本発明は、免疫療法のみに応答する可能性が低い疾患または障害を有する個体を特定するための方法を提供し、その方法は、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、そのシグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加は、免疫療法での治療及び抑制間質アンタゴニストでの治療について個体を特定する。いくつかの態様では、本発明は、免疫療法のみに応答する可能性が低い疾患または障害を有する個体を治療するための方法を提供し、その方法は、a)個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、そのシグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、治療について個体を特定する、判定することと、b)その個体に有効量の免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを投与することと、を含む。
I.定義
「検出」という用語は、標的分子の質的測定及び量的測定の両方を含むために本明細書で最も広義に使用される。検出は、単に試料中の標的分子の存在を特定すること、及び標的分子が検出可能なレベルで試料中に存在するかを判定することを含む。
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語は、自然に、または介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分との複合により修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド、及び当該技術分野で既知の他の修飾もこの定義に含まれる。本明細書で使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、抗体を特に包含する。
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、試料中で検出され得る指標、例えば、予測指標、診断指標、及び/または予後指標を指す。バイオマーカーは、特定の分子的、病理学的、組織学的、及び/または臨床的特徴によって特徴付けられる疾患または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たし得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、遺伝子である。バイオマーカーには、ポリヌクレオチド(例えば、DNA及び/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数改変(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、及び/または糖脂質系分子マーカーが含まれるが、これらに限定されない。
「バイオマーカーシグネチャー」、「シグネチャー」、「バイオマーカー発現シグネチャー」、または「発現シグネチャー」という用語は、本明細書で互換的に使用され、1つのバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせを指し、それらの発現が、指標、例えば、予測指標、診断指標、及び/または予後指標となる。バイオマーカーシグネチャーは、特定の分子的、病理学的、組織学的、及び/または臨床的特徴によって特徴付けられる疾患または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たし得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーシグネチャーは、「遺伝子シグネチャー」である。「遺伝子シグネチャー」という用語は、「遺伝子発現シグネチャー」と互換的に使用され、その発現が、例えば、予測、診断、及び/または予後指標である、ポリヌクレオチドのうちの1つまたはその組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、バイオマーカーシグネチャーは、「タンパク質シグネチャー」である。「タンパク質シグネチャー」という用語は、「タンパク質発現シグネチャー」と互換的に使用され、その発現が、例えば、予測、診断、及び/または予後指標である、ポリペプチドのうちの1つまたはその組み合わせを指す。
「間質遺伝子シグネチャー」という用語は、間質と関連した、例えば、腫瘍間質と関連した遺伝子のうちのいずれか1つ、またはその組み合わせもしくは部分的組み合わせを指す。患者における間質遺伝子シグネチャーの遺伝子発現パターンは、組織(例えば、腫瘍)中またはその周囲の間質(例えば、線維症)の存在と相関する。間質遺伝子シグネチャーの各個別の遺伝子またはメンバーは、「間質シグネチャー遺伝子」である。間質シグネチャー遺伝子は、間質細胞により、腫瘍細胞により、または間質シグネチャー遺伝子の発現が所与の組織における高レベルの間質(例えば、高レベルの線維症)と関連している他の細胞により発現され得る。これらの遺伝子には、FAP、FN1、MMP2、BGN、LOXL2、PDPN、PDGFRB、COL4A1、COL4A2、COL5A1、COL8A1、THY1、DKK3、PDGFB、NUAK1、FGF1、PDLIM4、LRRC32、POSTN、LOX、TIMP3、及びTGFβが含まれるが、これらに限定されない。
1つ以上の間質遺伝子シグネチャーを、発現の中央レベル(例えば、がんのタイプにおける(または「がんタイプ」ががん性細胞(例えば、腫瘍細胞、腫瘍組織)及びがん性/腫瘍環境の周囲の非がん性細胞(例えば、間質細胞、間質組織)を含むことを意味する、がんタイプにおける)1つ以上の間質遺伝子シグネチャーの発現の中央レベル)に対して増加した発現レベルで「発現する」試料、細胞、腫瘍、またはがんは、1つ以上の間質遺伝子シグネチャーの発現レベルが、そのタイプのがんについて当業者にとって「高い間質遺伝子シグネチャー発現レベル」であるとみなされるものである。一般に、かかるレベルは、同じがんタイプの試料、細胞、腫瘍、またはがんの集団における間質遺伝子シグネチャーレベルに対して約50%~約100%以上(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%以上)の範囲である。例えば、中央発現レベルに到達するのに使用される集団は、一般的には特定のがん試料(例えば、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、肝臓癌、黒色腫、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌、または腎細胞癌)、または化学療法耐性癌、白金耐性癌、及び進行性、難治性、もしくは再発性癌試料などのこれらのサブグループであり得る。理論に縛られることなく、いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、免疫療法を妨害または阻害する間質関連遺伝子の発現を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、免疫療法に対する完全または部分応答を示すがん患者からの腫瘍間質関連遺伝子の発現と比較した、個体における腫瘍間質関連遺伝子の発現の増加である。
特定のバイオマーカー(例えば、1つ以上の間質遺伝子シグネチャー)に言及して使用される「発現レベルを判定する」とは、診断試験、本明細書に記載の検出方法のいずれか、または類似物を使用して判定される、がん関連生物学的環境、腫瘍関連細胞(例えば、腫瘍関連間質細胞)におけるバイオマーカー(複数可)(例えば、1つ以上の間質遺伝子シグネチャー)の発現(例えば、腫瘍細胞におけるバイオマーカー(複数可)の発現)を意味する。
個体への臨床的利益の増加に関連するバイオマーカーの「量」または「レベル」は、生体試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業者に既知であり、かつ本明細書にも開示される方法によって測定され得る。評価されるバイオマーカーの発現レベルまたは量を使用して、治療への応答を判定することができる。
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に、互換的に使用され、一般に、生体試料中のバイオマーカーの量を指す。「発現」とは、一般に、情報(例えば、遺伝子コード情報及び/またはエピジェネティック情報)が、細胞中に存在しかつそこで機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはさらにはポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指し得る。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写物もしくは分解された転写物に由来するか、または例えばタンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングに由来するかどうかにかかわらず、発現されたものとみなされるべきである。「発現遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳される遺伝子を含み、RNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されない遺伝子(例えば、トランスファーRNA及びリボソームRNA)も含む。
「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」とは、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)、免疫療法に対する完全もしくは部分奏効者である個体、または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照と比較した、個体におけるバイオマーカーの増加した発現または増加したレベルを指す。
「低減した発現」、「低減した発現レベル」、または「低減したレベル」とは、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)、免疫療法に対する完全もしくは部分奏効者である個体、または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照と比較した、個体におけるバイオマーカーの減少した発現または減少したレベルを指す。いくつかの実施形態では、低減した発現とは、発現がほとんどまたはまったくないことである。
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、全ての細胞型中に典型的に同様に存在するバイオマーカーまたはバイオマーカーの群(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態では、ハウスキーピングバイオマーカーは、「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードし、かつ全ての細胞型中に典型的に同様に存在する、遺伝子または遺伝子の群を指す。
本明細書で使用される「増幅」とは、一般に、所望の配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、鋳型配列に対する完全な配列相補性または同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマーによって導入される配列改変など)、及び/または増幅中に生じる配列エラーを含み得る。
「免疫療法」という用語は、免疫応答を調節する治療剤の使用を指す。免疫療法は、活性化免疫療法または抑制免疫療法であり得る。「活性化免疫療法」という用語は、例えば、T細胞応答を含む、免疫応答を誘発、増強、または促進する治療剤の使用を指す。「抑制免疫療法」という用語は、例えば、T細胞応答を含む、免疫応答に干渉、これを抑制、または阻害する治療剤の使用を指す。いくつかの実施形態では、本発明は、個体が活性化免疫療法と抑制間質アンタゴニストとの組み合わせから利益を得ることができるかを判定するために、間質細胞シグネチャーを判定するための手段を提供する。
「PD-L1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD-L1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元または増強される分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-1結合アンタゴニスト、ならびにPD-L1とPD-1との間の相互作用に干渉する分子(例えば、PD-L2-Fc)を含む。
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1と、PD-1、B7-1などのその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、またはそれに干渉する分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1と、PD-1、B7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、またはそれに干渉する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を介したシグナル伝達により媒介されるTリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1と、PD-L1、PD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、またはそれに干渉する分子である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、またはこれに干渉する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1またはPD-L1を介したシグナル伝達により媒介される、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される、負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PDL1ポリペプチド、ポリペプチド変異体、ならびに天然配列ポリペプチド及びポリペプチド変異体の断片(これらは本明細書でさらに定義される)を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、もしくは別の源からなど、多様な源から単離されるか、または組換え法もしくは合成法によって調製されたものであり得る。
「天然配列PD-L1ポリペプチド」は、自然界に由来する対応するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。「PD-L1ポリペプチド変異体」またはその変異は、本明細書に定義されるPD-L1ポリペプチド、一般的には活性PD-L1ポリペプチドが、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列のいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。かかるPD-L1ポリペプチド変異体には、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチド変異体は、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、PD-L1変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であり、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289アミノ酸長、またはそれ以上である。任意で、PD-L1変異体ポリペプチドは、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下の保存的アミノ酸置換を有する。
本明細書で定義される「PD-L1アンタゴニスト」という用語は、天然配列PD-L1によって媒介される生物学的活性及び/または機能を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子である。特定の実施形態では、こうしたアンタゴニストは、PD-L1に結合する。1つの実施形態に従って、アンタゴニストは、ポリペプチドである。別の実施形態に従って、アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。別の実施形態に従って、アンタゴニストは、小分子アンタゴニストである。別の実施形態に従って、アンタゴニストは、ポリヌクレオチドアンタゴニストである。
本明細書で定義される「抑制間質アンタゴニスト」は、間質(例えば、腫瘍関連間質)と関連した遺伝子または遺伝子産物の生物学的活性及び/または機能を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子である。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、線維症腫瘍と関連した遺伝子または遺伝子産物の生物学的活性及び/または機能を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストでの治療は、間質の低減をもたらし、これによって、例えば、活性化免疫細胞(例えば、炎症誘発性細胞)の線維症組織(例えば、線維症腫瘍)を浸潤する能力を増加させることにより、免疫療法の活性の増加をもたらす。
「TGFβアンタゴニスト」という用語は、TGFβと、TGFβ細胞受容体などのその相互作用パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、またはそれに干渉する分子である。いくつかの実施形態では、TGFβ結合アンタゴニストは、TGFβの、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβの活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストには、抗TGFβ抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びTGFβと、その相互作用パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を、減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、またはそれに干渉する他の分子が含まれる。
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、または合成反応によりポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組み立て前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断され得る。ポリヌクレオチドは、例えば標識との複合により、合成後にさらに修飾され得る。他のタイプの修飾には、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上を類似体と置換する「キャップ」、ヌクレオチド間修飾、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸塩、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)によるもの、及び電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リシンなど)などの懸垂部分を含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾結合(例えば、αアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖内に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基により置換されるか、標準保護基により保護されるか、もしくは活性化されて追加のヌクレオチドへの追加の結合を調製してもよく、または固体もしくは半固体支持体に複合されてもよい。5′及び3′末端OHは、リン酸化するか、またはアミンもしくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドは、一般に当該技術分野において既知のリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態を含むこともでき、例えば、2′-O-メチル-、2′-O-アリル、2′-フルオロ-または2′-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、またはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び脱塩基ヌクレオシド類似体、例えば、メチルリボシドを含む。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替結合基に置き換えられてもよい。これらの代替結合基には、これらに限定されないが、リン酸塩がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、“(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR′、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が含まれ、各RまたはR′は、独立してHであるか、または任意にエーテル(-O-)結合を含む置換もしくは非置換アルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルである。ポリヌクレオチド内の全ての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、一般に、約250ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、等しく完全にオリゴヌクレオチドに適用可能である。
「プライマー」という用語は、核酸にハイブリダイズすることができ、一般に遊離3’-OH基を提供することにより、相補的核酸の重合を可能にする、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
「小分子」という用語は、約2000ダルトン以下、好ましくは約500ダルトン以下の分子量を有する任意の分子を指す。
「診断」という用語は、分子的または病理学的状態、疾患、または病態(例えば、がん)の識別または分類を指すために本明細書で使用される。例えば、「診断」とは、特定のタイプのがんの特定を指し得る。「診断」とは、例えば、組織病理学的判断基準による、または分子的特徴による特定のサブタイプ(例えば、1つのバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせ(例えば、特定の遺伝子または該遺伝子によってコードされたタンパク質)の発現を特徴とするサブタイプ)のがんの分類も指し得る。
「診断を援助する」という用語は、疾患または障害(例えば、がん)の特定のタイプの症状または病態の存在または性質に関して臨床的判定を行う助けとなる方法を指すために本明細書で使用される。例えば、疾患または病態(例えば、がん)の診断を援助する方法は、個体由来の生体試料中の特定のバイオマーカーを測定することを含み得る。
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理学的、生化学的、化学的、及び/または生理学的特徴に基づいて、特徴付け及び/または特定される細胞及び/または他の分子実体を含有する、目的とする対象及び/または個体から得られるか、またはそれ由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句及びその変化形は、特徴付けられる細胞及び/または分子実体を含有することが予期されるか、または既知である、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料としては、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、***、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
「組織試料」または「細胞試料」とは、対象または個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞試料源は、新鮮、凍結、及び/または保存器官、組織試料、生検、及び/または吸引液由来の固形組織、血液または任意の血液成分、例えば、血漿、体液、例えば、脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液、対象の妊娠または発育中の任意の時点からの細胞であり得る。組織試料は、初代または培養細胞または細胞株でもあり得る。任意に、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、本質的に組織とは自然に混合されない化合物、例えば、防腐剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、抗生物質などを含有し得る。
本明細書で使用される「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健常及び/または非罹患部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、罹患細胞または組織に隣接する健常及び/または非罹患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)。別の実施形態では、参照試料は、同じ対象または個体の身体の未治療組織及び/または細胞から得られる。なお別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健常及び/または非罹患部分(例えば、組織または細胞)から得られる。さらに別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の未治療組織及び/または細胞から得られる。いくつかの実施形態では、参照試料は、免疫療法に対する完全奏効者または部分奏効者である個体である。いくつかの実施形態では、参照試料は、免疫療法に対する完全奏効者または部分奏効者である個体からの試料のデータベースである。
本明細書の目的では、組織試料の「切片」とは、組織試料の単一部分または片、例えば、組織試料から切り取られた組織または細胞の薄切片を意味する。組織試料の複数の切片が採取されて分析され得ることが理解されるが、但し、組織試料の同じ切片が形態学的レベル及び分子レベルの両方で分析され得るか、またはポリペプチド及びポリヌクレオチドの両方に関して分析され得ることが理解される。
「相関する」または「相関すること」とは、任意の方法で、第1の分析またはプロトコルの性能及び/または結果を第2の分析またはプロトコルの性能及び/または結果と比較することを意味する。例えば、第2のプロトコルを行う際に第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用することができ、及び/または第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析もしくはプロトコルが行われるべきかを判定することができる。ポリペプチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを判定することができる。ポリヌクレオチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを判定することができる。
「個体応答」または「応答」は、限定することなく、(1)減速及び完全停止を含む、疾患進行(例えば、がん進行)のある程度の阻害、(2)腫瘍サイズの低減、(3)隣接する末梢器官及び/または組織へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(4)転移の阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(5)疾患もしくは障害(例えば、がん)に関連する1つ以上の症状のある程度の軽減、(6)全生存及び無増悪生存を含む生存期間の増加もしくは延長、及び/または(9)治療後の所与の時点における低下した死亡率を含む、個体への利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価され得る。
薬剤を用いた治療に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」及び類似語は、がんなどの疾患もしくは障害の危険性があるか、またはそれに罹患している患者に付与される臨床的または治療的利益を指す。一実施形態において、かかる利益には、生存(全生存及び無増悪生存を含む)が延長すること、客観的応答(完全奏効または部分奏効を含む)が生じること、またはがんの徴候もしくは症状が改善することのうちのいずれか1つ以上が含まれる。一実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、抑制間質アンタゴニストでの治療がない免疫療法での治療と比較して、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストの組み合わせでの治療に応答する可能性が増加することが予測される患者を特定するのに使用される。
「生存」とは、患者が生存していることを指し、全生存及び無増悪生存を含む。
全生存とは、患者が、診断または治療の時点から1年、5年などのような定義された期間にわたって生存していることを指す。
無増悪生存とは、がんが進行または悪化することなく、患者が生存していることを指す。
「生存が延長すること」とは、未治療患者と比べて(すなわち、薬剤を用いて治療されていない患者と比べて)、または指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比べて、及び/または承認されている抗腫瘍剤で治療された患者と比べて、被治療患者において全生存または無増悪生存が増加することを意味する。客観的応答は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む、測定可能な応答を指す。
完全奏効または「CR」は、治療に応答したがんの全ての徴候の消滅を意図する。これは必ずしもがんが治癒したことを意味しない。
部分奏効または「PR」は、治療に応答した、1つ以上の腫瘍もしくは病変のサイズ、または身体内のがんの範囲の減少を指す。
「実質的に同じ」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者が、その値(例えば、Kd値または発現)により測定される生物学的特徴との関連で、2つの値の間にある差を生物学的及び/または統計学的有意性がほとんどないか、まったくないとみなすような、2つの数値間の十分に程度の高い類似性を意味する。その2つの値の間の差は、例えば、参照/比較子値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/または約10%未満である。
「実質的に異なる」という語句は、本明細書で使用される場合、当業者が、その値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴との関連で、2つの値の間にある差を統計学的有意性があるとみなすような、2つの数値間の十分に程度の高い相違性を意味する。その2つの値の間の差は、例えば、参照/比較子分子の値の関数として、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、及び/または約50%超である。
薬剤の「有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量及び期間で、有効な量を指す。
「治療有効量」は、哺乳動物において疾患または障害を治療または予防するための治療剤の量を指す。がんの場合、治療有効量の治療剤は、がん細胞の数を低減、原発腫瘍サイズを低減、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍増殖のある程度の阻害、及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。薬物は、既存のがん細胞の増殖を予防及び/またはそれら殺滅することができる限り、細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。がん療法に関して、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの期間(TTP)、奏効率(RR)、奏効期間、及び/または生活の質を評価することにより測定され得る。
「がん」及び「がん性」という用語は、制御されていない細胞増殖を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。この定義には、良性がん及び悪性がんが含まれる。「早期がん」または「早期腫瘍」とは、侵襲性もしくは転移性でないか、または0期、I期、もしくはII期がんとして分類されるがんを意味する。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍、及び島細胞癌を含む)、中皮腫、シュワン細胞腫(聴神経腫瘍を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、ならびに白血病またはリンパ系腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかるがんのより具体的な例としては、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮系扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝臓癌、尿路上皮膀胱癌、肝細胞癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)癌または腎(renal)癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、ならびに頭頸部癌及び血液悪性腫瘍が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、トリプルネガティブ転移性乳癌であり、これには、局所再発性または転移性疾患を伴う、任意の組織学的に確認されたトリプルネガティブ(ER-、PR-、HER2-)乳腺癌が含まれる(局所再発性疾患は、治療意図での摘出を受けることができない)。
「薬学的製剤」という用語は、その中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、臨床病理過程中に実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または緩和、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体を使用して、疾患の発症を遅延させるか、または疾患の進行を減速させる。
「抗がん療法」という用語は、がんの治療において有用な療法を指す。抗がん療法剤の例には、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞毒性剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療するための他の薬剤、抗CD20抗体、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、Gleevec(商標)(イマチニブメシル酸塩))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、次の標的PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA受容体(複数可)、TRAIL/Apo2、ならびに他の生物学的活性及び有機化学薬剤のうちの1つ以上に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、などが含まれるが、これらに限定される。これらの組み合わせも、本発明に含まれる。本明細書で使用される「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害もしくは防止する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤、核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片、抗生物質、ならびにそれらの断片及び/または変異体を含む、細菌、真菌、植物、または動物由来の小分子毒素または酵素活性毒素などの毒素、ならびに下で開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤を含むことを意図する。他の細胞毒性剤が下に記載される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「化学療法剤」は、がんの治療において有用な化合物を指す。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン(bullatacinone));デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特にカリチアマイシンガンマ1I及びカリチアマイシンオメガI1(例えば、Nicolaou et al.,Angew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)参照)などの抗生物質;CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;ジネマイシンAを含む、ジネマイシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(pyrrolinodoxorubicin)、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンCなどのミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝産物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシルビジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナル;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充液;アセグラトン;アルドホスファミドグルコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロナン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、及びカルボプラチンなどの白金剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合が微小管を形成するのを防止するビンカ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトラキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含む、レチノイン酸などのレチノイド;クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標))などのビスホスホネート;トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び表皮増殖因子受容体(EGF-R)など;THERATOPE(登録商標)ワクチンなどのワクチン及び遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ、Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテアソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などのBcl-2阻害剤;ピクサントロン;EGFR阻害剤(下の定義を参照のこと);チロシンキナーゼ阻害剤(下の定義を参照のこと);ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))などのセリン-スレオニンキナーゼ阻害剤;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))のようなファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の;ならびにFOLFOX、5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))での治療レジメンの略語が含まれる。
本明細書で定義される化学療法剤は、がんの増殖を促進し得るホルモンの効果を調節、低減、遮断、または阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌療法剤」を含む。それらは、それら自体がホルモンであってもよく、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、及びSERM3などの選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)を含む、混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを有する抗エストロゲン;フルベストラント(FASLODEX(登録商標))、及びEM800などのアゴニスト特性を有しない純粋な抗エストロゲン(かかる薬剤は、エストロゲン受容体(ER)二量体化を遮断、DNA結合を阻害、ERターンオーバーを増加、及び/またはERレベルを抑制する場合がある);ホルメスタン及びエキセメスタンなどのステロイド性アロマターゼ阻害剤(AROMASIN(登録商標))、ならびにアナストラゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、及びアミノグルテチミドなどの非ステロイド性アロマターゼ阻害剤を含む、アロマターゼ阻害剤、ならびにボロゾール(RIVISOR(登録商標))、メゲストロールアセテート(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、及び4(5)-イミダゾールを含む、他のアロマターゼ阻害剤;リュープロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、及びトリプテレリン(tripterelin)を含む、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;メゲストロールアセテート及びメドロキシプロゲステロンアセテートなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロール及びプレマリンなどのエストロゲン、ならびにフルオキシメステロン、全てのトランスレチオン酸(transretionic acid)、及びフェンレチニドなどのアンドロゲン/レチノイドを含む、性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方調節剤(ERD);フルタミド、ニルタミド、及びビカルタミドなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
本出願に使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、より活性な親形態へと酵素によって活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375-382,615th Meeting Belfast(1986)及びStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグとしては、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、Dアミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、より活性な細胞毒性遊離薬物へと変換され得る。本発明において使用するためのプロドラッグ形態に誘導体化することができる細胞毒性薬物の例としては、上述の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
「増殖阻害剤」は、本明細書で使用されるとき、細胞(例えば、その増殖がインビトロまたはインビボのいずれかでのPD-L1発現に依存する細胞)の増殖を阻害する化合物または組成物を指す。増殖阻害剤の例としては、細胞周期進行を(S期以外の場所で)遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘発する薬剤が挙げられる。従来のM期遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、ならびにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。G1を停止するこれらの薬剤はまた、S期停止、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤にも及ぶ。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn and Israel,eds.,Chapter 1,entitled“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”by Murakami et al.(WB Saunders:Philadelphia,1995)、特にp.13で見つけることができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗がん剤である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管の構築を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、細胞内の有糸***の阻害をもたらす。
「放射線療法」とは、正常に機能するか、または細胞を完全に破壊するその能力を制限するように細胞に十分な損傷を誘発するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。線量及び治療期間を決定するための当該技術分野で既知の方法が多く存在することが理解される。典型的な治療は、1回投与として与えられ、典型的な線量は、1日当たり10~200単位(グレイ)の範囲である。
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
「同時に」という用語は、投与の時間が少なくとも部分的に重複している、2つ以上の治療剤の投与を指すために本明細書で使用される。したがって、同時投与は、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が、1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与の中止後に継続するときの投与レジメンを含む。
「低減または阻害する」とは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な減少を生じる能力を意味する。低減または阻害は、治療されている障害の症状、転移の存在もしくはサイズ、または原発腫瘍のサイズに対して言及し得る。
「添付文書」という用語は、かかる治療剤製品の適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含有する、治療剤製品の市販パッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
「製造物品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは障害(例えば、がん)の治療のための薬剤、または本明細書に記載のバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)またはキットである。特定の実施形態では、製造物またはキットは、本明細書に記載の方法を実行するためのユニットとして、宣伝、流通、または販売される。
「ターゲットオーディエンス」とは、個体、集団、新聞、医療文献、及び雑誌の読者、テレビまたはインターネット視聴者、ラジオまたはインターネット傾聴者、医師、製薬会社など、特に特定の使用、治療、または適応症についてのマーケティングまたは広告によって、特定の薬剤を宣伝するか、またはそれを意図する対象の人々の群または施設である。「基づく」という語句は、本明細書で使用されるとき、1つ以上のバイオマーカーについての情報が、治療決定、添付文書上で提供される情報、またはマーケティング/宣伝案内、などを伝えるために使用されることを意味する。
当業者によって理解されるように、本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
「捕捉抗体」とは、試料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。特定の条件下で、捕捉抗体は、標的分子と複合体を形成し、これにより抗体-標的分子複合体が試料の残りから分離され得る。特定の実施形態では、かかる分離は、捕捉抗体に結合しなかった試料中の物質または材料を洗い流すことを含み得る。特定の実施形態では、捕捉抗体は、例えば、プレートまたはビーズなどであるが、これらに限定されない固体支持体表面に結合し得る。
「検出抗体」とは、試料または試料-捕捉抗体複合材料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。特定の条件下で、検出抗体は、標的分子または標的分子-捕捉抗体複合体と複合体を形成する。検出抗体は、増幅され得る標識を用いて直接的、または例えば、標識され、かつ検出抗体に結合する別の抗体を使用して間接的のいずれかで検出することができる。直接標識の場合、検出抗体は、典型的には、例えば、ビオチンまたはルテニウムを含むが、これらに限定されない、いくつかの手段によって検出可能な部分に複合される。
「標識」または「検出可能な標識」という用語は、検出または定量化される物質、例えば、抗体に結合し得る任意の化学基または部分を指す。典型的には、標識は、物質の高感度検出または定量化に適した検出可能な標識である。検出可能な標識の例としては、発光標識、例えば、蛍光、リン光、化学発光、生物発光、及び電気化学発光標識、放射性標識、酵素、粒子、磁性物質、電気活性種などが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、検出可能な標識は、特異的結合反応に関与することによってその存在をシグナル伝達し得る。かかる標識の例としては、ハプテン、抗体、ビオチン、ストレプトアビジン、Hisタグ、ニトリロ三酢酸、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、グルタチオンなどが挙げられる。
「検出手段」という用語は、あるアッセイでその後読み取られるシグナル報告により検出可能な抗体の存在を検出するために使用される部分または技法を指す。典型的には、検出手段は、マイクロタイタープレート上で捕捉される標識などの固定化標識を増幅する試薬、例えば、アビジンまたはストレプトアビジン-HRPを用いる。
「フォトルミネセンス」とは、材料がその材料による光(あるいは、電磁放射線とも称される)の吸収後に発光するプロセスを指す。蛍光及びリン光は、2つの異なるタイプのフォトルミネセンスである。「化学発光」プロセスは、化学反応による発光種の作製を伴う。「電気化学発光」または「ECL」とは、ある種、例えば、ある抗体が、適切な周辺化学環境下でその種の電気化学的エネルギーへの曝露時に発光するプロセスである。
目的とする抗原、例えば、宿主細胞タンパク質に「結合する」抗体は、その抗体が、アッセイ試薬、例えば、捕捉抗体または検出抗体として有用であるように、十分な親和性で抗原に結合するものである。典型的には、かかる抗体は、他のポリペプチドと有意に交差反応しない。
標的分子へのポリペプチドの結合に関して、特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドまたはエピトープの「特異的結合」、またはそれに「特異的に結合する」、またはそれに「特異的な」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有さない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較して標的分子の結合を決定することによって測定され得る。
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)及びその結合パートナー(例えば、抗原)の単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。
本明細書の目的について「活性な」または「活性」とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドの生物学的及び/または免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態(複数可)を指し、「生物学的」活性とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドが有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外の天然のまたは天然に存在するポリペプチドによって引き起こされる生物学的機能(阻害または刺激のいずれか)を指し、「免疫学的」活性とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドが有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指す。
「アンタゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子を含む。同様の様式で、「アゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。適切なアゴニストまたはアンタゴニスト分子としては、具体的には、アゴニストまたはアンタゴニスト抗体または抗体断片、天然ポリペプチドの断片またはアミノ酸配列変異体などが挙げられる。ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストの特定方法は、ポリペプチドを候補アゴニストまたはアンタゴニスト分子と接触させることと、ポリペプチドに通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することとを含み得る。
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、半抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性を呈する場合に限り抗体断片を包含する。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書では抗体と互換的に使用される。
抗体は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子であり、それらの構造は全て免疫グロブリン折り畳みに基づく。例えば、IgG抗体は、ジスルフィド結合して機能的抗体を形成する2つの「重」鎖及び2つの「軽」鎖を有する。別の例として、1つ以上のジスルフィド結合によって結合した1つの重鎖及び1つの軽鎖は、機能的半抗体を形成する。各重鎖及び軽鎖はそれ自体、「定常」(C)領域及び「可変」(V)領域を含む。V領域が抗体の抗原結合特異性を決定する一方で、C領域は構造的支持を提供し、免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において機能する。抗体または抗体の抗原結合断片の抗原結合特異性は、特定の抗原に特異的に結合する抗体の能力である。
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特徴によって決定される。可変性は、可変ドメインの110アミノ酸長にわたって均等に分布していない。代わりに、V領域は、各9~12アミノ酸長の「超可変領域」と呼ばれる極度の可変性を有するより短い領域によって分離される15~30個のアミノ酸を有するフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸長からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域により連結され、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖における超可変領域は、FRによって、他方の鎖の超可変領域と近接して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
各V領域は、典型的には、3つの相補性決定領域(各々が「超可変ループ」を含む「CDR」)、及び4つのフレームワーク領域を含む。したがって、特定の所望の抗原に対して実質的な親和性で結合するために必要とされる最小の構造単位である抗体結合部位は、典型的には、3つのCDRと、適切な立体配座でCDRを保持し提示するためにそれらの間に散在する少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域とを含む。古典的な4つの鎖抗体は、VHドメイン及びVLドメインの協働によって定義される抗原結合部位を有する。ラクダ及びサメ抗体などの特定の抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみによって形成される結合部位に依存する。単一ドメインの操作された免疫グロブリンは、VHとVLとの間に協働がない場合、結合部位が重鎖または軽鎖のみによって形成されるように調製され得る。
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分が抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性に使用されているという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等には分布していない。これは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメイン中の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域により連結され、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖における超可変領域は、FRによって、他方の鎖の超可変領域と近接して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD. (1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
「超可変領域」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、VLでは残基約24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)前後、VHでは約31~35B(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)前後(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、及び/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、VLでは残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、VHでは26~32(H1)、52A~55(H2)、及び96~101(H3)(Chothia and Lesk J.Mol. Biol.196:901-917(1987))を含み得る。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるような超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
抗体または半抗体との関連での「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230までの伸展と定義される(Burton,Molec. Immunol.22:161-206(1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖内S-S結合を形成する最初及び最後のシステイン残基を同じ位置に入れることによってIgG1配列と整列し得る。
Fc領域の「下部ヒンジ領域」は、通常、ヒンジ領域のすぐC末端にある残基の伸展、すなわち、Fc領域の残基233~239と定義される。本発明の前は、FcγR結合は、概して、IgG Fc領域の下部ヒンジ領域におけるアミノ酸残基に起因するものであった。
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、IgGの残基約231から約340まで延びる。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合されないという点で特有である。むしろ、2つのN結合分岐状炭水化物鎖が無傷の天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間に介在する。炭水化物がドメイン間対合の代替を提供し、CH2ドメインを安定させるのに役立ち得ることが推測されている。(Burton,Molec. Immunol.22:161-206(1985))。
「CH3ドメイン」は、Fc領域におけるC末端からCH2ドメインまで(すなわち、IgGのアミノ酸残基約341からアミノ酸残基約447まで)の残基の伸展を含む。
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、タンデムダイアボディ(taDb)、線状抗体(例えば、米国特許第5,641,870号、実施例2、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995))、一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、一本鎖抗体分子、抗体断片から形成される多重特異性抗体(例えば、Db-Fc、taDb-Fc、taDb-CH3、(scFV)4-Fc、ジ-scFv、バイ-scFv、またはタンデム(ジ、トリ)-scFvが挙げられるが、これらに限定されない)、ならびに二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)が含まれる。
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して表記される1つの残留「Fc」断片とが産生される。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)を伴う全L鎖、及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab’)2断片が産出され、これは、概して、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片に対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にさらなる数個の残基を有する点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は、元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、緊密な非共有結合性会合にある1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この構成において、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して、VH-VL二量体の表面上に抗原結合部位を画定する。集合的に、6つの超可変領域は、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な超可変領域を3つのみ含むFvの半分)でさえも、抗原を認識してそれに結合する能力を有するが、全結合部位よりも親和性が低い。
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が少なくとも1つの遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は、元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。
抗体は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てられ得る。無傷抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分割され得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在している。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、scFvが抗原結合に所望の構造を形成することを可能にする。scFvに関する概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,Proc. Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)により完全に記載される。
「二重特異性抗体」は、1つの生物学的分子上の2つの異なるエピトープに特異的に結合することができるか、または2つの異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することができる抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体である。二重特異性抗体は、本明細書において、「二重特異性」を有するもの、または「二重特異性」であるとも称され得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの半抗体を含み、各半抗体は、単一の重鎖可変領域及び任意に重鎖定常領域の少なくとも一部分、ならびに単一の軽鎖可変領域及び任意に軽鎖定常領域の少なくとも一部分を含む。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、2つの半抗体を含み、各半抗体は、単一の重鎖可変領域及び単一の軽鎖可変領域を含み、2つ以上の単一の重鎖可変領域を含まず、2つ以上の単一の軽鎖可変領域を含まない。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの半抗体を含み、各半抗体は、単一の重鎖可変領域及び単一の軽鎖可変領域を含み、第1の半抗体は、第1の抗原に結合し、第2の抗原には結合せず、第2の半抗体は、第2の抗原に結合し、第1の抗原には結合しない。
「単一ドメイン抗体」(sdAb)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、一般に、単一可変ドメイン(VHまたはVL)が抗原結合を付与し得る抗体を指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要はない。単一ドメイン抗体の例としては、ラクダ類(ラマ及びラクダ)及び軟骨魚類(例えば、テンジクザメ)由来の抗体、ならびにヒト及びマウス抗体からの組換え方法から得られる抗体が挙げられる(Nature(1989)341:544-546、Dev Comp Immunol(2006)30:43-56、Trend Biochem Sci(2001)26:230-235、Trends Biotechnol(2003):21:484-490、WO2005/035572、WO03/035694、FEBS Lett(1994)339:285-290、WO00/29004、WO02/051870)。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る想定される変異体を除いて、同一であり、及び/または同じエピトープに結合し、かかる変異体は、一般に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されない点で有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本明細書に提供される方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler et al.,Nature 256:495(1975)によって記載されたハイブリドーマ法によって作製されても、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol. Biol.222:581-597(1991)に記載される技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
本明細書におけるモノクローナル抗体には、特に、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種であり、一方で鎖(複数可)の残りが別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片が含まれる(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。本明細書において対象となるキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、またはカニクイザルなどの旧世界ザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化」抗体が挙げられる(米国特許第5,693,780号)。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、上述のFR置換(複数可)を除いて、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、かつFRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、任意に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものを含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr. Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。
本明細書では、「無傷抗体」は、重及び軽可変ドメイン、ならびにFc領域を含むものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、無傷抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合している一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
「ネイキッド抗体」は、細胞毒性部分または放射標識などの異種分子に複合されない(本明細書に定義される)抗体である。
明細書で使用されるとき、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた分子を指す。構造的に、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列(例えば、IgGのCH2及び/またはCH3配列)との融合を含み、このアミノ酸配列は、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち、抗体の定常領域と比較して「異種」である)。例示的なアドヘシン配列としては、目的とするタンパク質に結合する受容体またはリガンドの一部分を含む連続したアミノ酸配列が挙げられる。アドヘシン配列は、目的とするタンパク質に結合するが、受容体またはリガンド配列ではない配列(例えば、ペプチボディにおけるアドヘシン配列)でもあり得る。かかるポリペプチド配列は、ファージディスプレイ技法及び高スループット選別方法を含む、様々な方法によって選択または特定され得る。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、またはIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得られ得る。
いくつかの実施形態では、抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方調節が挙げられる。
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」とは、補体の存在下で標的を溶解させる分子の能力を指す。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1の成分の、同種抗原と複合した分子(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体))への結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol. Methods 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイが行われ得る。
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。目的とする分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるようなインビトロADCCアッセイを行ってもよい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc. Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルで評価され得る。
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を実行する白血球である。いくつかの実施形態では、これらの細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球を含み、PBMC及びNK細胞が好ましい。
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために使用される。いくつかの実施形態では、FcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング形態を含む、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)参照)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J. Lab. Clin. Med.126:330-41(1995)に概説されている。将来的に特定されるものを含む、他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。この用語は、母体IgGの胎児への移行に関与している新生児受容体であるFcRnも含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が中に導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、突然変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。
「単離された」核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常は核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその天然染色***置とは異なる染色***置に存在する。
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後、かついずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当該技術分野の技能の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適したパラメータを決定することができる。特定の実施形態では、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が開発したものであり、ソースコードは、ユーザ文書とともに米国著作権局(Washington D.C.,20559)に出願されており、それは、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変動しない。
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は一般に、類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照のこと。)単一のVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、VHドメインまたはVLドメインを使用して抗原に結合する抗体から単離されて、それぞれ、相補的VLドメインまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照のこと。
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を運搬することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びこれが導入された宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
本明細書において「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変動を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「または」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書に記載の本発明の態様及び変形は、態様及び変形「からなる」及び/または「から本質的になる」を含むことが理解される。
II.診断及び治療方法
本明細書では、個体が免疫療法及び抑制間質アンタゴニストの組み合わせでの治療から利益を得ることができるかを判定するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、個体は免疫療法のみに応答する可能性が低い。いくつかの態様では、本発明は、疾患または障害を有する個体を治療するための方法を提供し、その方法は、a)個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、そのシグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、治療について個体を特定する、判定することと、b)その個体に有効量の免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを投与することと、を含む。
いくつかの態様では、本発明は、疾患または障害を有する個体の免疫療法を改善するための方法を提供し、その方法は、a)個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、そのシグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、抑制間質アンタゴニストでの治療について個体を特定する、判定することと、b)ステップa)において抑制間質アンタゴニストでの治療について特定されたその個体に有効量の免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを投与することと、を含む。
いくつかの態様では、本発明は、免疫療法のみに応答する可能性が低い疾患または障害を有する個体を選択するための方法を提供し、その方法は、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、そのシグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加は、免疫療法での治療及び抑制間質アンタゴニストでの治療について個体を特定する。
いくつかの態様では、本発明は、免疫療法での治療及び腫瘍間質線維症アンタゴニストでの治療からの利益を示す可能性が高い疾患または障害を有する個体を特定するための方法を提供し、その方法は、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、そのシグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加は、抑制間質を有する個体を特定し、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在は、個体が免疫療法及び抑制間質アンタゴニストからの臨床的利益の増加を示す可能性が高いことを示す。いくつかの態様では、本発明は、疾患または障害を有する個体の治療を選択するための方法を提供し、その方法は、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、そのシグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加は、抑制間質を有する個体を特定し、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在は、個体が免疫療法及び抑制間質アンタゴニストからの臨床的利益の増加を示す可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、臨床的利益の増加は、下記:全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の相対的増加をさらに含む。
いくつかの態様では、本発明は、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを含む併用治療の有効性を監視するための方法を提供し、その方法は、1つ以上の時点で免疫療法及び抑制間質アンタゴニストでの治療を受ける個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上の発現のレベルの、中央レベルに対する増加を含み、臨床的利益の増加及び/または間質遺伝子シグネチャーの存在の減少は、有効な治療を示す。いくつかの態様では、本発明は、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを含む併用治療の有効性を監視するための方法を提供し、その方法は、a)個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、そのシグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、治療について個体を特定する、判定することと、b)その個体に有効量の免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを投与することと、c)1つ以上の時点で個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、臨床的利益の増加及び/または間質遺伝子シグネチャーの存在の減少が、有効な治療を示す、判定することと、を含む。いくつかの実施形態では、臨床的利益の増加は、下記:全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の相対的増加を含む。
本発明の態様のいくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの3つ以上を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの4つ以上を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの5つ以上を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、THY1、及びTGFβを含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、PDPN、FAP、TGFB1、NNMT、TNFAIP6、DKK3、MMP2、MMP8、MMP9、BGN、COL4A1、COL4A2、COL5A1、PDGFRB、NUAK1、FN1、FGF1、PDLIM4、またはLRR32Cのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、BGN、LOXL2、PDPN、PDGFRB、COL12a1、COL5A1、COL8A2、THY1、またはPALLDのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、TGFβをさらに含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、疾患または障害を有する個体が免疫療法及び抑制間質アンタゴニストの組み合わせでの治療から利益を得ることができるかを判定するための方法ならびに治療の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の方法によって特定された個体のための治療の方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、増殖性疾患または障害である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、免疫関連疾患または障害である。[[Genentech-ここで呼び出すべき任意の特定の免疫関連障害がある。
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、がんである。いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、転移性乳癌、トリプルネガティブ乳癌、黒色腫、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、尿路上皮膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫(mycoses fungoid)、メルケル細胞癌、及び他の血液系悪性腫瘍からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、がんは、尿路上皮膀胱癌(UBC)であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、UBCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、及びPDGFRBを含む。いくつかの実施形態では、UBCの間質遺伝子シグネチャーは、DKK3、PDGFB、NUAK1、FGF1、PDL1M4、またはLRRC32のうちの1つ以上をさらに含む。いくつかの実施形態では、UBCの間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、DKK3、PDGFB、NUAK1、FGF1、PDL1M4、またはLRRC32のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、UBCの間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、DKK3、PDGFB、NUAK1、FGF1、PDL1M4、またはLRRC32のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10以上を含む。いくつかの実施形態では、UBCの間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、DKK3、PDGFB、NUAK1、FGF1、PDL1M4、及びLRRC32を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、TGFβをさらに含む。
いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、NSCLCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、NSCLCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、及びTHY1のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、TGFβをさらに含む。
いくつかの実施形態では、がんは、腎細胞癌(RCC)であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、RCCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、及びTHY1を含む。いくつかの実施形態では、RCCの間質遺伝子シグネチャーは、LUM及び/またはPOSTNをさらに含む。いくつかの実施形態では、がんは、RCCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、THY1、TGFβ、LUM、またはPOSTNのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、または7つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、RCCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、THY1、LUM、及びPOSTNを含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、TGFβをさらに含む。
いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、及びTHY1を含む。
いくつかの実施形態では、がんは、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、TNBCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、及びTHY1を含む。いくつかの実施形態では、TNBCの間質遺伝子シグネチャーは、MMP11、BGN、またはCOL5A1のうちの1つ以上をさらに含む。いくつかの実施形態では、がんは、TNBCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、THY1、MMP11、BGN、またはCOL5A1のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、TNBCであり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、THY1、MMP11、BGN、及びCOL5A1を含む。
いくつかの実施形態では、がんは、卵巣癌であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、卵巣癌であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、及びTHY1を含む。いくつかの実施形態では、卵巣癌の間質遺伝子シグネチャーは、POSTN、LOX、またはTIMP3のうちの1つ以上をさらに含む。いくつかの実施形態では、がんは、卵巣癌であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、THY1、POSTN、LOX、またはTIMP3のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上を含む。いくつかの実施形態では、がんは、卵巣癌であり、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、THY1、POSTN、LOX、及びTIMP3を含む。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、TGFβをさらに含む。
いくつかの実施形態では、個体から得られた試料は、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、試料は、組織試料である。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍組織試料である。いくつかの実施形態では、腫瘍組織試料は、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、組織試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋、保存、新鮮、または凍結試料である。いくつかの実施形態では、試料は、全血である。いくつかの実施形態では、全血は、免疫細胞、循環腫瘍細胞、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、試料は、免疫療法での治療前に得られる。いくつかの実施形態では、試料は、免疫療法での治療前または免疫療法での治療後に得られる。いくつかの実施形態では、試料は、抑制間質アンタゴニストでの治療前に得られる。
いくつかの実施形態では、疾患または障害を有する個体は、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストの組み合わせでの治療から利益を得ることができる。いくつかの実施形態では、個体は免疫療法のみに応答する可能性が低い。免疫療法については、当該技術分野において説明されている(Chen,DS and Mellman,2013,Immunity 39:1-10)。いくつかの態様では、免疫療法標的は、刺激剤または阻害剤と考えられ得る。いくつかの実施形態では、免疫療法は、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、CD40、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMGB1、またはTLRアゴニストを含む。他の実施形態では、免疫療法は、CTLA-4、PD-L1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニストを含む。
本明細書に記載される方法及びキットのいくつかの実施形態では、免疫療法は、PD-L1軸アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-Iの両方への結合を阻害する。
本発明の方法及びキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である。
他の実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。
本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体の例、及びそれらの作製方法は、PCT特許出願第WO2010/077634AI号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。PD-1及びPD-L1関連病態の治療に使用される診断方法は、PCT特許出願第WO2014/151006A2号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間及び/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
本発明は、試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーの存在は、抑制間質アンタゴニストでの治療と組み合わされた免疫療法の臨床的利益を示す。免疫療法の抑制間質アンタゴニストとの組み合わせは、免疫療法のみでの治療と比較して臨床的利益を提供することができる。例えば、間質遺伝子シグネチャーを呈する線維症腫瘍の治療は、免疫療法の抑制間質アンタゴニストとの組み合わせから利益を得ることができる。
本明細書で使用される「抑制間質アンタゴニスト」は、間質(例えば、腫瘍関連間質)と関連した遺伝子または遺伝子産物の生物学的活性及び/または機能を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子である。間質遺伝子アンタゴニストの標的は、当該技術分野において知られており、例えば、Turley,S.J.et al.,Nature Reviews Immunology,2015.15:669-682、及びRosenbloom,J.et al.,Biochimica et Biophysica Acta 2013,1832:1088-1103を参照されたい。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、TGFβ(例えば、TGFβ1及びTGFβ2)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、これらに限定されないが、エンドグリン(CD105)、3G5抗原、FAP、CSPG4(NG2)、及び/またはポドポリン(GP38)を含む、表面糖タンパク質を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、これらに限定されないが、PECAM(CD31)、VCAM(CD106)、ICAM1(CD54)、THY1(CD90)、及び/またはβ1インテグリン(CD29)を含む、接着分子を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、これらに限定されないが、VEGFR1(FLT1)、VE GFR2(KDR)、VEGFR3(FLT4)、PDGFRα(CD140α)、及び/またはPDGFRβ(CD140β)を含む、増殖因子受容体を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、これらに限定されないが、ビメンチン、αSMA(ACTA2)、及び/またはデスミンを含む細胞内構造タンパク質を標的とする。抑制間質アンタゴニストの他の標的は、これらに限定されないが、5NT(CD73またはNT5E)RGS3、エンドシアリン(CD248)、及びFSP1(S100A4)を含む。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、がん関連線維芽細胞関連ポリペプチドを標的とする。がん関連線維芽細胞関連ポリペプチドの例としては、これらに限定されないが、エンドグリン(CD105)、FAP、ポドパリン、VCAM1、THY1、β1インテグリン、PDGFRα、PDGFRβ、ビメンチン、αSMA、デスミン、エンドシアリン、及び/またはFSP1が挙げられる。
いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、TGF-β発現及び活性化を標的とする。例としては、これらに限定されないが、ピルフェニドン、αvβ6抗体、ATI及びATII受容体遮断剤、ACE阻害剤、CAT-192(抗TGF-β1モノクローナルAB)、ならびにカベオリンスキャフォールディングドメイン(CSD)が挙げられる。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、カノニカルシグナル伝達経路TBR1(例となる阻害剤はSM305である)及びSMAD3(例となる阻害剤はSIS3である)を含むTGF-βシグナル伝達経路を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、c-Abl(例となる阻害剤はメシル酸イマチニブである)、PDGFR(例となる阻害剤はダサチニブである)、c-kit(例となる阻害剤はニロチニブである)、及びPKC-δ(例となる阻害剤は小特異的ポリペプチド及びロットレリン誘導体を含む)を含む非カノニカルシグナル伝達経路を含むTGF-βシグナル伝達経路を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、CTGF(例となる阻害剤はモノクローナルCTGF抗体を含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、CXCL12(例となる阻害剤はCXCL12抗体を含む)、CXCR4(例となる阻害剤はAMD3100を含む)、及びCCR2(例となる阻害剤はPF-04136309を含む)を含む線維細胞ホーミングの阻害を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、Src(例となる阻害剤はダサチニブ及びSU6656を含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、VEGFR(例となる阻害剤はニンテダニブ及びBIBF1120を含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、FGFR(例となる阻害剤はソラフェニブを含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、IL-13(例となる阻害剤はIL-13へのヒト化モノクローナル抗体を含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、IL-6受容体(例となる阻害剤はトシリズマブを含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、TLR(例となる阻害剤はTLR阻害剤E5564、TAK-242を含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、Nox4(ROS)(例となる阻害剤はGKT136901を含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、ET-1(例となる阻害剤はボセンタン及び他のET受容体遮断剤を含む)を標的とする。いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、TGFβ、PDPN、LAIR-1、SMAD、ALK、結合組織増殖因子(CTGF/CCN2)、内皮-1(ET-1)、AP-1、IL-13、PDGF、LOXL2、エンドグリン(CD105)、FAP、ポドプラニン(GP38)、VCAM1(CD106)、THY1、β1インテグリン(CD29)、PDGFRα(CD140α)、PDGFRβ(CD140β)、ビメンチン、αSMA(ACTA2)、デスミン、エンドシアリン(CD248)、またはFSP1(S100A4)アンタゴニストである。
いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、ピルフェニドン、ガルニセルチブ、ダサチニブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、ロットレリン及び誘導体、またはソラフェニブである。
いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストは、TGFβアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβの、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβの、TGFβの細胞受容体への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβの活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ1を標的とする。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ2を標的とする。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ3を標的とする。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ受容体1を標的とする。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ1のうちの1つ以上を標的とする。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ受容体2を標的とする。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ受容体3を標的とする。いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ受容体1、TGFβ受容体2、またはTGFβ受容体3のうちの1つ以上を標的とする。
いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、抗TGFβ抗体である。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗体は、抗TGFβとそのリガンドのうちの1つ以上との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗体は、TGFβの活性化を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗体は、ヒト抗体である。
本発明の方法にとって有用な抗TGFβ抗体、及びそれらの作製方法の例は、米国特許第5,571,714号、WO92/08480、WO92/00330、WO95/26203、WO97/13844、WO00/066631、WO05/097832、WO06/086469、WO06/116002、WO07/076391、WO12/167143、WO13/134365、及びWO14/164709に記載されている。
いくつかの実施形態では、抑制間質アンタゴニストでの治療は、組織中での免疫細胞浸潤の増加を可能にする。理論に縛られることなく、抑制間質アンタゴニストは、標的組織中の間質を調節し、免疫細胞の標的組織への浸潤を促進する。例えば、抑制間質アンタゴニストでの間質遺伝子シグネチャーを発現する線維症腫瘍の治療は、腫瘍中及び周辺の間質を調節し、(例えば、免疫療法によって調節された)免疫細胞の腫瘍への浸潤を可能にする。いくつかの実施形態では、免疫細胞浸潤の増加は、T細胞、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞のうちの1つ以上の浸潤の増加である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞及び/またはTeff細胞である。いくつかの実施形態では、個体は、抑制間質アンタゴニストでの治療前に免疫療法に対して耐性である。いくつかの実施形態では、個体に、単剤療法免疫療法がすでに投与されている。
間質遺伝子シグネチャーの1つ以上の遺伝子の存在及び/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の任意の適切な基準に基づいて、定性的及び/または定量的に判定され得る。特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在及び/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカーの存在/不在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在及び/または発現レベル/量と比較して減少または低下する。特定の実施形態では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/不在及び/または発現レベル/量を判定するためのさらなる開示が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法などの標準的な当該技術分野で既知の方法によって検出される、間質遺伝子シグネチャー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))の1つ以上の遺伝子のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を指す。特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の増加を指し、この増加は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較した、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーの発現は、発現の中央レベルと比較される。いくつかの実施形態では、発現の中央レベルは、線維症とみなされない組織からの発現のレベルである。いくつかの実施形態では、発現の中央レベルは、免疫療法に応答、または部分的に応答する組織における発現のレベルを反映する。いくつかの実施形態では、発現の中央レベルは、免疫療法に対する完全奏効者または部分奏効者であった個体からの腫瘍中の間質関連遺伝子の発現のレベルを反映する。いくつかの実施形態では、発現の中央レベルは、免疫療法に応答した患者のデータベースから誘導される。いくつかの実施形態では、発現の中央レベルは、免疫療法に応答した特定のがんを有する患者のデータベースから誘導される。例えば、尿路上皮膀胱癌を有する患者の間質遺伝子シグネチャーは、免疫療法に対する完全奏効者または部分奏効者であった尿路上皮膀胱癌患者のデータベースと比較される。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法などの標準的な当該技術分野で既知の方法によって検出される、間質遺伝子シグネチャー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。特定の実施形態では、低減した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の減少を指し、この減少は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
試料中の間質遺伝子シグネチャーの様々な遺伝子の存在及び/または発現レベル/量は、いくつかの方法論によって分析され得、これらの多くは、当該技術分野で既知であり、当業者に理解されており、免疫組織化学(「IHC」)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、例えば、定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMAなど)、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、及び/または遺伝子発現連続分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれか1つを含むが、これらに限定されない。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.,eds.,1995,Current Protocols In Molecular Biology,Units 2(ノーザンブロット法)、4(サザンブロット法)、15(免疫ブロット法)、及び18(PCR分析)に見られる。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイなどの多重化免疫アッセイも使用され得る。
いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャー中の1つ以上の遺伝子の存在及び/または発現レベル/量は、(a)試料(対象がん試料など)に、遺伝子発現プロファイリング、PCR(rtPCRまたはqRT-PCRなど)、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、またはFISHを行うことと、b)試料中の間質遺伝子シグネチャー産物の存在及び/または発現レベル/量を判定することとを含む方法を使用して判定される。いくつかの実施形態では、マイクロアレイ方法は、ストリンジェントな条件下で上述の遺伝子をコードする核酸分子にハイブリダイズすることができる1つ以上の核酸分子を有するか、または上述の遺伝子によってコードされるタンパク質のうちの1つ以上に結合することができる1つ以上のポリペプチド(ペプチドまたは抗体など)を有するマイクロアレイチップの使用を含む。一実施形態では、PCR方法は、qRT-PCRである。一実施形態では、PCR方法は、多重PCRである。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、マイクロアレイによって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、qRT-PCRによって測定される。いくつかの実施形態では、発現は、多重PCRによって測定される。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
細胞中のmRNAの評価方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用したインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連技法など)、及び様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用したRT-PCR、及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMAなど)を含む。
哺乳動物由来の試料は、ノーザンブロット、ドットブロット、またはPCR分析を使用してmRNAについて好都合にアッセイされ得る。加えて、かかる方法は、(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)生体試料中の標的mRNAのレベルを判定することを可能にする1つ以上のステップを含み得る。任意に、増幅標的cDNAの配列が判定され得る。
任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを試験または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験及び対照組織試料からの試験及び対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成する。例えば、その発現が抗血管新生療法の臨床的利益の増加または低減と相関する遺伝子の選択が固体支持体上でアレイされ得る。特定のアレイメンバーとの標識プローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
特定の実施形態では、試料中の間質遺伝子シグネチャータンパク質の存在及び/または発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を判定または検出する信頼できる方法であることが示されている。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態では、個体由来の試料中の間質遺伝子シグネチャーの発現の増加は、タンパク質発現の増加であり、さらなる実施形態では、IHCを使用して判定される。一実施形態では、間質遺伝子シグネチャーの発現レベルは、(a)抗体を用いた試料(対象がん試料など)のIHC分析を行うことと、b)試料中の間質遺伝子シグネチャーの発現レベルを判定することとを含む方法を使用して判定される。いくつかの実施形態では、IHC染色強度は、参照と比較して判定される。いくつかの実施形態では、参照は、(例えば、免疫療法に対する完全奏効者及び部分奏効者のデータベースからの)参照値である。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
IHCは、形態学的染色及び/または蛍光インサイツハイブリダイゼーションなどのさらなる技法と組み合わせて行われ得る。2つの一般的なIHC方法、直接アッセイ及び間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合が直接判定される。この直接アッセイは、さらなる抗体相互作用を伴わずに可視化され得る蛍光タグまたは酵素標識一次抗体などの標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、複合していない一次抗体が抗原に結合し、その後、標識二次抗体がその一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識に複合される場合、発色基質または蛍光発生基質が添加されて、抗原の可視化をもたらす。いくつかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。
IHCに使用される一次抗体及び/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識される。概して次のカテゴリーにグループ分けされ得る多数の標識が利用可能である:(a)35S、14C、125I、3H、及び131Iなどの放射性同位体、(b)コロイド金粒子、(c)希土キレート(ユーロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、もしくはSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販されるフルオロフォア、及び/または上記のうちのいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない蛍光標識、(d)様々な酵素基質標識が、利用可能であり、米国特許第4,275,149号が、これらのいくつかの概説を提供する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ、米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが含まれる。
酵素-基質の組み合わせの例には、例えば、基質として水素ペルオキシダーゼを有するホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸塩を有するアルカリホスファターゼ(AP)、及び発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルアンベリフェリル- -D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が含まれる。これらの一般的概説については、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーの1つ以上の遺伝子は、間質遺伝子診断用抗体(すなわち、一次抗体)を使用した免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態では、間質診断用抗体は、ヒト間質関連遺伝子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、間質診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、間質診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの実施形態では、間質診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、間質診断用抗体は、直接標識される。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
このようにして調製された検体は、載置かつカバースリップされ得る。その後、スライド評価が、例えば、顕微鏡を使用して判定され、当該技術分野において常用されている染色強度判断基準が用いられ得る。一実施形態では、腫瘍由来の細胞及び/または組織がIHCを使用して試験される場合、染色は、一般に、(試料中に存在し得る間質または周辺組織とは対照的に)腫瘍細胞及び/または組織において判定または評価されることが理解される。いくつかの実施形態では、腫瘍由来の細胞及び/または組織がIHCを使用して試験される場合、染色は、腫瘍内または腫瘍周辺免疫細胞を含む、腫瘍浸潤免疫細胞における判定または評価を含むことが理解される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーの存在は、IHCによって、試料の>0%、試料の少なくとも1%、試料の少なくとも5%、試料の少なくとも10%で検出される。
代替の方法では、試料は、抗体-バイオマーカー複合体が形成されるのに十分な条件下でそのバイオマーカーに特異的な抗体と接触してもよく、その後、その複合体を検出する。バイオマーカーの存在は、血漿または血清を含む、多種多様な組織及び試料をアッセイするためのいくつかの方法で、例えば、ウエスタンブロット法及びELISA手順によって検出され得る。かかるアッセイ形式を使用する幅広い免疫アッセイ技法が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号、及び同第4,018,653号を参照されたい。これらとしては、非競合型の単一部位及び二部位の両方または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに従来の競合結合アッセイが挙げられる。これらのアッセイはまた、標識された抗体の標的バイオマーカーへの直接結合を含む。
組織または細胞試料中の選択された間質遺伝子シグネチャーの存在及び/または発現レベル/量も、機能または活性ベースのアッセイによって試験され得る。例えば、バイオマーカーが酵素である場合、当該技術分野で既知のアッセイを行って、組織または細胞試料中の所与の酵素活性の存在を判定または検出することができる。
特定の実施形態では、試料は、アッセイされる間質遺伝子の量の差及び使用される試料の質の変動の両方、ならびにアッセイラン間の変動について正規化される。かかる正規化は、周知のハウスキーピング遺伝子を含む、特定の正規化バイオマーカーの発現を検出し、それを組み込むことによって達成され得る。代替として、正規化は、アッセイされた遺伝子またはその大サブセットの全ての平均または中央シグナルに基づき得る(包括的正規化アプローチ)。遺伝子毎に、対象の腫瘍mRNAまたはタンパク質の測定された正規化量が、参照セットで見られる量と比較される。対象毎の試験された腫瘍毎の各mRNAまたはタンパク質の正規化発現レベルが、参照セットにおいて測定された発現レベルの割合として表され得る。分析される特定の対象試料中で測定された存在及び/または発現レベル/量は、この範囲内のある百分率で低下し、これは、当該技術分野で周知の方法によって判定され得る。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
一実施形態では、試料は、臨床試料である。別の実施形態では、試料は、診断アッセイで使用される。いくつかの実施形態では、試料は、原発性腫瘍または転移性腫瘍から得られる。組織生検は、多くの場合、腫瘍組織の代表的な小片を得るために使用される。代替として、腫瘍細胞は、目的とする腫瘍細胞を含有することが知られているか、またはそのように考えられている組織または流体の形態で間接的に得られ得る。例えば、肺癌病変の試料は、切除、気管支鏡法、微細針吸引、気管支擦過によって、または痰、胸膜液、もしくは血液から得られ得る。遺伝子または遺伝子産物は、がんもしくは腫瘍組織から、または他の身体試料、例えば、尿、痰、血清、もしくは血漿から検出され得る。がん性試料中の標的遺伝子または遺伝子産物の検出について上で考察された同じ技法が他の身体試料に適用され得る。がん細胞ががん病変から脱落し、かかる身体試料中に現れ得る。かかる身体試料をスクリーニングすることにより、これらのがんの簡単な早期診断が達成され得る。加えて、療法の進展が、かかる身体試料を標的遺伝子または遺伝子産物について試験することによってより容易に監視され得る。
特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一の試料または組み合わせられた複数の試料である。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ対象または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、参照試料ががんの初期診断中に得られ、がんが転移性になるときに試験試料がその後得られる場合に有用であり得る。
特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない1つ以上の健常な個体由来の組み合わせられた複数の試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来の組み合わせられた複数の試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、または対象もしくは個体ではない1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または対象もしくは個体ではない疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではないが、免疫療法に対する完全奏効者または部分奏効者であった1つ以上の個体由来の組み合わせられた複数の試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来の組み合わせられた複数の試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、組織由来のプールされたRNA試料、または対象もしくは個体ではないが、免疫療法に対する完全奏効者もしくは部分奏効者であった1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または免疫療法に対する完全奏効者もしくは部分奏効者であった対象もしくは個体ではない疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
いくつかの実施形態では、試料は、個体由来の組織試料である。いくつかの実施形態では、組織試料は、腫瘍組織試料(例えば、生検組織)である。いくつかの実施形態では、組織試料は、肺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、腎組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、皮膚組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、膵臓組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、胃組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、膀胱組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、食道組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、中皮組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、***組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、甲状腺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、結腸直腸組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、頭頸部組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、骨肉腫組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、前立腺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、卵巣組織、HCC(肝臓)、血球、リンパ節、骨/骨髄である。
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、疾患または障害は、腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、悪性がん性腫瘍(すなわち、がん)である。いくつかの実施形態では、腫瘍及び/またはがんは、固形腫瘍または非固形もしくは軟組織腫瘍である。軟組織腫瘍の例には、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、または毛様細胞白血病)またはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、またはホジキン病)が含まれる。固形腫瘍は、血液、骨髄、またはリンパ系以外の身体組織の任意のがんを含む。固形腫瘍は、上皮細胞起源のもの及び非上皮細胞起源のものにさらに分類され得る。上皮細胞固形腫瘍の例としては、胃腸管、結腸、結腸直腸(例えば、類基底結腸直腸癌)、***(トリプルネガティブ乳癌)、前立腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣(例えば、類内膜卵巣癌)、頭頸部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、唇、鼻咽頭、皮膚、子宮、***、泌尿器官(例えば、尿路上皮膀胱癌、尿路上皮癌、異型尿路上皮癌、移行上皮癌)、膀胱、及び皮膚の腫瘍が挙げられる。非上皮起源の固形腫瘍としては、肉腫、脳腫瘍、及び骨腫瘍が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、二次または三次局所進行性または転移性非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、がんは、腺癌である。いくつかの実施形態では、がんは、扁平上皮癌である。
いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーの遺伝子のうちの1つ以上は、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光学、質量分光、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、及びFISH、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を使用して試料中で検出される。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FACS分析を使用して検出される。いくつかの実施形態では、間質遺伝子シグネチャーは、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む。
好ましくは、間質遺伝子シグネチャーの発現レベルは、がん細胞を含有するか、またはその疑いがある生体試料中で評価される。試料は、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌)、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、腎細胞癌、結腸直腸癌、胃癌、肝臓癌、黒色腫、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌、または膵臓癌)を罹患しているか、その疑いがあるか、またはその診断を受けた患者から得られた組織切除、組織生検、または転移性病変であり得る。好ましくは、試料は、組織の試料、腫瘍の切除もしくは生検、知られているもしくは疑われている転移性がん病変もしくは切片、または循環がん細胞を含むことが知られているか、もしくはその疑いがある、血液試料、例えば、末梢血液試料である。試料は、がん細胞(すなわち、腫瘍細胞)、及び非がん性細胞(例えば、間質細胞)の両方を含み得、特定の実施形態では、がん性細胞及び非がん性細胞の両方を含む。間質成分中の遺伝子発現の判定を含む本発明の態様では、試料は、がん/腫瘍細胞及び、例えば、がん/腫瘍細胞と関連した非がん性細胞(例えば、腫瘍関連線維芽細胞、内皮細胞、周皮細胞、細胞外マトリックス、及び/または様々なクラスの白血球)の両方を含む。他の態様では、当業者、例えば、病理学者であれば、がん細胞と非がん性細胞(例えば、間質細胞、内皮細胞など)とを容易に見分けることができる。がん/腫瘍細胞を含む組織切除、生検、及び体液、例えば、血液試料を含む生体試料を得る方法は、当該技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、患者から得られる試料は、任意の免疫療法または他の治療レジメンもしくは療法、例えば、がんの治療またはその症状の管理もしくは改善のための化学療法または放射線療法の開始前に回収される。いくつかの実施形態では、患者から得られる試料は、免疫療法の開始後かつ抑制間質アンタゴニストでの治療前に回収される。いくつかの実施形態では、患者は、抑制間質アンタゴニストでの治療前に免疫療法での治療に失敗している。したがって、いくつかの実施形態では、試料は、免疫療法剤もしくは他の薬剤の投与、または免疫療法もしくは抑制間質アンタゴニストでの治療の開始前に回収される。いくつかの実施形態では、試料は、免疫療法剤もしくは他の薬剤の投与後、かつ抑制間質アンタゴニストでの治療の開始前に回収される。
上述の方法に加えて、本発明はまた、ウエスタンブロッティング及びELISAベースの検出などによって、1つ以上の間質遺伝子シグネチャーの発現レベルを評価するためのさらなる免疫組織化学的方法を包含する。当該技術分野において理解されるように、本発明のマーカー/指標タンパク質の発現レベルはまた、ノーザンブロッティング、リアルタイムPCR、及びRT PCRなどの当該技術分野において知られている任意の適切な方法によってmRNAレベルで評価され得る。免疫組織化学ベース及びmRNAベースの検出方法及びシステムは、当該技術分野において周知であり、Lottspeich(Bioanalytik,Spektrum Akademisher Verlag,1998)またはSambrook and Russell(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,CSH Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,U.S.A.,2001)などの標準的なテキストから推測することができる。記載されている方法は、進行期のがん(例えば、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、肝臓癌、黒色腫、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌、または腎細胞癌)と診断された集団において確立された対照レベルと比較して患者または患者群における間質遺伝子シグネチャーの発現レベルを判定するための特定の使用を有するものである。
本明細書に記載の検出方法における使用について、当業者であれば、本発明によって包含されるポリペプチドまたはオリゴヌクレオチドを標識する能力を有する。当該技術分野において日常的に実施されているように、mRNAレベルの検出における使用のためのハイブリダイゼーションプローブ及び/またはIHC方法における使用のための抗体もしくは抗体断片は、当該技術分野において知られている標準的な方法に従って標識及び可視化され得る。一般的に使用されるシステムの非限定的な例は、放射性標識、酵素標識、蛍光タグ、ビオチン-アビジン複合体、化学発光などの使用を含む。
1つ以上の間質遺伝子シグネチャーの発現レベルはまた、免疫凝集、免疫沈降(例えば、免疫拡散、免疫電気泳動、免疫固定)、ウエスタンブロッティング技法(例えば、インサイツ免疫組織化学、インサイツ免疫細胞化学、親和性クロマトグラフィー、酵素免疫アッセイ)などを活用することによって、タンパク質レベルに基づき判定することができる。精製ポリペプチドの量はまた、物理的方法、例えば、測光によって決定され得る。混合物中の特定のポリペプチドを定量化する方法は、通常、例えば、抗体の、特異的結合に依存する。
上記のように、本発明によるマーカー/指標タンパク質の発現レベルはまた、間質遺伝子シグネチャーをコードする対応する遺伝子(複数可)の発現の増加または減少に反映され得る。したがって、翻訳前の遺伝子産物(例えば、スプライスされた、スプライスされていない、または部分的にスプライスされたmRNA)の定量的評価は、対応する遺伝子(複数可)の発現を評価するために行うことができる。当業者であれば、この関連で使用される標準的な方法を認識しており、これらの方法を標準的なテキスト(例えば、Sambrook,2001)から推測し得る。例えば、本明細書に記載される免疫細胞遺伝子シグネチャーの1つ以上をコードするmRNAの各濃度/量についての定量的データは、ノーザンブロット、リアルタイムPCRなどによって得ることができる。
本発明は、患者が、遺伝子セットのいずれかの1つ以上の免疫細胞遺伝子シグネチャーの発現レベルに変化があると判定される場合、免疫療法をがん(例えば、化学療法耐性、化学療法感受性、難治性、原発性、進行性、または再発性である、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、結腸直腸癌、胃癌、肝臓癌、黒色腫、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌、または腎細胞癌)を有する患者に投与するための方法をさらに提供する。一実施形態では、1つ以上の間質遺伝子シグネチャー(すなわち、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上)の発現レベルの増加がある場合、患者に、免疫療法と組み合わされた抑制間質アンタゴニストが投与される。
いくつかの実施形態では、活性化免疫療法は、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニストを含む。特定の実施形態では、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)は、がんを有する患者における免疫応答または機能を増加、向上、または刺激する。いくつかの実施形態では、アゴニストは、リガンド(例えば、T細胞受容体リガンド)の発現及び/または活性を調節、及び/またはリガンドのその免疫受容体との相互作用を増加もしくは刺激、及び/または免疫受容体に結合するリガンドによって媒介される細胞内シグナル伝達を増加もしくは刺激する。他の実施形態では、抑制化免疫療法は、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニストを含む。特定の実施形態では、アンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)は、リガンド(例えば、T細胞受容体リガンド)のその免疫受容体との相互作用を阻害及び/または遮断するか、またはリガンド及び/または受容体発現及び/または活性のアンタゴニストである薬剤、またはリガンド(例えば、T細胞受容体リガンド)とその免疫受容体とによって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、抑制間質アンタゴニストとの組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、免疫療法は、個体由来の試料が本明細書に記載の間質遺伝子シグネチャーの存在を示した抑制間質アンタゴニストとの組み合わせで投与される。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、活性化免疫療法(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニストアゴニスト)及び追加の療法で抑制間質アンタゴニストを投与することをさらに含み得る。追加の療法は、放射線療法、手術、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述のものの組み合わせであってもよい。追加の療法は、アジュバントまたはネオアジュバント療法の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/または重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制吐剤など)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、手術である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、上文に記載される化学療法剤のうちの1つ以上であってもよい。例えば、これらの方法は、さらに後述される、活性化免疫療法(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)または抑制免疫療法(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)の1つ以上の追加の化学療法剤(例えば、カルボプラチン及び/またはパクリタキセル)との同時投与を含む。任意に1つ以上の化学療法剤(例えば、カルボプラチン及び/またはパクリタキセル)と組み合わされた免疫療法は、好ましくは、無増悪生存(PFS)及び/または全生存(OS)を含む、生存を延長及び/または改善する。一実施形態では、免疫療法は、治療されるがんについて、承認された抗腫瘍剤、または標準的治療を投与することによって達成される生存よりも少なくとも約20%生存を延長する。
一実施形態では、固定用量の免疫療法が投与される。固定用量は、一度に、または一連の治療にわたって患者に適切に投与され得る。固定用量が投与される場合、好ましくは、これは約20mg~約2000mgの範囲内である。例えば、固定用量は、約420mg、約525mg、約840mg、または約1050mgのアゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)であり得る。一連の用量が投与される場合、これらは、例えば、ほぼ毎週、約2週間毎、約3週間毎、または約4週間毎に投与されてよいが、好ましくは約3週間毎に投与されてよい。固定用量は、例えば、医師によって判定される疾患進行、有害事象、または他の時点まで継続して投与され得る。例えば、約2、3、または4から約17以上までの固定用量が投与され得る。
一実施形態では、1つ以上の負荷用量(複数可)のアゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)が投与され、続いて1つ以上の維持用量(複数可)が投与される。別の実施形態では、複数の同じ用量が患者に投与される。
一実施形態では、1つ以上の負荷用量(複数可)の抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGFβアンタゴニスト)が投与され、続いて1つ以上の維持用量(複数可)が投与される。別の実施形態では、複数の同じ用量が患者に投与される。
アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)は単一の抗腫瘍剤として投与され得るが、患者は任意にアゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)及び間質遺伝子シグネチャーの存在に応じた抑制間質アンタゴニストの組み合わせで治療される。
他の実施形態では、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストは、化学療法剤と組み合わせて投与される。本明細書における例となる化学療法剤としては、ゲムシタビン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロピリミジン(例えば、5-FU)、パクリタキセル(例えば、nab-パクリタキセル)、ドセタキセル、トポテカン、カペシタビン、テモゾロミド、インターフェロンα、及び/またはリポソームドキソルビシン(例えば、ペグ化リポソームドキソルビシン)が挙げられる。併用投与としては、別個の製剤または単一の薬学的製剤を使用する同時投与または併用投与、及びいずれかの順番での連続投与が挙げられ、好ましくは、両方の(または全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を発揮する時間が存在する。したがって、化学療法剤は、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)もしくはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)の投与前もしくは後、及び/または抑制間質アンタゴニストの投与前もしくは後に投与され得る。この実施形態では、化学療法剤の少なくとも1回の投与と、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)、アンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)、及び/または抑制間質アンタゴニストの少なくとも1回の投与との間のタイミングは、好ましくは、約1か月以内(3週間、2週間、1週間、6日、5日、4日、3日、2日、1日)である。あるいは、化学療法剤及びアゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)、ならびに抑制間質アンタゴニストは、単一の製剤または別個の製剤で、患者に併用投与される。化学療法剤(例えば、カルボプラチン及び/またはパクリタキセル)及びアゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)もしくはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)及び/または抑制間質アンタゴニストの組み合わせによる治療は、相乗的、または相加的より大きな、治療利益を患者にもたらし得る。
例えば、卵巣癌の療法のための、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)及び抑制間質アンタゴニストと組み合わせるのに特に望ましい化学療法剤としては、白金化合物(例えば、カルボプラチン)、パクリタキセルもしくはドセタキセルなどのタキソール、トポテカン、またはリポソームドキソルビシンなどの化学療法剤が挙げられる。
例えば、乳癌の療法のための、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)及び抑制間質アンタゴニストと組み合わせるのに特に望ましい化学療法剤としては、カペシタビン、及びパクリタキセル(例えば、nab-パクリタキセル)またはドセタキセルなどのタキソールなどの化学療法剤が挙げられる。
例えば、結腸直腸癌の療法のための、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)及び抑制間質アンタゴニストと組み合わせるのに特に望ましい化学療法剤としては、フルオロピリミジン(例えば、5-FU)、パクリタキセル、シスプラチン、トポテカン、イリノテカン、フルオロピリミジン-オキサリプラチン、フルオロピリミジン-イリノテカン、FOLFOX4(5-FU、レコボリン、オキサリプラチン)、及びIFL(イロノテカン、5-FU、ロイコボリン)などの化学療法剤が挙げられる。
例えば、腎細胞癌の療法のための、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)及び抑制間質アンタゴニストと組み合わせるのに特に望ましい化学療法剤としては、インターフェロンα2aなどの化学療法剤が挙げられる。
化学療法剤は、投与される場合、通常は、それについて知られているか、または薬物の複合作用もしくは化学療法剤の投与に起因する副作用のために任意に低下した投与量で投与される。かかる化学療法剤の調製及び投与スケジュールは、製造業者の指示に従って、または当業者によって経験的に決定されるように使用され得る。化学療法剤がパクリタキセルである場合、好ましくは、これは、例えば、3週間毎に1回、3時間にわたり、約130mg/m2~200mg/m2(例えば約175mg/m2)の用量で投与される。化学療法剤がカルボプラチンである場合、好ましくは、これは、患者の既存の腎機能または腎機能及び所望の血小板最下点に基づくCalvert式を使用してカルボプラチンの用量を計算することによって投与される。腎***は、カルボプラチンの主要な排出経路である。この投与式の使用は、体表面積に基づく経験的用量計算と比較して、そうでなければ(腎機能が平均を上回る患者において)過少量投与または(腎機能が損なわれた患者において)過量投与を引き起こし得る、治療前の腎機能における患者変動の補償を可能にする。単剤カルボプラチンを使用する4~6mg/mL/分の標的AUCは、以前治療された患者において最も適切な用量範囲を提供すると考えられる。
アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)、抑制間質アンタゴニスト及び化学療法剤とは別に、他の治療レジメンが組み合わされ得る。例えば、第2(第3、第4など)の化学療法剤(複数可)が投与され得、第2の化学療法剤は、抗代謝剤化学療法剤、または抗代謝剤ではない化学療法剤である。例えば、第2の化学療法剤は、タキサン(パクリタキセルまたはドセタキセルなど)、カペシタビン、または白金系化学療法剤(カルボプラチン、シスプラチン、またはオキサリプラチンなど)、アントラサイクリン(リポソームドキソルビシンを含むドキソルビシンなど)、トポテカン、ペメトレキセド、ビンカアルカロイド(ビノレルビンなど)、及びTLK 286であり得る。異なる化学療法剤の「カクテル」が投与され得る。
アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)もしくはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)、及び/または化学療法剤と組み合わせることができる他の治療剤は、HER阻害剤、HER二量体化阻害剤(例えば、増殖阻害剤、トラスツズマブなどのHER2抗体、またはHER2過剰発現細胞のアポトーシスを誘発するHER2抗体、7C2、7F3、またはこれらのヒト化変異体など);異なる腫瘍関連抗原に対する抗体、EGFR、HER3、HE R4など;抗ホルモン化合物、例えば、タモキシフェンなどの抗エストロゲン化合物、またはアロマターゼ阻害剤;(療法に関連したいかなる心筋機能障害も予防または低減するための)心臓保護剤;サイトカイン;EGFR標的化薬物(TARCEVA(登録商標)IRESSA(登録商標)またはセツキシマブなど);チロシンキナーゼ阻害剤;COX阻害剤(例えば、COX-1またはCOX-2阻害剤);非ステロイド抗炎症薬、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、Johnson and Johnsonから市販されるチピファルニブ/ZARNESTRA(登録商標)R115777またはSchering-Ploughから市販されるロナファルニブSCH66336);オレゴボマブ(MoAb B43.13)などのcofetalタンパク質CA 125に結合する抗体;HER2ワクチン(PharmexiaからのHER2AutoVacワクチン、またはDendreonからのAPC8024タンパク質ワクチン、またはGSK/CorixaからのHER2ペプチドワクチンなど);別のHER標的化療法(例えば、トラスツズマブ、セツキシマブ、ABX-EGF、EMD7200、ゲフィチニブ、エルロチニブ、CP724714、CI1033、GW572016、IMC-11F8、TAK165、など);Raf及び/またはras阻害剤(例えば、WO2003/86467を参照のこと);ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標));トポテカンなどのトポイソメラーゼ1阻害剤;タキサン;ラパチニブ/GW572016などのHER2及びEGFR二重チロシンキナーゼ阻害剤;TLK286(TELCYTA(登録商標));EMD-7200;セロトニンアンタゴニスト、ステロイド、またはベンゾジアゼピンなどの嘔気を治療する薬剤;局所もしくは経口抗生物質を含む、皮膚発疹を予防もしくは治療する薬剤または標準的なにきび療法;下痢を治療または予防する薬剤;アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン、またはメペリジンなどの体温低下剤;造血増殖因子、などのうちのいずれか1つ以上を含む。
上記の同時投与される薬剤のいずれかに適した投与量は、現在使用されているものであり、薬剤及びアゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)及び抑制間質アンタゴニストの複合作用(相乗効果)のために低下させてもよい。上記の治療レジメンに加えて、患者は、腫瘍及び/またはがん細胞の外科的切除、及び/または放射線療法に供され得る。
アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)が抗体である場合、好ましくは投与される抗体はネイキッド抗体である。投与されるアゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)は、細胞毒性剤と複合され得る。好ましくは、これが結合する複合体及び/または抗原は、細胞によって内在化され、これが結合するがん細胞の殺滅における複合体の治療有効性の増加をもたらす。好ましい実施形態では、細胞毒性剤は、がん細胞中の核酸を標的とし、これに干渉する。かかる細胞毒性剤の例としては、メイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ、及びDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)またはアンタゴニスト(例えば、CTLA-4、PD-1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)は、遺伝子療法によって投与することができる。例えば、細胞内抗体を産生するための遺伝子療法の使用に関する1996年3月14日に公開されたWO96/07321を参照されたい。(任意でベクターに含有される)核酸を患者の細胞にインビボ及びエクスビボで入れ込むための2つの主なアプローチが存在する。インビボ送達の場合、核酸は、通常は抗体が必要とされる部位において患者に直接注射される。エクスビボ治療の場合、患者の細胞が取り出され、これらの単離された細胞に核酸が導入され、修飾された細胞が患者に直接投与されるか、または例えば、患者に埋め込まれる多孔質膜内にカプセル化される(例えば、米国特許第4,892,538号及び同第5,283,187号参照)。核酸を生きた細胞に導入するために使用可能な様々な技法が存在する。これらの技法は、意図される宿主の細胞において、インビトロまたはインビボで、核酸が培養された細胞に移行したかどうかに応じて異なる。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の移行に適した技法には、リポソームの使用、電気穿孔、微量注入、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などが含まれる。遺伝子のエクスビボ送達に一般に使用されるベクターは、レトロウイルスである。現在好ましいインビボ核酸移行技法には、ウイルスベクター(アデノウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、またはアデノ関連ウイルスなど)による形質移入、及び脂質系システム(遺伝子の脂質媒介性移行に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである)が含まれる。一部の状況において、核酸源を、細胞表面膜タンパク質または標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上の受容体のリガンド、などの、標的細胞を標的とする薬剤とともに提供することが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスと関連付けられた細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、例えば、特定の細胞型に向性のカプシドタンパク質またはその断片、周期中に内在化を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化を標的とし、細胞内半減期を強化するタンパク質を標的とするため、及び/またはそれらの取り込みを促進するために使用され得る。受容体媒介性エンドサイトーシスの技法は、例えば、Wu et al.,J.Biol.Chem.262:4429-4432(1987)、及びWagner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3410-3414(1990)によって記載されている。現在知られている遺伝子作製及び遺伝子療法プロトコルの概説については、Anderson et al.,Science 256:808-813(1992)を参照されたい。WO93/25673及びそこに引用される参考文献を参照されたい。
III.本発明の方法での使用のための抗体
本発明のいくつかの実施形態では、免疫療法及び/または抑制間質アンタゴニストは、抗体である。本発明は、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストの併用治療から利益を得ることができる個体の診断及び/または治療における使用のための様々な抗体を提供する。
モノクローナル抗体
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体の集団から得られ、すなわち、その集団に含まれる個別の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じる可能性がある変異体を除き、同一であり、及び/または同じエピトープに結合し、かかる変異体は概して少量で存在する。したがって「モノクローナル」という修飾語は、個別のまたはポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)によって最初に記載されるハイブリドーマ法により作製されてもよいし、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製されてもよい。
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物が本明細書に記載されるように免疫化されて、免疫化に使用されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を誘発する。代替として、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。次いで、ポリエチレングリコールなどの適した融剤を用いてリンパ球を骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、好ましくは非融合親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する適切な培養培地で増殖する。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を阻止する。
いくつかの実施形態では、骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地などの培地に感受性を示すものである。これらの中で、いくつかの実施形態では、骨髄腫細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞に由来するものなどのマウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生について説明されている(Kozbor,J.Immunol.133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖する培養培地は、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、または放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定される。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.107:220(1980)のスキャッチャード分析によって決定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローン化され、標準的な方法によって増殖され得る(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice pp.59-103(Academic Press,1986))。この目的に適した培養培地には、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで増殖され得る。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、ポリペプチドA-Sepharose(登録商標)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水、または血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離及び配列決定される。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの供給源としての機能を果たす。単離されると、DNAは、発現ベクター内に配置され得、その後、これが宿主細胞、例えば、E.coli細胞、サルCOS細胞、ヒト胚腎臓(HEK)293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはさもなければ免疫グロブリンポリペプチドを産生しない骨髄腫細胞に形質移入されて、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する概説論文には、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.5:256-262(1993)、及びPluckthun,Immunol.Revs.,130:151-188(1992)が含まれる。
さらなる実施形態では、抗体または抗体断片は、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)に記載される技法を使用して作製された抗体ファージライブラリーから単離され得る。Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol. Biol.222:581-597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の単離について記載する。その後の刊行物は、非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略として、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992))、ならびにコンビナトリアル感染及びインビボ組換えによる高い親和性(nM範囲)のヒト抗体の産生について記載する(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.21:2265-2266(1993))。したがって、これらの技法は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法の実行可能な代替法である。
DNAはまた、例えば、同種マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換すること(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc. Natl Acad.Sci.USA 81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって修飾され得る。
典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインについて置換されるか、またはそれらは、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインについて置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位、及び異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
抗体断片
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。抗体断片を産生するための様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解消化により得られた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞により直接産生され得る。例えば、抗体断片は、上記で考察される抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的に結合されて、F(ab’)2断片を形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者には明らかであろう。他の実施形態では、最適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるように、「線状抗体」でもあり得る。かかる線状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であり得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の断片が提供される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、Fv、及びダイアボディからなる群から選択される。
ポリペプチド変異体及び修飾
特定の実施形態では、本明細書におけるタンパク質のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、タンパク質の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。タンパク質のアミノ酸配列変異体は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾としては、例えば、タンパク質のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行い、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特徴を有することを条件とする。
変異体ポリペプチド
「ポリペプチド変異体」とは、ポリペプチドの全長天然配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書に定義されるポリペプチド、例えば、活性ポリペプチドを意味する。かかるポリペプチド変異体としては、例えば、1つ以上のアミノ酸残基が全長天然アミノ酸配列のN末端またはC末端で付加または欠失されたポリペプチドが挙げられる。通常、ポリペプチド変異体は、全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%のうちのいずれかのアミノ酸配列同一性を有する。任意で、変異体ポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換を有し、あるいは天然ポリペプチド配列と比較して約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個のうちのいずれか以下の保存的アミノ酸置換を有する。
変異体ポリペプチドは、N末端またはC末端で切断され得るか、または例えば、全長天然ポリペプチドと比較して、内部残基を欠き得る。特定の変異体ポリペプチドは、所望の生物学的活性にとって不可欠ではないアミノ酸残基を欠き得る。切断、欠失、及び挿入を有するこれらの変異体ポリペプチドは、いくつかの従来の技法のうちのいずれかによって調製され得る。所望の変異体ポリペプチドは、化学的に合成され得る。別の適切な技法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって所望の変異体ポリペプチドをコードする核酸断片を単離及び増幅することを伴う。核酸断片の所望の末端を画定するオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’プライマー及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、変異体ポリペプチドは、本明細書に開示される天然ポリペプチドと少なくとも1つの生物学的及び/または免疫学的活性を共有する。
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体、または細胞毒性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体としては、抗体の血清半減期を増大する酵素またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。かかる修飾としては、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物に到達するためになされるが、但し、最終構築物が所望の特徴を有することを条件とする。アミノ酸変化は、ポリペプチド(例えば、抗体)の翻訳後プロセスも改変することができ、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化することができる。
どのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を及ぼすことなく挿入、置換、または欠失され得るかを判定する際の手引きは、ポリペプチドの配列を同種の既知のポリペプチド分子の配列と比較し、かつ相同性の高い領域のアミノ酸配列変化の数を最小限に抑えることによって見出され得る。
変異導入の好ましい位置であるポリペプチド(例えば、抗体)の特定の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells,Science 244:1081-1085(1989)によって説明される「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性または負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)に置き換えられて、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで、置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置は、さらなるまたは他の変異体を置換部位に、またはそれについて導入することによりリファインされる。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されている一方で、変異自体の性質は予め決定される必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を分析するために、alaスキャニングまたはランダム変異導入が標的コドンまたは領域で実行され、発現された抗体変異体が所望の活性に関してスクリーニングされる。
別の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基に置き換えられた抗体分子内に少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換変異導入の最も関心ある部位としては、超可変領域が挙げられるが、FR改変も企図される。かかる置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に「例示的置換」と表示されるか、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるより実質的な変化が導入され、産物がスクリーニングされ得る。
ポリペプチドの生物学的特性の実質的な修飾は、(a)例えば、シートもしくは螺旋立体配座としての、置換領域中のポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクを維持するそれらの効果において大いに異なる置換を選択することによって達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性に従って群分けされ得る(A.L.Lehninger,Biochemistry second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて群分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
抗体の適切な立体配座の維持に関与しない任意のシステイン残基も概してセリンで置換されて、分子の酸化的安定性が改善され、異常な架橋が阻止され得る。逆に、システイン結合(複数可)がポリペプチドに付加されて、その安定性を改善することができる(具体的には、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
置換変異体の一例は、親抗体(例えば、ヒト化抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。概して、さらなる開発のために選択されて得られた変異体(複数可)は、それらが生成される親抗体に対して改善された生物学的特性を有する。かかる置換変異体を生成するための好都合な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を伴う。簡潔には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7つの部位)は、各部位に全ての可能なアミノ置換を生成するために突然変異される。このように生成された抗体変異体は、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物への融合物として糸状ファージ粒子からの一価様式で表示される。その後、ファージディスプレイされた変異体は、本明細書に開示されるそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を特定するために、アラニンスキャニング変異導入が行われ、抗原結合に著しく寄与する超可変領域残基が特定され得る。あるいは、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と標的との間の接触点を特定することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書に詳述される技法に従う置換の候補である。かかる変異体が生成されると、変異体のパネルが本明細書に記載されるようにスクリーニングに供され、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体がさらなる開発のために選択され得る。
ポリペプチドの別の種類のアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを改変する。ポリペプチドは、非アミノ酸部分を含み得る。例えば、ポリペプチドは、グリコシル化され得る。かかるグリコシル化は、宿主細胞または宿主生物でのポリペプチドの発現中に天然に生じ得るか、またはヒト介入に起因する計画的な修飾であり得る。改変とは、ポリペプチドに見られる1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/またはポリペプチド中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化とは、糖類であるN-アセイルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
グリコシル化部位のポリペプチドへの付加は、(N結合グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。改変は、(O連結グリコシル化部位のための)元の抗体の配列への1つ以上のセリンまたはスレオニン残基の付加、またはそれによる置換によっても行われ得る。
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的もしくは酵素的に、またはグリコシル化の標的としての機能を果たすアミノ酸残基をコードするコドンの変異置換によって達成され得る。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、様々なエンド-及びエキソ-グリコシダーゼの使用によって達成され得る。
他の修飾としては、それぞれ、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基の対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のγ-アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
キメラポリペプチド
本明細書に記載のポリペプチドは、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法で修飾され得る。いくつかの実施形態では、キメラ分子は、ポリペプチドと、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般に、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する。かかるエピトープタグ形態のポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出され得る。また、エピトープタグの提供により、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合する別の種類の親和性マトリックスを使用してポリペプチドが親和性精製によって容易に精製されることが可能になる。
多重特異性抗体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。特定の実施形態では、多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、結合特異性の一方は1つの抗原に対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体は、特定の抗原を発現する細胞に細胞毒性薬剤を局在化させるために使用されてもよい。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、及び「ノブ・イン・ホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)、ならびに加えて二重特異性抗体の半分の抗原結合断片(Fab)内で1つ以上の重鎖及び軽鎖ドメインを交換すること(CrossMab、WO2009/080251、WO2009/080252、WO2009/080253、WO2009/080254及びを参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電的ステアリング効果を操作すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照されたい)、及び単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されるように三重特異性抗体を調製することによって作製され得る。
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
本明細書の抗体または断片には、1つの抗原、及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用(Dual Acting)FAb」または「DAF」も含まれる(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
IV.ベクター、宿主細胞、及び組換え方法
異種ポリペプチド(例えば、抗体)の組換え産生の場合、それをコードする核酸は、単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。ポリペプチド(例えば、抗体)をコードするDNAは、従来の手技を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離及び配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物起源のいずれかのものである。IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域がこの目的のために使用され得、かかる定常領域が任意のヒトまたは動物種から得られ得ることが理解される。
A.原核生物宿主細胞を使用した抗体の生成
i.ベクター構築
本発明のポリペプチド(例えば、抗体)のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準の組換え技法を使用して得られ得る。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離及び配列決定され得る。代替的に、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技法を用いて合成され得る。得られた後、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主内で異種ポリヌクレオチドを複製及び発現することができる組換えベクターに挿入される。利用可能であり、かつ当該技術分野で既知の多くのベクターが本発明の目的のために使用され得る。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸の大きさ及びベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはこれらの両方)及びそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に応じて種々の成分を含有する。ベクター成分には、一般には、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入及び転写終結配列が含まれるが、これらに限定されない。
一般に、宿主細胞と適合性のある種由来のレプリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。このベクターは、通常、複製部位、及び形質転換細胞において表現型選択を提供することができるマーキング配列を持つ。例えば、E.coliは、典型的には、E.coli種由来のプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、それ故に形質転換細胞を特定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージは、内因性タンパク質の発現のための微生物によって使用され得るプロモーターも含有し得るか、またはそれを含有するように修飾され得る。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322誘導体の例は、Carter et al.、米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
加えて、宿主微生物と適合性のあるレプリコン及び制御配列を含有するファージベクターは、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、GEM(商標)-11などのバクテリオファージが、E.coli LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために使用され得る組換えベクターを作製する際に利用され得る。
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調節するシストロンの上流(5’)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、2つのクラス、誘導プロモーター及び構成プロモーターに分けられる。誘導プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の存在もしくは不在、または温度の変化に応答してその制御下で増加したレベルのシストロンの転写を開始するプロモーターである。
様々な潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化によりソースDNAからプロモーターを除去し、かつ単離されたプロモーター配列を本発明のベクターに挿入することによって、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に結合され得る。天然プロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方は、標的遺伝子の増幅及び/または発現を誘導するために使用され得る。いくつかの実施形態では、一般に天然標的ポリペプチドプロモーターと比較して発現された標的遺伝子のより大きい転写及びより高い収率をもたらすため、異種プロモーターが利用される。
原核生物宿主との使用に適したプロモーターとしては、PhoAプロモーター、-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにハイブリッドプロモーター、例えば、tacまたはtrcプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能的である他のプロモーター(他の既知の細菌またはファージプロモーターなど)も適切である。それらのヌクレオチド配列が公開されており、それにより、当業者が、任意の必要とされる制限部位を提供するためにリンカーまたはアダプターを使用して、それらを標的軽鎖及び重鎖(Siebenlist et al.,(1980)Cell 20:269)をコードするシストロンに作動可能に連結することが可能になっている。
翻訳開始領域(TIR)は、タンパク質の全体の翻訳レベルの主要な決定因子である。TIRは、シグナル配列をコードするポリヌクレオチドを含み、シャイン・ダルガノ配列の直上流から開始コドンのおよそ20ヌクレオチド下流まで延びている。一般に、このベクターは、TIRを含み、TIR及び変異体TIRは、当該技術分野で既知であり、TIRの生成方法は、当該技術分野で既知である。一連の核酸配列変異体はある範囲の翻訳強度で作製され、それにより多くの異なるポリペプチドの最適な分泌のためにこの因子を調整するための便利な手段を提供することができる。PhoAなどのこれらの変異体に融合したレポーター遺伝子の使用により、異なる翻訳開始領域の相対翻訳強度の定量方法が提供される。変異体または突然変異体TIRをプラスミドベクターのバックグラウンドに提供し、それにより、成熟ポリペプチドの最大発現の翻訳強度の最適範囲を確立するように目的とする遺伝子が挿入され、その発現が測定され得る一組のプラスミドを提供することができる。変異体TIRは、USP8,241,901に開示されている。
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜にわたる発現ポリペプチドの転位を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明の目的で選択されたシグナル配列は、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。異種ポリペプチドに特有のシグナル配列を認識及びプロセシングしない原核生物宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、本発明のシグナルポリペプチドから選択された原核生物シグナル配列により置換される。加えて、ベクターは、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Lpp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、及びMBPからなる群から選択されるシグナル配列を含み得る。
一態様では、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)は、抗体を集合的にコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドは、抗体の軽鎖をコードし、別個のポリヌクレオチドは、抗体の重鎖をコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドは、抗体の軽鎖及び重鎖をコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)は、一アーム抗体を集合的にコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドは、(a)一アーム抗体の軽鎖及び重鎖、ならびに(b)Fcポリペプチドをコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドは、一アーム抗体の軽鎖及び重鎖をコードし、別個のポリヌクレオチドは、Fcポリペプチドをコードする。一実施形態では、別個のポリヌクレオチドは、それぞれ、一アーム抗体の軽鎖成分、一アーム抗体の重鎖成分、及びFcポリペプチドをコードする。一アーム抗体の産生については、例えば、WO2005/063816に記載されている。
本発明の抗体の発現に適した原核生物宿主細胞としては、グラム陰性生物またはグラム陽性生物などのArchaebacteria及びEubacteriaが挙げられる。有用な細菌の例としては、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。一実施形態では、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態では、E.coli細胞が、本発明の宿主として使用される。E.coli株の例としては、株W3110(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C:American Society for Microbiology,1987),pp.1190-1219、ATCC寄託番号27,325)及びその誘導体、遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE)degP41 kanRを有する株33D3(米国特許第5,639,635号)、ならびに株63C1及び64B4が挙げられる。いくつかの実施形態では、E.coli株は、62A7(ΔfhuA(ΔtonA)ptr3、lacIq、lacL8、ompTΔ(nmpc-fepE)ΔdegP ilvG修復型)と名付けられたW3110誘導体である。他の株及びその誘導体、例えば、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coli λ1776(ATCC 31,537)、及びE.coli RV308(ATCC 31,608)も適切である。これらの例は、限定するものではなく、例証するものである。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のうちのいずれの誘導体の構築方法も、当該技術分野で既知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309-314(1990)に記載されている。一般に、細菌の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮して適切な細菌を選択することが必要である。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410などの周知のプラスミドを使用してレプリコンを提供する場合、E.coli、Serratia、またはSalmonella種が宿主として適切に使用され得る。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきであり、さらなるプロテアーゼ阻害剤が細胞培養物に組み込まれることが望ましくあり得る。
細菌培養におけるポリペプチドの産生収率及び品質を改善するために、細菌細胞が修飾され得る。例えば、分泌抗体ポリペプチドの適切な構築及び折り畳みを改善するために、細菌宿主細胞は、宿主原核生物細胞を共形質転換するために使用され得るFkpA及びDsbタンパク質(DsbB、DsbC、DsbD、及び/またはDsbG)などのシャペロンタンパク質を発現するさらなるベクターを含み得る。シャペロンタンパク質が細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解を促進することが実証されている。
ii.抗体産生
宿主細胞は、上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切になるように修飾された従来の栄養素培地で培養される。
形質転換とは、DNAが染色体外要素として、または染色体組込み体によってのいずれかで複製可能になるように、DNAを原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換がかかる細胞に適切な標準の技法を用いて行われる。一般に、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理が、実質的な細胞壁障壁を含有する細菌細胞に使用される。形質転換の別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるなおも別の技法は、電気穿孔である。
本発明のポリペプチドを産生するために使用される原核生物細胞は、当該技術分野で既知かつ選択された宿主細胞の培養に適した培地で増殖される。適切な培地の例としては、必要な栄養素補充物を含むルリアブロス(LB)が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は、発現ベクターを含有する原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構築に基づいて選択された選択剤も含有する。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞を増殖させるための培地に添加される。
炭素、窒素、及び無機リン酸塩源に加えて、任意の必要な補充物も、単独で、または複合窒素源などの別の補充物もしくは培地との混合物として導入される適切な濃度で含まれ得る。任意に、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール、及びジチオスレイトールからなる群から選択される1つ以上の還元剤を含有し得る。
原核生物宿主細胞は、適切な温度で培養される。E.coli増殖の場合、例えば、好ましい温度は、約20℃~約39℃の範囲、より好ましくは約25℃~約37℃の範囲、さらにより好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に応じて、約5~約9の範囲の任意のpHであり得る。E.coliの場合、pHは、好ましくは約6.8~約7.4、より好ましくは約7.0である。
誘導プロモーターが本発明の発現ベクターに使用される場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。本発明の一態様では、PhoAプロモーターは、ポリペプチドの転写を制御するために使用される。したがって、形質転換宿主細胞は、誘導のためにリン酸塩制限培地で培養される。好ましくは、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P培地(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.Methods(2002),263:133-147参照)、またはWO2002/061090に記載の培地である。様々な他の誘導因子が、当該技術分野で既知の用いられるベクター構築物に従って使用され得る。
一実施形態では、本発明の発現ポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、それから回収される。タンパク質回収は、典型的には、一般に浸透圧ショック、超音波処理、または溶解などの手段による微生物の破壊を伴う。細胞が破壊されると、細胞残屑または全細胞は、遠心分離または濾過によって除去され得る。タンパク質は、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製され得る。あるいは、タンパク質は、培養培地に輸送され、その中で単離され得る。細胞が培養物から除去され得、培養上清が産生されたタンパク質のさらなる精製のために濾過及び濃縮され得る。発現ポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットアッセイなどの一般に既知の方法を使用してさらに単離及び特定され得る。
本発明の一態様では、抗体産生は、発酵プロセスによって大量に行われる。様々な大規模供給バッチ発酵手技が組換えポリペプチドの産生に利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000~100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素及び栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分布させるために撹拌インペラーを使用する。小規模発酵とは、一般に、容量がおよそ100リットル以下であり、約1リットル~約100リットルの範囲であり得る発酵槽での発酵を指す。
発酵プロセスにおいて、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が所望の密度、例えば、約180~220のOD550まで適切な条件下で増殖した後に開始され、その段階で細胞は初期静止期にある。当該技術分野で知られ、上述されるように、様々な誘導因子が、用いられるベクター構築物に従って使用され得る。細胞は、誘導前により短い期間増殖させてもよい。細胞は、通常、約12~50時間誘導されるが、より長いまたはより短い誘導時間も使用され得る。
発現異種タンパク質(特にタンパク質分解感受性のもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損した特定の宿主株が本発明に使用され得る。例えば、宿主細胞株は、既知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、及びこれらの組み合わせをコードする遺伝子において遺伝子突然変異(複数可)をもたらすように修飾され得る。いくつかのE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、Joly et al.,(1998)、同上、Georgiou et al.、米国特許第5,264,365号、Georgiou et al.、米国特許第5,508,192号、Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63-72(1996)に記載されている。
一実施形態では、タンパク質分解酵素が欠損し、かつ1つ以上のシャペロンタンパク質を発現するプラスミドで形質転換されたE.coli株が、本発明の発現系における宿主細胞として使用される。
iii.抗体精製
当該技術分野で既知の標準のタンパク質精製方法が用いられ得る。免疫親和性またはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカまたはSPなどのカチオン交換樹脂もしくはDEAEなどのアニオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及び例えばSephadex G-75を使用したゲル濾過は、適切な精製手順の例示である。
一態様では、固相に固定化されたタンパク質Aが、本発明の抗体産物の免疫親和性精製に使用される。タンパク質Aは、高親和性で抗体のFc領域に結合するStaphylococcus aureas由来の41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmark et al.,(1983)J.Immunol.Meth.62:1-13。タンパク質Aが固定化される固相は、好ましくは、ガラスまたはシリカ表面を含むカラム、より好ましくは、制御細孔ガラスカラムまたはケイ酸カラムである。いくつかの適用では、カラムは、不純物の非特異的結合を阻止するためにグリセロールなどの試薬でコーティングされている。
精製の第1のステップとして、上述のように細胞培養から得られた調製物がタンパク質A固定化固相に適用されて、目的とする抗体のタンパク質Aへの特異的結合を可能にする。固相は次いで洗浄され、固相に非特異的に結合した不純物が除去される。最後に、目的とする抗体が、溶出により固相から回収される。
本発明は、例えば、化学療法剤、薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはその断片)、または放射性同位体(すなわち、放射性複合体)などの細胞毒性剤に複合される本明細書に記載の抗体のうちのいずれかを含む、免疫複合体(互換的に「抗体-薬物複合体」または「ADC」と称される)も提供する。
V.診断キット、アッセイ、及び製品
本明細書では、疾患または障害を有する個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定するための1つ以上の試薬を含む、診断キットが提供され、間質遺伝子シグネチャーの存在は、個体が免疫療法及び抑制間質アンタゴニストの組み合わせで治療される場合の有効性のより高い可能性を意味する。いくつかの実施形態では、製造物品は、免疫療法をさらに含む。任意で、キットには、個体が間質遺伝子シグネチャーを発現した場合に、キットを使用して、疾患または障害を治療するための薬剤(例えば、例えば、抗TGFβ抗体などの抑制間質アンタゴニスト)を選択するための指示書がさらに含まれる。
本明細書では、免疫療法と組み合わされた抑制間質アンタゴニストを受ける疾患または障害を有する個体を特定するためのアッセイも提供され、その方法は、個体からの試料中の抑制間質アンタゴニストの存在を判定することと、間質遺伝子シグネチャーの存在に基づき抑制間質アンタゴニストを推奨することとを含む。
本明細書では、共にパッケージングされた、薬学的に許容される担体中の抑制間質アンタゴニスト、及び抑制間質アンタゴニスト(例えば、抗TGFβ抗体)が間質遺伝子シグネチャーの発現に基づいて疾患または障害を有する患者を治療するためのものであることを示す添付文書を含む、製造物品も提供される。いくつかの実施形態では、製造物品は、免疫療法をさらに含む。治療方法には、本明細書に開示される治療方法のいずれかが含まれる。本発明はさらに、抑制間質アンタゴニスト(例えば、抗TGFβ抗体)を含む薬学的組成物、任意に免疫療法、及び薬学的組成物が、間質遺伝子シグネチャーの発現に基づいて疾患または障害を有する患者を治療するためのものであることを示す添付文書をパッケージ中に組み合わせることを含む、製造物品を製造する方法に関する。
製造物品は、容器と、容器上のもしくは容器に関連するラベルまたは添付文書とを含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、がんの薬剤を活性薬剤として含む組成物を保持または収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。
製造物品は、注入用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される希釈緩衝液を含む第2の容器をさらに含み得る。製造物品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザー観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
本発明の製造物品はまた、例えば添付文書の形態で、組成物が本明細書の間質遺伝子シグネチャーの発現レベルに基づいてがんを治療するために使用されることを示す情報を含む。添付文書またはラベルは、紙面または電子媒体上、例えば、磁気記録媒体(例えば、フロッピーディスク)またはCD-ROMなどの任意の形態を取ってもよい。ラベルまたは添付文書はまた、キットまたは製造物品中の薬学的組成物及び投与剤形に関する他の情報も含み得る。
本発明はまた、抑制間質アンタゴニスト(例えば、抗TGFβ抗体)を含む薬学的組成物、任意に免疫療法、及び薬学的組成物が、間質遺伝子シグネチャーの発現に基づいてがん(NSCLCなど)を有する患者を治療するためのものであることを示す添付文書をパッケージ中に組み合わせることを含む、製造物品を製造する方法に関する。
製造物品は、注入用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及び/またはデキストロース溶液などの薬学的に許容される希釈緩衝液を含む追加の容器をさらに含み得る。製造物品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザー観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
VI.例示の実施形態
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
1.疾患または障害を有する個体を治療するための方法であって、
a)前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含み、前記間質遺伝子シグネチャー中の前記1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、治療について個体を特定する、前記判定することと、
b)前記個体に有効量の免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを投与することと、を含む、前記方法。
2.疾患または障害を有する個体の免疫療法を改善するための方法であって、
a)前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含み、前記間質遺伝子シグネチャー中の前記1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、抑制間質アンタゴニストでの治療について個体を特定する、前記判定することと、
b)ステップa)において抑制間質アンタゴニストでの治療について特定された前記個体に有効量の免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを投与することと、を含む、前記方法。
3.免疫療法のみに応答する可能性が低い疾患または障害を有する個体を選別するための方法であって、前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、前記間質遺伝子シグネチャー中の前記1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、免疫療法での治療及び抑制間質アンタゴニストでの治療について個体を特定する、前記方法。
4.免疫療法での治療及び腫瘍間質線維症アンタゴニストでの治療からの利益を示す可能性が高い疾患または障害を有する個体を特定するための方法であって、前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、前記間質遺伝子シグネチャー中の前記1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、抑制間質を有する個体を特定し、前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在が、前記個体が免疫療法及び抑制間質アンタゴニストからの臨床的利益の増加を示す可能性が高いことを示す、前記方法。
5.疾患または障害を有する個体の治療を選択するための方法であって、前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、前記間質遺伝子シグネチャー中の前記1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、抑制間質を有する個体を特定し、前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在が、前記個体が免疫療法及び抑制間質アンタゴニストからの臨床的利益の増加を示す可能性が高いことを示す、前記方法。
6.前記臨床的利益の増加が、下記:全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の相対的増加をさらに含む、実施形態4または5に記載の方法。
7.免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを含む併用治療の有効性を監視するための方法であって、1つ以上の時点で免疫療法及び抑制間質アンタゴニストでの治療を受ける個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することを含み、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加を含み、臨床的利益の増加及び/または前記間質遺伝子シグネチャーの存在の減少が、有効な治療を示す、前記方法。
8.免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを含む併用治療の有効性を監視するための方法であって、
a)前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、前記間質遺伝子シグネチャー中の前記1つ以上の遺伝子の発現のレベルの、中央レベルに対する増加が、治療について個体を特定する、前記判定することと、
b)前記個体に有効量の免疫療法及び抑制間質アンタゴニストを投与することと、
c)1つ以上の時点で前記個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定することであって、臨床的利益の増加及び/または前記間質遺伝子シグネチャーの存在の減少が、有効な治療を示す、判定することと、を含む、前記方法。
9.前記臨床的利益の増加が、下記:全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の相対的増加を含む、実施形態7または8に記載の方法。
10.前記疾患または障害が、増殖性疾患または障害である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.前記疾患または障害が、免疫関連疾患または障害である、実施形態10に記載の方法。12.前記疾患または障害が、がんである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
13.前記がんが、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、転移性乳癌、トリプルネガティブ乳癌、黒色腫、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、尿路上皮膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫(mycoses fungoid)、メルケル細胞癌、及び他の血液系悪性腫瘍からなる群から選択される、実施形態12に記載の方法。
14.前記がんが、尿路上皮膀胱癌(UBC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、またはPDGFRBのうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載の方法。
15.UBCの前記間質遺伝子シグネチャーが、DKK3、PDGFB、NUAK1、FGF1、PDL1M4、またはLRRC32のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態14に記載の方法。
16.前記がんが、非小細胞肺癌(NSCLC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載の方法。
17.前記がんが、腎細胞癌(RCC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載の方法。
18.RCCの前記間質遺伝子シグネチャーが、LUM及び/またはPOSTNをさらに含む、実施形態17に記載の方法。
19.前記がんが、黒色腫であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載の方法。
20.前記がんが、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載の方法。
21.TNBCの前記間質遺伝子シグネチャーが、MMP11、BGN、またはCOL5A1のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態20に記載の方法。
22.前記がんが、卵巣癌であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載の方法。
23.卵巣癌の前記間質遺伝子シグネチャーが、POSTN、LOX、またはTIMP3のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態22に記載の方法。
24.前記間質遺伝子シグネチャーが、TGFβをさらに含む、実施形態14~18または22~23のいずれか1つに記載の方法。
25.前記個体から得られた前記試料が、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.前記組織試料が、腫瘍組織試料である、実施形態25に記載の方法。
27.前記腫瘍組織試料が、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態25または26に記載の方法。
28.前記組織試料が、ホルマリン固定及びパラフィン包埋、保存、新鮮、または凍結試料である、実施形態25~27のいずれか1つに記載の方法。
29.前記試料が、全血である、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
30.前記全血が、免疫細胞、循環腫瘍細胞、及びそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態29に記載の方法。
31.試料が、免疫療法での治療前または免疫療法での治療後に得られる、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.試料が、前記抑制間質アンタゴニストでの治療前に得られる、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
33.前記免疫療法が、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、CD40、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMGB1、またはTLRアゴニストを含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
34.前記免疫療法が、CTLA-4、PD-L1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニストを含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
35.前記免疫療法が、PD-L1軸アンタゴニストである、実施形態33に記載の方法。
36.前記PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、実施形態35に記載の方法。
37.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する、実施形態36に記載の方法。
38.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する、実施形態36または37に記載の方法。
39.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する、実施形態36~38のいずれか1つに記載の方法。
40.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する、実施形態36~39のいずれか1つに記載の方法。
41.前記PD-L1結合アンタゴニストが、抗体である、実施形態36~40のいずれか1つに記載の方法。
42.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態41に記載の方法。
43.前記抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である、実施形態41または42に記載の方法。
44.前記PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、実施形態34に記載の方法。
45.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する、実施形態44に記載の方法。
46.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する、実施形態44または45に記載の方法。
47.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する、実施形態44~46のいずれか1つに記載の方法。
48.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する、実施形態44~47のいずれか1つに記載の方法。
49.前記PD-1結合アンタゴニストが、抗体である、実施形態44~48のいずれか1つに記載の方法。
50.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態44~49のいずれか1つに記載の方法。
51.前記抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である、実施形態49または50に記載の方法。
52.前記抑制間質アンタゴニストが、TGFβ、PDPN、LAIR-1、SMAD、ALK、結合組織増殖因子(CTGF/CCN2)、内皮-1(ET-1)、AP-1、IL-13、PDGF、LOXL2、エンドグリン(CD105)、FAP、ポドプラニン(GP38)、VCAM1(CD106)、THY1、β1インテグリン(CD29)、PDGFRα(CD140α)、PDGFRβ(CD140β)、ビメンチン、αSMA(ACTA2)、デスミン、エンドシアリン(CD248)、またはFSP1(S100A4)アンタゴニストである、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
53.前記抑制間質アンタゴニストが、ピルフェニドン、ガルニセルチブまたはニンテダニブである、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
54.前記抑制間質アンタゴニストが、TGFβアンタゴニストである、実施形態52に記載の方法。
55.前記抑制間質アンタゴニストが、TGFβ結合アンタゴニストである、実施形態54に記載の方法。
56.前記TGFβ結合アンタゴニストが、TGFβの、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する、実施形態54または55に記載の方法。
57.前記TGFβ結合アンタゴニストが、TGFβの、TGFβの細胞受容体への結合を阻害する、実施形態54~56のいずれか1つに記載の方法。
58.前記TGFβ結合アンタゴニストが、TGFβの活性化を阻害する、実施形態54または56に記載の方法。
59.前記TGFβ結合アンタゴニストが、抗体である、実施形態54~58のいずれか1つに記載の方法。
60.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態59に記載の方法。
61.前記抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である、実施形態59または60に記載の方法。
62.前記抑制間質アンタゴニストでの治療が、腫瘍中での免疫細胞浸潤の増加を可能にする、実施形態1~61のいずれか1つに記載の方法。
63.前記免疫細胞浸潤の増加が、T細胞、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞のうちの1つ以上の浸潤の増加である、実施形態62に記載の方法。
64.前記T細胞が、CD8+T細胞及び/またはTeff細胞である、実施形態63に記載の方法。
65.前記個体が、前記抑制間質アンタゴニストでの治療前に免疫療法に対して耐性である、実施形態1~64のいずれか1つに記載の方法。
66.前記個体に、単剤療法免疫療法がすでに投与されている、実施形態1~65のいずれか1つに記載の方法。
67.前記間質遺伝子シグネチャーが、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光学、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定するための1つ以上の試薬、質量分光、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、及びFISH、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を使用して試料中で検出される、実施形態1~66のいずれかに記載の方法。
68.前記間質遺伝子シグネチャーが、タンパク質発現によって前記試料中で検出される、実施形態1~67のいずれか1つに記載の方法。
69.タンパク質発現が、免疫組織化学(IHC)によって判定される、実施形態68に記載の方法。
70.前記間質遺伝子シグネチャーが、抗体を使用して検出される、実施形態69に記載の方法。
71.前記間質遺伝子シグネチャーが、IHCによって弱い染色強度として検出される、実施形態69または70のいずれか1つに記載の方法。
72.前記間質遺伝子シグネチャーが、IHCによって中度の染色強度として検出される、実施形態69~71のいずれか1つに記載の方法。
73.前記間質遺伝子シグネチャーが、IHCによって強い染色強度として検出される、実施形態69~72のいずれかに記載の方法。
74.前記間質遺伝子シグネチャーが、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせで検出される、実施形態65~73のいずれかに記載の方法。
75.染色が、膜染色、細胞質染色、及びそれらの組み合わせである、実施形態65~74のいずれか1つに記載の方法。
76.前記間質遺伝子シグネチャーの不在が、前記試料中で染色不在または染色なしとして検出される、実施形態65~75のいずれかに記載の方法。
77.前記間質遺伝子シグネチャーの存在が、前記試料中で任意の染色として検出される、実施形態65~76のいずれかに記載の方法。
78.前記間質遺伝子シグネチャーが、核酸発現によって前記試料中で検出される、実施形態1~77のいずれか1つに記載の方法。
79.前記核酸発現が、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRもしくはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはFISHを使用して判定される、実施形態78に記載の方法。
80.前記間質遺伝子シグネチャーの中央レベルが、(1)参照集団からの前記間質遺伝子シグネチャーのレベル、(2)前記免疫療法に対する完全奏効者及び/または部分奏効者の集団からの前記間質遺伝子シグネチャーのレベル、ならびに(3)第1の時点前の第2の時点の前記個体からの前記間質遺伝子シグネチャーのレベルからなる群から選択される、実施形態1~79のいずれかに記載の方法。
81.前記生体試料中の前記間質遺伝子シグネチャーのレベル(複数可)の、前記中央レベルと比較した変化が、レベルの増加である、実施形態1~80のいずれかに記載の方法。
82.実施形態1~81のいずれか1つに記載の方法での使用のための1つ以上の試薬を含む、診断キット。
83.免疫療法のみに応答する可能性が低い疾患または障害を有する個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定するための1つ以上の試薬を含む、診断キットであって、前記間質遺伝子シグネチャーの存在が、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストでの治療からの利益を示す可能性が高い個体を特定する、前記キット。
84.免疫療法のみに応答する可能性が低い疾患または障害を有する個体の治療を選択するための診断キットであって、免疫療法を必要とする個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定するための1つ以上の試薬を含み、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、前記間質遺伝子シグネチャーの存在が、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストでの治療からの利益を示す可能性が高い個体を特定する、前記キット。
85.免疫療法及び抑制間質アンタゴニストでの治療を含む併用治療の有効性を監視するためのキットであって、免疫療法及び抑制間質アンタゴニストでの治療を受ける個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定するための1つ以上の試薬を含み、前記シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含み、臨床的利益の増加及び/または前記間質遺伝子シグネチャーの存在の減少が、有効な治療を示す、前記キット。
86.前記臨床的利益の増加が、下記:全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の相対的増加を含む、実施形態83~85のいずれか1つに記載のキット。
87.前記疾患または障害が、増殖性疾患または障害である、実施形態83~86のいずれか1つに記載のキット。
88.前記疾患または障害が、免疫関連疾患または障害である、実施形態87に記載のキット。
89.前記疾患または障害が、がんである、実施形態83~86のいずれか1つに記載のキット。
90.前記がんが、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、転移性乳癌、トリプルネガティブ乳癌、黒色腫、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、尿路上皮膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫(mycoses fungoid)、メルケル細胞癌、及び他の血液系悪性腫瘍からなる群から選択される、実施形態89に記載のキット。
91.前記がんが、尿路上皮膀胱癌(UBC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、またはPDGFRBのうちの1つ以上を含む、実施形態90に記載のキット。
92.UBCの前記間質遺伝子シグネチャーが、DKK3、PDGFB、NUAK1、FGF1、PDL1M4、またはLRRC32のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態91に記載のキット。
93.前記がんが、非小細胞肺癌(NSCLC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む、実施形態90に記載のキット。
94.前記がんが、腎細胞癌(RCC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHYのうちの1つ以上を含む、実施形態90に記載のキット。
95.RCCの前記間質遺伝子シグネチャーが、LUM及び/またはPOSTNをさらに含む、実施形態94に記載のキット。
96.前記がんが、黒色腫であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む、実施形態90に記載のキット。
97.前記がんが、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む、実施形態90に記載のキット。
98.TNBCの前記間質遺伝子シグネチャーが、MMP11、BGN、またはCOL5A1のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態97に記載のキット。
99.前記がんが、卵巣癌であり、前記間質遺伝子シグネチャーが、FAP、FN1、MMP2、PDGFRB、またはTHY1のうちの1つ以上を含む、実施形態90に記載のキット。
100.卵巣癌の前記間質遺伝子シグネチャーが、POSTN、LOX、またはTIMP3のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態99に記載のキット。
101.前記間質遺伝子シグネチャーが、TGFβをさらに含む、実施形態91~95または99~100のいずれか1つに記載のキット。
102.前記個体から得られた前記試料が、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態83~101のいずれか1つに記載のキット。
103.前記組織試料が、腫瘍組織試料である、実施形態102に記載のキット。
104.前記腫瘍組織試料が、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態102または103に記載のキット。
105.前記組織試料が、ホルマリン固定及びパラフィン包埋、保存、新鮮、または凍結試料である、実施形態102~104のいずれか1つに記載のキット。
106.前記試料が、全血である、実施形態83~102のいずれか1つに記載のキット。
107.前記全血が、免疫細胞、循環腫瘍細胞、及びそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態106に記載のキット。
108.試料が、免疫療法での治療前または免疫療法での治療後に得られる、実施形態83~107のいずれか1つに記載のキット。
109.試料が、前記抑制間質アンタゴニストでの治療前に得られる、実施形態83~108のいずれか1つに記載のキット。
110.前記免疫療法が、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、CD40、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMGB1、またはTLRアゴニストを含む、実施形態83~109のいずれか1つに記載のキット。
111.前記免疫療法が、CTLA-4、PD-L1軸、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニストを含む、実施形態83~110のいずれか1つに記載のキット。
112.前記免疫療法が、PD-L1軸アンタゴニストである、実施形態111に記載のキット。
113.前記PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、実施形態112に記載のキット。
114.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する、実施形態113に記載のキット。
115.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する、実施形態113または114に記載のキット。
116.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する、実施形態113~115のいずれか1つに記載のキット。
117.前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する、実施形態113~116のいずれか1つに記載のキット。
118.前記PD-L1結合アンタゴニストが、抗体である、実施形態113~117のいずれか1つに記載のキット。
119.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態118に記載のキット。
120.前記抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である、実施形態118または119に記載のキット。
121.前記PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、実施形態120に記載のキット。
122.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する、実施形態121に記載のキット。
123.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する、実施形態121または122に記載のキット。
124.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する、実施形態121~123のいずれか1つに記載のキット。
125.前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する、実施形態121~124のいずれか1つに記載のキット。
126.前記PD-1結合アンタゴニストが、抗体である、実施形態121~125のいずれか1つに記載のキット。
127.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態121~126のいずれか1つに記載のキット。
128.前記抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である、実施形態126または127に記載のキット。
129.前記抑制間質アンタゴニストが、TGFβ、PDPN、LAIR-1、SMAD、ALK、結合組織増殖因子(CTGF/CCN2)、内皮-1(ET-1)、AP-1、IL-13、PDGF、LOXL2、エンドグリン(CD105)、FAP、ポドプラニン(GP38)、VCAM1(CD106)、THY1、β1インテグリン(CD29)、PDGFRα(CD140α)、PDGFRβ(CD140β)、ビメンチン、αSMA(ACTA2)、デスミン、エンドシアリン(CD248)、またはFSP1(S100A4)アンタゴニストである、実施形態83~128のいずれか1つに記載のキット。
130.前記抑制間質アンタゴニストが、ピルフェニドン、ガルニセルチブまたはニンテダニブである、実施形態83~129のいずれか1つに記載のキット。
131.前記抑制間質アンタゴニストが、TGFβアンタゴニストである、実施形態83~129に記載のキット。
132.前記抑制間質アンタゴニストが、TGFβ結合アンタゴニストである、実施形態131に記載のキット。
133.前記TGFβ結合アンタゴニストが、TGFβの、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する、実施形態131または132に記載のキット。
134.前記TGFβ結合アンタゴニストが、TGFβの、TGFβの細胞受容体への結合を阻害する、実施形態131~133のいずれか1つに記載のキット。
135.前記TGFβ結合アンタゴニストが、TGFβの活性化を阻害する、実施形態133または134に記載のキット。
136.前記TGFβ結合アンタゴニストが、抗体である、実施形態131~135のいずれか1つに記載のキット。
137.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態136に記載のキット。
138.前記抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である、実施形態136または137に記載のキット。
139.前記抑制間質アンタゴニストでの治療が、腫瘍中での免疫細胞浸潤の増加を可能にする、実施形態83~138のいずれか1つに記載のキット。
140.前記免疫細胞浸潤の増加が、T細胞、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞のうちの1つ以上の浸潤の増加である、実施形態139に記載のキット。
141.前記T細胞が、CD8+T細胞及び/またはTeff細胞である、実施形態140に記載のキット。
142.前記個体が、前記抑制間質アンタゴニストでの治療前に免疫療法に対して耐性である、実施形態83~141のいずれか1つに記載のキット。
143.前記個体に、単剤療法免疫療法がすでに投与されている、実施形態83~142のいずれか1つに記載のキット。
144.前記間質遺伝子シグネチャーが、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光学、個体からの試料中の間質遺伝子シグネチャーの存在を判定するための1つ以上の試薬、質量分光、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、及びFISH、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を使用して前記試料中で検出される、実施形態83~143のいずれかに記載のキット。
145.前記間質遺伝子シグネチャーが、タンパク質発現によって前記試料中で検出される、実施形態83~144のいずれか1つに記載のキット。
146.タンパク質発現が、免疫組織化学(IHC)によって判定される、実施形態145に記載のキット。
147.前記間質遺伝子シグネチャーが、抗体を使用して検出される、実施形態146に記載のキット。
148.前記間質遺伝子シグネチャーが、IHCによって弱い染色強度として検出される、実施形態146または147のいずれか1つに記載のキット。
149.前記間質遺伝子シグネチャーが、IHCによって中度の染色強度として検出される、実施形態146~148のいずれか1つに記載のキット。
150.前記間質遺伝子シグネチャーが、IHCによって強い染色強度として検出される、実施形態146~149のいずれかに記載のキット。
151.前記間質遺伝子シグネチャーが、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせで検出される、実施形態146~150のいずれかに記載のキット。
152.染色が、膜染色、細胞質染色、及びそれらの組み合わせである、実施形態146~151のいずれか1つに記載のキット。
153.前記間質遺伝子シグネチャーの不在が、前記試料中で染色不在または染色なしとして検出される、実施形態146~152のいずれかに記載のキット。
154.前記間質遺伝子シグネチャーの存在が、前記試料中で任意の染色として検出される、実施形態146~152のいずれかに記載のキット。
155.前記間質遺伝子シグネチャーが、核酸発現によって前記試料中で検出される、実施形態83~144のいずれか1つに記載のキット。
156.前記核酸発現が、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRもしくはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはFISHを使用して判定される、実施形態155に記載のキット。
157.前記間質遺伝子シグネチャーの中央レベルが、(1)参照集団からの前記間質遺伝子シグネチャーのレベル、(2)前記免疫療法に対する完全奏効者及び/または部分奏効者の集団からの前記間質遺伝子シグネチャーのレベル、ならびに(3)第1の時点前の第2の時点の前記個体からの前記間質遺伝子シグネチャーのレベルからなる群から選択される、実施形態83~156のいずれかに記載のキット。
158.前記生体試料中の前記間質遺伝子シグネチャーのレベル(複数可)の、前記中央レベルと比較した変化が、レベルの増加である、実施形態83~157のいずれかに記載のキット。
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替の特徴に置き換えられてもよい。したがって、別途明確に示されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または同様の特徴の一例にすぎない。
本発明のさらなる詳細が、以下の非限定的な実施例により例示されている。本明細書における全ての参考文献の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
以下の実施例は、単に本発明の例示となるよう意図されており、それ故に、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、限定するものではなく、例証として提供されている。
実施例1:尿路上皮癌(UC)にわたる腫瘍浸潤間質遺伝子シグネチャー及びそれらと抗PD-L1抗体治療への耐性との関連
序文
抗腫瘍免疫を調節または阻害し、よって免疫調節療法への耐性に寄与し得る因子の複雑さを評価及び理解するために、高感受性免疫遺伝子発現アッセイを行い、尿路上皮癌患者からの治療前腫瘍組織の腫瘍微小環境(TME)を調査した。
材料及び方法
Illumina TruSeq RNA Access RNA-seqキットを実施し、尿路上皮癌患者(n=217)からの治療前腫瘍組織の腫瘍微小環境(TME)を調査した。Illumina TruSeq RNA Access RNA-seqは、全ヒトゲノム(>20,000遺伝子)にわたる遺伝子を捕捉及び調査する。
RNAを、ホルマリン固定パラフィン包埋保存組織から抽出した。腫瘍組織は、アテゾリズマブ(MPDL3280A、抗PD-L1抗体)のII期IMvigor210研究(ClinicalTrials.gov番号、NCT02108652)からの臨床回収物であった。バイオマーカーの予備評価について施設内審査委員会から適切な患者インフォームドコンセントを得た。
腫瘍中の間質要素に関連した遺伝子を、RECIST v1.1に従って、それらと全応答率との関連について具体的に調査した。尿路上皮間質関連遺伝子の拡張遺伝子セット(セットA)は、PDPN、FAP、TGFB1、NNMT、TNFAIP6、DKK3、MMP2、MMP8、MMP9、BGN、COL4A1、COL4A2、COL5A1、PDGFRB、NUAK1、FN1、FGF1、PDLIM4、及びLRR32Cを含んだ。尿路上皮間質関連遺伝子の遺伝子セットBは、TGFB1、DKK3、PDGFRB、NUAK1、FGF1、PDLIM4、及びLRRC32を含んだ。
応答カテゴリーは、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定疾患(SD)、及び疾患進行(PD)を含んだ。CR及びPR患者は「奏効者」として分類された。統計的検定を、クラスカル-ウォリス(KW)検定、3つ以上の独立したデータ群を比較するのに使用される非パラメータ検定を使用して行った。
結果
尿路上皮間質関連遺伝子セットAの平均発現(平均Z)は、奏効者(CR/PR)と比較してPD集団においてより高かった(図1A)。さらに、全生存(OS)が尿路上皮間質関連遺伝子発現のレベルに基づいて計算された場合、50%より高い平均Z発現を有する患者は、50%より低い平均Z発現と0.68のHR(95%CI0.49~0.93)とを有する患者と比較して、ハザード比(HR)が1.47(95%CI1.07~2.02)と悪かった(図1B)。
The Cancer Genome Atlas(TCGA)によって提案されるルミナール対ベーサル尿路上皮癌分子サブタイプ分類における尿路上皮間質関連遺伝子セット発現の発現を評価した。患者腫瘍試料を、FGFR3、CDKN2A、KRT5、KRT14、EGFR、GATA3、FOXA1、及びERBB2の異なる発現に基づいて、ルミナールまたはベーサルとして特徴分析した。尿路上皮間質関連遺伝子セットA発現は、ルミナールと比較してベーサル分子サブタイプにおいてより高かった(図2)。
尿路上皮間質関連遺伝子セットA内の個別の遺伝子と抗PD-L1療法への応答との間の関連を評価した。これらの遺伝子の中でも、TGFB1(p=0.027)、DKK3(p=0.049)、PDGFRB(p=0.028)、NUAK1(p=0.027)、FGF1(p=0.04)、PDLIM4(p=0.027)、及びLRRC32(0.009)は、進行疾患(PD)を有する患者と比較して、奏効者(CR/PR)の中で有意に低い発現を示した(それぞれ、図3A~図3G)。
これらの個別の高度に有意な遺伝子を次いで組み合わせ、より簡明な尿路上皮間質関連遺伝子セット(セットB:TGFB1、DKK3、PDGFRB、NUAK1、FGF1、PDLIM4、及びLRRC32)を構成した。このセットは、奏効者(CR/PR)と安定疾患(SD)または進行疾患(PD)のいずれかを有するものとをより良好に区別することができた(p=0.0064)(図4A)。さらに、全生存(OS)が尿路上皮間質関連遺伝子発現のレベルに基づいて計算された場合、50%より高い平均Z発現を有する患者は、50%より低い平均Z発現と0.67のHR(95%CI0.49~0.92)とを有する患者と比較して、ハザード比(HR)が1.49(95%CI1.09~2.05)と悪かった(図4B)。
実施例2:5つのがんタイプにわたる腫瘍間質シグネチャー及びそれらと疾患予防因子との関連
序文
抗腫瘍免疫を調節または阻害し、よって免疫調節療法への応答または耐性に寄与し得る因子の複雑さをさらに評価及び理解するために、高感受性免疫遺伝子発現アッセイを行い、乳癌(BC)、肺癌、黒色腫、RCC、及び膀胱癌からの治療前腫瘍組織の腫瘍微小環境(TME)を調査した。
材料及び方法
Illumina TruSeq RNA Access RNA-seqキットを実施し、BC(n=73)、肺(n=59)、黒色腫(n=34)、RCC(n=55)、及び膀胱癌(n=44)患者からの治療前腫瘍組織の腫瘍微小環境(TME)を調査した。Illumina TruSeq RNA Access RNA-seqは、全ヒトゲノム(>20,000遺伝子)にわたる遺伝子を捕捉及び調査する。
RNAを、MPDL3280A(抗PD-L1抗体)の進行中のI期研究から誘導されたホルマリン固定パラフィン包埋保存組織から抽出した。バイオマーカーの予備評価について施設内審査委員会から適切な患者インフォームドコンセントを得た。
腫瘍中の間質要素に関連した遺伝子を、RECIST v1.1に従って、それらと全応答率との関連について具体的に調査した。尿路上皮間質関連遺伝子の拡張遺伝子セット(セットA)は、FAP、FN1、MMP2、BGN、LOXL2、PDPN、PDGFRB、COL12a1、COL5A1、COL8A2、THY1、及びPALLDを含んだ。
応答カテゴリーは、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定疾患(SD)、及び疾患進行(PD)を含んだ。CR及びPR患者は「奏効者」として分類された。統計的検定を、クラスカル-ウォリス(KW)検定、3つ以上の独立したデータ群を比較するのに使用される非パラメータ検定を使用して行った。
結果
腫瘍適応症間及び適応症内でのシグネチャーの発現のばらつきが観察され、セットA間質シグネチャーの動的発現範囲を示した(図5及び図6)。間質関連遺伝子セットAの平均発現(平均Z)は、奏効者(CR/PR)と比較して、PD集団においてより高かった(図7A)。さらに、全生存(OS)が尿路上皮間質関連遺伝子発現のレベルに基づいて計算された場合、0.36より高い平均Z発現を有する患者は、0.36より低い平均Z発現カットオフを有する患者と比較して、ハザード比(HR)が1.66(95%CI1.18~2.33)と悪かった(図7B)。
特定の腫瘍型における間質シグネチャーの分析は、乳癌(図8A)及び膀胱癌(図8E)では応答する傾向を示したが、黒色腫皮膚癌(図8C)、肺癌(図8D)、または腎癌(図8B)では示さなかった。
抗PD-L1で治療された患者の個別の適応症についての全生存(OS)における遺伝子発現シグネチャーの影響を評価した。k平均について0.36のカットオフを使用して、乳癌(図9A)、膀胱癌(図9B)、及び皮膚癌(図9C)患者は、このシグネチャーに関連したOSを有したが、肺癌(図9D)及び腎癌(図9E)患者では、非有意傾向があった。抗PD-L1で治療された患者のハザード比値を表2に示す。
実施例3:TGFb遮断はEMT6***腫瘍モデルにおいて抗PDL1有効性を改善する
序文
抗PDL1治療の有効性に対するTGFb遮断の影響を、マウス***腫瘍モデルにおいて評価した。
材料及び方法
有効性マウス研究1
Charles River Laboratoriesからの70匹のBalb/cマウスの第5の乳腺脂肪体に、100マイクロリットルのHBSS+マトリゲル(1:1)中の10万個のEMT6細胞を接種した。腫瘍がおよそ150~200mm3(腫瘍細胞接種のおよそ7~8日後)の平均腫瘍体積に達したとき、動物を以下に概説される治療群に採用した(0日目)。類似しない腫瘍体積のために治療群に採用されなかったマウスを安楽死させた。治療は、マウスを群分けした翌日に開始した(1日目)。『Tiw』は、週3回の投与を示し、『biw』は、週2回の投与を示す。例示的な実験図を図10に示す。
群1:Mu IgG1抗gp120(9338)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3+Mu IgG2b抗gp120(9239)、10mg/kg IV初回投与、続いてIP tiwx3、n=10。
群2:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3、n=10。
群3:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3+Mu IgG2b抗TGFβ(2G7.5A9)、10mg/kg IV初回投与、続いてIP tiwx3、n=10。
群4:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3+Mu IgG1抗TGFβ(1D11)、10mg/kg IV初回投与、続いてIP tiwx3、n=10。
Mu IgG1抗PD-L1及びMu IgG1抗gp120抗体を、1、4、8、11、15、18日目に投与し、Mu IgG2b及びMu IgG1抗TGFβ抗体を、1、3、5、8、10、12、15、17、19日目に投与した。
全ての抗体を20mMの酢酸ヒスチジン、240mMのスクロース、0.02%ポリソルベート20(Tween-20)、pH5.5に希釈した。合計1日投与体積は、350μL以下であった。腫瘍測定値及び体重を、2回/週で収集した。15%超の体重減少を示す動物を毎日秤量し、それらが体重の20%超を失ったら安楽死させた。動物を臨床的問題について2回/週観察した。有害な臨床的問題を示す動物をより頻繁に、重症度に応じて最大で毎日観察し、瀕死の場合は安楽死させた。腫瘍体積が2,000mm3を超えた場合、または腫瘍が形成されなかった場合は3か月後に、マウスを安楽死させた。
有効性マウス研究2
Charles River Laboratoriesからの70匹のBalb/cマウスの第5の乳腺脂肪体に、100マイクロリットルのHBSS+マトリゲル(1:1)中の10万個のEMT6細胞を接種した。腫瘍がおよそ150~200mm3(接種のおよそ7~8日後)の平均腫瘍体積に達したとき、動物を以下に概説される治療群に採用した(0日目)。類似しない腫瘍体積のために治療群に採用されなかったマウスを安楽死させた。治療は、1日目に開始した。『Tiw』は、週3回の投与を示し、『biw』は、週2回の投与を示す。
群1:Mu IgG1抗gp120(9338)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3、+Mu IgG2b抗gp120(9239)、10mg/kg IV初回投与、続いてIP biwx3、n=10。
群2:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3、n=10。
群3:Mu IgG2b抗TGFβ(2G7.5A9)、10mg/kg IV初回投与、続いてIP biwx3、n=10。
群4:Mu IgG1抗TGFβ(1D11)、10mg/kg IV初回投与、続いてIP、biwx3、n=10。
群5:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3+Mu IgG2b抗TGFβ(2G7.5A9)、10mg/kg IV初回投与、続いてIP biwx3、n=10。
Mu IgG1抗PD-L1及びMu IgG1抗gp120抗体を、1、4、8、11、15、18日目に投与し、Mu IgG2b及びMu IgG1抗TGFβ抗体を、1、3、5、8、10、12、15、17、19日目に投与した。
全ての抗体を20mMの酢酸ヒスチジン、240mMのスクロース、0.02%ポリソルベート20(Tween-20)、pH5.5に希釈した。合計1日投与体積は、350μL以下であった。腫瘍測定値及び体重を、2回/週で収集した。15%超の体重減少を示す動物を毎日秤量し、それらが体重の20%超を失ったら安楽死させた。動物を臨床的問題について2回/週観察した。有害な臨床的問題を示す動物をより頻繁に、重症度に応じて最大で毎日観察し、瀕死の場合は安楽死させた。腫瘍体積が2,000mm3を超えた場合、または腫瘍が形成されなかった場合は3か月後に、マウスを安楽死させた。
腫瘍プロセシング
腫瘍を回収し、小片に切断し、RPMI+2%FBSにおいてジスパーゼ(0.8mg/mL)、コラゲナーゼP(0.2mg/mL)、及びDNaseI(0.1mg/mL)で消化した。消化は、以前に記載されたように行った(Fletcher,et al.2011)。簡潔に、腫瘍片を酵素中で37°Cでインキュベートし、5分毎に混合した。15分毎に、試料を、広口径ピペットチップでピペッティングした。腫瘍片を底に沈殿させ、浮遊細胞を回収した。次いで新しい消化培地を試料に添加した。このプロセスを、腫瘍が完全に消化されるまで、通常は合計約75分繰り返した。次いで単一細胞懸濁液を濾過し、細胞を数えた。
フローサイトメトリー
FACS染色について、200万個の細胞を、氷上で15分間T細胞マーカーに対する抗体で染色した。細胞内染色について、eBioscience FoxP3キットを使用して、グランザイムBまたはKi67に特異的な抗体の添加前に細胞を固定及び透過処理した。pSMAD phosflow染色について、細胞を37℃で10分間BD phosflow Lyse/Fixバッファー中で直ちに固定した。それらを次いで氷冷BD Phosflow Perm/WashバッファーIIIで30分間透過処理した。最後に、細胞を洗浄し、氷上で45分間CD45及びpSMAD2/3に対する抗体で染色した。全ての試料をBD Fortessaで取得し、FlowJo Xソフトウェアで分析した。
結果
1D11抗体でのTGFb遮断は、抗PDL1のみ(図11B)またはアイソタイプ対照(図11A)で治療された動物と比較して、抗TGFb 1D11及び抗PDL1の両方で治療された動物(図11C)における腫瘍体積の減少によって示されるように、EMT6***腫瘍モデル(有効性マウス研究1)において抗PDL1有効性を改善させた。同様に、2G7抗TGFb抗体は、抗PDL1のみ(図12B)、抗TGFb 2G7のみ(図12C)、抗TGFb 1D11のみ(図12D)、またはアイソタイプ対照(図12A)で治療された動物と比較して、抗TGFb 2G7及び抗PDL1の両方で治療された動物(図12E)における腫瘍体積の減少によって示されるように、抗PDL1有効性を改善させた(有効性マウス研究2)。
抗PDL1と組み合わされた1D11抗体でのTGFb遮断は、抗PDL1のみに対して、CD45+細胞(図13A)、グランザイムB+細胞(図13C)、Ki67+細胞(図13D)、及びPD1+細胞(図13E)の数の増加によって示されるように、CD8 T細胞数(図13B)及び活性化を向上した。加えて、TGFb遮断は、pSMAD MFIの減少(図14A)及びpSMAD+細胞の割合の減少(図14B)によって示される、EMT6腫瘍中のCD45-細胞においてSMAD2/3リン酸化を低減した。
実施例4:TGFb遮断及び抗PDL1抗体の相乗効果
序文
抗PDL1治療の有効性に対するTGFb遮断の影響を、マウス***腫瘍モデルにおいて評価した。
材料及び方法
有効性マウス研究3
Charles River Laboratoriesからの70匹のBalb/cマウスの第5の乳腺脂肪体に、100マイクロリットルのHBSS+マトリゲル(1:1)中の10万個のEMT6細胞を接種した。腫瘍がおよそ150~200mm3(腫瘍細胞接種のおよそ7~8日後)の平均腫瘍体積に達したとき、動物を以下に概説される治療群に採用した(0日目)。類似しない腫瘍体積のために治療群に採用されなかったマウスを安楽死させた。治療は、マウスを群分けした翌日に開始した(1日目)。『BIWx3』は、3週間にわたり週に2回投与することを示す。『TIWx3』は、3週間にわたり週に3回投与することを示す。『TIWx4』は、4週間にわたり週に3回投与することを示す。
群1:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3、n=10。
群2:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP tiwx4、n=10。
群3:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3、n=10。
群4:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx3+Mu IgG2b抗TGFβ(2G7.5A9)、10mg/kg IV初回投与、続いて10mg/kg IP biwx3、n=10。
群5:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回投与、続いて5mg/kg IP biwx4+Mu IgG2b抗TGFβ(2G7.5A9)、10mg/kg IV初回投与、続いて10mg/kg IP tiwx4、n=10。
群6:Mu IgG1抗PD-L1(6E11)、10mg/kg IV初回、続いて5mg/kg IP biwx3+Mu IgG2b抗TGFβ(2G7.5A9)、10mg/kg IV初回投与、続いて10mg/kg IP tiwx3、n=10。
Mu IgG1抗PD-L1及びMu IgG1抗gp120抗体を、1、4、8、11、15、18日目に投与し、Mu IgG2b及びMu IgG1抗TGFβ抗体を、1、3、5、8、10、12、15、17、19日目に投与した。
全ての抗体を20mMの酢酸ヒスチジン、240mMのスクロース、0.02%ポリソルベート20(Tween-20)、pH5.5に希釈した。合計1日投与体積は、350μL以下であった。使用された抗TGFb抗体は、IgG2b形態のクローン2G7であった。腫瘍測定値及び体重を、2回/週で収集した。15%超の体重減少を示す動物を毎日秤量し、それらが体重の20%超を失ったら安楽死させた。動物を臨床的問題について2回/週観察した。有害な臨床的問題を示す動物をより頻繁に、重症度に応じて最大で毎日観察し、瀕死の場合は安楽死させた。腫瘍体積が2,000mm3を超えた場合、または腫瘍が形成されなかった場合は3か月後に、マウスを安楽死させた。
結果
2G7抗体でのTGFb遮断は、抗PDL1のみで治療された動物(図15A、図15B、及び図15C)と比較して、抗TGFb 2G7及び抗PDL1の両方で治療された動物(図15D、図15E、及び図15F)における腫瘍体積の減少によって示されるように、EMT6***腫瘍モデルにおいて抗PDL1有効性を改善させた。