本開示の実施形態のセラミック回路基板および電子装置について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における上下の区別は便宜的なものであり、実際にセラミック回路基板および電子装置等が使用される際の上下を限定するものではない。
図1はセラミック回路基板の実施形態の一例の外観を示し、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)は下面図である。図2(a)は図1(a)のA-A線における断面図であり、図2(b)は図1(a)のB-B線における断面図である。図3はセラミック回路基板の実施形態の他の一例の外観を示し、図3(a)は上面図、図3(b)は側面図、図3(c)は下面図である。図4(a)は図3(a)のA-A線における断面図であり、図4(b)は図4(a)のB-B線における断面図である。図5はセラミック回路基板の実施形態の他の一例の外観を示し、図5(a)は上面図、図5(b)は側面図、図5(c)は下面図である。図6(a)は図5(a)のA-A線における断面図であり、図6(b)は図5(a)のB-B線における断面図であり、図6(c)は図6(a)のC-C線における断面図ある。図7はセラミック回路基板の実施形態の他の一例の外観を示し、図7(a)は上面図、図7(b)は側面図、図7(c)は下面図である。図8(a)は図7(a)のA-A線における断面図であり、図8(b)は図7(a)のB-B線における断面図であり、図8(c)は図8(a)のC-C線における断面図ある。図9(a)は電子装置の実施形態の一例の上面図であり、図9(b)は図9(a)のB-B線における断面図である。図10(a)は電子装置の実施形態の他の一例の上面図であり、図10(b)は図10(a)のB-B線における断面図である。なお、図2(b)、図4(b)、図6(c)および図8(c)においては、他の区別を容易にするために内部回路金属板等にはハッチングを施していない。
セラミック回路基板100は、第1面11および反対側の第2面12を有する第1セラミック基板1と、第3面21および反対側の第4面22を有する第2セラミック基板2と、第1セラミック基板1の前記第1面11に接合されている複数の回路金属板3と、回路金属板3と離間した位置で第1セラミック基板1の第1面11に接合されている複数の端子金属板4と、第1セラミック基板1の第2面12と第2セラミック基板2の第3面21との間に位置してこれらに接合されており、回路金属板3と端子金属板4とを電気的に接続する複数の内部回路金属板5と、第2セラミック基板2の第4面22に接合されている放熱金属板6と、複数の内部回路金属板5間に充填されている絶縁物7と、を備えている。
このようなセラミック回路基板100によれば、内部回路金属板5間が空隙である場合に比較して絶縁性および熱伝導性に優れる絶縁物7が内部回路金属板5間にあるため、内部回路金属板5間の絶縁性に優れ、回路金属板3から放熱金属板6への伝熱性に優れるものとなる。
図1~図8に示す例では、第1セラミック基板1の第1面11(上面)の中央部に複数の回路金属板3が接合され、同じ第1面11において、回路金属板3が接合された中央部を挟む外周部に複数の端子金属板4が接合されている。回路金属板3および端子金属板4は、例えば活性ろう材(不図示)で第1セラミック基板1に接合されている。回路金属板3の一部は電子部品200が搭載される搭載用金属板31であり、それ以外の回路金属板3は電子部品200とボンディングワイヤ210で接続される。端子金属板4は外部回路と接続するための外部端子である。回路金属板3および端子金属板4の形状、数および配置等はセラミック回路基板100に搭載される電子部品200の数や種類により適宜設定されるものである。
回路金属板3と端子金属板4とは、第1セラミック基板1の第2面12に接合された内部回路金属板5で電気的に接続されている。回路金属板3と内部回路金属板5との電気的接続および内部回路金属板5と端子金属板4との電気的接続は、第1セラミック基板1を厚み方向に貫通する導通用貫通孔14内の貫通導体51でなされている。図1~図8に示す例では、貫通導体51は金属柱であり、回路金属板3、内部回路金属板5および端子金属板4のそれぞれとは、例えばろう材(不図示)で接合されている。
内部回路金属板5は、第1セラミック基板1の第2面12(下面)と第2セラミック基板2の第3面21(上面)との間に位置している。内部回路金属板5は、第1セラミック基板1と第2セラミック基板2とに挟まれており、例えば活性ろう材(不図示)で接合されている。
内部回路金属板5は、図1および図2に示す例のように第1セラミック基板1および第2セラミック基板2の両方に接合された1層であってもよいし、図3~図10に示す例のように第1セラミック基板1に接合された内部回路金属板5と第2セラミック基板2に接合された内部回路金属板5とがろう材(不図示)で接合された2層であってもよい。
第2セラミック基板2の第4面22(下面)には、放熱金属板6が接合されている。放熱金属板6は、第2セラミック基板2より一回り小さいものであり、第2セラミック基板2の第4面22のほぼ全面を覆って接合されている。この接合も他と同様に、活性ろう材で接合することができる。放熱金属板6は、回路金属板3(搭載用金属板31)に搭載された電子部品200で発生した熱を外部へ放熱するためのものである。
複数の内部回路金属板5間には絶縁物7が充填されている。絶縁物7は、電気的絶縁性を有するとともに、内部回路金属板5間に絶縁物7がない場合の空隙内にある空気等の気体よりも熱伝導率が大きいものである。第1セラミック基板1と第2セラミック基板2とに挟まれている複数の内部回路金属板5間に充填しやすいように、少なくともその前駆体が流動性を有するものとすることができる。例えば、前駆体として液状の樹脂を内部回路金属板5間に注入して固化させた絶縁性の樹脂である。樹脂以外では、ガラスを用いることができる。溶融したガラスを内部回路金属板5間に注入して冷却して固化させて絶縁物7とすることができる。樹脂より熱伝導率が高いもの多いという点、あるいは吸湿性が小さいという点ではガラスがよい。しかしながら、内部回路金属板5間への注入の容易性(作業性)の点では樹脂の方がよい。また、絶縁物7にクラック等が生じると絶縁性が低下しやすくなるが、クラックが発生し難いという点でも樹脂の方がよい。
絶縁物7に用いる樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等を用いることができる。熱伝導率を向上させるために、このような樹脂に樹脂よりも高熱伝導率のフィラーを含むものとすることができる。フィラーは、例えばセラミック粒子等の絶縁性粒子を用いることができる。金属等の導電性粒子を用いることもできるが、この場合は絶縁性を確保するために含有量を調整する必要がある。
図1~図8に示す例においては、第1セラミック基板1の第1面11には、回路金属板3および端子金属板4以外に、枠状金属板8も接合されている。このように、第1セラミック基板1の第1面11に接合され、複数の回路金属板3を取り囲む枠状金属板8を有しているセラミック回路基板100とすることができる。
このような構成であると、後述するセラミック回路基板100を用いた電子装置600を作製する際に、枠状金属板8に蓋体400を接合することで、回路金属板3に搭載された電子部品200の周りを容易に気密封止することができる。枠状金属板8は、回路金属板3だけを囲んでおり、端子金属板4は枠状金属板8の外に位置している。そのため、(回路金属板3に搭載された)電子部品200は気密封止しつつ、端子金属板4は外部と接続することが可能となる。
また、セラミック回路基板100の下面、すなわち第2セラミック基板2の第4面22には、第2セラミック基板2と同程度の大きさの放熱金属板6が接合されている。セラミック回路基板100の下面には大きな金属板(放熱金属板6)が接合されているのに対して、セラミック回路基板100の上面には回路金属板3および端子金属板4が接合されてはいるものの、トータルの金属板の量には差がある。セラミック回路基板100の上下面で金属板の量に大きな違いがあると、セラミック回路基板100が反りやすくなる。枠状金属板8を第1セラミック基板1の第1面11すなわちセラミック回路基板100の上面に接合することで、下面との金属量のバランスを整えることができ、反りの小さいセラミック回路基板100とすることができる。図1および図2に示す例では、枠状金属板8は回路金属板3を取り囲む四角枠状であるが、図3~図8に示す例では、この四角枠状からさらに外側まで延びて、外形はH型になっている。これにより、第1セラミック基板1の第1面11は、第2セラミック基板2の第4面22と同様に、ほぼ金属板(回路金属板3、端子金属板4、枠状金属板8)で覆われている。よって、セラミック回路基板100としての反りがより抑えられたものとなる。
図1および図2に示す例においては、第1セラミック基板1と第2セラミック基板2との間にある金属板は、貫通導体51によって回路金属板3および端子金属板4に接続されている内部回路金属板5だけである。また、絶縁物7は、内部回路金属板5の周囲から第1セラミック基板1および第2セラミック基板2の外縁まで延在している。これに対して、図3~図8に示す例においては、複数の内部回路金属板5を取り囲む内部枠状金属板9を有している。そのため、絶縁物7は、内部枠状金属板9の枠内の内部回路金属板5の周囲だけにある。
このように、第1セラミック基板1の第2面12と第2セラミック基板2の第3面21との間に位置してこれらに接合されており、複数の内部回路金属板5を取り囲む内部枠状金属板9を有しているセラミック回路基板100とすることができる。このような内部枠状金属板9を備えていると、絶縁物7となる液状の樹脂等を内部回路金属板5間に注入しやすく、製造が容易になる。また、例えば絶縁物7が吸湿性のある樹脂である場合であっても、樹脂(絶縁物7)が外気に触れる部分が小さくなるので、外気中の水分等を吸湿して絶縁物7の絶縁性が低下する可能性が低減する。
また、内部枠状金属板9は、第1セラミック基板1の第1面11に接合された枠状金属板8と同様に、複数の内部回路金属板5の周囲から第1セラミック基板1および第2セラミック基板2の外縁部まで延在する形状とすることができる。これにより、第1セラミック基板1の第1面11、第2セラミック基板2の第4面22、第1セラミック基板1の第2面12および第2セラミック基板2の第4面22のいずれも、ほぼ全面に金属板が接合されたものとなる。そのため、反りがより低減されたセラミック回路基板100となる。
第1セラミック基板1と第2セラミック基板2との間には、内部回路金属板5および内部枠状金属板9以外の内部金属板52があってもよい。図6に示す例においては、中央部に貫通導体51と接続されていない内部金属板52がある。これによって、第1セラミック基板1の第2面12および第2セラミック基板2の第4面22のほぼ全面に金属板が接合されたものとなっている。図8に示す例においては、中央部に貫通導体51と接続されていない内部金属板52がある。この内部金属板52は、平面透視で第1面11上の搭載用金属板31と重なっている。搭載用金属板31上に搭載された電子部品200で発生した熱は、搭載用金属板31および第1セラミック基板1を伝熱して第1セラミック基板1の第2面12に到達した後、内部金属板52を介して第2セラミック基板2および放熱金属板6へ伝熱される。より熱伝導率の大きい内部金属板52があることで放熱性に優れるセラミック回路基板100となる。そのようなことから内部伝熱金属板ということもできる。図8に示す例の内部金属板52は、貫通導体51で搭載用金属板31と接続することができる。この接続は、電気的な接続ではなく熱的な接続であり、これにより、より放熱性の高いセラミック回路基板100となる。
図2に示す例の内部回路金属板5と図4および図6に示す例の内部回路金属板5とを比較すると、図4に示す例の内部回路金属板5は、平面透視で搭載用金属板31の全面と重なるものを含んでいる。平面透視で搭載用金属板31の全面と重なる内部回路金属板5は、内部伝熱金属板としても機能し、より放熱性の高いセラミック回路基板100となる。
内部枠状金属板9および内部金属板52を備えている場合には、内部回路金属板5と内部枠状金属板9との間、内部回路金属板5と内部金属板52との間にも絶縁物7がある。
内部枠状金属板9を備えている場合は、内部回路金属板5間等に絶縁物7を充填させることが困難になるので、注入口を設ける必要がある。
図5~図8に示す例のように、平面透視において枠状金属板8の内側で回路金属板3および内部回路金属板5と重ならない位置に、第1セラミック基板1の第1面11から第2面12にかけて貫通する貫通孔13を有しているセラミック回路基板100とすることができる。このような貫通孔13を絶縁物7の注入口として用いることができるため、内部枠状金属板9を備えている場合であっても、内部回路金属板5間に絶縁物7を充填することが容易にできる。
また、絶縁物7は、第1セラミック基板1、第2セラミック基板2および内部枠状金属板9で囲まれた空間内に充填され、この空間以外では枠状金属板8の内側にある貫通孔13内に存在することになる。そのため、絶縁物7が例えば吸湿性のある樹脂である場合であっても、樹脂は、枠状金属板8の内側の封止される空間に露出するだけである。そのため、樹脂(絶縁物7)が外気等に触れることで吸湿して絶縁性が低下する可能性が小さいものとなる。
図5および図6に示す例において貫通孔13は2つ設けられており、図7および図8に示す例において貫通孔13は4つ設けられている。貫通孔13は複数であると、内部回路金属板5間の空気等を抜きながら絶縁物7を注入しやすくなる。貫通孔13の形状、大きさ、数および配置は絶縁物7の注入性に応じて適宜設定することができる。
絶縁物7の注入口を内部枠状金属板9の側面に設けることもできる。図3および図4に示す例のように、内部枠状金属板9が、内側から外側にかけて切欠き91を有するセラミック回路基板100とすることができる。切欠き91によって内部枠状金属板9の内側と外側を結ぶ通路が形成されている。この切欠き91による通路を通して、内部枠状金属板9の内側にある内部回路金属板5間に、容易に絶縁物7を充填することができる。絶縁物7は、切欠き91の外側の開口部だけで外部へ露出するため、その面積は小さいものとすることができる。また、内部枠状金属板9の側面に絶縁物7の注入口があるため、枠状金属板8に蓋体400を接合した後に絶縁物7を注入することができる。そのため、絶縁物7として比較的耐熱性の低いものも使用でき、絶縁物7の選択の自由度が高まる。
図3および図4に示す例において、切欠き91は2つ設けられている。上記したように、絶縁物7の注入口(切欠き91)が複数であると、内部回路金属板5間の空気等を抜きながら絶縁物7を注入しやすくなる。切欠き91の形状、大きさ、数および配置は絶縁物7の注入性に応じて適宜設定することができる。
このような構成のセラミック回路基板100に電子部品200を搭載することで電子装置600となる。すなわち、電子装置600は、上記構成のセラミック回路基板100と、セラミック回路基板100の回路金属板3に搭載された電子部品200と、を備えている。上記構成のセラミック回路基板100を備えていることから、回路の絶縁性および電子部品200で発生した熱の放熱性に優れたものとなる。
図9に示す例の電子装置600では、2つの電子部品200が搭載され、1つの電子部品200につき4つの回路金属板3がボンディングワイヤ210で接続されている。枠状金属板8の上に接合された金属枠体300の開口を塞ぐように平板状の蓋体400が接合されている。
図10に示す例の電子装置600では、3つの電子部品200が搭載され、1つの電子部品200につき2つの回路金属板3がボンディングワイヤ210で接続されている。枠状金属板8の上に接合された金属枠体300の開口を塞ぐように蓋体400が接合されている。この例の蓋体400は、フレーム410とフレーム410の開口を塞いでいる板状の透光性部材420とで構成されている。電子部品200がLED(Light Emitting Diode)等の発光素子である場合には、発光素子からの光を、透光性部材420を透過して外部へ放射することができる。
図9および図10に示す例では、金属枠体300に板状の蓋体400が接合されているが、これらが一体となった、箱型、ハット型のものでもよい。また、金属製のフレーム410とガラス製の透光性部材420との間にセラミック製の枠体を介在させることもできる。
第1セラミック基板1および第2セラミック基板2は、セラミック焼結体からなり、回路金属板3等を固定して支持するための基体部分である。また、第1セラミック基板1および第2セラミック基板2は、第1セラミック基板1の第1面11上に接合された複数の回路金属板3の間、第1セラミック基板1と第2セラミック基板2との間に位置する複数の内部回路金属板5の間を互いに電気的に絶縁させるための絶縁部材としても機能する。また、セラミック回路基板100の上下面間で熱を伝導する伝熱部材としても機能する。第1セラミック基板1および第2セラミック基板2の大きさは、電子装置600の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、厚みが0.25mm~1.0mmで、平面視の大きさは1辺の長さが10mm~200mmの矩形状とすることができる。
第1セラミック基板1および第2セラミック基板2のセラミックス焼結体としては、公知の材料を用いることができ、例えば、アルミナ(Al2O3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体および窒化ケイ素(Si3N4)焼結体などを用いることができる。第1セラミック基板1および第2セラミック基板2は、公知の製造方法によって製造することができ、例えば、アルミナなどの原料粉末に焼結助剤を添加し、基板状に成形したのち、焼成することで製造することができる。導通用貫通孔14は、第1セラミック基板1となる、例えば焼成前のセラミックグリーンシートを打ち抜き加工して導通用貫通孔14となる貫通孔を設けておいて焼成することで形成することができる。あるいは、第1セラミック基板1を作製した後にレーザー加工等で導通用貫通孔14を設けることができる。これは、絶縁物7の注入口となる貫通孔13についても同様である。
回路金属板3、端子金属板4、内部回路金属板5、内部金属板52、放熱金属板6、枠状金属板8および内部枠状金属板9(以下、まとめて金属板ともいう。)は、例えば銅または銅合金、あるいはアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属材料によって形成されている。電気伝導および熱伝導の点では99%以上の純銅を用いるとよく、さらに、回路金属板3における酸素の含有量が少ない方が、ボンディングワイヤ210と回路金属板3との接合強度の向上に関して有利である。これら金属板の大きさおよび形状もまた、電子装置600の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、厚みは0.1mm~1.0mmとすることができる。
上述したように、回路金属板3と内部回路金属板5との電気的接続および内部回路金属板5と端子金属板4との電気的接続は、第1セラミック基板1を厚み方向に貫通する導通用貫通孔14内の貫通導体51でなされている。図1~図8に示す例では、貫通導体51は金属柱であり、回路金属板3、内部回路金属板5および端子金属板4のそれぞれとは、例えばろう材(不図示)で接合されている。貫通導体51は、導通用貫通孔14内に充填されたメタライズ導体とすることもできる。貫通導体51がメタライズ導体である場合には、例えば焼成前のセラミックグリーンシートに設けた貫通孔にタングステン等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを充填してセラミックグリーンシートと同時焼成することで設けることができる。あるいは、第1セラミック基板1の導通用貫通孔14を金属ペーストで充填して焼成して焼き付けることで設けることができる。
金属板と第1セラミック基板1および第2セラミック基板2(以下まとめてセラミック基板ともいう。)とは、例えば上述したように活性ろう材を介して接合されている。活性ろう材は、金属板が銅または銅合金からなる場合であれば、例えばチタン、ハフニウムおよびジルコニウムのうち少なくとも1種の活性金属材料を含む、銀-銅(Ag-Cu)系の活性ろう材を用いることができる。Ag-Cu系ろう材としては、例えばB-Ag8(JIS Z 3261-1985)を用いることができる。金属板がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる場合であれば、アルミニウムろうを用いることができる。
あらかじめ打ち抜き加工やエッチング加工によって所定形状に加工した金属板をセラミック基板に接合してもよいし、セラミック基板と同等の大きさの金属板を接合した後にエッチング等で所定形状の金属板としてもよい。以下、銅からなる回路金属板3および端子金属板4を第1セラミック基板1の第1面11上にエッチングで形成する方法の一例について説明する。
まず、第1セラミック基板1の第1面11上にろう材ペーストを、回路金属板3および端子金属板4(の接合される部分)の形状に塗布する。ろう材ペーストは、活性ろう材となる粉末に溶剤やバインダー等を加えて混錬することで作製することができる。次に、ろう材ペーストの上に第1セラミック基板1と同等の大きさの銅からなる大型金属板を載置して、例えば、真空状態で830℃程度の加熱処理をすることによって大型金属板を第1セラミック基板1に接合する。次に、大型金属板の上にエッチングマスクを形成する。エッチングマスクは、フィルム状のレジスト材を大型金属板の上面に貼り付ける、あるいは液状のレジスト材を大型金属板の上面に塗布するなどして、フォトリソ法によって回路金属板3および端子金属板4に対応する部分以外を除去して形成することができる。液状の樹脂を回路金属板3および端子金属板4の形状に印刷してエッチングマスクを形成することもできる。次に、大型金属板のエッチングマスクで覆われていない部分をエッチングによって除去し、所定形状の回路金属板3および端子金属板4を形成する。そして、エッチングマスクを除去することで第1面11上に回路金属板3および端子金属板4が接合された第1セラミック基板1となる。ろう材ペーストを第1セラミック基板1のほぼ全面に塗布して大型金属板を接合し、大型金属板をエッチングして回路金属板3等の形状に加工した後に回路金属板3間等の不要なろう材をエッチング等で除去することもできる。枠状金属板8を有する場合は、ろう材ペーストの塗布形状およびエッチングマスクの形状に枠状金属板8の形状を加えて同時に形成することができる。
第1セラミック基板1の第2面12上の内部回路金属板5および内部枠状金属板9の形成も同様の方法で、同時に行なうことができる。また、第1セラミック基板1に設けた導通用貫通孔14内に貫通導体51となる両端部にろう材を備える金属柱を配置しておくことで、金属柱は回路金属板3等に接合される。このろう材は、活性金属を含まないものでもよいし、含むものでもよい。
第2セラミック基板2の第4面22上の放熱金属板6もまた、回路金属板3と同様の方法で形成することができる。図1および図2に示す例のように、内部回路金属板5および内部枠状金属板9が1層である場合は、放熱金属板6が接合された第2セラミック基板2と、第1セラミック基板1の第2面12に接合された内部回路金属板5および内部枠状金属板9とを活性ろう材で接合することができる。打ち抜き加工等で予め所定形状に加工した内部回路金属板5および内部枠状金属板9を用いる場合は、金属板とセラミック基板との接合を同時に行なうことができる。図3~図8に示す例のように、内部回路金属板5および内部枠状金属板9が2層である場合には、第1セラミック基板1に回路金属板3や内部回路金属板5等が接合されたものと、第2セラミック基板2に内部回路金属板5や放熱金属板6等が接合されたものとをろう材で接合することでセラミック回路基板100となる。この場合のろう材は活性金属を含まないものである。内部回路金属板5等同士を接合するろう材として、活性金属を含むろう材を用いることもできる。いずれの場合であっても、ろう材は、セラミック基板と金属板とを接合する活性ろう材よりも低融点のろう材、はんだ等を用いることができる。
絶縁物7は、例えば、上述したような樹脂の前駆体である液状の樹脂を第1セラミック基板1の第1面11に開口する貫通孔13あるいは内部枠状金属板9の切欠き91から注入することで内部回路金属板5間等に充填することができる。例えば、貫通孔13あるいは切欠き91の開口部にディスペンサーのノズル等を当てて注入(圧入)してもよいし、液状の樹脂の中に未注入のセラミック回路基板100を浸漬して貫通孔13あるいは切欠き91から樹脂を注入してもよい。液状の樹脂に浸漬する方法の場合は、例えば真空脱泡等の方法で、内部回路金属板5間の空気等を抜きながら行うことで効率よくまた、未充填個所を発生させることなく注入することができる。
電子部品200は、例えばIGBT、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ等のパワー半導体デバイスである。あるいは、CCD(Charged-Coupled Device)およびCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子、光スイッチおよびミラーデバイス等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子、レーザーダイオード(LD;Laser Diode)およびLED等の発光素子のような光学素子である。電子部品200が、パワー半導体デバイスである場合には、例えば、鉄道、電気自動車その他のインバータ等の電力制御装置となる。電子部品200が、LDやLED発光素子である場合には、プロジェクターや自動車のヘッドライト等の光源装置となる。図10に示す例では、3つの電子部品200が搭載されている。例えば、発光色がR(赤)、G(緑)、B(青)のように異なるものとすることができる。上記のようなセラミック回路基板100は放熱性に優れているので、ハイパワーで発熱量の大きい電子部品200を搭載するのに有利である。
電子部品200は、接合材(不図示)によってセラミック回路基板100の回路金属板3(の搭載用金属板31)に接合されて固定される。接合材は、例えば、はんだまたは銀ナノペースト等を用いることができる。
電子部品200は、電子部品200の電極(不図示)と回路金属板3(の搭載用金属板31)とは接続部材で電気的に接続される。接続部材としては、図9および図10に示す例のような、ボンディングワイヤ210が用いられ、例えば、銅もしくはアルミニウム製のものを用いることができる。
回路金属板3上に搭載された電子部品200は気密封止されて保護される。電子部品200は、例えば、ボンディングワイヤ210および回路金属板3とともに絶縁樹脂で覆うことで気密封止することができる。より高い気密封止性が求められる場合には、図9および図10に示す例のように、蓋体400を枠状金属板8に接合することで気密封止することができる。
蓋体400は、上述した箱型、ハット型のものでもよいが、図9および図10に示す例のように、枠状金属板8の上に接合された金属枠体300の開口を塞ぐように平板状の蓋体400(透光性部材420を備える場合も含む)を接合したものとすることができる。このような場合は、電子部品200を搭載した後に、シーム溶接やレーザー接合等の局所加熱による接合で蓋体400を金属枠体300に接合して気密封止することが容易にできる。そのため、蓋体400を接合する際の加熱によって電子部品200が損傷する可能性、セラミック回路基板100が変形する可能性が低減される。
金属枠体300は、枠状金属板8の開口部に沿った形状で、電子部品200およびボンディングワイヤ210が収容される高さの枠状である。金属枠体300は、例えば、図9および図10に示す例のように、蓋体400が接合される平板枠状の部分と、枠状金属板8に接合される平板枠状の部分とこれらの間の筒状の部分とが一体となった形状である。金属枠体300の大きさおよび形状は電子装置600の用途等に応じて適宜設定されるものである。
金属枠体300は、セラミック回路基板100の金属板と同様の金属で形成してもよいし、他の金属であってもよい。金属枠体300は回路金属板3等と比較して大きいため、セラミック回路基板100全体の熱膨張のバランスを考慮して、第1セラミック基板1との熱膨張係数の差がより小さい、例えば、Fe-Ni-Co合金やFe-Ni合金等の比較的低熱膨張の金属を用いることができる。蓋体400がガラス等の透光性部材420を備える場合には、透光性部材420との熱膨張差も小さくなり、透光性部材420の接合信頼性、気密封止信頼性もより高められる。
金属枠体300は、例えば、金属板を打ち抜き加工して作製した金属枠を切削加工して、あるいは金属板をプレス加工して作製することができる。あるいは、平板枠状部分を打ち抜き加工等で作製して、これらを筒状部分に溶接、ろう接等で接続して作製することができる。
金属枠体300は枠状金属板8にろう材で接合されている。あらかじめ枠状金属板8等の形状に加工した金属板を第1セラミック基板1に接合する場合であれば、枠状金属板8等の活性ろう材による接合時に、活性ろう材と同程度の融点のろう材で枠状金属板8に接合することができる。あるいは、枠状金属板8を第1セラミック基板1上に形成した後(活性ろう材で接合した後)に、活性ろう材よりも低融点のろう材で接合することができる。第1セラミック基板1の第2面12に接合された内部回路金属板5等と第2セラミック基板2の第3面21に接合された内部回路金属板5等とをろう材で接合する際に、金属枠体300も枠状金属板8にろう材で接合することもできる。
金属板、金属枠体300、および活性ろう材やろう材の露出面には、金属皮膜(図示せず)を設けることができる。この金属皮膜は、回路金属板3等の腐食防止、電子部品200の接合材(不図示)による回路金属板3への接合性、ボンディングワイヤ210の接合性あるいは金属枠体300への蓋体400の接合性を高めるための皮膜である。金属皮膜は、例えばめっき法によってニッケルなどのめっき皮膜層として形成することができる。
蓋体400が平板状である場合は、蓋体400は、例えば、厚みが0.05mm~1mmで外寸が金属枠体300の平板枠状部の外寸と同程度の大きさである。蓋体400がフレーム410と透光性部材420とを備える場合は、フレーム410は、例えば、厚みが0.05mm~1mmで外寸が金属枠体300の平板枠状部の外寸と同程度、内寸が金属枠体300の上面の内寸以下であり、金属枠体300に接合した状態で平面視したときに、搭載される電子部品200の少なくとも一部が見える大きさである。電子部品200の特性および電子装置600に求められる特性に応じて設定される。
平板状の蓋体400およびフレーム410は、金属枠体300と同様の金属、例えば、Fe-Ni-Co合金、Fe-Ni合金等の金属からなるものであり、このような金属の板材を打ち抜き加工あるいはエッチング加工することで作製することができる。金属枠体300と同程度の熱膨張係数を有するものであれば、接合後の熱応力を小さくすることができる。平板状の蓋体400およびフレーム410の表面には、腐食防止、金属枠体300との接合性のためにめっき被膜を設けることができる。従来周知の、電解めっき法あるいは無電解めっき法などによりめっき皮膜を形成することができる。
蓋体400の透光性部材420は、透光性材料すなわち光を透過する材料からなる板状体である。ここでいう光は、電子部品200で発光するあるいは受光する光、例えば可視光である。例えばソーダガラスまたはホウケイ酸ガラス等の透明なガラス、またはサファイア等の板状の部材である。フレーム410の窓部を塞いで接合することのできる寸法であり、フレーム410の内寸より大きく、金属枠体300の上面の内寸より小さい。また、上述したように、金属製のフレーム410とガラス製の透光性部材420との間にセラミック製の枠体を備えている場合であれば、透光性部材420は枠体の窓部を塞いで接合することのできる寸法であり、枠体の内寸より大きく、枠体の透光性部材420が接合される面の外寸より小さい。
透光性部材420は、例えば、上記のような透光性材料からなる大型の板材を切断して所定の大きさの矩形状の板材(以下、矩形板体とも呼ぶ。)に加工することで作製される。例えば、大型の板材の主面に、レーザーやダイシング等で溝を形成し、溝に機械応力や熱応力を加えることで切断することができる。この切断により得た矩形板体の側面は、ほぼ平面で形成されたものとなる。このまま透光性部材420として使用してもよいが、矩形板体の両主面と側面のなす直角の角部、側面同士のなす直角に対して45°の角度で角部を研磨によってC面を形成した場合には、角部に欠けが発生し難くなり、透光性部材420に応力が加わった場合にも割れ難くなる。
枠体は、例えば、セラミック基板と同様のセラミック材料からなるものである。枠体の外寸はフレーム410の内寸より大きく外寸より小さいものである。
枠体が、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、以下のようにして作製することができる。まず、アルミナ(Al2O3)またはシリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒等を添加混合して泥漿状とし、これを周知のスプレードライ法等を用いて顆粒を作製する。次に、この顆粒を周知の乾式プレス法を用いて、所定形状の成形体を得る。その後、この成形体を、例えば、約1600(℃)の温度で焼成することにより枠体が製作される。
蓋体400が枠体を備えていない場合には、フレーム410と透光性部材420とは例えばガラスで接合することができる。蓋体400が枠体を備えている場合には、例えば、フレーム410と枠体とは活性ろう材で接合し、枠体と透光性部材420とはガラスで接合することができる。
透光性部材420は、上記のような材料の板材の表面に、反射防止膜、光学フィルター膜等の光学膜を備えるものとすることできる。このような光学膜は、例えば誘電体の薄膜で形成することができ、誘電体の種類や組み合わせ、層数を設定することで所定光学特性を有するものとなる。また、例えば光の入射あるいは出射角度を制限するための遮光膜を設けることもできる。フレーム410または枠体の内寸を調節することで遮光膜として機能させることもできる。