JP7338243B2 - 静電潜像形成用トナー - Google Patents
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Description
前記離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、かつ前記エステルワックスが、総炭素数が45以上71以下のエステルワックスであり、
前記静電潜像現像用トナーの示差走査熱量測定による降温時の発熱ピークトップ温度が、60℃以上85℃以下の範囲であることを特徴とする静電潜像現像用トナーである。
本発明の静電潜像現像用トナーは、結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含有する。
降温時の発熱ピークトップ温度rcの定義について、図1~3を用いて説明する。図1は、曲線1がDSCによる降温時の発熱曲線であり、曲線2が前記曲線1の微分曲線である(以下、曲線2のことを「微分曲線2」ともいう。)。本発明においては、曲線1において発熱ピークの始点及び終点を、微分曲線2の傾きの変化の始点/終点で定義する。
具体的には、試料5mgをアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置DiamondDSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、昇温、降温、昇温の順に温度を変動させる。1回目と2回目の昇温時には、10℃/minの昇温速度で0℃から100℃まで昇温させて100℃を1分間保持する。降温時には、10℃/minの降温速度で100℃から0℃まで降温させて0℃の温度を1分間保持する。降温時に得られる吸熱曲線における発熱ピークトップの温度を発熱ピークトップ温度rcとする。また、降温時に得られる吸熱曲線のベースラインと発熱ピークトップ温度rcの垂線の1/2の高さでの発熱ピークの幅を半値幅として測定する。本発明の静電潜像現像用トナーのDSCによる降温時の発熱ピークトップ温度rcは、60~85℃の範囲内であり、好ましくは65~80℃の範囲内である。発熱ピークトップ温度rcが60℃未満であると、離型剤のローラー等の部材への付着性が過度に高まり、定着画像が部材接触前に結晶化を進行できないため、定着性能(低温定着性および定着分離性等)を維持しつつ、ワックス付着性の改善を図ることができず、発明の課題を解決できない。また、発熱ピークトップ温度rcが85℃より大きいと、定着性能(低温定着性および定着分離性等)が低下する。
本発明の一形態において、結着樹脂が、非晶性樹脂を含有する。また、本発明の一形態において、結着樹脂は、結晶性樹脂を含有する。
本発明の一形態において、結着樹脂が、非晶性樹脂を含有する。非晶性樹脂の他の例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂及びスチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂などの非晶性ポリエステル樹脂が含まれる。中でも、熱可塑性を制御しやすい観点から、ビニル樹脂であることが好ましい。
前記ビニル樹脂は、例えばビニル化合物の重合体であり、その例には、アクリル酸エステル樹脂、スチレン・アクリル酸エステル樹脂及びエチレン-酢酸ビニル樹脂が含まれる。中でも、熱定着時の可塑性の観点から、スチレン・アクリル酸エステル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)が好ましい。結着樹脂が少なくともスチレン・アクリル樹脂を含有することにより、定着時の離型剤の過剰な染み出しを抑制し、ワックス付着を抑制することができる。
結着樹脂は、少なくともスチレン・アクリル樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂であることにより、定着時の離型剤の過剰な染み出しを抑制し、ワックス付着を抑制することができる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH(Ra)=CHCOORb(Raは水素原子又はメチル基を表し、Rbは炭素数1~24のアルキル基を表す)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、これらのエステルの構造中に公知の側鎖や官能基を有するアクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体を含む。
スチレン単量体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン及びp-n-ドデシルスチレンが含まれる。
前記スチレン・アクリル樹脂の可塑性を制御する観点から、スチレン・アクリル樹脂におけるスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、前記スチレン・アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、10~60質量%の範囲内であると好ましい。
スチレン・アクリル樹脂は、前記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位を更に含有していてもよい。他の単量体は、多価アルコール由来のヒドロキシ基(-OH)又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基(-COOH)とエステル結合する化合物であることが好ましい。すなわち、スチレン・アクリル樹脂は、前記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物(両性化合物)が更に重合してなる重合体であることが好ましい。
両性化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどのカルボキシ基を有する化合物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する化合物が含まれる。
前記スチレン・アクリル樹脂における前記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
前記スチレン・アクリル樹脂は、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法によって合成することができる。油溶性の重合開始剤の例には、アゾ系又はジアゾ系重合開始剤及び過酸化物系重合開始剤が含まれる。
前記アゾ系又はジアゾ系重合開始剤の例には、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスイソブチロニトリルが含まれる。
過酸化物系重合開始剤の例には、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン及びトリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンが含まれる。
また、乳化重合法でスチレン・アクリル樹脂の樹脂粒子を合成する場合には、重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸とその塩及び過酸化水素が含まれる。
非晶性樹脂は、その可塑性を制御しやすいという観点から、その重量平均分子量(Mw)が、5000~150000の範囲内であると好ましく、10000~70000の範囲内であるとより好ましい。
本発明に係る結晶性樹脂とは、結晶性樹脂又はトナー粒子のDSCにおいて、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、DSCにおいて、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークを意味する。結晶性ポリエステル樹脂とは、このような結晶性樹脂のうち、ポリエステル樹脂であるものをいう。
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、十分な低温定着性と高温保存性とを得る観点から、50~90℃の範囲内にあることが好ましく、60~80℃の範囲内にあることがより好ましい。
結着樹脂の融点は、DSCにより測定することができる。具体的には、試料5mgをアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置DiamondDSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、昇温、降温、昇温の順に温度を変動させる。1回目と2回目の昇温時には、10℃/minの昇温速度で0℃から100℃まで昇温させて100℃を1分間保持する。降温時には、10℃/minの降温速度で100℃から0℃まで降温させて0℃の温度を1分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点(Tm)として測定する。
また、前記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が5000~50000の範囲内にあり、数平均分子量(Mn)が2000~10000の範囲内にあることは、低温定着性及び最終画像における安定した光沢の発現の観点から好ましい。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布から求めることができる。
トナー母体粒子における結晶性樹脂の含有量は、5~20質量%の範囲内であることが、良好な低温定着性と高温高湿環境下での転写性とを両立する観点から好ましい。前記含
有量が5質量%以上であれば、形成されるトナー画像の低温定着性が十分となる。また、前記含有量が20質量%以下であれば、転写性が十分となる。
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。
多価カルボン酸の例には、ジカルボン酸が含まれる。このジカルボン酸は、1種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を更に含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖型であることが、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル及びこれらの酸無水物が含まれる。中でも、本発明の所期の効果を効率的に奏させる観点から、炭素数6~16の範囲内の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、更に炭素数10~14の範囲内の脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸が含まれる。中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸又はt-ブチルイソフタル酸が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂における前記ジカルボン酸由来の構成単位に対する脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保する観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
前記多価アルコール成分の例には、ジオールが含まれる。ジオールは、1種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジオールであることが好ましく、それ以外のジオールを更に含んでいてもよい。脂肪族ジオールは、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、直鎖型であることが好ましい。
前記脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,20-エイコサンジオールが含まれる。中でも、低温定着性及び転写性の両
立との効果が得られやすい観点から、炭素数2~120の範囲内の脂肪族ジオールが好ましく、更に炭素数4~6の範囲内の脂肪族ジオールがより好ましい。
その他のジオールの例には、二重結合を有するジオール及びスルホン酸基を有するジオールが含まれる。具体的には、二重結合を有するジオールの例には、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール及び4-オクテン-1,8-ジオールが含まれる。
結晶性ポリエステル樹脂におけるジオール由来の構成単位に対する脂肪族ジオール由来の構成単位の含有量は、トナーの低温定着性及び最終的に形成される画像の光沢性を高める観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂のモノマーにおける前記ジオールと前記ジカルボン酸との割合は、ジオールのヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]で2.0/1.0~1.0/2.0の範囲内であることが好ましく、1.5/1.0~1.0/1.5の範囲内であることがより好ましく、1.3/1.0~1.0/1.3の範囲内であることが特に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、前記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより合成することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の合成に使用可能な触媒は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物が含まれる。
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、0.5~10時間の範囲内であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(以下、単に「ハイブリッド樹脂」ともいう。)を含有していてもよい。ハイブリッド結晶性樹脂を含有させることにより、併用する非晶性樹脂との親和性が向上するため、トナーの低温定着性が向上する。また、結晶性樹脂のトナー中での分散性が向上するため、ブリードアウトを抑制することができる。
ハイブリッド樹脂の好ましい重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性及び優れた長期保管安定性を確実に両立し得るという観点から、5000~100000の範囲内であると好ましく、7000~50000の範囲内であるとより好ましく、8000~20000の範囲内であると特に好ましい。ハイブリッド樹脂のMwを100000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド樹脂のMwを5000以上とすることにより、トナー保管時において当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、例えば、結晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂であってもよいし、結晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂であってもよい。当該結晶性ポリエステル重合セグメントは、前述した多価カルボン酸及び多価アルコールから、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同様に合成され得る。
ハイブリッド樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与する観点から、80~98質量%の範囲内であることが好ましく、90~95質量%の範囲内であるとより好ましく、91~93質量%の範囲内であることが更に好ましい。なお、ハイブリッド樹脂中(又はトナー中)の各重合セグメントの構成成分及びその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)やメチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、モノマーに不飽和結合を有するモノマーを更に含むことが、非晶性重合セグメントとの化学的な結合部位を当該セグメント中に導入する観点から好ましい。不飽和結合を有するモノマーは、例えば二重結合を有する多価アルコールであり、その例には、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸などの二重結合を有する多価カルボン酸;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール及び4-オクテン-1,8-ジオールが含まれる。前記結晶性ポリエステル重合セグメントにおける前記不飽和結合を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は、0.5~20質量%の範囲内であることが
好ましい。
ハイブリッド樹脂には、更にスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの官能基が導入されていてもよい。前記官能基の導入は、前記結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、前記非晶性重合セグメント中であってもよい。
非晶性重合セグメントは、結着樹脂を構成する非晶性樹脂とハイブリッド樹脂との親和性を高める。それにより、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、トナーの帯電均一性がより一層向上する。ハイブリッド樹脂中(又はトナー中)の非晶性重合セグメントの構成成分及びその含有量は、例えばNMRやメチル化反応Py-GC/MSなどの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
非晶性重合セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂と同種の樹脂で構成されることが、結着樹脂との親和性を高め、トナーの帯電均一性を高める観点から好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合を有する樹脂同士のことを意味する。
非晶性重合セグメントにおけるスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、40~90質量%の範囲内であることが、ハイブリッド樹脂の可塑性を制御することが容易となる観点から好ましい。また、同様の観点から、非晶性重合セグメントにおける(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。
さらに、非晶性重合セグメントは、前述した両性化合物をモノマーに更に含有することが、前記結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位を前記非晶性重合セグメントに導入する観点から好ましい。非晶性重合セグメントにおける前記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
前記ハイブリッド樹脂における前記非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与する観点から、3~15質量%の範囲内であることが好ましく、5~10質量%の範囲内であることがより好ましく、7~9質量%の範囲内であることが更に好ましい。
ハイブリッド樹脂は、例えば、以下に示す第1から第3の製造方法によって製造することができる。
第1の製造方法は、あらかじめ合成された非晶性重合セグメントの存在下で結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。
第2の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法である。
第3の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。
を簡素化できるため好ましい。第1の製造方法は、非晶性重合セグメントをあらかじめ形成してから結晶性ポリエステル重合セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が均一になりやすい。
本実施形態の静電潜像現像用トナーは、離型剤を含有する。本実施形態の離型剤は、少なくともエステルワックスを含有し、かつ前記エステルワックスは、総炭素数が45以上71以下のエステルワックスである。エステルワックスの総炭素数が上記範囲であれば、低温定着性および定着分離性を満足しつつ、かつワックス付着性を改善することができる。エステルワックスの総炭素数が72以上の場合はワックスの溶融粘度が高くなること、かつ結着樹脂との絡み合いによりトナーの溶融性が低下し、(低温)定着性が悪化する。またワックスの溶融粘度が高くなり、トナーからの染み出しが遅くなることで定着分離性が悪化する。一方で、総炭素数が44以下の場合は、ワックスの結晶化温度が低くなり、また結着樹脂とワックスとの絡み合いによる結晶化が進行しにくいことからトナーの結晶化温度が高くならないため、ワックス付着性が悪化する。かかる観点から、前記エステルワックスは、総炭素数が45以上60以下のエステルワックスが好ましく、総炭素数が45以上55以下のエステルワックスがより好ましい。上記好適な範囲であれば、上記した発明の効果をより高めることができるためである。
炭化水素系ワックスとしては、その種類には特に制限はなく、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス(例えば、フィッシャー・トロプシュワックス)、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;及びジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス;が含まれる。好ましくは、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。
測定装置:FTNMR装置Lambda400(日本電子社製)
測定周波数:100.5MHz
パルス条件:4.0μs
データポイント:32768
遅延時間:1.8sec
周波数範囲:27100Hz
積算回数:20000回
測定温度:80℃
溶媒:ベンゼン-d6/o-ジクロロベンゼン-d4=1/4(v/v)
試料濃度:3質量%
試料管:径5mm
測定モード:1H完全デカップリング法。
トナー母体粒子中、離型剤の含有率は、定着分離性確保などの観点から、3質量%以上15質量%以下の範囲であることが好ましく、5質量%以上12質量%以下の範囲であることがより好ましく、7質量%以上10質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のトナー母体粒子が含有する着色剤としては、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。着色剤としてはカーボンブラック、磁性粉のほか、各種有機、無機の顔料、染料等が使用できる。特に、有彩色顔料を用いることが好ましく、無機の顔料としては、フタロシアニン系顔料を用いることが好ましい。着色剤の添加量はトナー粒子に対して1~30質量%、好ましくは2~20質量%の範囲とされる。
トナー粒子中における着色剤の分散径は、トナー断面における着色剤分散粒子の水平方向フェレ径の数平均値として算出することができる。
トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤、外添剤等を含有することができる。
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩等の公知の化合物を用いることができる。荷電制御剤により、帯電性に優れたトナーを得ることができる。
トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するため、流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤で処理されていてもよい。
アリン酸化合物微粒子、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛等の無機チタン酸化合物微粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<コア・シェル構造>
トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、当該トナー粒子をコア粒子として当該コア粒子とその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造のトナー粒子であってもよい。シェル層は、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:TransmissionElectronMicroscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:ScanningProbeMicroscope)等の公知の観察手段によって、確認することができる。
トナー粒子の粒径としては、体積基準のメジアン径(d50)が3~10μmの範囲内にあることが好ましく、5~8μmの範囲内にあることがより好ましい。前記範囲内にあれば、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像であっても高い再現性が得られる。なお、トナー粒子の粒径は、製造時に使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。トナー粒子の体積基準のメジアン径(d50)の測定には、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフトSoftwareV3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いることができる。具体的には、測定試料(トナー)を、界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、超音波分散を行い、トナー粒子分散液を調製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmとし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(d50)として得る。
トナー粒子は、帯電性の安定性及び低温定着性を高める観点から、平均円形度が0.930~1.000の範囲内にあることが好ましく、0.950~0.995の範囲内にあることがより好ましい。平均円形度が前記範囲内にあれば、個々のトナー粒子が破砕しにくくなる。これにより、摩擦帯電付与部材の汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができるとともに、形成される画像の画質を高めることができる。トナー粒子の平均円形度は、FPIA-2100(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
本発明の静電潜像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
本発明に係るトナーの製造方法は、水系媒体中において着色剤分散液と結着樹脂分散液を凝集、融着する工程を有し、かつ前記着色剤分散液の分散径が、130~160nmの範囲内に調整すれば特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、乳化重合凝集法や乳化凝集法を好適に採用できる。
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)乳化重合により、結着樹脂微粒子の分散液を調製する工程
(4)着色剤の微粒子の分散液と、結着樹脂微粒子の分散液とを混合して、着色剤の微粒子と結着樹脂微粒子とを凝集、会合、融着させてトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程、である。
(2)得られた混合物を押出混練機などにより加熱しながら混練する工程
(3)得られた混練物をハンマーミルなどにより粗粉砕処理した後、更にターボミル粉砕機などにより粉砕処理を行う工程
(4)得られた粉砕物を、例えばコアンダ効果を利用した気流分級機を用いて微粉分級処理しトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程、である。
試料5mgをアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させた。1回目と2回目の加熱時には、10℃/minの昇温速度で0℃から100℃まで昇温して100℃を1分間保持し、冷却時には、10℃/minの降温速度で100℃から0℃まで降温して0℃の温度を1分間保持した。冷却時に得られる吸熱曲線における発熱ピークトップの温度を発熱ピークトップ温度rc、および冷却時に得られる吸熱曲線のベースラインと発熱ピークトップ温度rcの垂線の1/2の高さでの発熱ピークの幅を半値幅として測定した。
[非晶性樹脂微粒子分散液(非晶性分散液)X1の調製]
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該反応容器の内温を80℃に昇温させた。昇温後、得られた混合液に過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液を添加し、得られた混合液の温度を再度80℃とした。当該混合液に、下記組成からなる単量体混合液1を1時間かけて滴下後、80℃にて前記混合液を2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液a1を調製した。
スチレン 480質量部
n-ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部。
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、当該溶液を80℃に加熱後、80質量部の樹脂微粒子の分散液a1(固形分換算)と、下記組成からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた単量体混合液2とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック株式会社製、「CLEARMIX」は同社の登録商標)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。下記エステルワックス1は、離型剤であり、下記表1に示す構成であり、その融点は85℃である。
スチレン 285質量部
n-ブチルアクリレート 95質量部
メタクリル酸 20質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
エステルワックス1 190質量部。
さらに、樹脂微粒子の分散液a2にイオン交換水400質量部を添加し、十分に混合した後、得られた分散液に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなる単量体混合液3を1時間かけて滴下した。滴下終了後、前記分散液を2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)からなる非晶性樹脂微粒子分散液(以下、「非晶性分散液」ともいう。)X1を調製した。
スチレン 307質量部
n-ブチルアクリレート 147質量部
メタクリル酸 52質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部。
第2段重合におけるエステルワックス1を表1および表2に示す離型剤(ワックス)に変更した以外は非晶性分散液X1の調製と同様にして、非晶性樹脂微粒子分散液(非晶性分散液)X2~X10のそれぞれを得た。非晶性分散液X1~X10の離型剤の種類とその配合比を表3に示す。
セバシン酸281質量部及び1,10-デカンジオール283質量部を、撹拌器、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れた。反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、Ti(OBu)4を0.1質量部添加し、得られた混合液を窒素ガス気流下、約180℃で8時間撹拌し、反応を行った。さらに、当該混合液にTi(OBu)4を0.2質量部添加し、当該混合液の温度を約220℃に上げ6時間、当該混合液を撹拌し、反応を行った。その後、反応容器内の圧力を1333.2Paまで減圧し、減圧下で反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂P1を得た。結晶性ポリエステル樹脂P1の数平均分子量(Mn)は5500であり、重量平均分子量(Mw)は18000であり、融点(Tm)は70℃であった。
結晶性ポリエステル樹脂P1を30質量部溶融させた状態で、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)へ毎分100質量部の移送速度で移送した。同時に、濃度0.37質量%の希アンモニア水を熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で前記乳化分散機へ移送した。前記希アンモニア水は、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈して調製した。そして、前記乳化分散機を、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm2(490kPa)の条件で運転することにより、固形分量が30質量部である結晶性ポリエステル樹脂P1の結晶性樹脂微粒子分散液(結晶性分散液)Y1を調製した。結晶性分散液Y1に含まれる結晶性ポリエステル樹脂P1の粒子の体積基準のメジアン径(d50)は200nmであった。
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、420質量部のC.I.ピグメントブルー18:3を徐々に添加した。
両性化合物(アクリル酸)を含む下記組成からなる、単量体混合液6を滴下ロートに入れた。なお、ジ-t-ブチルパーオキサイドは、重合開始剤である。
スチレン 80質量部
n-ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
ジ-t-ブチルパーオキサイド 16質量部。
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部。
100質量部のシェル用非晶性樹脂s1を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合した。得られた混合液を、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(株式会社日本精機製作所製)によって、V-LEVELが300μAの条件で30分間超音波分散した。その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を用いて前記混合液を減圧下で3時間撹拌して酢酸エチルを完全に除去した。こうして、固形分量が13.5質量%のシェル用非晶性樹脂微粒子分散液(シェル用分散液)S1を調製した。シェル用分散液S1におけるシェル用樹脂粒子の体積基準のメジアン径(d50)は160nmであった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、288質量部の非晶性分散液X1(固形分換算)及び2000質量部のイオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を更に添加して当該反応容器中の分散液のpHを10(測定温度25℃)に調整した。前記分散液に、30質量部の着色剤分散液C1(固形分換算)を投入した。次いで、凝集剤として塩化マグネシウム30質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて前記分散液に添加した。得られた混合液を80℃まで昇温し、40質量部の結晶性分散液Y1(固形分換算)を10分間かけて前記混合液に添加して凝集を進行させた。「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて前記混合液中で会合した粒子の粒径を測定し、当該粒子の体積基準のメジアン径d50が6.0μmになった時点で、37質量部のシェル用分散液S1(固形分換算)を前記混合液に30分間かけて投入した。得られた反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を前記反応液に添加して粒子成長を停止させた。さらに、前記反応液を80℃に加熱し撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、前記反応液中の粒子を測定装置「FPIA-2100」(シスメックス株式会社製)を用いて(HPF検出数を4000個)測定し、当該粒子の平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/分の冷却速度で前記反応液を30℃に冷却した。次いで、冷却した前記反応液から前記粒子を分離、脱水し、得られたケーキを、イオン交換水への再分散と固液分離とを3回繰り返して洗浄し、その後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子B1を得た。
非晶性分散液X1を、表3に示す非晶性分散液X2~X10に変更すること以外はトナー1及びこれを用いた現像剤1の製造と同様にして、トナー2~12のそれぞれを製造し、更には、現像剤2~12を製造した(ただし、トナー9、11は結晶性ポリエステルは含有せず)。
(1)ワックス付着性
トナー1~12のワックス付着性について、それぞれ、現像剤1~12を用いて評価した。具体的には下記のとおりである。画像形成装置として、市販のカラー複合機bizhub PRESS C1100(コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)において、定着装置を、定着上ベルトの表面温度を140~220℃の範囲で、定着下ローラーの表面温度を120~200℃の範囲で変更することができるように改造した。この改造機に各現像剤を順次装填して、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)環境下において、ラフ紙Hammermill tidal(Hammermill社製)に、トナー付着量が8.0g/m2のベタ画像を形成し、定着処理した。定着処理時の定着速度は460mm/sec、定着温度(定着上ベルトの表面温度)はアンダーオフセット温度+15℃とした。
ランク10:ワックス付着が全く確認されない
ランク9::ワックス付着が殆ど全く確認されない
ランク8:ワックス付着が極々僅かに確認されるが、品質には全く問題ない
ランク7:ワックス付着が若干確認されるが、品質には殆ど全く問題ない
ランク6:ワックス付着が確認され、実用できない
ランク5:ワックス付着がやや多く確認され、実用できない
ランク4:ワックス付着が少し多く確認され、実用できない
ランク3:ワックス付着が多く確認され、実用できない
ランク1:ワックス付着がとても多く確認され、実用できない
ランク1:ワックス付着が非常に多く確認され、実用できない。
◎:ランク10~9:ワックス付着が全く確認されない
○:ランク8~7:ワックス付着が若干確認されるが、品質には問題ないレベル
×:ランク6~1:ワックス付着が確認され、実用できないレベル。
トナー1~12の低温定着性について、それぞれ、現像剤1~12を用いて評価した。具体的には下記のとおりである。画像形成装置として、複写機「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)の改造機に試料となる現像剤1~9を装填した。当該改造機は、定着用ヒートローラーの表面温度を85~210℃の範囲で変更することができるように、前記複写機の定着装置を改造した装置である。そして、A4サイズの普通紙(坪量80g/m2)上に試料となるトナーの付着量11mg/10cm2のベタ画像を定着させる定着実験を所定の定着温度で繰り返し行った。当該定着温度は、85℃から130℃までの5℃刻みの温度に設定した。次いで、各定着温度の定着実験において得られたプリント物を、折り機で前記ベタ画像に対して谷折りとなるように(前記ベタ画像を表側にして)折り、これに0.35MPaの圧縮空気を吹き付け、折り目を下記の基準1に示す5段階にランク付けした。
ランク5:全く剥離なし
ランク4:一部折れ目に従った剥離あり
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり
ランク1:大きな剥離あり。
◎:最低定着温度が115℃以下
○:最低定着温度が115℃を超え130℃以下
×:最低定着温度が130℃を超える。
≪薄紙分離性(分離可能な先端余白量)≫
トナー1~12の定着分離性について、それぞれ、現像剤1~12を用いて評価した。具体的には下記のとおりである。画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)を、定着上ベルトおよび定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、上記現像剤を順次装填した。上記装置について、定着温度、トナー付着量、システム速度を自由に設定できるように改造した。評価紙としてOKトップコート+85g/m2(王子製紙株式会社製)を用いた。アンダーオフセットが発生しない温度(U.O.回避温度)を基準として25℃上昇させた温度(U.O.回避温度+25℃)を定着上ベルトの温度とし、定着下ローラーを90℃に設定し、それぞれの全ベタ画像(付着量8.0g/m2)について先端余白量を変化させて画出し、紙詰まり(ジャム)が発生した直前の先端余白量を薄紙分離性能の尺度とした。分離可能な先端余白量の値が小さい方が、分離性能が良い。なお、評価は、常温常湿環境(NN環境:25℃、50%RH)で実施した。また、分離可能な先端余白は、小さければ小さいほど、薄紙分離性に優れることを意味しており、当該先端余白が10mm未満(◎、○、△)であるとき、合格と判定する。
◎:分離可能な先端余白が2mm未満;
〇:分離可能な先端余白が2mm以上、5mm未満;
△:分離可能な先端余白が5mm以上、10mm未満;
×:分離可能な先端余白が10mm以上。
Claims (7)
- 少なくとも結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含有するトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、少なくともスチレン・アクリル樹脂および結晶性樹脂を含有し、前記トナー母体粒子における前記結晶性樹脂の含有量は、5~20質量%の範囲内であり、
前記離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、
前記エステルワックスは、式:R1-OO-R2で表され、ここで、R1は脂肪酸由来のアルキル基(エステル基炭素含む)であり、R2は脂肪族アルコール由来のアルキル基であり、下記(i)~(iii)のいずれかを満たすエステルワックスであり、
(i)R1の炭素数(エステル基炭素含む)は22~25であり、R2の炭素数は22~25であり、前記エステルワックスの総炭素数が46以上50以下である;
(ii)R1の炭素数(エステル基炭素含む)は28であり、R2の炭素数は28である;
(iii)R1の炭素数(エステル基炭素含む)は31であり、R2の炭素数は30である;
前記静電潜像現像用トナーの示差走査熱量測定による降温時の発熱ピークトップ温度が、60℃以上85℃以下の範囲であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。 - 前記エステルワックスは、前記式中、R1の炭素数(エステル基炭素含む)が22~25であり、R2の炭素数が22~25であり、前記エステルワックスの総炭素数が46以上50以下であるエステルワックスである、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記エステルワックスは、前記式中、R1の炭素数(エステル基炭素含む)が23~25であり、R2の炭素数が23~25であるエステルワックスである、請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記エステルワックスの融点が、75℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記発熱ピークの半値幅が、7℃以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記離型剤が、少なくともエステルワックス以外のワックスを離型剤全量に対して0質量%超から90質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
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