JP7353066B2 - ポリエチレン繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエチレン繊維に関する。
ポリエチレン繊維は軽量かつ強度に優れることから、従来より、ロープ、ネット、釣り糸、手袋、布地、積層体等様々な用途に使用されている。特に、船舶係留用のロープに代表されるように、海洋の環境下、長期間、高い負荷がかかる用途においては超高分子量ポリエチレンからなる繊維が用いられている。船舶係留用ロープに求められる特性としては、強度、耐クリープ性、耐摩耗性、耐候性等が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。特に近年、耐クリープ性への要求が一層高まっている。このため、ポリエチレン繊維の耐クリープ性を高める方法として、従来から種々の方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特表2015-531330号公報 特表2016-524658号公報
ポリエチレン繊維の耐クリープ性向上のためにはポリエチレンの分子鎖にコモノマーを導入する方法はあるが、強度を上げられない他、結晶性が低下するため、耐摩耗性、耐候性の低下が課題である。また、ポリエチレン繊維の耐候性向上のためには耐候剤が処方されるが、さらなる改善が望まれており、特に塩水の近傍や海水雰囲気下で使用される際の強度保持の観点で改善が望まれている。その理由としては、塩水の近傍や海水雰囲気下で使用する際は、ポリエチレン繊維を束にして使用する場合が多いが、このような環境下ではポリエチレン繊維の一本の糸の強度が低下して破断することで、破断していない他の糸にかかる負荷が大きくなり、束としても破断やクリープが加速してしまうためである。
そこで本発明は、例えば、海洋で使用した際に優れた耐クリープ性、高い強度保持率、及び耐摩耗性を有するポリエチレン繊維を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した従来技術の課題を解決するべく鋭意研究を進めた結果、高運動性成分の組成分率及び緩和時間が特定の範囲のポリエチレン繊維が、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
パルス核磁気共鳴(NMR)のソリッドエコー法で測定された90℃におけるポリエチレン繊維の自由誘導減衰(M(t))を、下記式1を用いてフィッティングさせることにより、最も運動性の低い成分(α)、中間の運動性の成分(β)及び最も運動性の高い成分(γ)の3成分に近似した場合において、最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が1%以上10%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が100μs以上1000μs以下である、ポリエチレン繊維。
M(t)=αexp(-(1/2)(t/Tα)2)sinbt/bt+βexp(-(1/Wa)(t/Tβ)Wa)+γexp(-t/Tγ) 式1
α:成分(α)の組成分率(%)
Tα:成分(α)の緩和時間(msec)
β:成分(β)の組成分率(%)
Tβ:成分(β)の緩和時間(msec)
γ:成分(γ)の組成分率(%)
Tγ:成分(γ)の緩和時間(msec)
t:観測時間(msec)
Wa:形状係数(1<Wa<2)
b:形状係数(0.1<b<0.2)
[2]
極限粘度(η)が11以上30以下である、[1]に記載のポリエチレン繊維。
[3]
示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(i)~(iii)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(iii))のDSC曲線において、152℃以上の範囲に吸熱ピークが検出されない、[1]又は[2]に記載のポリエチレン繊維。
(DSC測定条件)
(i)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
(ii)180℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
(iii)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
[4]
示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(I)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(A)と、DSCを用いた下記(II)~(IV)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(IV))のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(B)との比(B)/(A)が1以上3以下である、[1]から[3]のいずれかに記載のポリエチレン繊維。
(DSC測定条件)
(I)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
(II)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で140℃まで昇温。
(III)140℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
(IV)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
[5]
最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が2%以上5%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が200μs以上500μs以下である、[1]に記載のポリエチレン繊維。
[6]
極限粘度(η)が15以上30以下である、[1]に記載のポリエチレン繊維。
[7]
示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(I)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(A)と、DSCを用いた下記(II)~(IV)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(IV))のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(B)との比(B)/(A)が1.5以上2.7以下である、[1]に記載のポリエチレン繊維。
(DSC測定条件)
(I)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
(II)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で140℃まで昇温。
(III)140℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
(IV)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
[8]
塩素(Cl)の含有量が、50ppm以下である、[1]に記載のポリエチレン繊維。
[9]
アルミニウム(Al)の含有量が、5ppm以下である、[1]に記載のポリエチレン繊維。
[10]
塩素(Cl)の含有量が、5ppm以下である、[1]に記載のポリエチレン繊維。
[11]
パルス核磁気共鳴(NMR)のソリッドエコー法で測定された90℃におけるポリエチレン繊維の自由誘導減衰(M(t))を、下記式1を用いてフィッティングさせることにより、最も運動性の低い成分(α)、中間の運動性の成分(β)及び最も運動性の高い成分(γ)の3成分に近似した場合において、最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が1%以上10%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が100μs以上1000μs以下である、ポリエチレン繊維の海洋での使用。
M(t)=αexp(-(1/2)(t/Tα)2)sinbt/bt+βexp(-(1/Wa)(t/Tβ)Wa)+γexp(-t/Tγ) 式1
α:成分(α)の組成分率(%)
Tα:成分(α)の緩和時間(msec)
β:成分(β)の組成分率(%)
Tβ:成分(β)の緩和時間(msec)
γ:成分(γ)の組成分率(%)
Tγ:成分(γ)の緩和時間(msec)
t:観測時間(msec)
Wa:形状係数(1<Wa<2)
b:形状係数(0.1<b<0.2)
本発明によれば、例えば、海洋で使用した際に優れた耐クリープ性、高い強度保持率及び耐摩耗性を有するポリエチレン繊維を提供可能である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔ポリエチレン繊維〕
本実施形態のポリエチレン繊維は、パルス核磁気共鳴(NMR)のソリッドエコー法で測定された90℃における自由誘導減衰を3成分近似した場合において、最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が1%以上10%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が100μs以上1000μs以下である。
以下、本実施形態のポリエチレン繊維の要件について説明する。
〔パルスNMRのソリッドエコー法で測定された90℃における自由誘導減衰の3成分近似〕
本実施形態のポリエチレン繊維は、パルスNMRのソリッドエコー法で測定された90℃における、該ポリエチレン繊維の自由誘導減衰(M(t))を、下記式1を用いてフィッティングさせることにより、最も運動性の低い成分(α)、中間の運動性の成分(β)及び最も運動性の高い成分(γ)の3成分に近似する。
M(t)=αexp(-(1/2)(t/Tα)2)sinbt/bt+βexp(-(1/Wa)(t/Tβ)Wa)+γexp(-t/Tγ) 式1
α:成分(α)の組成分率(%)
Tα:成分(α)の緩和時間(msec)
β:成分(β)の組成分率(%)
Tβ:成分(β)の緩和時間(msec)
γ:成分(γ)の組成分率(%)
Tγ:成分(γ)の緩和時間(msec)
t:観測時間(msec)
Wa:形状係数(1<Wa<2)
b:形状係数(0.1<b<0.2)
より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
〔最も運動性の高い成分(γ)の組成分率及び緩和時間〕
本実施形態のポリエチレン繊維は、パルスNMRのソリッドエコー法で測定された90℃における、該ポリエチレン繊維の自由誘導減衰を3成分に近似した場合において、最も運動性の高い成分(γ)(以下、単に、成分(γ)や最も運動性の高い成分(γ)ともいう)の組成分率が1%以上10%以下であり、好ましくは2%以上7%以下、より好ましくは2%以上5%以下である。また、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間は100μs以上1000μs以下であり、好ましくは200μs以上700μs以下。より好ましくは200μs以上500μs以下である。
本実施形態のポリエチレン繊維は、成分(γ)の組成分率が1%以上であることにより、高温時における高運動性成分の量が十分なものとなり、塩乾サイクル試験における、高温高湿度状態から高温乾燥状態への環境変化による分子運動の変化で生じる分子間のクラック発生が抑制されるため、例えば、海洋使用時の強度保持率に優れる。一方、本実施形態のポリエチレン繊維は、成分(γ)の組成分率が10%以下であることにより、繊維の表面強度が十分なものとなり、塩乾サイクル試験における鉄パイプの錆や塩分の付着による摩耗に強くなり、束として使用する際も束内部で結晶化した塩分により糸同士が強く擦れることによる摩耗に強くなるため、例えば、海洋使用時の耐摩耗性に優れる。
また、本実施形態のポリエチレン繊維は、成分(γ)の緩和時間が100μs以上であることにより、高温時における高運動性成分の分子運動性が十分なものとなり、塩乾サイクル試験における、高温高湿度状態から高温乾燥状態への環境変化による分子運動の変化で生じる歪を緩和させることができるため、例えば、海洋使用時の強度保持率に優れる。一方、本実施形態のポリエチレン繊維は、成分(γ)の緩和時間が1000μs以下であることにより分子の運動性が十分に抑制され、高温で応力がかかった際にも分子の動きが抑制されるため、例えば、海洋使用時の耐クリープ性が良好になる。
最も運動性の高い成分(γ)の組成分率及び緩和時間を制御する方法としては、特に限定されないが、ポリエチレン繊維を分子運動性の異なる3成分に分けた際に、それぞれの成分の量を適切に制御することが好ましい。そのためには、ポリエチレンの分子鎖を高度に延伸させ、伸び切り鎖結晶にさせつつも、適度に絡み合いを発生させることが好ましい。このようなポリエチレン繊維は、結晶構造が特定の状態にあると言え、そのためには用いる原料ポリエチレン及びポリエチレンの繊維化加工工程を工夫することにより得ることができる。
具体的には、特に限定されないが、例えば、原料となるポリエチレンの絡み合いを適切に制御する観点から、助触媒に有機マグネシウムを用いること、触媒と該助触媒とを接触させた後に重合器へフィードすること、また繊維加工におけるポリエチレンの絡み合いを制御する観点から、脱溶媒後、50℃の雰囲気下で2倍延伸した後に高温で延伸すること、140℃で延伸後、25℃まで10℃/分の速度で冷却すること等が挙げられる。延伸時の分子鎖の絡み合い部分と、伸びきり鎖部分とを均一に分布させ、かつ絡み合い部分の拘束を制御することにより、成分(γ)の組成分率及び緩和時間を制御することができる。
なお、本実施形態において、成分(γ)の組成分率及び緩和時間は、実施例に記載の方法により測定することができる。
〔極限粘度〕
本実施形態のポリエチレン繊維の極限粘度(η)は、11以上30以下であることが好ましく、より好ましくは13以上30以下であり、更に好ましくは15以上30以下である。本実施形態のポリエチレン繊維は、極限粘度(η)が11以上であると、高延伸させるのに十分な分子量が確保でき、強度がより上げられる。一方で、本実施形態のポリエチレン繊維は、極限粘度(η)が30以下であると、工業的な条件で生産がより可能となる。
本実施形態のポリエチレン繊維の極限粘度(η)は、オレフィン系重合用触媒を用いて、重合条件等を適宜調整することで制御できる。具体的には、重合系に水素を存在させたり、重合温度を変化させたりすること等によって極限粘度(η)を制御できる。
本実施形態のポリエチレン繊維の極限粘度(η)は、具体的には、例えば、デカリン中にポリエチレン繊維を異なる濃度で溶解した溶液を用意し、当該溶液の135℃における溶液粘度を測定し、測定された溶液粘度から計算される還元粘度を所望の式に代入して求めることができる。具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
(DSCを用いた2回目の昇温過程における152℃以上の範囲の吸熱ピーク)
本実施形態のポリエチレン繊維は、示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(i)~(iii)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(iii))のDSC曲線において、152℃以上の範囲に吸熱ピークが検出されないことが好ましい。
(DSC測定条件)
(i)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
(ii)180℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
(iii)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
DSCを用いた2回目の昇温過程(測定条件(iii))のDSC曲線において、152℃以上の範囲に吸熱ピークが検出されないと、繊維中に伸びきり鎖と分子の絡み合いが均一に分布するため、繊維に優れた強度保持性を付与できる。なお、DSCを用いた2回目の昇温過程(測定条件(iii))のDSC曲線における152℃以上の範囲の吸熱ピークの有無は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
DSCを用いた2回目の昇温過程(測定条件(iii))のDSC曲線における152℃以上の範囲の吸熱ピークが検出されないポリエチレン繊維は、溶媒によってポリエチレン粒子を高濃度のスラリーにした状態で押出機に入れた後に、溶媒をさらに追加して濃度調整し、押出したり、押出機のL/Dを極度に長くしたり、低濃度のスラリーを押出機に入れた後に、ベントにより溶媒を取り除いて濃度調整したりすることにより得ることが可能である。
(融解熱量の比((B)/(A)))
本実施形態のポリエチレン繊維は、示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(I)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(A)と、DSCを用いた下記(II)~(IV)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(IV))のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(B)との比(B)/(A)が1以上3以下であることが好ましい。
(DSC測定条件)
(I)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
(II)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で140℃まで昇温。
(III)140℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
(IV)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
融解熱量(A)及び(B)の比((B)/(A))は、1.0以上3.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.3以上2.7以下、更に好ましくは1.5以上2.7以下である。本実施形態のポリエチレン繊維は、融解熱量の比((B)/(A))が、1.0以上であると、工業的な条件で生産がより可能となる。一方で本実施形態のポリエチレン繊維は、融解熱量の比((B)/(A))が、3.0以下であると、延伸時に応力がかからずに伸びきり鎖に移行できなかった局所的な延伸ムラを抑制でき、耐クリープ性により優れる。
融解熱量の比((B)/(A))を制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、紡糸後に120℃の流動パラフィンに接触させて冷却させる方法、低吐出で紡糸する方法等が挙げられる。
なお、融解熱量の比((B)/(A))は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
(ポリエチレン繊維に含まれる塩素含有量)
本実施形態のポリエチレン繊維における塩素(Cl)の含有量は、ポリエチレン繊維全体に対し、重量換算で、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは25ppm以下であり、さらに好ましくは5ppm以下である。本実施形態のポリエチレン繊維は、塩素含有量が50ppm以下であると、糸強度が向上する傾向にある。塩素含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、1.0ppmである。なお、塩素含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
ポリエチレン繊維における塩素含有量は、後述する触媒を用いるか、単位触媒あたりの生産性を高めることで低減できる。
(ポリエチレン繊維に含まれるアルミニウム含有量)
本実施形態のポリエチレン繊維におけるアルミニウム(Al)の含有量は、ポリエチレン繊維全体に対し、重量換算で、好ましくは5ppm以下であり、より好ましくは3ppm以下であり、さらに好ましくは2ppm以下である。本実施形態のポリエチレン繊維は、アルミニウム含有量が5ppm以下であると、糸強度が向上する傾向にある。アルミニウム含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.5ppmである。なお、アルミニウム含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本実施形態のポリエチレン繊維におけるアルミニウム含有量は、後述する触媒を用いるか、単位触媒あたりの生産性を高めることで低減できる。
(ポリエチレン)
本実施形態のポリエチレン繊維を構成するポリエチレンとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレン単独重合体、又はエチレンと、他の1種以上のモノマーとの共重合体(例えば、二元又は三元共重合体)が挙げられる。共重合体の結合形式は、ランダムでもブロックであってもよい。他のモノマーとしては、以下に限定されないが、例えば、α-オレフィン、ビニル化合物が挙げられ、前記α-オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン等の炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、前記ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ビニルシクロヘキサン、スチレン及びその誘導体等が挙げられる。また、必要に応じて、他のモノマーとして、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ポリエンを使用できる。これらの他のモノマーは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(添加剤)
さらに、本実施形態のポリエチレン繊維は、中和剤、酸化防止剤、及び耐光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
中和剤はポリエチレン中に含まれる塩素キャッチャー、又は成形加工助剤等として使用される。中和剤としては、以下に限定されないが、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のステアリン酸塩が挙げられる。中和剤の含有量は、特に限定されないが、ポリエチレン全体に対し、質量換算で、好ましくは3000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、ポリエチレン全体に対し、質量換算で、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
耐光安定剤としては、以下に限定されないが、例えば、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系耐光安定剤;ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系耐光安定剤が挙げられる。耐光安定剤の含有量は、特に限定されないが、ポリエチレン粒子全体に対し、質量換算で、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは4000ppm以下、さらに好ましくは3000ppm以下である。
本実施形態では、上記のような各成分以外にもポリエチレン繊維の製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
本実施形態のポリエチレン繊維は、1種のポリエチレンで構成されてもよく、異なる2種以上のポリエチレンで構成されてもよい。2種以上の場合には、例えば、粘度平均分子量が異なるポリエチレンを組み合わせてもよい。また、本実施形態のポリエチレン繊維を構成するポリエチレンとしては、超高分子量ポリエチレンが好ましく、ポリエチレン繊維は、ポリエチレンとして超高分子量ポリエチレン単独で構成してもよく、超高分子量ポリエチレンと、他の樹脂とを組み合わせてもよい。他の樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどの他のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられる。これらの他の樹脂は、一種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
[ポリエチレンの製造方法]
本実施形態のポリエチレン繊維に用いるポリエチレンは特に限定されないが、一般的なチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造することが好ましい。
ポリエチレンの製造方法における重合法は、懸濁重合法或いは気相重合法により、エチレン、又はエチレンを含む単量体を(共)重合させる方法が挙げられる。このなかでも、重合熱を効率的に除熱できる懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
上記不活性炭化水素媒体としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素及びこれらの混合物等を挙げることができる。
ポリエチレンの製造方法における重合温度は、通常、30℃以上100℃以下が好ましく、35℃以上90℃以下がより好ましく、40℃以上80℃以下がさらに好ましい。重合温度が30℃以上であれば、工業的に効率的な製造が可能である。一方、重合温度が100℃以下であれば、連続的に安定運転が可能である。
ポリエチレンの製造方法における重合圧力は、通常、好ましくは0.1MPa以上2MPa以下、より好ましくは0.1MPa以上1.5MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以上1.0MPa以下である。常圧以上であることにより残留触媒灰分が低いエチレン重合体が得られる傾向にあり、2MPa以下であることにより、塊状のスケールを発生させることがなく、ポリエチレンを安定的に生産できる傾向にある。
本実施形態のポリエチレン繊維は、前述のとおり最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が1%以上10%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が100μs以上1000μs以下である。すなわち、ポリエチレン繊維を分子運動性の異なる3成分に分けた際に、それぞれの成分の量を適切に制御することが好ましい。そのためには、ポリエチレンの分子鎖を高度に延伸させ、伸び切り鎖結晶にさせつつも、適度に絡み合いを発生させることが好ましい。
ポリエチレンの絡み合いを抑制する方法としては、特に限定されないが、例えば、助触媒には有機マグネシウムを用いること、該助触媒と触媒を接触させた後に重合器へフィードすること、該助触媒と触媒を同一ラインから間欠フィードすること等が挙げられる。助触媒として有機マグネシウムを用いることによりポリエチレン鎖の成長と結晶化を適度に制御することができる。さらに、触媒と助触媒とを接触させた後に重合器へフィードすることにより、ポリエチレン粒子間の絡み合いのムラを抑制することができる。
また、分子の絡み合いを発生させる方法としては、特に限定されないが、例えば、重合系内のスラリー濃度を制御すること、重合器に邪魔板を設置しないこと、撹拌翼以外のノズルは触媒フィードノズルとスラリー抜きノズルのみにすること等が挙げられる。重合系内のスラリー濃度は、好ましくは30質量%以上50質量%以下、より好ましくは40質量%以上50質量%以下とする。スラリー濃度を30質量%以上とすることにより、重合時において触媒上の反応点付近の温度を適度に高く保持し、分子の絡み合いを促進することにより分子間の拘束を高めることができる傾向にある。一方、スラリー濃度を50質量%以下とすることにより、塊状のスケールを発生させることがなく、エチレン重合体を安定的に生産できる傾向にある。
ポリエチレンの製造方法における溶媒分離は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション法、遠心分離法、フィルター濾過法等によって行うことができ、エチレン重合体と溶媒との分離効率の観点から、遠心分離法が好ましい。溶媒分離後にエチレン重合体に含まれる溶媒の量は、特に限定されないが、エチレン重合体の質量に対して、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
ポリエチレンを合成するために使用した触媒の失活は、特に限定されないが、ポリエチレンと溶媒とを分離した後に実施することが好ましい。溶媒と分離した後に触媒を失活させるための薬剤を導入することにより、溶媒中に含まれる低分子量成分や触媒成分等の析出を低減することができる。
触媒系を失活させる薬剤としては、特に限定されないが、例えば、酸素、水、アルコール類、グリコール類、フェノール類、一酸化炭素、二酸化炭素、エーテル類、カルボニル化合物、アルキン類等を挙げることができる。
ポリエチレンの製造方法における乾燥温度は、通常、50℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上130℃以下がより好ましく、50℃以上100℃以下がさらに好ましい。乾燥温度が50℃以上であれば、効率的な乾燥が可能である。一方、乾燥温度が150℃以下であれば、エチレン重合体の分解や架橋を抑制した状態で乾燥することが可能である。
(ポリエチレン繊維の製造方法)
以下、本実施形態のポリエチレン繊維の製造方法の一例について説明する。
(ポリエチレンと溶媒とのスラリー溶液調製)
ポリエチレン粒子と溶媒、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を配合してスラリー溶液を調製する。
溶媒としては、紡糸に適切な溶媒であれば限定されないが、例えば、大気圧にて100℃超の沸点を有する炭化水素等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ハロゲン化炭化水素、鉱油、流動性パラフィン、デカリン、テトラリン、ナフタレン、キシレン、トルエン、ドデカン、ウンデカン、デカン、ノナン、オクテン、シス-デカヒドロナフタレン、トランス-デカヒドロナフタレン、低分子量ポリエチレンワックス、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、鉱油、流動性パラフィン、及びこれらの混合物が好ましい。
ポリエチレン粒子と溶媒との配合比としては、ポリエチレン粒子が20質量%以上40質量%以下、溶媒が60質量%以上80質量%以下であることが好ましい。また、スラリー溶液は110℃以上125℃以下に加熱した状態で押出機に導入することが好ましい。
スラリー溶液を押出機に導入した後、押出機出口におけるポリエチレン粒子と溶媒との配合比をポリエチレン粒子が5質量%以上15質量%以下、溶媒が85質量%以上95質量%以下となるように液添設備により溶媒を押出機の途中から導入することが好ましい。また、液添により導入する溶媒は200℃以上に加熱した状態で導入することが好ましい。
スラリー溶液が導入される押出機は、いかなる押出機であってもよく、例えば、同方向回転二軸押出機等の二軸押出機が挙げられる。
スラリー溶液を押出すことによる混合物の形成は、ポリエチレン粒子が溶融する温度よりも高い温度で行ってよい。押出機で形成されるポリエチレン粒子及び溶媒の混合物は、従って、溶融ポリエチレン粒子及び溶媒の液体混合物であってよい。溶融ポリエチレン粒子及び溶媒の液体混合物が押出機中で形成される温度は、140℃以上320℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以上300℃以下、さらに好ましくは220℃以上280℃以下である。また、押出機内での溶融滞留時間としては5分以上30分以下が好ましく、より好ましくは10分以上25分以下であり、さらに好ましくは15分以上20分以下である。
こうして得られた液体混合物を紡糸口金に通して紡糸する。紡糸口金の温度は140℃以上320℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以上300℃以下、さらに好ましくは220℃以上280℃以下である。また、紡糸口金の孔径は0.3mm以上1.5mm以下が好ましく、吐出速度は1m/分以上3m/分以下が好ましい。
吐出した溶媒を含む糸は、徐冷しながら巻き取ることが好ましい。具体的には、例えば1~5cmのエアギャップを介して120℃以上125℃以下のスラリー溶液を作製したものと同じ溶媒中に投入し、徐冷しながら巻き取ることが可能である。巻取速度としては、3m/分以上60m/分以下が好ましく、より好ましくは3m/分以上50m/分以下であり、さらに好ましくは5m/分以上40m/分以下である。
ついで、該糸から溶媒を除去する。溶媒を除去する方法は紡糸溶液の種類によって異なり、例えば、流動性パラフィンの場合は、ヘキサン等の溶媒に該糸を浸漬させ、抽出作業を行った後、30℃以上50℃以下の条件で1時間以上乾燥させる。
得られた繊維は、一般的には延伸加工が施される。延伸加工されたポリエチレン繊維の結晶構造は、延伸工程条件の影響を受けることになる。一般には糸温度100℃程度で延伸加工するが、その前工程として糸温度が30℃以上50℃以下になるように恒温槽で加熱し、1.5倍~3.0倍にプレ延伸することが好ましい。次に、糸温度が100℃以上140℃以下になるように恒温槽で加熱し、5.0倍~50倍に一次延伸し延伸糸を巻き取る。ついで、該延伸糸を一次延伸糸が140℃以上160℃以下になるように恒温槽で加熱し、更に二次延伸し、ポリエチレン繊維を得ることができる。
本実施形態のポリエチレン繊維は種々の用途に使用でき、ロープ、ネット、釣り糸、手袋、布地、防弾チョッキ、装甲車の防弾カバー、積層体、スポーツ用品、縫合糸等が挙げられる。中でも、本実施形態のポリエチレン繊維は、海洋での使用が好ましく、特に、船舶係留ロープ、ヨットロープ、釣り糸、漁網として好適に利用できる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例、比較例において用いた各種特性及び物性の測定方法〕
(1)パルス核磁気共鳴(NMR)のソリッドエコー法
パルスNMRのソリッドエコー法で測定された90℃におけるポリエチレン繊維の自由誘導減衰(M(t))を、下記条件で測定した。
測定装置:日本電子社製 JNM-Mu25
サンプル量:約400mg
観測核:1
測定:T2
測定法:ソリッドエコー法
パルス幅:2.2~2.3μs
パルス間隔:7.0μs~9.2μs
積算回数:256回
測定温度:30℃、50℃、70℃、90℃(測定温度はサンプル内部の温度であり、装置温度が設定温度に達してから5分後にサンプル内部温度が測定温度になるように装置温度を調整し、測定を開始した)
繰り返し時間:3s
解析方法:下記式1を用いて、解析ソフト(IGOR Pro6.3)によりフィッティングを行い、最も運動性の低い成分(α)、中間の運動性の成分(β)及び最も運動性の高い成分(γ)の3成分に近似した場合において、3成分の組成分率及び緩和時間を求めた。
M(t)=αexp(-(1/2)(t/Tα)2)sinbt/bt+βexp(-(1/Wa)(t/Tβ)Wa)+γexp(-t/Tγ) 式1
α:成分(α)の組成分率(%)
Tα:成分(α)の緩和時間(msec)
β:成分(β)の組成分率(%)
Tβ:成分(β)の緩和時間(msec)
γ:成分(γ)の組成分率(%)
Tγ:成分(γ)の緩和時間(msec)
t:観測時間(msec)
Wa:形状係数(1<Wa<2)
b:形状係数(0.1<b<0.2)
(2)極限粘度(η)の測定
実施例及び比較例で製造したポリエチレン繊維の極限粘度を、ISO1628-3:2010を参照し、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶解管にポリエチレン繊維4.5mgを秤量し、溶解管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを1g/L加えたもの)を加え、150℃で1.5時間、撹拌子を用いて攪拌しながらポリエチレン繊維を溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、キャノンフェンスケタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、ブランクとしてポリエチレン繊維を入れていないデカリンのみの落下時間(tb)を測定した。
以下の式2に従って求めたポリマーの還元粘度(ηsp/C)を式3に代入し、極限粘度(η)を求めた。
(ηsp/C)=(ts/tb-1)/((m/1000)/(20*1.107)*100) (単位:dL/g) 式2
m:サンプル質量(mg)
C:サンプル溶液濃度 (m/1000/(20*1.107)*100)(g/100mL)
(η)=(ηsp/C)/(1+0.27*C*(ηsp/C)) 式3
C:サンプル溶液濃度(g/100mL)
(3)示差走査熱量計(DSC)の2回目昇温過程のDSC曲線における152℃以上の範囲の吸熱ピークの有無
実施例及び比較例で製造したポリエチレン繊維についてDSC(パーキンエルマー社製、商品名:DSC8000)を用いて測定を行なった。具体的には8~10mgのポリエチレン繊維をアルミニウムパンに挿填し、DSCに設置した後、以下の(i)~(iii)の測定条件で測定を行った。
(DSC測定条件)
(i)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
(ii)180℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
(iii)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
2回目の昇温過程(測定条件(iii))のDSC曲線において152℃以上の範囲に吸熱ピークが検出(観察)されるか否かを測定した。
(4)示差走査熱量計(DSC)の昇温過程のDSC曲線において160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(A)と、140℃保温後の昇温過程のDSC曲線において160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(B)との比(B)/(A)
実施例及び比較例で製造したポリエチレン繊維についてDSC(パーキンエルマー社製、商品名:DSC8000)を用いて測定を行なった。具体的には8~10mgのポリエチレン繊維をアルミニウムパンに挿填し、DSCに設置した後、以下の(I)の測定条件での測定及び(II)~(IV)の測定条件での測定を行った。
(DSC測定条件)
(I)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
(II)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で140℃まで昇温。
(III)140℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
(IV)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
測定条件(I)の昇温過程のDSC曲線において160℃から170℃の範囲に検出される融解熱量(A)と、測定条件(II)~(IV)の2回目の昇温過程(測定条件(IV))のDSC曲線において160℃から170℃の範囲に検出される融解熱量(B)とを測定し、(B)/(A)を求めた。
(5)強度
ポリエチレン繊維の強度は、下記装置及び測定条件で最大荷重値(単位:cN)を測定し、繊度で割ることで算出した。なお、繊度は糸1×104m当たりの質量であり、単位はdtexで表す。
装置:エーアンドデイ社製 テンシロン
チャック間距離:500mm
引張速度:250mm/分
(6)塩乾サイクル試験下での耐クリープ性
塩乾サイクル試験下におけるポリエチレン繊維の耐クリープ性は、以下のとおり算出した。下記装置及び試験条件でポリエチレン繊維を破断応力の30%になるように荷重をかけ、ポリエチレン繊維(糸)が伸びて破断するまでの時間を耐クリープ性として算出した。なお、破断応力は(5)の引張試験における最大荷重値をポリエチレン繊維の断面積で割って算出した。評価基準は、以下のとおりである。
装置:スガ試験機製 塩乾湿複合サイクル試験機 ISO-3-CY.R
塩乾サイクル試験条件:70℃5%塩水12時間噴霧後、70℃相対湿度50%12時間。
(評価基準)
◎:3サイクル破断しなかった
○:2サイクル破断しなかったが、3サイクル完了前に破断した
×:2サイクル完了前に破断した
(7)塩乾サイクル試験下での強度保持率
塩乾サイクル試験下におけるポリエチレン繊維の強度保持率は、以下のとおり算出した。下記装置及び試験条件で塩乾サイクル試験した後のポリエチレン繊維について、前記(5)に記載の方法により引張強度を測定し、以下の式により強度保持率を求めた。評価基準は以下のとおりである。
装置:スガ試験機製 塩乾湿複合サイクル試験機 ISO-3-CY.R
塩乾サイクル試験条件:70℃5%塩水12時間噴霧後、70℃相対湿度50%12時間のサイクルを3回実施。
強度保持率(%)=(塩乾サイクル試験後の強度/塩乾サイクル試験前の強度)×100
(評価基準)
◎:強度保持率が90%以上であった
○:強度保持率が80%以上90%未満であった
×:強度保持率が80%未満であった
(8)塩乾サイクル試験下(腐食環境下)での破断耐久性(耐摩耗性)
塩乾サイクル試験下(腐食環境下)におけるポリエチレン繊維の破断耐久性は、以下のとおり算出した。下記装置及び試験条件で、10mm径の鉄パイプにポリエチレン繊維を垂らし、破断応力の10%の力がポリエチレン繊維にかかるよう両端に荷重をかけ、ポリエチレン繊維が破断せずに残った本数を破断耐久性(耐摩耗性)として評価した。評価基準は、以下のとおりである。
試験繊維の数:10本
装置:スガ試験機製 塩乾湿複合サイクル試験機 ISO-3-CY.R
塩乾サイクル試験条件:70℃5%塩水12時間噴霧後、70℃相対湿度50%12時間を3回実施。
(評価基準)
◎:9本以上破断しなかった
○:5本以上9本未満破断しなかった
×:6本以上破断した
(9)ポリエチレン繊維における塩素含有量
ポリエチレン繊維を自動試料燃焼装置(三菱化学アナリテック社製 AQF-100)で燃焼後、吸収液(Na2CO3とNaHCO3との混合溶液)に吸収させ、その吸収液をイオンクロマトグラフ装置(ダイオネクス社製、ICS1500、カラム(分離カラム:AS12A、ガードカラム:AG12A)サプレッサー ASRS300)に注入させ全塩素量を測定した。
(10)ポリエチレン繊維におけるアルミニウム含有量
ポリエチレン繊維0.2gをテフロン(登録商標)製分解容器に秤取り、高純度硝酸を加えてマイルストーンゼネラル社製マイクロウェーブ分解装置ETHOS-TCにて加圧分解後、日本ミリポア社製超純水製造装置で精製した純水で全量を50mLとしたものを検液として使用した。上記検液に対し、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)Xシリーズ2を使用して、内標準法でアルミニウムの定量を行った。
[参考例1]触媒合成例
〔固体触媒成分[A]の調製〕
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブにヘキサン1,600mLを添加した。0℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液800mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSi(C25)H)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液800mLとを3時間かけて同時に添加した。添加後、ゆっくりと昇温し、5℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1,600mL除去し、ヘキサン1,600mLで5回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。
[参考例6]触媒合成例
〔固体触媒成分[F]の調製〕
(1)原料のシリカ成分[f-1]の合成
平均粒子径が7μm、表面積が700m2/g、粒子内細孔容積が1.9mL/gの球状シリカを、窒素雰囲気下、500℃で5時間焼成し、脱水した。
窒素雰囲気下、容量1.8Lのオートクレーブ内で、この脱水シリカ40gをヘキサン800mL中に分散させ、スラリーを得た。
得られたスラリーを攪拌下20℃に保ちながらトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)100mLを1時間で滴下し、その後、同温度で2時間攪拌した。その後、得られた反応混合物中をデカンテーションによって、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。このようにしてトリエチルアルミニウムで処理されたシリカ成分[f-1]のヘキサンスラリー800mLを得た。
(2)原料のチタニウム錯体成分[f-2]の調製
[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム-1,3-ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1250mLに溶解し、予めトリエチルアルミニウム及びブチルエチルマグネシウムより合成した、Mg6(C256(n-C496Al(C253の1mol/Lヘキサン溶液を25mL加え、さらにヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/Lに調整し、チタニウム錯体成分[f-2]を得た。
(3)原料の反応混合物[f-3]の調製
ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と記載する。)5.7gをトルエン50mLに添加して溶解し、ボレートの100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/Lヘキサン溶液5mLを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート濃度が70mmol/Lとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物[f-3]を得た。
(4)固体触媒成分[F]の合成
上記(1)で得られたシリカ成分[f-1]のスラリー800mLを、20℃で攪拌しながら、上記(2)で得られたチタニウム錯体成分[f-2]のうち32mLと上記(3)で得られたボレートを含むこの反応混合物[f-3]46mLとを、同時に1時間で添加し、さらに同温度で1時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、ヘキサンで未反応の触媒原料を除去することにより、触媒活性種が該シリカ上に形成されている固体触媒成分[F]を得た。
(水添触媒[G]の調製)
窒素置換した攪拌機付の容量2.0LのSUSオートクレーブに、チタノセンジクロライド37.3gをヘキサン1Lで導入した。500rpmで撹拌しながら、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドとの(トリイソブチルアルミニウム:ジイソブチルアルミニウムハイドライド=9:1(モル比))の混合物0.7mol/L、429mLを室温で、1時間かけてポンプで添加した。添加後71mLのヘキサンでラインを洗浄した。1時間撹拌を継続し、濃青色の均一な100mM/L溶液(水添触媒[G])を得た。
[参考例2]ポリエチレン重合例
〔ポリエチレン粒子[B]の重合〕
ヘキサン、エチレン、触媒、助触媒を、攪拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に連続的に供給した。重合圧力は0.4MPaであった。重合温度はジャケット冷却により82℃に保った。固体触媒成分[A]と、助触媒としてAlMg6(C4912とを使用した。AlMg6(C4912は10mmol/時間の速度で供給し、固体触媒成分[A]と接触させた後に重合器に添加した。固体触媒成分[A]は、エチレン重合体の製造速度が10kg/時間となり、重合反応器内のスラリー濃度が40質量%になるように供給した。エチレンは圧力が保たれるように供給した。ヘキサンは液面レベルが一定に保たれるように供給した。重合スラリーは、連続的に圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュドラムに抜き、未反応のエチレンを分離した。分離されたエチレン重合体パウダーは、90℃で窒素ブローしながら乾燥した。なお、この乾燥工程で、重合後のパウダーに対し、スチームを噴霧して、触媒及び助触媒の失活を実施した。得られたエチレン重合体パウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することでポリエチレン粒子[B]を得た。ポリエチレン粒子[B]の極限粘度は15であった。
[参考例3]ポリエチレン重合例
〔ポリエチレン粒子[C]の重合〕
重合温度を78℃にした以外は参考例2と同様にして、ポリエチレン粒子[C]を得た。ポリエチレン粒子[C]の極限粘度は20であった。
[参考例4]ポリエチレン重合例
〔ポリエチレン粒子[D]の重合〕
重合温度を55℃にした以外は参考例2と同様にして、ポリエチレン粒子[D]を得た。ポリエチレン粒子[D]の極限粘度は30であった。
[参考例5]ポリエチレン重合例
〔ポリエチレン粒子[E]の重合〕
重合温度を55℃にし、助触媒としてトリイソブチルアルミニウムを使用し、触媒と接触させずに別ラインより重合反応器にフィードした以外は参考例2と同様にして、ポリエチレン粒子[E]を得た。ポリエチレン粒子[E]の極限粘度は27であった。
[参考例7]ポリエチレン重合例
〔ポリエチレン粒子[H]の重合〕
撹拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器を用いた。重合温度はジャケット冷却により75℃に保った。溶媒としてノルマルヘキサンを60L/時間で供給した。固体触媒成分[F]を重合速度が10kg/時間となるように供給した。1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSi(C25)H)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液をMg及びAlの総量として6mmol/時間で固体触媒成分[F]と接触させてから供給した。水素は固体触媒成分[F]のフィード配管に2NL/時間で供給した。このフィード配管に、別途水添触媒[G]を反応器内濃度が3.6μmol/Lとなるように供給した。重合圧力0.8MPaG、平均滞留時間3時間の条件で、気相部にエチレンを供給し連続重合を行ったこと以外は参考例2と同様にして、ポリエチレン粒子[H]を得た。ポリエチレン粒子[H]の極限粘度は30であった。
[参考例8]ポリエチレン重合例
〔ポリエチレン粒子[I]の重合〕
重合温度を50℃にし、助触媒としてトリイソブチルアルミニウムを使用し、触媒と接触させずに別ラインより重合反応器にフィードした以外は参考例2と同様にして、ポリエチレン粒子[I]を得た。ポリエチレン粒子[I]の極限粘度は29であった。
〔実施例1〕
(ポリエチレン繊維の製造方法)
ポリエチレン粒子[B]と流動パラフィン(松村石油(株)製P-350(商標))とを用いてポリエチレン粒子が30質量%になるようにスラリー溶液を調製した。さらにスラリー溶液100質量部に対して酸化防止剤としてペンタエリスチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加した。次に調製したスラリー溶液を110℃に加熱してから二軸押出機に導入した。さらに、押出機出口のポリエチレンの濃度が10質量%になるように押出機中段から液添設備により200℃の流動パラフィンを導入した。押出により得られた液体混合物は孔径1.0mmの紡糸口金に通して紡糸した。なお、吐出速度1.0m/分であった。次に、紡糸した繊維を、3cmのエアギャップを介して120℃の流動パラフィンに1分間接触させた後に、室温まで冷却して巻き取った。巻取速度は、5m/分であった。
次に、得られた繊維から流動パラフィンをヘキサンにより抽出し、40℃で1時間乾燥させた。
乾燥させた繊維を糸温度が50℃になるように恒温槽で加熱し、2.0倍にプレ延伸した。次に、糸温度が120℃になるように恒温槽で繊維を加熱し、15倍に一次延伸し延伸糸を得た。ついで、該延伸糸を糸温度が140℃になるように恒温槽で加熱し、5倍に二次延伸し、25℃まで10℃/分の速度で冷却することにより、ポリエチレン繊維を得た。
得られたポリエチレン繊維の物性を、上述した方法により測定した。測定結果を下記表1に示す。
〔実施例2〕
原料として、ポリエチレン粒子[C]を使用し、押出機出口のポリエチレンの濃度を9質量%になるように流動パラフィンを液添設備により導入したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例3〕
原料として、ポリエチレン粒子[D]を使用し、押出機出口のポリエチレンの濃度を8質量%になるように流動パラフィンを液添設備により導入したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例4〕
スラリー溶液の濃度を8質量%に調製し、押出機の中段から流動パラフィンを導入しなかったこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例5〕
紡糸後、120℃の流動パラフィンに接触させずに、室温まで急冷させたこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例6〕
プレ延伸において、延伸倍率を3倍にしたこと、1次延伸において、延伸倍率を10倍にしたこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例7〕
プレ延伸において、延伸倍率を1.5倍にしたこと、1次延伸において、延伸倍率を20倍にしたこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例8〕
原料として、ポリエチレン粒子[H]を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例9〕
140℃で延伸した後に25℃まで50℃/分で冷却したこと以外は、実施例7と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例10〕
プレ延伸をしなかったこと、1次延伸において、延伸倍率を30倍にしたこと以外は、実施例7と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔実施例11〕
原料として、ポリエチレン粒子[I]を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔比較例1〕
プレ延伸をしなかったこと、1次延伸において、延伸倍率を30倍にしたこと、140℃で延伸した後に25℃まで50℃/分で冷却したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔比較例2〕
プレ延伸において、恒温槽の温度を25℃にしたこと、140℃で延伸した後に25℃まで50℃/分で冷却したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔比較例3〕
プレ延伸において、延伸倍率を1.2倍にしたこと、1次延伸において、延伸倍率を25倍にしたこと、140℃で延伸した後に25℃まで50℃/分で冷却したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔比較例4〕
原料として、ポリエチレン粒子[E]を使用したこと、140℃で延伸した後に25℃まで50℃/分で冷却したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
〔比較例5〕
原料として、ポリエチレン粒子[E]を使用したこと、140℃で延伸した後に25℃まで10℃/分で冷却したこと以外は、比較例1と同様にして、ポリエチレン繊維を得た。
本実施形態のポリエチレン繊維は、種々の用途に使用でき、特に限定されないが、例えば、ロープ、ネット、釣り糸、手袋、布地、積層体の用途に使用できる。特に、係留ロープ、ヨットロープ、釣り糸、漁網として好適に利用できる。

Claims (11)

  1. パルス核磁気共鳴(NMR)のソリッドエコー法で測定された90℃におけるポリエチレン繊維の自由誘導減衰(M(t))を、下記式1を用いてフィッティングさせることにより、最も運動性の低い成分(α)、中間の運動性の成分(β)及び最も運動性の高い成分(γ)の3成分に近似した場合において、最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が1%以上10%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が100μs以上1000μs以下である、ポリエチレン繊維。
    M(t)=αexp(-(1/2)(t/Tα)2)sinbt/bt+βexp(-(1/Wa)(t/Tβ)Wa)+γexp(-t/Tγ) 式1
    α:成分(α)の組成分率(%)
    Tα:成分(α)の緩和時間(msec)
    β:成分(β)の組成分率(%)
    Tβ:成分(β)の緩和時間(msec)
    γ:成分(γ)の組成分率(%)
    Tγ:成分(γ)の緩和時間(msec)
    t:観測時間(msec)
    Wa:形状係数(1<Wa<2)
    b:形状係数(0.1<b<0.2)
  2. ISO1628-3:2010を参照し、以下に示す方法によって求めた極限粘度(η)が11以上30以下である、請求項1に記載のポリエチレン繊維。
    (極限粘度(η)の測定方法)
    まず、溶解管にポリエチレン繊維4.5mgを秤量し、溶解管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを1g/L加えたもの)を加え、150℃で1.5時間、撹拌子を用いて攪拌しながらポリエチレン繊維を溶解させる。その溶液を135℃の恒温槽で、キャノンフェンスケタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(t s )を測定する。同様に、ブランクとしてポリエチレン繊維を入れていないデカリンのみの落下時間(t b )を測定する。
    以下の式2に従って求めたポリマーの還元粘度(ηsp/C)を式3に代入し、極限粘度(η)を求める。
    (ηsp/C)=(t s /t b -1)/((m/1000)/(20*1.107)*100) (単位:dL/g) 式2
    m:サンプル質量(mg)
    C:サンプル溶液濃度 (m/1000/(20*1.107)*100)(g/100mL)
    (η)=(ηsp/C)/(1+0.27*C*(ηsp/C)) 式3
    C:サンプル溶液濃度(g/100mL)
  3. 示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(i)~(iii)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(iii))のDSC曲線において、152℃以上の範囲に吸熱ピークが検出されない、請求項1又は請求項2に記載のポリエチレン繊維。
    (DSC測定条件)
    (i)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
    (ii)180℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
    (iii)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
  4. 示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(I)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(A)と、DSCを用いた下記(II)~(IV)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(IV))のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(B)との比(B)/(A)が1以上3以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリエチレン繊維。
    (DSC測定条件)
    (I)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
    (II)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で140℃まで昇温。
    (III)140℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
    (IV)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
  5. 最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が2%以上5%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が200μs以上500μs以下である、請求項1に記載のポリエチレン繊維。
  6. ISO1628-3:2010を参照し、以下に示す方法によって求めた極限粘度(η)が15以上30以下である、請求項1に記載のポリエチレン繊維。
    (極限粘度(η)の測定方法)
    まず、溶解管にポリエチレン繊維4.5mgを秤量し、溶解管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを1g/L加えたもの)を加え、150℃で1.5時間、撹拌子を用いて攪拌しながらポリエチレン繊維を溶解させる。その溶液を135℃の恒温槽で、キャノンフェンスケタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(t s )を測定する。同様に、ブランクとしてポリエチレン繊維を入れていないデカリンのみの落下時間(t b )を測定する。
    以下の式2に従って求めたポリマーの還元粘度(ηsp/C)を式3に代入し、極限粘度(η)を求める。
    (ηsp/C)=(t s /t b -1)/((m/1000)/(20*1.107)*100) (単位:dL/g) 式2
    m:サンプル質量(mg)
    C:サンプル溶液濃度 (m/1000/(20*1.107)*100)(g/100mL)
    (η)=(ηsp/C)/(1+0.27*C*(ηsp/C)) 式3
    C:サンプル溶液濃度(g/100mL)
  7. 示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(I)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(A)と、DSCを用いた下記(II)~(IV)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程(測定条件(IV))のDSC曲線において、160℃~170℃の範囲に検出される融解熱量(B)との比(B)/(A)が1.5以上2.7以下である、請求項1に記載のポリエチレン繊維。
    (DSC測定条件)
    (I)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
    (II)50℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で140℃まで昇温。
    (III)140℃で5分間保持後、10℃/分の降温速度で50℃まで降温。
    (IV)50℃で5分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温。
  8. 塩素(Cl)の含有量が、50ppm以下である、請求項1に記載のポリエチレン繊維。
  9. アルミニウム(Al)の含有量が、5ppm以下である、請求項1に記載のポリエチレン繊維。
  10. 塩素(Cl)の含有量が、5ppm以下である、請求項1に記載のポリエチレン繊維。
  11. パルス核磁気共鳴(NMR)のソリッドエコー法で測定された90℃におけるポリエチレン繊維の自由誘導減衰(M(t))を、下記式1を用いてフィッティングさせることにより、最も運動性の低い成分(α)、中間の運動性の成分(β)及び最も運動性の高い成分(γ)の3成分に近似した場合において、最も運動性の高い成分(γ)の組成分率が1%以上10%以下であり、最も運動性の高い成分(γ)の緩和時間が100μs以上1000μs以下である、ポリエチレン繊維の海洋での使用。
    M(t)=αexp(-(1/2)(t/Tα)2)sinbt/bt+βexp(-(1/Wa)(t/Tβ)Wa)+γexp(-t/Tγ) 式1
    α:成分(α)の組成分率(%)
    Tα:成分(α)の緩和時間(msec)
    β:成分(β)の組成分率(%)
    Tβ:成分(β)の緩和時間(msec)
    γ:成分(γ)の組成分率(%)
    Tγ:成分(γ)の緩和時間(msec)
    t:観測時間(msec)
    Wa:形状係数(1<Wa<2)
    b:形状係数(0.1<b<0.2)
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