JP7378279B2 - ニロチニブを有効成分とする医薬錠剤及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分として含有する医薬錠剤であって、アミノ基修飾高分子添加剤を含有する医薬錠剤及びその製造方法に関する。
ニロチニブは、化学名を4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドとする、一般式(1)で示される構造を有する化合物である。
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ニロチニブは、Bcr-Ablチロシンキナーゼに対する高い選択制と強い阻害活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤(Tyrosine Kinase Inhibitor:TKI)であり、ATPと競合的に拮抗し、Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害することによって、Bcr-Abl発現細胞のアポトーシス誘導に基づいて抗腫瘍効果を示すと考えられている。タシグナ(登録商標)カプセルの商標名で市販されており、本邦においては、慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病として承認されている。
ニロチニブは、慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病の治療薬として知られ、ニロチニブ塩酸塩を有効成分とするカプセル製剤が提供されている(非特許文献1)。特許文献1に、ニロチニブ塩酸塩を含む顆粒を用いた医薬カプセル製剤を記載しており、該顆粒の内相中にポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(オキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位の数がそれぞれ150および30)、ラクトース一水和物、ポリビニルピロリドンを含み、該顆粒の外相中にラクトース一水和物、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムを含むカプセル剤が記載されている。
一般的に、カプセル製剤は嚥下困難な傾向にある剤型であると言われている。このためより服薬しやすい錠剤化が望まれている。ニロチニブも嚥下性に優れた錠剤の開発が望まれるが、このためには既存のニロチニブのカプセル製剤と同等の溶出性を示す錠剤であることが求められる。既存のカプセル製剤と同等な溶出プロファイルを有するニロチニブ錠剤を取得するためには、特に、溶出試験第一液(pH1.2液)中において崩壊性を遅延させて、初期の溶出を抑制する必要がある。特許文献2では、カプセル製剤と同等の溶出プロファイルを有するニロチニブ錠剤を調製するにあたり、ヒドロキシプロピルセルロースE50で錠剤をコーティングしたフィルムコーティング錠剤とすることで、崩壊を4~15分遅延させた錠剤を調製している。
特表2010-504942号公報 特表2014-533283号公報
タシグナ(登録商標)カプセル25mg、同150mg、同200mgの医薬品インタビューフォーム(2017年12月改訂(第18版))
本発明の目的は、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤を提供することである。特に溶出試験第一液中で崩壊が遅延し、初期の溶出を抑制できるニロチニブを有効成分とする医薬錠剤を提供することである。より具体的には、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験において、試験溶液が900mLの溶出試験第一液(pH1.2)での溶出率が試験開始から5分で40%以下であり、より好ましくは5分で30%以下、且つ10分で70%以下の溶出率であることを特徴とする、ニロチニブを有効成分として含有する医薬錠剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、有効成分としてニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤であって、アミノ基修飾高分子添加剤を含む医薬錠剤とすることで溶出試験第一液中での崩壊を遅延させ、初期の溶出を抑制できることを見出した。また、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を圧縮して物性を改変した粉体又は粒体を用いることで、溶出試験第一液中での崩壊を遅延させ、初期の溶出を抑制できることを見出した。すなわち、本発明は以下の[1]~[13]を要旨とする。
[1]ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤であって、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩及びアミノ基修飾高分子添加剤を含む医薬錠剤。
[2]アミノ基修飾高分子添加剤が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマーからなる群より選択される1種類以上である、前記[1]に記載の医薬錠剤。
[3]アミノ基修飾高分子添加剤が、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩に対して3.0質量%以上10.0質量%以下含まれている、前記[1]又は[2]に記載の医薬錠剤。
[4]ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩が、圧縮造粒物である、前記[1]~[3]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[5]ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩とアミノ基修飾高分子添加剤を含有する造粒物を含む、前記[1]~[4]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[6]ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩が、ニロチニブ塩酸塩二水和物である前記[1]~[5]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
本願は、ニロチニブ又はその塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法に関する発明も含む。
[7]ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法であって、
(A)ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩と、アミノ基修飾高分子添加剤及びその他の添加剤を混合する工程、
(B)前記工程(A)で得られた混合物を圧縮成型し、錠剤を調製する工程、を含む医薬錠剤の製造方法。
[8]工程(A)において、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩及びアミノ基修飾高分子添加剤を混合して調製された造粒物と、その他の添加剤を混合する工程であって、前記造粒物のかさ密度が0.21g/mL以上の造粒物である、前記[7]に記載の医薬錠剤の製造方法。
ニロチニブ又はその塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法において、用いるニロチニブ又はその塩を、予め圧縮や転動操作等の機械的操作を施して、かさ密度を高めた粉体又は粒体を用いることで、溶出試験第一液中での崩壊を遅延させ、初期の溶出を抑制できる。
[9]ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法であって、
(A)かさ密度が0.21g/mL以上の粉体又は粒体であるニロチニブ又はその医薬的に許容な塩と、医薬錠剤用添加剤を混合する工程、
(B)前記工程(A)で得られた混合物を圧縮成型し、錠剤を調製する工程、を含む医薬錠剤の製造方法。
[10]医薬錠剤用添加剤が、かさ密度が0.21g/mL以上の造粒物である、前記[9]に記載の医薬錠剤の製造方法。
医薬錠剤を成型するための添加剤も、予め機械的操作を施して、かさ密度を高めた造粒物で用いることにより、更に初期溶出を抑制することができる。
[11]医薬錠剤用添加剤が、崩壊剤、結合剤並びに賦形剤を含む添加剤組成物である、前記[9]又は[10]に記載の医薬錠剤の製造方法。
[12]工程(A)において、更にアミノ基修飾高分子添加剤を混合する工程であって、アミノ基修飾高分子添加剤は医薬錠剤用添加剤との造粒物として用いられ、該造粒物がかさ密度が0.21g/mL以上の造粒物である、前記[9]~[11]の何れか一項に記載の医薬錠剤の製造方法。
本発明によれば、溶出試験第一液中での崩壊が遅延するニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤を提供することができる。より具体的には、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験において、試験溶液が900mLの溶出試験第一液である時、試験開始から5分で40%以下の溶出率であり、より好ましくは5分で30%以下、且つ10分で70%以下の溶出率であることを特徴とする、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤を提供することができる。
本発明は、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤であって、アミノ基修飾添加剤を含む医薬錠剤であることを特徴とする。以下にその詳細について説明する。
本発明は、有効成分としてニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を用いる。ニロチニブの化学名は4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである。ニロチニブは医薬品として容認できる品質であることが好ましい。
本発明の有効成分には、ニロチニブの医薬的に許容な塩も含まれる。ニロチニブは、弱塩基性化合物であることから、適当な酸との付加塩の様態であっても良い。例えば、特に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、メタンスルホン酸または4-トルエンスルホン酸等が挙げられ、これらの塩形態で用いても良い。本発明においてはニロチニブ塩酸塩を用いることが好ましく、医薬品として容認できる品質であることが好ましい。
ニロチニブ塩酸塩は、特許第5798101号において形態A(二水和物)、A’、B、C(一水和物)、A’’、B’、C’(無水物)、S、S’、S、D、Sが開示されている。また、特許第5486012号において形態T1~T19が開示されており、いずれの形態であっても本願発明に用いることができる。本発明において、使用するニロチニブ塩酸塩は特に限定されるものではないが、形態Aのニロチニブ塩酸塩二水和物を用いることが好ましい。
ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩は常温で固体であり、通常、粉体又は粒体の形状で得られるものである。本発明に用いるニロチニブ又はその医薬的に許容な塩は、粉体又は粒体物性のかさ密度を高くした粉体又は粒体を用いることが好ましい。すなわち、かさ密度が0.21g/mL以上のニロチニブ又はその医薬的に許容な塩の圧縮造粒物を用いることが好ましい。圧縮造粒物とすることで、錠剤製造操作を行う上で取り扱いやすい物性となる利点がある上、溶出試験第一液中での初期溶出を抑制的に制御することができる。
該造粒物は、より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。該造粒物の形状は、所定のかさ密度を有していれば粉体状又は粒体状であっても良い。
かさ密度が所定値以上の粉体又は粒体物性のニロチニブ又はその医薬的に許容な塩は、用いる有効成分原料粉末に対し、圧縮操作や転動操作などによる造粒化を行うことで調製することができる。これらの造粒化操作は、原料粉末をそのまま処理する乾式造粒法であっても良く、任意に結合剤を含んでいても良い水及び/又は有機溶媒の適当な溶媒を添加して、混合操作等の機械的圧力を付加して該混合物同士を付着させ、顆粒状物として造粒する操作を行う湿式造粒法であっても良い。造粒化操作としては、圧縮造粒法、溶融造粒法、ローラーコンパクター法、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法等が挙げられる。本発明に係る造粒化操作としては、これらの操作方法から、適宜選択して当該造粒物を調製することができる。造粒操作により圧縮されたニロチニブ又はその塩は、その後、篩分け等で整粒操作を行い、本発明の錠剤調製に用いるニロチニブ又はその塩原材料として使用することができる。
本発明における医薬錠剤は、ニロチニブ又はその医薬的に許容される塩を30質量%以上~80質量%以下で含有するものが好ましい。特に嚥下容易性を達成するためには錠剤の小型化をすることが好ましく、ニロチニブ又はその塩を高含量とすることが好ましく、40質量%以上~70質量%以下とすることがより好ましく、50質量%より大きく~70質量%以下の含有量であることが特に好ましい。
本発明の医薬錠剤は、アミノ基修飾高分子添加剤を含むことを特徴とする。本発明は、アミノ基修飾高分子添加剤であれば特に限定されずに適用することができる。アミノ基修飾高分子添加剤は、医薬品として容認できる品質であることが好ましい。
本明細書におけるアミノ基修飾高分子添加剤としては、高分子の側鎖官能基として複数個のアミノ基を有する高分子材であれば、特に限定されずに用いることができる。これらは、pH5以下で溶解性を示す胃溶性ポリマーとして用いられる医薬製剤用添加剤が知られており、これを適用することが好ましい。例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー等が挙げられる。アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを用いることが好ましく、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いることがより好ましい。
アミノ基修飾高分子添加剤であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーEは市販品を用いても良い。例えば商品名オイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)EPO(株式会社樋口商会)等を挙げることができ、オイドラギット(登録商標)EPOを用いることが好ましい。また、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートは市販品を用いても良い。例えば商品名AEA(三菱ケミカルフーズ)を挙げることができる。
アミノ基修飾高分子添加剤は、通常、医薬錠剤のpH応答性のコーティング基剤として使用され得る添加剤である。しかしながら、本発明の医薬錠剤では、当該アミノ基修飾高分子添加剤は「医薬錠剤の内部」に分散していることを特徴とする。「医薬錠剤の内部」とは錠剤の素錠部分であり、アミノ基修飾高分子添加剤は素錠の部分に有効成分と共に分散した状態で含まれている。ただし、有効成分であるニロチニブ又はその塩と該アミノ基修飾高分子が共に溶融した固溶体で含有するものではない。また、有効成分や他の添加剤を含む造粒物にアミノ基修飾高分子添加剤を含むコーティング層としてアミノ基修飾高分子添加剤を含んでいてもよい。
アミノ基修飾高分子添加剤は、予めニロチニブ又はその医薬的に許容な塩と共に混合して調製される造粒物として用いても良い。すなわち、ニロチニブ又はその塩とアミノ基修飾高分子を直接的に接触できる態様で処方することで、有効成分の溶出性を効率的に制御することができる。
ニロチニブ又はその塩とアミノ基修飾高分子添加剤を含む造粒物の調製方法は、製剤化操作で通常行われる造粒化操作を行えば良く、ニロチニブ又はその塩とアミノ基修飾高分子添加剤を混合し、これを圧縮操作や転動操作などによる造粒化を行うことで調製することができる。これらの造粒化操作は、原材料混合粉末をそのまま処理する乾式造粒法であっても良く、任意に結合剤を含んでいても良い水及び/又は有機溶媒の適当な溶媒を添加して、混合操作等の機械的圧力を付加して該混合物同士を付着させ、顆粒状物として造粒する操作を行う湿式造粒法であっても良い。造粒化操作としては、圧縮造粒法、溶融造粒法、ローラーコンパクター法、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法等が挙げられる。本発明に係る造粒化操作としては、これらの操作方法から、適宜選択して当該造粒物を調製することができる。造粒操作により調製された造粒物は、その後、篩分け等で整粒操作を行い、本発明の錠剤調製に使用することができる。
ニロチニブ又はその塩とアミノ基修飾高分子添加剤を含む造粒物は、これらが一体となる態様であれば特に問題なく用いることができるが、両成分の効率的な相互作用、並びに製剤化操作における取扱い性向上を考慮して、ある程度、圧縮して形成される造粒物であることが好ましい。当該造粒物は、かさ密度が0.21g/mL以上のニロチニブ又はその塩とアミノ基修飾高分子添加剤を含む造粒物を用いることが好ましい。より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。
アミノ基修飾高分子添加剤の使用量は、ニロチニブの溶出性を考慮して適宜調整して使用することが好ましいが、その添加量はニロチニブ又はその医薬的に許容な塩1質量部に対して、3質量%以上~10質量%以下含まれていることが好ましく、4質量%以上~8質量%以下で用いることがより好ましい。
また医薬錠剤に対して、アミノ基修飾高分子添加剤は1質量%以上~10質量部を含有することが好ましく、1質量%以上~8質量%以下で用いることがより好ましい。
本発明の医薬錠剤は、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩、及びアミノ基修飾高分子添加剤の他に、本発明の効果を妨げない範囲で医薬錠剤を調製するために通常用いられる他の添加剤を含んでいても良い。例えば、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、賦形剤、隠蔽剤や着色剤等の、医薬錠剤を調製するための通常の医薬錠剤用添加剤を用いても良い。
これらの添加剤は、医薬品製剤用途で許容される純度であれば特に制限されることなく用いることができる。これらの添加剤は1種のみを用いても良く、これらの混合物として用いても良い。当該医薬錠剤を調製する際に、任意に使用される。
本発明において崩壊剤としては、カルボキシメチルスターチナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。
本発明において結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
本発明において滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、カルナウバロウ等が挙げられる。
本発明において流動化剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、タルク等があげられる。
本発明において賦形剤としては、乳糖無水物、乳糖水和物、マルトース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、キシリトール、イノシトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等、上記の結合剤、崩壊剤、可溶化剤、滑沢剤に該当しない添加剤が含まれる。
本発明において隠蔽剤や着色剤としては、酸化チタン、黄酸化鉄、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、褐色酸化鉄、タルク、食用黄色素類、食用青色素類、食用赤色素類等が挙げられる。
崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、賦形剤、隠蔽剤や着色剤等の他の添加剤は、これらを1種以上含有する他の添加剤組成物として、これを予め混合して調製される造粒物として用いても良い。他の添加剤をプレミックスして一体化した造粒物とすることで、錠剤製造操作を行う上で取り扱いやすい物性となる利点がある上、溶出試験第一液中での有効成分の初期溶出を抑制的に制御することができる。また、 他の添加剤を含む造粒物の調製方法は、製剤化操作で通常行われる造粒化操作を行えば良く、原材料混合粉末に対し、圧縮操作や転動操作などによる造粒化を行うことで調製することができる。これらの造粒化操作は、原材料粉末をそのまま処理する乾式造粒法であっても良く、任意に結合剤を含んでいても良い水及び/又は有機溶媒の適当な溶媒を添加して、混合操作等の機械的圧力を付加して該混合物同士を付着させ、顆粒状物として造粒する操作を行う湿式造粒法であっても良い。造粒化操作としては、前述と同様の操作が挙げられる。
他の添加剤を含む造粒物は、これらが一体となる態様であれば特に問題なく用いることができるが、製剤化操作における取扱い性向上を考慮して、ある程度、圧縮して形成される造粒物であることが好ましい。当該造粒物は、かさ密度が0.21g/mL以上のニロチニブ又はその塩とアミノ基修飾高分子添加剤を含む造粒物を用いることが好ましい。より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。
本発明の医薬錠剤はフィルムコーティングされていても良い。フィルムコーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー等が挙げられる。フィルムコーティング基剤として、本発明の効果を妨げない範囲で医薬錠剤外部にあたるフィルムコート部分にアミノ基修飾高分子添加剤が含まれていてもよい。
また、フィルムコート部分にはコーティング基剤の他、隠蔽剤や着色剤、分散剤等の医薬製剤のコーティング剤に用いられる任意の添加剤が含まれていても良い。コーティング剤に用いる隠蔽剤や着色剤、分散剤は、前述と同義である。
本発明における医薬錠剤は、ニロチニブ又はその医薬的に許容される塩として30~80質量部、アミノ基修飾高分子添加剤を1~10質量部、結合剤を0.1~20質量部、崩壊剤を1~20質量部、滑沢剤を0.1~7質量部、流動化剤を0~5質量部、賦形剤を10~65質量部で含有する処方が好ましい。前記処方組成物を混合し、造粒して顆粒体を調製し、これを圧縮成型することで医薬錠剤を調製することができる。その後、この医薬錠剤をフィルムコーティングしてもよい。好ましくは、ニロチニブ又はその医薬的に許容される塩として40~70質量部、アミノ基修飾高分子添加剤を1~8質量部、結合剤を1~10質量部、崩壊剤を1~10質量部、滑沢剤を1~5質量部、流動化剤を0~3質量部、賦形剤を10~40質量部を含有する処方による医薬錠剤である。
本発明は医薬錠剤の形状は、経口的な服用に適する通常の形状及び大きさであれば特に限定されない。
本発明は、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法を含む。
本発明のニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法は、(A)ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩と、アミノ基修飾高分子添加剤及びその他の添加剤を混合する工程、次いで、(B)前記工程(A)で得られた混合物を圧縮成型し、錠剤を調製する工程、を含む医薬錠剤の製造方法、である。
本発明の医薬錠剤の製造方法は、(A)ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩と、アミノ基修飾高分子添加剤及びその他の添加剤を混合する工程を含むことを特徴とする。
本発明の医薬錠剤の製造方法は、アミノ基修飾高分子添加剤が医薬錠剤内部に分散していることを特徴とする。(A)ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩と、アミノ基修飾高分子添加剤及びその他の添加剤を混合する工程を経ることで、アミノ基修飾高分子添加剤が医薬錠剤内部に分散することが可能となる。そのため、本工程は本発明において重要である。
本発明の医薬錠剤の製造方法において、アミノ基修飾高分子添加剤は粉末のままニロチニブ又はその医薬的に許容な塩及びその他の添加剤と混合してもよく、アミノ基修飾高分子添加剤を水、エタノール、メタノール等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒等の水性媒体に溶解し、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩及びその他の添加剤と混合してもよい。また、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩及びその他の添加剤の混合後にアミノ基修飾高分子添加剤を上記水性媒体に溶解し、スプレー等することで混合物としてもよい。
本発明の医薬錠剤の製造方法において、医薬錠剤を圧縮成型する前に、造粒化操作を行い、造粒物を調製することが好ましい。造粒物とは、有効成分と種々の添加剤を含有する混合物同士が付着して成形された一定の粒子径を有する顆粒状物であり、後の工程において圧縮成型能を向上させるために調製する粒状物である。
該造粒物を調製する造粒化操作は、乾式造粒でも湿式造粒でもよい。乾式造粒とは、造粒時に水を添加しない造粒方法であり、湿式造粒とは前記混合物に水、エタノール、メタノール等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒等の水性媒体を適当量添加して、混合操作等の機械的圧力を付加して該混合物同士を付着させ、顆粒状物として造粒する操作である。造粒化操作としては、圧縮造粒法、溶融造粒法、ローラーコンパクター法、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法等が挙げられる。本発明に係る造粒化操作としては、これらの操作方法から、適宜選択して当該造粒物を調製することができる。
本発明の医薬錠剤の製造方法において、ニロチニブ又はその塩をかさ密度を高くした粉体又は粒体を用いることが好ましい。すなわち、かさ密度が0.21g/mL以上のニロチニブ又はその医薬的に許容な塩の圧縮造粒物を用いることが好ましい。該造粒物は、より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。かさ密度が所定値以上のニロチニブ又はその医薬的に許容な塩は、前述の造粒化操作により調製することができる。
また、ニロチニブ又はその塩と医薬錠剤調製のための前記添加剤を含む造粒物を用いることを、本発明の一態様として挙げることができる。当該造粒物は、かさ密度を高くして物性改良したものを用いることが好ましい。すなわち、かさ密度が0.21g/mL以上のニロチニブ又はその塩、並びに添加剤を含む造粒物を用いることが好ましい。より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。
また、更なる態様として、ニロチニブ又はその塩とアミノ基修飾高分子添加剤を含む造粒物を用いることを挙げることができる。当該造粒物は、かさ密度が0.21g/mL以上の造粒物を用いることが好ましい。より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。
別態様として、ニロチニブ又はその塩とは別に、前記医薬錠剤調製用の添加剤を予め混合して調製した造粒物を用いることを挙げることができる。該添加剤の造粒物は、かさ密度が0.21g/mL以上の造粒物を用いることが好ましい。より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。
更なる別態様として、前記医薬錠剤調製用の添加剤、並びにアミノ基修飾高分子添加剤を予め混合して調製した造粒物を用いることを挙げることができる。該添加剤とアミノ基修飾高分子添加剤の造粒物は、かさ密度が0.21g/mL以上の造粒物であることが好ましい。より好ましくはかさ密度が0.23g/mL以上で、0.60g/mL以下の物性であり、かさ密度が0.25g/mL以上で、0.50g/mL以下の物性の物を用いることが特に好ましい。
本発明の医薬錠剤の製造方法は、(B)工程(A)で得られた混合物を圧縮成型し錠剤にする工程を含む。
前述したニロチニブ又はその塩を有効成分として、これにアミノ基修飾高分子添加剤並びに医薬錠剤調製用の添加剤を含む組成物に、任意に滑沢剤を添加して、打錠成型等により錠剤形に成型することにより、医薬錠剤内部である素錠を調製することができる。錠剤の硬度は約10~110Nとすることが好ましい。より好ましくは40~80Nである。
本発明の医薬錠剤の製造方法において、圧縮成型後、素錠をフィルムコーティングする工程を経てもよい。フィルムコーティングを行う場合、前記医薬錠剤外部であるフィルムコート部分は、水又は水と任意の割合で混合し得る有機溶剤を含む水溶性溶剤に前記コーティング剤に用いられる任意の添加剤を溶解し、錠剤内部である素錠が入ったコーティングパンの中へ注入またはスプレーし、錠剤表面に熱風を送り錠剤表面から溶媒を除去乾燥させる方法により、フィルムコーティングを行うことができる。乾燥工程は、室温~80℃程度で行うことが好ましい。減圧下で行うことで水性溶剤を揮発させて乾燥しても良い。
本発明の医薬錠剤は、溶出試験第一液(pH1.2溶液)中で錠剤の崩壊が遅延し、特に初期のニロチニブの溶出を抑制的に制御できる医薬錠剤であることを特徴とする。すなわち、既知のニロチニブのカプセル製剤と同等の溶出プロファイルを示す医薬錠剤である。本明細書において、溶出性を評価する溶出試験は、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験である。
日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験法により、本発明の医薬錠剤から有効成分であるニロチニブ又はその医薬的に許容される塩を試験溶液中へ溶出させ、紫外可視吸光度計もしくは液体クロマトグラフィーを用いて試験液へのニロチニブの溶出率を評価することで、本発明の医薬錠剤の特徴である溶出試験第一液中で崩壊が遅延する医薬錠剤であることを確認することができる。
本発明の医薬錠剤は、溶出試験第一液中で崩壊が遅延する医薬錠剤であることを特徴とする。より具体的には、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験において、試験溶液が900mLの水である時、試験開始から5分で40%以下の溶出率であり、より好ましくは5分で35%以下、且つ10分で70%以下の溶出率であることを特徴とする。
本発明の医薬錠剤を用いた医薬品の用途は、ニロチニブにより治療効果を奏する疾病であれば特に限定されるものではない。例えば、悪性腫瘍の治療に適用することができる。より具体的には、非小細胞肺癌、膵癌、グリオーマ、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、肝細胞癌、腎癌、頭頸部癌、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、食道癌、を挙げることができる。これらの疾患に限定されるものではないが、適用する好ましい疾患として挙げることができる。
本発明の医薬製剤を用いた医薬品の投与量は、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更されうるが、例えば成人1日当たり、ニロチニブとして10mg~1gの範囲の薬剤を投与する。この投与量に限定されるものではないが、適用する好ましい投与量として挙げることができる。
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ニロチニブ塩酸塩二水和物(形態A)1023.3mg、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)517.9mg、オイドラギット(登録商標)EPO(エボニック社製)63.0mg、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)63.0mg、クロスポビドン(BASF社製)63.0mg、コロイド状二酸化ケイ素(日本アエロジル社製)18.0mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)15.8mgを混合した後、圧縮造粒法で造粒を行った。造粒した顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒してかさ密度0.41g/mLの整粒顆粒とし、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)36.0mgを混和し、打錠用粉末を得た。
この打錠用粉末約400mgを打錠機にて圧縮成形し、実施例1の錠剤とした。
[実施例2]
ニロチニブ塩酸塩二水和物(形態A)1023.3mg、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)517.9mg、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)63.0mg、クロスポビドン(BASF社製)63.0mg、コロイド状二酸化ケイ素(日本アエロジル社製)18.0mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)15.8mgを混合した後、圧縮造粒法で造粒を行った。造粒した顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒してかさ密度0.50g/mLの整粒顆粒とし、オイドラギット(登録商標)EPO(エボニック社製)63.0mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)36.0mgを混和し、打錠用粉末を得た。
この打錠用粉末約400mgを打錠機にて圧縮成形し、実施例2の錠剤とした。
[実施例3]
ニロチニブ塩酸塩二水和物(形態A)1023.3mgを圧縮造粒法で造粒し、造粒顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒して、かさ密度0.28g/mLの整粒顆粒とした。整粒顆粒と結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)517.9mg、オイドラギット(登録商標)EPO(エボニック社製)63.0mg、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)63.0mg、クロスポビドン(BASF社製)63.0mg、コロイド状二酸化ケイ素(日本アエロジル社製)18.0mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)15.8mgを混合した後、圧縮造粒法で再度造粒を行った。造粒した顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒し、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)36.0mgを混和し、打錠用粉末を得た。
この打錠用粉末約400mgを打錠機にて圧縮成形し、実施例3の錠剤とした。
[実施例4]
ニロチニブ塩酸塩二水和物(形態A)1023.3mgを圧縮造粒法で造粒し、造粒顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒し、かさ密度0.28g/mLの整粒顆粒Aとした。別途、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)517.9mg、オイドラギット(登録商標)EPO(エボニック社製)63.0mg、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)63.0mg、クロスポビドン(BASF社製)63.0mg、コロイド状二酸化ケイ素(日本アエロジル社製)18.0mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)15.8mgを混合した後、圧縮造粒法で造粒し、造粒した顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒し、かさ密度0.29g/mLの整粒顆粒Bとした。整粒顆粒A、整粒顆粒B及びステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)36.0mgを混和し、打錠用粉末を得た。
この打錠用粉末約400mgを打錠機にて圧縮成形し、実施例4の錠剤とした。
[実施例5]
ニロチニブ塩酸塩二水和物(形態A)1023.3mgとオイドラギット(登録商標)EPO(エボニック社製)63.0mgを混合した後、圧縮造粒法で造粒し、造粒顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒し、かさ密度0.33g/mLの整粒顆粒とした。整粒顆粒と結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)517.9mg、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)63.0mg、クロスポビドン(BASF社製)63.0mg、コロイド状二酸化ケイ素(日本アエロジル社製)18.0mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)15.8mgを混合した後、圧縮造粒法で再度造粒を行った。造粒した顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒し、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)36.0mgを混和し、打錠用粉末を得た。
この打錠用粉末約400mgを打錠機にて圧縮成形し、実施例5の錠剤とした。
[比較例1]
ニロチニブ塩酸塩二水和物(形態A)795.9mg、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)604.8mg、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)49.0mg、クロスポビドン(BASF社製)98.0mg、コロイド状二酸化ケイ素(日本アエロジル社製)16.1mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)14.0mgを混合した後、圧縮造粒法で造粒を行った。造粒した顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒し、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)32.2mgを混和し、打錠用粉末を得た。
この打錠用粉末約460mgを打錠機にて圧縮成形し、比較例1の錠剤とした。
[比較例2]
ニロチニブ塩酸塩一水和物(形態B)772.1mg、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)628.6mg、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)49.0mg、クロスポビドン(BASF社製)98.0mg、コロイド状二酸化ケイ素(日本アエロジル社製)16.1mg、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)14.0mgを混合した後、圧縮造粒法で造粒を行った。造粒した顆粒を目開き0.5mmの篩を用いて整粒し、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム)32.2mgを混和し、打錠用粉末を得た。
この打錠用粉末約460mgを打錠機にて圧縮成形し、比較例2の錠剤とした。
[比較例3]
ニロチニブ塩酸塩一水和物を有効成分とするカプセル製剤(タシグナ(登録商標)カプセル200mg)を用いた。
[試験例1]溶出試験
実施例1~実施例5、比較例1~比較例3で得られた錠剤を、日本薬局方に記載される方法で調製した溶出試験第一液(pH1.2液)の試験溶液を用いて、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)により溶出率を評価した。
溶出試験条件詳細は以下のように設定した。
・溶出試験器 :NTR-6600A、富山産業株式会社製
・試験液量 :900mL
・試験液温 :37±0.5℃
・パドル回転数:50rpm
・分析機器 :紫外可視分光度計(UV-1900、島津製作所製)
・測定波長 :254nm
定量分析用の標準溶液試料として、試験溶液である溶出試験第一液を使用してニロチニブ塩酸塩溶液を任意の濃度で調製し、波長254nmでの吸光度を測定、これを試験溶液における標準値とした。溶出試験においては、各経時点の溶液の吸光度を測定することで、各経時点における溶液中のニロチニブ塩酸塩濃度を計算し溶出率を算出した。得られた結果を表1に示す。
[表1]
Figure 0007378279000002
表1の結果より、溶出試験第一液(pH1.2)において実施例1~実施例5の錠剤は比較例1、比較例2の錠剤と比較して溶出試験開始から5分後のニロチニブ塩酸塩の溶出率が大きく異なることが分かった。実施例1~実施例5の錠剤は崩壊を遅延させることで初期の溶出率を抑制することができる。これに対し、比較例1、比較例2の錠剤は溶出試験開始直後に速やかに崩壊し、有効成分が急激に溶出し、溶出曲線の緩やかな立ち上がりを実現できない。従って、オイドラギット(登録商標)EPOを錠剤内に添加することで、錠剤に顕著な徐放性をもたらすことができることが確認された。特に実施例2、3及び5は、カプセル製剤(比較例3)と同様の溶出性に調整することができており、従来のカプセル製剤と等価の医薬製剤であって、より嚥下しやすく服薬性に優れたニロチニブ製剤を提供することができる。

Claims (8)

  1. ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤であって、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを医薬錠剤の内部に含む医薬錠剤であって、
    ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩からなる圧縮造粒物として含むか、もしくは、
    ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩とアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含有する造粒物として含む、
    医薬錠剤。
  2. アミノアルキルメタクリレートコポリマーEが、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩に対して3.0質量%以上10.0質量%以下含まれている、請求項1に記載の医薬錠剤。
  3. ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩が、ニロチニブ塩酸塩二水和物である請求項1または2に記載の医薬錠剤。
  4. ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法であって、
    (A)ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩と、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、並びに、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤及び賦形剤からなる群から選択される1種以上の医薬錠剤用添加剤、を含む造粒物を調製する工程、
    (B)前記工程(A)で得られた混合物を圧縮成型し、錠剤を調製する工程、を含む医薬錠剤の製造方法。
  5. 工程(A)において、ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを混合して調製された造粒物と、前記医薬錠剤用添加剤を混合する工程であって、
    前記造粒物のかさ密度が0.21g/mL以上の造粒物である、請求項4に記載の医薬錠剤の製造方法。
  6. ニロチニブ又はその医薬的に許容な塩を有効成分とする医薬錠剤の製造方法であって、
    (A)かさ密度が0.21g/mL以上の粉体又は粒体であるニロチニブ又はその医薬的に許容な塩とアミノアルキルメタクリレートコポリマーE、並びに、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤及び賦形剤からなる群から選択される1種以上の医薬錠剤用添加剤を混合する工程、
    (B)前記工程(A)で得られた混合物を圧縮成型し、錠剤を調製する工程、を含む医薬錠剤の製造方法。
  7. 医薬錠剤用添加剤が、かさ密度が0.21g/mL以上の造粒物である、請求項6に記載の医薬錠剤の製造方法。
  8. 医薬錠剤用添加剤が、崩壊剤、結合剤並びに賦形剤を含む添加剤組成物である、請求項6又は7に記載の医薬錠剤の製造方法。

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