JP7336998B2 - 窒素元素を含む炭素質材料、その製造方法、電極および電池 - Google Patents
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Description
〔1〕酸素元素含有量は0.8質量%以上1.5質量%以下であり、窒素元素と酸素元素の質量比O/Nは0.2以上1.0以下であり、酸素不存在下40℃から2400℃に昇温したときに検出される全一酸化炭素量に対する500~1000℃で検出される一酸化炭素量は22モル%以上であり、BET法により求めた比表面積は1m2/g以上80m2/g以下である炭素質材料。
〔2〕前記炭素質材料の体積平均粒径は0.05μm以上200μm以下である、〔1〕に記載の炭素質材料。
〔3〕CuKα線を用いて測定される前記炭素質材料の(002)面の面間隔d002は3.4Å以上3.95Å以下である、〔1〕または〔2〕に記載の炭素質材料。
〔4〕非水電解質電池負極活物質である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔5〕非水電解質電池または水系電解質電池の導電材である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の炭素質材料を含む、電極。
〔7〕〔6〕に記載の電極を含む、電池。
〔8〕リグニン、アミン、水、およびアルデヒドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液から溶媒を除去して固化する工程、および
得られた固化物を不活性ガス雰囲気下500℃以上1500℃以下の温度で炭化して炭素質材料を得る工程を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔9〕前記炭化工程が、500℃以上900℃以下で炭化する第一の炭化工程および900℃以上1500℃以下で炭化する第二の炭化工程の二工程を含む、〔8〕に記載の方法。
本発明の炭素質材料は、酸素元素含有量が0.8質量%以上1.5質量%以下であり、窒素元素と酸素元素の質量比O/Nが0.2以上1.0以下であり、酸素不存在下40℃から2400℃に昇温したときに検出される全一酸化炭素量に対する500~1000℃で検出される一酸化炭素量が22モル%以上であり、BET法により求めた比表面積が1m2/g以上80m2/g以下である。
本発明の炭素質材料は、酸素元素含有量が0.8質量%以上1.5質量%以下である。酸素元素含有量が0.8質量%未満であると、電解液親和性が低下し、所望の特性を有する非水電解質二次電池が得られない可能性があり、酸素元素含有量が1.5質量%を超えると、イオン吸着による不可逆反応が促進され、不可逆容量が増加しやすくなる。また、分解ガス発生が増加しやすくなることから、サイクル耐久性も低下しやすくなる。酸素元素含有量は、好ましくは0.9質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは1.4質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下である。酸素元素含有量が前記下限値以上であると、所望の特性を有する非水電解質二次電池が得やすく、酸素元素含有量が前記上限値以下であると、より小さい不可逆容量および高いサイクル耐久性を得やすい。本発明の炭素質材料の酸素元素含有量は、後述の本発明の炭素質材料の製造方法における、炭化工程の処理温度または処理時間、もしくは不活性ガス雰囲気中の酸素濃度を適宜調整することによって前記下限値以上および前記上限値以下に調整することができる。また、酸素元素含有量は例えば、後述の実施例に記載の方法によって求めることができる。
本発明の炭素質材料は、窒素元素と酸素元素の質量比O/Nが0.2以上1.0以下である。前記窒素元素と酸素元素の質量比O/Nが0.2未満であると、窒素導入による炭素構造の乱れが発生しにくく、所望のサイクル耐久性および入出力特性が得られない可能性がある。また、導電助剤として使用する際にも、高い導電性を維持できず、電池活物質の入出力特性を低下し得る。また、窒素元素と酸素元素の質量比O/Nが1.0を超えると、酸素官能基へのイオン吸着による不可逆反応が促進され、不可逆容量が増加し、その結果放電容量が低下しやすくなる。窒素元素と酸素元素の質量比O/Nは、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上であり、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下である。窒素元素と酸素元素の質量比O/Nが前記下限値以上であると、所望のサイクル耐久性および入出力特性が得られやすく、前記窒素元素と酸素元素の質量比O/Nが前記上限値以下であると、不可逆容量が低減しやすく、放電容量が増加しやすくなる。本発明の炭素質材料の窒素元素と酸素元素の質量比O/Nは、リグニンとアミンの混合比、後述の本発明の炭素質材料の製造方法における炭化工程の処理温度や処理時間、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度を適宜調整することによって前記下限値以上および前記上限値以下に調整することができる。本発明の炭素質材料の窒素元素と酸素元素の質量比O/Nは、例えば、後述の実施例に記載の方法によって求めることができる。
本発明の炭素質材料を、酸素不存在下40℃から2400℃に昇温したときに検出される全一酸化炭素量に対する、500~1000℃で検出される一酸化炭素量(以下、単に「500~1000℃で検出される一酸化炭素量」と称することがある)は22モル%以上である。500~1000℃の温度領域で検出される一酸化炭素はフェノール類およびキノン類の分解で生じた一酸化炭素に対応しており、1000℃を超える温度領域で検出される一酸化炭素はエーテル状酸素が分解脱離して生じた一酸化炭素に対応する。500~1000℃で検出される一酸化炭素量が22モル%未満であると、炭素質材料を電極材料に用いた場合にフェノール類およびキノン類に対する電解液親和効果が得られず、所望の特性を有する非水電解質二次電池が得られない可能性がある。500~1000℃で検出される一酸化炭素量は好ましくは23モル%以上、より好ましくは24モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上である。500~1000℃で検出される一酸化炭素量が前記下限値以上であると、所望の特性を有する非水電解質二次電池が得られやすい。本発明の炭素質材料の500~1000℃で検出される一酸化炭素量は、原料に含まれる官能基の種類に影響を受け得る。そのような官能基を有する原料としてリグニンを使用することで、500~1000℃で検出される一酸化炭素量を前記下限値以上に調整することができる。リグニンの使用は環境負荷低減という観点からも好ましい。500~1000℃で検出される一酸化炭素量の上限値は特に制限されないが、通常70モル%以下である。前記の各温度領域での一酸化炭素量は、例えば後述の実施例に記載の方法によって求められる。
本発明の炭素質材料のBET法により求めた比表面積は、1m2/g以上80m2/g以下である。比表面積が1m2/g未満であると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との反応面積が少ないため入出力特性が低くなりやすく、80m2/gを超えると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との分解反応が増加するため不可逆容量増加に繋がり、高い電池性能を得ることができない可能性がある。本発明の炭素質材料の比表面積は、好ましくは1.5m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、さらに好ましくは3m2/g以上であり、好ましくは60m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、さらに好ましくは35m2/g以下、特に好ましくは30m2/g以下である。比表面積が前記下限値以上であると、高い入出特性が得られやすく、前記上限値以下であると不可逆容量が低減し、高い電池性能を得やすい。本発明の炭素質材料のBET法により求めた比表面積は、後述の本発明の炭素質材料の製造方法における炭化工程の温度または処理時間を適宜調整することによって、前記下限値以上および上限値以下に調整できる。本発明の炭素質材料のBET法により求めた比表面積は、例えば実施例に記載の通り、窒素吸着等温線を測定する方法によって求められる。
本発明の炭素質材料の体積基準の累計粒度分布における平均粒径(以下「D50」または「平均粒径」と記載)は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。本発明の炭素質材料の平均粒径が前記下限値以上および前記上限値以下であると、微粉が発生しにくいため操作性が良く、また炭素質材料内での金属イオンまたは水素イオンの拡散自由行程が小さいため、高い容量が得られやすい。また、電子を伝導する導電材として使用する際、炭素質材料間の接触率が高くなりやすいため好ましい。本発明の電池用炭素質材料は、鉛電池等にも適用することができる。鉛電池として適用する場合は特に、平均粒径が20μm以上であることが好ましく、40μm以上であることが好ましい。この下限以上であると、鉛電池の電解液による酸化分解が抑制され、電池寿命に優れる。本発明の体積平均粒径は、例えば、粉砕工程およびそれに続く分級工程によって前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。本発明の炭素質材料の体積平均粒径は、例えば動的光散乱法、レーザー回折法またはコールター法等によって求めることができる。
CuKα線を用いて測定される本発明の炭素質材料の(002)面の面間隔d002は、好ましくは3.4Å以上、より好ましくは3.6Å以上、さらに好ましくは3.8Å以上、特に好ましくは3.82Å以上であり、好ましくは3.95Å以下、より好ましくは3.92Å以下、さらに好ましくは3.90Å以下である。(002)面の面間隔d002が前記下限値以上および上限値以下であると、低温での容量維持率に優れる傾向にある。また、イオンが侵入しやすくなるため、リチウムイオン二次電池のみならず、ナトリウムイオン二次電池、鉛電池にも好適な炭素質材料になりやすい。本発明の炭素質材料の(002)面の面間隔d002は、例えば、後述の製造方法における炭化温度または炭化時間を適宜調整することにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整することができる。本発明の炭素質材料の(002)面の面間隔d002は例えば、実施例に記載の通り、X線回折にて測定できる。
本発明の炭素質材料は、例えば、
リグニン、アミン、水およびアルデヒドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液から溶媒を除去して固化する工程、および
得られた固化物を不活性ガス雰囲気下500℃以上1500℃以下の温度で炭化して炭素質材料を得る工程
を含む方法によって製造することができる。
本発明の炭素質材料の製造方法では、窒素を含む炭素質材料を得るために、リグニン、アミン、水およびアルデヒドを混合して水溶液を得る。この工程において、リグニンとアミンを反応させ、リグニンのアンモニウム塩が形成されることで、リグニンを水溶性にすることができる。さらに、溶解したリグニンをアルデヒドと反応させることで、リグニンのフェノール基およびアルデヒド基間に架橋を形成させることができる。ここで、アミンはリグニンを架橋する際の触媒として働き得る。また、アミンの一部はアルデヒドと反応することもあり、イミン構造を形成することによって、アルデヒドによる架橋速度を増大させやすい。リグニンを架橋させることにより、炭化時の融解による形状の損失、もしくは装置の汚染または腐食を防ぐことができる。架橋は室温においても進行し得るが、加温により促進させることができる。また、より均一に架橋反応を進行させるために、アルデヒド添加前に、アミンによるリグニンの水溶化を実施することが好ましい。
本発明の炭素質材料の製造工程では、前記水溶液から溶媒を除去して固化することで固化物を得ることができる。溶媒を除去して固化する方法は特に限定されるものではなく、常圧下または減圧下で溶媒を除去して、固化させることができる。本工程を迅速に行うために、加熱により溶媒を除去することが好ましい。加熱により溶媒を除去して固化する場合、水溶液を加熱する温度は特に限定されるものではないが、好ましくは水溶液を調製する温度以上であり、より好ましくは90~300℃、さらに好ましくは100~250℃である。加熱の方法も特に限定するものではないが、熱風、電気ヒーターおよびエバポレーター等が挙げられる。本固化工程は、具体的には蒸発乾固が好ましい。
本発明の炭素質材料の製造工程では、前記で得られた固化物を不活性ガス雰囲気下500℃以上1500℃以下の温度で炭化する工程を経ることで、本発明の炭素質材料を得ることができる。該炭化工程は一段または多段の炭化工程を経て行ってよい。多段の炭化工程を行う場合には、連続的に行っても、一旦冷却して行っても構わない。
本発明の炭素質材料の製造方法は、必要に応じて固化物および/または炭化物を粉砕する工程を含んでいてもよい。更に、粉砕工程は、分級を含むことが好ましい。分級によって、平均粒径をより正確に調整することができ、粒径1μm以下の粒子を除くことも可能である。
粉砕工程を行う場合、最後の炭化工程より前、すなわち固化工程後の固化物、または例えば二段の炭化工程を行う場合の第二の炭化工程の前の炭化物に行うことが好ましい。この理由は、粉砕により表面積を大きくすることで、一段の炭化工程または第二の炭化工程で発生する酸化性ガスによる構造変化の影響を最小限にできるからである。また、別の理由は最後の炭化工程後に粉砕を実施した場合には、粉砕により新たに生成した結晶面により電池内で電解液等と反応し、電池機能が損なわれる可能性があるからである。しかしながら、最後の炭化工程の後に粉砕することは排除されない。
分級を行う場合、その例として篩による分級、湿式分級、または乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、または遠心分級等の原理を利用した分級機を挙げることができる。また、乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、または遠心分級の原理を利用した分級機を挙げることができる。
粉砕工程において、粉砕と分級は1つの装置を用いて行うこともできる。例えば、乾式の分級機能を備えたジェットミルを用いて、粉砕と分級を行うことができる。更に、粉砕機と分級機とが独立した装置を用いることもできる。この場合、粉砕と分級とを連続して行うこともできるが、粉砕と分級とを不連続に行うこともできる。
本発明の炭素質材料を電極(負極電極)に使用することができる。具体的には、例えば、炭素質材料、結合剤(バインダー)および溶媒を混練することにより、電極合剤を調製し、金属板等からなる集電板に塗布し、乾燥した後、加圧成形することにより電極を製造することができる。
結合剤は、電解液と反応しないものであれば特に限定されない。結合剤の例としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等が挙げられる。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するために、N-メチルピロリドン(NMP)等の極性溶媒が好ましく用いられるが、SBR等の水性エマルジョンまたはCMCの水溶液を用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材料粒子相互および集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用する結合剤の種類によっても異なるが、PVDF系の結合剤では好ましくは電極合剤の総質量に対して3~13質量%であり、より好ましくは3~10質量%である。一方、溶媒に水を使用する結合剤では、SBRとCMCとの混合物等、複数の結合剤を混合して使用することが多く、使用する全結合剤の総量として、電極合剤の総質量に対して好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~4質量%である。
本発明の炭素質材料を用いることにより、特に導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができるが、更に高い導電性を賦与することを目的に必要に応じて電極合剤を調製する際に、導電助剤を添加してよい。導電助剤としては、導電性のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、ナノチューブ等を用いることができる。添加量は、使用する導電助剤の種類によっても異なるが、添加する量が少なすぎると期待する導電性を得にくいので好ましくなく、多すぎると電極合剤中での分散が悪くなるので好ましくない。このような観点から、導電助剤を添加する場合の導電助剤の割合は、好ましくは0.5~10質量%(ここで、活物質(炭素質材料)量+結合剤量+導電助剤量=100質量%とする)であり、より好ましくは0.5~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
電極活物質層は、通常は集電板の両面に形成するが、必要に応じて片面に形成してもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板およびセパレータ等が少なくて済むため高容量化には好ましいが、活物質層が厚すぎると、電極内のイオン拡散抵抗が増大し、入出力特性が低下するため好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、10~80μmであり、より好ましくは20~75μm、さらに好ましくは20~60μmである。
本発明の電池は、本発明の電極を含むものである。本発明の電池は、より好ましくは非水電解質二次電池または水系電解質電池である。本発明の炭素質材料を使用した非水電解質二次電池用負極電極を用いた非水電解質二次電池は、不可逆容量が小さく、かつ優れた放電容量および優れたサイクル耐久性を示す。
例えば、正極材料としては、層状酸化物系(LiMO2(ここで、Mは金属を表す)で表されるもの:例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、またはLiNixCoyMozO2(ここで、x、y、zは組成比を表わす))、オリビン系(LiMPO4(ここで、Mは金属を表す)と表されるもの:例えばLiFePO4等)、スピネル系(LiM2O4(ここで、Mは金属を表す)で表されるもの:例えばLiMn2O4等)の複合金属カルコゲン化合物が好ましく、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。例えば、これらの正極材料を適当なバインダーと電極に導電性を付与するための炭素質材料とともに成形して、導電性の集電材上に層形成することにより、正極を製造できる。
なお、以下に本発明の炭素質材料の物性値(「元素含有量」、「酸素不存在下で昇温したときに検出される一酸化炭素量」、「比表面積」、「体積平均粒径」、および「(002)面の面間隔d002」)の測定法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
株式会社堀場製作所製「酸素・窒素・水素分析装置EMGA-930」を用いて酸素および窒素元素含有量の測定を行った。
この装置の検出方法は、酸素:不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法(NDIR)、窒素:不活性ガス融解-熱伝導度法(TCD)であり、校正は、(酸素・窒素)Snカプセル、TiH2(H標準試料)、およびSS-3(N、O標準試料)により行った。前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料20mgを、Snカプセルに量り取り、元素分析装置内で30秒間脱ガスした後、測定を行った。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
前記元素分析において、Snカプセルを投入した後、10℃/秒の速度で昇温し、酸素化合物分解ガスである一酸化炭素の検出強度を温度に対してプロットし、各温度領域での累計CO量および割合を算出した。
以下にBETの式から誘導された近似式を記す。
平均粒径(粒度分布)は、以下の方法により測定した。試料を界面活性剤(和光純薬工業(株)製「TritonX100」)を0.3質量%含む水溶液に試料を投入し、超音波洗浄器で10分以上処理し、試料を水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒子径・粒度分布測定器(日機装(株)製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。D50は、累積体積が50%となる粒子径であり、この値を平均粒径として用いた。
株式会社リガク製「MiniFlexII」を用い、炭素質材料を試料ホルダーに充填し、Niフィルターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピーク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、以下に記すBraggの公式によりd002を算出した。
1Lセパラブルフラスコにリグニン60gを秤量し、イオン交換水570mLを添加し、メカニカルスターラーで撹拌しながら、アンモニア水(28質量%)を200mL添加した。そこに、ホルムアルデヒド水溶液(36質量%)を20.4mL、アンモニア水(28質量%)5mLおよび酢酸0.5gの混合溶液を添加し、室温で20分撹拌した。さらに、オイルバスで加熱を開始し、内温80℃で1.5時間撹拌した。その後、撹拌しながら室温に冷却し、リグニン水溶液を得た。
得られた水溶液を、エバポレーターを用いてバス温度80℃、3kPaの減圧下で、水400gを留去した。得られた濃縮液を1Lビーカーに移し、防爆熱風乾燥機にて80℃で12時間乾燥して、固化した。得られた固化物は45g(収率75%)であった。
得られた固化物10.0gを舟形坩堝に入れ、第一の炭化工程として、この舟形坩堝を株式会社モトヤマ製管状炉(管径200mmφ×1800mm)に導入した。第一の炭化工程として、10L/分の流量で窒素を1時間導入して炉内を窒素置換し、室温から600℃(昇温速度2.5℃/分)まで昇温し、600℃を1時間保持した後、12時間かけて600℃から室温に自然放冷して取り出した。炭化物5.8g(収率58%)を得た。
得られた炭化物を、ミキサーミルで体積平均粒径5.4μmに粉砕し、粉砕物5.0gを舟形坩堝に入れ、第二の炭化工程として、この舟形坩堝を株式会社モトヤマ製管状炉に導入した。5L/分の流量で窒素を1時間導入して炉内を窒素置換し、室温から1200℃(昇温速度10度/分)まで昇温し、1200℃を30分保持した後、12時間かけて1200℃から室温まで冷却して取り出した。炭素質材料4.52g(収率90.4%)を得た。得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
ホルムアルデヒド水溶液の代わりにテレフタルアルデヒド(6.0g)のエタノール(50mL)溶液を使用し、体積平均粒径が7.0μmになるよう粉砕した以外は、実施例1と同様の方法で炭素質材料を得た。固化物収率は80%(リグニン質量換算)、第一の炭化工程の収率は65%、第二の炭化工程の収率は90%であった。得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
リグニンに対し水溶化工程および固化工程を行わず、第一の炭化工程後、体積平均粒径が8.0μmになるよう粉砕した以外は、実施例1と同様の炭化条件で600℃および1200℃にて二段の炭化処理を行った。第一の炭化工程の収率は31%、第二の炭化工程の収率は89%であった。得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
実施例および比較例で得た炭素質材料を用いて、以下の手順に従って負極を作製した。
炭素質材料95質量部、導電性カーボンブラック(TIMCAL製「Super-P(登録商標)」)2質量部、PVDF(クレハ製)3部およびNMP90質量部を混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを厚さ18μmの銅箔に塗布し、乾燥後プレスして、厚さ45μmの電極を得た。
前記で作製した電極を作用極とし、金属リチウムを対極および参照極として使用した。溶媒として、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを、体積比で1:1:1となるように混合して用いた。この溶媒に、LiPF6を1mol/L溶解し、得られた溶液を電解質として用いた。セパレータにはポリプロピレン膜を使用した。アルゴン雰囲気下のグローブボックス内でコインセルを作製した。
前記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置((株)東洋システム製「TOSCAT」)を用いて25℃にて充放電試験を行った。炭素極へのリチウムのドープ反応を定電流定電圧法により行い、脱ドープ反応を定電流法で行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。そこで、ここでは、便宜上炭素極へのリチウムのドープ反応を「充電」と記述することにする。逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、炭素質材料からのリチウムの脱ドープ反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した充電方法は定電流定電圧法であり、具体的には端子電圧が0mVになるまで0.5mA/cm2で定電流充電を行い、端子電圧が0mVに達した後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに達するまで充電を継続した。このときの充電全容量を電極の炭素質材料の質量で除した値を炭素質材料の単位質量当たりの初期充電容量(mAh/g)と定義する。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は0.5mA/cm2で定電流放電を行い、終止電圧を1.5Vとした。このとき放電した電気量を電極の炭素質材料の質量で除した値を炭素質材料の単位質量当たりの初期放電容量(mAh/g)と定義する。初期充電容量と初期放電容量の差を、不可逆容量(mAh/g)と定義する。
各炭素質材料について、初期放電容量を5時間で充放電可能な電流密度を計算し、これを0.2C電流密度(mA/cm2)と定義する。各電池に対し0.2C電流密度にて前記同様に充電および放電を行った際の放電容量を0.2C放電容量(mAh/g)と定義し、前記充放電を30回繰り返した後の放電容量を0.2C放電容量で除した値を30サイクル後放電容量維持率(%)と定義する。結果を表2に示す。
Claims (9)
- 酸素元素含有量は0.8質量%以上1.5質量%以下であり、窒素元素と酸素元素の質量比O/Nは0.2以上1.0以下であり、酸素不存在下40℃から2400℃に昇温したときに検出される全一酸化炭素量に対する500~1000℃で検出される一酸化炭素量は22モル%以上であり、BET法により求めた比表面積は1m2/g以上80m2/g以下である炭素質材料。
- 前記炭素質材料の体積平均粒径は0.05μm以上200μm以下である、請求項1に記載の炭素質材料。
- CuKα線を用いて測定される前記炭素質材料の(002)面の面間隔d002は3.4Å以上3.95Å以下である、請求項1または2に記載の炭素質材料。
- 非水電解質電池負極活物質である、請求項1~3のいずれかに記載の炭素質材料。
- 非水電解質電池または水系電解質電池の導電材である、請求項1~3のいずれかに記載の炭素質材料。
- 請求項1~5のいずれかに記載の炭素質材料を含む、電極。
- 請求項6に記載の電極を含む、電池。
- リグニン、アミン、水、およびアルデヒドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液から溶媒を除去して固化する工程、および
得られた固化物を不活性ガス雰囲気下500℃以上1500℃以下の温度で炭化して炭素質材料を得る工程
を含む、請求項1~5のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。 - 前記炭化工程が、500℃以上900℃以下で炭化する第一の炭化工程および900℃以上1500℃以下で炭化する第二の炭化工程の二工程を含む、請求項8に記載の方法。
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YANG, Zhewei et al.,Cooperation of nitrogen-doping and catalysis to improve the Li-ion storage performance of lignin-based hard carbon,Journal of Energy Chemistry,2018年02月03日,Vol.27,PP.1390-1396,ISSN:2095-4956, DOI:10.1016/j.jechem.2018.01.013 |
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