JP7340188B2 - 窒素元素を含む球状炭素粒子、その製造方法、電極および電池 - Google Patents
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Description
〔1〕硫黄元素含有量は0.5質量%以上であり、窒素元素含有量は1質量%以上20質量%未満であり、酸素元素含有量は1質量%以上5質量%以下であり、CuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002は3.5Å以上3.8Å以下である、球状炭素粒子。
〔2〕前記球状炭素粒子のラマンスペクトルによる1360cm-1付近のDバンドの半値幅は200cm-1以上270cm-1以下である、〔1〕に記載の球状炭素粒子。
〔3〕前記球状炭素粒子の体積平均粒子径は100nm以上5.0μm以下である、〔1〕または〔2〕に記載の球状炭素粒子。
〔4〕リグニン、アミン、水、およびアルヒデドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液を噴霧乾燥する工程、および、
得られた噴霧乾燥物を炭化して球状炭素粒子を得る工程
を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の球状炭素粒子の製造方法。
〔5〕前記炭化工程は、不活性ガス雰囲気下700℃以上1800℃以下の温度で行う、〔4〕に記載の方法。
〔6〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の球状炭素粒子を含む、非水電解質電池用電極。
〔7〕〔6〕に記載の電極を含む、非水電解質二次電池。
本発明の球状炭素粒子において、硫黄元素含有量は0.5質量%以上であり、窒素元素含有量は1質量%以上20質量%未満であり、酸素元素含有量は1質量%以上5質量%以下であり、CuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002は3.5Å以上3.8Å以下である。
本発明の球状炭素粒子の硫黄元素含有量は、0.5質量%以上である。硫黄元素含有量が0.5質量%未満であると、電池容量が劣る電池となる可能性がある。硫黄元素含有量は、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上である。また、本発明の球状炭素粒子の硫黄元素含有量の上限値は、特に限定されないが、通常は3.0質量%以下であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下である。球状炭素粒子の硫黄元素含有量が前記下限値以上であることにより、電池容量の優れた電池を得やすい。本発明の球状炭素粒子の硫黄元素含有量は、例えば、硫黄元素を含有する球状炭素粒子の原料となる物質を苛性ソーダ水溶液と加熱する等加水分解を行う、または球状炭素粒子の原料となる物質を硫酸等の硫黄元素を含む物質で変性させ、その変性量を調節することによって、前記下限値以上に調整することができる。また、硫黄元素含有量は、例えば元素分析法、または蛍光X線分析法等によって求めることができる。
本発明の球状炭素粒子の窒素元素含有量は、1質量%以上20質量%未満である。窒素元素含有量が1質量%未満であると、窒素元素導入による炭素構造の乱れが発生しにくく、リチウムイオンを導入する際の吸蔵サイトを増大することが難しく、所望の電池容量が得られない可能性がある。窒素元素含有量が20質量%以上であると、熱安定性が低く、形状を維持することができない可能性がある。窒素元素含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。窒素元素含有量が前記下限値以上および前記上限値以下であると、球状炭素粒子中の炭素構造に欠陥または乱れを適度に導入することができ、また窒素元素によってもリチウムイオンが捕捉されるため、リチウムイオンをドープする際の吸蔵サイトを増大させることができる。本発明の球状炭素粒子の窒素元素含有量は、例えば球状炭素粒子の原料となる物質を、窒素元素を含む物質、例えばアミン等と複合化することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整することができる。また、窒素元素含有量は、例えば後述の実施例に記載の方法によって求めることができる。
本発明の球状炭素粒子の酸素元素含有量は、1質量%以上5質量%以下である。酸素元素含有量が1質量%未満であると、酸素元素を含有することによる効果(例えば溶媒親和性)を得ることが困難であり得る。酸素元素含有量が5質量%を超えると、空気中の水分を吸着しやすくなり、吸着した水分とリチウムイオンとの反応により自己放電が起こり得る。酸素元素含有量は、好ましくは1.1質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、さらに好ましくは1.3質量%以上であり、好ましくは4.9質量%以下、より好ましくは4.8質量%以下、さらに好ましくは4.7質量%以下である。酸素元素含有量が前記下限値以上および前記上限値以下であると、吸湿量を抑えつつも溶媒親和性に優れるため、繰り返し充放電時の安定性が高く、出力特性に優れる電池を得やすい。本発明の球状炭素粒子の酸素元素含有量は、例えば、後述の本発明の球状炭素粒子の製造方法に記載の通り、出発原料としてリグニンを使用し、前記リグニンを水溶化し、熱分解を抑制した温度で炭化することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整することができる。また、酸素元素含有量は、例えば、後述の実施例に記載の方法によって求めることができる。
本発明の球状炭素粒子のCuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002(以下、単に「面間隔d002」とも称する)は、3.5Å以上3.8Å以下である。面間隔d002が3.5Å未満であると、リチウムイオンが炭素粒子に挿入される際の抵抗が大きくなり、その結果、出力時の抵抗が大きくなることで、リチウムイオン二次電池としての入出力特性が低下することがある。面間隔d002が3.8Åを超えると、炭素粒子の体積が大きくなり、体積あたりの電池容量が小さくなる可能性がある。面間隔d002は、好ましくは3.55Å以上、より好ましくは3.6Å以上であり、好ましくは3.8Å以下、より好ましくは3.76Å以下、さらに好ましくは3.7Å以下である。面間隔d002が前記下限値以上および前記上限値以下であると、炭素の結晶性が高く、副反応起点が少ないため、電池の不可逆容量が低減されやすい。面間隔d002は、例えば噴霧乾燥時の固形分濃度もしくは吐出速度、または炭化時の温度もしくは時間等により調整することができる。また、面間隔d002は、X線回折で求めることができる。
本発明の球状炭素粒子は、レーザーラマン分光法において、1360cm-1付近にピークを有する。前記ピークは一般にDバンドと称されるラマンピークであり、グラファイト構造の乱れおよび欠陥に起因する。1360cm-1付近のDバンドの半値幅は、乱れた構造の量を表しており、本発明の好ましい一実施態様では、好ましくは200cm-1以上、より好ましくは210cm-1以上であり、好ましくは270cm-1以下、より好ましくは250cm-1以下である。Dバンドの半値幅が、前記下限値以上および前記上限値以下であると、末端構造が多すぎず、電気抵抗の増加が抑制されるため、不可逆容量が低減およびサイクル耐久性が向上する傾向にある。Dバンドの半値幅を前記下限値以上および前記上限値以下に調整する方法は、例えば、後述の本発明の球状炭素粒子の製造方法に記載の通り、出発原料となる物質と、窒素元素を含む物質、例えばアミン等と複合化した後、熱分解を抑制した温度で炭化することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整することができる。また、ラマンスペクトルによるDバンドの半値幅の測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
本発明の球状炭素粒子の体積平均粒子径(以下「D50」または「平均粒子径」とも称する)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上、さらに好ましくは120nm以上、よりさらに好ましくは150nm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.9μm以下、さらに好ましくは4.5μm以下、よりさらに好ましくは3.0μm以下である。本発明の球状炭素粒子の体積平均粒子径が前記下限値以上および前記上限値以下であると、球状炭素粒子の良好な機械的強度が得やすく、球状を維持しやすいため好ましい。本発明の球状炭素粒子の体積平均粒子径は、例えば後述の実施例に記載の通り、球状炭素粒子の製造方法における噴霧乾燥条件を適宜変更することにより調整できる。本発明の球状炭素粒子の体積平均粒子径は、例えば後述の実施例に記載の方法によって求めることができる。
本発明において、球状は、真球状、楕円球状、ドーナツ状および複数個の孔を持つ球状からなる群から選択される1以上の形状のことをいう。本発明の球状炭素粒子は、例えば、表面に凹凸を有していてもよいし、歪みまたは一部欠けた部分を有していてもよい。さらに、球状炭素粒子は、球状炭素粒子が2~10個結合した形状(例えば、雪だるま状、蝶ネクタイ状およびブドウの房状等)の粒子を含んでいてもよい。本発明の球状炭素粒子の形状は、例えば形状観察装置付き粒径測定装置、または走査型電子顕微鏡等により観察できる。なお、球状は、棒状、繊維状および板状等ではない。
本発明の球状炭素粒子は、例えば、
リグニン、アミン、水、およびアルヒデドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液を噴霧乾燥する工程、および、
得られた噴霧乾燥物を炭化して球状炭素粒子を得る工程
を含む方法によって製造することができる。この製造方法により、本発明の球状炭素粒子は、効率的かつ安全に製造できる。
本発明の球状炭素粒子の製造方法では、窒素を含む球状炭素粒子を得るために、リグニン、アミン、水およびアルデヒドを混合して水溶液を得る。この工程において、リグニンとアミンを反応させ、リグニンのアンモニウム塩が形成されることで、リグニンを水溶性にすることができる。さらに、溶解したリグニンをアルデヒドと反応させることで、リグニンのフェノール基およびアルデヒド間に架橋を形成させることができる。ここで、アミンはリグニンを架橋する際の触媒として働き得る。また、アミンの一部はアルデヒドと反応することもあり、イミン構造を形成することによって、アルデヒドによる架橋速度を増大し得る。リグニンを架橋させることにより、炭化時の融解による形状の損失、もしくは装置の汚染または腐食を防ぐことができる。架橋は室温においても進行し得るが、加温処理により促進させることができる。また、より均一に架橋反応を進行させるために、アルデヒド添加前に、アミンによるリグニンの水溶化を実施することが好ましい。
本発明の球状炭素粒子の製造方法では、前記水溶化工程で得られた水溶液を噴霧乾燥して球状噴霧乾燥物を得ることができる。噴霧乾燥する方法としては、水溶液を液滴化して加熱し、水を揮発させる方法であれば特に限定されるものではなく、超音波または気体を導入しながら霧化して加熱乾燥してもよく、スプレー等の方法によって微細な液滴を作り、得られた液滴を加熱乾燥させてもよい。
本発明の球状炭素粒子の製造方法では、前記で得られた球状噴霧乾燥物を炭化することにより、球状炭素粒子を得ることができる。炭化工程は一段の炭化工程でも多段の炭化工程でもよい。多段の炭化工程を行う場合には、連続的に行っても、一旦冷却して行ってもよい。
本発明の製造方法では、噴霧乾燥後または炭化工程後に解砕を実施してもよい。この工程では、噴霧乾燥および/または炭化工程での融着、および微粉の凝集を解消し、目的の粒子径に調整することができる。
本発明の製造方法は、炭化工程後または必要に応じて行ってよい解砕工程の後に分級を実施してもよい。分級によって、球状炭素粒子の体積平均粒子径をより正確に調整することができ、また、特定の寸法より小さい粒子(例えば体積平均粒子径が0.1μm未満の粒子)、および特定の寸法より大きい粒子(例えば体積平均粒子径が50μm以上の粒子)を除去することもできる。
分級を行う場合、その例として篩による分級、湿式分級、または乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、または遠心分級等の原理を利用した分級機を挙げることができる。乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、または遠心分級の原理を利用した分級機を挙げることができる。
本発明の球状炭素粒子は、リチウムイオン二次電池のような非水電解質電池の電極として使用できる。
結合剤は、電解液と反応しないものであれば特に限定されない。結合剤の例としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等が挙げられる。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するために、N-メチルピロリドン(NMP)等の極性溶媒が好ましく用いられるが、SBR等の水性エマルジョンまたはCMCの水溶液を用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材料粒子相互および集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用する結合剤の種類によっても異なるが、PVDF系の結合剤では好ましくは電極合剤の総重量に対して3~13質量%であり、より好ましくは3~10質量%である。一方、溶媒に水を使用する結合剤では、SBRとCMCとの混合物等、複数の結合剤を混合して使用することが多く、使用する全結合剤の総量として、電極合剤の総重量に対して好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~4質量%である。
本発明の球状炭素粒子を用いることにより、特に導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができるが、更に高い導電性を賦与することを目的に必要に応じて電極合剤を調製する際に、導電助剤を添加してよい。導電助剤としては、導電性のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、ナノチューブ等を用いることができる。添加量は、使用する導電助剤の種類によっても異なるが、添加する量が少なすぎると期待する導電性を得にくいので好ましくなく、多すぎると電極合剤中での分散が悪くなるので好ましくない。このような観点から、導電助剤を添加する場合の導電助剤の割合は、好ましくは0.5~10質量%(ここで、活物質量+結合剤量+導電助剤量=100質量%とする)であり、より好ましくは0.5~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
電極活物質層は、通常は集電板の両面に形成するが、必要に応じて片面に形成してもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板およびセパレータ等が少なくて済むため高容量化には好ましいが、活物質層が厚すぎると、電極内のイオン拡散抵抗が増大し、入出力特性が低下するため好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、10~80μmであり、より好ましくは20~75μm、さらに好ましくは20~60μmである。
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の電極を含むものである。本発明の球状炭素粒子を使用した非水電解質二次電池用負極電極を用いた非水電解質二次電池は、高い電極密度を有し、電池の体積容量効率を向上させる。
例えば、正極材料としては、層状酸化物系(LiMO2(ここで、Mは金属を表す)で表されるもの:例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、またはLiNixCoyMozO2(ここで、x、y、zは組成比を表わす))、オリビン系(LiMPO4(ここで、Mは金属を表す)と表されるもの:例えばLiFePO4等)、スピネル系(LiM2O4(ここで、Mは金属を表す)で表されるもの:例えばLiMn2O4等)の複合金属カルコゲン化合物が好ましく、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。例えば、これらの正極材料を適当なバインダーと電極に導電性を付与するための球状炭素粒子とともに成形して、導電性の集電材上に層形成することにより、正極を製造できる。
なお、以下に本発明の球状炭素粒子の物性値(「元素含有量」、「(002)面の面間隔d002」、「ラマンスペクトルにおける1360cm-1付近のDバンドの半値幅」、「体積平均粒子径」および「粒子の形状」)の測定方法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
硫黄元素含有量は、株式会社堀場製作所製「炭素・硫黄分析装置EMIA-920V2」を用いて測定した。この装置の検出方法は、酸素気流中燃焼(高周波誘導加熱炉方式)-非分散赤外吸収法(NDIR)であり、校正は、アルミナ坩堝に助燃剤であるW(タングステン)とSn(スズ)のみを入れてブランクとし、標準物質であるJSS152-18(S:0.0056%)およびJSS150-16(S:0.0296%)を用いて行った。前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料50mgを、粒子状タングステン1.5gおよび粒子状スズ0.3gとともにアルミナ坩堝に量り取り、元素分析装置内で30秒間脱ガスした後、純酸素気流下で高周波により加熱燃焼させ測定を行った。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
窒素元素および酸素元素含有量は、株式会社堀場製作所製「酸素・窒素・水素分析装置EMGA-930」を用いて測定した。この装置の検出方法は、酸素:不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法(NDIR)、窒素:不活性ガス融解-熱伝導度法(TCD)であり、校正は、Snカプセル、およびSS-3(標準試料)により行った。前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料20mgを、Snカプセルに量り取り、元素分析装置内で30秒間脱ガスした後、測定を行った。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
株式会社リガク製「MiniFlexII」を用い、球状炭素粒子を試料ホルダーに充填し、Niフィルターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピーク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、以下に記すBraggの公式によりd002を算出した。
株式会社堀場製作所製「LabRAM ARAMIS」を用い、レーザー波長532nmの光源を用いて、ラマンスペクトルを測定した。試験は、各試料において無作為に3箇所の粒子をサンプリングし、さらにサンプリングした各粒子内から2箇所について測定した。測定条件は、波長範囲50~2000cm-1、積算回数100回であり、計6箇所の平均値を計測値として算出した。Dバンド半値幅は、前記測定条件にて得られたスペクトルに対し、Dバンド(1360cm-1付近)とGバンド(1590cm-1付近)とのピーク分離を、ガウス関数でフィッティングして実施した後、測定した。
体積平均粒子径(粒度分布)は、以下の方法により測定した。試料を界面活性剤(和光純薬工業株式会社製「TritonX100」)を0.3質量%含む水溶液に試料を投入し、超音波洗浄器で10分以上処理し、試料を水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒子径・粒度分布測定器(日機装株式会社製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。D50は、累積体積が50%となる粒子径であり、この値を体積平均粒子径として用いた。
粒子の形状は走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社キーエンス製「VE-8800」)により観察した。100個以上の粒子を含む視野範囲で撮像し、その中から無作為に100個の粒子を選び取り、目視により尖頭部分または平面部分を有さない粒子の割合が90%以上のものを「球状」、90%未満のものを「非球状」とした。
1Lセパラブルフラスコに、硫黄元素含有量が2質量%であるリグニン60gを秤量し、イオン交換水570mLを添加し、メカニカルスターラーで撹拌しながら、アンモニア水(28質量%)を200mL添加した。そこに、ホルムアルデヒド水溶液(36質量%)を20.4mL、アンモニア水(28質量%)5mLおよび酢酸0.5gの混合溶液を添加し、室温で20分撹拌した。さらに、オイルバスで加熱を開始し、内温80℃で1.5時間撹拌した。その後、撹拌しながら室温に冷却し、リグニン水溶液を得た。
得られた水溶液16g(固形分量1.2g)をイオン交換水284mLに溶解し、スプレードライヤーB-290(Buchi製)にて、標準サイクロンを装着し、窒素量819L/時間にて流気しながら、挿入部を200℃に加熱した状態で、噴霧乾燥を行った。この時の固形分収率は68%であった。
得られた球状炭素粒子前駆体2gを舟形坩堝に入れ、アズワン株式会社製管状炉(管径42mmφ×500mm)に導入した。窒素気流1L/分の不活性ガス中、室温から1200℃(昇温速度10℃/分)まで昇温し、1200℃を3時間保持した後、8時間かけて1200℃から室温に自然放冷し、球状炭素粒子を取り出した。
収量は1.71g(収率85.5%)であった。得られた球状炭素粒子の分析結果を表1に示す。
炭化温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状炭素粒子を得た。収量は1.80g(収率90%)であった。得られた球状炭素粒子の分析結果を表1に示す。また、得られた球状炭素粒子の電子顕微鏡観察写真を図1に示す。
アンモニア水の添加量を100mLとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状炭素粒子を得た。収量は1.60g(収率80%)であった。得られた球状炭素粒子の分析結果を表1に示す。
1Lセパラブルフラスコにリグニン60gを秤量し、イオン交換水570mLを添加し、メカニカルスターラーで撹拌しながら、アンモニア水(28質量%)を200mL添加した。そこに、ホルムアルデヒド水溶液(36質量%)を20.4mL、アンモニア水(28質量%)5mLおよび酢酸0.5gの混合溶液を添加し、室温で20分撹拌した。さらに、オイルバスで加熱を開始し、内温80℃で1.5時間撹拌した。その後、撹拌しながら室温に冷却し、リグニン水溶液を得た。
得られた水溶液を、エバポレータを用いてバス温80℃、3kPaの減圧下で、水400gを留去した。得られた濃縮液を1Lビーカーに移し、防爆熱風乾燥機にて80℃で12時間乾燥して、固化した。得られた固体は45g(収率75%)であった。
得られた固体10.0gを舟形坩堝に入れ、第一の炭化工程として、この舟形坩堝を株式会社モトヤマ製管状炉(管径200mmφ×1800mm)に導入した。第一の炭化工程として、10L/分の流量で窒素を1時間導入して炉内を窒素置換し、室温から600℃(昇温速度2.5℃/分)まで昇温し、600℃を1時間保持した後、12時間かけて600℃から室温に自然放冷して取り出した。炭化物5.8g(収率58%)を得た。
得られた炭化物を、ミキサーミルで体積平均粒子径8.1μmに粉砕した後、粉砕物5.0gを舟形坩堝に入れ、第二の炭化工程として、再び株式会社モトヤマ製管状炉に導入、5L/分の流量で窒素を1時間導入して炉内を窒素置換し、常温から1200℃(昇温速度10℃/分)まで昇温し、1200℃を30分間保持した後、12時間かけて1200℃から室温に自然放冷して取り出した。炭化物4.52g(収率90.4%)を得た。得られた炭化物の物性を表1に示す。
第二の炭化温度を1000℃としたこと、および体積平均粒子径が8.0μmになるよう粉砕した以外は、比較例1と同様の操作を行い、炭化物を得た。収量は4.65g(収率93.0%)であった。得られた炭化物の分析結果を表1に示す。また、得られた炭化物の電子顕微鏡観察写真を図2に示す。
実施例および比較例で得た球状炭素粒子または炭化物を用いて、以下の手順にしたがって負極を作製した。
球状炭素粒子または炭化物95質量部、導電性カーボンブラック(TIMCAL製「Super-P(登録商標)」)2質量部、PVDF(クレハ製)3部およびNMP90質量部を混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを厚さ18μmの銅箔に塗布し、乾燥後プレスして、厚さ45μmの電極を得た。
前記で作製した電極を作用極とし、金属リチウムを対極および参照極として使用した。溶媒として、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを、体積比で1:1:1となるように混合して用いた。この溶媒に、LiPF6を1mol/L溶解し、得られた溶液を電解質として用いた。セパレータにはポリプロピレン膜を使用した。アルゴン雰囲気下のグローブボックス内でコインセルを作製した。
前記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置((株)東洋システム製「TOSCAT」)を用いて25℃にて充放電試験を行った。炭素極へのリチウムのドープ反応を定電流定電圧法により行い、脱ドープ反応を定電流法で行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。そこで、ここでは、便宜上炭素極へのリチウムのドープ反応を「充電」と記述することにする。逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、球状炭素粒子からのリチウムの脱ドープ反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した充電方法は定電流定電圧法であり、具体的には端子電圧が0mVになるまで0.5mA/cm2で定電流充電を行い、端子電圧を0mVに達した後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに達するまで充電を継続した。このときの充電全容量を電極の球状炭素粒子の質量で除した値を球状炭素粒子の単位質量当たりの初期充電容量(mAh/g)と定義する。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は0.5mA/cm2で定電流放電を行い、終止電圧を1.5Vとした。このとき放電した電気量を電極の球状炭素材料の重量で除した値を球状炭素材料の単位重量当たりの初期放電容量(mAh/g)と定義する。初期充電容量と初期放電容量の差を、不可逆容量(mAh/g)と定義する。また、初期充電容量に対する初期放電容量の比を、充放電効率(%)と定義し、電池内におけるリチウムイオンの利用効率の指標とした。結果を表2に示す。
各球状炭素粒子について、初期放電容量を5時間で充放電可能な電流密度を計算し、これを0.2C電流密度(mA/cm2)と定義する。各電池に対し0.2C電流密度にて充電を行った後、前期の5倍(1C)および15倍(3C)の電流密度にて放電を行った際の放電容量の比を、3C/1C放電容量比(%)と定義し、電池の出力特性の指標とした。結果を表2に示す。
Claims (7)
- 硫黄元素含有量は0.5質量%以上であり、窒素元素含有量は1質量%以上20質量%未満であり、酸素元素含有量は1質量%以上5質量%以下であり、CuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002は3.5Å以上3.8Å以下である、球状炭素粒子。
- 前記球状炭素粒子のラマンスペクトルによる1360cm-1付近のDバンドの半値幅は200cm-1以上270cm-1以下である、請求項1に記載の球状炭素粒子。
- 前記球状炭素粒子の体積平均粒子径は100nm以上5.0μm以下である、請求項1または2に記載の球状炭素粒子。
- 0.1質量%以上の硫黄を含むリグニン、アミン、水、およびリグニンの質量に対して0.01質量%以上のアルヒデドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液を噴霧乾燥する工程、および、
得られた噴霧乾燥物を不活性ガス雰囲気下500℃以上1800℃以下の温度で炭化して球状炭素粒子を得る工程
を含む、請求項1~3のいずれかに記載の球状炭素粒子の製造方法。 - 前記炭化工程は、700℃以上1800℃以下の温度で行う、請求項4に記載の方法。
- 請求項1~3のいずれかに記載の球状炭素粒子を含む、非水電解質電池用電極。
- 請求項6に記載の電極を含む、非水電解質二次電池。
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