JP7328527B2 - タイヤモデル作成方法、タイヤ形状最適化方法、タイヤモデル作成装置、タイヤ形状最適化装置、およびプログラム - Google Patents
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Description
また、変位ベクトルの目的特性への影響度を評価する工程は、複数の領域のうち、複数の変位ベクトルを設定した領域において、変位ベクトルの目的特性への影響度を評価し、変位ベクトルを選定する工程は、影響度に基づき、設定した領域における変位ベクトルを選定する、ことが好ましい。
変位ベクトルを選定する工程は、目的特性に対する寄与度が大きい変位ベクトルを選定することが好ましい。
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様および本発明の第2の態様のタイヤモデル作成方法において、変位ベクトルを選定する工程の後に、変位ベクトルを選定する工程で選定した変位ベクトルを設計変数とし、設定変数の重み係数をパラメーターとしてタイヤ物理量を目的関数として最適化計算を実施する工程とを有することを特徴とするタイヤ形状最適化方法を提供するものである。
評価部は、複数の領域のうち、モデル設定部で複数の変位ベクトルを設定した領域において、変位ベクトルの目的特性への影響度を評価し、影響度に基づき、変位ベクトルを選定することが好ましい。
評価部は、目的特性に対する寄与度が大きい変位ベクトルを選定することが好ましい。
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様のタイヤ作成装置を有するタイヤ形状最適化装置であって、モデル設定部で、タイヤモデルの形状を変化させる複数の基底形状の組合せにより表現され、それらの定義域を設計変数として少なくとも含むように設定し、タイヤモデルの物理量に関する目的関数を少なくとも2つ以上設定し、演算部は、設定変数の重み係数をパラメーターとしてタイヤ物理量を目的関数として最適化計算を実施することを特徴とするタイヤ形状最適化装置を提供するものである。
本発明の第7の態様は、本発明の第3の態様のタイヤ形状最適化方法の各工程を手順としてコンピュータに実行させるためのプログラムを提供するものである。
図1は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法に利用されるタイヤモデル作成装置を示す模式図である。
作成装置10は、コンピュータ等のハードウェアを用いて構成される。上述のように本発明のタイヤモデル作成方法には、図1に示す作成装置10が用いられるが、タイヤモデル作成方法をコンピュータ等のハードウェアおよびソフトウェアを用いて実行することができれば作成装置10に限定されるものではなく、タイヤモデル作成方法の各工程を手順としてコンピュータ等に実行させるためのプログラムでもよい。また、作成装置10は図1に示す構成に限定されるものではない。
処理部12は、制御部32により制御される。また、処理部12において条件設定部20、モデル設定部22、モデル作成部24、演算部26、評価部27はメモリ28に接続されており、条件設定部20、モデル設定部22、モデル作成部24、演算部26、および評価部27のデータがメモリ28に記憶される。
以下に説明するタイヤモデル作成方法において、処理部12の各部で種々の処理がなされる。以下の説明では制御部32により処理部12の各部で種々の処理がなされることの説明を省略しているが、各部の一連の処理は制御部32により制御される。メモリ28には、後述する評価部27による影響度の各種の評価条件も記憶されている。
タイヤモデル作成方法およびタイヤモデル作成装置では、コンピュータで数値解析可能な要素で構成されたタイヤモデルに対して、複数の変位ベクトルを設定して、変位ベクトル毎に変形タイヤモデルを得て、各変形タイヤモデルについて目的特性を求め、変位ベクトルの目的特性への影響度を評価して、変位ベクトルを選定する。これにより、タイヤサイズおよびタイヤの構造に因らず、目的特性に対する効果の大小等の影響度を考慮した変位ベクトルを効率良く選定することが可能であり、タイヤの特性値を改善する形状を、コンピュータを用いて効率良く探索することができる。
タイヤモデルの作成には公知の作成方法を用いることができる。例えば、タイヤを複数の節点で構成される有限個の要素に分割して、タイヤモデルを作成する。図形データの場合、コンピュータにて数値解析可能な要素によりモデル化されたデータに変換する。コンピュータで数値解析可能な要素でモデル化されたタイヤモデルとは、数値計算可能な離散化モデルであればよく、例えば、FEM等の数値シミュレーションに利用されるメッシュデータ、およびCADデータ等の設計データでもよい。
タイヤモデルを構成する要素は、例えば、2次元平面では四辺形要素、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等のコンピュータで解析可能な要素とする。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標を用いて、2次元モデルでは2次元座標を用いて逐一特定される。
また、解析に用いるタイヤモデルの形態は、特に限定されるものではなく、溝のないスムースタイヤでも主溝のみのものでもパターン付きであってもよい。
タイヤモデルを用いて、例えば、タイヤウエット性能を初めとするタイヤ性能を最適化するタイヤ設計案を求める場合等、路面モデルとタイヤモデルの他に、路面上に存在する介在物を再現するモデルを生成しておけばよい。例えば、介在物モデルとして、路面上の水、雪、泥、砂、砂利および氷等を再現する各種モデルを、数値計算可能な離散化モデルで生成しておけばよい。なお、路面モデルも、表面が平坦な路面を再現するモデルに限らず、必要に応じて、表面に凹凸を有する路面形状を再現するモデルであってもよい。
また、タイヤ物理量に加えて、タイヤおよびタイヤを構成する材料を規定するパラメーターのうち特性値(目的特性、目的関数)として定めた複数のパラメーターが設定される。特性値には、コスト等の物理的および化学的な特性値以外の、タイヤおよびタイヤを構成する材料を評価する指標を用いてもよい。
タイヤおよびタイヤを構成する材料は、タイヤ単体ではなく、タイヤを構成するパーツ、タイヤのアッセンブリ形態等のタイヤを含むシステム全体、またはその一部を対象としてもよい。
なお、目的特性および目的関数は1つでもよく、すなわち、単目的でもよい。目的関数は、複数であってもよいことはもちろんである。
制約条件は、目的関数の値を所定の範囲に制約する、もしくは、設計変数の値を所定の範囲に制約するための条件である。
また、タイヤの負荷荷重、タイヤの転動速度を初めとする走行条件、タイヤが走行する路面条件、例えば、凹凸形状、摩擦係数等、車両の走行シミュレーションに用いるための車両諸元の情報等が設定される。
条件設定部20では、非線形応答関係により生成するモデル、そのモデルの境界条件、FEM等の数値シミュレーションする場合には、そのシミュレーション条件、シミュレーションにおける制約条件を設定する。
また、条件設定部20では、FEM、理論式以外に、入出力の関係が定義された計算式を設定してもよい。入出力の関係が定義された計算式としては、例えば、応答曲面のようなメタモデルを用いること、形状変化後の断面積を周方向へ展開し体積を算出すること、経験式に形状変化後の情報をパラメーターとして用いて目的とする特性を算出することである。
これ以外に、条件設定部20に設計変数の定義域を設定する。設計変数の定義域は、離散的な水準値でも、定数であってもよい。なお、複数種の設計変数があるため、全ての設計変数に対して、それぞれに離散的な水準値を設定し、残りの設計変数については定義域を定数として、設計変数の組合せをコンピュータが変更しながら特性値を算出し、後述するパレート解の抽出を行ってもよい。
ここで、外形線とは、タイヤ赤道面と直交するタイヤ断面において、一方のビードトウからトレッド部を通過して反対側のビードトウ迄の外側の線のことである。
変位ベクトルは、タイヤモデルの形状を変化させる形状変化ベクトルである。そのため、各節点における変位ベクトルは、それらが組合せられてひとつの形状変化を与えるように定めることが好ましい。すなわち、1つの節点毎に複数の変位ベクトルを設定することにより、モデルにおいて複数の形状変化を与えることが可能になる。
複数の変位ベクトルは、互いに異なるベクトルである。異なるベクトルとは、大きさおよび向きのうち、少なくとも一方が異なっていればよい。例えば、図3に示すように、節点43に、第1の変位ベクトル43aと、第2の変位ベクトル43bを設定する。第1の変位ベクトル43aおよび第2の変位ベクトル43bは、タイヤモデルを幅が広くなるように変形させる変位ベクトルである。変位ベクトルとしては、これに限定されるものではなく、タイヤモデルの幅を狭くする第3の変位ベクトル43cでもよい。
なお、変位ベクトルについては、全ての節点に設定せずに対象となる一部の領域内の節点に設定してもよく、変位ベクトルを設定しない領域、もしくは見かけ上変位がないが、設定上は零ベクトルが与えられている領域があってもよい。
なお、設定する複数の変位ベクトルによるタイヤモデルの形状変化に対する変化量を統一するために、変位ベクトルはタイヤモデル(基準形状)に対して予め正規化した変位量(変位ベクトルの大きさ)を用いることが望ましい。
また、モデル作成部24は、タイヤモデルの断面形状の情報から、形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を得て、形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を金型形状データとして出力することもできる。
なお、拘束する節点とは、例えば、座標点が、外力を受けた場合でも変わらない点のことである。ただし、ここで拘束するというのは形状を変化させる際においてのことであり、例えば、リムフランジとの接触計算のような、変化させた形状を取得し特性値を算出する際にはこの拘束条件を除いて計算してもよい。
目的特性は、上述のように例示した、タイヤ質量、転がり抵抗、横剛性、または縦剛性等のタイヤ物理量であり、特に限定されるものではない。
演算部26は、モデル作成部24で作成された、複数の変形タイヤモデルの各変位ベクトルを設計変数とする設計パラメータとして用いて、FEM等の数値シミュレーションにより目的特性を求める。これにより、複数の変形タイヤモデルそれぞれに目的特性が得られる。得られた目的特性(出力値)は、メモリ28に記憶される。演算部26は、例えば、公知の有限要素ソルバーによるサブルーチンを実行することで機能するものである。
上述の近似モデル(メタモデル)は、入出力の関係を近似する数学的モデルのことであり、パラメーターを調整することにより、様々な入出力関係を近似できるものである。上述の近似モデルには、例えば、多項式モデル、クリギング、ニューラルネットワークおよび動径基底関数等を用いることができる。
最適化計算結果から評価部27にて抽出した解(パレート解を含んでもよい)を用いて、規定した非線形関係を用いて実計算を実行させるものでもある。これ以外にも、演算部26は、近似モデルを用いることなく、有限要素法を用いて、最適化計算手法によって設定された設計変数の組合せから表現されるタイヤモデルに境界条件を与え、直接特性値を算出するものでもある。最適化計算手法としては、例えば、進化計算手法の一つである遺伝的アルゴリズム(GA)を用いる。遺伝的アルゴリズムとしては、例えば、解集合を目的関数に沿って複数の領域に分割し、この分割した解集合毎に多目的GAを行うDRMOGA(Divided Range Multi-Objective GA)、NCGA(Neighborhood Cultivation GA),DCMOGA(Distributed Cooperation model of MOGA and SOGA)、NSGA(Non-dominated Sorting GA)、NSGA2(Non-dominated Sorting GA-II)、SPEAII(Strength Pareto Evolutionary Algorithm-II)法等の公知の方法を用いることができる。
ここで、パレート解は、トレードオフの関係にある複数の特性値(目的関数)において、他の任意の解よりも優位にあるとはいえないが、より優れた解が他に存在しない解をいう。一般にパレート解は集合として複数個存在する。パレート解の探索には、例えば、パレートランキング法を用いる。
なお、演算部26は、設計変数(設計パラメータ)と特性値(目的特性、目的関数)との間で定める非線形応答関係、すなわち、設計変数(設計パラメータ)を用いて特性値(目的特性、目的関数)を求める場合に利用されるものは、FEM等のシミュレーションに限定されるものではなく、FEM等の数値シミュレーション以外に、理論式等を用いることもできる。理論式等の場合には、複数の変形タイヤモデル(設計パラメータ)、および目的特性(目的関数)に応じた理論式等が作成される。
評価部27がメモリ28から評価条件を読み出して、演算部26で得られた複数の変形タイヤモデルの目的特性を比較し、影響度を評価し、影響度に基づき変位ベクトルを選定する。
変位ベクトルの目的特性への影響度の評価手法は特に限定されるものではないが、例えば、以下の手法が挙げられる。以下に示す影響度の評価手法による評価条件がメモリ28に記憶されている。
定義域の各水準値における特性値を求め、所定の閾値を定め有意差の有無を判定する。
分散分析を用いて誤差分散を閾値として有意要因を抽出する。
分散分析を行い、得られた交互作用と主効果に基づいて特性値を評価する。
予め設計変数間に交互作用がないことが分かっている、もしくは交互作用を考慮しない場合、単因子実験または直交実験を利用し、変位ベクトルを因子として変動させた場合の特性値の変化量から判定する。
評価部27では、目的特性として、例えば、タイヤ質量、転がり抵抗、横剛性、または縦剛性等が設定されていれば、これらの設定した目的特性に対して、上述のように、影響度を評価し、変位ベクトルを選定する。
タイヤ形状最適化装置を兼ねる作成装置10では、評価部27で、変位ベクトルを選定した後、演算部26は、変位ベクトルを設計変数とし、設定変数の重み係数をパラメーターとしてタイヤ物理量を目的関数として最適化計算を実施することができる。
表示制御部30は、条件設定部20に設定される設計変数、特性値等の各種のパラメーター、条件設定部20で得られたタイヤモデル、モデル設定部22で設定した変位ベクトルの情報、モデル作成部24で作成した変形タイヤモデル、演算部26で得られた目的特性、評価部27で得られた目的特性の影響度、タイヤモデルを表示部16に表示させるものである。例えば、変形タイヤモデル、目的特性、目的特性の影響度、タイヤモデルの結果をメモリ28から読み出し、表示部16に表示させる。
また、表示制御部30は、入力部14を介して入力される各種の情報等も表示部16に表示させることもできる。
作成装置10では、形状または構造を変化させる際の入力ファイルにおいて、境界条件および解析ステップ等の共通した部分と節点座標値、補強材の配置角度および初期張力などの個々の形状によって異なる部分を分割し、共通部分に取り込むようなファイル形式を用いて自動化すること、すなわち、個別の情報をインクルードファイル化することにより、多数のタイヤ形状について検討を行う場合であっても容易にタイヤ形状の検討が可能である。
例えば、変形タイヤモデルの各要素のポアソン比を0.1以下の一定値にし、かつ弾性定数および質量密度に一定の値を付与することが好ましい。一般的に、ゴムに対応する要素のポアソン比は、ゴムの非圧縮性を考慮して例えば0.4999が用いられるが、タイヤモデル40の変形計算では、変形結果が適切に得られるように、タイヤモデル40の各要素(全要素)を圧縮要素とし、ポアソン比を例えば0.01とする。また、各要素(全要素)のヤング率、およびせん断剛性を含む弾性定数を、タイヤ性能のシミュレーション計算時に用いる値に対して例えば10分の1以下、好ましくは100分の1以下に設定する。同様に、質量密度も、例えば、100分の1以下、好ましくは1000分の1以下に設定する。このように、変形タイヤモデルを、タイヤ性能のシミュレーション計算に用いるときの弾性定数に比べて軟らかい弾性定数を用いかつ圧縮性を有する仮想の物性値を用いて、変形計算を行うことにより、変形タイヤモデルの内部におけるメッシュ分割に悪影響を与えることなくタイヤ外周表面のタイヤ断面形状が、変形タイヤモデルのタイヤ断面形状に修正形状差分の分布が付加されたタイヤ外周表面の形状を有する。ここで、メッシュ分割に及ぼす悪影響とは、要素の縦横比、またはゆがみが大きくなり、計算が破綻しやすくなること、または計算精度が低下することを示す。
なお、寄与度とは、定義域全域での出力値への影響量のことであり、感度とは異なる指標である。感度が大きい形状変化を取得することは公知であるが、タイヤの場合、サイズ毎に寸法の規格値(例えば、JATMA、TRA、ETRTO等)が定められており、製品形状を探索する際には形状を変化させる部分によってその振り幅(定義域)は制限されてしまう。そのため、上記規格を満たしつつ形状を変化させた中において特性値への影響度を判断するためには、与えられる定義域において特性値が、どの程度変化するかを判断する寄与度を用いて評価することが好ましい。
また、評価部27で、選定される変位ベクトルの数は、1つでもよく複数でもよい。また、選定される変位ベクトルとしては、複数の変位ベクトルが合成された合成ベクトルであってもよい。なお、合成ベクトルを選定した場合、実質的に複数の変位ベクトルを選定したことになる。
具体的には、モデル設定部22は、図4(a)~(d)に示すように、タイヤモデル40の外形線42を、タイヤモデル40の少なくともトレッド部45とサイドウォール部46とに分割することが好ましい。これにより、路面、または介在物(水、雪、泥等)と接触する部分を分割して形状の探索が可能になる。このため、目的特性が複数であり、かつトレードオフにある関係であっても、より高次元でバランスの取れた特性を有する形状を取得することができる。
タイヤモデル40の外形線42を複数の領域に分割することにより、領域毎に形状の探索が可能になり、効率よく形状の探索をすることができる。
図4(a)は、タイヤモデル40のサイドウォール部46における変位ベクトルの第1の例を示す。変位ベクトル48aによりサイドウォール部46が変形され、変形後のタイヤモデル40のサイドウォール部49aは、タイヤモデル40の直径方向における中心部が外側に張り出している。
図4(b)は、タイヤモデルのサイドウォール部46における変位ベクトルの第2の例を示す。変位ベクトル48bによりサイドウォール部46が変形され、変形後のタイヤモデル40のサイドウォール部49bは、境界47の近傍領域が外側に張り出している。
図4(d)は、タイヤモデルのサイドウォール部46における変位ベクトルの第4の例を示す。変位ベクトル48dによりサイドウォール部46が変形され、変形後のタイヤモデル40のサイドウォール部49dは、全体的に内側に移動し、タイヤモデルの幅が狭くなっている。
なお、図4(a)~(d)では、例示における視認性を考慮し、変位ベクトルを離散的に示している。
また、分割した複数の領域のトレッド部45とサイドウォール部46のうち、サイドウォール部46にだけ複数の変位ベクトルを設定してもよい、最終的に得ようとするタイヤが形状の制約を受ける場合には、変位ベクトルを設定する領域を、例えば、サイドウォール部46等に限定してもよい。
上述のように、タイヤモデル40の外形線42を複数の領域に分割した場合、選定される変位ベクトルは全て同じでもよく、領域毎に異なっていてもよい。さらには、複数の領域のうち、1つにだけ、複数の変位ベクトルを設定して、影響度に基づき、変位ベクトルを選定するようにしてもよい。
次に、本実施形態のタイヤモデル作成方法の第1の例について説明する。
図2は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法の第1の例を工程順に示すフローチャートである。
タイヤモデル40は、例えば、入力部14を介して条件設定部20に入力され、メモリ28に記憶される。また、メモリ28にタイヤモデルとなるタイヤ断面形状のデータが予め記憶されていれば、メモリ28からタイヤ断面形状のデータを呼び出す。事前にタイヤモデルが用意されており、このタイヤモデルを呼び出すことも、ステップS10のタイヤモデルの作成に含まれる。
次に、複数の変位ベクトルのうち、変位ベクトル毎に、モデル作成部24において節点に強制変位として変位ベクトルを与えて、FEM(有限要素法)を用いて計算し、変位ベクトルに従いタイヤモデルを変形させて、変形タイヤモデルを作成する(ステップS14)。
設定した複数の変位ベクトルのそれぞれについて、変形タイヤモデルを得る(ステップS16)まで繰り返し、変形タイヤモデルの作成を実施する。
ステップS18では、演算部26において、例えば、以下のようにして変形タイヤモデル毎に目的特性を求める。
演算部26で、目的特性を求める際、変形タイヤモデルの変位ベクトルを設計パラメータとし、縦剛性、転がり抵抗等のタイヤ物理量を表す目的特性として設定する。そして、例えば、FEM(有限要素法)を用いて数値シミュレーションする場合には、そのシミュレーション条件、シミュレーションにおける制約条件を設定する。変形タイヤモデルに対して、FEMの数値シミュレーションを実施する。これにより、変形タイヤモデルについて、縦剛性、転がり抵抗等の目的特性を得る。
次に、複数の変形タイヤモデルのそれぞれの目的特性に基づき、変位ベクトルの目的特性への影響度を評価する(ステップS20)。ステップS20は、評価部27において、変位ベクトルの目的特性への影響度は、上述の例示した手法を用いて評価する。これにより、目的特性に対する効果の影響を考慮した、変位ベクトルを選定することができる。
金型形状データとは、外形線を構成する直線の長さ、曲線の曲率、直線の位置座標、曲線の位置座標を示す寸法データのことである。具体的には、例えば、NC加工機を用いて金型を作製する際に必要な寸法データのことである。金型形状データとしては、寸法データ以外に、タイヤモデルの形状で示したものであってもよく、この場合、タイヤモデルは、例えば、数値解析可能な要素でモデル化されたものでもよい。
次に、本実施形態のタイヤモデル作成方法の第2の例について説明する。
図5は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法の第2の例を工程順に示すフローチャートである。
タイヤモデル作成方法の第2の例においては、上述のタイヤモデル作成方法の第1の例と同じ工程については、その詳細な説明は省略する。以下、タイヤモデル作成方法の第2の例を単に第2の例という。
次に、タイヤモデルに対して、外形線の節点情報を得る(ステップS32)。ステップS32の外形線の節点情報は、モデル設定部22において、タイヤモデル40の断面形状の外側の輪郭を構成する外形線42上の複数の節点を抽出することにより得られる。
次に、複数の変位ベクトルのうち、変位ベクトル毎に、モデル作成部24において節点に強制変位として変位ベクトルを与えた後、FEM(有限要素法)を用いて計算し、変位ベクトルに従いタイヤモデルを変形させる(ステップS36)。ステップS36により、変形タイヤモデルを得る(ステップS38)。
設定した複数の変位ベクトルのそれぞれについて、変形タイヤモデルを得る(ステップS40)。
全ての変位ベクトルについて、変位ベクトル毎に変形タイヤモデルを得た後、複数の変形タイヤモデルのそれぞれについて、予め設定されたタイヤ物理量を表す目的特性を求める(ステップS42)。ステップS42は、タイヤモデル作成方法の第1の例のステップS18と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、目的特性に対する効果の影響を考慮して選定した変位ベクトルに基づき、新規タイヤモデルを作成する(ステップS46)。ステップS46の新規タイヤモデルを作成する工程は、タイヤモデル作成方法の第1の例のステップS22と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
タイヤモデル作成方法の第2の例でも、タイヤモデル作成方法の第1の例と同様に、選定した変位ベクトルに基づき、新規タイヤモデルを作成することができる。しかも、タイヤモデル作成方法の第2の例においても、目的特性に対する効果の影響を考慮した変位ベクトルを効率よく選定することができる。
タイヤモデルの外形線を複数の領域に分割する工程は、上述のようにタイヤモデルの少なくともトレッド部とサイドウォール部とに分割することが好ましい。
この場合、目的特性とタイヤ物理量とは同じでもよく、異なっていてもよい。
タイヤモデル作成方法の第1の例およびタイヤモデル作成方法の第2の例のいずれにおいても、さらに、上述の最適化計算を実施する工程を実施することにより、タイヤ形状最適化方法が実施される。
なお、重みを変え、線形足し合わせにより、タイヤモデルの試行形状を変えることができる。
具体的には、図6に示す第1の形状変化のタイヤモデル50に重み係数として、重み1を掛ける。また、第2の形状変化のタイヤモデル52に重み係数として、重み2を掛ける。変位ベクトルの数の分、形状変化のタイヤモデルに重み係数を掛ける。これらの線形和を求める。これにより、第2のタイヤモデルを取得することができる。
なお、図6の符号51は変位ベクトルを示し、符号53は変位ベクトルを示す。
重み係数の値は、条件設定部20で設定される。重み係数の値は、例えば、公知の実験計画手法、具体的には、ラテンハイパーキューブまたは直交表といった計画行列を用いて設定することができる。
重み係数の値は、上述の計画行列に従って設定されても、定められた範囲の中で逐次変更されてもよく、重み係数の値が変更される度に、第2のタイヤモデルが作成される。いずれも設定された範囲内全体を満遍なくカバーするように重み係数の値を変更して第2のタイヤモデルを作成する。重み係数の値は、例えば、一定の大きさずつ大きく、または小さくなるように離散的に変更されるが、この他に重み係数の値はランダムに変更されてもよい。
タイヤモデル作成方法の第2の例は、タイヤモデル作成方法の第2の例を実行するプログラムにより、上述のタイヤモデル作成方法の第2の例の各工程を手順としてコンピュータに実行させることができる。
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のタイヤモデル作成方法およびタイヤ形状最適化方法、タイヤモデル作成装置およびタイヤ形状最適化装置、ならびにプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
本実施例では、以下に示す実施例1、2および比較例1、2を用いて、本発明のタイヤモデル作成方法の効果について確認した。
本実施例では、タイヤサイズ215/55R17のタイヤモデルを基準として、予め設定した20の形状変化を表す変位ベクトルを設定した。この変位ベクトルを設計パラメータとした。目的特性としては、転がり抵抗の軽減と、横剛性の向上とした。上述の目的特性を満たす変位ベクトルを選定した。
目的特性は、進化計算を用いた500ケース(50個体,10世代)のFEM最適化シミュレーションを実施して求めた。
実施例1、2および比較例1、2において、基準となるタイヤモデルに対して、最終的に得られた新規タイヤモデルの転がり抵抗が軽減した割合と、横剛性が向上した割合を求めた。その結果を下記表1に示す。なお、基準となるタイヤモデルについて、転がり抵抗と横剛性を求めた。
実施例1は、タイヤモデルの外形線上における全ての節点に対して変位ベクトルを付与して変形タイヤモデルを得た。また、20の変位ベクトルのうち、寄与度上位10の変位ベクトルを選定した。
実施例2は、タイヤモデルの外形線上における全ての節点に対して変位ベクトルを付与して変形タイヤモデルを得た。また、20の変位ベクトルのうち、寄与度上位15の変位ベクトルを選定した。
比較例1は、タイヤモデルの外形線上における全ての節点に対して変位ベクトルを付与して変形タイヤモデルを得た。また、変位ベクトルの選定を実施しなかった。
比較例2は、タイヤモデルの全ての節点に変位ベクトルを付与して変形タイヤモデルを得た。また、変位ベクトルの選定を実施しなかった。
第2の実施例では、以下に示す実施例10、11および比較例10、11を用いて、本発明のタイヤモデル作成方法の効果について確認した。
第2の実施例は、第1の実施例に比して、タイヤモデルを、トレッド部とサイドウォール部とに分割し、トレッド部のみ変化させる変位ベクトル、およびサイドウォール部のみ変化させる変位ベクトルを各10ずつ、計20を設定した点が異なり、変位ベクトルの選定手法や目的特性の望ましい方向等は、第1の実施例と同じとした。
実施例10、11および比較例10、11において、基準となるタイヤモデルに対して、最終的に得られた新規タイヤモデルの転がり抵抗が軽減した割合と、横剛性が向上した割合を求めた。その結果を下記表2に示す。なお、基準となるタイヤモデルについて、転がり抵抗と横剛性を求めた。
実施例10は、実施例1に比して、タイヤモデルを、トレッド部とサイドウォール部とに分割し、トレッド部のみ、およびサイドウォール部のみ変化させる変位ベクトルを設定した点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。
実施例11は、実施例2に比して、タイヤモデルを、トレッド部とサイドウォール部とに分割し、トレッド部のみ、およびサイドウォール部のみ変化させる変位ベクトルを設定した点が異なり、それ以外は実施例2と同じとした。
比較例10は、比較例1に比して、タイヤモデルを、トレッド部とサイドウォール部とに分割し、トレッド部のみ、およびサイドウォール部のみ変化させる変位ベクトルを設定した点が異なり、それ以外は比較例1と同じとした。
比較例11は、比較例2に比して、タイヤモデルを、トレッド部とサイドウォール部とに分割し、トレッド部のみ、およびサイドウォール部のみ変化させる変位ベクトルを設定した点が異なり、それ以外は比較例2と同じとした。
12 処理部
14 入力部
16 表示部
20 条件設定部
22 モデル設定部
24 モデル作成部
26 演算部
27 評価部
28 メモリ
30 表示制御部
32 制御部
40 タイヤモデル
40c ビードリング部
41 トレッド部
42 外形線
43 節点
43a 第1の変位ベクトル
43b 第2の変位ベクトル
43c 第3の変位ベクトル
45 トレッド部
46 サイドウォール部
47 境界
50 第1の形状変化のタイヤモデル
52 第2の形状変化のタイヤモデル
Claims (15)
- タイヤを表す、コンピュータで数値解析可能な要素で構成されたタイヤモデルの節点情報を得る工程と、
前記タイヤモデルの節点のそれぞれに、複数の変位ベクトルを設定する工程と、
設定した前記複数の変位ベクトルそれぞれについて、変位ベクトルに従い前記タイヤモデルを変形させた、複数の変形タイヤモデルを得る工程と、
前記複数の変形タイヤモデルのそれぞれについて、予め設定されたタイヤ物理量を表す目的特性を求める工程と、
前記複数の変形タイヤモデルのそれぞれの目的特性に基づき、前記変位ベクトルの前記目的特性の影響度を評価する工程と、
前記影響度に基づき変位ベクトルを選定する工程と、
選定した前記変位ベクトルに基づき、タイヤモデルを作成する工程とを有することを特徴とするタイヤモデル作成方法。 - タイヤについて、コンピュータで数値解析可能な要素で構成されたタイヤモデルを取得する工程と、
前記タイヤモデルの外形線上における節点情報を得る工程と、
前記タイヤモデルの前記外形線上における節点のそれぞれに、前記タイヤモデルに対して形状変化を与える複数の変位ベクトルを設定する工程と、
設定した前記複数の変位ベクトルそれぞれについて、前記外形線上における前記節点に強制変位として変位ベクトルを与えて前記タイヤモデルを変形させた、複数の変形タイヤモデルを得る工程と、
前記複数の変形タイヤモデルのそれぞれについて、予め設定されたタイヤ物理量を表す目的特性を求める工程と、
前記複数の変形タイヤモデルのそれぞれの目的特性に基づき、前記変位ベクトルの前記目的特性への影響度を評価する工程と、
前記影響度に基づき変位ベクトルを選定する工程と、
選定した前記変位ベクトルに基づき、タイヤモデルを作成する工程とを有することを特徴とするタイヤモデル作成方法。 - 前記タイヤモデルの外形線の節点情報を得る工程の後に、前記タイヤモデルの外形線を複数の領域に分割する工程を有し、
前記複数の変位ベクトルを設定する工程は、複数の前記領域のうち、少なくとも1つの領域に前記複数の変位ベクトルを設定する、請求項2に記載のタイヤモデル作成方法。 - 前記変位ベクトルの前記目的特性への影響度を評価する工程は、前記複数の前記領域のうち、前記複数の変位ベクトルを設定した前記領域において、前記変位ベクトルの前記目的特性への影響度を評価し、
前記変位ベクトルを選定する工程は、前記影響度に基づき、設定した前記領域における前記変位ベクトルを選定する、請求項3に記載のタイヤモデル作成方法。 - 前記タイヤモデルの外形線を複数の領域に分割する工程は、前記タイヤモデルの少なくともトレッド部とサイドウォール部とに分割する請求項3または4に記載のタイヤモデル作成方法。
- 前記変位ベクトルを選定する工程は、前記目的特性に対する寄与度が大きい変位ベクトルを選定する請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法において、
前記変位ベクトルを選定する工程の後に、前記変位ベクトルを選定する工程で選定した前記変位ベクトルを設計変数とし、設定変数の重み係数をパラメーターとしてタイヤ物理量を目的関数として最適化計算を実施する工程を有することを特徴とするタイヤ形状最適化方法。 - タイヤについて、コンピュータで数値解析可能な要素で構成されたタイヤモデルを取得する条件設定部と、
前記タイヤモデルの外形線の節点情報を取得し、タイヤモデルの前記外形線上における節点のそれぞれに、前記タイヤモデルに対して形状変化を与える複数の変位ベクトルを設定するモデル設定部と、
設定した前記複数の変位ベクトルそれぞれについて、変位ベクトル毎に、前記外形線上における前記節点に強制変位として変位ベクトルを与えて前記タイヤモデルを変形させた、複数の変形タイヤモデルを得るモデル作成部と、
前記複数の変形タイヤモデルのそれぞれについて、予め設定されたタイヤ物理量を表す目的特性を求める演算部と、
前記複数の変形タイヤモデルのそれぞれの目的特性に基づき、前記変位ベクトルの前記目的特性への影響度を評価し、前記影響度に基づき変位ベクトルを選定する評価部とを有し、
前記モデル作成部は、選定した前記変位ベクトルに基づき、タイヤモデルを作成することを特徴とするタイヤモデル作成装置。 - 前記モデル設定部は、前記タイヤモデルの外形線を複数の領域に分割し、複数の前記領域のうち、少なくとも1つの領域に前記複数の変位ベクトルを設定する請求項8に記載のタイヤモデル作成装置。
- 前記評価部は、前記複数の前記領域のうち、前記モデル設定部で前記複数の変位ベクトルを設定した前記領域において、前記変位ベクトルの前記目的特性への影響度を評価し、前記影響度に基づき、前記変位ベクトルを選定する請求項9に記載のタイヤモデル作成装置。
- 前記モデル設定部は、前記タイヤモデルの外形線を、前記タイヤモデルの少なくともトレッド部とサイドウォール部とに分割する請求項9または10に記載のタイヤモデル作成装置。
- 前記評価部は、前記目的特性に対する寄与度が大きい変位ベクトルを選定する請求項8~11のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成装置。
- 請求項8~12のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成装置を有するタイヤ形状最適化装置であって、
前記評価部で、前記変位ベクトルを選定した後、前記演算部は、前記変位ベクトルを設計変数とし、設定変数の重み係数をパラメーターとしてタイヤ物理量を目的関数として最適化計算を実施することを特徴とするタイヤ形状最適化装置。 - 請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法の各工程を手順としてコンピュータに実行させるためのプログラム。
- 請求項8に記載のタイヤ形状最適化方法の各工程を手順としてコンピュータに実行させるためのプログラム。
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