JP2018131544A - ポリエステルラテックス分散液の製造方法 - Google Patents

ポリエステルラテックス分散液の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018131544A
JP2018131544A JP2017026433A JP2017026433A JP2018131544A JP 2018131544 A JP2018131544 A JP 2018131544A JP 2017026433 A JP2017026433 A JP 2017026433A JP 2017026433 A JP2017026433 A JP 2017026433A JP 2018131544 A JP2018131544 A JP 2018131544A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
polyester resin
acid
dispersion
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017026433A
Other languages
English (en)
Inventor
紘司 伊沢
Koji Izawa
紘司 伊沢
萱森 隆成
Takanari Kayamori
隆成 萱森
直哉 舎川
Naoya Shakawa
直哉 舎川
政治 松原
Seiji Matsubara
政治 松原
淳 飯岡
Atsushi Iioka
淳 飯岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Priority to JP2017026433A priority Critical patent/JP2018131544A/ja
Publication of JP2018131544A publication Critical patent/JP2018131544A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Developing Agents For Electrophotography (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)

Abstract

【課題】ポリエステル樹脂の粒径バラつきが少ないポリエステルラテックス分散液の製造方法の提供。【解決手段】下記の工程を含む転相乳化法を用いるポリエテルラテックス分散液の製造方法。工程1:ポリエステル樹脂と有機溶剤とを混合し溶解液13を作製する工程、工程2:工程1で得られた溶解液13に液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)14を混合する工程、工程3:工程2で得られた溶液15の状態を確認し、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)16の添加量を決めて少なくとも一回は中和剤(2)16を投入混合する工程、工程4:工程3で得られた溶液17に純水18を連続的に添加し樹脂粒子を形成し、樹脂粒子分散液19を得る工程、工程5:工程4で得られた樹脂粒子分散液19から有機溶剤12を脱溶する工程【選択図】図1

Description

本発明は、ポリエステルラテックス分散液の製造方法及び得られた分散液を用いたトナーの製造方法に関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置において、プリントスピードの高速化や、環境負荷低減等を目的とした一層の省エネルギー化を図るために、より低い温度で熱定着される静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)が求められている。このようなトナーとしては、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げることが必要であり、ポリエステル樹脂等のシャープメルトな材料を可塑剤(定着助剤)として添加することで、低温定着性を向上させたトナーが提案されている。
例えば、特許文献1では、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルと塩化ビニル系樹脂を特定の割合で混合して用いることにより、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルの相溶量を調整することで更なる低温定着性を達成している。
特開2014−119554号公報
上記したようなポリエステル樹脂を用いるトナーにおいては、トナー粒子内における各樹脂粒子の配置、ひいてはトナー構造が重要となる。しかしながら、特許文献1では、ポリエステル樹脂粒子の分散液を作製するうえで、工程のバラつきや樹脂物性のバラつきによって分散液中のポリエステル樹脂粒子の大きさが変動し(粒径バラつきが生じ)、当該分散液を用いてトナーを作製した場合、トナー構造・物性(低温定着性や耐熱性)がバラつくという問題があった。詳しくは、特許文献1のポリエステル樹脂粒子の分散液の作製においては、転相乳化法が用いられている。かかる転相乳化法では、下記の流れでポリエステル樹脂粒子を含むラテックス分散液を形成している。
1.ポリエステル樹脂が有機溶媒に溶解した油相に水滴が分散している状態(W/O)を形成する。
2.それに対して中和剤を添加し、ポリエステル末端基(COOH基)を解離させることで油相と水相との界面張力を下げ、油相と水相とが混合した状態(共相)を形成する。
3.その上で水を連続滴下すると、ポリエステル末端基は解離し自己乳化性が付与されているため水相に樹脂粒子が分散した状態(O/W)を形成する。その際、ポリエステルの解離している末端基の量に応じて樹脂粒子の静電的な安定性が決まり、粒径が決まる。
4.得られた分散液を脱溶し、ポリエステル樹脂粒子が分散したラテックス分散液を形成する。
以上から、共相を形成するときの中和剤量が最終的な粒径を決定付けるが、生産現場では常に工程のバラつき(系内に含まれる水や樹脂や溶剤量のバラつきなど)があるため、中和剤量が同じでも同じ共相状態が形成されるとは限らず粒径がバラつくという課題(問題点)があることを見出した。また、既存(特許文献1の段落「0047」参照)の転相乳化法のように中和剤の投入回数が一回だけでは、共相状態の形成に偏りができ易いという課題(問題点)があることを見出した。
上記した課題(問題点)に対する対応策として原材料のバラつきや工程のバラつきの管理を厳しくするという方法も考えられるが、コスト増が見込まれてしまうため、管理コストの増加を抑えつつポリエステル樹脂粒子の粒径バラつきを抑えることが望ましいとの考えに至ったものである。
そこで、本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、工程にバラつきがあっても、ポリエステル樹脂の粒径バラつきを抑えられるポリエステルラテックス分散液の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく行った検討過程において、ポリエステル(PES)の転相乳化において、PES溶解液に中和剤を1回添加して系内の状態を検知し、更に中和剤を1回以上追添加することで、生産上の工程バラつき(具体的には、有機溶媒中に含まれる水の量や、ポリエステル樹脂のロット変動による酸価のバラつきなど)があってもPES樹脂粒子の粒径を安定化することができることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.下記の工程を含む転相乳化法を用いるポリエステルラテックス分散液の製造方法:
工程1:ポリエステル樹脂と有機溶剤とを混合し溶解液を作製する工程、
工程2:工程1で得られた溶解液に液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)を混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液の状態を確認し、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)の添加量を決めて少なくとも一回は前記中和剤(2)を投入混合する工程、
工程4:工程3で得られた溶液に純水を連続的に添加し樹脂粒子を形成し、樹脂粒子分散液を得る工程、及び
工程5:工程4で得られた前記樹脂粒子分散液から有機溶剤を脱溶する工程。
2.前記工程5において有機溶媒を脱溶する前に、当該脱溶前の溶液中の中和度が3〜25%となる量の中和剤(3)を投入することを特徴とする上記1に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
3.前記工程2および3で使用される中和剤がpH11以上の強アルカリ性の化合物であることを特徴とする上記1または2に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
4.前記工程3で得られた溶液中の中和度が25〜100%であることを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
5.前記工程2および3で混合する前記中和剤(1)および(2)の総量に対し、前記中和剤(1)の割合が55〜95質量%であることを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
6.上記1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によりポリエステルラテックス分散液を製造し、得られたポリエステルラテックス分散液を含むトナー形成用溶液を用い、少なくとも当該ラテックス分散液中に含まれる樹脂粒子を、凝集、融着させることを含むことを特徴とするトナーの製造方法。
本発明により、中和剤の1回目の投入で系内の様子を見て、2回目以降の中和剤の量を決めることで、工程バラつきがあってもポリエステル樹脂粒子の粒径バラつきが抑えられるポリエステルラテックス分散液の製造方法が提供される。
本発明のポリエステルラテックス分散液の製造方法の工程概略図である。
本発明のポリエステルラテックス分散液の製造方法は、下記の工程を含む転相乳化法を用いることを特徴とする;
工程1:ポリエステル樹脂と有機溶剤とを混合し溶解液を作製する工程、
工程2:工程1で得られた溶解液に液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)を混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液の状態を確認し、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)の添加量を決めて少なくとも一回は前記中和剤(2)を投入混合する工程、
工程4:工程3で得られた溶液に純水を連続的に添加し樹脂粒子を形成し、樹脂粒子分散液を得る工程、及び
工程5:工程4で得られた前記樹脂粒子分散液から有機溶剤を脱溶する工程である。
かかる構成を有することにより、上記発明の効果を有効に発現することができるものである。すなわち、ポリエステルの転相乳化において、ポリエステル(PES)溶解液に中和剤を1回添加して系内の状態(液粘度)を検知し、更に中和剤を1回以上追添加することで、生産上の工程バラつき(具体的には、有機溶媒中に含まれる水の量や、ポリエステル樹脂のロット変動による酸価のバラつきなど)があってもPES樹脂粒子の粒径を安定化することができる。その結果、粒径バラつきが少ないPES樹脂粒子が水中に分散したPESラテックス分散液が得られる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構は、以下の通りである。即ち、1回目の中和により共相(溶液)が形成されるが、系内のバラつきに応じて共相の物性が変化する。その物性に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整することで、(生産ロットごとに毎回同じ粒径を得るための)同じ共相状態を形成することができる。共相の物性(系内の様子)は液粘度や撹拌トルク等によって検知され、2回目以降の中和剤量を決定することができる。本発明では、測定感度が低い粘度は測定値差が読み取り易いことから液粘度を検知し、2回目以降の中和剤量を決定するものである。このように中和剤の1回目の投入で系内の様子(共相の物性)を見て、2回目以降の中和剤の量を決めることで工程バラつきがあっても粒径バラつきが少ない(生産ロットごとに毎回近しい粒径域の)PES樹脂粒子が水中に分散したPESラテックス分散液が得られる。更に、2回目以降の中和剤量を2度以上に分割して投入する(例えば、2回目以降の中和剤量を2回目と3回目とに分けて投入する)ことでより均一な共相形成がなされ、粒径の繰り返し再現性が高くなる。
1回目の中和による共相の物性(系内の様子)に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整する方法としては、具体的には、下記の操作を行う。
1.予めポリエステル樹脂の樹脂種ごとに酸価と中和度に応じた共相の粘度(液粘度)データを取っておく。
2.転相乳化に用いるポリエステル樹脂の酸価が不明な状態であっても、1回目の中和剤(固定量)を投入した時に、共相の粘度値からポリエステル樹脂の酸価が逆算できる計算式を作成しておく。
3.1回目の中和による系内の様子(共相の物性)を見るために、系内の粘度を計測しながら、目標粒径となるときの粘度値になるよう、2回目以降の中和剤量を決定し、追加で2回目以降の中和剤を添加する。
即ち、AV(酸価)がわかれば、目標粒径にするための中和度がわかるので(事前に中和度と粒径の関係をデータ化しておく必要あり)、それにより中和剤量を決定できる。また、各AV(酸価)における中和度と粘度の関係はデータ化されているので、二度目の中和剤投入後にどれくらいの粘度になるかは(データに基づき)想定できる、という手順になっている。
以下、本発明の構成要素(本発明に用いられる各成分及び工程等)、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[ポリエステルラテックス分散液の製造方法]
図1は、本発明のポリエステルラテックス分散液の製造方法の工程概略図である。図1に示すように、本発明のポリエステルラテックス分散液の製造方法においては、以下の工程1〜5を含む転相乳化法を用いる。
工程1では、図1に示すように、ポリエステル樹脂(PES粉体)11と有機溶剤(油相)12を混合しPES溶解液(油相)13を作製する(ステップ1)。
工程2では、工程1で得られたPES溶解液(油相)13に液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)14を混合する(ステップ2)。これにより中和液(共相)15を作製する。
工程3では、工程2で得られた溶液(中和液(共相)15)の状態を確認し、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)16の添加量を決めて少なくとも一回は投入混合する(ステップ3)。これにより中和液(共相)17を作製する。
工程4では、工程3で得られた溶液(中和液(共相)17)に純水18を連続的に添加し樹脂粒子を形成する(ステップ4)。これによりPES粒子分散液(水相)19を作製する(乳化完了)。
工程5では、工程4で得られた樹脂粒子分散液(PES粒子分散液(水相)19)から有機溶剤12を脱溶する(ステップ5)。これによりPES粒子分散液(水相)22を作製する(脱溶完了)。
なお、工程5において、有機溶媒12を脱溶する前に、当該脱溶前の溶液(PES粒子分散液(水相)19)中の中和度が3〜25%となる量の中和剤(3)20を投入してもよい。これによりPES粒子分散液(水相)21を作製する(乳化液の処理完了)。この場合、図1に示すように、工程4で得られた樹脂粒子分散液(PES粒子分散液(水相)19)に代えて、樹脂粒子分散液(PES粒子分散液(水相)21)から有機溶剤12を脱溶する。これによりPES粒子分散液(水相)22を作製してもよい。
≪工程1≫
工程1は、ポリエステル樹脂と有機溶剤を混合し溶解液を作製する工程(溶解液調製工程)である。本工程1では、図1に示すように、ポリエステル樹脂(PES粉体)11と有機溶剤(油相)12を混合し、溶解液(PES溶解液(油相)13)を得る。
<ポリエステル樹脂(PES粉体)11>
本工程に用いることのできるポリエステル樹脂としては、特に制限されるものではないが、好ましくはトナー母体粒子の結着樹脂として用いられているものが好ましく、非晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂等を用いることができる。
本工程で用いるポリエステル樹脂は、樹脂粒子分散液の乳化を容易にし、分散安定性を高める観点から、分子鎖末端に酸基を有することが好ましい。酸基としては、カルポキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられ、樹脂の分散安定性が得られる点、さらに得られる卜ナーの耐熱保存性を向上し得る点などから、カルポキシル基が好ましい。
酸基を有するポリエステル樹脂の含有量は、樹脂粒子分散液の乳化を容易にし、分散安定性を高めることができる点、更に得られた卜ナーのドット再現性、帯電安定性を向上させることができる点などから、ポリエステルラテックス分散液中の樹脂粒子を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは80質量部以上、より好ましくは90質量部以上、更に好ましくは95質量部以上、更に好ましくは100質量部である。酸基を有するポリエステル樹脂の原料モノマーは、特に限定されず、任意のアルコール成分と、任意のカルポン酸成分とを用いることができる。以下、これらの点を踏まえて、上記した各ポリエステル樹脂成分につき説明する。
[非晶性ポリエステル樹脂]
非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂であって、示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。このとき、ガラス転移温度(Tg)は30〜80℃であることが好ましく、特に40〜64℃であることが好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱量分析装置(DSC)により測定することができる。具体的には、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)等の市販の装置を用いて測定することができる。まず、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。そして、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得る。この測定によって得られたDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とする。また、非晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体は、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体とは異なるため、たとえば、NMR等の分析によって結晶性ポリエステル樹脂と区別することができる。さらに、上記ガラス転移温度は、当業者であれば、樹脂の組成によって制御することが可能である。
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられうる。
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸および多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸としては、不飽和脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、およびこれらの誘導体を用いると好ましい。非晶性の樹脂を形成することができるのであれば、飽和脂肪族多価カルボン酸を併用してもよい。
上記不飽和脂肪族多価カルボン酸としては、たとえば、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸、炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸:3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸、アコニット酸などの不飽和脂肪族トリカルボン酸;4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸などの不飽和脂肪族テトラカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記芳香族多価カルボン酸としては、たとえば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−フェニレン二酢酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸などの芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸;メリト酸などの芳香族ヘキサカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記多価カルボン酸は、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価アルコールとしては、帯電性やトナー強度の観点から、不飽和脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコールおよびこれらの誘導体を用いることが好ましく、非晶性の樹脂を形成することができれば、飽和脂肪族多価アルコールを併用してもよい。
上記不飽和脂肪族多価アルコールとしては、たとえば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ブチン−1,4−ジオール、9−オクタデセン−7,12−ジオールなどの不飽和脂肪族ジオールなどが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。
上記芳香族多価アルコールとしては、たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、1,3,5−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。これらの中でも、特に熱特性を適正化しやすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物などのビスフェノールA化合物を用いることが好ましい。
また、3価以上の多価アルコールの炭素数は特に制限されないが、特に、熱特性を適正化させやすいことから、炭素数は3〜20であると好ましい。
上記多価アルコールは、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
(非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量、数平均分子量)
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、5,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、5,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5,000以上であれば、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100,000以下であれば、低温定着性をより向上させることができる。また、同樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、1,500〜25,000の範囲内であることが好ましい。上記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。具体的には、以下の方法により測定することができる。
(樹脂の重量平均分子量および数平均分子量の測定方法)
各樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂等)のGPCによる分子量(重量平均分子量および数平均分子量)は、以下のようにして測定する。すなわち、装置「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流す。測定試料(樹脂)は、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。当該溶液の調製は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出する。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出する。上記検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
(非晶性ポリエステル樹脂の酸価)
さらに、非晶性ポリエステル樹脂は、酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましい。このような範囲内とすることにより、ポリエステルラテックス分散液の分散安定性を向上させることができる。また卜ナーの低温定着性を向上させることができる。更に、トナー製造時に当該非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂や離型剤(エステルワックス等)が均一に分散しやすくなる。よって、離型剤(エステルワックス等)がトナー粒子の表面に露出しにくくなることから、画像ノイズ(カブリ)の発生が抑制される。なお、樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド樹脂等)の酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリエステル樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂等)の酸価(や水酸基価)は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
(非晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。入手容易性等を考慮すると、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩や、テトラノルマルブチルチタネート(オルトチタン酸テトラブチル)、テトライソプロピルチタネート(チタンテトライソプロポキシド)、テトラメチルチタネートなどを用いることが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重縮合(エステル化)の温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではないが、0.5〜15時間であることが好ましい。重縮合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
[ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂]
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、前記非晶性ポリエステル樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂セグメントと、他の樹脂セグメントとが化学結合している、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂である。かかる構成を有することによって、全体に占めるポリエステル樹脂セグメントの比率が減り、それによって水分吸着性を低減することができ、トナーの抵抗値低下を低減できる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における他の樹脂セグメントは、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。かかる範囲であることによって、水分吸着性の低減効果を効率よく発現させ、低温定着性を向上することができる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、一部が変性された変性非晶性ポリエステル樹脂ともいえる。即ち、この「一部が変性された」とは、この非晶性ポリエステル樹脂を「非晶性ポリエステル樹脂セグメント」として「他の樹脂セグメント」を含み、当該「他の樹脂セグメント」として、ビニル樹脂セグメント、結晶性ポリエステル樹脂セグメントなどを含むためである。なお、本発明では、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、グラフト状のものだけでなく、ブロック状のものも含まれる。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量)
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性及び優れた長期保管安定性を確実に両立して得るという観点から、5,000〜100,000の範囲であると好ましく、5,000〜50,000であるとより好ましい。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)を100,000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)を5,000以上とすることにより、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。また、同樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、1,500〜25,000の範囲内であることが好ましい。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の酸価)
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましい。このような範囲内とすることにより、ポリエステルラテックス分散液の分散安定性を向上させることができる。また卜ナーの低温定着性を向上させることができる。更に、トナー製造時に当該ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂や離型剤(エステルワックス等)が均一に分散しやすくなる。よって、離型剤(エステルワックス等)がトナー粒子の表面に露出しにくくなることから、画像ノイズ(カブリ)の発生が抑制される。なお、樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂等)の酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における他の樹脂セグメント)
また、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における他の樹脂セグメントとしては、ビニル樹脂セグメント、結晶性ポリエステル樹脂セグメントなどが挙げられる。好ましい実施形態によれば、前記他の樹脂セグメントが、ビニル樹脂セグメントである。ビニル樹脂セグメントを有する樹脂成分は水分吸着性が小さいため、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂が、ビニル樹脂セグメントを有することによってトナーの抵抗値低下を低減できる。
かようなハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂としては、より好ましい実施形態によれば、前記他の樹脂セグメントが、例えばスチレン−(メタ)アクリル樹脂セグメント(ビニル樹脂セグメント)を含むものである。
上記スチレン−(メタ)アクリル樹脂は、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物のラジカル重合体の分子構造を有し、例えば、当該化合物のラジカル重合によって合成することが可能である。上記化合物は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、スチレンおよびその誘導体、ならびに、(メタ)アクリル酸およびその誘導体が含まれる。
上記スチレンおよびその誘導体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ラウリルスチレン、2,4−ジメチルスチレンおよび3,4−ジクロロスチレンが含まれる。
上記(メタ)アクリル酸およびその誘導体の例には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびメタクリル酸ジエチルアミノエチルが含まれる。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における非晶性ポリエステル樹脂セグメント)
非晶性ポリエステル樹脂セグメントとは、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂において、上記他の樹脂以外の非晶性ポリエステル樹脂に由来する部分である。非晶性ポリエステル樹脂セグメントは、結着樹脂としてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂と結晶性樹脂とを併用する場合、これらの樹脂同士の親和性を制御するという機能を有しており、非晶性ポリエステル樹脂セグメントを存在させることで、トナーの結着樹脂としてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂と結晶性樹脂とを併用する場合、これらの親和性が向上し、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂が結晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、帯電均一性等を向上させることができる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂と結晶性樹脂とを併用する場合に用いることができる結晶性樹脂には、結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む)、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂などが挙げられるが、帯電性や低温定着性の観点から、特に、結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む)を用いることが好ましい。
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中(さらには、トナー中)に非晶性ポリエステル樹脂セグメントを含有することは、例えばNMR測定、メチル化反応Py−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性ポリエステル樹脂セグメントは、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂セグメントである。このとき、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg1)が、30〜80℃の範囲内であることが好ましく、特に40〜65℃の範囲内であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂セグメントは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、上記示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂セグメントをいう。
上記多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸;これらの無水物やこれらの低級(炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を含むことが望ましい。
上記多価カルボン酸としては、定着性を確保するため、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用してもよい。これら多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。これら多価アルコールの中でも、芳香族ジオール、脂環式ジオールが望ましく、より望ましくは芳香族ジオールである。
上記多価アルコールとしては、定着性を確保するため、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。これら多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非晶性ポリエステル樹脂セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の全量に対して、1〜30質量%の範囲であることが好ましい。このような含有量の範囲とすることにより、メインバインダであるスチレンアクリル樹脂との適度な相溶性を保てるという効果が得られる。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記非晶性ポリエステル樹脂セグメントと他の樹脂セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、後述するハイブリッド結晶ポリエステル樹脂と同様の方法が挙げられる。
(1)他の樹脂セグメントをあらかじめ重合しておき、当該他の樹脂セグメントの存在下で非晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
この方法では、まず、上述した他の樹脂セグメントを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体)を付加反応させて他の樹脂セグメントを形成する。次に、他の樹脂セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合反応させて非晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させるとともに、他の樹脂セグメントに対し、多価カルボン酸又は多価アルコールを付加反応させることにより、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂が形成される。
この方法において、非晶性ポリエステル樹脂セグメント又は他の樹脂セグメント中に、これらセグメントが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。
具体的には、他の樹脂セグメントの形成時、他の樹脂セグメントを構成する単量体の他に、非晶性ポリエステル樹脂セグメントに残存するカルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]と反応可能な部位及び他の樹脂セグメントと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物が非晶性ポリエステル樹脂セグメント中のカルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]と反応することにより、非晶性ポリエステル樹脂セグメントは他の樹脂セグメントと化学的に結合することができる。
若しくは、非晶性ポリエステル樹脂セグメントの形成時、多価アルコール又は多価カルボン酸と反応可能であり、かつ、他の樹脂セグメントと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
この方法を用いることにより、他の樹脂セグメントに非晶性ポリエステル樹脂セグメントが化学結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
(2)非晶性ポリエステル樹脂セグメントと他の樹脂セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて非晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する。また、非晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する反応系とは別に、上述した他の樹脂セグメントを構成する単量体を付加重合させて他の樹脂セグメントを形成する。このとき、非晶性ポリエステル樹脂セグメントと他の樹脂セグメントとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、上記で形成した非晶性ポリエステルセグメントと、他の樹脂セグメントとを反応させることにより、非晶性ポリエステル樹脂セグメントと他の樹脂セグメントとが化学結合した構造のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
また、上記反応可能な部位が非晶性ポリエステル樹脂セグメント及び他の樹脂セグメントに組み込まれていない場合は、非晶性ポリエステル樹脂セグメントと他の樹脂セグメントとが共存する系を形成しておき、そこへ非晶性ポリエステル樹脂セグメント及び他の樹脂セグメントと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、非晶性ポリエステル樹脂セグメントと他の樹脂セグメントとが化学結合した構造のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
(3)非晶性ポリエステル樹脂セグメントをあらかじめ形成しておき、当該非晶性ポリエステル樹脂セグメントの存在下で他の樹脂セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて重合を行い、非晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成しておく。次に、非晶性ポリエステル樹脂セグメントの存在下で、他の樹脂セグメントを構成する単量体を重合反応させて他の樹脂セグメントを形成する。このとき、上記(1)と同様に、非晶性ポリエステル樹脂セグメント又は他の樹脂セグメント中に、これらセグメントが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
上記の方法を用いることにより、非晶性ポリエステル樹脂セグメントに他の樹脂セグメントが化学結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
上記(1)〜(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は他の樹脂鎖に非晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。(1)の方法は、他の樹脂セグメントをあらかじめ形成してから非晶性ポリエステル樹脂セグメントを結合させるため、非晶性ポリエステル樹脂セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
[結晶性ポリエステル樹脂]
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。「明確な吸熱ピーク」とは、具体的には示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際、吸熱ピークの半値幅が15℃以内となるピークを示すことを意味する。
当該結晶性ポリエステル樹脂(のドメイン)をトナー粒子に含ませることによって、トナー粒子(中の結着樹脂)のシャープメルト性を向上させることができ、低温定着性と定着分離性とを良好にできる。また、結晶性ポリエステル樹脂は、エステル結合を有するため、水分を吸着しやすく、これにより、電荷放出が、より促進され、ひいては、トナーを熱定着させた画像を有する用紙の貼り付きをより抑制できる観点からも好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物であって、重縮合反応によって結晶性の樹脂を形成することができるものであればよい。
具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価アルコールとは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物であって、重縮合反応によって結晶性の樹脂を形成することができるものであればよい。
具体的には、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(結晶性ポリエステル樹脂の融点)
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、十分な低温定着性が得られるという観点から、60〜90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70〜85℃である。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、吸熱ピークのピークトップの温度を示し、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて示差走査熱量分析によってDSC測定された値である。具体的には、測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)1.0mgを、アルミニウム製パン(KITNO.B0143013)に封入し、これを「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットし、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、加熱−冷却−加熱の温度制御を行い、その2度目の加熱におけるデータを基に解析される。
(結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量、数平均分子量)
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、5,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、5,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5,000以上であれば、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100,000以下であれば、低温定着性をより向上させることができる。同樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000〜15,000であることが低温定着性及び光沢度安定性の観点から好ましい。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。具体的には、上記「樹脂の重量平均分子量および数平均分子量の測定方法」で説明した方法により測定される値である。
(結晶性ポリエステル樹脂の酸価)
さらに、結晶性ポリエステル樹脂は、酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましい。このような範囲内とすることにより、ポリエステルラテックス分散液の分散安定性を向上させることができる。また卜ナーの低温定着性を向上させることができる。更に、トナー製造時に当該結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂や離型剤(エステルワックス等)が均一に分散しやすくなる。よって、離型剤(エステルワックス等)がトナー粒子の表面に露出しにくくなることから、画像ノイズ(カブリ)の発生が抑制される。なお、結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(結晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。入手容易性等を考慮すると、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩や、テトラノルマルブチルチタネート(オルトチタン酸テトラブチル)、テトライソプロピルチタネート(チタンテトライソプロポキシド)、テトラメチルチタネートなどを用いることが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重縮合(エステル化)の温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではないが、0.5〜15時間であることが好ましい。重縮合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
[ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂]
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂とも略記する)とは、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが化学的に結合した樹脂である。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂を構成する分子鎖を指す。また、非晶性樹脂セグメントとは、非晶性樹脂(結晶構造をとりえない樹脂)を構成する分子鎖を指す。
(ハイブリッド樹脂の重量平均分子量)
ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性及び優れた長期保管安定性を確実に両立して得るという観点から、5,000〜100,000の範囲であると好ましく、7,000〜50,000であるとより好ましく、8,000〜40,000の範囲であると特に好ましい。ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を100,000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を5,000以上とすることにより、トナー保管時において当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂を結着樹脂として併用する場合に、これらの樹脂同士の相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。
(ハイブリッド樹脂の酸価)
さらに、ハイブリッド樹脂は、酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましい。このような範囲内とすることにより、ポリエステルラテックス分散液の分散安定性を向上させることができる。また卜ナーの低温定着性を向上させることができる。更に、トナー製造時に当該ハイブリッド樹脂を含む結着樹脂や離型剤(エステルワックス等)が均一に分散しやすくなる。よって、離型剤(エステルワックス等)がトナー粒子の表面に露出しにくくなることから、画像ノイズ(カブリ)の発生が抑制される。なお、樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂等)の酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(ハイブリッド樹脂における結晶性ポリエステル樹脂セグメント)
結晶性ポリエステル樹脂セグメントとは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂セグメントをいう。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、前記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂についてこの樹脂(又は当該樹脂を含むトナー)が上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、その樹脂は、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂セグメントを有するハイブリッド樹脂に該当する。
また、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、上述の効果が得られやすいことから、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸とともに用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは100モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、上述の効果が得られやすいことから、炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましく、炭素数6〜12の脂肪族ジオールがより好ましい。
必要に応じて用いられる脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは100モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの結晶性を確保することができる。これにより本発明の分散液を用いて製造されるトナーは優れた低温定着性を有するとともに最終的に形成される画像の光沢性に優れる。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5の範囲内とされることが好ましく、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2の範囲内である。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントの形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該セグメントを形成することができる。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントの製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の元素の周期表の第2族の金属化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間の範囲内であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
ハイブリッド樹脂中の各セグメントの構成成分及び含有割合は、例えばNMR測定、メチル化反応Py−GC/MS測定により特定することができる。
ここで、ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントの他に、以下で詳述する非晶性樹脂セグメントを含む。ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメント及び非晶性樹脂セグメントを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であると好ましい。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
さらに、上記観点からは、結晶性ポリエステル樹脂セグメントが、非晶性樹脂セグメントを主鎖として、グラフト化されていると好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として非晶性樹脂セグメントを有し、側鎖として結晶性ポリエステル樹脂セグメントを有するグラフト共重合体であると好ましい。
上記形態とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの配向をより高めることができ、ハイブリッド樹脂の結晶性を向上させることができる。
なお、ハイブリッド樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、結晶性ポリエステル樹脂セグメント中でもよいし、以下で説明する非晶性樹脂セグメント中であってもよい。
(ハイブリッド樹脂における非晶性樹脂セグメント)
非晶性樹脂セグメントとは、ハイブリッド樹脂において、上記結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。非晶性樹脂セグメントは、結着樹脂としてハイブリッド樹脂と非晶性樹脂とを併用する場合、これらの樹脂同士の親和性を制御するという機能を有しており、非晶性樹脂セグメントを存在させることで、トナーの結着樹脂としてハイブリッド樹脂と非晶性樹脂とを併用する場合、これらの親和性が向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、帯電均一性等を向上させることができる。
ハイブリッド樹脂中(さらには、トナー中)に非晶性樹脂セグメントを含有することは、例えばNMR測定、メチル化反応Py−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性樹脂セグメントは、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂セグメントである。このとき、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg1)が、30〜80℃の範囲内であることが好ましく、特に40〜65℃の範囲内であることが好ましい。
非晶性樹脂セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性樹脂セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性樹脂セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂(又は当該樹脂を含むトナー)が上記のような非晶性樹脂セグメントを有するものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性樹脂セグメントを有するハイブリッド樹脂に該当する。
非晶性樹脂セグメントは、トナーの製造に用いられる結着樹脂に含まれる非晶性樹脂と同種の樹脂で構成されると好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中にさらに取り込まれやすくなり、帯電均一性等がより一層向上する。
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。さらに例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。したがって、これらは同種の樹脂である。
非晶性樹脂セグメントを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル樹脂セグメント、ウレタン樹脂セグメント、ウレア樹脂セグメントなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂セグメントが好ましい。
ビニル樹脂セグメントとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂セグメント、スチレン・アクリル酸エステル樹脂セグメント、エチレン−酢酸ビニル樹脂セグメントなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂セグメントのなかでも、可塑剤の均一且つ微細なドメイン構造形成の観点から、スチレン・アクリル酸エステル樹脂セグメント(スチレン・アクリル樹脂セグメント)が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂セグメントとしてのスチレン・アクリル樹脂セグメントについて説明する。
スチレン・アクリル樹脂セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C65の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
以下に、スチレン・アクリル樹脂セグメントの形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレン・アクリル樹脂セグメントの形成に使用可能なものは以下に示すものに限定されるものではない。
まず、スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」を総称したもので、例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」を総称したものである。
これらのアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、又は、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
非晶性樹脂セグメント中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂セグメントの全量に対し、40〜90質量%の範囲内であることが好ましい。また、非晶性樹脂セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂セグメントの全量に対し、10〜60質量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、ハイブリッド樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
さらに、非晶性樹脂セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントに化学的に結合するための化合物もまた付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントに含まれる、多価アルコール由来のヒドロキシ基[−OH]又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基[−COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、非晶性樹脂セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
このような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
非晶性樹脂セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂セグメントの全量に対し、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・アクリル樹脂セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
非晶性樹脂セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量に対して、20質量%以下であることが好ましい。これにより、十分な結晶性を保ちつつ、より均一な結晶性ポリエステル樹脂ドメインを形成できるという効果が得られる。
(ハイブリッド樹脂の製造方法)
ハイブリッド樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(1)非晶性樹脂セグメントをあらかじめ重合しておき、当該非晶性樹脂セグメントの存在下で結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。
この方法では、まず、上述した非晶性樹脂セグメントを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体)を付加反応させて非晶性樹脂セグメントを形成する。次に、非晶性樹脂セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合反応させて結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させるとともに、非晶性樹脂セグメントに対し、多価カルボン酸又は多価アルコールを付加反応させることにより、ハイブリッド樹脂が形成される。
この方法において、結晶性ポリエステル樹脂セグメント又は非晶性樹脂セグメント中に、これらセグメントが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。
具体的には、非晶性樹脂セグメントの形成時、非晶性樹脂セグメントを構成する単量体の他に、結晶性ポリエステル樹脂セグメントに残存するカルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]と反応可能な部位及び非晶性樹脂セグメントと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物が結晶性ポリエステル樹脂セグメント中のカルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]と反応することにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントは非晶性樹脂セグメントと化学的に結合することができる。
若しくは、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの形成時、多価アルコール又は多価カルボン酸と反応可能であり、かつ、非晶性樹脂セグメントと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
この方法を用いることにより、非晶性樹脂セグメントに結晶性ポリエステル樹脂セグメントが化学結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(2)結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法である。
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する。また、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する反応系とは別に、上述した非晶性樹脂セグメントを構成する単量体を付加重合させて非晶性樹脂セグメントを形成する。このとき、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、上記で形成した結晶性ポリエステル樹脂セグメントと、非晶性樹脂セグメントとを反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが化学結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
また、上記反応可能な部位が結晶性ポリエステル樹脂セグメント及び非晶性樹脂セグメントに組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが共存する系を形成しておき、そこへ結晶性ポリエステル樹脂セグメント及び非晶性樹脂セグメントと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが化学結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(3)結晶性ポリエステル樹脂セグメントをあらかじめ形成しておき、当該結晶性ポリエステル樹脂セグメントの存在下で非晶性樹脂セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて重合を行い、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成しておく。次に、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの存在下で、非晶性樹脂セグメントを構成する単量体を重合反応させて非晶性樹脂セグメントを形成する。このとき、上記(1)と同様に、結晶性ポリエステル樹脂セグメント又は非晶性樹脂セグメント中に、これらセグメントが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
上記の方法を用いることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントに非晶性樹脂セグメントが化学結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
上記(1)〜(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は非晶性樹脂鎖に結晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド樹脂を形成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。(1)の方法は、非晶性樹脂セグメントをあらかじめ形成してから結晶性ポリエステル樹脂セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
<有機溶媒(油相)12>
PES溶解液(油相)13の調製に使用される有機溶媒としては、転相乳化後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。有機溶媒の使用量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部の範囲内、好ましくは1〜100質量部の範囲内、さらに好ましくは25〜70質量部の範囲内である。
(PES溶解液(油相)13の調製)
上記ポリエステル樹脂(PES粉体)11と有機溶剤(油相)12を混合する。これにより溶解液(PES溶解液(油相)13)を作製する。この混合(撹拌)条件としては、樹脂の溶解性の観点から、25〜80℃、好ましくは28〜75℃の温度(液温)範囲で、10〜120分間、好ましくは20〜90分間混合(撹拌)すればよい。なお、混合撹拌装置は特に制限されるものではなく、生産規模に応じて適宜選択すればよい。すなわち、PES溶解液(油相)13を得る方法としては、有機溶剤(油相)12を容器に入れて上記温度(液温)に加温しておく。ここにポリエステル樹脂(PES粉体)11を添加、混合し、撹拌機によって撹拌しながら、ポリエステル樹脂(PES粉体)11を有機溶剤(油相)12中に溶解して均一に混合する方法が好ましい。但し、予めポリエステル樹脂(PES粉体)11及び有機溶剤(油相)12を容器に入れた後、上記温度(液温)に加温及び撹拌しながら、ポリエステル樹脂(PES粉体)11を有機溶剤(油相)12中に溶解して均一に混合してもよいなど、特に制限されるものではない。
≪工程2≫
工程2は、工程1で得られた溶解液に液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)を混合する工程(第1中和工程)である。本工程2では、図1に示すように、工程1で得られたPES溶解液(油相)13に液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)14を混合する(ステップ2)。これにより中和液(共相)15を作製する。好ましくは、ポリエステル樹脂が有機溶媒に溶解した溶解液(油相)13に界面活性剤(水溶液)を添加、混合し、油相に水滴が分散している状態(W/O)の溶液(エマルション)を形成する。このW/O溶液(エマルション)に対して、所定量の中和剤(1)を添加し、ポリエステル末端基(COOH基)を解離させることで油相と水相との界面張力を下げ、油相と水相とが混合した状態(共相)の中和液15を形成するのが好ましい。但し、PES溶解液(油相)13に対して、所定量の中和剤(1)水溶液を添加することで、油相に水滴が分散している状態(W/O)の溶液(エマルション)を形成し、更にポリエステル末端基(COOH基)を解離させることで油相と水相との界面張力を下げ、油相と水相とが混合した状態(共相)の中和液15を形成してもよい。
<界面活性剤(水溶液)>
本工程2では、上記したように中和剤(1)を添加する前に、ポリエステル樹脂が有機溶媒に溶解した溶解液(油相)13に界面活性剤(水溶液)を添加、混合し、油相に水滴が分散している状態(W/O)の溶液(エマルション)を形成するのが好ましい。
界面活性剤としては、特に制限されるものではなく、公知の界面活性剤が使用可能であり、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の中から選択されるものを用いることができる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。なお、界面活性剤はトナー製造時に用いられる着色剤やオフセット防止剤等の分散液にも使用できる。界面活性剤は、油相に水滴が分散している状態(W/O)の溶液(エマルション)を形成する観点から、水溶液として用いる。実施例でも、界面活性剤のポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名:エマールE−27C)を水で希釈して、界面活性剤の濃度が15質量%の水溶液を用いている。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、及びモノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名:エマールE−27C)等を挙げることができる。
これらの界面活性剤は、必要に応じて、1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の添加量は、PES溶解液(油相)13中のポリエステル樹脂100質量部に対して、油相に水滴が分散している状態(W/O)の溶液を形成する観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
<中和剤(1)14>
本発明において、ポリエステル樹脂を中和するための中和剤(1)は、粒径が小さく、粒径分布の狭いポリエステルラテックス分散液を得ることができ、さらに取り扱い易さの観点から、水溶液として用いられることが好ましい。上記界面活性剤(水溶液)を用いてW/O溶液を形成した場合、この溶液に対して、所定量の中和剤(1)を添加することで、ポリエステル末端基(COOH基)を解離させることで油相と水相との界面張力を下げ、油相と水相とが混合した状態(共相)の中和液15を形成することができる。また、溶解液(油相)13に対して、界面活性剤を添加しない場合には、所定量の中和剤(1)水溶液を添加することで、油相に水滴が分散している状態(W/O)の溶液を形成し、更にポリエステル末端基(COOH基)を解離させることで油相と水相との界面張力を下げ、油相と水相とが混合した状態(共相)の中和液15を形成することもできる。
中和剤(1)を水溶液として用いる場合、25℃におけるpHは、できるだけ早く安定した共相状態を形成する観点から、好ましくは8.5以上であり、より好ましくは10.0以上、さらに好ましくは11.0以上、更に好ましくは12.0以上である。このように中和剤(1)を水溶液として用いる場合、25℃におけるpHが11以上の強アルカリ性の化合物(水溶液)であるのが好ましい。これは、中和剤に強アルカリ性のものを使用することで、弱アルカリ性の中和剤を用いた時よりもより早く安定した共相状態を形成できるからである。なお、pHの上限値については、特に制限されるものではないが、上記と同様の観点から、好ましくは13.5以下であり、より好ましくは13.0以下である。
中和剤(1)は、アルカリ性化合物であればよく、無機アルカリ性化合物及び有機アルカリ性化合物のいずれを用いてもよい。無機アルカリ性化合物としては、カリウム、ナトリウム、リチウムといったアルカリ金属の水酸化物塩、炭酸塩、及び炭酸水素塩、並びにアンモニアが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物塩、炭酸塩、及び炭酸水素塩の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが挙げられる。有機アルカリ性化合物としては、ジエチルエタノールアミンといったアルカノールアミンが挙げられる。また、中和の反応効率を落とさずにアルカリ性水溶液のpHを制御する観点から、強アルカリ性の化合物と弱酸性の化合物を混合することで得られる緩衝溶液を用いてもよく、例えば、水酸化カリウム及びリン酸を混合することで得られる緩衝溶液等が挙げられる。これらの中でも、より早く安定した共相状態を形成する観点から、25℃におけるpHが11以上の強アルカリ性の化合物である水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
中和剤(1)を水溶液として用いる場合、水溶液中の中和剤(1)(アルカリ性化合物)の濃度は、より早く安定した共相状態を形成する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
本工程2では、上記した1回目の中和による共相の物性(系内の様子)に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整する方法で説明したように、目標粒径となるときの粘度値よりも低い範囲の液粘度を設定するのが好ましい。かかる観点から、工程1で得られた溶解液(油相液)13に対して、或いは必要に応じて当該溶解液(油相液)13に界面活性剤(水溶液)を添加、混合し形成したW/O溶液(エマルション)に対して、液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)を混合する。ここで、液粘度が5mPa・s未満の場合には、測定安定性の点で好ましくない。また液粘度が500mPa・sを超える場合には、溶液の混合性の点で好ましくない。かかる観点から、上記液粘度としては、10〜400mPa・sの範囲が好ましく、12〜390mPa・sの範囲がより好ましい。
なお、共相の液粘度と中和剤の投入量の関係については、上記した「1回目の中和による共相の物性(系内の様子)に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整する方法」で説明したように、予めポリエステル樹脂の樹脂種ごとに酸価と中和度に応じた共相の粘度(液粘度)データを取っておけばよい。また、次工程に向けて、転相乳化に用いるポリエステル樹脂の酸価が不明な状態であっても、1回目の中和剤(固定量)を投入した時に、共相の粘度値からポリエステル樹脂の酸価が逆算できる計算式を作成しておく必要がある。
(液粘度の測定)
液粘度の測定には、液体中でも計測が可能な既存の粘度計を用いて行うことができる。例えば、液体を撹拌していても計測が可能で、リアルタイムデータ出力が可能なシールド型の振動式粘度計(例えば、株式会社セコニック製のVM−200T2等)を用いて、溶液(反応系)中に当該粘度計の検出端子(プローブ)を直接入れる(浸す)ことで測定することができる。上記した液粘度の測定方法は、工程2で得られる中和液や工程3で得られる中和液などのいずれの溶液についても適用可能である。
(中和液(共相)15の調製(W/O溶液の調製を含む))
上記溶解液(PES溶解液(油相)13)に対して、或いは必要に応じて分散安定剤(界面活性剤)を添加、混合し形成したW/O溶液(エマルション)に対して、上記液粘度の範囲の量となる中和剤(1)14を混合する。これにより中和液(共相)15を作製する。界面活性剤(水溶液)添加後の混合(撹拌)条件としては、溶液の均一分散性の観点から、25〜80℃、好ましくは28〜75℃の温度(液温)範囲で、10〜180分間、好ましくは20〜90分間混合(撹拌)すればよい。また、中和剤(1)14添加後の混合(撹拌)条件としては、溶液の均一分散性の観点から、25〜80℃、好ましくは28〜75℃の温度(液温)範囲で、撹拌しながら、所定量の中和剤(1)14を添加すればよい。所定量の界面活性剤や中和剤(1)14の添加の仕方はいずれも、一度に全量添加してもよいし、一定時間かけて少量ずつ添加してもよいし、何回かに分けて添加してもよいなど、特に制限されるものではない。なお、界面活性剤の混合撹拌装置は、特に制限されるものではなく、生産規模に応じて適宜選択すればよい。中和に用いる反応容器や混合撹拌装置は、強アルカリ性の中和剤(1)に対し十分な耐性を有するものであれば特に制限されるものではなく、生産規模に応じて適宜選択すればよい。すなわち、中和液(共相)15を得る方法としては、上記温度(液温)に加温されたPES溶解液(油相液)13に、必要に応じて界面活性剤(水溶液)を添加、混合しW/O溶液(エマルション)を形成する。この間も上記温度(液温)に加温(保持)しておく。次に、このW/O溶液を反応容器に移し、ここに所定量の中和剤(1)14を添加し、撹拌機によって撹拌しながら、ポリエステル末端基(COOH基)を解離させることで、油相と水相との界面張力を下げ、油相と水相とが混合した状態(共相)の中和液15を形成する方法が好ましい。但し、界面活性剤を用いることなく、溶解液(油相液)13を反応容器に移した後、上記温度(液温)に加温及び撹拌しながら、所定量の中和剤(1)14を添加することで、油相に水滴が分散している状態(W/O)の溶液を形成し、更に油相中のポリエステル末端基(COOH基)を解離させることで、油相と水相との界面張力を下げ、油相と水相とが混合した状態(共相)の中和液15を形成してもよいなど、特に制限されるものではない。
≪工程3≫
工程3は、工程2で得られた溶液の状態を確認し、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)の添加量を決めて少なくとも一回は投入混合する工程(第2中和工程)である。本工程3では、図1に示すように、工程2で得られた溶液(中和液(共相)15)の状態を確認し、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)16の添加量を決めて、少なくとも一回は投入混合する(ステップ3)。これにより中和液(共相)17を作製する。ここで、工程2で得られた溶液(中和液(共相)15)の状態(共相の物性)を確認する方法(手段)としては、液粘度や撹拌トルク等を所定の範囲に調整(制御)する方法(手段)が挙げられる。本発明では、測定感度が低い粘度は測定値差が読み取り易いことから、液粘度を所定の範囲に調整する方法を適用したものであるが、他の方法(手段)を用いることもできる。本形態では、工程2で得られた溶液の状態を確認するために、当該溶液の液粘度を計測(モニタリング)し、5〜500mPa・sの範囲にあることを確認すればよい。また、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)16の添加量を決めるには、上記した「1回目の中和による共相の物性(系内の様子)に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整する方法」により決定することができる。すなわち、中和液(共相)17を形成するときの中和剤量が最終的な粒径を決定付けることから、事前に取得しておいた樹脂種ごとの酸価と中和度に応じた共相の粘度データ、更には共相の粘度値から樹脂酸価が逆算できる計算式等に基づき、目標粒径となるときの粘度値になるよう2回目以降の中和剤量を決定することができる。これにより、工程バラつき(系内に含まれる水や樹脂や溶剤量のバラつきなど)があっても粒径バラつきが少ない(生産ロットごとに毎回近しい粒径域の)PES樹脂粒子が水中に分散したPESラテックス分散液が得られる。
<中和剤(2)16>
本発明おいて、ポリエステル樹脂を中和するための中和剤(2)も、粒径が小さく、粒径分布の狭いポリエステルラテックス分散液を得ることができ、さらに取り扱い易さの観点から、水溶液として用いられることが好ましい。1回目の中和剤(1)の投入で系内の様子(液粘度)を見て、更に2回目以降の中和剤(2)の量を決める(上記した事前に取得したデータや計算式に基づき、目標粒径となるときの粘度値になるよう2回目以降の中和剤(2)量を決定する)ことで、工程バラつきがあっても粒径バラつきが少ない(生産ロットごとに毎回近しい粒径域の)PES樹脂粒子が水中に分散したPESラテックス分散液が得られる。更に、中和剤(2)を2度以上に分割する(実施例6、7、9、14、15、17参照)ことでより均一な共相形成がなされ、粒径の繰り返し再現性が高くなる。
中和剤(2)を水溶液として用いる場合、25℃におけるpHは、工程バラつきがあっても(生産ロットごとに毎回同じ粒径を得るための)同じ共相状態をできるだけ早く安定して形成する観点から、好ましくは8.5以上であり、より好ましくは10.0以上、更に好ましくは11.0以上、特に好ましくは12.0以上である。このように中和剤(2)を水溶液として用いる場合、25℃におけるpHが11以上の強アルカリ性の化合物を含むもの(=強アルカリ性化合物の水溶液)が好ましい。これは、中和剤に強アルカリ性のものを使用することで、工程バラつきがあっても(生産ロットごとに毎回同じ粒径を得るための)同じ共相状態を、弱アルカリ性の中和剤を用いた時よりもより早く安定して形成できるからである。なお、pHの上限値については、特に制限されるものではないが、上記と同様の観点から、好ましくは13.5以下であり、より好ましくは13.0以下である。
中和剤(2)としては、アルカリ性化合物であればよく、中和剤(1)と同様のものを用いることができる。中和剤(1)と同様に、中和剤(2)でも、工程バラつきがあっても(生産ロットごとに毎回同じ粒径を得るための)同じ共相状態を、弱アルカリ性の中和剤を用いた時よりもより早く安定して形成する観点から、25℃におけるpHが11以上の強アルカリ性の化合物である水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
中和剤(2)を水溶液として用いる場合、水溶液中の中和剤(2)(アルカリ性化合物)の濃度は、工程バラつきがあっても(生産ロットごとに毎回同じ粒径を得るための)同じ共相状態を、弱アルカリ性の中和剤を用いた時よりもより早く安定して形成する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
本工程3では、上記した1回目の中和による共相の物性(系内の様子)に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整する方法で説明したように、目標粒径となるときの粘度値(液粘度)を決定すればよい。かかる観点から、工程2で得られた溶液(中和液(共相)17)に対して、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲(であって、目標粒径となるときの粘度値)となる量の中和剤(2)を1回又は2回以上に分けて添加し混合する。ここで、液粘度が50mPa・s未満の場合には、測定安定性の点で好ましくない。また液粘度が1000mPa・sを超える場合には、均一混合性の点で好ましくない。かかる観点から、上記液粘度としては、70〜950mPa・sの範囲が好ましく、90〜940mPa・sの範囲がより好ましい。
なお、共相の液粘度と中和剤の投入量との関係については、上記した「1回目の中和による共相の物性(系内の様子)に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整する方法」で説明したように、予めポリエステル樹脂の樹脂種ごとに酸価と中和度に応じた共相の粘度(液粘度)データを取っておけばよい。また、次工程に向けて、転相乳化に用いるポリエステル樹脂の酸価が不明な状態であっても、1回目の中和剤(固定量)を投入した時に、共相の粘度値からポリエステル樹脂の酸価が逆算できる計算式を作成しておけばよい。
(工程3で得られた溶液中の中和度)
工程3で得られた溶液(中和液(共相)17)中の中和度は、25〜100%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましい。工程3で得られた溶液中の中和度を上記範囲に調整(制限)することで、望ましい粒径域のPES樹脂粒子を形成することができる。
(中和度)
中和度(%)は、(溶液中のポリエステル樹脂の中和されたCOOH基の物質量(mol))÷(溶液中の中和前のポリエステル樹脂が持つCOOH基の物質量(mol))×100の計算式により算出することができる。工程5での(脱溶前の)溶液中の中和度も同様にして算出することができる。
(中和剤(1)および(2)の総量に対する中和剤(1)の割合)
工程2および3で混合する中和剤(1)および(2)の総量に対する中和剤(1)の割合は、55〜95質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。中和剤(1)および(2)の総量に対する中和剤(1)の割合を上記範囲に調整(制限)することで、より安定した共相状態を形成でき、精密に粒径を均一化できるため好ましい。
(中和液(共相)17の調製)
上記中和液(共相)15に対して、上記液粘度の範囲の量となる中和剤(2)16を投入し混合する。これにより中和液(共相)17を作製する。また、中和剤(2)16添加後の混合(撹拌)条件としては、均一混合性の観点から、25〜85℃、好ましくは28〜75℃の温度(液温)範囲で、撹拌しながら、所定量の中和剤(2)16を添加すればよい。所定量の中和剤(2)16の添加の仕方は、一度に全量添加してもよいし、一定時間かけて少量ずつ添加してもよいし、何回かに分けて添加してもよいなど、特に制限されるものではない。何回かに分けて(2度以上に分割して)投入するのが、より均一な共相形成がなされ、粒径の繰り返し再現性が高くなる点で優れている。中和に用いる反応容器や混合撹拌装置は、強アルカリ性の中和剤(2)に対し十分な耐性を有するものであれば特に制限されるものではなく、生産規模に応じて適宜選択すればよい。すなわち、中和液17を得る方法としては、中和液15に、目標粒径となるときの粘度値となる量の中和剤(2)16を添加し、撹拌しながら、ポリエステル末端基を解離させることで油相と水相との界面張力を下げ、工程バラつきがあっても(生産ロットごとに毎回同じ粒径を得るための)同じ共相状態の中和液17を得る方法が挙げられる。
≪工程4≫
工程4は、工程3で得られた溶液に純水を連続的に添加し樹脂粒子を形成する工程(転相乳化工程)である。本工程4では、図1に示すように、工程3で得られた溶液(中和液(共相)17)に純水18を連続的に添加し、樹脂粒子(PES粒子)を形成する(ステップ4)。これにより転相乳化が完了し、PES粒子分散液(水相)19を得ることができる。ここで、工程3で得られた溶液(中和液(共相)17)に、純水を連続滴下すると、ポリエステル末端基は解離し自己乳化性を付与されているため水相に樹脂粒子(PES粒子)が分散した状態(O/W)の分散液(エマルション)を形成する。その際、ポリエステルは解離している末端基の量に応じて樹脂粒子の静電的な安定性が決まり、粒径が決まる。本発明では、工程バラつきがあっても同じ共相状態の中和液17に対して、本工程4の転相乳化(既存の工程操作)を行うことで、工程バラつきがあっても粒径バラつきが少ない(生産ロットごとに毎回近しい粒径域の)樹脂粒子(PES粒子)が得られる。
<純水18>
本工程(転相乳化工程)4では、粒径が小さく、粒径分布の狭いPES粒子の分散液(水相)19を調製しやすくなる観点から、純水を用いるものである。純水としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。例えば、水(上水など)から不純物を取り除く方法により得られるRO水(逆浸透膜を通した水)、脱イオン水(イオン交換樹脂などによりイオンを除去した水)、蒸留水(蒸留器で蒸留した水)などを用いることができる。
純水を添加する際の温度(液温)は、粒径分布の狭いPES粒子の分散液(水相)19を得る観点から、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上が好ましく、本工程4で用いる純水の沸点以下が好ましい。より好ましくは、溶液内の界面張力を安定化させる観点から、上記に規定した工程3で得られた溶液の温度(液温)と同じ温度±10℃の範囲である。具体的には、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは98℃以下、より好ましくは80℃以下である。
純水を連続的に添加する際の添加速度は、粒径分布の狭いPES粒子の分散液(水相)19を得る観点から、転相乳化が完了(終了)するまでは、工程3で得られた溶液17中の樹脂粒子を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは1質量部/分以上、更に好ましくは3質量部/分以上であり、また、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは15質量部/分以下、より更に好ましくは8質量部/分以下である。即ち、上記添加速度で純水を添加する操作により、純水を連続的に添加し得るものとする。なお、転相乳化完了後の純水の添加速度には制限はない(転相乳化完了後の純水の添加はできるだけ速やかに終えるのが好ましい)。また、転相乳化の完了は、SEM像により確認することができる。
純水の使用量は、ラテックスの保管安定性やPES粒子分散液(水相)19の生産効率を向上させる観点から、工程3で得られた溶液17中の樹脂粒子を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上であり、また、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1000質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である。
(PES粒子分散液(水相)19の調製)
上記中和液(共相)17に対して、上記温度(液温)及び上記使用量の範囲で純水18を連続的に、詳しくは上記添加速度にて投入し混合する。これにより乳化状のPES粒子分散液(水相)19(乳化液)を作製する。また、純水18の連続添加中の混合(撹拌)条件としては、溶液内の界面張力の安定性の観点から、純水18が添加される側の工程3で得られた溶液を25〜85℃、好ましくは28〜75℃の温度(液温)範囲に保持しつつ、撹拌しながら、所定量の純水18を連続添加すればよい。転相乳化に用いる反応容器は、特に制限されるものではないが、工程2〜工程4で用いた反応容器をそのまま用いるのが好ましい。また、上記乳化分散は機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための上記分散機(混合撹拌装置)としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられ、具体的には例えばTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)などを挙げることができる。
乳化液(PES粒子分散液(水相)19)中の油滴の分散径は60〜1000nmの範囲内とされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmの範囲内である。
油滴の分散径は、粒度分布測定器(例えば、Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)など)、或いはレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、LA−750、LA−960(共に株式会社堀場製作所製)など)を用いて測定した体積平均粒径である。
≪工程5≫
工程5は、工程4で得られた樹脂粒子分散液から有機溶剤を脱溶する工程(脱溶工程)である。本工程5では、図1に示すように、工程4で得られた樹脂粒子分散液(PES粒子分散液(水相)19)から有機溶剤12を脱溶する(ステップ5)。これにより脱溶が完了し、PES粒子分散液(水相)22を得ることができる。本発明では、得られた樹脂粒子分散液(PES粒子分散液(水相)19)を脱溶することで、工程バラつきがあっても粒径バラつきが少ない(生産ロットごとに毎回近しい粒径域の)樹脂粒子(PES粒子)が水中に分散したラテックス分散液を形成することができる。
さらに、本工程5において有機溶媒を脱溶する前に、当該脱溶前の溶液中の中和度が3〜25%となる量の中和剤(3)を投入することが好ましい。これは、脱溶前に中和剤(3)を投入することで、樹脂粒子表面の静電的な安定性を上げることができ、ラテックス分散液の長期保管性が良化するためである。即ち、本工程5では、図1に示すように、工程4で得られた樹脂粒子分散液(PES粒子分散液(水相)19)から有機溶剤12を脱溶する前に、当該脱溶前(かつ中和剤(3)投入後)の溶液(PES粒子分散液(水相)21)中の中和度が3〜25%となる量の中和剤(3)20を投入するのが好ましい。これにより、乳化液の処理が完了し、PES粒子分散液(水相)21を得ることができる。ここで、乳化液の処理の完了は、SEM像や粒度分布測定により確認することができる。中和剤(3)20を投入する場合、「工程4で得られた樹脂粒子分散液(符号19)から有機溶剤を脱溶する」とあるのは、「工程4で得られた樹脂粒子分散液(符号19)を更に上記中和度の範囲まで中和した樹脂粒子分散液(符号21)から有機溶剤を脱溶する」ものとなる。
<中和剤(3)20>
本発明において、乳化液の処理を完了するための中和剤(3)は、均一混合性や取り扱い易さの観点から、水溶液として用いられることが好ましい。中和剤(3)を投入することで、樹脂粒子表面の静電的な安定性を上げることができ、ラテックス分散液の長期保管性を良化(向上)することができる。
中和剤(3)を水溶液として用いる場合、25℃におけるpHは、早く安定な中和作用や樹脂粒子表面の静電的な安定性を上げる観点から、好ましくは8.5以上であり、より好ましくは10.0以上、更に好ましくは11.0以上、特に好ましくは12.0以上である。このように中和剤(3)を水溶液として用いる場合、25℃におけるpHが11以上の強アルカリ性の化合物を含むもの(=強アルカリ性化合物の水溶液)が好ましい。これは、中和剤に強アルカリ性のものを使用することで、早く安定な中和作用や樹脂粒子表面の静電的な安定性を上げることができるからである。なお、pHの上限値については、特に制限されるものではないが、上記と同様の観点から、好ましくは13.5以下であり、より好ましくは13.0以下である。
中和剤(3)としては、アルカリ性化合物であればよく、中和剤(1)と同様のものを用いることができる。中和剤(3)では、早く安定な中和作用や樹脂粒子表面の静電的な安定性を上げる観点から、25℃におけるpHが11以上の強アルカリ性の化合物である水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
中和剤(3)を水溶液として用いる場合、水溶液中の中和剤(3)(アルカリ性化合物)の濃度は、早く安定な中和作用や樹脂粒子表面の静電的な安定性を上げる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
本工程5では、樹脂粒子表面の静電的な安定性を上げる観点から、工程4で得られた樹脂粒子分散液(PES粒子分散液(水相)19)に対して、脱溶前かつ中和剤(3)投入後の溶液(PES粒子分散液(水相)21)中の中和度が3〜25%となる量の中和剤(3)20を投入する。ここで、上記中和度が3%以上であれば、静電安定性付与による保管安定性の点で優れている。上記中和度が25%以上であれば、イオン強度低下による保管安定性の点で優れている。かかる観点から、上記中和度は、5〜20%の範囲が好ましい。
(PES粒子分散液(水相)21の調製)
上記PES粒子分散液(水相)19に対して、上記中和度の範囲の量となる中和剤(3)20を投入し混合する。これによりPES粒子分散液(水相)21を作製する。また、中和剤(3)20の混合(撹拌)条件としては、均一混合性の観点から、25〜85℃、好ましくは28〜75℃の温度(液温)範囲で、撹拌しながら、所定量の中和剤(3)20を添加すればよい。所定量の中和剤(3)20の添加の仕方は、一度に全量添加してもよいし、一定時間かけて少量ずつ添加してもよいし、何回かに分けて添加してもよいなど、特に制限されるものではない。中和に用いる反応容器や混合撹拌装置は、特に制限されるものではなく、工程2〜工程4で用いた反応容器をそのまま用いるのが好ましい。
(PES粒子分散液(水相)22の調製)
上記PES粒子分散液(水相)19又はPES粒子分散液(水相)21から有機溶剤12を脱溶する。これによりPES粒子分散液(水相)22を作製する。脱溶方法としては、特に制限されるものではなく、減圧下で蒸留除去(脱溶)する方法、霧状に噴射し乾燥する方法などが挙げられる。好ましくは粒子の安定性や効率性の観点から、減圧下で蒸留除去(脱溶)する方法である。かかる減圧下で蒸留除去(脱溶)する方法では、10〜95kPa、好ましくは13〜80kPaの減圧下で0.5〜6時間撹拌することで、有機溶剤を蒸留除去(脱溶)することができる。減圧に用いる減圧(真空)装置は、特に制限されるものではなく、生産規模に応じて適宜選択すればよい。但し、本発明では上記脱溶方法に何ら制限されるものではない。なお、蒸留除去(脱溶)した有機溶剤は、環境負荷低減等の観点から、回収して再利用してもよい。
(PES粒子分散液(水相)22の固形分濃度)
本工程5で得られたポリエステルラテックス分散液(PES粒子分散液(水相)22)の固形分濃度は、卜ナーの生産性を向上させる観点及び樹脂粒子(PES粒子)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。なお、固形分は樹脂、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
(PES粒子分散液(水相)22中の樹脂粒子(PES粒子)の体積平均粒径)
本工程5で得られたポリエステルラテックス分散液(PES粒子分散液(水相)22)中の樹脂粒子(PES粒子)の体積平均粒径は、卜ナーの粒径分布をシャープにし、卜ナーのドット再現性、帯電安定性等を向上させる観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、また、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下である。ここで、体積平均粒径は、粒度分布測定器、例えば、粒度分布測定器(例えば、Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)など)、或いはレーザー回折式粒度分布測定器(例えば、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750、LA−960(株式会社堀場製作所製)など)を用いて測定することができる。
上記した工程1〜5により、本発明のポリエステルラテックス分散液を製造することができる。次に、これを用いたトナーの製造方法につき説明する。
≪静電荷像現像用トナーの製造方法≫
本発明の静電荷像現像用トナー(単に、「トナー」ともいう)の製造方法は、上記した製造方法によりポリエステルラテックス分散液を製造し、得られたポリエステルラテックス分散液を含むトナー形成用溶液を用い、少なくとも当該ラテックス分散液中に含まれる樹脂粒子を凝集、融着させてなることを特徴とするものである。ここで、上記で得られたポリエステルラテックス分散液は、結着樹脂の1種であるPES粒子(以下、「結着樹脂微粒子(1)」ともいう。)が分散されてなる水系分散液である。またトナー形成用溶液には、例えば、PES粒子以外の結着樹脂、例えば、スチレン系樹脂やアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン系樹脂、アミド樹脂及びエポキシ樹脂などの樹脂粒子(以下、「結着樹脂微粒子(2)」ともいう。)が分散されてなる水系分散液;着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)が分散されてなる水系分散液、離型剤の微粒子(以下、「離型剤微粒子」ともいう。)が分散されてなる水系分散液等が混合されていてもよい。即ち、本発明のトナーの製造方法は、上記で得られたポリエステルラテックス分散液(結着樹脂微粒子(1)が分散されてなる水系分散液)に、必要に応じて結着樹脂微粒子(2)が分散されてなる水系分散液、着色剤微粒子が分散されてなる水系分散液、離型剤微粒子が分散されてなる水系分散液等とを混合してトナー形成用溶液を調製し、トナー形成用溶液中に含まれる結着樹脂微粒子(1)(更には結着樹脂微粒子(2)や着色剤微粒子や離型剤微粒子など)を凝集、融着させてなることによりトナー粒子を形成しトナーを製造する方法である。
トナーの製造方法の一例(結着樹脂として非結晶樹脂(結着樹脂微粒子(2)形成用樹脂)と結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂微粒子(1)形成用樹脂)とを用いた例)を具体的に示すと、
(a)結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)を形成する工程、
(b)結着樹脂微粒子(2)の前駆体(II)(コア粒子表面を被覆する中間層;中間層被覆粒子)を形成する工程、
(c)結着樹脂微粒子(2)の前駆体(III)(中間層被覆粒子表面を被覆する最外層;最外層被覆粒子)の形成による結着樹脂微粒子(2)(コア粒子/中間層/最外層の3層構造の粒子)の形成工程、
(d)上記で得られたポリエステルラテックス分散液として、結晶性ポリエステル樹脂による微粒子(結着樹脂微粒子(1))が分散されてなる水系分散液を用意する工程、
(e)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる水系分散液を調製する工程、
(f)トナー粒子を形成する工程、
(g)トナー粒子の分散液を冷却する工程、
(h)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する工程、
(i)洗浄されたトナー粒子を乾燥する工程、
などの工程からなり、必要に応じて、(j)乾燥されたトナー粒子に外添剤を添加する工程、を加えることができる。
ここで、「水系分散液」とは、水系媒体中に、分散体(微粒子)が分散されてなるものであり、水系媒体とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。
水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
(a)結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)の形成工程(第1重合)
この工程においては、常法に従った乳化重合処理によって結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)を形成する。
具体的には、界面活性剤溶液に重合開始剤を添加して加熱し、撹拌させながら結着樹脂微粒子(2)のコア粒子形成用の重合性単量体溶液を滴下して反応させる。
反応温度は、例えば70〜90℃の範囲内であることが好ましい。
結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)の平均粒径は、体積基準のメジアン径で50〜150nmの範囲にあることが好ましい。結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)の体積基準のメジアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定される値である。
(b)結着樹脂微粒子(2)の前駆体(II)(コア粒子表面を被覆する中間層;中間層被覆粒子)の形成工程(第2重合)
この工程においては、第1重合によって形成した結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)の分散液に、重合開始剤と離型剤とを含む結着樹脂微粒子(2)の中間層形成用の重合性単量体とを添加し、結着樹脂微粒子(2)の前駆体(II)(中間層)を形成することで、中間層被覆粒子を形成する。
具体的には、結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)の分散液に界面活性剤溶液を加えたものと、離型剤を溶解させた結着樹脂微粒子(2)の中間層形成用の重合性単量体を加熱し、機械式分散機により混合・分散した後に、重合開始剤を添加し、加熱しながら撹拌することによって重合させる。
また、結着樹脂微粒子(2)の前駆体(I)(コア粒子)を分散させる分散液量は、第2重合を行う全溶媒中5〜50質量部の範囲内とすることにより、高温側の弾性と低温定着性の維持を両立することができる点で好ましい。
反応温度は、例えば70〜95℃の範囲内であることが好ましい。
(c)結着樹脂微粒子(2)の前駆体(III)(中間層被覆粒子表面を被覆する最外層)の形成による結着樹脂微粒子(2)(コア粒子/中間層/最外層の3層構造の粒子)の形成工程(第3重合)
この工程においては、第2重合によって形成した結着樹脂微粒子(2)の前駆体(II)(中間層被覆粒子)の分散液に、さらに結着樹脂微粒子(2)の最外層形成用の重合性単量体を加えて、結着樹脂微粒子(2)の前駆体(III)(最外層)を形成することで、結着樹脂微粒子(2)(コア粒子/中間層/最外層の3層構造の粒子)を形成する。
具体的には、加熱した結着樹脂微粒子(2)の前駆体(II)の分散液に重合開始剤を添加し、撹拌させながら結着樹脂微粒子(2)形成用の重合性単量体を滴下して重合させる。
反応温度は、例えば70〜95℃の範囲内であることが好ましい。
<結着樹脂微粒子(2)に用いられる結着樹脂>
上記結着樹脂は、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられているもののうち、ポリエステル樹脂以外のものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン系樹脂やアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン系樹脂、アミド樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記結着樹脂微粒子(2)の結着樹脂(非晶性樹脂)は、コストと熱特性の両立の観点から、結着樹脂微粒子(1)に用いられるもの(結晶性ポリエステル樹脂)を含めた結着樹脂全体に対して、50〜95質量%であることが好ましく、55〜92質量%であることがより好ましく、60〜89質量%であることが特に好ましく、65〜87質量%であることが最も好ましい。
上記結着樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体とが重合したスチレン・アクリル系樹脂を含有することが特に好ましい。スチレン・アクリル系樹脂は、高温で弾性が高いという特性を有する樹脂であるため、定着分離性と高温オフセット性が向上するという効果が得られる。
上記結着樹脂は、上記効果発現の観点から、スチレン・アクリル系樹脂を30質量%以上含むことが好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25,000〜60,000の範囲内で、かつ数平均分子量(Mn)が、8,000〜15,000の範囲内であることが、低温性及び光沢度安定性の確保の観点から好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂に用いられる重合性単量体としては、芳香族系ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられ、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものが好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等及びその誘導体が挙げられる。これらの芳香族系ビニル単量体は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系単量体としては、アクリル酸エステル系単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニルなどが挙げられ、メタクリル酸エステル系単量体として、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でもスチレン系単量体と、アクリル酸エステル系単量体又はメタクリル酸エステル系単量体の少なくともいずれか1種とを組み合わせて使用することが好ましい。
重合性単量体としては、第三のビニル系単量体を使用することもできる。第三のビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニル酢酸等の酸単量体及びアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン及びブタジエン等が挙げられる。
重合性単量体としては、さらに多官能ビニル系単量体を使用してもよい。多官能ビニル単量体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のジアクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレート等が挙げられる。多官能ビニル系単量体の重合性単量体全体に対する共重合比は通常、0.001〜5質量%の範囲内、好ましくは0.003〜2質量%の範囲内、より好ましくは、0.01〜1質量%の範囲内である。多官能ビニル系単量体の使用により、テトラヒドロフランに不溶のゲル成分が生成するが、ゲル成分の重合物全体に占める割合は通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
上記結着樹脂の作製方法としては、上記トナーの製造方法の1例として挙げた上記(a)〜(c)の形成工程による乳化重合法で作製されることが好ましい。乳化重合は、水系媒体中にスチレン、アクリル酸エステルなどの重合性単量体を分散し重合することによって得ることができる。水系媒体に重合性単量体を分散するためには界面活性剤を用いることが好ましく、重合(例えば、上記(a)〜(c)の形成工程の第1重合ないし第3重合)には重合開始剤、連鎖移動剤等を用いることができる。
(重合開始剤)
上記結着樹脂の重合(上記(a)〜(c)の形成工程の第1重合〜第3重合)に使用される重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸tert−ブチル等の過酸化物類;2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2'−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1'−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、及びポリ(テトラエチレングリコール−2,2'−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物等が挙げられる。重合開始剤の添加量は、所望する分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には重合性単量体に対して、0.1〜5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
(連鎖移動剤)
上記結着樹脂の製造(上記(a)〜(c)の形成工程の第1重合〜第3重合)においては、重合性単量体とともに連鎖移動剤を添加することも好ましい。連鎖移動剤を添加することによって重合体の分子量を制御できる。前述の芳香族系ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させる重合工程においては、スチレン・アクリル系重合性単量体の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン及びメルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
連鎖移動剤の添加量は、所望する分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には重合性単量体に対して、0.1〜5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
(界面活性剤)
結着樹脂を水系媒体中に分散し乳化重合法により重合する場合(上記(a)〜(c)の形成工程の第1重合〜第3重合)は、分散した液滴の凝集を防ぐために、通常分散安定剤が添加される。分散安定剤としては、公知の界面活性剤が使用可能であり、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の中から選択される分散安定剤を用いることができる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。なお、分散安定剤は着色剤やオフセット防止剤等の分散液にも使用できる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、及びモノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、必要に応じて、1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
<離型剤>
離型剤は、トナー粒子に含有されていればよい。即ち、上記結着樹脂の製造(上記(a)〜(c)の形成工程の第1重合〜第3重合)において、重合性単量体とともに離型剤を添加することも好ましい。但し、離型剤微粒子が分散されてなる水系分散液として用いてもよく、結着樹脂微粒子(1)が分散されてなる水系分散液等と共に混合してトナー形成用溶液を調製してもよい。離型剤がトナー粒子に含有されていることにより、トナー粒子に含有されている結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂の1種)と相溶しづらくなり、熱定着時に滲み出しやすくなることにより、高い定着分離性が得られる。
離型剤の含有量は、着色剤を除いたトナー粒子全量に対して、5〜20質量%であることが好ましい。これにより、離型剤を入れることによる耐熱性や耐久性の低下を抑制しつつ、定着分離性を向上できる、という効果が得られる。
上記結着樹脂(またはトナー粒子)中に含有される離型剤の平均粒径は、特に限られないが、例えば体積基準のメジアン径で3μm以下であることが好ましい。
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができるが、トナーの低温定着性及び離型性の向上の観点から、炭化水素系ワックス又はエステル系ワックスが好ましい。
具体的には、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニルなどのエステル系ワックス類などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらのワックスのうち、マイクロクリスタリンワックスを用いることが特に好ましい。マイクロクリスタリンワックスは、トナー内部で安定に結晶化されずにアスペクト比の大きなドメインに成長しやすく、通常温度において、当該ドメインはトナー粒子の表面に露出しにくくなる。これにより、耐熱性や、感光体フィルミング・キャリアスペント等による耐久性の低下を抑制するという効果が得られる。
マイクロクリスタリンワックスは、分岐構造を有しており、立体障害によりトナー内部で集まりにくいため、アスペクト比の大きなドメインに成長しやすいと考えられる。
また、これらのワックスのうち、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が40〜90℃の範囲内のものを用いることが好ましい。
また、トナー粒子中における離型剤の存在状態として、結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂)のドメインとは異なる独立したドメインを形成することが好ましい。離型剤と結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂)が、それぞれ異なる独立したドメインを形成することで、それぞれの機能を発揮しやすくなる。
本発明の製造方法においては、ワックス(離型剤)を上記結着樹脂で被覆した状態で、トナー粒子を作製すると、結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂)とは異なるドメインを形成しやすい。結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂)と離型剤が相溶することなく、異なる独立したドメインとしてマトリクス中に存在することで、結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂)と離型剤の有する機能が損なわれずそれぞれの持つ機能を十分に発揮させることができるので、低温定着性、定着分離性及びラフ紙でのオフセット性が良好なトナーとすることができる。
(d)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液を用意する工程
この工程においては、上記したポリエステルラテックス分散液の製造方法により、結晶性ポリエステル樹脂による結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液を調製することで、水系分散液を用意する。詳しくは、上記したポリエステルラテックス分散液の製造方法で説明した通りである。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、着色剤を除いたトナー粒子全量に対して、5〜20質量%の範囲内であることが好ましく、5〜18質量%であることが特に好ましく、6〜15質量%であることが最も好ましい。これにより、結着樹脂のシャープメルト性を向上させることによる低温定着性の向上という効果を得つつ、結晶性ポリエステル樹脂を入れることによる耐熱性の低下を抑制することができる。
(e)着色剤微粒子の水系分散液の調製工程
この工程は、トナー粒子として着色剤を含有するものを所望する場合に必要に応じて行う工程であって、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の水系分散液を調製する工程である。
着色剤微粒子の水系分散液は、界面活性剤を臨界ミセル濃度(CMC)以上に添加した水系媒体中に着色剤を分散させることにより得られる。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、使用する分散機としては、特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザーなどの加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミルなどの媒体型分散機が挙げられる。
着色剤微粒子は、分散した状態で体積基準のメジアン径が10〜300nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは100〜200nmの範囲内、特に好ましくは100〜150nmの範囲内である。着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される値である。
<着色剤>
上記着色剤としては、公知の種々の顔料や染料を用いることができる。
着色剤の1種であるカーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、黒色酸化鉄としては、例えばマグネタイト、ヘマタイト、三酸化チタン鉄などが挙げられる。
染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などが挙げられる。
顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60などが挙げられる。
本発明のトナーの製造方法により各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のトナーの製造方法に用いられる着色剤は、得られるトナー粒子中に好ましくは1〜10質量%の範囲、より好ましくは2〜8質量%の範囲となるように、着色剤微粒子が分散されてなる水系分散液を含むトナー形成用溶液を調製することが好ましい。着色剤の含有量が当該範囲であることにより、得られるトナーに所望の着色力を得ることができ、さらに着色剤の遊離やキャリアなどへの付着から帯電性への影響を最小限にとどめることができる。
また、本工程においては、着色剤以外の他の添加剤を含む水系分散液を調製してもよい。例えば、トナー粒子として荷電制御剤を含有するものを所望する場合、必要に応じて、荷電制御剤を水系媒体中に含有させた荷電制御剤の水系溶液を調製してもよい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。本発明の製造方法では、荷電制御性および帯電安定性の観点から、本発明の製造方法により得られるトナー粒子に荷電制御剤が含有されるように、トナー粒子を作製するのが好ましい。
荷電制御剤の含有割合は、本発明の製造方法により得られるトナー粒子中に0〜5質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0〜0.5質量%の範囲内となるように、荷電制御剤の水系溶液を含むトナー形成用溶液を調製することが好ましい。
(f)トナー粒子の形成工程
この工程においては、前記(c)工程の第3重合によって形成した結着樹脂微粒子(2)の表面に、前記(d)工程で用意した結晶性ポリエステル樹脂微粒子と前記(e)工程で調製した着色剤微粒子とを凝集させて、さらに加熱によって融着させて、トナー粒子を形成する。
具体的には、結着樹脂微粒子(2)及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子、及び着色剤微粒子が分散されてなる水系分散液中に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を添加し、加熱することによって凝集、融着させる。これによりトナー粒子を形成する。
融着温度は、例えば70〜95℃の範囲内であることが好ましい。
(凝集剤)
この工程において使用される凝集剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などの金属塩から選択されるものが好適に使用される。
金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。
具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
トナー粒子の形成工程に加えて、熟成工程を備えることも好ましい。
熟成工程においては、トナー粒子の形成工程によって得られたトナー粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させる。
熟成処理は、具体的には、トナー粒子が分散された系を加熱撹拌することにより、トナー粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間などにより調整することにより行われる。
(g)冷却工程
この工程は、トナー粒子の分散液を冷却処理する工程である。
冷却処理の条件としては、1〜20℃/分の範囲内の冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理の具体的な方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法などを例示することができる。
(h)濾過・洗浄工程
この工程は、冷却されたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去して洗浄する工程である。
固液分離には、特に限定されずに、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などを用いることができる。また、洗浄においては、濾液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄することが好ましい。
(i)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する工程であり、一般的に行われる公知のトナー粒子の製造方法における乾燥工程に従って行うことができる。
具体的には、トナーケーキの乾燥に使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
乾燥されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥されたトナー粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、その凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
(j)外添剤の添加工程
この工程は、トナー粒子に対して外添剤を添加する場合に必要に応じて行う工程である。
上記のトナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加した状態で使用してもよい。
<外添剤>
外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
これらの外添剤の添加量は、その合計の添加量がトナー粒子100質量部に対して好ましくは0.05〜5質量部の範囲内、より好ましくは0.1〜3質量部の範囲内とされる。
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を使用することができる。
なお、本発明のトナーの製造方法においては、さらに上記で得られたポリエステルラテックス分散液の1種である非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液を混合してトナー形成用溶液を調製してもよい。非結晶性ポリエステル樹脂を含有することで、得られるトナー粒子に良好な耐熱保管性を有し、かつ結晶性ポリエステル樹脂と相溶することにより低温定着化ができる点で好ましい。
[本発明の製造方法で得られる静電荷像現像用トナー]
本発明の製造方法で得られる「静電荷像現像用トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。本発明の製造方法で得られるトナー粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含んで構成された粒子であり、結着樹脂は、上記で得られたポリエステルラテックス分散液由来のポリエステル樹脂を含む。また、本発明の製造方法で得られるトナー粒子には、上記したように、さらに必要に応じて、荷電制御剤等の他の成分を含有しても良く、いわゆる流動化剤やクリーニング助剤等の外添剤を外添していてもよい。
<トナーのガラス転移温度>
本発明の製造方法で得られたトナーは、ガラス転移温度(Tg)が50〜70℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは55〜65℃の範囲内である。トナーのガラス転移温度が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び耐熱保管性が確実に両立して得られる。また、トナーのガラス転移温度が上記の範囲にあることにより、トナーの耐熱性(熱的強度)が維持されて、その結果、十分な耐熱保管性及び耐ホットオフセット性が確実に得られるものと考えられる。
<トナーの融点>
本発明の製造方法で得られたトナーは、融点(Tm)が60〜90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは65〜80℃の範囲内である。トナーの融点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び耐熱保管性が確実に両立して得られる。また、トナーの融点を上記範囲とすることにより、トナーの耐熱性(熱的強度)も良好に維持されて、これにより十分な耐熱保管性も確保できるものと考えられる。トナーのガラス転移温度及び融点は、前記結晶性ポリエステル樹脂と同様に測定される。
<トナーの粒径>
本発明の製造方法で得られたトナーにおいては、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3〜8μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜8μmの範囲内である。この平均粒径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間及び/又は結着樹脂の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することなどができる。
トナーの体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出される値である。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。
そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
<トナーの平均円形度>
本発明の製造方法で得られたトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内であることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度範囲で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(y)に従って円形度を算出する。トナーの平均円形度は、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
<現像剤>
本発明の製造方法で得られたトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
キャリアの平均粒径は、体積基準のメジアン径で20〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは25〜80μmの範囲内とされる。
キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
≪樹脂および離型剤の酸価≫
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製した。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとした。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製した。標定はJIS K0070−1966の記載に従った。
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(体積比2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解した。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定した。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとした。
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(体積比2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行った。
(酸価の算出)
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出した。
<ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a〕およびその合成方法>
(ハイブリッド非結晶性ポリエステル樹脂〔a1−1〕、〔a1−2〕、〔a1−3〕の調製)
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
・スチレン 80質量部
・n−ブチルアクリレート 20質量部
・アクリル酸 10質量部
・重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 16質量部。
また、下記の重縮合系樹脂(非結晶性ポリエステル樹脂:APEs)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・テレフタル酸 66.9質量部
・フマル酸 47.4質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部。
次いで、撹拌下で、滴下ロートに入れた付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.4質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて表1に示す所望の酸価(AV[mgKOH/g−pes])に達するまで反応を行った。この際、減圧下(20kPa)での反応時間は7時間であった。次いで脱溶剤を行い、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a1−1〕を得た。同様に、減圧下(20kPa)にて反応時間を表1に示すように変え、表1に示す異なる酸価のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a1−2〕、〔a1−3〕を得た。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a2−1〕〜〔a4−2〕の合成)
上記のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a1−1〕の合成方法において、下記表1の条件に従ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a2−1〕、〔a3−1〕及び〔a4−1〕の合成をそれぞれ行った。同様に、〔a2−1〕の合成方法において、減圧下(20kPa)にて反応時間を表1に示すように変え、表1に示す異なる酸価のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a2−2〕、〔a2−3〕をそれぞれ得た。また〔a3−1〕の合成方法において、減圧下(20kPa)にて反応時間を表1に示すように変え、表1に示す異なる酸価のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a3−2〕を得た。〔a4−1〕の合成方法において、減圧下(20kPa)にて反応時間を表1に示すように変え、表1に示す異なる酸価のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a4−2〕を得た。表1におけるモノマー1、モノマー2、モノマー3、重合開始剤、酸モノマー1、酸モノマー2、酸モノマー3、アルコールモノマー1、アルコールモノマー2はそれぞれ、スチレン、n−ブチルアクリレート、アクリル酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、テレフタル酸、フマル酸、コハク酸、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物である。
<ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a〕を含む樹脂粒子〔A〕の水系分散液の調製>
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a1−3〕を含む樹脂粒子〔A3〕の水系分散液の調製)(実施例3)
(工程1)
上記合成により得られたハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a1−3〕72.6質量部をメチルエチルケトン72.6質量部に、66℃で30分撹拌し、溶解させた。これにより工程1の溶解液を得た。
(工程2)
次に、工程1で得られた溶解液に、界面活性剤として、15質量%のエマールE−27C(花王株式会社製)44.8質量部を添加し混合し、この溶解液を、撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、中和剤(1)として、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.91質量部を添加した。
ここで、予めポリエステル樹脂の樹脂種ごとに酸価と中和度とに応じた共相の粘度(液粘度)データを取っておくことで、液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)の添加量を決定した。これにより工程2による中和液を得た。
(工程3)
工程2で得られた中和液(溶解液)の粘度を測定し(粘度は表2に示す)、粘度から推定される樹脂の酸価(AV)を考慮し、目標粒径120nmとなるよう、撹拌しながら中和剤(2)−1として、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.37質量部を添加した。これにより、工程3による中和液を得た。
ここで、粘度から推定される樹脂の酸価(AV)は、予め取得した上記ポリエステル樹脂の樹脂種ごとの酸価と中和度とに応じた共相の粘度(液粘度)データから推定した。更に液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)−1の添加量(他の実施例において、中和剤(2)を2回以上に分割して中和剤(2)−1、(2)−2、更には中和剤(2)−3を用いる場合には、中和剤(2)の合計添加量)は、粘度から推定される樹脂の酸価(AV)を考慮し、目標粒径(120nm)となるときの粘度値になるよう、予め取っておいた実験データであるAV(酸価)と中和度と粒径と粘度の関係式(上記の1回目の中和による共相の物性(系内の様子)に応じて2回目以降に投入する中和剤量を調整する方法として具体的に説明した操作1〜3を行うことで求まる関係式;以下、同様である)により決定した。
(工程4)
続いて、工程3で得られた中和液に、66℃に温めた純水210質量部を70分間にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態(樹脂粒子が形成された分散液)を得た。
工程4で得られた乳化液(樹脂粒子分散液)の油滴の粒径を粒度分布測定器「Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)」にて測定した結果、体積平均粒径は128nmであった。
(工程5)(中和剤(3)を用いる形態)
次いで、工程4で得られた乳化液(樹脂粒子分散液)を66℃で保温したまま、中和剤(3)として、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.51質量部を添加した。ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、固形分量が13.5質量%の樹脂粒子〔a1−3〕が分散された水系分散液〔A3〕を調製した。
上記粒度分布測定器にて測定した結果、樹脂微粒子〔A3〕の体積平均粒径は124nmであった。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a3−2〕を含む樹脂粒子〔A15〕の水系分散液の調製)(比較例4)
(工程1)(溶解前に中和剤を添加する形態)
上記合成により得られたハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂〔a3−2〕87.2質量部をメチルエチルケトン58.1質量部および25質量%の水酸化ナトリウム1.83質量部と混合し、66℃で30分撹拌し、溶解させた。これにより工程1の溶解液を得た。
(工程2)
次に、工程1で得られた溶解液に、界面活性剤として、15質量%のエマールE−27C(花王株式会社製)17.9質量部を添加し混合し、この溶解液を、撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、中和剤(1)として、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.83質量部を添加した。
ここで、工程1の溶解前の中和剤及び本工程2の中和剤(1)の合計の添加量は、目標粒径250nmとなるよう、予め取っておいた実験データであるAV(酸価)と中和度と粒径と粘度の関係式により決定した。これにより、工程2による中和液を得た。
(工程4)(工程3を行うことなく、工程4を実施)
続いて、工程2で得られた中和液に、66℃に温めた純水210質量部を70分間にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態(樹脂粒子が形成された分散液)を得た。
工程4で得られた乳化液(樹脂粒子分散液)の油滴の粒径を粒度分布測定器「Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)」にて測定した結果、体積平均粒径は221nmであった。
(工程5)(中和剤(3)を用いない形態)
次いで、工程4で得られた乳化液を66℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、固形分量が16.3質量%の樹脂粒子〔a3−2〕が分散された水系分散液〔A15〕を調製した。
上記粒度分布測定器にて測定した結果、樹脂微粒子〔A15〕の体積平均粒径は210nmであった。
(樹脂粒子〔a1−1〕〜〔a4−2〕の水系分散液〔A1〕〜〔A2〕、〔A4〕〜〔A14〕の調製)(実施例1〜2、4〜11及び比較例1〜3)
上記のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子〔A3〕、〔A15〕の調整方法(樹脂粒子〔A3〕、〔A15〕の水系分散液の調製)において、下記表2の条件に従ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子〔A1〕〜〔A2〕、〔A4〕〜〔A14〕の合成(樹脂粒子〔A1〕〜〔A2〕、〔A4〕〜〔A14〕の水系分散液の調製)を行った。表2における強アルカリ、弱アルカリはそれぞれ25質量%の水酸化ナトリウム水溶液、30質量%のアンモニア水溶液である。また、中和剤(1)および(2)を投入した際の液粘度についても表2(表2−1〜表2−3)に示す。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c〕およびその合成方法>
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c2−1〕、〔c2−2〕の合成)
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
・スチレン 43質量部
・n−ブチルアクリレート 15質量部
・アクリル酸 6質量部
・重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部。
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・セバシン酸 281質量部
・1,12−ドデカンジオール 283質量部。
次いで、撹拌下で滴下ロートに入れた付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて表3に示す所望の酸価に達するまで反応を行うことによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c2−1〕を得た。同様に、減圧下(20kPa)にて反応時間を表3に示すように変え、表3に示す異なる酸価のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c2−2〕を得た。
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c1−1〕〜〔c5−3〕の合成)
上記のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c2−1〕の合成方法において、下記表3の条件に従って結晶性ポリエステル樹脂〔c1−1〕、〔c3−1〕、〔c4−1〕及び〔c5−1〕の合成をそれぞれ行った。同様に、〔c1−1〕の合成方法において、減圧下(20kPa)にて反応時間を表3に示すように変え、表3に示す異なる酸価のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c1−2〕を得た。また〔c3−1〕の合成方法において、減圧下(20kPa)にて反応時間を表3に示すように変え、表3に示す異なる酸価のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c3−2〕を得た。更に〔c4−1〕の合成方法において、減圧下(20kPa)にて反応時間を表3に示すように変え、表3に示す異なる酸価のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c4−2〕を得た。また、〔c5−1〕の合成方法において、減圧下(20kPa)にて反応時間を表3に示すように変え、表3に示す異なる酸価のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c5−2〕、〔c5−3〕をそれぞれ得た。表3におけるモノマー1、モノマー2、モノマー3、重合開始剤、酸モノマー3、酸モノマー4、酸モノマー5、アルコールモノマー3、アルコールモノマー4、アルコールモノマー5、アルコールモノマー6はそれぞれ、スチレン、n−ブチルアクリレート、アクリル酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、コハク酸、セバシン酸、ヘキサデカン二酸、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオールである。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c〕を含む樹脂粒子〔C〕の水系分散液の調製>
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔c4−2〕を含む樹脂粒子〔C8〕の水系分散液の調製)(実施例19)
(工程1)
上記合成により得られた結晶性ポリエステル樹脂〔c4−2〕87.2質量部をメチルエチルケトン58.1質量部に、66℃で30分撹拌し、溶解させた。これにより工程1の溶解液を得た。
(工程2)
次に、工程1で得られた溶解液に、15質量%のエマールE−27C(花王株式会社製)17.9質量部を添加し混合し、この溶解液を、撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.29質量部を添加した。
ここで、予めポリエステル樹脂の樹脂種ごとに酸価と中和度に応じた共相の粘度(液粘度)データを取っておくことで、液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)の添加量を決定した。これにより工程2による中和液を得た。これにより、工程2による中和液を得た。
(工程3)
工程2で得られた中和液(溶解液)の粘度を測定し(粘度は表2に示す)、粘度から推定される樹脂の酸価(AV)を考慮し、目標粒径300nmとなるよう、撹拌しながら中和剤(2)−1として、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.87質量部を添加した。これにより、工程3による中和液を得た。
ここで、粘度から推定される樹脂の酸価(AV)は、予め取得した上記ポリエステル樹脂の樹脂種ごとの酸価と中和度に応じた共相の粘度(液粘度)データから推定した。更に液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)−1の添加量(他の実施例において、中和剤(2)を2回以上に分割して中和剤(2)−1、(2)−2、更には中和剤(2)−3を用いる場合には、中和剤(2)の合計添加量)は、粘度から推定される樹脂の酸価(AV)を考慮し、目標粒径(300nm)となるときの粘度値になるよう、予め取っておいた実験データであるAV(酸価)と中和度と粒径と粘度の関係式により決定した。
(工程4)
続いて、工程3で得られた中和液に、66℃に温めた純水210質量部を70分間にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態(樹脂粒子が形成された分散液)を得た。
工程4で得られた乳化液(樹脂粒子分散液)の油滴の粒径を粒度分布測定器「Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)」にて測定した結果、体積平均粒径は324nmであった。
(工程5)(中和剤(3)を用いる形態)
次いで、工程4で得られた乳化液(樹脂粒子分散液)を66℃で保温したまま、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.51質量部を添加した。ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、固形分量が15.4質量%の樹脂粒子〔c4−2〕が分散された水系分散液〔C8〕を調製した。
上記粒度分布測定器にて測定した結果、樹脂微粒子〔c4−2〕の体積平均粒径は311nmであった。
(樹脂粒子〔c1−1〕〜〔c5−2〕の水系分散液〔C1〕〜〔C7〕、〔C9〕〜〔C14〕の調製)(実施例12〜18、20〜22及び比較例5〜7)
上記のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子〔C8〕の調整方法(樹脂粒子〔C8〕の水系分散液の調製)において、下記表4の条件に従ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子〔C1〕〜〔C7〕、〔C9〕〜〔C14〕の合成(樹脂粒子〔C1〕〜〔C7〕、〔C9〕〜〔C14〕の水系分散液の調製)を行った。表4における強アルカリ、弱アルカリはそれぞれ25質量%の水酸化ナトリウム水溶液、30質量%のアンモニア水溶液である。また、中和剤(1)および(2)を投入した際の液粘度についても表4(表4−1〜表4−3)に示す。
≪評価方法≫
製造した各分散液A1〜A15、C1〜C14を用いて、樹脂粒子の粒径をNanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)にて体積平均粒径を測定し、下記を評価した。
<粒径バラつき>
同じ組成で合成された酸価違いの樹脂を用いた分散液の粒径を比較したとき、目標粒径からの粒径のバラつきを以下の4段階のランクで評価した。得られた結果は、上記表2および4に示す。
(粒径バラつきの評価基準)
◎:±10nm以内の範囲である
○:±25nm以内(±10nm以内の範囲を除く)の範囲である
△:±50nm以内(±25nm以内の範囲を除く)の範囲である
×:±50nm以内の範囲を外れた範囲でバラついている。
<繰り返し再現性>
同じ樹脂を用いて同一条件で樹脂粒子を2回以上作製し粒径を比較したとき、粒径のバラつきを以下の4段階のランクで評価した。得られた結果は、上記表2および4に示す。
(繰り返し再現性の評価基準)
◎:±5nm以内の範囲で再現する
○:±10nm以内(±5nm以内の範囲を除く)の範囲で再現する
△:±15nm以内(±10nm以内の範囲を除く)の範囲で再現する
×:±15nm以内の範囲を外れた範囲でバラついている。
<保管性>
樹脂粒子を作製直後に測定したものと、温度50℃、湿度85%RHの高温高湿環境で1か月保管して測定した粒径を比較したとき、粒径のバラつきを以下の3段階のランクで評価した。得られた結果は、上記表2および4に示す。
(保管性の評価基準)
◎:±10nm以内の範囲である
○:±25nm以内(±10nm以内の範囲を除く)の範囲である
△:±50nm以内(±25nm以内の範囲を除く)の範囲である。
表2および4に示した結果から明らかなように、本実施例1〜22の各分散液A1〜A11、C1〜C11は比較例1〜7の各分散液A12〜A15、C12〜C14に比べて粒径バラつき、繰り返し再現性及び保管性の評価が、いずれも優れた性能を示すものであった(○以上の評価)。これに対して比較例1〜7の各分散液A12〜A15、C12〜C14は、粒径バラつき評価が、劣る評価(×評価)であった。このことから、既存のポリエステルの転相乳化のように1回だけの中和(但し、比較例4のように工程1の溶解前に中和していても、他の比較例と同様に工程3の中和を行わない場合には、1回だけの中和とする)により共相が形成されるが、系内のバラつきに応じて共相の物性が変化する。この共相を形成するときの中和剤量が最終的な粒径を決定付けるが、生産現場では常に工程のバラつき(系内に含まれる水や樹脂や溶剤量のバラつきなど)があるため、中和剤量が同じでも同じ共相状態が形成されるとは限らず粒径がバラつくという問題があることが確認できた。また比較例1〜7の各分散液A12〜A15、C12〜C14では、繰り返し再現性の評価においても劣る評価(×又は△評価)であることが確認できた。
〔スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液(B1)〕
(第1重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8g及びイオン交換水3Lを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加した後、再度液温80℃とし、下記原料モノマーの混合液を1時間かけて滴下した。その後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を調製した。
・スチレン(St) 480g
・n−ブチルアクリレート(BA) 250g
・メタクリル酸(MAA) 68g。
(第2重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7gをイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込んだ。溶液を98℃に加熱後、上記第1重合で得られたスチレン−アクリル樹脂粒子の分散液280gと、下記原料モノマーと離型剤を90℃にて溶解させた溶液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
・スチレン(St) 256g
・n−ブチルアクリレート(BA) 115g
・メタクリル酸(MAA) 21g
・n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 5g
・マイクロクリスタリンワックス(融点73℃の離型剤) 124g。
調製した分散液に、過硫酸カリウム6gをイオン交換水200mLに溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を調製した。
(第3重合)
上記第2重合により得られたスチレン−アクリル樹脂粒子の分散液にイオン交換水400mLを添加してよく混合した後、過硫酸カリウム11gをイオン交換水400mLに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下において、下記原料モノマーの混合液を1時間かけて滴下した。
・スチレン(St) 435g
・n−ブチルアクリレート(BA) 157g
・メタクリル酸(MAA) 41g
・n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 13g。
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液(B1)を調製した。
分散液(B1)中のスチレン−アクリル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は220nmであり、ガラス転移温度(Tg)が55℃であり、重量平均分子量(Mw)が38000であった。
〔着色剤微粒子の分散液(Bk)〕
ドデシル硫酸ナトリウム90gをイオン交換水1600gに撹拌溶解した。得られた溶液を撹拌しながら、リーガル330R(キャボット社製のカーボンブラック)420gを徐々に添加し、撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の分散液(Bk)を調製した。
着色剤微粒子の分散液(Bk)中の着色剤微粒子の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計ELS−800(大塚電子社製)を用いて測定したところ、120nmであった。
〔トナー(1)及び現像剤(1)〕(実施例A1)
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液(B1)147質量部(固形分換算)及びイオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、着色剤微粒子の分散液(Bk)40質量部(固形分換算)を投入し、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。この系を50分間かけて70℃まで昇温し、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液(C7)98質量部(固形分換算)を10分間かけて添加後、20分かけて83℃まで昇温した。この状態でコールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液(A1)98質量部(固形分換算)を60分かけて添加し、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに昇温を行い、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、測定装置FPIA−2100(Sysmex社製)を用いて、HPF検出数を4000個として測定したトナーの平均円形度が0.945になった時点で、2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
その後、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、また固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、ブラック色のトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径:12nm、疎水化度:68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度:63)1.0質量部を添加した。次に、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー(1)を製造した。
トナー(1)に対して、シリコーン樹脂で被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤(1)を製造した。
〔トナー(2)〜(29)及び現像剤(2)〜(29)〕(実施例A2〜A22及び比較例A1〜A7))
上記トナー(1)及び現像剤(1)の製造において、ポリエステル樹脂粒子の分散液の種類を下記表5に示すように変更したこと以外は、トナー(1)と同様にして、各トナー(2)〜(29)とその現像剤(2)〜(29)を製造した。
表5中、「APES分散液」は非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液の略称である。また、「CPES分散液」は結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液の略称である。
〔評価〕
製造した各トナー(1)〜(29)の現像剤(1)〜(29)を用いて、各トナー(1)〜(29)の低温定着性と耐熱性をトナー性能として評価した。
(低温定着性)
複写機bizhub PRO(登録商標) C6501(コニカミノルタ株式会社製)において、定着用ヒートローラの表面温度を100〜210℃の範囲で変更することができるように、定着装置を改造した。この改造機に現像剤(1)〜(29)をそれぞれ装填して、A4サイズの普通紙(坪量80g/m2)上に、トナー付着量が11mg/10cm2のベタ画像を形成して定着処理する定着実験を、設定する定着温度を85℃から130℃まで5℃ずつ昇温させながら繰り返し行った。
各定着温度の定着実験後の用紙を、用紙上のベタ画像に荷重をかけるように折り機で折り、0.35MPaの圧縮空気を吹き付けた。この用紙の折り目部分のベタ画像を下記評価基準により5段階のランク1〜5で評価した。
(評価基準)
ランク5:全く折れ目なし
ランク4:折れ目に従った部分的な剥離あり
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり
ランク1:折れ目に大きな剥離あり。
評価結果がランク3となった各定着実験の定着温度のうち、最も低い定着温度を、下限定着温度として下記のようにランク評価した。下限定着温度は低いほど、低温定着性に優れ、○及び◎ランクであれば実用上問題なく、合格と判断した。得られた結果は、上記表5に示す。
(低温定着性のランク評価)
◎:下限定着温度が110℃以下であり、低温定着性が非常によい
○:下限定着温度が110℃より高く120℃以下であり、低温定着性がよい
×:下限定着温度が120℃より高く、低温定着性が悪い。
<低温定着性の安定性>
任意のトナー同士を比較したとき、低温定着性のバラつきを以下の3段階のランクで評価した。得られた結果は、上記表5に示す。なお、任意のトナー同士としては、表5にあるように、APES分散液に同じものを用いたもの(例えば、APES分散液(A10)を用いた実施例A12とA13等)、またはCPES分散液に同じものを用いたもの(例えば、CPES分散液(C7)を用いた実施例A1〜A3等)であり、これら任意のトナー同士ごとに評価した。
(低温定着性のバラつき(繰り返し再現性;低温定着性の安定性)の評価基準)
◎:上記低温定着性のランク評価において、半数よりも多くが◎であり、それ以外が○である
○:上記低温定着性のランク評価において、半数以下が◎であり、それ以外が○である
×:上記低温定着性のランク評価において、一部に×が含まれている。
(耐熱性)
製造した各トナー(1)〜(29)をそれぞれ用いて行った。まずトナー0.5gを、内径21mmの10mLガラス瓶に取り蓋を閉めて、タップデンサーKYT−2000(セイシン企業製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で55℃、35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)のふるい上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定して、送り幅1mmの振動強度で10秒間振動を加えた後、ふるい上に残存したトナー量を測定した。
測定したトナー量から、トナー凝集率(%)を下記式により算出した。
このトナー凝集率(%)から下記基準によりトナーの耐熱性を評価し、◎及び○が実用上問題なく使用できる合格レベルと判断した。
(耐熱性のランク評価)
◎:トナー凝集率が15質量%未満であり、耐熱性が非常に高い
○:トナー凝集率が15質量%以上20質量%以下であり、耐熱性が高い
×:トナー凝集率が20質量%を超え、耐熱性が低く、使用不可。
<耐熱性の安定性>
任意のトナー同士を比較したとき、耐熱性のバラつきを以下の3段階のランクで評価した。得られた結果は、上記表5に示す。なお、任意のトナー同士としては、表5にあるように、APES分散液に同じものを用いたもの(例えば、APES分散液(A10)を用いた実施例A12とA13等)、またはCPES分散液に同じものを用いたもの(例えば、CPES分散液(C7)を用いた実施例A1〜A3等)であり、これら任意のトナー同士ごとに評価した。
(耐熱性のバラつき(繰り返し再現性;耐熱性の安定性)の評価基準)
◎:上記耐熱性のランク評価において、半数よりも多くが◎であり、それ以外が○である
○:上記耐熱性のランク評価において、半数以下が◎であり、それ以外が○である
×:上記耐熱性のランク評価において、一部に×が含まれている。
表5に示した結果から明らかなように、本実施例A1〜A22の各トナー(1)〜(22)及びその現像剤(1)〜(22)は、粒径バラつき、繰り返し再現性及び保管性の評価が、いずれも優れた性能を示す各分散液A1〜A11の何れか1種と、各分散液C1〜C11の何れか1種とを用いて作製されている。一方、比較例A1〜A7の各トナー(23)〜(29)及びその現像剤(23)〜(29)は、粒径バラつき評価が劣る各分散液A12〜A15の何れか1種、または各分散液C12〜C14の何れか1種を用いて作製されている。そのため、本実施例A1〜A22の各トナー(1)〜(22)及びその現像剤(1)〜(22)は、比較例A1〜A7の各トナー(23)〜(29)及びその現像剤(23)〜(29)に比べて、低温定着性、低温定着性のバラつき(低温定着性の安定性)、耐熱性及び耐熱性のバラつき(耐熱性の安定性)の評価が、いずれも優れた性能を示すものであった(○以上の評価)。これに対して比較例A1〜A7の各トナー(23)〜(29)及びその現像剤(23)〜(29)は、低温定着性と低温定着性のバラつき(低温定着性の安定性)の評価が劣るか、或いは耐熱性と耐熱性のバラつき(耐熱性の安定性)の評価が劣ることが確認できた。このことからポリエステル樹脂粒子の粒径バラつき、繰り返し再現性及び保管性の何れにも優れた分散液を用いてトナーを作製した場合、トナー構造・物性、特に低温定着性、低温定着性のバラつき(低温定着性の安定性)、耐熱性及び耐熱性のバラつき(耐熱性の安定性)がいずれも優れた性能を発現できることが確認できた。
11 ポリエステル樹脂(PES粉体)、
12 有機溶剤(油相)、
13 PES溶解液(油相)、
14 中和剤(1)、
15 工程2で得られた溶液;中和液(共相)、
16 中和剤(2)、
17 工程3で得られた溶液;中和液(共相)、
18 純水、
19 工程4で得られた樹脂粒子分散液;PES粒子分散液(水相)、
20 中和剤(3)、
21 中和剤(3)で中和後の樹脂粒子分散液;PES粒子分散液(水相)、
22 工程5で得られた樹脂粒子分散液;PES粒子分散液(水相)。

Claims (6)

  1. 下記の工程を含む転相乳化法を用いるポリエステルラテックス分散液の製造方法:
    工程1 ポリエステル樹脂と有機溶剤とを混合し溶解液を作製する工程、
    工程2 工程1で得られた溶解液に液粘度が5〜500mPa・sの範囲となる量の中和剤(1)を混合する工程、
    工程3 工程2で得られた溶液の状態を確認し、液粘度が50〜1000mPa・sの範囲となる中和剤(2)の添加量を決めて少なくとも一回は前記中和剤(2)を投入混合する工程、
    工程4 工程3で得られた溶液に純水を連続的に添加し樹脂粒子を形成し、樹脂粒子分散液を得る工程、および
    工程5 工程4で得られた前記樹脂粒子分散液から有機溶剤を脱溶する工程。
  2. 前記工程5において有機溶媒を脱溶する前に、当該脱溶前の溶液中の中和度が3〜25%となる量の中和剤(3)を投入することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
  3. 前記工程2および3で使用される中和剤がpH11以上の強アルカリ性の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
  4. 前記工程3の後の溶液中の中和度が25〜100%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
  5. 前記工程2および3で混合する前記中和剤(1)および(2)の総量に対し、前記中和剤(1)の割合が55〜95質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルラテックス分散液の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によりポリエステルラテックス分散液を製造し、得られたポリエステルラテックス分散液を含むトナー形成用溶液を用い、少なくとも当該ラテックス分散液中に含まれる樹脂粒子を凝集、融着させることを含むことを特徴とするトナーの製造方法。
JP2017026433A 2017-02-15 2017-02-15 ポリエステルラテックス分散液の製造方法 Pending JP2018131544A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017026433A JP2018131544A (ja) 2017-02-15 2017-02-15 ポリエステルラテックス分散液の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017026433A JP2018131544A (ja) 2017-02-15 2017-02-15 ポリエステルラテックス分散液の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018131544A true JP2018131544A (ja) 2018-08-23

Family

ID=63248890

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017026433A Pending JP2018131544A (ja) 2017-02-15 2017-02-15 ポリエステルラテックス分散液の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018131544A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020013016A1 (ja) 2018-07-11 2020-01-16 日本特殊陶業株式会社 光波長変換部材及び発光装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020013016A1 (ja) 2018-07-11 2020-01-16 日本特殊陶業株式会社 光波長変換部材及び発光装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6123762B2 (ja) 静電荷像現像用トナーおよびその製造方法
JP6601224B2 (ja) トナー
JP2016206387A (ja) 静電荷像現像用トナー
JP6079921B1 (ja) トナー
JP6926704B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2007003840A (ja) 静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤ならびに画像形成方法
JP6168181B2 (ja) 静電荷像現像用トナーおよびその製造方法
JP6237710B2 (ja) 静電荷像現像用トナー
JP6119786B2 (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2019144368A (ja) 静電荷像現像用トナー
JP6256425B2 (ja) 静電荷像現像用トナー
JP2017173786A (ja) 静電潜像現像用コアシェル型トナー、その製造方法およびこれを用いた画像形成方法
JP6620577B2 (ja) 静電荷像現像用トナー
JP2016161778A (ja) 静電荷像現像用トナー
JP6413513B2 (ja) 静電荷像現像用トナーの製造方法
JP6597319B2 (ja) 静電潜像現像用トナーおよびその製造方法
JP2016218198A (ja) 静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナー
JP2016133669A (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2018128511A (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2017203850A (ja) 静電潜像現像用トナー
JP2017156541A (ja) 静電荷像現像用トナーの製造方法
JP6930237B2 (ja) 静電荷像現像用トナー
JP2017032598A (ja) 静電荷像現像用トナー
JP6512074B2 (ja) 静電荷像現像用トナーの製造方法
JP2018131544A (ja) ポリエステルラテックス分散液の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170601