリターン動作を行う必要がある、一方で、双方向記録モードでは、1回の記録パスを実行した後に、上記リターン動作を行う必要はない。このため、双方向記録モードは、片方向記録モードと比べてスループットを向上させることができる。その反面、双方向記録モードでは、片方向記録モードと比べて用紙Sに記録される画像の画質が劣化しやすい。例えば、用紙Sと吐出面12a1との間の実際のギャップが想定のギャップとは異なる等の場合、ノズル10から吐出されたインクの飛翔時間も変わることになる。インクの飛翔方向は、キャリッジ11の移動方向の成分も含んでいるため、飛翔時間が変わると、用紙S上のインクの着弾位置は、理想の着弾位置から走査方向に関してずれることになる。このとき、片方向記録モードでは、各記録パスのキャリッジ11の移動方向は同一であるため、理想の着弾位置に対する、実際の着弾位置のズレ方向は同じとなる。一方で、双方向記録モードでは、連続する2回の記録パスのキャリッジ11の移動方向は互いに異なる。このため、連続する2回の記録パスにおける先行の記録パスの上記ズレ方向と、後続の記録パスの上記ズレ方向とは互いに異なることになる。従って、双方向記録モードでは、片方向記録モードと比べて、インクの着弾位置のズレに起因して画質が劣化しやすい。
(画像データ補正処理)
次に、画像データ補正処理について説明するに当たり、その前提となる事項についても合わせて説明する。
図8(a)に示すように、特定画像SIを第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界を跨って記録する際には、種々の要因により、当該特定画像SIに段差が生じ得る。ここで、特定画像SIとは、複数の吐出ドットDからなり、搬送方向及び走査方向において複数ドット分の幅を持つ画像である。特定画像SIとしては、例えば、不吐出ドットに走査方向の両側から挟まれ、走査方向に複数ドット分(例えば、6ドット分)の幅を持つ、搬送方向に沿って延びる線(例えば、テキストを構成する線)があげられる。吐出ドットDは、画像データIMにおいて、対応するドット要素Eに設定された吐出量が特大滴、大滴、中滴、小滴のいずれかであるドットである。不吐出ドットは、画像データIMにおいて、対応するドット要素Eに設定された吐出量が零(不吐出)のドットである。なお、図8では、吐出ドットDのみ図示しており、不吐出ドットについては図示していない。後で参照する図10、図11、図12、図14、図15、図17、図20、図22~図26についても同様である。
以下、特定画像SIは、対応するドット要素Eに設定された吐出量が特大滴である吐出ドットDからなり、走査方向に6ドット分の幅を持つ線であるものとして説明する。従って、図6(b)及び図9(a)に示すように、画像データIMにおいて、特定画像SIに対応する特定画像データESIは、「特大滴」の「4」が設定されたドット要素EがX方向に6つ並んでなるドット要素列が、Y方向に複数並ぶデータとなる。なお、図9においては、画像データIMのうち、特定画像データESIのみ図示している。
本実施形態においては、特定画像SIに段差が生じる主な要因として、用紙Sと吐出面12a1との間のギャップの搬送方向の上下流の差、用紙Sの山部分でのギャップの変動、及び、供給チューブ27が接触面29aから受ける反力に起因したキャリッジ11の姿勢変化の3つの要因があげられる。以下、3つの要因それぞれについて説明するが、便宜上、特定画像SIの段差は、説明の対象となっている1つの要因のみにより生じているものとして説明する。
まず、ギャップの搬送方向の上下流の差が要因となる特定画像SIの段差について説明する。ギャップの搬送方向の上下流に差が生じておらず均一の場合には、ノズル列9の各ノズル10から吐出されるインクの飛翔時間は、同一となる。このため、図8(a)に示すように、記録パスの各々において、ノズル列9の各ノズル10から同一の吐出周期に吐出されたインクにより形成される吐出ドットD同士は、走査方向において同じ位置に形成されることになる。つまり、特定画像データESIにおいてY方向に並ぶ複数のドット要素E(X方向の位置が同じドット要素E)に対応する複数の吐出ドットDのうち、同じ記録パスにより形成される吐出ドットD同士は、走査方向において同じ位置に形成されることになる。
しかしながら、本実施形態では、上述したように、プラテン15は、搬送方向における上流側の端部に設けられた揺動軸15aに揺動自在に支持されており、プレート14によって押えられた用紙Sによって揺動させられるように構成されている。この構成により、用紙Sと吐出面12a1との間のギャップは、搬送方向の下流側ほど大きくなる。
このため、記録パスの各々において、ノズル列9における搬送方向の下流側に配置されたノズル10から吐出されたインクほど、その飛翔時間が長くなり、その着弾位置がキャリッジ11の移動方向の下流側となる。つまり、図8(b)に示すように、記録パスの各々において、ノズル列9の各ノズル10から同一の吐出周期に吐出されたインクにより形成される吐出ドットDの各々の形成位置は、搬送方向の下流側の吐出ドットDほど、キャリッジ11の移動方向の下流側となる。また、本実施形態では、ノズル列9の搬送方向において最も上流に位置するノズル10を基準ノズルに設定している。そして、記録パスの各々において当該基準ノズルから吐出されたインクにより形成されるドット列の走査方向の位置が、互いに同じ位置となるように、インクの吐出タイミングが設定されている。
以上により、特定画像SIにおける第1ドット形成範囲KLに記録される第1画像領域ILと、特定画像SIにおける第2ドット形成範囲KPに記録される第2画像領域IPとの間で段差が生じることになる。つまり、第1画像領域IL内の第2ドット形成範囲KPと隣接する第1境界領域BLが、第2画像領域IP内の第1ドット形成範囲KLと隣接する第2境界領域BPに対して、全体的に走査方向にずれることになる。詳細には、双方向記録モードの場合には、第1境界領域BLが、第2境界領域BPに対して、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の下流側に全体的にずれることになる。なお、第1境界領域BLの搬送方向の長さは、第1ドット形成範囲KLの搬送方向の長さよりも短い。同様に、第2境界領域BPの搬送方向の長さは、第2ドット形成範囲KPの搬送方向の長さよりも短い。
また、上述したように、プラテン15の揺動幅は、用紙Sの厚みによって変わるため、画像を記録する用紙Sの種類によって、ギャップの搬送方向の上下流の差は変わる。従って、用紙Sの種類によって、第1境界領域BLが、第2境界領域BPに対してずれるズレ量は変わることになる。
以上のようにギャップの搬送方向の上下流の差が要因で生じる特定画像SIの段差の対策として、制御装置50は、画像データ補正処理において、下記のように特定画像データESIを補正する。即ち、双方向記録モードの場合には、制御装置50は、図8(c)に示すように、第1境界領域BLの、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の下流側の端部、及び、第2境界領域BPの、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の下流側の端部それぞれを補正部AMに設定する。
そして、制御装置50は、図9(b)に示すように、特定画像データESIにおいて、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を少なくする補正を行う。具体的には、本実施形態では、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に変更する補正を行う。なお、図9(b)では、吐出量が「特大滴」から「大滴」に補正されたドット要素Eをハッチングで塗りつぶして図示している。
以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、図8(c)に示すように、ギャップの搬送方向の上下流の差が要因で特定画像SIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。即ち、特定画像SIに生じた段差の角部分を面取りすることができる。その結果として、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。
ここで、補正部AMの面積及びその形状は、実験等に基づいて設定される。例えば、補正部AMの面積及び形状は、特定画像SIの第1画像領域ILと第2画像領域IPとを、想定され得る最大ズレ量の半分の量だけずらして記録したときに、特定画像SIの段差が目視により目立ち難くなるように設定される。本願発明者は、実験等を行って研究したところ、補正部AMは、その走査方向の長さが、搬送方向の長さよりも短いときに、特定画像SIの段差が目立ち難いことが分かった。さらに、補正部AMの走査方向の長さが長すぎると、補正部AMに属する吐出ドットDの大きさを小さくしたことによる画質の劣化が目立つこと、及び、走査方向の長さが1ドット分の長さでも特定画像SIの段差を目立ち難くする効果があることが分かった。そこで、本実施形態では、補正部AMの形状を、走査方向の長さが1ドット分の長さであり、搬送方向の長さが3ドット分の長さである矩形形状に設定している。ただし、補正部AMの形状はこれに限定されるものではなく、例えば、走査方向の長さが1ドット分の長さであり、搬送方向の長さが1ドット分の長さであってもよい。
また、片方向記録モードの場合には、図10(a)に示すように、制御装置50は、第1境界領域BLにおけるRVS方向の上流側の端部(左側の端部)、及び第2境界領域BPにおけるRVS方向の下流側の端部(右側の端部)それぞれを補正部AMとする。これにより、片方向記録モードの場合においても、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。本実施形態では、第1境界領域BL及び第2境界領域BPそれぞれが、本発明の「特定領域」に相当する。
次に、用紙Sの山部分でのギャップの変動が要因となり生じる特定画像SIの段差について説明する。上述したように、用紙Sは、リブ20及び下側ローラ16bによって下方から支持され、プレート14の押さえ部14a及び拍車17によって上方から押さえられることによって、図4(a),(b)に示すように、山部分と、谷部分とが走査方向に交互に並ぶ波形状となっている。ここで、用紙Sの谷部分では、押さえ部14a及び拍車17によって上方から押さえられているため、吐出面12a1とのギャップは変動し難い。一方で、用紙Sの山部分では、リブ20及び排出ローラ対16により下から支持されているだけであり、上方からは押さえられていない。このため、用紙Sの山部分が、図10(b)で一点鎖線に示すように想定よりも浮き上がって、吐出面12a1との実際のギャップが想定のギャップよりも狭くなりやすい。その結果として、記録モードが双方向記録モードである場合において、先行の記録パス及び後続の記録パスのそれぞれにおいて、山部分における走査方向の同じ位置にドットを形成するようにインクの吐出制御を行ったとしても、先行の記録パスにより形成されるドットと、後続の記録パスにより形成されるドットとは走査方向に関して離間して形成される場合がある。
そこで、用紙Sの山部分でのギャップの変動が要因となり生じる特定画像SIの段差の対策として、制御装置50は、記録処理の記録モードが双方向記録モードである場合には、画像データ補正処理において、下記のように特定画像データESIを補正する。即ち、図10(c)に示すように、特定画像SIの第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が、山頂点Ptを中心とした所定範囲内にある場合には、第1境界領域BLの、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部、及び、第2境界領域BPの、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部それぞれを補正部AMに設定する。そして、特定画像データESIにおいて、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に変更する補正を行う。以上により、用紙Sの山部分でのギャップの変動が要因となり特定画像SIに段差が生じたとしても、その段差を目立ち難くすることができる。
次に、供給チューブ27が接触面29aから受ける反力に起因したキャリッジ11の姿勢変化が要因となり生じる特定画像SIの段差について説明する。上述したように、キャリッジ11が左側端部範囲内に位置する状態では、供給チューブ27の湾曲部分27aは、接触面29aに接触する。このとき、供給チューブ27は、接触面29aから反力を受けることで、チューブジョイント28を右側に押圧する。
また、キャリッジ11と、ガイドレール21,22との間には多少の遊びが設けられている。これにより、キャリッジ11が左側端部範囲内に位置する状態では、図11(a)に示すように、キャリッジ11は、インクジェットヘッド12が供給チューブ27から受ける押圧力によって、キャリッジ11の姿勢が若干変化する。詳細には、ノズル列9の搬送方向の上流側のノズル10が左に、下流側のノズル10が右に移動するように、キャリッジ11が若干回転する。その結果として、ノズル列9の配列方向が搬送方向と平行とはならず、搬送方向から若干傾斜する。従って、図11(b)に示すように、キャリッジ11が左側端部範囲内に位置する状態において、記録パスの各々において、ノズル列9の各ノズル10から同一の吐出周期に吐出されたインクにより形成される吐出ドットDの各々の形成位置は、搬送方向の下流側の吐出ドットDほど、走査方向の右側に位置することになる。
そこで、キャリッジ11の姿勢変化が要因となり生じる特定画像SIの段差の対策として、制御装置50は、画像データ補正処理において、下記のように特定画像データESIを補正する。即ち、特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にある場合には、図11(b)に示すように、第1境界領域BLの左側の端部、及び、第2境界領域BPの右側の端部それぞれを補正部AMに設定する。そして、特定画像データESIにおいて、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に変更する補正を行う。以上により、キャリッジ11の姿勢変化が要因となり特定画像SIに段差が生じたとしても、その段差を目立ち難くすることができる。
以上のように、本実施形態では、第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して全体的に右側にずれることが想定される場合には、第1境界領域BLの右側の端部、及び第2境界領域BPの左側の端部それぞれを補正部AMに設定する。一方で、第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して全体的に左側にずれることが想定される場合には、第1境界領域BLの左側の端部、及び第2境界領域BPの右側の端部それぞれを補正部AMに設定する。つまり、第1境界領域BLの右側の端部及び第2境界領域BPの右側の端部のうち、用紙Sの右端に近い方の端部を補正部AMに設定する。同様に、第1境界領域BLの左側の端部及び第2境界領域BPの左側の端部のうち、用紙Sの左端に近い方の端部を補正部AMに設定する。
ここで、上記のように補正部AMを設定し、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を減らす補正を行う場合、この補正を行わない場合と比較して、補正部AMの濃度が薄くなる。
一方、特定画像SIがテキストである場合には、上述したように、特定画像SIの周囲に空白(ドット要素Eに設定された吐出量が零(不吐出)のドット)が多く、補正部AMと走査方向に隣接する領域のデューティが低い(閾値未満となる)。ここで、デューティとは、領域全体の面積に対する吐出量が零よりも多いドット要素Eに対応する吐出ドットDが形成される面積の割合のことである。そして、この場合には、補正部AMが上記デューティの低い領域と走査方向に隣接することになるため、補正部AMの濃度が薄くなっていることが目立ちにくい。
これに対して、特定画像SIが絵や写真等テキスト以外のものである場合には、図12(a)~(c)に示すように、補正部AMと走査方向に隣接する領域のデューティが高い(閾値以上となる)。ここで、図12(a)~(c)は、特定画像SIが絵や写真等テキスト以外のものである場合のドットの配置の例を示す図であり、図12(a)が図8(c)に対応し、図12(b)が図10(a)及び図11(b)に対応し、図12(c)が図10(c)に対応している。そして、この場合には、補正によって濃度が薄くなった補正部AMと、上記デューティが高い部分とが走査方向に隣接して並ぶことになるため、これらの部分間の濃度差により、補正部AMの濃度が薄くなっていることが目立ちやすい。そして、この場合には、上記補正を行うことにより、かえって記録される画像の画質が低下してしまう虞がある。
そこで、第1実施形態では、特定画像SIがテキストである場合に、上述したような補正を行い、特定画像SIがテキスト以外のものである場合には、上述したような補正を行わない。
以下、画像データ補正処理のフローについて、図13を参照しつつ説明する。
制御装置50は、RAM53に記憶された画像データIMに基づいて、記録処理により記録される画像に特定画像SIがあるか否かを判断する(A1)。特定画像SIがないと判断した場合(A1:NO)には、本処理を終了する。一方で、特定画像SIがあると判断した場合(A1:YES)には、制御装置50は、特定画像SIの1つを、処理対象の特定画像SIに設定する(A2)。そして、制御装置50は、この処理対象の特定画像SIを、連続する2回の記録パスにおける、先行の記録パスの第1ドット形成範囲KLと、後続の記録パスの第2ドット形成範囲KPとの境界を跨いで記録するか否か判断する(A3)。なお、画像データIMの各ドット要素Eに対応するドットが何番目の記録パスにより形成されるかは、画像データIM上のドット要素EのY方向の位置に応じて判断できる。このため、特定画像SIに対応する特定画像データESIの各ドット要素EのY方向の位置から、特定画像SIを第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界を跨いで記録するか否かを判断することができる。
処理対象の特定画像SIを、第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界を跨いで記録しないと判断した場合(A3:NO)には、A13の処理に移る。一方で、特定画像SIを、上記境界を跨いで記録すると判断した場合(A3:YES)には、制御装置50は、処理対象の特定画像SIがテキストであるか否かを判定する(A4)。特定画像SIがテキストであるか否かは、処理対象の特定画像SIに対応する特定画像データESIに基づいて判断することができる。
処理対象の特定画像SIがテキストでない場合には(A4:NO)、A13の処理に移る。処理対象の特定画像SIがテキストである場合には(A4:YES)、制御装置50は、画像を記録する際の記録モードが双方向記録モードであるか片方向記録モードであるかを判断する(A5)。A5の処理では、例えば、制御装置50は、記録指令とともに入力された、画像を記録する際の記録モードを指示する信号に基づいて上記判断を行う。片方向記録モードで記録を行うと判断した場合(A5:NO)、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの第1境界領域BLの左側の端部、及び第2境界領域BPの右側の端部それぞれを補正部AMに設定する(A6)。このA6の処理が終了するとA10の処理に移る。
A5の処理で、双方向記録モードで記録を行うと判断した場合(A5:YES)には、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの、第1境界領域BLにおける先行の記録パスのキャリッジ11の移動方向の下流側の端部、及び第2境界領域BPにおける後続の記録パスのキャリッジ11の移動方向の下流側の端部それぞれを補正部AMに設定する(A7)。この後、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が、山頂点Ptを中心とした所定範囲内にあるか否かを判断する(A8)。なお、画像データIMの各ドット要素Eに対応するドットが、用紙S上において走査方向のいずれの位置に形成されるかは、画像データIM上のドット要素EのX方向の位置に応じて判断できる。このため、特定画像SIの第1境界領域BL及び第2境界領域BPのドットに対応するドット要素EのX方向の位置から、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が、山頂点Ptを中心とした所定範囲内にあるか否かを判断することができる。
第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が上記所定範囲内ではないと判断した場合(A8:NO)には、A10の処理に移る。一方で、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が上記所定範囲内であると判断した場合(A8:YES)には、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの、第1境界領域BLにおける先行の記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側の端部、及び第2境界領域BPにおける後続の記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側の端部それぞれを補正部AMに設定する(A9)。このA9の処理が終了すると、A10の処理に移る。
A10の処理では、制御装置50は、処理対象の特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にあるか否かを判断する。なお、各ドットを形成する際のキャリッジ11の位置は、画像データIM上の対応するドット要素EのX方向の位置に応じて判断できる。このため、特定画像SIの各ドットに対応するドット要素EのX方向の位置から、特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にあるか否かを判断することができる。
処理対象の特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にないと判断した場合(A10:NO)には、A12の処理に移る。一方で、処理対象の特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にあると判断した場合(A12:YES)には、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの、第1境界領域BLにおける左側の端部、及び第2境界領域BPにおける右側の端部それぞれを補正部AMに設定する(A11)。このA11の処理が終了すると、A12の処理に移る。
A12の処理では、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの特定画像データESIにおいて、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に減少させる補正を行う。このA12の処理が終了すると、A13の処理に移る。
A13の処理では、制御装置50は、記録処理により記録される全ての特定画像SIが処理対象の特定画像SIとして設定されたか否かを判断する。何れかの特定画像SIが処理対象の特定画像SIとして設定されていないと判断した場合(A13:NO)には、A2の処理に戻って、制御装置50は、処理対象の特定画像SIとして未だ設定されていない特定画像SIの1つを、処理対象の特定画像SIとして設定する。一方で、全ての特定画像SIが処理対象の特定画像SIとして設定されたと判断した場合(A13:YES)には、本処理を終了する。
なお、第1実施形態では、S1の画像データ補正処理において、A6,A7,A9,A11のうち少なくとも1つの処理によって補正部AMを設定し、A12のように補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を減らす補正を行ったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「補正吐出」に相当する。また、S1の画像データ補正処理において上記補正を行わなかったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「通常吐出」に相当する。
また、特定画像SIがテキストであるという条件が、本発明の「第1条件」及び「所定条件」に相当する。
第1実施形態によると、特定画像SIがテキストである場合に、ギャップの搬送方向の上下流の差、用紙Sの山部分でのギャップの変動、及び供給チューブ27の反力によるキャリッジ11の姿勢変化が要因で特定画像SIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。即ち、特定画像SIに生じた段差の角部分を面取りすることができる。その結果として、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。
一方で、特定画像SIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
また、第1実施形態では、複数の特定画像SIがある場合に、複数の特定画像SIの各々について個別に、上記補正を行うか否かを判定する。これにより、各特定画像SIについて上記補正を行うか否かを適切に決定することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。大型のプリンタ等の場合には、ユーザによるインクカートリッジ26の着脱作業をプリンタの背面側から行うように構成する場合がある。第2実施形態のプリンタ100においても、図14(a)に示すように、ユーザが、インクカートリッジ26の着脱作業をプリンタ100の背面側から行うことができるように、インクカートリッジ26が着脱可能に装着されるホルダ119は、キャリッジ11よりも後方に配置されている。
また、チューブジョイント128は、インクジェットヘッド12の搬送方向の中間位置よりも、搬送方向の上流側位置に設けられている。4本の供給チューブ127それぞれは、ホルダ119に装着された4つのインクカートリッジ26のそれぞれと、チューブジョイント128とを接続する。4本の供給チューブ127は、チューブジョイント128との接続箇所から左側に延びて、プリンタ1内のインクジェットヘッド12よりも左側において曲がって向きを変えて右側に延びる湾曲部分127aを有している。また、4本の供給チューブ127を支持する接触部材129は、キャリッジ11よりも後方に設けられている。接触部材129の接触面129aは、キャリッジ11が移動可能範囲における左側端部範囲内に位置する状態において、4本の供給チューブ127と接触する。このとき供給チューブ127は接触面129aから反力を受けることで、チューブジョイント128を右側に押圧する。
以上の構成において、キャリッジ11が左側端部範囲内に位置する状態では、キャリッジ11は、ノズル列9の搬送方向の上流側のノズル10が右に、下流側のノズル10が左に移動するように、キャリッジ11が若干回転する。その結果として、キャリッジ11が左側端部範囲内に位置する状態において、記録パスの各々において、ノズル列9の各ノズル10から同一の吐出周期に吐出されたインクにより形成される吐出ドットDの各々の形成位置は、搬送方向の下流側の吐出ドットDほど、走査方向の左側に位置することになる。
そこで、第2実施形態では、キャリッジ11の姿勢変化が要因となり生じる特定画像SIの段差の対策として、制御装置50は、画像データ補正処理において、下記のように特定画像データESIを補正する。即ち、特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にある場合には、図14(b)に示すように、第1境界領域BLの右側の端部、及び、第2境界領域BPの左側の端部それぞれを補正部AMに設定する。そして、特定画像データESIにおいて、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に変更する補正を行う。以上により、キャリッジ11の姿勢変化が要因となり特定画像SIに段差が生じたとしても、その段差を目立ち難くすることができる。
また、第2実施形態では、図15(a)に示すように、プラテン115は、搬送方向における下流側の端部に設けられ、走査方向に延びた揺動軸115aに揺動自在に支持されているとともに、図示しないばねなどに付勢されることによって、用紙Sが搬送されていない状態において、図中実線で示した位置に位置づけられている。プラテン115は、プレート14によって押えられた用紙Sによって下方に押され、図15(a)に一点鎖線で示したように、揺動軸115aを中心に揺動する。また、このとき、プラテン15は、用紙Sの厚みが大きい場合ほど大きく揺動する。また、本実施形態では、ノズル列9の搬送方向において最も下流に位置するノズル10を基準ノズルに設定している。そして、記録パスの各々において当該基準ノズルから吐出されたインクにより形成されるドット列の走査方向の位置が、互いに同じ位置となるように、インクの吐出タイミングが設定されている。このため、双方向記録モードの場合には、図15(b)に示すように、第2境界領域BPが、第1境界領域BLに対して、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の下流側に全体的にずれることになる。
そこで、ギャップの搬送方向の上下流の差に起因して生じる特定画像SIの段差の対策として、制御装置50は、画像データ補正処理において、下記のように特定画像データESIを補正する。即ち、双方向記録モードの場合には、図15(b)に示すように、制御装置50は、第1境界領域BLの、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の下流側の端部、及び、第2境界領域BPの、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の下流側の端部それぞれを補正部AMに設定する。そして、制御装置50は、特定画像データESIにおいて、補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に変更する補正を行う。
なお、片方向記録モードの場合には、図15(c)に示すように、制御装置50は、第1境界領域BLにおけるRVS方向の下流側の端部(右側の端部)、及び第2境界領域BPにおけるRVS方向の上流側の端部(左側の端部)それぞれを補正部AMとする。
ただし、第2実施形態においても、特定画像SIがテキストである場合に、上述したような吐出量の補正を行い、特定画像SIがテキスト以外のものである場合には、上述したような吐出量の補正を行わない。
以下、画像データ補正処理のフローについて、図16を参照しつつ説明する。
制御装置50は、まず、上述のA1~A5の処理と同様なB1~B5の処理を実行する。そして、B5の処理において、片方向記録モードで記録を行うと判断した場合(B5:NO)、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの第1境界領域BLの右側の端部、及び第2境界領域BPの左側の端部それぞれを補正部AMに設定する(B6)。このB6の処理が終了するとB10の処理に移る。
B5の処理で、双方向記録モードで記録を行うと判断した場合(B5:YES)には、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの、第1境界領域BLにおける先行の記録パスのキャリッジ11の移動方向の下流側の端部、及び第2境界領域BPにおける後続の記録パスのキャリッジ11の移動方向の下流側の端部それぞれを補正部AMに設定する(B7)。この後、制御装置50は、上述のA8,A9の処理と同様なB8,B9の処理を実行してB10の処理に移る。
B10の処理では、制御装置50は、処理対象の特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にあるか否かを判断する。そして、処理対象の特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にないと判断した場合(B10:NO)には、B12の処理に移る。一方で、処理対象の特定画像SIを記録する際の、キャリッジ11の位置が左側端部範囲内にあると判断した場合(B10:YES)には、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの、第1境界領域BLにおける右側の端部、及び第2境界領域BPにおける左側の端部それぞれを補正部AMに設定する(B11)。このB11の処理が終了すると、B12の処理に移る。
そして、制御装置50は、上述のA12,A13の処理と同様なB12,B13の処理を実行する。
なお、第2実施形態では、S1の画像データ補正処理において、B6,B7,B9,B11のうち少なくとも1つの処理によって補正部を設定し、B12のように補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を減らす補正を行ったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「補正吐出」に相当する。また、S1の画像データ補正処理において上記補正を行わなかったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「通常吐出」に相当する。
また、特定画像SIがテキストであるという条件が、本発明の「第1条件」及び「所定条件」に相当する。
第2実施形態においても、特定画像SIがテキストである場合に、ギャップの搬送方向の上下流の差、用紙Sの山部分でのギャップの変動、及び供給チューブ127の反力によるキャリッジ11の姿勢変化が要因で特定画像SIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。即ち、特定画像SIに生じた段差の角部分を面取りすることができる。その結果として、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。一方で、特定画像SIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
また、第2実施形態でも、複数の特定画像SIがある場合に、複数の特定画像SIの各々について個別に、上記補正を行うか否かを判定する。これにより、各特定画像SIについて上記補正を行うか否かを適切に決定することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、制御装置50が、プリンタ1内で発生する気流が要因で生じる特定画像SIの段差の対策を、画像データ補正処理において行う。なお、以下では便宜上、気流以外の要因によっては、特定画像SIに段差は生じないものとして説明する。
まず、プリンタ1内で発生する気流について説明する。キャリッジ11が走査方向に移動すると、このキャリッジ11の移動に伴い、プリンタ1内には、キャリッジ11の移動方向に流れる気流が発生する。そして、この気流は、キャリッジ11の移動が終了しても、しばらくの間は残っている。このため、N回目(Nは正の整数)の記録パスの直前において、キャリッジ11をN回目の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向とは異なる方向に移動させていた場合には、当該N回目の記録パスを行う際には、キャリッジ11の移動方向とは逆方向の気流が残っている。その結果として、図17(a)に示すように、気流によって、N回目の記録パスにより形成されるドットの形成位置が、理想の形成位置(点線で図示)よりもキャリッジ11の移動方向の上流側にずれる。また、気流の大きさは、時間が経過するとともに小さくなる。このため、N回目の記録パスにより形成されるドットの形成位置の、理想の形成位置に対するズレ量は、N回目の記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側ほど大きくなる。
ここで、片方向記録モードでは、連続する2回の記録パスの間において、上述のリターン動作を行っている。このため、2回目以降の記録パスを行う際には、リターン動作によって生じた気流が残っている。従って、2回目以降の記録パスの各々の記録パスにより形成されるドットの形成位置は、この気流によって、理想の形成位置よりもキャリッジ11の移動方向の上流側にずれることになる。しかしながら、片方向記録モードでは、各記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向は常にRVS方向であるため、各記録パスにより形成されるドットの形成位置は、理想の形成位置に対して左側に一律ずれることになる。その結果として、片方向記録モードでは、特定画像SIの第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して、気流の影響を受けてずれる可能性は低い。
一方で、双方向記録モードでは、連続する2回の記録パスにおける先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向と、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向とは互いに異なる。このため、連続する2回の記録パスの各々において形成されるドットの形成位置が、理想の形成位置に対してずれる方向は、互いに異なる。その結果として、図17(b)に示すように、双方向記録モードでは、特定画像SIの第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して、気流の影響を受けてずれる可能性が高い。
第3実施形態では、気流が要因で生じる特定画像SIの段差の対策として、制御装置50は、画像データ補正処理において、下記のように特定画像データESIを補正する。即ち、記録処理の記録モードが双方向記録モードである場合には、制御装置50は、第1境界領域BLの、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部、及び、第2境界領域BPの、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部それぞれを補正部AMに設定する。なお、1回目の記録パスの直前においてキャリッジ11が1回目の記録パスのキャリッジ11の移動方向とは異なる方向に移動していなかった場合、1回目の記録パスを行う際には気流は生じておらず、第1境界領域BL各ドットの形成位置は、理想の形成位置に記録されることになる。従って、第1境界領域BLが1回目の記録パスにより記録される場合において、この1回目の記録パスの直前にキャリッジ11が移動していないときには、第1境界領域BLの端部を補正部AMには設定しない。以下、説明の便宜上、1回目の記録パスの直前においてキャリッジ11が1回目の記録パスのキャリッジ11の移動方向とは異なる方向に移動しているものとして説明する。
ここで、上述したように、気流の影響によるドットの形成位置の理想の形成位置に対するズレ量は、記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側ほど大きくなる。そこで、制御装置50は、第1境界領域BLの記録位置が、第1境界領域BLを記録するときの記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側に位置するほど、補正部AMの面積を大きくする。同様に、制御装置50は、第2境界領域BPの記録位置が、第2境界領域BPを記録するときの記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側に位置するほど、補正部AMの面積を大きくする。これにより、特定画像SIの段差をより目立ち難くすることができる。
具体的には、本実施形態では、補正部AMの面積として設定される大きさは、「大面積」、「小面積」、「零」の3段階である。面積の大きさが「大面積」の補正部AMは、走査方向の長さが2ドット分の長さであり、搬送方向の長さが3ドット分の長さである。面積の大きさが「小面積」の補正部AMは、走査方向の長さが1ドット分の長さであり、搬送方向の長さが3ドット分の長さである。面積が「零」の補正部AMは、走査方向の長さ及び搬送方向の長さがともに零である。即ち、第1境界領域BL及び第2境界領域BPにおいて、面積が「零」の補正部AMが設定された走査方向の端部では、吐出ドットDの大きさを小さくする補正は行われない。
また、本実施形態では、用紙Sを、走査方向に沿って、左領域、中央領域、右領域の3つの領域に分ける。そして、制御装置50は、図17(b)に示すように、第1境界領域BL及び第2境界領域BPのうち、キャリッジ11の移動方向がRVS方向の記録パスにより記録される境界領域に対して設定された補正部AMの面積を、記録位置が左領域である場合には「大面積」、中央領域である場合には「小面積」、右領域である場合には「零」にする。一方で、第1境界領域BL及び第2境界領域BPのうち、キャリッジ11の移動方向がFWD方向の記録パスにより記録される境界領域に対して設定された補正部AMの面積を、記録位置が右領域である場合には「大面積」、中央領域である場合には「小面積」、左領域である場合には「零」にする。
一方で、記録処理の記録モードが片方向記録モードである場合には、上述の気流が要因で生じる特定画像SIの段差に対する補正は行わない。ただし、プリンタ1で用紙Sを記録するときには、上記の通り、用紙Sが搬送方向に搬送される間に、用紙Sのローラ対13,16による支持状態が、(i)搬送ローラ対13(本発明の「第1搬送ローラ対」)にニップされ、且つ、排出ローラ対16(本発明の「第2搬送ローラ対」)にはニップされない状態、(ii)ローラ対13,16の両方にニップされた状態、及び、(iii)搬送ローラ対13にニップされず、且つ、排出ローラ対16にニップされる状態、の順に変わる。
そして、片方向記録モードであっても、先行の記録パスで上記(i)の状態であり、後続の記録パスで上記(ii)である場合、及び、先行の記録パスで上記(ii)の状態であり、後続の記録パスで上記(iii)である場合には、先行の記録パスと後続の記録パスとの間の搬送動作での用紙Sの搬送時に、用紙Sが走査方向にずれやすい。そして、用紙Sが走査方向にずれると、特定画像SIの第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して走査方向にずれることになる。
そこで、記録処理の記録モードが片方向記録モードである場合でも、先行の記録パスと後続の記録パスとで、ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わる場合には、第1境界領域BLの走査方向の一方側の端部、及び、第2境界領域BPの走査方向の他方側の端部を、それぞれ、補正部に設定する。ここで、用紙Sが後続の記録パスの際に、先行の記録パスでの位置から走査方向の右側にずれる場合には、走査方向の一方側が右側であり、走査方向の他方側が左側である。また、用紙Sが先行の記録パスと後続の記録パスとの間で走査方向の左側にずれる場合には、走査方向の一方側が左側であり、走査方向の他方側が右側である。
ここで、用紙Sが搬送されて、(i)の状態から(ii)の状態に変わるとき、及び、(ii)の状態から(iii)の状態に変わるときに、それぞれ、用紙Sが走査方向の右側と左側のどちらにずれるかは、プリンタ1によって変わってくるが、予め実験などからわかる。そこで、例えば、走査方向の上記一方側及び上記他方側のデータを、予めフラッシュメモリ54に記憶させておく。
また、このときには、補正部の面積を、ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わるときの用紙Sの走査方向へのずれの程度に応じた面積とすればよい。例えば、補正部の面積を、上記「小面積」とする。
また、記録処理の記録モードが片方向記録モードであり、先行の記録パスと後続の記録パスとで、ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わらない場合には、制御装置50は、画像データ補正処理において、特定画像データESIの補正を行わない。
また、第3実施形態においても、特定画像SIがテキストである場合に、上述したような吐出量の補正を行い、特定画像SIがテキスト以外のものである場合には、上述したような吐出量の補正を行わない。
以下、第3実施形態の画像データ補正処理のフローについて、図18を参照しつつ説明する。
制御装置50は、上述のA1~A3と同様なC1~C3の処理を実行する。そして、C3の処理において、処理対象の特定画像SIを、第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界を跨いで記録しないと判断した場合には(C3:NO)、C14の処理に移る。一方、C3の処理において、処理対象の特定画像SIを、第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界を跨いで記録すると判断した場合には(C3:YES)、制御装置50は、処理対象の特定画像SIが、テキストであるか否かを判定する(C4)。処理対象の特定画像SIがテキストでない場合には(C4:NO)、C14の処理に移る。
処理対象の特定画像SIがテキストである場合には(C4:YES)、制御装置50は、画像を記録する際の記録モードが、双方向記録モードであるか片方向記録モードであるかを判断する(C5)。片方向記録モードであると判断した場合(C5:NO)には、制御装置50は、先行の記録パスと後続の記録パスとで、ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わるか否かを判断する(C6)。ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わらない場合には(C6:NO)、C14の処理に移る。ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わる場合には(C6:YES)、制御装置50は、第1境界領域BLの走査方向の上記一方側の端部、及び、第2境界領域BPの走査方向の上記他方側の端部を、それぞれ、補正部に設定し(C7)、C13の処理に移る。
双方向記録モードであると判断した場合(C5:YES)には、処理対象の特定画像SIの第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が、用紙S上の左領域であるか否かを判断する(C8)。記録位置が、用紙S上の左領域であると判断した場合(C8:YES)には、制御装置50は、第1境界領域BL及び第2境界領域BPのうち、キャリッジ11の移動方向がRVS方向の記録パスにより記録される境界領域の左側の端部に、面積の大きさが「大面積」の補正部AMを設定し、キャリッジ11の移動方向がFWD方向の記録パスにより記録される境界領域の右側の端部に、面積の大きさが「零」の補正部AMを設定する(C9)。このC9の処理が終了すると、C13の処理に移る。
また、C8の処理において、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が、用紙S上の左領域ではないと判断した場合(C8:NO)には、上記記録位置が用紙S上の中央領域か右領域かを判断する(C10)。記録位置が用紙S上の中央領域であると判断した場合(C10:YES)には、制御装置50は、第1境界領域BLにおける先行の記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側の端部、及び第2境界領域BPにおける後続の記録パスのキャリッジ11の移動方向の上流側の端部それぞれに、面積の大きさが「小面積」の補正部AMを設定する(C11)。このC11の処理が終了すると、C13の処理に移る。
C10の処理において、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの記録位置が用紙S上の右領域であると判断した場合(C10:NO)には、制御装置50は、制御装置50は、第1境界領域BL及び第2境界領域BPのうち、キャリッジ11の移動方向がFWD方向の記録パスにより記録される境界領域の右側の端部に、面積の大きさが「大面積」の補正部AMを設定し、キャリッジ11の移動方向がRVS方向の記録パスにより記録される境界領域の左側の端部に、面積の大きさが「零」の補正部AMを設定する(C12)。このC12の処理が終了すると、C13の処理に移る。
そして、制御装置50は、上述のA12,A13の処理と同様な、C13,C14の処理を実行する。
なお、第3実施形態では、S1の画像データ補正処理において、C7,C9,C11,C12のうち少なくとも1つの処理によって補正部AMを設定し、C13において補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を減らす補正を行ったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「補正吐出」に相当する。また、S1の画像データ補正処理において上記補正を行わなかったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「通常吐出」に相当する。
また、特定画像SIがテキストであるという条件が、本発明の「第1条件」に相当する。また、記録モードが双方向記録モードであるという条件が、本発明の「第2条件」に相当する。そして、上記第1条件と上記第2条件とを合わせたものが、本発明の「所定条件」に相当する。
また、第3実施形態では、記録モードが片方向記録モードである場合には、上記所定条件(第2条件)を満たさないが、この場合であっても、先行の記録パスと後続の記録パスとでローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わる場合には、C7の補正部AMの設定を行う。
第3実施形態によると、特定画像SIがテキストであり、双方向記録モードである場合に、気流が要因で特定画像SIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。即ち、特定画像SIに生じた段差の角部分を面取りすることができる。その結果として、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。変形例として、各補正部AMの面積は、全て同じ大きさであってもよい。この場合、画像データ補正処理の処理内容を簡易化することができる。
一方で、特定画像SIがテキスト以外のものである場合、及び、特定画像SIがテキストであり、且つ、記録モードが片方向記録モードである場合には、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
ただし、特定画像SIがテキストであり、片方向記録モードである場合であっても、先行の記録パスと後続の記録パスとでローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わる場合には、先行の記録パスと後続の記録パスとの間での用紙Sの走査方向のずれにより特定画像SIに段差が生じても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。
また、第3実施形態でも、複数の特定画像SIがある場合に、複数の特定画像SIの各々について個別に、上記補正を行うか否かを判定する。これにより、各特定画像SIについて上記補正を行うか否かを適切に決定することができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。上述したように、特定画像SIを第1ドット形成範囲KL及び第2ドット形成範囲KPの境界を跨いで記録する際には、種々の要因により、特定画像SIの第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して走査方向にずれる。しかしながら、このときのズレ方向は、その要因によって異なっている。このため、第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して走査方向にずれる要因として複数の要因が想定される際には、第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して走査方向のいずれの方向にずれるのか事前に判断することができない場合がある。
そこで、第4実施形態では、制御装置50は、特定画像SIの第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して走査方向のいずれの方向にずれたとしても、特定画像SIに生じた段差を目立ち難くする処理を行う。即ち、特定画像SIを第1ドット形成範囲KL及び第2ドット形成範囲KPの境界を跨いで記録する際には、第1境界領域BLの走査方向の両端部、及び第2境界領域BPの走査方向の両端部それぞれを補正部AMに設定する。ただし、第4実施形態においても、特定画像SIがテキストである場合に、上述したような補正を行い、特定画像SIがテキスト以外のものである場合には、上述したような補正を行わない。
以下、第4実施形態の画像データ補正処理のフローについて、図19を参照しつつ説明する。
制御装置50は、まず、上述のA1~A4の処理と同様なD1~D4の処理を実行する。そして、D4の処理において、処理対象の特定画像SIがテキストであると判断した場合(D4:NO)には、D7の処理に移る。D4の処理において、処理対象の特定画像SIがテキストであると判断した場合(D4:YES)には、制御装置50は、処理対象の特定画像SIの第1境界領域BLの走査方向の両端部、並びに、第2境界領域BPの走査方向の両端部それぞれを補正部AMに設定し(D5)、D6の処理に移る。D6,D7の処理は、上述のA12,A13の処理と同様である。
なお、第4実施形態では、S1の画像データ補正処理において、D5の処理によって補正部AMを設定し、D6において補正部AMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を減らす補正を行ったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「補正吐出」に相当する。また、S1の画像データ補正処理において上記補正を行わなかったときの、S3の吐出処理による記録パスでの、ノズル10から用紙Sに向けたインクの吐出が、本発明の「通常吐出」に相当する。また、特定画像SIがテキストであるという条件が、本発明の「第1条件」及び「所定条件」に相当する。
以上、第4実施形態によると、特定画像SIがテキストである場合に、特定画像SIの第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して走査方向のいずれの方向にずれたとしても、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。加えて、画像データ補正処理の処理内容を簡易化することができる。一方で、特定画像SIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
また、第4実施形態でも、複数の特定画像SIがある場合に、複数の特定画像SIの各々について個別に、上記補正を行うか否かを判定する。これにより、各特定画像SIについて上記補正を行うか否かを適切に決定することができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態では、図20(a)に示すように、連続する2回の記録パスの間に行われる搬送動作において、先行の記録パスの第1ドット形成範囲KLと、後続の記録パスの第2ドット形成範囲KPとが部分的に重なるように、用紙Sをノズル列9の長さLnよりも短い長さだけ搬送する。そして、制御装置50は、第1ドット形成範囲KL及び第2ドット形成範囲KPが互いに重なる重複領域Fでは、この2回の記録パスで、相互に補完して画像を記録する。即ち、重複領域Fでは、走査方向に沿った複数のドットからなる1ライン分のライン画像を、連続する2回の記録パスで記録する、いわゆるマルチスキャン形式で記録を行う。このとき、これら2回の記録パスの各々において、異なるノズル10を使用し、マスクデータに基づいて、ライン画像のうち異なる一部分を間引いた間引き画像を記録する。
具体的には、先行の記録パスでは、画像データIMの、当該先行の記録パスの第1ドット形成範囲KLに対応する画像データIML(図21参照)を、第1マスクデータで間引いた画像データに基づいて間引き画像を記録する。また、後続の記録パスでは、画像データIMの、当該後続の記録パスの第2ドット形成範囲KPに対応する画像データIMP(図21参照)を、第1マスクデータと相補関係にある第2マスクデータで間引いた画像データに基づいて間引き画像を記録する。これにより、重複領域Fにおいて、連続する2回の記録パスの各々で記録される間引き画像同士が重ね合わされてライン画像が完成する。このように、重複領域Fでは、マルチスキャン形式により画像を記録することで、用紙Sの搬送量のばらつき等に起因して、連続する2回の記録パスの画像のつなぎ目部分に走査方向に沿って延びる白スジや濃度ムラなどの画質劣化が生じることを防止することができる。
しかしながら、本実施形態においても、図20(b)に示すように、特定画像SIを、重複領域Fを跨って記録する際に、種々の要因により、当該特定画像SIに段差が生じ得る。そこで、本実施形態では、図20(c)に示すように、特定画像SIにおける、重複領域Fに記録される画像領域IFの走査方向の両端部を補正部FMに設定する。この補正部FMの搬送方向の長さは、重複領域Fの搬送方向の長さに等しい。なお、図20(b),(c)では、便宜上、先行の記録パスにより形成される吐出ドットDを白塗りの丸で図示し、後行の記録パスにより形成される吐出ドットDを黒塗りの丸で図示している。
また、本実施形態では、画像の段差をより目立ち難くするために、先行の記録パスで吐出ドットDを形成するときと、後続の記録パスで吐出ドットDを形成するときとで、補正部FMの面積の大きさは変えないが、その形状を若干変更している。即ち、図21からも分かるように、先行の記録パスでは、補正部FMの走査方向の長さを、搬送方向の上流側ほど長くしている。一方で、後続の記録パスでは、補正部FMの走査方向の長さを、搬送方向の下流側ほど長くしている。なお、図21では、補正部FM、及び後述する補正部OMに属するドットに対応するドット要素Eをハッチングで塗りつぶして図示している。
加えて、特定画像SIにおける、第1ドット形成範囲KLの重複領域F以外の非重複領域に記録される画像領域IOL、及び、第2ドット形成範囲KPの重複領域F以外の非重複領域に記録される画像領域IOPにも補正部OMを設定する。具体的には、画像領域IOL内の重複領域Fと隣接する境界領域BOLの走査方向の両端部を補正部OMに設定する。また、画像領域IOPの重複領域Fと隣接する境界領域BOPの走査方向の両端部を補正部OMに設定する。この補正部OMの面積は、補正部FMの面積よりも小さい。
そして、制御装置50は、図21に示すように、特定画像データESIにおいて、補正部FM及び補正部OMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に変更する補正を行う。
以上により、第5実施形態においても、特定画像SIがテキストである場合に、特定画像SIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。即ち、特定画像SIに生じた段差の角部分を面取りすることができる。その結果として、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。一方で、特定画像SIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
また、第5実施形態でも、複数の特定画像SIがある場合に、複数の特定画像SIの各々について個別に、上記補正を行うか否かを判定する。これにより、各特定画像SIについて上記補正を行うか否かを適切に決定することができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。第1~第5実施形態のプリンタは、用紙Sの搬送方向と交差する走査方向に、インクジェットヘッド12を搭載したキャリッジ11を移動しながら用紙Sに画像を記録するいわゆるシリアルタイプのプリンタであったが、第6実施形態のプリンタ200は、インクジェットヘッド222を固定した状態で、搬送装置201により搬送される用紙Sに対して画像を記録するラインタイプのプリンタである。
プリンタ200は、図22(a)に示すように、搬送装置201、記録ヘッドユニット220、及び制御装置250を備えている。搬送装置201は、2つの搬送ローラ202,203、及びプラテン204を有する。
プラテン204は、その上面において、2つの搬送ローラ202,203によって搬送される用紙Sを支持する。2つの搬送ローラ202は、このプラテン204に対して後側と前側にそれぞれ配置されている。2つの搬送ローラ202は、搬送モータ(不図示)によってそれぞれ駆動され、プラテン204上の用紙Sを左右方向と直交する搬送方向に搬送する。
記録ヘッドユニット220は、プラテン204の上方に配置されている。記録ヘッドユニット220には、図示しないインクカートリッジから4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクが供給される。記録ヘッドユニット220は、左右方向に並んで配置された2つのインクジェットヘッド222を備えている。2つのインクジェットヘッド222は、それぞれが支持部材223に保持されている。
2つのインクジェットヘッド222のうち、左側のインクジェットヘッド222は、搬送方向において後側に配置されており、右側のインクジェットヘッド222が前側に配置されている。また、2つのインクジェットヘッド222(より詳細には、その左右方向における中心位置)は互いに、左右方向において異なる位置に配置されている。加えて、2つのインクジェットヘッド222のそれぞれは、ノズル210が配置された配置領域222aが、搬送方向において重ならないように配置されている。即ち、2つのインクジェットヘッド222の配置領域222aは、左右方向において異なる位置に配置されている。
2つのインクジェットヘッド222は、上述のインクジェットヘッド12と略同様な構造である。1つのインクジェットヘッド222は、その下面のインク吐出面に複数のノズル210が形成されている。より詳細には、複数のノズル210が、左右方向に沿って一列に配列されたノズル列229が4つ形成されている。さらにこの4つのノズル列229は、搬送方向に並んでいる。複数のノズル210からは、搬送方向の下流側のノズル列229を形成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
制御装置250は、上述の制御装置50と略同様な構成であり、画像データIMを記憶するRAMなどを有している。また、制御装置250は、画像データIMに係る画像を用紙Sに記録する記録処理においては、搬送装置201に用紙Sを前方に搬送しつつ、2つのインクジェットヘッド222のノズル210からインクを吐出させて用紙S上にドットを形成する。
なお、本実施形態では、上述したように、2つのインクジェットヘッド222の配置領域222aは搬送方向において重なっていない。このため、図22(b)に示すように、用紙S上において、左側のインクジェットヘッド222によりドットが形成されるドット形成範囲K1と、右側のインクジェットヘッド222によりドットが形成されるドット形成範囲K2とは、互いに重ならずに左右方向に隣接することになる。
以上の構成において、特定画像LIをドット形成範囲K2とドット形成範囲K2との境界を跨って記録する際には、2つのインクジェットヘッド222間でのインクの吐出特性の差や組付位置のズレ等の要因により、当該特定画像LIに段差が生じ得る。即ち、特定画像LIにおけるドット形成範囲K1に記録される画像領域I1と、特定画像LIにおけるドット形成範囲K2に記録される画像領域I2との間で段差が生じることになる。より詳細には、画像領域I1内のドット形成範囲K2と隣接する境界領域B1が、画像領域I2内のドット形成範囲K1と隣接する境界領域B2に対して、全体的に搬送方向にずれることになる。なお、特定画像LIは、複数の吐出ドットDからなり、搬送方向及び左右方向において複数ドット分の幅を持つ画像である。特定画像LIとしては、例えば、不吐出ドットに搬送方向の両側から挟まれ、搬送方向に複数ドット分(例えば、6ドット分)の幅を持つ、左右方向に沿って延びる線(例えばテキストを構成する線)が挙げられる。また、境界領域B1の左右方向の長さは、ドット形成範囲K1の左右方向の長さよりも短い。同様に、境界領域B2の左右方向の長さは、ドット形成範囲K2の左右方向の長さよりも短い。
制御装置250は、特定画像LIの段差の対策として、画像データIMを補正する画像データ補正処理を行う。なお、上述の第1~第4実施形態では連続する2回の記録パスのドット形成範囲のつなぎ目部分で生じる画像の段差を問題にしており、本実施形態では2つのインクジェットヘッドのドット形成範囲のつなぎ目部分で生じる画像の段差を問題にしており、対象とする画像の段差は異なるものの、それに対する対策は基本的には変わらない。
本実施形態では、制御装置250は、境界領域B1が境界領域B2に対して搬送方向の上流側及び下流側のいずれ側にずれたとしても、特定画像LIの段差を目立ち難くするために、図22(c)に示すように、境界領域B1の搬送方向の両端部、及び境界領域B2の搬送方向の両端部それぞれを補正部GMに設定する。補正部GMは、搬送方向の長さが左右方向の長さよりも短い。そして、制御装置250は、画像データIMにおいて、補正部GMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を少なくする補正を行う。
ここで、第6実施形態においては、上記のように補正部GMを設定し、補正部GMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を減らす補正を行う場合、この補正を行わない場合と比較して、補正部GMの濃度が薄くなる。一方、特定画像LIがテキストである場合には、補正部GMと搬送方向に隣接する領域のデューティが低いため、第1実施形態で説明したのと同様、補正部GMの濃度が薄くなっていることが目立ちにくい。これに対して、特定画像LIが絵や写真等テキスト以外のものである場合には、補正部GMの搬送方向に隣接する領域におけるデューティが高く、補正部GMと上記デューティが高い部分とが搬送方向に隣接して並ぶことになるため、これらの部分の濃度差により、補正部GMの濃度が薄くなっていることが目立ちやすい。そして、この場合には、上記補正を行うことにより、かえって記録される画像の画質が低下してしまう虞がある。
そこで、第6実施形態では、特定画像LIがテキストである場合に、上述したような補正を行い、特定画像LIがテキスト以外のものである場合には、上述したような補正を行わない。なお、第6実施形態では、特定画像LIがテキストであるという条件が、本発明の「所定条件」に相当する。
そして、第6実施形態では、特定画像LIがテキストである場合に、以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、特定画像LIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。即ち、特定画像LIに生じた段差の角部分を面取りすることができる。その結果として、特定画像LIの段差を目立ち難くすることができる。一方で、特定画像LIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。第7実施形態のプリンタ300は、第6実施形態のプリンタ200と同様にラインタイプのプリンタである。しかしながら、第7実施形態のプリンタ300は、図23(a)に示すように、2つのインクジェットヘッド222の配置領域222aは、搬送方向において部分的に重なるように配置されている。このため、図23(b)に示すように、用紙S上において、左側のインクジェットヘッド222によりドットが形成されるドット形成範囲K1と、右側のインクジェットヘッド222によりドットが形成されるドット形成範囲K2とは、部分的に重なることになる。そして、制御装置250は、ドット形成範囲K1及びドット形成範囲K2が互いに重なる重複領域Jでは、2つのインクジェットヘッド222で、相互に補完して画像を記録する。即ち、重複領域Jでは、搬送方向に沿った複数のドットからなる1ライン分のライン画像を、2つのインクジェットヘッド222の各々において、マスクデータに基づいて、ライン画像のうち異なる一部分を間引いた間引き画像を記録する。これにより、重複領域Jにおいて、2つのインクジェットヘッド222の各々で記録される間引き画像同士が重ね合わされてライン画像が完成する。このように、重複領域Jでは、2つのインクジェットヘッド222により画像を記録することで、インクジェットヘッド222の組付誤差等に起因して、2つのインクジェットヘッド222の画像のつなぎ目部分において、搬送方向に沿って延びる白スジや濃度ムラなどの画質劣化が生じることを防止することができる。なお、図23(b),(c)では、便宜上、左側のインクジェットヘッド222により形成される吐出ドットDを黒塗りの丸で図示し、右側のインクジェットヘッド222により形成される吐出ドットDを白塗りの丸で図示している。
以上の構成において、特定画像LIを、重複領域Jを跨って記録する際には、2つのインクジェットヘッド222間でのインクの吐出特性の差や組付位置のズレ等の要因により、当該特定画像LIに段差が生じ得る。そこで、制御装置250は、特定画像LIの段差の対策として、画像データIMを補正する画像データ補正処理を行う。なお、上述の第5実施形態では、連続する2回の記録パスのドット形成範囲の重複領域Fで生じる画像の段差を問題にしており、本実施形態では2つのインクジェットヘッドの重複領域Jで生じる画像の段差を問題にしており、対象とする画像の段差は異なるものの、それに対する対策は基本的には変わらない。
本実施形態では、制御装置250は、図23(c)に示すように、特定画像LIにおける、重複領域Jに記録される画像領域IJの搬送方向の両端部を補正部PMに設定する。この補正部PMの左右方向の長さは、重複領域Jの左右方向の長さに等しい。
また、本実施形態では、左側のインクジェットヘッド222で吐出ドットDを形成するときと、右側のインクジェットヘッド222で吐出ドットDを形成するときとで、補正部PMの面積の大きさは変えないが、その形状を若干変更している。即ち、左側のインクジェットヘッド222では、補正部PMの搬送方向の長さを、右に向かうに従い長くしている。一方で、右側のインクジェットヘッド222では、補正部PMの搬送方向の長さを、左に向かうに従い長くしている。
加えて、特定画像LIにおける、ドット形成範囲K1の重複領域J以外の非重複領域に記録される画像領域IO1、及び、ドット形成範囲K2の重複領域J以外の非重複領域に記録される画像領域IO2にも補正部QMを設定する。具体的には、画像領域IO1内の重複領域Jと隣接する境界領域BO1の搬送方向の両端部を補正部QMに設定する。また、画像領域IO2の重複領域Jと隣接する境界領域BO2の搬送方向の両端部を補正部QMに設定する。この補正部QMの面積は、補正部PMの面積よりも小さい。
そして、制御装置250は、画像データIMにおいて、補正部PM及び補正部QMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を少なくする補正を行う。
ただし、第7実施形態においても、特定画像LIがテキストである場合に、上述したような吐出量の補正を行い、特定画像LIがテキスト以外のものである場合には、上述したような吐出量の補正を行わない。
そして、第7実施形態では、特定画像LIがテキストである場合に、以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、特定画像LIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを小さくすることができる。即ち、特定画像LIに生じた段差の角部分を面取りすることができる。その結果として、特定画像LIの段差を目立ち難くすることができる。一方で、特定画像LIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。第8実施形態のプリンタは、第1実施形態と同様にシリアルタイプのプリンタ1である。しかしながら、一吐出周期内にノズル10から吐出可能なインクの吐出量は、上記「特大滴」、「大滴」、「中滴」、「小滴」、「不吐出」の5種類に加えて、「超特大滴」がある。「超特大滴」は、「特大滴」よりも量が多い吐出量である。制御装置50は、「特大滴」と比べて、一吐出周期内においてノズル10から吐出させる液滴の数、及び、一液滴当たりの液滴量(体積)の少なくとも何れか一方が多くなるようにインクジェットヘッド12のアクチュエータを駆動させることで、「超特大滴」のインクをノズル10から吐出させることができる。
また、第8実施形態では、制御装置50が行う画像データ補正処理の処理内容が、上述の第1実施形態と異なる。詳細には、上述の第1実施形態では、例えば、第1境界領域BLが、第2境界領域BPに対して、左側に全体的にずれることが想定される場合には、図10(a)に示すように、第1境界領域BLの左側の端部、及び、第2境界領域BPの右側の端部それぞれを補正部AMに設定していた。一方で、第8実施形態では、第1境界領域BLが、第2境界領域BPに対して左側に全体的にずれることが想定される場合には、図24(a)に示すように、第1境界領域BLにおける右側の端部、及び、第2境界領域BPにおける左側の端部それぞれを補正部HMに設定する。同様に、第1境界領域BLが、第2境界領域BPに対して右側に全体的にずれることが想定される場合には、第1境界領域BLにおける左側の端部、及び、第2境界領域BPにおける右側の端部それぞれを補正部HMに設定する。この補正部HMの形状は、上記補正部AMと同様に、特定画像SIが走査方向に6ドット分の幅を持つ線である場合には、例えば、走査方向の長さが1ドット分の長さであり、搬送方向の長さが3ドット分の長さである矩形形状に設定される。
そして、第8実施形態では、制御装置50は、特定画像データESIにおいて、補正部HMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を多くする補正を行う。具体的には、補正部HMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「超特大滴」に変更する補正を行う。
以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、図24(a)に示すように、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの補正部HMに属する吐出ドットDの大きさを大きくすることができる。その結果として、特定画像SIに段差が生じたとしても、当該特定画像SIの段差を小さくすることができる。これにより、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。
ここで、上記のように補正部HMを設定し、補正部HMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を増やす補正を行う場合、この補正を行わない場合と比較して、補正部HMの濃度が濃くなる。
一方、特定画像SIがテキストである場合には、上述したように、特定画像SIの周囲に空白(ドット要素Eに設定された吐出量が零(不吐出)のドット)が多く、補正部HMと走査方向に隣接する領域のデューティが低い。そして、この場合には、補正部HMが上記デューティの低い領域と走査方向に隣接することになるため、補正部HMの濃度が濃くなっていることが目立ちにくい。
これに対して、特定画像SIが絵や写真等テキスト以外のものである場合には、図25に示すように、補正部HMと走査方向に隣接する領域のデューティが高い。ここで、図25は、図24(a)に対応する、特定画像SIが絵や写真等テキスト以外のものである場合のドットの配置の例を示す図である。そして、この場合には、濃度が濃くなった補正部HMと上記デューティの高い部分とが走査方向に隣接して並ぶことになるため、これらの部分間の濃度差により、補正部HMの濃度が濃くなっていることが目立ちやすい。そして、この場合には、上記補正を行うことにより、かえって記録される画像の画質が低下してしまう虞がある。
そこで、第8実施形態では、特定画像SIがテキストである場合に、上述したような補正を行い、特定画像SIがテキスト以外のものである場合には、上述したような吐出量の補正を行わない。
このように、第8実施形態によると、特定画像SIがテキストである場合に、ギャップの搬送方向の上下流の差、用紙Sの山部分でのギャップの変動、及び供給チューブ27の反力によるキャリッジ11の姿勢変化が要因で特定画像SIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを大きくすることにより、特定画像SIの段差を目立ち難くすることができる。一方で、特定画像SIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
また、第1実施形態では、複数の特定画像SIがある場合に、複数の特定画像SIの各々について個別に、上記補正を行うか否かを判定する。これにより、各特定画像SIについて上記補正を行うか否かを適切に決定することができる。
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について説明する。第9実施形態では、第8実施形態と同様に、一吐出周期内にノズル10から吐出可能なインクの吐出量として、上記「特大滴」、「大滴」、「中滴」、「小滴」、「不吐出」の5種類に加えて、「超特大滴」がある。また、第9実施形態のプリンタは、第6実施形態と同様にラインタイプのプリンタ200である。従って、図24(b)に示すように、左側のインクジェットヘッド222によりドットが形成されるドット形成範囲K1と、右側のインクジェットヘッド222によりドットが形成されるドット形成範囲K2とは、互いに重ならずに左右方向に隣接することになる。そして、特定画像LIをドット形成範囲K2とドット形成範囲K2との境界を跨って記録する際には、当該特定画像LIに段差が生じ得る。
制御装置250は、特定画像LIの段差の対策として、画像データIMを補正する画像データ補正処理を行う。なお、上述の第8実施形態では、連続する2回の記録パスのドット形成範囲のつなぎ目部分で生じる画像の段差を問題にしており、本実施形態では2つのインクジェットヘッドのドット形成範囲のつなぎ目部分で生じる画像の段差を問題にしており、対象とする画像の段差は異なるものの、それに対する対策は基本的には変わらない。
具体的には、境界領域B1が、境界領域B2に対して、搬送方向の上流側に全体的にずれることが想定される場合には、図24(b)に示すように、境界領域B1の、搬送方向の下流側の端部、及び、境界領域B2の搬送方向の上流側の端部それぞれを補正部JMに設定する。同様に、境界領域B1が、境界領域B2に対して、搬送方向の下流側に全体的にずれることが想定される場合には、境界領域B1の、搬送方向の上流側の端部、及び、境界領域B2の搬送方向の下流側の端部それぞれを補正部JMに設定する。
そして、第9実施形態では、制御装置250は、特定画像データESIにおいて、補正部JMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を多くする補正を行う。具体的には、補正部JMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「超特大滴」に変更する補正を行う。
以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、図24b)に示すように、境界領域B1及び境界領域B2の補正部JMに属する吐出ドットDの大きさを大きくすることができる。その結果として、特定画像LIに段差が生じたとしても、当該特定画像LIの段差を小さくすることができる。これにより、特定画像LIの段差を目立ち難くすることができる。
ここで、第9実施形態においては、上記のように補正部JMを設定し、補正部JMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を増やす補正を行う場合、この補正を行わない場合と比較して、補正部JMの濃度が濃くなる。そして、特定画像LIがテキストである場合には、補正部GMと搬送方向に隣接する部分のデューティが低いため、第8実施形態で説明したのと同様、補正部JMの濃度が濃くなっていることが目立ちにくい。一方で、特定画像LIが絵や写真等テキスト以外のものである場合には、補正部JMの搬送方向に隣接する領域におけるデューティが高く、濃度が濃くなった補正部JMと上記デューティが高い部分とが搬送方向に隣接して並ぶ。そのため、これらの部分の濃度差により、補正部JMの濃度が濃くなっていることが目立ちやすい。そして、この場合には、上記補正を行うことにより、かえって記録される画像の画質が低下してしまう虞がある。
そこで、第9実施形態では、特定画像LIがテキストである場合に、上述したように補正部JMを設定し、補正部JMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を減らす補正を行う。一方で、特定画像LIがテキスト以外のものである場合には、上述したような吐出量の補正を行わない。
このように、第9実施形態では、特定画像LIがテキストである場合に、以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、特定画像LIに段差が生じたとしても、その角部分に形成される吐出ドットDの大きさを大きくすることにより、特定画像LIの段差を目立ち難くすることができる。一方で、特定画像LIがテキスト以外のものである場合に、上述したような補正を行わないことにより、記録される画像の画質が低下してしまうのを防止することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。以下、変形例について説明する。
まず、第1実施形態の変形例について、図26(a)を参照しつつ説明する。本変形例では、上述の第8実施形態と同様に、一吐出周期内にノズル10から吐出可能なインクの吐出量として、上記「特大滴」、「大滴」、「中滴」、「小滴」、「不吐出」の5種類に加えて、「超特大滴」がある。そして、制御装置50は、画像データ補正処理において、第2境界領域BPの走査方向の端部のうち、第1境界領域BLにおいて補正部AMが設定された端部と走査方向において同側にある端部が補正部AMに設定されていない場合には、当該端部を特定端部XMに設定する。同様に、第1境界領域BLの走査方向の端部のうち、第2境界領域BPにおいて補正部AMが設定された端部と走査方向において同側にある端部が補正部AMに設定されていない場合には、当該端部を特定端部XMに設定する。図26(a)に示す例では、第1境界領域BLの左側の端部は補正部AMに設定され、第2境界領域BPの左側の端部は補正部AMに設定されていないため、第2境界領域BPの左側の端部を特定端部XMに設定する。また、第2境界領域BPの右側の端部は補正部AMに設定され、第1境界領域BLの右側の端部は補正部AMに設定されていないため、第1境界領域BLの右側の端部を特定端部XMに設定する。
そして、制御装置50は、特定画像データESIにおける、特定端部XMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「超特大滴」に変更する補正も行う。
以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、図26(a)に示すように、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの特定端部XMに属する吐出ドットDの大きさを大きくすることができる。その結果として、特定画像SIの段差をより目立ち難くすることができる。
次に、第6実施形態の変形例について、図26(b)を参照しつつ説明する。本変形例では、制御装置250は、境界領域B1の搬送方向の両端部を補正部GMに設定するのではなく、境界領域B1の搬送方向の一方の端部のみに補正部GMを設定する。同様に、境界領域B2の搬送方向の両端部を補正部GMに設定するのではなく、境界領域B2の搬送方向の一方の端部のみに補正部GMを設定する。具体的には、境界領域B1が、境界領域B2に対して、搬送方向の上流側に全体的にずれることが想定される場合には、図26(b)に示すように、境界領域B1の搬送方向の上流側の端部、及び、境界領域B2の搬送方向の下流側の端部それぞれを補正部GMに設定する。同様に、境界領域B1が、境界領域B2に対して、搬送方向の下流側に全体的にずれることが想定される場合には、境界領域B1の搬送方向の下流側の端部、及び、境界領域B2の搬送方向の上流側の端部それぞれを補正部GMに設定する。
また、本変形例においても、上述の第8実施形態と同様に、一吐出周期内にノズル10から吐出可能なインクの吐出量として、上記「特大滴」、「大滴」、「中滴」、「小滴」、「不吐出」の5種類に加えて、「超特大滴」がある。そして、制御装置250は、境界領域B2の搬送方向の端部のうち、境界領域B1において補正部GMが設定された端部と搬送方向において同側にある端部が補正部GMに設定されていない場合には、当該端部を特定端部YMに設定する。同様に、境界領域B1の搬送方向の端部のうち、境界領域B2において補正部GMが設定された端部と搬送方向において同側にある端部が補正部GMに設定されていない場合には、当該端部を特定端部YMに設定する。図26(b)に示す例では、境界領域B2の搬送方向の下流側の端部は補正部GMに設定され、境界領域B1の搬送方向の下流側の端部は補正部GMに設定されていないため、境界領域B1の搬送方向の下流側の端部を特定端部YMに設定する。また、境界領域B1の搬送方向の上流側の端部は補正部GMに設定され、境界領域B2の搬送方向の上流側の端部は補正部GMに設定されていないため、境界領域B2の搬送方向の上流側の端部を特定端部YMに設定する。
そして、制御装置250は、画像データ補正処理において、特定画像データESIにおける、境界領域B1及び境界領域B2の特定端部YMに属する吐出ドットDに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「超特大滴」に変更する補正も行う。
以上のようにして補正した画像データIMに従って用紙Sに画像を記録すると、図26(b)に示すように、境界領域B1及び境界領域B2の特定端部YMに属する吐出ドットDの大きさを大きくすることができる。その結果として、特定画像LIの段差をより目立ち難くすることができる。
以下、その他の変形例について説明する。
補正部の設定方法は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の第1~第4実施形態では、特定画像SIの第1境界領域BL及び第2境界領域BPそれぞれに補正部AMを設定したが、いずれか一方の境界領域のみに補正部AMを設定してもよい。同様に、第6実施形態では、特定画像LIの境界領域B1及び境界領域B2それぞれに補正部GMを設定していたが、いずれか一方の境界領域のみに補正部GMを設定してもよい。
また、上述したように、特定画像SIの第1境界領域BLが第2境界領域BPに対して、種々の要因により走査方向にずれるが、そのときのズレ方向は、要因によって異なる。加えて、各要因により第1境界領域BLが第2境界領域BPに対してずれるズレ量は、プリンタ毎に異なる場合がある。このため、第1境界領域BLが第2境界領域BPに対してずれるズレ方向はプリンタ毎に異なる場合がある。そこで、制御装置50が備えるRAM53や、不図示のフラッシュメモリ等のメモリに上記ズレ方向に関するズレ情報を記憶させる。このズレ情報は、例えば、テストパターンなどを用紙Sに記録し、その記録結果を読取部5で読み取ることで取得することができる。また、上記ズレ方向が経時により変化しない場合には、工場出荷時に上記ズレ情報を取得して、制御装置50のメモリに予め記憶していてもよい。そして、制御装置50は、特定画像SIを第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界を跨いで記録する際には、第1境界領域BLの走査方向の両端部のうちのいずれの端部を補正部AMに設定するか、及び第2境界領域BPの走査方向の両端部のうちのいずれの端部を補正部AMに設定するかを、ズレ情報に基づいて決定する。以上のような構成によれば、特定画像SIの段差をより確実に目立ち難くすることができる。
また、上述の第5実施形態では、重複領域Fに記録される画像領域IFの走査方向の両端部を補正部FMとして設定していたが、画像領域IFの走査方向の一方の端部のみを補正部FMとして設定してもよい。また、第5実施形態では、境界領域BOL及び境界領域BOPに補正部OMを設定しなくてもよい。
同様に、上述の第7実施形態では、重複領域Jに記録される画像領域IJの搬送方向の両端部を補正部PMとして設定していたが、画像領域IJの搬送方向の一方の端部のみを補正部PMとして設定してもよい。また、第7実施形態では、境界領域BO1及び境界領域BO2に補正部QMを設定しなくてもよい。
また、上述の第6、第7及び第9実施形態において、記録ヘッドユニット220が有するインクジェットヘッド222の数は、2つであったが、特にこれに限定されるものではなく、3以上であってもよい。この場合においても、左右方向に隣接する各2つのインクジェットヘッド222の画像のつなぎ目部分において、画像の段差が生じ得るため、それぞれのつなぎ目部分に対して、上述のように画像データの補正を行う必要がある。
また、画像データ補正処理においては、補正部に属するドットに対応するドット要素Eに設定された吐出量を「特大滴」から「大滴」に減少させる補正を行っていたが、特にこれに限定されるものではなく、吐出量を減少させる補正であればよい。即ち、吐出量を「特大滴」から「不吐出」に変更する補正であってもよい。また、補正部に属するドットに対応する各ドット要素は、一律同じ量だけ吐出量を減らしていたが、特にこれに限定されるものではなく、対応するドットの位置に応じて減らす量を変えてもよい。即ち、補正部に属する各ドットを形成する際のノズル10から吐出させるインクの吐出量は、同じ量でなくてもよい。例えば、第1~第5実施形態では、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの補正部AMに属するドットについては、第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界に近いドットほど、インクの吐出量を少なくして形成してもよい。また、第6実施形態では、境界領域B1及び境界領域B2の補正部GMに属するドットについては、ドット形成範囲K1とドット形成範囲K2との境界に近いドットほど、インクの吐出量を少なくして形成してもよい。また、第8実施形態では、第1境界領域BL及び第2境界領域BPの補正部HMに属するドットについては、第1ドット形成範囲KLと第2ドット形成範囲KPとの境界に近いドットほど、インクの吐出量を多くして形成してもよい。また、第9実施形態では、境界領域B1及び境界領域B2の補正部JMに属するドットについては、ドット形成範囲K1とドット形成範囲K2との境界に近いドットほど、インクの吐出量を多くして形成してもよい。
また、上述の第1実施形態では、ノズル列9の搬送方向において最も上流に位置するノズル10を基準ノズルに設定していたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、ノズル列9の搬送方向において最も下流に位置するノズル10を基準ノズルに設定し、記録パスの各々において当該基準ノズルから吐出されたインクにより形成されるドット列の走査方向の位置が、互いに同じ位置となるように、インクの吐出タイミングを設定してもよい。このとき、双方向記録モードの場合には、第2境界領域BPが、第1境界領域BLに対して、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側に全体的にずれることになる。従って、制御装置50は、第1境界領域BLの、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部、及び、第2境界領域BPの、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部それぞれを補正部AMに設定する。
同様に、上述の第2実施形態では、ノズル列9の搬送方向において最も下流に位置するノズル10を基準ノズルに設定していたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、ノズル列9の搬送方向において最も上流に位置するノズル10を基準ノズルに設定してもよい。このときには、制御装置50は、第1境界領域BLの、先行の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部、及び、第2境界領域BPの、後続の記録パスにおけるキャリッジ11の移動方向の上流側の端部それぞれを補正部AMに設定する。
上述の第3実施形態では、特定画像SIがテキストであり、記録モードが片方向記録モードである場合において、先行の記録パスと後続の記録パスとで、ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わらない場合には上記補正を行わない。一方で、片方向記録モードで記録を行う場合でも、先行の記録パスと後続の記録パスとで、ローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わる場合には、第1境界領域BLの上記一方側の端部、及び、第2境界領域BPの上記他方側の端部を補正部に設定し、この補正部に属する吐出ドットDの大きさを小さくする補正を行う。しかしながら、これには限られない。
例えば、第3実施形態において、用紙Sがローラ対13,16の片方にのみよりニップされる状態と、両方にニップされる状態とが変わるときの用紙Sの搬送によって、用紙Sの走査方向へのずれがほとんど生じないような場合には、片方向記録モードで記録を行う場合に常に上記の補正を行わないようにしてもよい。
あるいは、第3実施形態において、特定画像SIがテキストであるか否かによらず、記録モードが片方向記録モードであり、先行の記録パスと後続の記録パスとでローラ対13,16による用紙Sの支持状態が変わる場合にC7のように補正部を設定してもよい。
また、以上の例では、特定画像がテキストであるか否かによって、用紙Sの補正部に隣接する領域におけるデューティが閾値未満であるか否かを判定したが、これには限られない。例えば、画像データに基づいて、用紙Sの各領域のデューティを算出し、その結果に基づいて、補正部に隣接する領域が閾値未満であるか否かを判定してもよい。
また、以上の例では、デューティに関する条件として、特定画像がテキストであるという条件等、デューティが閾値未満であるという条件を満たすか否かによって、補正部を設定するか否かを判定したが、これには限られない。デューティに関する別の条件を満たすか否かによって補正部を設定するか否かを判定してもよい。
また、第3実施形態では、連続する2つの記録パス間でのノズル10から吐出されたインクの着弾位置の走査方向への位置ずれに関する条件として、双方向記録モードであるという条件を満たすか否かによって、補正部を設定するか否かを判定したが、これには限られない。双方向記録モードであるという条件以外の、連続する2つの記録パス間でのノズル10から吐出されたインクの着弾位置の走査方向への位置ずれに関する条件を満たすか否かに基づいて、補正部を設定するか否かを判定してもよい。
また、以上の例では、特定画像毎に個別に上記吐出量の補正を行うか否か判断したが、これには限られない。例えば、記録される画像の画像データに基づいて、用紙Sの領域毎のデューティの平均値を算出し、このデューティの平均値が閾値未満の場合には、全ての特定画像について上記補正を行い、このデューティの平均値が所定値以上の場合には、全ての特定画像について上記補正を行わないようにしてもよい。
また、上述の第1~第5実施形態では、用紙Sと吐出面12a1との間のギャップには、搬送方向の上下流で差が生じている構成であったが、これに限定されるものではなく、搬送方向の上下流で差が生じておらず均一であってもよい。この場合、ギャップの搬送方向の上下流の差が要因となる画像の段差に対する対策を行う必要はない。また、波形状生成機構が設けられておらず、用紙Sと吐出面12a1との間のギャップは、走査方向に沿っては変化せずに均一であってもよい。この場合、用紙Sの山部分でのギャップの変動が要因となる画像の段差に対する対策を行う必要はない。また、キャリッジ11の姿勢が変化しないように構成されていてもよい。この場合、キャリッジ11の姿勢変化が要因となる画像の段差に対する対策を行う必要はない。
また、上述の第1~第5実施形態では、用紙Sに波形状を生じさる波形状生成機構は、リブ20、下側ローラ16b、プレート14、及び拍車17を合わせた機構であったが、特にこれに限定されるものではない。例えば、拍車17は備えておらず、プレート14のみによって用紙Sを上方から押えるものであってもよい。このように、プレート14のみによって用紙Sを上方から押える場合でも、用紙Sに波形状を生じさせることができる。
また、用紙Sを上から押える押さえ部材は、上述のプレート14や拍車17に限定されるものではない。例えば、押さえ部材は、用紙Sが浮き上がって吐出面12a1に接触するのを防止する等の目的で、インクジェットヘッド12よりも搬送方向の上流側において、用紙Sを上から押さえる部材であってもよい。
上述の第2実施形態では、インクカートリッジ26が着脱可能に装着されるホルダ119、及び供給チューブ127の湾曲部分127aと接触する接触部材129は、キャリッジ11の後方に配置されていたが、第1実施形態と同様にキャリッジ11の前方に配置されていてもよい。この場合においても、供給チューブ127が接続されるチューブジョイント128が、インクジェットヘッド12の搬送方向の中間位置よりも、搬送方向の上流側位置に設けられていると、キャリッジ11が左側端部範囲内に位置する状態では、キャリッジ11は、ノズル列9の搬送方向の上流側のノズル10が右に、下流側のノズル10が左に移動するように若干回転することになる。
また、上述の実施形態では、供給チューブ27,127は、ホルダ19,119に装着されたインクカートリッジ26に直接接続されていたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、ホルダ19,119の内部や側面等に、装着されたインクカートリッジ26と連通する流路が設けられている場合には、供給チューブ27,127はその流路を介してインクカートリッジ26に接続されていてもよい。
以上では、ノズルからインクを吐出して用紙Sに対して画像を記録するプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。用紙S以外の被記録媒体、例えば、スマートフォン等の携帯端末のケースや段ボールに対してノズルからインクを吐出して画像の記録を行う画像記録装置にも適用され得る。また、透明フィルム等の透明樹脂からなる被記録媒体に対して、白色のインクを下地として印刷した後に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクをヘッドから吐出させて画像の記録を行う画像記録装置にも適用され得る。また、上述の実施形態では、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクをヘッドから吐出させて画像の記録を行う画像記録装置であったが、これに限定されるものではなく、例えば、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、ライトシアン、ライトマゼンタの6色のインクをヘッドから吐出させて画像の記録を行う画像記録装置であってもよい。また、インク以外の液体で被記録媒体に対して画像の記録を行う画像記録装置にも適用され得る。
また、以上では、被記録媒体を搬送する搬送機構は、搬送ローラを用いたローラ搬送機構であったが、これには限られない。例えば、被記録媒体をベルトに載置して、ヘルドを走行させることで被記録媒体を搬送する搬送機構であってもよく、被記録媒体をテーブルに載置して、テーブルをボールねじ等の移動手段により移動させることで被記録媒体を搬送する搬送機構であってもよい。