JP2018016772A - 超高分子量ポリエチレンパウダー - Google Patents

超高分子量ポリエチレンパウダー Download PDF

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Abstract

【課題】溶融時の未溶融物が少なく、延伸加工時の糸切れや毛羽立ちが無く、延伸後の強度が高く、ステアリン酸カルシウムなどの塩素キャッチャー剤を用いることなく、高生産性で生産加工機での長期連続安定運転が可能な、超高分子量ポリエチレンパウダーを提供すること。【解決手段】エチレン単独重合体(A)、又はエチレン系共重合体(B)の超高分子量ポリエチレンパウダーであって、下記1)〜2)を満たす、超高分子量ポリエチレンパウダー。1)極限粘度(IV)が7以上である;2)110℃でのアニールした前後のΔH2の差が3J/g以下である;【選択図】なし

Description

本発明は、超高分子量ポリエチレンパウダーに関する。
従来、超高分子量オレフィン、特に超高分子量ポリエチレンパウダーは、フィルム、シート、微多孔膜、繊維、発泡体、パイプ等多種多様な用途に用いられている。特に鉛蓄電池やリチウムイオン電池に代表される二次電池のセパレータ用微多孔膜および高強度繊維の原料として、超高分子量ポリエチレンパウダーが用いられている。超高分子量ポリエチレンパウダーが用いられている理由としては、分子量が高いため、延伸加工性に優れる、強度が高い、化学的安定性が高い、長期信頼性に優れていること等が挙げられる。
超高分子量ポリエチレンパウダーは、分子量が高いゆえに、射出成型等による加工が困難であるために、溶剤に溶解されて成型することが多い。一般に、二次電池セパレーター用微多孔膜や高強度繊維等を製造する際には、超高分子量ポリエチレンパウダーは、例えば押し出し機中において、溶剤に溶解された状態で、高温下で、混練される。また、近年では溶媒を用いず、超高分子量ポリエチレンパウダーを圧縮、延伸する高強度延伸物の成型方法も開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような高強度延伸物は防弾チョッキ等の用途に用いられている。
これらの微多孔膜や高強度繊維・高強度延伸物の用途では、近年更なる強度向上や軽量化などの要求が強くなっており、そのため材料である超高分子量ポリエチレンパウダーの更なる高分子量化が強く望まれてきている。高分子量化のための一つの手段として、近年メタロセン触媒を利用したポリマーが提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
国際公開第2008/013144号パンフレット 国際公開第2004/081064号パンフレット 国際公開第2015/005287号パンフレット
上述の通り、微多孔膜や高強度繊維に使用される超高分子量ポリエチレンパウダーは、更なる高分子量化が強く望まれている。また、延伸工程における未溶融物の無いことや、延伸後の繊維が、糸切れや、毛羽立ちが少ない均一な繊維であることが望まれている。一方、超高分子量ポリエチレンパウダーにはステアリン酸カルシウムなどの塩素キャッチャー剤を添加することが一般的であるが、高強度繊維の用途では、ポリマーを溶解し、回収リサイクルされる溶媒中にステアリン酸カルシウムが濃縮されるため、ステアリン酸カルシウムなどの塩素キャッチャー剤を添加しないことも要望されている。しかし、従来のチグラー・ナッター型の触媒を用いて製造される超高分子量ポリエチレンパウダーは、固体触媒にチタン−塩素を含むため、高強度繊維の成型機や延伸ロールなどで錆が発生し、ロール等の掃除で生産加工機を停止することにより、連続して加工することができず、生産性に劣る問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、溶融時の未溶融物が少なく、延伸加工時の糸切れや毛羽立ちが無く、延伸後の強度が高く、ステアリン酸カルシウムなどの塩素キャッチャー剤を用いることなく、高生産性で生産加工機での長期連続安定運転が可能な、超高分子量ポリエチレンパウダーを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のメタロセン触媒を用いることで、溶融時の未溶融物が少なく、微多孔膜や高強度繊維等の強度が高く、成型加工機の錆を発生させることなく、高生産性で生産加工機での長期連続安定生産が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
エチレン単独重合体(A)、又はエチレン系共重合体(B)の超高分子量ポリエチレンパウダーであって、
前記エチレン系共重合体(B)が、
a)エチレン単位99.00〜99.90モル%と、
b)炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2=CHR(但し、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであるコモノマー単位0.01〜1.00モル%と
を含む共重合体であり、
下記1)〜2)を満たす、超高分子量ポリエチレンパウダー。
1)極限粘度(IV)が7以上である;
2)110℃でのアニールした前後のΔH2の差が3J/g以下である;
[2]
ポリマーの嵩密度が、0.25kg/m3以上、0.40kg/m2以下である、[1]に記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
[3]
ポリマーのΔTm(Tm1−Tm2)が11℃未満である、[1]又は[2]に記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
[4]
ポリマーのWAXS(広角X線回折装置)による結晶化度と、SAXSによる結晶長周期から求められるラメラ厚みが10nm以上、30nm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
[5]
ポリマー中に含まれる塩素含有量が5ppm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の超高分子量ポリエチレンパウダーから得られる、成型品及び高強度繊維及びリチウムイオン電池セパレーター。
本発明によれば、成型の際の加工機の錆を発生させることの無く、溶融時の未溶融物が無く、得られる成型品の毛羽立ちや糸切れが少なく、かつ、高強度の微多孔膜や高強度繊維を提供することができる。また、本願発明の超高分子量ポリエチレンパウダーから成型品、高強度繊維、リチウムイオン電池セパレーターを製造する際、プレス板やゲル紡糸、リチウムイオン電池セパレーターの成型機廻りの金属腐食を抑制できる。そのため、強度に優れる、成型品やゲル紡糸繊維、リチウムイオン電池セパレーター等の加工品を連続で安定して生産することができる。
実施例1及び比較例1の超高分子量ポリエチレンパウダーの腐食試験の結果を表す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
[超高分子量ポリエチレンパウダー]
本実施形態に係る超高分子量ポリエチレンパウダーは、エチレン単独重合体(A)、又はエチレン系共重合体(B)であり、前記エチレン系共重合体(B)が、a)エチレン単位99.99〜99.00モル%と、b)炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2=CHR(但し、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び、炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来するコモノマー単位0.01〜1.0モル%とを含む共重合体である。
また、本実施形態に係る超高分子量ポリエチレンパウダーは、下記1)〜2)を満たす。
1)極限粘度(IV)が7以上である;
2)110℃でのパウダーアニール前後のΔH2の差が3J/g以下である;
上記構成を有することにより、本実施形態に係る超高分子量ポリエチレンパウダーは、成型時の未溶融物が無く、得られる成型体の強度に優れ、成型時の糸切れや毛羽たちが少なく製品ロスが少ない。更には、成型機の錆を抑制でき長期連続運転が可能となる。
本明細書中において、重合体を構成する各単量体単位の命名は、単量体単位が由来する単量体の命名に従う。例えば、「エチレン単位」とは、単量体であるエチレンを重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、エチレンの二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。また、「コモノマー単位」とは、単量体であるコモノマーを重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、コモノマーに含まれるオレフィンの二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。
前記b)炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2=CHR(但し、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び、炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであるコモノマー(以下、単に「b)コモノマー」とも称す)としては、成型体の強度や耐クリープ性の観点から、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレン及び1−ブテンがより好ましい。
前記エチレン系共重合体(B)におけるエチレン単位の含有量は、エチレン単位及びb)コモノマー単位の総量に対して、99.00mol%以上99.99mol%以下であることが好ましく、99.50mol%以上99.99mol%以下であることがより好ましく、99.90mol%以上99.99mol%以下であることがさらに好ましい。エチレン単位の含有量が上記範囲内であることにより、強度や耐クリープ性により優れる傾向にある。
前記エチレン系共重合体(B)におけるb)コモノマー単位の含有量は、エチレン単位及びb)コモノマー単位の総量に対して、0.01mol%以上1.00mol%以下であることが好ましく、0.01mol%以上0.50mol%以下であることがより好ましく、0.01mol%以上0.30mol%以下であることがさらに好ましい。b)コモノマー単位の含有量が上記範囲内であることにより、強度や耐クリープ性がより向上する傾向にある。b)コモノマー単位の含有量が0.01mol%未満では、超高分子量ポリエチレン系重合体、及び、そのパウダーを成型した際の耐クリープ性に劣る。また、b)コモノマー単位の含有量が1.00mol%より多いと、繊維強度が低下する。
超高分子量ポリエチレン系重合体中のb)コモノマー含有量を上記範囲に制御する方法としては、重合反応器内に添加する、b)コモノマー/[エチレン+b)コモノマー](モル%)を変化させることが挙げられる。通常のチグラー・ナッタ触媒を用いた超高分子量ポリエチレンパウダーの製造では、b)コモノマーにより分子量が低下する傾向にある。これはb)コモノマーが一部連鎖移動剤として作用するためであると考えられる。超高分子量ポリエチレンパウダーの分子量を高めるにはできるだけ少ないb)コモノマーが必要である。一方、メタロセン触媒では、分子量の制御は水添触媒などで実施可能であるので、高分子量を維持したまま、b)コモノマー含有量の高い領域まで製造可能である。
なお、b)コモノマー単位の含有量の測定は、G.J.RayらのMacromolecules, 10, 773 (1977)に開示された方法に準じて行われ、b)コモノマー単位の含有量は、13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出することができる。より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
(極限粘度(IV))
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーの極限粘度(以下、単に「IV」とも記す)は、7以上であり、9以上33以下であることが好ましく、11以上31以下であることがさらに好ましい。IVが7以上であることにより、成型品の強度がより向上する。また、IVが33以下であることにより、成型性がより向上する。さらに、IVが上記範囲であることにより、生産性により優れ、成型した場合には、強度に優れる超高分子量ポリエチレンパウダーとなる。このような特性を有する超高分子量ポリエチレンパウダーは、リチウムイオン電池セパレーター、高強度繊維などに好適に用いることができる。
IVを上記範囲に制御する方法としては、超高分子量ポリエチレンパウダーを重合する際の反応器の重合温度を変化させることが挙げられる。一般には、重合温度を高温にするほどIVは低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほどIVは高くなる傾向にある。また、IVを上記範囲にする別の方法としては、超高分子量ポリエチレンパウダーを重合する際に使用する助触媒として、有機金属化合物種を変更することが挙げられる(例えば、特許05829295公報等参照)。
また、超高分子量ポリエチレンパウダーを重合する際に連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤を添加することで、同一重合温度でも生成する超高分子量ポリエチレンパウダーのIVが低く制御できる。
そしてまた、超高分子量ポリエチレンパウダーを製造する際の重合反応器内の連鎖移動剤(例えば水素など)を極力少なくするか、連鎖移動剤除去として水素添加能を有する化合物を用いるなどの方法がある。特にメタロセン触媒を用いて重合する場合、重合初期活性が高いため、重合反応器に導入されたとき、触媒の分散不良などにより塊状のスケールを生成し易い。これを抑制するため、特開2000−198804公報で重合反応器に入る前に、触媒と水素とを事前に混合しておくことが提案されているが、超高分子量ポリエチレンパウダーを重合する際には、導入された水素が重合系で連鎖移動剤として働き、超高分子量ポリエチレンパウダーの高分子量化を抑制する。超高分子量ポリエチレンパウダーを安定的に効率よく重合するためには、この水素を連載移動除去として水素添加能を有する化合物を添加することが必要である。すなわち水素添加能を有する触媒にて、エチレンを水素で水添化することで、エタンに消費され、重合系内の水素を除去することができる(例えば、国際公開2004/081064号パンフレット参照)。
超高分子量ポリエチレンパウダーのIV(dL/g)は、デカヒドロナフタレン溶液中に超高分子量ポリエチレンパウダーを異なる濃度で溶解させ、135℃で求めた還元粘度を濃度0に外挿して求めることができる。より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
(110℃アニール前後のΔH2の差)
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーの110℃アニール前後のΔH2の差は、かかる差の絶対値が、3J/g以下であり、2J/g以下であることが好ましく、1J/g以下であることがより好ましい。アニール前後でのΔH2の変化が少ないことは、超高分子量ポリエチレンパウダーの結晶構造に由来すると考えられる。すなわちアニール前後でのΔH2の変化が少ないということは、超高分子量ポリエチレンパウダーが重合時に結晶化する際の、結晶ラメラがより均一であるか、結晶の拘束性が高いことが考えられる。
超高分子量ポリエチレンパウダーの110℃アニール前後のΔH2の差を上記範囲にする方法としては、例えば、できるだけ高温で、エチレンを単独で、又は、エチレンとb)コモノマーとを重合する方法が好適に挙げられる。
一般的なチーグラー・ナッタ触媒を用いた重合では、均一な結晶化を有するポリエチレンを製造するために、ポリエチレンを低温重合にすることにより成長速度を制御する方がよいが、低温重合は工業的な生産性に劣る。一方、メタロセン触媒は、チーグラー・ナッタ触媒に比べ、活性点が均一であるがゆえに、比較的高温で成長速度が速くても、より均一な結晶ラメラを形成できると考えられる。特にメタロセン触媒は、重合反応前に水素などと混合しておくことや、重合器に供給する触媒濃度とを、事前混合槽を設けるなどして薄くするなどして、重合初期の急反応を抑制することが重要である。
その他、超高分子量ポリエチレン系重合体を重合する際の重合圧力により、成長速度を制御することが可能である。すなわち、重合圧力を上げることにより、ポリエチレンの成長速度を上げることができるし、重合圧力を下げることにより、ポリエチレンの成長速度を抑制することが可能である。
また、重合反応器内のスラリー濃度や滞留時間によっても制御することが可能である。
(嵩密度)
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーの嵩密度は、0.25kg/m3以上0.40kg/m3以下であることが好ましく、0.25kg/m3以上0.38kg/m3以下であることがより好ましく、0.28kg/m3以上0.35kg/m3以下であることがさらに好ましい。
超高分子量ポリエチレンパウダーの嵩密度は、重合触媒の細孔特性、特に細孔容積によって略決定されると考えられる。つまり、細孔容積の大きい触媒担体を用いることで、重合後の超高分子量ポリエチレン系重合体の嵩密度を低く制御できる。その他、超高分子量ポリエチレンパウダーの嵩密度を上記範囲に制御するには、重合時の助触媒、重合温度、重合圧力、スラリー濃度、滞留時間などにより制御することができる。重合触媒としてはメタロセン系触媒を使用することが好ましい。
(融点差(ΔTm))
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーの融点差(ΔTm)(「ΔTm(Tm1−Tm2)」とも記す)は、11℃未満であることが好ましく、10℃未満であることがより好ましく、5℃以上10℃未満であることがさらに好ましい。超高分子量ポリエチレンパウダーの融点差(ΔTm)を上記範囲に制御する方法としては、重合触媒や助触媒、重合温度、重合圧力、スラリー濃度、滞留時間等を制御する方法が挙げられる。重合触媒としてはメタロセン系触媒を使用することが好ましい。
(ラメラ厚み)
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーのラメラ厚みは、ポリマーのWAXS(広角X線回折装置)による結晶化度と、SAXSによる結晶長周期から求められ、10nm以上、30nm以下であることが好ましく、10nm以上、20nm以下であることがより好ましく、10nm以上、17nm以下であることがさらに好ましい。超高分子量ポリエチレンパウダーのラメラ厚みを上記範囲に制御する方法としては、重合触媒や助触媒、重合温度、重合圧力、スラリー濃度、滞留時間などにより制御する方法が挙げられる。重合触媒としてはメタロセン系触媒を使用することが好ましい。
(塩素含有量)
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーの塩素含有量は、5ppm以下であることが好ましく、4ppm以下であることがより好ましく、3ppm以下であることがさらに好ましい。超高分子量ポリエチレンパウダーの塩素含有量を上記範囲に制御する方法としては、重合活性を上げる方法、つまり、重合触媒や助触媒、重合温度、重合圧力、スラリー濃度、滞留時間などにより制御する方法が挙げられる。重合触媒としてはメタロセン系触媒を使用することが好ましい。
[超高分子量ポリエチレンパウダーの製造方法]
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーの製造方法としては、例えば、エチレン単独で、又は、a)エチレンと、b)炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2=CHR(但し、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び、炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであるコモノマーとを、触媒成分の存在下、重合反応する方法が挙げられる。
超高分子量ポリエチレンパウダーの製造に使用される触媒成分としては、特に限定されないが、例えば、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用い重合することが可能であり、極限粘度(IV)、110℃アニール前後のΔH2の差、嵩密度、融点差(ΔTm)、塩素含有量を制御する観点から、メタロセン触媒が好ましい。チーグラー・ナッタ触媒およびメタロセン触媒としては、例えば、特許5782558号公報や国際公開第2015/005287号公報等に開示されているチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用することができる。
前記触媒成分は、固体触媒成分、及び、有機金属化合物成分(以下、触媒と省略する)を超高分子量ポリエチレン重合条件下である重合系内に添加する際には、両者を別々に重合系内に添加してもよいし、予め両者を混合させた後に重合系内に添加してもよい。また組み合わせる両者の比率は、特に限定されないが、固体触媒成分1gに対し有機金属化合物成分は0.1mmol以上100mmol以下が好ましく、1mmol以上50mmol以下がより好ましく、5mmol以上50mmol以下がさらに好ましい。両者を混合させる他の目的としては、保存タンクや配管等に静電付着を防止することも挙げられる。
超高分子量ポリエチレンパウダーの製造方法における重合法は、懸濁重合法により、エチレン及び/又はb)コモノマーを重合又は共重合させる方法が挙げられる。懸濁重合法による重合又は共重合は、重合熱を効率的に除熱する観点から、好ましい。懸濁重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
上記不活性炭化水素媒体としては、特に限定されないが、具体的には、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;及びこれらの混合物等を挙げることができる。
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーを得るための製造方法における重合温度は、40℃以上100℃以下であることが好ましく、50℃以上95℃以下であることがより好ましく、50℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。重合温度が40℃以上であることにより、工業的に効率的な製造が可能である。重合温度が100℃以下であることにより、重合ポリマーが一部溶融した、抜出ラインを詰めるような塊状のスケールを抑制でき、連続的な安定した製造が可能である。
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーを得るための製造方法における重合圧力は、常圧以上2MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以上1.5MPa以下であることがより好ましく、0.3MPa以上1.0MPa以下であることがさらに好ましい。重合圧力が常圧以上であることにより、総金属量及び全塩素量の高い超高分子量エチレン系重合体が得られる傾向にある。重合圧力が2MPa以下であることにより、急重合による塊状のスケールを発生させることがなく超高分子量ポリエチレンパウダーを安定的に生産できる傾向にある。
一般的に超高分子量ポリエチレンパウダーを重合する際には、重合反応器へのポリマーの静電気付着を抑制するためInnospec社製(代理店丸和物産)のStadis450等の静電気防止剤を使用することも可能である。Stadis450は、不活性炭化水素媒体に希釈したものをポンプ等により重合反応器に添加することもできる。この際の添加量は、単位時間当たりの超高分子量エチレン系重合体パウダーの生産量に対して、0.1ppm以上500ppm以下が好ましく、1ppm以上200ppm以下がより好ましい。
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーを含むスラリーは重合反応器から定量的に抜出し、遠心分離機等を用いて溶媒と分離後、乾燥機に送られる。この際の、溶媒含有率は、20重量%以上50重量%に制御することが好ましい。
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーを得るための、重合後の乾燥方法としては、できるだけ熱をかけない乾燥方法が好ましい。乾燥機の形式としては、ロータリーキルン方式やパドル方式や流動乾燥機などが好ましい。乾燥温度としては50℃以上、150℃以下が好ましく、70℃以上100℃以下がさらに好ましい。また乾燥機に窒素等の不活性ガスを導入し乾燥を促進することも効果的である。
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーは、必要に応じて、公知の各種添加剤を添加して用いてもよい。上記添加剤としては、熱安定剤、滑剤、及び、塩化水素吸収剤等が挙げられる。上記熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ジステアリルチオジプロピオネート等の耐熱安定剤;や、ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、2−(2−ヒドロキシ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の耐候安定剤;等が挙げられる。また、上記滑剤や上記塩化水素吸収剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩等が好適に挙げることができる。
本実施形態の超高分子量ポリエチレンパウダーから、成型品及び高強度繊維及びリチウムイオン電池セパレーターを得ることができる。
以下に、実施例及び比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、超高分子量ポリエチレンパウダーの物性の評価方法について説明する。
[超高分子量ポリエチレンパウダー中のα−オレフィン含有量]
超高分子量ポリエチレンパウダー中のα−オレフィン含有量、すなわち、超高分子量ポリエチレンパウダー中のα−オレフィンに由来する重合単位の含有率(mol%)の測定は、G.J.RayらのMacromolecules, 10, 773 (1977)に開示された方法に準じて行い、13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出した。
測定装置 :日本電子製ECS−500
観測核 :13
観測周波数 :100.53MHz
パルス幅 :45°(7.5μsec)
パルスプログラム:single pulse dec
PD :5sec
測定温度 :130℃
積算回数 :30,000回以上
基準 :PE(−eee−)シグナルであり29.9ppm
溶媒 :オルトジクロロベンゼン−d4
試料濃度 :5〜10wt%
溶解温度 :130〜140℃
[超高分子量ポリエチレンパウダーの極限粘度の測定方法]
超高分子量ポリエチレンパウダーの極限粘度は、ISO1628−3(2010)従って、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶融管に超高分子量ポリエチレンパウダー10mgを秤量し、溶融管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/Lとなるように加えたもの)を加え、150℃で2時間攪拌して該超高分子量ポリエチレンパウダーを溶解させた。該超高分子量ポリエチレンパウダーの溶液を135℃の恒温槽で、キャノン−フェンスケの粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号−100)を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、上記超高分子量ポリエチレンパウダー量を7mg、5mg、3mgと変えたサンプルついても同様に標線間の落下時間(ts)を測定した。ブランクとしてデカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従って求めた超高分子量ポリエチレンパウダーの還元粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)(単位:g/dL)と超高分子量ポリエチレンパウダーの還元粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿し、極限粘度[IV]を求めた。
ηsp/C=(ts/tb−1)/C (単位:dL/g)
[超高分子量ポリエチレンパウダーのDSCのΔH2の差]
まず、超高分子量ポリエチレンパウダーを窒素雰囲気化で、電熱乾燥機にて110℃で6時間アニールした。
次に、DSC(パーキンエルマー社製、商品名:DSC8000)を用い、8〜10mgの上記アニール前後の超高分子量ポリエチレンパウダーを各々、アルミニウムパンに挿填し、下記条件で超高分子量ポリエチレンパウダーのDSCのΔH2の差を求めた。
1)50℃で1分間保持後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温した。
2)上記1)の昇温過程での融点をTm1、融解熱量をΔH1とした。
3)180℃で5分間保持後、10℃/minの降温速度で50℃まで降温した。
4)50℃で5分間保持後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温した。
5)上記4)の昇温時の融点をTm2、融解熱量をΔH2とした。
6)アニール前後のΔH2の結果から、ΔH2の差を求めた。
表1中、アニール前のΔH2をΔHaと表し、アニール後のΔH2をΔHbと表し、ΔH2の差をΔHb−ΔHaと表した。
[超高分子量ポリエチレンパウダーの広角X線散乱(WAXS)での結晶化度]
超高分子量ポリエチレンパウダーの広角X線散乱(WAXS)は、下記条件で測定した。
測定には、リガク社製Ultima−IVを用いた。Cu−Kα線を、試料である超高分子量ポリエチレンパウダーに入射し、D/tex Uitraにより回折光を検出した。測定条件は、試料と検出器間との距離が285mm、励起電圧が40kV、電流が40mAの条件であった。光学系には集中光学系を採用し、スリット条件は、DS=1/2°、SS=解放、縦スリット=10mmであった。
[超高分子量ポリエチレンパウダーの小角X線散乱(SAXS)での結晶長周期]
超高分子量ポリエチレンパウダーの小角X線散乱(SAXS)は、以下の条件で測定した。
リガク社製Nano−Viewerを用い、透過法の小角線散乱(SAXS)測定を行った。CuKα線を試料である超高分子量ポリエチレンパウダーに照射し、DECTRIS社PILATUS 100Kにより散乱を検出した。試料と検出器との距離は841.5mm、出力は60kV、45mAの条件で測定を行った。光学系はポイントフォーカスを採用し、スリット径は1st slit:ψ=0.4mm、2nd slit:ψ=0.2mm、guard slit:=0.8mmの条件で行った。測定の前処理として、粒径由来の散乱を低減するため、試料とプロピレングリコールを重量比1:1で混合したスラリーを作製し測定した。
得られたピークを以下の方法により結晶長周期の解析を実施した。
PILATUS 100Kから得られたX線散乱パターンに対して、空セル散乱補正を行い、円環平均により一次元SAXSプロフィールI(q)を得た。なお、qは散乱ベクトルの絶対値である。結晶長周期dを算出するため、SAXSプロフィールに対して、散乱ベクトルの絶対値の2乗を乗じ、結晶長周期由来の散乱を強調した。続いて、SAXSプロフィールに散乱ベクトルの絶対値の2乗を乗じたものと、散乱ベクトルの絶対値それぞれを、10を底として対数をとり、縦軸、横軸としてプロットした。横軸はlog10 qを表し、縦軸は、log10(I(q)×q2)を表す。
プロットしたデータに対して、ラメラ由来のピーク位置より小角側と広角側それぞれ1点ずつで接するような接線を引き、データから接線を差し引く操作を行った。続いて、2点の接点間で最大値を取る横軸位置Xmを求めた。最後に、結晶長周期dを、以下の式により求めた。
m=10Xm d=2π/qm
[超高分子量ポリエチレンパウダーのラメラ厚み]
超高分子量ポリエチレンパウダーのラメラ厚みは、上記WAXSの結晶化度とSAXSの結晶長周期から、以下の式によって算出した。
ラメラ厚み=結晶長周期×(結晶化度/100)
[超高分子量ポリエチレンパウダーの溶解性評価試験]
100ccのポリカップに、超高分子量ポリエチレンパウダー4.0g、及び酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.012g(0.3質量%)投入して、ドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。さらに、該混合物に流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)36.0g(ポリエチレン濃度10質量%)を投入し、室温にてスパチュラで撹拌することにより、均一なスラリーを得た。
当該スラリーを190℃に設定したラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4C150−01型)に投入し、窒素雰囲気下、回転数50rpmで30分間混練した。混練によって得られた混合物(ゲル)を165℃に加熱したプレス機で圧縮することにより、厚さ1.0mmのゲルシートを作製した。作製したゲルシートから10cm×10cmの試験片を切り出し、120℃に加熱した同時二軸テンター延伸機にセットし、3分間保持した。その後、12mm/secのスピードでMD倍率7.0倍、TD倍率7.0倍(即ち、7×7倍)になるように延伸した。次に延伸後のシートをノルマルヘキサン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後ノルマルヘキサンを乾燥除去した。抽出完了後の薄膜を室温で10時間乾燥した。乾燥後の薄膜を光にかざして、30cm×30cm中に存在する直径1mm以上の白点(溶け残り)の数をカウントした。
溶解性の評価は以下の基準で実施した。
○:白点の数が、5個以下である。
△:白点の数が、6個以上30個以下である。
×:白点の数が、31個以上である。
[超高分子量ポリエチレンパウダーの糸の連続加工生産性評価試験]
表中、超高分子量ポリエチレンパウダーの糸の連続加工生産性は、「連続加工生産性」と表す。
超高分子量ポリエチレンパウダーに、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量%添加し、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物と流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を、窒素で置換を行った事前混合槽に、ポリマー濃度が8質量%になるように投入し、室温にて撹拌することにより、均一なスラリーを得た。これをポンプにより、窒素雰囲気下にて二軸押出機へ供給して、溶融混練した。溶融混練条件は、設定温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量12kg/hrで行った。押し出し機の下流側に吐出安定性を付与するため、ギアポンプを介し、JIS Z8801規格に準拠した目開き250μmと、106μmと、45μmと、106μmと、250μmのステンレス製平織スクリーンとを重ねて設置した。その直近上流側の樹脂圧力を圧力計にて計測した。その後に紡糸用ダイスを経て、ゲル紡糸を加工した。そして、以下の判断基準に従って、連続加工生産性を判断した。すなわち、押し出し開始後1時間経過時の樹脂圧力(P0)を基準とし、ある経過時間の樹脂圧力をPとしたとき、増加率を以下にて定義した。
増加率(%)=(P−P0)/P0×100
糸の連続加工生産性の評価を以下の基準で実施した。
○:120時間後の樹脂圧力の増加率が±5%以内であるもの。
△:72時間後の樹脂圧力の増加率が5%以下で、かつ120時間後の樹脂圧力の増加率が10%を超えるもの。
×:72時間後の樹脂圧力の増加率が5%を超えるもの。
[超高分子量ポリエチレンパウダーの腐食試験]
上下に260mm*260mm*厚さ5mmのSUS鉄板と、300mm*300mm*厚さ0.1mmのアルミ箔、厚み50μmのPETマイラーを置き、その上に50mm*50mm*厚さ2mmのSUS316の鉄板(以下SUS板と記す)を4枚置き、超高分子量ポリエチレンパウダーを160g流し込み平らにならし、神藤金属鉱業所製圧縮成型機(型式SFA−37)にて、170℃にて一時加圧10MPaで300秒、二次加圧5秒、三次加圧15MPaで900秒で圧縮成型後、同所圧縮成型機(同形式)の25℃に冷却された圧縮成型機にて15Mpaで600秒冷却した。取り出した、超高分子量ポリエチレンパウダーと接触したSUS板を取り外した。
温度60℃、湿度90%のEYELA製恒温恒湿槽の中に上記SUS板を入れ、一定時間後(20、40、60、120分)のサンプルの錆の発生状況を確認し以下の基準にて評価を実施した。
○:錆発生無
×:錆発生
[参考例1]
触媒合成例1:固体触媒成分[A]の調製
(1)(A−1)担体の合成
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに2mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で500rpmで攪拌しながら組成式AlMg5(C4911(OC492で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液2,550mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄した。この固体((A−1)担体)を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.31mmolであった。
(2)固体触媒成分[A]の調製
上記(A−1)担体150gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液110mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSiHCH32で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液110mLとを同時に400rpmで撹拌しながら1時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1,100mL除去し、ヘキサン1,100mLで2回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。この固体触媒成分[A]1g中に含まれるチタン量は0.75mmolであった。
[参考例2]
触媒合成例2:固体触媒成分[B]の調製
固体触媒成分[B]は、メタロセン系触媒であって、以下の固体触媒[B]、液体成分[E]及び水添触媒[F]から構成される。
(シリカ担体[B1]の調製)
シリカ担体[B1]の前駆体として、平均粒径7μm、比表面積660m2/g、細孔容積1.4mL/g、圧縮強度7MPaのシリカを用いた。
窒素置換した容量8Lオートクレーブに加熱処理後のシリカ(130g)をヘキサン2500mL中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーに、攪拌下20℃にて、ルイス酸性化合物であるトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M)を195mL加えた。その後、2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させて、トリエチルアルミニウムを吸着させたシリカ担体[B1]のヘキサンスラリー2695mLを調製した。
(遷移金属化合物成分[C]の調製)
遷移金属化合物(C−1)として、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「錯体1」と略称する)を使用した。また、有機マグネシウム化合物(C−2)として、組成式Mg(C25)(C49)(以下、「Mg1」と略称する)を使用した。
200mmolの錯体1をイソパラフィン炭化水素(エクソンモービル社製アイソパーE)1000mLに溶解し、これにMg1のヘキサン溶液(濃度1M)を40mL加え、更にヘキサンを加えて錯体1の濃度を0.1Mに調整し、遷移金属化合物成分[C]を得た。
(活性化剤[D]の調製)
ボレート化合物(D−1)として、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)17.8gをトルエン156mLに添加して溶解し、ボレートの100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液に(D−2)としてエトキシジエチルアルミニウムの1mol/Lヘキサン溶液15.6mLを室温で加え、さらにトルエンを加えて溶液中のボレート濃度が70mmol/Lとなるように調整した。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む活性化剤[D]を調製した。
(固体触媒[B]の調製)
上記操作により得られたシリカ担体[B1]のスラリー2695mLに、25℃にて400rpmで撹拌しながら、上記操作により得られた活性化剤[D]219mLと、遷移金属化合物成分[C]175mLと、を別のラインから定量ポンプを用い、同時に添加し、添加時間30分で、その後、3時間反応を継続することにより、固体触媒[B]を調製した。
(液体成分[E]の調製)
有機マグネシウム化合物[E1]として、組成式AlMg6(C253(C4912(以下、「Mg2」と略称する)を使用した。
200mLのフラスコに、ヘキサン40mLとMg2を、MgとAlの総量として38.0mmolを攪拌しながら添加し、20℃でメチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス;以下、「シロキサン化合物」と略称する)2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40mLを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下で反応させることにより、液体成分[E]を調製した。
(水添触媒[F]の調製)
窒素置換した攪拌機付の容量2.0LのSUSオートクレーブに、チタノセンジクロライド37.3gをヘキサン1Lで導入した。500rpmで撹拌しながら、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドの(9:1)の混合物0.7mol/L、429mLを室温で、1時間かけてポンプで添加した。添加後71mLのヘキサンでラインを洗浄した。1時間撹拌を継続し、濃青色の均一な100mM/L溶液[F]を得た。
[実施例1]
撹拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器を用いた。重合温度はジャケット冷却により75℃に保った。溶媒としてノルマルヘキサンを60L/時間で供給した。固体触媒[B]を生産速度が10kg/時間となるように供給した。液体成分[E]をMgとAlの総量として6mmol/時間で供給した。水素は固体触媒[B]のフィード配管に2NL/時間で供給した。このフィード配管に、別途水添触媒[F]を反応器内濃度が3.5μmol/Lとなるように供給した。重合温度75℃、重合圧力0.8MPaG、平均滞留時間2.2時間の条件で、エチレンを供給し連続重合を行った。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器内のレベルが一定に保たれるよう圧力0.05MPaG、温度60℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、水素を分離した。次に超高分子量エチレン系重合体スラリーは、フラッシュタンクからポンプにより連続的に遠心分離機に送り、ポリマーと溶媒を分離し、分離された超高分子量エチレン系重合体パウダーは、80℃に制御された乾燥機に送り、窒素ブローしながら乾燥させた。
触媒の重合活性は、8,000g/gs、極限粘度は30、嵩密度は0.30g/cm3であった。結果は、表1に記載する。
[実施例2]
水添触媒のフィード量を重合反応器内濃度で0.3μmol/Lとした以外は、実施例1と同様に行った。結果は、表1に記載する。
[実施例3]
水添触媒のフィード量を重合反応器内濃度で1.5μmol/Lとした以外は、実施例1と同様に行った。結果は、表1に記載する。
[実施例4]
α−オレフィンとして、1−ブテンを、系内のエチレンに対する濃度(α−オレフィン/エチレン+α−オレフィン)として0.05mol%フィードした以外は、実施例1と同様に行った。結果は、表1に記載する。
[比較例1]
実施例1と同様の重合反応器を使用した。重合温度はジャケット冷却により50℃に保った。ヘキサンは60L/Hrで重合器に供給した。固体触媒成分[A]を1g/hと、助触媒成分としてトリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライド(9:1)の混合物0.7mol/Lを10mmol/Hrの速度で固体触媒成分[A]とは別の導入ラインにより添加した。エチレンは重合器の底部より供給して重合圧力を1.0MPaに保った。ポリエチレンの製造速度は10kg/Hrであった。比較例1のポリエチレンパウダーPE7を得た。得られたポリエチレンパウダーの物性を表1に示す。
[比較例2]
重合温度を75℃、重合圧力を0.35MPaとした以外は、比較例1と同様に行った。結果は、表1に示す。
[比較例3]
重合温度を65℃、重合圧力を0.35MPaとした以外は、比較例1と同様に行った。結果は、表1に示す。
[比較例4]
固体触媒[B]に水素と水添触媒[F]を添加しない以外、実施例1と同様に行った。短時間に重合器内にスケールが急増し反応器からの抜取ラインを詰め連続運転できなかった。結果は、表1に示す。
本発明の超高分子量ポリエチレン系重合体パウダーは、高生産性での連続製造が可能で、微多孔膜や高強度繊維などの強度が高く、成型加工機の錆を発生させることなく、長期連続安定生産が可能であることから、リチウムイオン二次電池用微多孔膜やロープ、ネット、防弾衣料、防護衣料、防護手袋、繊維補強コンクリート製品、ヘルメット等に使用される高強度繊維用途等の広い用途において、産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. エチレン単独重合体(A)、又はエチレン系共重合体(B)の超高分子量ポリエチレンパウダーであって、
    前記エチレン系共重合体(B)が、
    a)エチレン単位99.00〜99.90モル%と、
    b)炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2=CHR(但し、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであるコモノマー単位0.01〜1.00モル%と
    を含む共重合体であり、
    下記1)〜2)を満たす、超高分子量ポリエチレンパウダー。
    1)極限粘度(IV)が7以上である;
    2)110℃でのアニールした前後のΔH2の差が3J/g以下である;
  2. ポリマーの嵩密度が、0.25kg/m3以上、0.40kg/m2以下である、請求項1に記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
  3. ポリマーのΔTm(Tm1−Tm2)が11℃未満である、請求項1又は2に記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
  4. ポリマーのWAXS(広角X線回折装置)による結晶化度と、SAXSによる結晶長周期から求められるラメラ厚みが10nm以上、30nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
  5. ポリマー中に含まれる塩素含有量が5ppm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の超高分子量ポリエチレンパウダー。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の超高分子量ポリエチレンパウダーから得られる、成型品及び高強度繊維及びリチウムイオン電池セパレーター。
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