JP7363649B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、およびそのポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。さらに詳しくは、特定の構造を有する難燃剤、耐光剤および難燃助剤、中和剤を共に含有し、高温環境下における難燃剤のブリード性が抑制され、良好な耐光性と難燃性のバランスが必要とされる屋外用途としての実用に十分な性能を有するポリプロピレン系樹脂組成物、およびそのポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、良好な物性および成形性を有し、急速にその使用範囲が拡大されている。特に、自動車部品や建材部品などでは、軽量で剛性に優れたポリプロピレン系樹脂製品が提供されている。
一方でポリプロピレンには燃えやすいという欠点があり、家電製品、建材、自動車部品等に使用されるポリプロピレンには難燃剤の配合による難燃化が施されている。近年、欧米諸国での難燃性規格でもより高度な難燃化が求められるようになると共に、アジア各国の法律改正により自動車内装材の難燃規格が強化されるなど、世界的な潮流として安全性のためにますます広範な用途においてより高い難燃性が求められており、日本でもその動きは広がりつつある。
ポリプロピレンの難燃化において課題となるのが、難燃性と諸物性の両立である。例えば、難燃剤を配合したポリプロピレンに、耐光性のためにヒンダードアミン系耐光剤を添加すると、難燃剤と耐光剤とが反応し、難燃剤の微量分解物によって耐光剤が失活し、耐光性が損なわれることが知られている。また自動車など高温環境にさらされる用途においては難燃剤がブリードして外観が著しく悪化する場合があるため、より高温環境下での実用を考慮した評価に耐えうる材料が必要である。
例えば特許文献1では、特定の組成を有する難燃性ポリオレフィン組成物が開示されている。すなわち、ポリオレフィン100重量部に対して、難燃剤0.5~40重量部、難燃助剤0.2~20重量部、ヒンダードアミン系耐光剤0.01~5.0重量部、ハイドロタルサイト0.01~5.0重量部を配合してなる組成物である。この技術により難燃剤添加ポリオレフィンにおける耐光性が改善されている。また特許文献2には、熱可塑性ポリマーに種々の難燃剤、および特定のヒドロカルビルオキシアミン類のヒンダードアミン系耐光剤を配合することで耐光性が向上することが開示されている。しかしながら自動車内装材などに近年求められる高い難燃性、耐光性に対して、これら文献で提案されている材料は、実用性を勘案すると十分ではなかった。
特許文献3では、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤1~50重量部、三酸化アンチモン0.1~20重量部、ヒンダードアミン系耐光剤0.01~5重量部、四酸化アンチモンを三酸化アンチモンに対して0.03/99.97~0.5~99.5の重量比で配合してなる樹脂組成物が提案されている。この技術により、難燃性、耐光性については改良されている。
しかしながら、この文献では、耐熱ブリード性という課題については何ら着目されていなかった。そのために、この文献に開示された技術では、耐熱ブリード性、より高温環境下での実用性については不十分であり、その解決方法も示されていなかった。
特開平05-086230号公報 特開2002-234964号公報 特開2016-069602号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、高温環境下における長時間に亘る難燃剤のブリード性が抑制され、良好な耐光性と難燃性のバランスが必要とされる屋外用途としての実用に十分な性能を有するポリプロピレン系樹脂組成物、およびそのポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する難燃剤、耐光剤および難燃助剤、中和剤を含有するポリプロピレン系樹脂組成物が、高温環境下における長時間に亘る難燃剤のブリード性が抑制され、良好な耐光性と難燃性のバランスが必要とされる屋外用途としての実用に十分な性能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]下記の条件(A-1)を満足するプロピレン系樹脂(A)と、下記の条件(B-1)を満足する難燃剤(B)と、下記の条件(C-1)を満足する難燃助剤(C)と、下記の条件(D-1)を満足する耐光剤(D)と、下記の条件(E-1)を満足する中和剤(E)とを含有し、かつ下記条件(ア)を満足することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(A-1)
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系樹脂である。
条件(B-1)
難燃剤(B)は、臭素化アルキルイソシアヌレート化合物である。
条件(C-1)
難燃助剤(C)は、アンチモン化合物である。
条件(D-1)
耐光剤(D)は、下記式(I)で表されるヒンダードアミン化合物である。
式(I)
Figure 0007363649000001
(式中、Rは、水素原子または直鎖の炭素原子数1~30のアルキル基を表し、Rは炭素原子数1~30のアルキル基、または炭素原子数2~30のアルケニル基を表す。)
条件(E-1)
中和剤(E)は、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、ケイ酸アルミニウムカルシウム、周期律表第II族の金属の酸化物及び水酸化物、及びリチウムアルミニウム複合水酸化物塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
条件(ア)
各成分の含有量が、プロピレン系樹脂(A)80~99.4重量%、難燃剤(B)0.5~15重量%、難燃助剤(C)0.1~5重量%(但し、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計は100重量%である)であり、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して耐光剤(D)が0.1~5重量部であり、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して中和剤(E)が0.05~3重量部である。
[2]中和剤(E)が、下記条件(E-2)を更に満足する[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(E-2)
中和剤(E)がハイドロタルサイト類である。
[3]下記条件(F-1)を満足するエチレン-α-オレフィン共重合体(F)を更に含有し、かつ下記条件(イ)を満足する[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(F-1)
エチレン-α-オレフィン共重合体(F)に含まれるα-オレフィンは、炭素数3~8のα-オレフィンである。
条件(イ)
エチレン-α-オレフィン共重合体(F)の含有量が、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対してエチレン-α-オレフィン共重合体(F)0.1~15重量部である。
[4]下記条件(G-1)を満足するポリエステル樹脂(G)を更に含有し、かつ下記条件(ウ)を満足する[1]乃至[3]の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(G-1)
ポリエステル樹脂(G)は、数平均分子量が1,000~500,000の脂肪族ポリエステル化合物である。
条件(ウ)
ポリエステル樹脂(G)の含有量が、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対してポリエステル樹脂(G)0.5~10重量部である。
[5][1]乃至[4]のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
を提供するものである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体は、高温環境下における長時間に亘る難燃剤のブリード性が抑制され、良好な耐光性と難燃性のバランスが必要とされる屋外用途としての実用に十分な性能を有する。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
I.ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と記載することもある。)は、下記の条件(A-1)を満足するプロピレン系樹脂(A)と、下記の条件(B-1)を満足する難燃剤(B)と、下記の条件(C-1)を満足する難燃助剤(C)と、下記の条件(D-1)を満足する耐光剤(D)と、下記の条件(E-1)を満足する中和剤(E)とを含有し、かつ下記条件(ア)を満足することを特徴とする。
以下で、成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)等が満たすべき特性などについて、項目毎に、詳細に述べる。
1.プロピレン系樹脂(A)
以下に、本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)の詳細について説明する。本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)は、条件(A-1)を満足
するものである。
1-1.条件(A-1)
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系樹脂である。
プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体のうち、家電製品、建材、自動車部品等に使用されるポリプロピレン系樹脂組成物に求められる一般的な物性、即ち機械強度(剛性や耐衝撃性等)や手触り肌触り感(手触りでの粘着感)や耐傷付き特性等を良好にするにはプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体を用いるのが好ましい。そのなかでもプロピレン-エチレンブロック共重合体は、製造が比較的容易で市販製品の種類も多く、入手が容易であるので、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、本発明によって達成される特徴以外の一般物性を所望の範囲に調整するのが容易であり、成形性等の観点からも、好ましく用いられる。
本発明で用いられるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(以下、本明細書においては、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体とプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体を単に「プロピレン-α-オレフィン共重合体」と称することがある。)は、プロピレンとプロピレンを除く炭素数2~8のα-オレフィンをコモノマーとする共重合体であり、プロピレン含量が60~99.99重量%(すなわちコモノマー含量が0.01~40重量%)であり、好ましくはプロピレン含量が70~99重量%、更に好ましくはプロピレン含量が90~98重量%のプロピレンとα-オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体である。また、α-オレフィンの異なるランダム共重合体またはブロック共重合体の混合物であってもよい。このようなプロピレン-α-オレフィン共重合体を用いることにより、家電製品、建材、自動車部品等に使用されるポリプロピレン系樹脂組成物に求められる一般的な物性、即ち機械強度(剛性や耐衝撃性等)や手触り肌触り感(手触りでの粘着感)や耐傷付き特性等を良好なものとすることができる。また、このようなプロピレン-α-オレフィン共重合体は製造が比較的容易で市販製品の種類も多く、入手が容易であるので、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、本発明によって達成される特徴以外の一般物性を所望の範囲に調整するのが容易であり、成形性等の観点からも、好ましい。
本発明で用いられるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体は、一般に、プロピレン単独重合体部分70~99.99重量%とプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体部分0.01~30重量%とからなり、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体部分はプロピレンとプロピレンを除く炭素数2~8のα-オレフィンをコモノマーとするランダム共重合体である。プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体部分は好ましくは0.1~30重量%(即ち、プロピレン単独重合体部分は70~99.9重量%)、より好ましくは5~30重量%(プロピレン単独重合体部分は70~95重量%)、更に好ましくは15~30重量%(プロピレン単独重合体部分は70~85重量%)である。
また、本発明で用いられるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体において、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体部分におけるα-オレフィン含有量は通常30~60重量%(即ち、プロピレン含量は40~70重量%)、好ましくは35~58重量%(プロピレン含量は42~65重量%)、より好ましくは40~57重量%(プロピレン含量は43~60重量%)、更に好ましくは45~56重量%(プロピレン含量は44~55重量%)である。
このようなプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体を用いることにより、家電製品、建材、自動車部品等に使用されるポリプロピレン系樹脂組成物に求められる一般的な物性、即ち機械強度(剛性や耐衝撃性等)や手触り肌触り感(手触りでの粘着感)や耐傷付き特性等を特に良好なものとすることができる。また、このようなプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体は製造が比較的容易で市販製品の種類も多く、入手が容易であるので、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、本発明によって達成される特徴以外の一般物性を所望の範囲に調整するのが容易であり、成形性等の観点からも、特に好ましい。
また、プロピレンと共重合させるプロピレンを除く炭素数2~8のα-オレフィンであるコモノマーは、1種を用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体としては、具体的に、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ペンテン-1共重合体、プロピレン-ヘキセン-1共重合体、プロピレン-オクテン-1共重合体のような二元共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ヘキセン共重合体のような三元共重合体などが挙げられ、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1ブロック共重合体などが好ましい。
プロピレンを除く炭素数2~8のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、1-オクテン等を挙げることができる。
1-2.プロピレン系樹脂(A)のその他の物性等について
以下に、プロピレン系樹脂(A)のその他の物性等について説明する。
成形性の観点から、プロピレン系樹脂(A)は、融点が通常は100℃以上200℃未満であり、好ましくは130~170℃であり、160~165℃であることが更に好ましい。プロピレン系樹脂(A)の融点をこの様な範囲とすることにより、良好な成形性や難燃性を保つと共に、プロピレン系樹脂や後述する有機系難燃剤の劣化に伴う変色を防止し、一般的な用途において必要とされる良好な外観を得ることが可能となる。即ち、融点が100℃未満では成形体とした時に比較的低温で軟化してしまうため、難燃剤を添加し難燃性を付与する用途には適さない場合がある。一方、融点が200℃以上では成形温度が高くなってしまうため、プロピレン系重合体や難燃剤が成形時の熱により劣化し、変色等の原因となると共に、難燃剤やその他の添加剤がポリプロピレン系樹脂組成物中に十分に拡散せず、外観にむらを起こしたり、十分な難燃性が得られない場合がある。また、プロピレン系樹脂の融点は、主として、原料として用いられるプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンの種類、共重合比率、MFR等により、適宜制御することができる。なお、本明細書でいう「融点」とは、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)により、測定された融解ピーク温度である。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)は、JIS K7210に準拠したメルトフローレート(以下、MFRとも記す。)[測定温度230℃、荷重2.16kg(21.18N)]が、通常は0.1~200g/10分であり、1.0~150g/10分であるのが好ましい。10~130g/10分であるのが更に好ましく、30~100g/10分がより好ましい。MFRをこのような範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそのポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体において、良好な成形性や、成形体の良好な外観を保つことが可能となる。即ち、MFRが0.1g/10分を下回ると、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形する時の負荷が増大し、成形性が悪化すると共に、成形体の変色等を生じ外観が悪化するおそれがあり、逆に、200g/10分を上回ると、成形時にバリなどの成形不良を生じると共に、難燃剤やその他の添加剤がポリプロピレン系樹脂組成物中に十分に拡散せず、外観にむらを起こしたり、十分な難燃性が得られないおそれがある。
また、プロピレン系樹脂(A)は、その結晶化度を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が96%以上のものが、本発明おいて好ましく用いられ、更に好ましくは、アイソタクチックペンタッド分率97%以上である。アイソタクチックペンタッド分率が96%以上であると、成形体とした時に良好な結晶構造を発現し剛性や耐熱性が高くなり、難燃性効果も高めることが可能となる。プロピレン系樹脂(A)の結晶化度の制御は、原料の共重合比率や、使用する触媒によって分子量分布を制御することにより調整することができる。
なお、上記アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、13C-NMR(核磁気共鳴法)を用いて測定される値であり、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位の分率である。具体的には、13C-NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をもってアイソタクチックペンタッド単位を測定し、測定には、例えば日本電子社製FT-NMRの270MHzの装置やその他同等の性能を有する測定装置が用いられる。
本発明でプロピレン系樹脂(A)として用いられるプロピレン系重合体を製造するために用いられる触媒は、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒(例えば、ポリプロピレンハンドブック(1998年5月15日 初版第1刷発行)等に記載)、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5-295022号公報等に記載)が使用できる。
本発明でプロピレン系樹脂(A)として用いられるプロピレン系重合体を製造するために用いられる重合プロセスは、特に限定されるものではなく、公知の重合プロセスが使用可能である。
例えば、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等が使用できる。また、バッチ重合法や連続重合法のいずれも用いることができ、所望により、二段及び三段等の複数段の連続重合法を用いてもよい。また、2種以上のプロピレン系重合体を機械的に溶融混練することによっても、製造することができる。
また、プロピレン系樹脂(A)として使用可能なプロピレン系重合体は、種々の製品が多くの会社から市販されており、例えば日本ポリプロ社製のノバテックシリーズ等を挙げることができる。これら市販の製品から所望の物性を有する製品を購入し、使用することも可能である。
2.難燃剤(B)
2-1.条件(B-1)
本発明に用いられる難燃剤(B)は、臭素化アルキルイソシアヌレート化合物である。本発明で難燃剤(B)として用いられる臭素化アルキルイソシアヌレート化合物は、親水性が高い構造を有している。
難燃剤には大きく有機系難燃剤とリン系難燃剤があり、有機系難燃剤にはハロゲン系難燃剤とノンハロゲン系難燃剤がある。特にポリオレフィンについてはポリオレフィン自身の難燃性が著しく低いため、難燃化効果の高く、ポリオレフィン樹脂中に良好に分散し、ポリオレフィン樹脂のその他特性を損ない難い有機ハロゲン系難燃剤が好ましく使用される。
有機ハロゲン系難燃剤は、耐光剤と併用すると難燃剤と耐光剤が反応し、難燃剤の微量分解物によって耐光剤が失活する為に、耐光性が著しく損なわれることが知られているが、本発明では、難燃剤(B)として芳香族環に直接臭素が置換していない、親水性が高い構造を有する臭素化アルキルイソシアヌレートを用いることによって、難燃剤と耐光剤の反応が抑制され、耐光性の阻害効果が抑えられるという非常に優れた効果が得られる。
臭素化アルキルイソシアヌレート化合物としては、トリス(ジブロムプロピル)イソシアヌレート、ビス(ジブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(テトラブロムペンチル)イソシアヌレート等が例示される。
これら臭素化アルキルイソシアヌレート化合物は、1種単独で、又は2種以上を組合わせて用いてもよい。これらの臭素化アルキルイソシアヌレート化合物は、種々の市販品の中から所望の製品を入手し、使用することができる。
また、臭素化アルキルイソシアヌレート化合物と共に、その他のハロゲン系難燃剤や、リン系難燃剤などのハロゲン系難燃剤他の有機系難燃剤を本発明の効果を阻害しない範囲で使用することもできる。
3.難燃助剤(C)
3-1:条件(C-1)
本発明に用いられる難燃助剤(C)は、アンチモン化合物である。
アンチモン化合物は難燃剤(B)の臭素化アルキルイソシアヌレート化合物と反応し、難燃剤(B)の使用量が少ない場合でも、より高い難燃効果を発現することが可能となる、という理由で好ましい。
具体的なアンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、金属アンチモンがある。好ましいアンチモン化合物は、平均粒径が30μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下のものである。平均粒径の下限について特に制限はないが、取扱いの容易さや分散性の観点から、通常0.5μmのものが用いられる。金属酸化物の平均粒子径が30μmより大きい場合には、プロピレン系樹脂(A)に対する分散性が悪くなり、高度な難燃性を得ることが難しくなる傾向がある。
本発明で用いるアンチモン化合物としては、有機系難燃剤と併用することによって、より高い難燃性の相乗効果が得られるという理由から、三酸化アンチモンが好ましい。
これらのアンチモン化合物は、種々の市販品の中から所望の製品を入手し、使用することができる。
また、これらの難燃助剤(C)は単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
4.耐光剤(D)
4-1.条件(D-1)
本発明に用いられる耐光剤(D)は、下記式(I)で表されるヒンダードアミン化合物である。
式(I)
Figure 0007363649000002
式(I)中、Rは、水素原子または直鎖の炭素原子数1~30のアルキル基を表し、Rは炭素原子数1~30のアルキル基、または炭素原子数2~30のアルケニル基を表す。
上記式(I)において、R及びRで表される炭素原子数1~30のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、tert-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を挙げることができる。R及びRは、同じものであってもよく、相違してもよい。
上記式(I)においてRで表される炭素原子数2~30のアルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、オレイル等を挙げることができる。二重結合の位置は、α-位であっても、内部であっても、ω-位であってもよい。
本発明に用いられる式(I)で表されるヒンダードアミン化合物としては、より具体的には、下記の化合物No.1~No.7の化合物等を挙げることができる。但し、本発明は以下の化合物を例示することによって何ら制限を受けるものではない。尚、化合物No.5、No.6の混合アルキル基とは、上記式(I)中のRが炭素原子数15~17のアルキル基であるヒンダードアミン化合物の混合物を表し、化合物No.7の混合アルキル基とは、上記式(I)中のRが炭素原子数13~19のアルキル基であるヒンダードアミン化合物の混合物を表す。
Figure 0007363649000003
上記式(I)で表されるヒンダードアミン化合物の中では、Rは、水素原子又はメチル基であるものが好ましく、Rは、炭素原子数8~26のアルキル基の混合物である化合物が好ましい。
上記式(I)で表されるヒンダードアミン化合物の合成方法は、所定の炭素数を有する脂肪酸と2,2,6,6-テトラメチルピペリジノール骨格を有するアルコールとを反応させればよく、例えば、酸とアルコールの直接エステル化、酸ハロゲン化物とアルコールの反応、エステル交換反応等でエステル化が可能であり、精製方法としては、蒸留、再結晶、濾過材または吸着剤を用いる方法等を適宜使用できる。また、これらの式(I)で表されるヒンダードアミン化合物は、種々の市販品が単体やマスターバッチとして入手可能であるので、これらの中から所望の製品を入手し、使用することができる。
耐光剤(D)として用いられる上記ヒンダードアミン化合物は、疎水性の高い構造を有している。その為、耐光剤(D)はポリプロピレン系樹脂組成物中において、比較的疎水性の高い領域に存在すると考えられる。一方、難燃剤(B)は親水性が高い構造を有している。その為、難燃剤(B)はポリプロピレン系樹脂組成物中において、比較的親水性の高い領域に存在すると考えられる。このように、本発明で用いられる耐光剤(D)と難燃剤(B)はその存在する領域が異なる為に、「耐光剤と難燃剤が反応し、難燃剤の微量分解物によって耐光剤が失活し、耐光性が損なわれる」ということが抑制され、高い耐光性が得られると考えられる。
5.中和剤(E)
5-1.条件(E-1)
本発明に用いられる中和剤(E)は、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、ケイ酸アルミニウムカルシウム、周期律表第II族の金属の酸化物及び水酸化物、及びリチウムアルミニウム複合水酸化物塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。これらの中では、金属石鹸及び/又はハイドロタルサイト類化合物の使用が好ましく、ハイドロタルサイト類化合物が特に好ましい。これは、高いイオン交換能を有するハイドロタルサイトが、難燃剤が分解して発生する酸性物質を中和するためであると考えられる。
金属石鹸としては、高級脂肪酸若しくは脂肪酸オキシ酸とマグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、錫、鉛等の金属との金属塩等が挙げられる。高級脂肪酸としては、炭素数10~22の鎖状モノカルボン酸が挙げられ、ステアリン酸、ラウリン酸等が好ましい。また、脂肪酸オキシ酸としては、脂肪族カルボン酸の側鎖にアルコール性水酸基を有するものが挙げられ、乳酸、クエン酸、ヒドロキシステアリン酸等が好ましい。金属石鹸の好ましい例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、1 2 ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリル乳酸カルシウム、ラウリル乳酸カルシウム等が挙げられる。
ハイドロタルサイト類としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス等の含水塩基性炭酸塩または結晶水を含まないもので、天然物及び合成品が含まれる。天然物としては、MgAl(OH)16CO・ HOの構造のものが挙げられる。また、合成品としては、Mg0.7Al0.3(CO0.16・0.54HO、Mg4.5Al(OH)12CO・3.5HO、Mg4.2Al(OH)12.4CO、ZnAl(OH)16CO・4HO、CaAl(OH)16CO・4HO 、Mg14Bi(OH)29. 6・4.2HO 等が挙げられる。
その他の中和剤としては、ケイ酸アルミニウムカルシウム、周期律表第II族の金属の酸化物及び水酸化物、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩等を挙げることができる。周期律表第II族の金属の酸化物及び水酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩とは、一般的には下記一般式
[LiAl(OH)X・mH
(式中において、X は、CO、SOまたはHPOであり、m は0~3の数である。)
で示される化合物である。好適に使用されるリチウムとアルミニウムとの複合水酸化物塩を例示すると、例えば
[LiAl(OH)CO・1.6H
[LiAl(OH)SO・1.2H
[LiAl(OH)HPO・1 .4H
などを挙げることができる。
また、これらの中和剤(E)は、種々の市販品が入手可能であるので、これらの中から所望の製品を入手し、使用することができる。
5-2.条件(E-2)
本発明に用いられる中和剤(E)がハイドロタルサイト類である。
上記した本発明に用いられる中和剤(E)の中でもハイドロタルサイト類を用いると、難燃剤が分解して発生する酸性物質を中和するため、さらに優れた耐光性を有する成形品を得ることができ特に好ましい。
6.各成分の配合量
条件(ア):
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、各成分の含有量は、プロピレン系樹脂(A)80~99.4重量%、難燃剤(B)0.5~15重量%、難燃助剤(C)0.1~5重量%(但し、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計は100重量%である)であり、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して耐光剤(D)が0.1~5重量部であり、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して中和剤(E)が0.05~3重量部であることを必須とする。各成分の配合量をこの様な範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体において、非常に高い難燃性と耐光性を発現し、かつ、成形加工時の難燃剤のブリード性を良好に保つのみならず、高温条件下での耐熱ブリード性を良好に保ち、良好な製品外観を得ることが可能となる。即ち、このような種々の特徴を同時に良好に保つことが可能であることが、本願発明の特徴である。
プロピレン系樹脂(A)の含有量は、好ましくは84~98.9重量%、より好ましくは86~98.8重量%、特に好ましくは91~98.8重量%である。
難燃剤(B)の含有量は、好ましくは0.6~12重量%、より好ましくは0.7~10重量%、更に好ましくは0.9~8重量%、特に好ましくは1.2~6重量%である。
難燃材(B)の含有量を上記の範囲とすることにより、良好な難燃性を維持すると共に、成形時の難燃剤のブリード性を良好に保つのみならず、高温条件下での耐熱ブリード性を良好に保ち、成形体の外観を良好にするという効果が得られる。即ち、難燃剤(B)の配合量が本願規定の範囲を下まわると、十分な難燃性が得られない傾向となり、一方、本願規定の範囲を上まわると、成形時や成形体を高温条件下に保持した際のブリード物による成形体外観の悪化を生じる場合がある。
難燃助剤(C)の含有量は、好ましくは0.2~4重量%、より好ましくは0.3~3重量%、特に好ましくは0.6~2重量%である。
難燃助剤(C)の含有量を上記の範囲とすることにより、良好な難燃性を維持すると共に、良好な成形体を得ることが可能となる。即ち、難燃助剤(C)の配合量が本願規定の範囲を下まわると、十分な難燃性が得られない場合が有り、一方、本願規定の範囲を上まわると、難燃助剤(C)の凝集による成形不良を生じる場合がある。
耐光剤(D)は、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して0.1~5重量部含有され、好ましくは0.2~4重量部、より好ましくは0.5~3重量部、更に好ましくは0.8~2.5重量部、特に好ましくは1.0~2重量部である。
耐光剤(D)の含有量を上記の範囲とすることにより、耐光性の改良効果が得られると共に、ブリ-ドアウトなどの問題を生じにくく、成形品の機械的性質などの物性に悪影響を及ぼすことがない。
中和剤(E)は、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して0.05~3重量部含有され、好ましくは0.07~2.5重量部、より好ましくは0.08~2重量部、特に好ましくは0.09~1.5重量部である。
中和剤(E)の含有量を上記の範囲とすることにより、耐光性が良好であると共に、成形加工時に金型表面に移行して汚染したりすることがない。
7.エチレン-α-オレフィン共重合体(F)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、特に耐熱ブリード性を改良する目的で、下記条件(F-1)を満足するエチレン-α-オレフィン共重合体(F)を更に配合することができる。
7-1.条件(F-1)
エチレン-α-オレフィン共重合体(F)に含まれるα-オレフィンは、炭素数3~8のα-オレフィンである。
本発明において用いられる、エチレン-α-オレフィン共重合体(F)は、炭素数3~8のα-オレフィンを、10~50重量%、好ましくは15~48重量%、特に好ましくは20~48重量%含有するものである。α-オレフィンの含有量が上記範囲であると、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂組成物として一般に求められる機械強度の中でも、衝撃強度と剛性に優れたものとなる。すなわち、α-オレフィンの含有量が上記範囲未満であると、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の衝撃強度が劣る場合があり、一方、上記範囲を超えるとポリプロピレン系樹脂組成物の合成が低下する傾向があるため、各々不適である。
α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンなどを挙げることができる。なかでも、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。この共重合体は、ジエンとの3元共重合体であってもよく、この場合は、ジエンを1~10重量%、好ましくは2~8重量%、特に好ましくは3~6重量%含有することができる。
ジエンとの3元共重合体の場合は、共重合するジエンとしては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等を挙げることが出来る。具体的なエチレン-α-オレフィン共重合体の例は、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ヘプテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、例えば、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-シクロペンタジエン共重合体のような、α-オレフィンの各種又は外の共単量体を10~50重量%を任意に組み合わせた、二元または三元の各種共重合体が挙げられる。上記エチレン-α-オレフィン共重合体は、各モノマーを触媒の存在下重合することにより製造される。触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、アルキルアルミニウム-マグネシウム錯体、のような有機アルミニウム-マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物触媒を使用することができる。重合法としては、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用して重合することができる。市販品を例示すれば、ジェイエスアール社製EDシリーズ、三井化学社製タフマーPシリーズ及びタフマーAシリーズ、デュポンダウ社製エンゲージEGシリーズ、などを挙げることができ、これらはいずれも本発明において使用することができる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いるエチレン-α-オレフィン共重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重で測定)は、0.1~40g/10分が好ましく、より好ましくは0.2~20g/20分である。MFRが上記の範囲にあると、成形性や塗装性が良好であり、耐衝撃性に優れる。
7-2.条件(イ)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、下記条件(イ)を満足することが好ましい。
条件(イ):
エチレン-α-オレフィン共重合体(F)の含有量が、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して0.1~15重量部である。
エチレン-α-オレフィン共重合体(F)は、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して0.1~15重量部含有され、好ましくは1~15重量部、より好ましくは3~14重量部、特に好ましくは5~12重量%である。エチレン-α-オレフィン共重合体(F)の含有量を上記の範囲とすることにより、耐ブリード性が改良されたポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を得ることができる。
8.ポリエステル樹脂(G)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、下記条件(G-1)を満足するポリエステル樹脂(G)を更に配合することができる。
条件(G-1)
ポリエステル樹脂(G)は、数平均分子量が1,000~500,000の脂肪族ポリエステル化合物である。
本発明に用いられるポリエステル樹脂(G)としては、炭素数4~11のラクトンの開環重合で得られるラクトン重合体や、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸又はテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等の脂環式ジオール又はテトラメチレングリコール等のエーテル系ジオール等との縮合反応により得られるポリエステル樹脂や、ポリエステル樹脂とラクトン類を共重合したラクトン変性ポリエステル樹脂や、ヒドロキシカルボン酸の重合樹脂や、3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシバリレート等のヒドロキシカルボン酸類の共重合樹脂等や、これらの混合物が用いられる。
これらの脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸は、2種以上を混合して使用してもよい。また、ジオール類においても2種以上を混合して使用することができる。中でも、ポリエステル樹脂としては、ラクトン重合体が好ましく、具体的には、ポリ-ε-カプロラクトンが好適に用いられる。また、ε-カプロラクトンの単量体以外に、バレロラクトンやグリコリド、ラクチド等のコモノマーなどを使用した共重合体も使用可能である。
本発明に用いられるポリエステル樹脂(G)の分子量は、数平均分子量で1,000~500,000、好ましくは5,000~200,000、更に好ましくは1,000~150,000、特に好ましくは30,000~100,000である。数平均分子量が上記の範囲であると、ブリード防止効果が得られ、プロピレン系樹脂(A)への溶融混練が可能である。ここに示す数平均分子量とは、液体クロマトグラフィー(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー:GPC)を用いて測定した数平均分子量である。
ラクトン重合体の製造は、ラクトンモノマーに重合開始剤を加え、好ましくは、触媒を使用して、120~230℃、好ましくは140~220℃で数時間攪拌し、連続もしくはバッチ反応により得られる。使用される重合開始剤は、水または水酸基末端を有する化合物であり、水酸基末端を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のアルキレングリコールを例示することができる。また、重合触媒としては、種々の有機または無機の金属化合物等が使用でき、具体的には、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラエチルチタネート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、オクチル酸スズ、塩化第一スズ等を挙げることができる。これらの触媒の使用量は、出発原料に対して0.1~1,000ppm、好ましくは0.5~500ppmである。
脂肪族及び芳香族ポリエステル樹脂は、公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールエステルと過剰量のグリコールを触媒の存在下で、エステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あるいは、ジカルボン酸と過剰量のグリコールを、触媒の存在下でエステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法で得られる。反応温度は、180~290℃、好ましくは200~280℃である。重縮合触媒としては、チタン化合物、アンチモン化合物、スズ化合物、カルシュウム化合物、マンガン化合物等を挙げることができる。これらの触媒の使用量は、出発原料に対して0.1~1,000ppm、好ましくは0.5~500ppmである。
また、これらのポリエステル樹脂は、種々の市販品が入手可能であるので、これらの中から所望の製品を入手し、使用することができる。
8-2.条件(ウ)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、下記条件(ウ)を満足することが好ましい。
条件(ウ):
ポリエステル樹脂(G)の含有量が、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して0.5~5重量部である。
ポリエステル樹脂(G)は、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して0.5~10重量部含有され、好ましくは1~10重量部、より好ましくは2~8重量部、特に好ましくは3~5重量部である。エチレン-α-オレフィン共重合体(F)の含有量を上記の範囲とすることにより、ブリードの防止効果が得られ、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の物性を低下させず、造粒加工性も低下することがない。
9.任意添加成分(H)
本発明においては、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)、難燃助剤(C)、耐光剤(D)、中和剤(E)、エチレン-α-オレフィン共重合体(F)及びポリエステル樹脂(G)の他に、必要に応じ、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、例えば、発明効果を一層向上させ、他の効果を付与するなどのため、通常用いられる任意添加成分(H)を配合することができる。
具体的には、核剤、過酸化物などの分子量降下剤、顔料などの着色剤、フェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、非イオン系などの帯電防止剤、有機金属塩系などの分散剤、窒素化合物などの金属不活性化剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、可塑剤、滑剤、エラストマー(ゴム成分)、難燃助剤(C)に該当しない難燃助剤、プロピレン系樹脂(A)以外のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂、ガラス繊維、炭素繊維などのフィラー、難燃剤(B)以外の水和金属化合物などの無機系の難燃剤などを挙げることができる。
これらの任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、本発明で用いられる各成分に混合、添加されていてもよく、夫々の成分においても2種以上併用することもできる。本発明において、任意添加成分(H)の配合量は特に限定されないが、通常、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して、0~10重量部程度である。
9-1.任意添加成分(H)の種類
本発明で使用することができる核剤としては、タルク、ミョウバン、シリカ、カーボンブラック、粘土鉱物などの充填剤としても使用される無機化合物や、ソルビトール系などの一般によく使用される造核剤を使用することができる。
これらの核剤は単独でも使用してもよく2種類以上を併用してもよい。
本発明で使用することができる分子量降下剤として、例えば、各種の有機過酸化物や、分解(酸化)促進剤と称されるものなどが使用でき、なかでも有機過酸化物が好適である。
具体例として、有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチルパーアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチル-ジ-パーアジペート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、メチル-エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルキュミルパーオキサイド、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス-t-ブチルパーオキシブタン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジ-イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラ-メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。なお、これらに限定されるものではない。
本発明で使用することができる着色剤として、例えば無機系や有機系の顔料などは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体の、着色外観、耐傷付性、見映え、風合い、商品価値、耐光性や耐久性などの付与、向上などに有効である。
具体例として、無機系顔料としては、ファーネスカーボン、ケッチェンカーボンなどのカーボンブラック;クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物などが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
本発明で使用することができる紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系やサリシレート系などは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体の耐光性や耐久性などの付与、向上に有効である。
具体例としては、ベンゾトリアゾール系としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4-t-ブチルフェニルサリシレート;2,4-ジ-t-ブチルフェニル3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
ここで、前記耐光剤(D)と紫外線吸収剤とを併用すると、耐光性、耐久性などの向上効果が大きく好ましい。
本発明で使用することができる酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系の酸化防止剤などは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体の、耐熱安定性、加工安定性、耐熱老化性などの付与、向上などに有効である。
本発明で使用することができる帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体の帯電防止性の付与、向上に有効である。
難燃助剤(C)に該当しない難燃助剤としては、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミ、酸化モリブデン、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム等が挙げられる。より好ましい難燃助剤(C)に該当しない難燃助剤としては、酸化亜鉛、酸化鉄であり、平均粒径が30μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下のものが好適である。難燃助剤(C)に該当しない難燃助剤の平均粒子径が30μmより大きい場合には、プロピレン系樹脂(A)に対する分散性が悪くなり、高度な難燃性を得ることができなくなる。難燃助剤(C)に該当しない難燃助剤を使用する場合の配合量は、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.3~4重量部、特に好ましくは0.5~3重量部である。難燃助剤(C)に該当しない難燃助剤の配合量をこの様な範囲とすることにより、難燃剤(B)や難燃助剤(C)との相乗効果による良好な難燃性を発現することが可能となる。即ち、配合量が0.05重量部未満では、添加による十分な相乗難燃効果が得られない場合が有り、一方、5重量部を超えて添加すると、添加量に見合った効果が見られず、経済的に不利となる場合が有るので好ましくない。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に使用可能な界面処理剤の代表例は、変性ポリオレフィンである。これらの変性ポリオレフィンとしては、酸変性ポリオレフィン及び/またはヒドロキシ変性ポリオレフィンであり、本発明において、機械物性(特に剛性・衝撃強度)などの機能をより高度に付与する特徴を有する。
酸変性ポリオレフィンとしては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。該酸変性ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン化合物共重合体(EPDMなど)、エチレン-芳香族モノビニル化合物-共役ジエン化合物共重合ゴムなどのポリオレフィンを、例えば、マレイン酸または無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸を用いてグラフト共重合し、変性したものである。このグラフト共重合は、例えば上記ポリオレフィンを適当な溶媒中において、ベンゾイルパーオキシドなどのラジカル発生剤を用いて、不飽和カルボン酸と反応させることにより行われる。また、不飽和カルボン酸またはその誘導体の成分は、ポリオレフィン用モノマーとのランダムもしくはブロック共重合によりポリマー鎖中に導入することもできる。
変性のため使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基及び必要に応じてヒドロキシル基やアミノ基などの官能基が導入された重合性二重結合を有する化合物が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などがあり、その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。好ましくは無水マレイン酸である。
グラフト反応条件としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキシド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3などのパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド類、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサンなどのヒドロパーオキシド類などの有機過酸化物を、前記ポリオレフィン100重量部に対して、0.001~10重量部程度用いて、80~300℃程度の温度で、溶融状態または溶液状態で反応させる方法が挙げられる。
該酸変性ポリオレフィンの酸変性量(グラフト率という場合がある。)は、特に限定されないが、好ましくは酸変性量が無水マレイン酸換算で、0.05~10重量%、より好ましくは0.07~5重量%である。
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
また、ヒドロキシ変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を含有する変性ポリオレフィンである。該変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を適当な部位、例えば、主鎖の末端や側鎖に有していてもよい。
ヒドロキシ変性ポリオレフィンを構成するオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、4-メチルペンテン-1、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセンなどのα-オレフィンの単独または共重合体、前記α-オレフィンと共重合性単量体との共重合体などが例示できる。
好ましいヒドロキシ変性ポリオレフィンには、ヒドロキシ変性ポリエチレン(例えば、低密度、中密度または高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体など)、ヒドロキシ変性ポリプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレンホモポリマー、プロピレンとα-オレフィン(例えば、エチレン、ブテン、ヘキサンなど)とのランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体など)、ヒドロキシ変性ポリ(4-メチルペンテン-1)などが例示できる。前記反応性基を導入するための単量体としては、例えば、ヒドロキシル基を有する単量体(例えば、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど)が例示できる。
ヒドロキシル基を有する単量体による変性量は、オレフィン系樹脂に対して、0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%である。ヒドロキシ変性ポリオレフィンの平均分子量は特に限定されない。該ヒドロキシ変性ポリオレフィンは、例えば低分子量系の場合、共役ジエンモノマーをアニオン重合などの公知の方法により重合させ、それを加水分解して得たポリマーを水素添加する方法で得ることができる。
なお、これらの変性ポリオレフィンは2種以上併用してもよい。
界面処理剤として使用される変性ポリオレフィンの配合量は、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して、0~10重量部、好ましくは0.01~7重量部、より好ましくは0.5~5重量部、さらに好ましくは1~3重量部である。変性ポリオレフィンの配合量をこの様な範囲とすることにより、製品とした時に一般的に求められる機械強度、例えば衝撃強度を良好に保つことが可能となる。変性ポリオレフィンの配合量が10重量部を超えると、衝撃強度の低下や経済性などが低下するおそれがある。
これらの任意成分は、種々の製品が多くの会社から市販されているので、所望の製品を入手し、使用することが可能である。
II.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法、成形体の製造方法及び用途
1.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、各成分を前記配合割合で、従来公知の方法で配合し、溶融混練する混練工程を経ることにより製造することができる。
混合は、通常、タンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機器を用いて行い、溶融混練は、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー、撹拌造粒器などの混練機器を用いて(半)溶融混練し造粒する。(半)溶融混練・造粒して製造する際には、前記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また必要に応じて各成分を分割して混練する。すなわち、例えば、先ずプロピレン系樹脂(A)及び難燃剤(B)、難燃助剤(C)の一部または全部とを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
2.成形体の製造方法及び用途
本発明の成形体は、上記した本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体である。本発明の成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を、例えば、射出成形(ガス射出成形、二色射出成形、コアバック射出成形、サンドイッチ射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、シート成形及び中空成形などの周知の成形方法にて成形することによって得ることができる。この内、射出成形または射出圧縮成形にて得ることが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体は、自動車部品、電機部品、容器包装部材、建築用部材、大型部材等に好適に利用できる。
電気部品分野においては、炊飯ジャー、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、扇風機、エアコン等の家電部品、建築用部材においては化粧台、換気扇、便座、便蓋、及び付属品として使用される機器のハウジング類等の住宅設備用機器部品等の用途として使用することができる。中でも自動車用部部品としては、インストルメントパネル、ピラー等の内装部品や、バンパー等の外装部品に好適に用いることができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、メルトフローレートは1.0~100g/10minが好ましく、さらに好ましくは5.0~80g/minである。メルトフローレートをこの様な範囲とすることにより、良好な成形性を達成すると共に、良好な難燃性と外観を得ることが可能となる。即ち、1.0g/10minを下回ると射出成形においてショートショットや外観不良(トラシマ)等の不具合を生じる場合がある。また、30g/10minを上回ると、溶融粘度を維持することが困難となり、また、射出成形時にガスによる外観不良(シルバーストレーク)を生じる傾向となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、荷重たわみ温度(HDT)は70℃以上が好ましい。上限は特に制限はないが、通常200℃である。荷重たわみ温度をこの様な範囲とすることによって、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物をより高温部材として適用可能となり、用途が一層広がることとなる。即ち、荷重たわみ温度が70℃を下回る場合、高温部材(エンジン部材、ヒーター周辺機器等)への使用が困難となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、曲げ弾性率は800MPa以上が好ましい。上限は特に制限はないが、通常15000MPaである。曲げ弾性率をこの様な範囲とすると、製品として一般に求められる十分な剛性が得られると共に通常は十分な曲げ強度が得られ、特に自動車部材のような高い剛性が求められる用途にも、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を使用することが可能となる。即ち、曲げ弾性率が800MPaを下回る場合、製品として一般に求められる十分な剛性を維持できず自動車部材へは安全面及び生産性等から適用が困難となる。
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品が種々のフィラー(充填剤)を含有することにより、優れた機械物性及び耐光性、成形性を付与することができる。これらの優れた機械物性に加えて、極めて高い難燃性を有するため、自動車部品、電機部品、容器包装部材、建築用部材、大型部材等に好適に利用できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は以下の通りである。
1.評価方法
(1)耐光性:射出成型機(株式会社東芝社製、EC20)にて200℃、金型温度40℃で成形した80×60×2mmの成形品から縦20mm横20mmに試験片を切り出し、メタルハライド式耐光性試験機(岩崎電気社製、アイスーパーUVテスター「型式:SUV-W13、照度950W/cm」)を用いて紫外線(UV光)を50時間、100時間それぞれ照射した。その後、試験片の照射表面の50倍の顕微鏡による観察、および分光測色計(コニカミノルタ社製CM-700d)による照射前の試験片と照射後の試験片とのE値の変化(ΔE)の測定から、下記の基準で評価した。
◎:100時間照射後にクラックが発生せず、かつ100時間照射後のΔE≦3である
○:100時間照射後にクラックが発生せず、かつ100時間照射後のΔE>3である
△:100時間照射後にクラックが発生したが、50時間照射後にはクラックが発生していなかったので、実用可能
×:50時間照射後にクラックが発生し、実用不可
なお、50時間照射後にクラックが発生している場合は評価をその段階で中止した。
(2)耐熱ブリード性:射出成型機(株式会社東芝社製、EC20)にて200℃、金型温度40℃で成形した80×60×2mmの試験片を80℃に調整したオーブン中に400時間暴露した後、ブリード物の有無を試験片表面を垂直方向から目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:ブリードが全く発生しなかった
○:わずかに粉状のブリード物が析出しているものの、試験片表面の全体に光沢の低下がみられなかった
△:粉状のブリード物が析出し、試験片表面の一部に光沢の低下がみられたが、実用可能
×:ブリード物の結晶が前面に析出し、実用不可
(3)垂直燃焼速度:射出成型機(株式会社東芝社製、IS100GN)にて200℃、金型温度40℃で成形した125×13×2mmの試験片を、ドラフトフリー環境の箱内で上端をクランプで掴み垂直方向に固定した。JIS-C60695-11-4に規定された公称50W標準試験炎を試験片の下端に15秒間接炎し、試験片を着火した。炎が試験片の下端から20mmの位置に到達した時点から100mmの位置に到達した時点までの時間を計測し以下の式(1)に従って垂直燃焼速度を求めた。
垂直燃焼速度(mm/min)=80×60/炎が試験片の下端から20mmの位置に到達した時点から100mmの位置に到達した時点までの時間(s)・・・式(1)
炎が試験片の下端から100mmの位置に到達する前に消火した場合、および着火しなかった場合は自消とした。
上記の結果に基づき、以下の評価を行った。
○:自消、または垂直燃焼速度が50mm/min以下
△:垂直燃焼速度が50mm/minを超え、100mm/min以下
×:垂直燃焼速度が100mm/minを超える
(4)総合判定:(1)耐光性、(2)耐熱ブリード性、(3)垂直燃焼速度の評価結果をもとに、以下の基準で判定した。
◎:各評価に×及び△が無く、かつ◎が2項目以上
○:各評価に×及び△が無く、かつ◎が2項目未満
△:各評価に×が無く、かつ△が1項目以上
×:各評価の何れか1項目以上に×が有る
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠し、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
2.原材料
(A):プロピレン系樹脂
A-1:プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(日本ポリプロ製、ニューコンNBC03HRA、MFR=30g/10min)
A-2:プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(日本ポリプロ製、ノバテックBC03C、MFR=30g/10min)
A-3:プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(日本ポリプロ製、ノバテックBC10HRF、MFR=100g/10min)
A-4:プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(燕山石化製、K9829H、MFR=29g/10min)
A-5:プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(燕山石化製、K7726H、MFR=26g/10min)
A-6:プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(燕山石化製、K7100、MFR=100g/10min)
A-7:プロピレン単独重合体(SABO社製、SABOSTAB UV91 50PP(耐光剤のマスターバッチ)中のベース樹脂成分、MFR=10g/10min)
(B):難燃剤
B-1:トリス(ジブロモプロピル)イソシアヌレート (鈴裕化学社製 ファイアカットP-660)
B-2:ビス[3,5-ジブロモ-4-(2、3-ジブロモプロピオキシ)フェニル]スルホン (丸菱油化工業社製 ノンネン52)
B-3:2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロピオキシ)フェニル]プロパン (鈴裕化学社製 ファイアカットP-680)
B-4:1,2-ビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)エタン (アルベマール社製 Saytex8010)
なお、B-2,B-3及びB-4は本願既定の範囲外の難燃剤である。
(C):難燃助剤
C-1:三酸化アンチモン(鈴裕化学社製、ファイアカットAT3)
(D):耐光剤
D-1:2.2.6.6-テトラメチル-4-ピペリジニルステアレート(SABO社製、SABOSTAB UV91 50PP中の耐光剤成分)
D-2:ビス(2.2.6.6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(BASF社製、TINUVIN770DF)
D-3:テトラキス(1.2.2.6.6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1.2.3.4-ブタンテトラカルボキシラート(ADEKA社製、アデカスタブLA-52)
D-4:デカン二酸ビス(2.2.6.6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル(BASF社製、TINUVIN123)
なお、D-2,D-3及びD-4は本願既定の範囲外の難燃剤である。
(E):中和剤
E-1:ステアリン酸カルシウム(日油製、カルシウムステアレート)
E-2:ハイドロタルサイト(共和化学製、DHT-4A)
(F):エチレン-α-オレフィン共重合体
F-1:エチレン-1-オクテン共重合物(DOW社製、エンゲージ8200)
(G):ポリエステル樹脂
G-1:ポリカプロラクトン(鈴裕化学社製、ヒロマスターBC-7A、数平均分子量70,000(但し数平均分子量は、カタログ値))
(H):任意添加成分
H-1:ペンタエリスリトール=テトラキス[3-(3‘.5’-ジ-tert-ブチル-4‘-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF社製、Irganox1010)(酸化防止剤)
H-2:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(BASF社製、Irgafos168)(酸化防止剤)
H-3:2-(2‘-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5‘-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製、TINUVIN326)(紫外線吸収剤)
H-4:リン酸=2,2‘-メチレンビス(4.6-ジ-tert-ブチルフェニル)ナトリウム(ADEKA社製、アデカスタブNA-11)(核剤)
(実施例1~12、比較例1~8)
表1及び表2に示す成分を、表1及び表2に示す割合にて、スーパーミキサーにてドライブレンドした後、押し出し温度200℃、吐出量20kg/hの条件で二軸押出し機(日本製鋼所製、TEX30)を用いて溶融混練した。溶融混練後、前記の方法にて試験片を作成し、各評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
Figure 0007363649000004
Figure 0007363649000005
実施例及び比較例の評価結果の考察
(1)実施例1~3
表1及び表2から明らかなように、実施例1~3は本願発明の請求項1の各要件を満たしており、難燃剤、難燃助剤、耐光剤、中和剤の組み合わせにより特異的に耐光性、耐熱ブリード性、垂直燃焼速度のバランスに優れた良好な成形品が得られた。
(2)実施例4~12
実施例4~12では中和剤としてハイドロタルサイトを添加することで、実施例1~3と比較してさらに優れた耐光性を有する成形品が得られた。これは、高いイオン交換能を有するハイドロタルサイトが、耐光試験時に難燃剤が分解して発生する酸性物質を中和するためであると考えられる。
(3)実施例6、10
実施例6、10ではエチレン-α-オレフィン共重合体を添加することで、実施例1~5、9と比較してさらに優れた耐熱ブリード性を有する成形品が得られた。これは、非晶性のエチレン-α-オレフィン共重合体が難燃剤を相溶することで難燃剤がブリードアウトすることを抑制しているものと考えられる。
(4)実施例7、8、11、12
実施例7、8、11、12ではポリエステル樹脂を添加することで、実施例1~6、9、10と比較してさらに優れた耐熱ブリード性を有する成形品が得られた。これは、親水性のポリエステル樹脂が難燃剤をさらに良く相溶することで、難燃剤がブリードアウトすることを抑制している為と考えられる。
(5)比較例1
比較例1では実施例1と比較して、難燃剤と難燃助剤を添加していないことで、垂直燃焼速度が100mm/min以上となり難燃性が悪化した。
(6)比較例2~7
比較例2~4では実施例1と比較して、本発明の要件と異なる種類の難燃剤を添加したことで、耐光性が著しく悪化した。また比較例5~7では実施例1と比較して、本発明の要件と異なる種類の耐光剤を添加したことで、耐光性が著しく悪化した。耐光試験時に難燃剤が微量分解することで発生する酸性物質が、塩基性の耐光剤との間に塩を形成して失活させることは一般的に知られており、本発明の難燃剤および耐光剤の組み合わせは、それぞれの親水性、疎水性の特異的なバランスのために、不均一系であるポリプロピレン系樹脂組成物中で異なる領域に存在することで耐光剤の失活を防ぐことができると考えられる。特に比較例5,6では実施例1と比較して耐ブリード性が悪化した。これは本発明の耐光剤が室温付近に融点を持っているため、成形品の表面で難燃剤のブリード白化を抑制すると考えられる。
(7)比較例8
比較例8では、耐光剤の添加量が本発明の要件より少ないことで、耐候性が悪化した。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐光性、耐熱ブリード性、難燃性に優れるポリプロピレン樹脂組成物であり、難燃性、耐光性、直射日光による高温環境での耐ブリード性が必要とされる屋外用途としての実用に十分な性能を有し、工業的に用いることができる。

Claims (5)

  1. 下記の条件(A-1)を満足するプロピレン系樹脂(A)と、下記の条件(B-1)を満足する難燃剤(B)と、下記の条件(C-1)を満足する難燃助剤(C)と、下記の条件(D-1)を満足する耐光剤(D)と、下記の条件(E-1)を満足する中和剤(E)とを含有し、かつ下記条件(ア)を満足することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(A-1)
    プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系樹脂である。
    条件(B-1)
    難燃剤(B)は、臭素化アルキルイソシアヌレート化合物である。
    条件(C-1)
    難燃助剤(C)は、アンチモン化合物である。
    条件(D-1)
    耐光剤(D)は、下記式(I)で表されるヒンダードアミン化合物である。
    式(I)
    Figure 0007363649000006
    (式中、Rは、水素原子または直鎖の炭素原子数1~30のアルキル基を表し、Rは炭素原子数1~30のアルキル基、または炭素原子数2~30のアルケニル基を表す。)
    条件(E-1)
    中和剤(E)は、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、ケイ酸アルミニウムカルシウム、周期律表第II族の金属の酸化物及び水酸化物、及びリチウムアルミニウム複合水酸化物塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
    条件(ア)
    各成分の含有量が、プロピレン系樹脂(A)80~99.4重量%、難燃剤(B)0.5~15重量%、難燃助剤(C)0.1~5重量%(但し、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計は100重量%である)であり、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して耐光剤(D)が0.1~5重量部であり、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対して中和剤(E)が0.05~3重量部である。
  2. 中和剤(E)が、下記条件(E-2)を更に満足する請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(E-2)
    中和剤(E)がハイドロタルサイト類である。
  3. 下記条件(F-1)を満足するエチレン-α-オレフィン共重合体(F)を更に含有し、かつ下記条件(イ)を満足する請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(F-1)
    エチレン-α-オレフィン共重合体(F)に含まれるα-オレフィンは、炭素数3~8のα-オレフィンである。
    条件(イ)
    エチレン-α-オレフィン共重合体(F)の含有量が、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対してエチレン-α-オレフィン共重合体(F)0.1~15重量部である。
  4. 下記条件(G-1)を満足するポリエステル樹脂(G)を更に含有し、かつ下記条件(ウ)を満足する請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(G-1)
    ポリエステル樹脂(G)は、数平均分子量が1,000~500,000の脂肪族ポリエステル化合物である。
    条件(ウ)
    ポリエステル樹脂(G)の含有量が、プロピレン系樹脂(A)、難燃剤(B)及び難燃助剤(C)の合計100重量部に対してポリエステル樹脂(G)0.5~10重量部である。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。

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