JP7321375B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本開示は、モータパラメータとインバータパラメータとの同定を行うモータ制御装置に関する。
永久磁石同期モータは、ベクトル制御することによって、制御性能を向上させ、運転時の電力損失を低減させている。ベクトル制御におけるdq軸電流およびdq軸電圧の関係を表わすモータ電圧方程式は、永久磁石同期モータの電機子巻線抵抗、インダクタンスおよび誘起電圧定数をパラメータにして構成されている。
近年、位置センサを用いずに、dq軸電流およびdq軸電圧を用いて回転子の位置および回転角速度の推定を行うセンサレス方式が多く採用されている。センサレス方式においては、モータ電圧方程式に基づいてモータの回転子の位置および回転角速度の推定が行われるため、デッドタイム減少電圧などのインバータパラメータの誤差、および、電機子巻線抵抗などのモータパラメータの誤差が、永久磁石同期モータの動作の応答性の低下および脱調の顕著な原因となる。
デッドタイムにより出力電圧は減少するので、電圧指令値からデッドタイム分低い電圧がモータへ印加され、電圧指令値と実際のモータ印加電圧との間に差が生じる。デッドタイムによって減少する電圧を、ここでは、デッドタイム減少電圧と呼ぶこととする。このデッドタイム減少電圧を各相モータ電流の方向(符号)に応じて電圧指令値に予め加算して補償する。ここでは、この補償電圧を、デッドタイム補償電圧と呼ぶこととする。
デッドタイム減少電圧は実際のパラメータである。それに対し、デッドタイム補償電圧は、コントローラで用いるパラメータである。
デッドタイムは、スイッチング素子および制御回路の構成部品等のハードウェアの個々の特性により、バラツクため、デッドタイム減少電圧もバラツキを生じる。従って、デッドタイム補償電圧を特定の値にして補償を行っても、デッドタイム減少電圧がバラツいた分だけ補償することができない。すなわち、コントローラで用いるパラメータであるデッドタイム補償電圧と実際のパラメータであるデッドタイム減少電圧との間に誤差が生じる。その結果、電圧指令値と実際のモータ印加電圧との間に差が生じる。ここでは、この差を出力電圧誤差と呼ぶこととする。
出力電圧誤差は、モータを制御する制御装置から見ると、出力電流の方向などに対して非線形なものである。そのため、出力電圧誤差は、出力電流を歪ませ、制御特性を劣化させ、その結果、トルクリプルが発生し、モータの騒音や振動も増加する。また、電力損失が増加する。
これを少しでも防止するため、従来は、例えばデッドタイムに関してはハードウェアとしてフォトカプラなどの高価な部品を使用する、あるいは、作業員の人手により電力変換器を個別に調整することが必要であった。
これを解決する方法の一つとして、電流および電圧を入力して、自動的にオンディレイ補償値を調整する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のモータ制御装置は、モータ停止時に、電圧指令の計測を行う。当該モータ制御装置は、スイッチング素子を少なくとも2つのスイッチング周波数で一定の直流電流を流すように制御して、オンディレイ補償値を求める。以下では、2つのスイッチング周波数を、第1のスイッチング周波数および第2のスイッチング周波数と呼ぶこととする。第1のスイッチング周波数は、デッドタイムの影響の多いスイッチング周波数である。第2のスイッチング周波数は、デッドタイムの影響の少ないスイッチング周波数である。そして、第1のスイッチング周波数のときの電圧指令と第2のスイッチング周波数のときの電圧指令との差に基づいて、オンディレイ補償値を求める。この方法によれば、モータ抵抗の誤差の影響を受けずに、オンディレイ補償値を求めることができる。
また、コントローラで用いるモータパラメータが実際のパラメータに対して誤差がある場合がある。これを解決する方法の一つとして、永久磁石同期モータの停止時にモータパラメータを同定する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載のモータ制御装置では、モータの回転子を或る位置に停止させた後に、重畳同定部にて、回転座標系で表した電圧方程式により電機子巻線抵抗を同定する。
特許文献3に記載の電力変換器制御装置では、インバータのスイッチング素子の駆動時両端間電圧、駆動時通過電流、温度と単一ターンオフ遅延時間特性とを表すマップ記憶手段に基づいて、デッドタイムを補正する。これにより、デッドタイムの予測される変動分を排除することで、耐久性を確保しつつ、デッドタイムを十分短くして最適化し、出力変換機能を向上させる。
また、特許文献3では、遅延時間取得手段で測定された実際のターンオフ遅延時間と、マップ記憶手段に記憶されたターンオフ遅延時間とにより、デッドタイムを補正する。これにより、同一条件下のスイッチング素子の個別ばらつきがある場合でも、デッドタイムから当該個別ばらつきを排除することができ、デッドタイムをより最適化することができる。
特許第3329831号公報 特開2018-186640号公報 特開2010-142074号公報
特許文献1に記載された技術においては、モータパラメータを同定していない。そのため、モータパラメータの1つである電機子巻線抵抗の誤差が生じる場合がある。モータ電圧方程式に基づいて回転子の位置および回転角速度の推定が行われるセンサレス方式では、電機子巻線抵抗の誤差が、永久磁石同期モータの動作の応答性の低下および脱調を引き起こす。
また、同定の際に、上記の特許文献1に記載された技術においては、第1および第2のスイッチング周波数として、高い周波数と低い周波数とを選ぶ必要がある。そのため、それに伴うスイッチング損失、発熱、騒音などの問題がある。具体的には、高い周波数では、スイッチング損失が大きくなり、発熱が大きくなるという問題がある。また、低い周波数では、騒音の問題が顕著になる。また、2つのスイッチング周波数での処理が必要なため、1つのスイッチング周波数で処理を行う場合に比べて、処理時間に、より長い時間を費やすという問題もある。
また、同定の際に、上記の特許文献1に記載された技術においては、交流モータを回転させないようにするため、2相間(U-V相間、V-W相間、W-U相間のいずれか)に直流電流を流す。さらに、そのときに取得した電流制御出力を用いて、オンディレイ補償値を演算する。この方法では、オンディレイ補償値を演算可能な、交流モータの回転子の停止位置は、2相間に直流電流を流す位置に限定され、任意の位置とはならないという問題がある。特許文献1の技術においては、2相間に直流電流を流す位置以外の位置、すなわち、3相間に直流電流を流す位置に、交流モータの回転子を停止させなければいけない場合、オンディレイ補償値を演算することはできない。
一方、特許文献2に記載された技術においては、インバータパラメータの1つであるデッドタイム減少電圧を同定していない。そのため、モータ電圧方程式に基づいて電機子巻線抵抗を同定する方法において、精度よく同定することができない。その結果、モータ電圧方程式に基づいて回転子の位置および回転角速度の推定が行われるセンサレス方式においては、出力電圧誤差、および、電機子巻線抵抗の誤差によって、永久磁石同期モータの動作の応答性の低下および脱調が引き起こされる。
特許文献3に記載された技術においては、インバータのスイッチング素子の駆動時両端間電圧、駆動時通過電流、温度と単一ターンオフ遅延時間特性とを表すマップ記憶手段を用いるため、事前に、この特性を測定する必要がある。測定の手間は、ユーザにとって負担となる。
また、特許文献3に記載された技術においては、遅延時間取得手段として、測定器または測定回路を用いるため、その分だけ製品コストおよび製品寸法が増加する。
本開示はかかる問題点を解決するためになされたものであり、モータパラメータとインバータパラメータとの両方を同定することを可能にし、モータの応答性の低下および脱調を回避することを図る、モータ制御装置を得ることを目的としている。
本開示に係るモータ制御装置は、モータの三相の電機子巻線に流れるモータ電流を検出する電流検出部と、外部から入力される目標回転角速度と前記電流検出部が検出した前記モータ電流とに基づいて電圧指令値を生成して、前記モータの実回転角速度を制御するベクトル制御器と、前記ベクトル制御器で生成された前記電圧指令値に応じて、前記モータに電力を供給する電力変換器と、前記モータのモータパラメータと前記電力変換器のインバータパラメータとを同定する同定器とを備え、前記同定器は、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を第1の値と第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの回転子を第1の位置に停止させ、前記回転子を前記第1の位置に停止させた状態で、前記ベクトル制御器が生成した前記電圧指令値と前記電流検出部が検出した前記モータ電流とを取得し、前記電圧指令値と前記モータ電流とに基づいて前記モータパラメータと前記インバータパラメータとを求めるものであり、前記同定器は、1回目のサンプリング時に、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値と前記第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させ、前記回転子を前記第1の位置に停止させた状態で、前記ベクトル制御器が生成した前記電圧指令値と前記電流検出部が検出した前記モータ電流とを取得し、それぞれ、第1の電圧指令値および第1のモータ電流とし、2回目のサンプリング時に、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値および前記第2の値とは異なる第4の値および第5の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を第2の位置に停止させ、前記回転子を前記第2の位置に停止させた状態で、前記電圧指令値と前記モータ電流とを取得して、それぞれ、第2の電圧指令値および第2のモータ電流とし、前記第1および第2の電圧指令値と前記第1および第2のモータ電流とに基づいて前記モータパラメータと前記インバータパラメータとを求めるものであって、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値と前記第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させて同定を行う方法を第1の同定方法とし、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値と前記第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させ、その後、段階的に、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値および前記第2の値とは異なる前記第4の値および前記第5の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第2の位置に停止させて同定を行う方法を第2の同定方法としたとき、前記同定器は、前記第1の同定方法および前記第2の同定方法の中から前記回転子の位置ごとに同定方法を予め設定しておき、前記回転子を停止させる位置に応じて前記同定方法を変更して同定を行うものである。
本開示に係るモータ制御装置によれば、モータパラメータとインバータパラメータとの両方を同定することを可能にし、モータの応答性の低下および脱調を回避することができる。
実施の形態1に係るモータ制御装置の構成を示す構成図である。 三相デッドタイム減少電圧とモータ電流との関係を示す図である。 実施の形態1に係るモータ制御装置の同定器におけるモータパラメータおよびインバータパラメータの自動計測処理のフローチャートである。 d軸位相と三相のモータ電流との関係を示す図である。 回転子10を固定する際の各相モータ電流の値Iu_1(>0)、Iv_1(>0)およびIw_1(<0)における、デッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)が同じである、ことを示す図である。 「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で三相とも一致する場合、回転子10の位置決めをする際の各相モータ電流Iu_1、Iv_1およびIw_1が、飽和領域にあることを示す図である。 図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、モータ電流の正負と、そのときの三相デッドタイム減少電圧の値を示す表である。 図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、d軸デッドタイム減少電圧およびq軸デッドタイム減少電圧を算出するための算出式を示す表である。 図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raとデッドタイム減少電圧の大きさΔVcとを同定するための算出式を示す表である。 図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、d軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1を同定するための算出式を示す表である。 図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、U相デッドタイム減少電圧ΔVu_1を同定するための算出式を示す表である。 図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、V相デッドタイム減少電圧ΔVv_1を同定するための算出式を示す表である。 図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、W相デッドタイム減少電圧ΔVw_1を同定するための算出式を示す表である。 実施の形態2に係るモータ制御装置の同定器におけるモータパラメータおよびインバータパラメータの自動計測処理のフローチャートである。 「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が全領域で三相とも完全に一致はしてはいない場合を示す図である。 「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が全領域で三相とも一致する場合を示す図である。 第1の位置決めの際のd軸位相θ_1および第2の位置決めの際のd軸位相θ_2が、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)のときの、モータ電流の値と、そのときの三相デッドタイム減少電圧の値を示す表である。 第1の位置決めの際のd軸位相θ_1が、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)のときの、モータ電流の値と、そのときの三相デッドタイム減少電圧の値を示す表である。 第2の位置決めの際のd軸位相θ_2が、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)のときの、モータ電流の値と、そのときの三相デッドタイム減少電圧の値を示す表である。 実施の形態1に係るモータ制御装置によって制御される永久磁石同期モータの構成の一例を示す断面図である。 実施の形態1に係るモータ制御装置における電力変換器の構成の一例を示す図である。
以下、本開示に係るモータ制御装置およびモータ制御方法の実施の形態について図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の実施の形態に示す構成のうち、組み合わせ可能な構成のあらゆる組み合わせを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るモータ制御装置100の構成を示す構成図である。図1に示されるように、モータ制御装置100の制御対象は、永久磁石同期モータ101である。
図20は、実施の形態1に係るモータ制御装置100によって制御される永久磁石同期モータ101の構成の一例を示した断面図である。図20に示すように、永久磁石同期モータ101は、例えば、固定子1と回転子10とを有した三相交流モータである。固定子1は、筒状の固定子鉄心2と、固定子鉄心2の内周面に設けられた1以上のティース3と、ティース3に巻き回された電機子巻線4とを有している。各ティース3は、周方向に間隔を空けて配置されている。電機子巻線4は、永久磁石同期モータ101のU相、V相およびW相の三相のコイルを構成している。回転子10は、固定子1の内側に回転可能に配置されている。回転子10は、回転子鉄心11と、回転子鉄心11に埋め込まれた1以上の永久磁石12とを有している。永久磁石12は、N極とS極とが周方向に交互になるように配置されている。図20に示す「N」および「S」の表記は、回転子10の外周面に発生する磁極を示す。なお、図20は、永久磁石同期モータ101の単なる一例を示すものであり、これに限定されない。すなわち、永久磁石12の個数およびティース3の個数などは任意の値に適宜設定される。また、固定子1、回転子10、ティース3などの形状、および、電機子巻線4および永久磁石12の配置も、任意に変更可能である。
図1に示すように、モータ制御装置100は、電流センサ102と、三相/dq変換器104と、推定器105と、速度制御器106と、電流制御器107と、dq/三相変換器108と、電力変換器109と、同定器110とを備えている。
このうち、三相/dq変換器104と、推定器105と、速度制御器106と、電流制御器107と、dq/三相変換器108とは、永久磁石同期モータ101の実回転角速度および出力トルクを制御するベクトル制御器120を構成している。また、ベクトル制御器120と同定器110とは、コントローラ130を構成している。
なお、ベクトル制御器120と同定器110のハードウェア構成について簡単に説明する。ベクトル制御器120の各機能および同定器110の各機能は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、または、これらを組み合わせたものにより実現される。処理回路がプロセッサの場合、処理回路は、ソフトウェア、ファームウェア、または、それらの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリに格納される。処理回路は、メモリに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
以下、モータ制御装置100の各部について説明する。
電流センサ102は、電流検出部を構成している。電流センサ102は、3つの電流センサ102a、102bおよび102cを含んでいる。電流センサ102a、102bおよび102cは、永久磁石同期モータ101の三相の電機子巻線4(図20および図21参照)に流れる電機子電流を検出する。具体的には、電流センサ102aは、永久磁石同期モータ101のU相の電機子巻線4に流れる電機子電流Iuを検出する。電流センサ102bは、永久磁石同期モータ101のV相の電機子巻線4に流れる電機子電流Ivを検出する。電流センサ102cは、永久磁石同期モータ101のW相の電機子巻線4に流れる電機子電流Iwを検出する。以下では、電機子電流Iu、IvおよびIwを、まとめて、三相モータ電流Iu、IvおよびIwと呼ぶこととする。また、各相ごとに別々に呼ぶ場合は、モータ電流Iu、モータ電流Iv、および、モータ電流Iwと呼ぶこととする。
三相/dq変換器104は、電流センサ102a、102bおよび102cによって得られた三相モータ電流Iu、IvおよびIwを、dq座標上のd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。
速度制御器106には、外部から目標回転角速度ωが入力される。速度制御器106は、目標回転角速度ωと実回転角速度ωとの差分に基づいて、dq座標上のd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqを生成する。ここで、dq座標において、永久磁石同期モータ101の回転子10の界磁方向をd軸すなわち界磁軸とし、d軸と直交する方向をq軸とする。なお、実回転角速度ωが測定により得られる場合は、その値を用いればよい。また、実回転角速度ωが得られない場合には、推定器105から出力される実回転角速度ωの推定値ωestを、実回転角速度ωとして用いる。実回転角速度ωの推定値ωestについては後述する。
電流制御器107は、d軸電流Idおよびq軸電流Iqと、d軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqとの偏差に基づき、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを生成する。
dq/三相変換器108は、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを、三相電圧指令値Vu、VvおよびVwに変換する。
電力変換器109には、三相電圧指令値Vu、VvおよびVwに、三相デッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompが加算された、デッドタイム補償後の電圧指令値Vu**、Vv**およびVw**が入力される。電力変換器109は、電圧指令値Vu**、Vv**およびVw**から、三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwを差し引いた、三相電圧Vu、VvおよびVwを、永久磁石同期モータ101に出力する。
なお、電力変換器109は、スイッチング回路から構成されている。図21は、実施の形態1に係るモータ制御装置100における電力変換器109の構成の一例を示す図である。電力変換器109は、図21に示すように、複数のスイッチング素子20および21を有し、それらのスイッチング素子20および21のオンオフ動作により、U相、V相、および、W相の三相電圧Vu、VvおよびVwを出力する。U相、V相、および、W相ごとに、上アームのスイッチング素子20と下アームのスイッチング素子21とが設けられている。上アームのスイッチング素子20と下アームのスイッチング素子21とは直列に接続されている。上アームのスイッチング素子20と下アームのスイッチング素子21との接続点22が、永久磁石同期モータ101の各相の電機子巻線4に接続される。各スイッチング素子20および21には、例えば、IGBTなどの半導体スイッチング素子が使用される。また、各スイッチング素子20および21には、図21に示すように、還流ダイオード25が逆並列接続されている。
図21に示されるように、電力変換器109は、電源30に接続されている。また、電力変換器109に対して並列にコンデンサ31が接続されている。コンデンサ31は、電源30と電力変換器109とによるスイッチング動作によって発生する電流変動を抑制する。電源30は直流電源から構成されている。
電力変換器109は、各スイッチング素子20および21のゲート23に接続された制御アプリケーションから、駆動信号を受信する。当該駆動信号は、オン信号とオフ信号から成るPWMパターンである。また、制御アプリケーションは、例えばマイクロコンピュータなどによって実行される。電力変換器109は、当該駆動信号に従って、複数のスイッチング素子20および21をオンオフすることによって、電源30によって印加されている直流電圧を三相電圧Vu、VvおよびVwに変換する。三相電圧Vu、VvおよびVwは、永久磁石同期モータ101に出力される。このようにして、電力変換器109は、制御対象である永久磁石同期モータ101を駆動する。なお、マイクロコンピュータには、永久磁石同期モータ101を駆動するための周辺回路部が搭載されている。電力変換器109は、それらの周辺回路部の一つであるAD変換部を用いて、3個の電流センサ102a、102bおよび102cによって得られる三相モータ電流Iu、IvおよびIwをデジタル信号に変換して、フィードバック制御を行う。
実施の形態1では電力変換器109に電圧形インバータが用いられる。電圧形インバータは、電源30から供給される直流電圧をスイッチングして交流電圧に変換する装置である。なお、電力変換器109は、永久磁石同期モータ101を駆動するための交流電力を出力できるものであれば、電圧形インバータに限定されず、電流形インバータ、交流電力を振幅及び周波数が異なる交流電力に変換するマトリックスコンバータ、複数の変換器の出力を直列又は並列に接続したマルチレベル変換器などの回路でもよい。
図1に示す同定器110は、永久磁石同期モータ101の実電圧とモータ電流と電機子巻線抵抗との関係を定義した後述するモータ電圧情報を保持している。実電圧は、例えば、三相電圧Vu、VvおよびVw、または、dq軸電圧VdおよびVqである。ここでは、後者の場合を例に挙げて説明する。従って、同定器110が保持するモータ電圧情報は、永久磁石同期モータ101のdq軸電圧とdq軸電流と電機子巻線抵抗との関係を定義している。モータ電圧情報は、例えばメモリに予め格納されている。同定器110は、永久磁石同期モータ101の電機子巻線4の電機子巻線抵抗とデッドタイム減少電圧との同定を行う。同定器110は、同定を行う際には、まず、三相のうちの少なくとも二相の相電流を第1の値および第2の値のそれぞれに制御することで、永久磁石同期モータ101の回転子10を予め設定された第1の位置に停止させる。同定器110は、回転子10をその第1の位置に停止させた状態で、電流制御器107が生成したd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを取得する。また、同定器110は、三相/dq変換器104によってdq座標に変換されたd軸電流Idおよびq軸電流Iqを取得する。d軸電流Idおよびq軸電流Iqは、電流センサ102が検出した三相モータ電流Iu、IvおよびIwを三相/dq変換したものである。永久磁石同期モータ101のd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqは、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqに、d軸デッドタイム補償電圧Vdcompおよびq軸デッドタイム補償電圧Vqcompを加算し、d軸デッドタイム減少電圧ΔVdおよびq軸デッドタイム減少電圧ΔVqを引いたものである。そのため、同定器110は、そのことを利用して、以下の処理を行う。すなわち、同定器110は、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqとd軸電流Idおよびq軸電流Iqとモータ電圧情報とを用いて、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raとd軸デッドタイム減少電圧ΔVdおよびq軸デッドタイム減少電圧ΔVqとを求める。同定器110の動作の詳細については後述する。なお、dq座標上のd軸デッドタイム補償電圧Vdcompおよびq軸デッドタイム補償電圧Vqcompは、三相デッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompが三相/dq変換されたものである。
ここで、モータ電圧情報とは、例えば、後述する式(1)で示されるモータ電圧方程式、または、モータ電圧方程式を変形することによって導出される後述する式(2)~(25)のうちの少なくとも1つを含む。さらに、モータ電圧情報は、後述する図7~13および図17~図19に示される値および算出式のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、モータ電圧方程式および上記算出式によって得られた数値データまたは測定により得られた数値データを、データテーブルとしてメモリに予め記憶しておき、当該データテーブルをモータ電圧情報として用いるようにしてもよい。さらに、後述する図7~13および図17~図19に示される値および算出式をデータテーブルとしてメモリに予め記憶しておき、当該データテーブルをモータ電圧情報として用いるようにしてもよい。
推定器105には、電流制御器107からd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqが入力される。また、推定器105には、三相/dq変換器104からd軸電流Idおよびq軸電流Iqが入力される。推定器105は、入力されたd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqとd軸電流Idおよびq軸電流Iqとに基づいて、永久磁石同期モータ101の実回転角速度ωの推定値ωest、および、位置を求める。実回転角速度ωの推定値ωestは、速度制御器106に入力される。また、位置は位置(電気角)(d軸位相)に変換され、dq/三相変換器108、および、三相/dq変換器104に入力される。
実施の形態1においては、ベクトル制御器120が、いわゆるセンサレス方式のベクトル制御を行うことを想定している。センサレス制御においては、ホール素子のような位置センサを用いることなく、dq座標上の電流および電圧と、永久磁石同期モータ101が有するパラメータとを使用して、回転子10の位置と実回転角速度ωとを推定する。なお、センサレスベクトル制御の分野においては、dq軸をγδ軸と表記されることもあるが、実施の形態1の以下の説明においては、dq軸の表記とγδ軸の表記を区別せずに用いる。
永久磁石同期モータ101の駆動時におけるベクトル制御器120の動作の概要を説明する。上述したように、ベクトル制御器120は、三相/dq変換器104と、推定器105と、速度制御器106と、電流制御器107と、dq/三相変換器108とから構成されている。
まず、図1に示されるように、速度制御器106には、外部から入力される目標回転角速度ωと推定器105が推定した実回転角速度ωの推定値ωestとの差分が入力される。速度制御器106は、当該差分に基づいて、d軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqをそれぞれ生成する。
電流センサ102a、102bおよび102cによって得られた三相モータ電流Iu、IvおよびIwは、三相/dq変換器104に入力される。三相/dq変換器104は、三相モータ電流Iu、IvおよびIwを、d軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。電流制御器107には、d軸電流Idとd軸電流指令値Idとの偏差、および、q軸電流Iqとq軸電流指令値Iqとの偏差が入力される。電流制御器107は、それらの偏差に基づき、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを生成する。
d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqは、dq/三相変換器108に入力される。dq/三相変換器108は、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを、三相電圧指令値Vu、VvおよびVwに変換する。電力変換器109には、三相電圧指令値Vu、VvおよびVwに、三相デッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompを加算した、デッドタイム補償後の電圧指令Vu**、Vv**およびVw**が入力される。電力変換器109は、当該電圧指令Vu**、Vv**およびVw**から、三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwをそれぞれ減じた、三相電圧Vu、VvおよびVwを生成する。生成された三相電圧Vu、VvおよびVwは、永久磁石同期モータ101に出力される。このようにして、永久磁石同期モータ101は、実回転角速度ωが目標回転角速度ωに追従するように制御される。
ここで、デッドタイムについて簡単に説明する。スイッチング回路は、図21を用いて説明したように、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とを直列接続することで構成されている。そのため、上下アームのスイッチング素子が同時にオンすると、上下アームのスイッチング素子が短絡を起こし、スイッチング素子が破壊する。この短絡を防止するために、スイッチング素子のオンオフが切り替わるときに、上下アームのスイッチング素子が共にオフする期間を設けている。この期間をデッドタイムtd(tdu、tdv、tdw)と呼ぶ。
このデッドタイムにより出力電圧は減少するので、電圧指令値からデッドタイム分低い電圧がモータへ印加され、電圧指令値と実際のモータ印加電圧との間に差が生じる。このデッドタイムによって減少する電圧が、上述したように、デッドタイム減少電圧である。
下記の式(100)に三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwを示す。
ΔVu = Vdc×tdu×fsw×sign(Iu)
ΔVv = Vdc×tdv×fsw×sign(Iv) (100)
ΔVw = Vdc×tdw×fsw×sign(Iw)
ここで、sign(i)=1(i>0のとき)、0(i=0のとき)、-1(i<0のとき)である。また、Vdcはインバータ直流バス電圧、fswはキャリア周波数、tdu、tdv、tdwは各相のデッドタイムであり、モータ電流がインバータからモータへ流れこんでいる場合を正方向(+符号)と仮定している。
例えば、U相に関しては、式(100)における“Vdc×tdu×fsw”がデッドタイム減少電圧ΔVuの大きさである。この減少分“Vdc×tdu×fsw”がU相モータ電流の方向(符号)に応じて、デッドタイム補償後の電圧指令Vu**から減じられる。すなわち、モータ電流が正ならば+Vdc×tdu×fswが、負ならば-Vdc×tdu×fswが、デッドタイム補償後の電圧指令Vu**から減じられる。式(100)から分かるように、デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwの大きさは、インバータ直流バス電圧、キャリア周波数、デッドタイムのみに依存する。なお、デッドタイム減少電圧の詳細については、例えば非特許文献1を参照されたい(非特許文献1:工藤 純、野口季彦、川上 学、佐野浩一、「IPMモータ制御システムの数学モデル誤差とその補償法」、半導体電力変換研究会、2008年1月、SPC-08-25)。
実施の形態1では、デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwに相当する電圧を、各相モータ電流の方向(符号)に応じて、デッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompとして電圧指令値Vu、VvおよびVwに予め加算して補償する。なお、デッドタイム減少電圧は実際のパラメータである。それに対し、デッドタイム補償電圧は、コントローラ130で用いるパラメータである。
下記の式(101)にデッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompを示す。
Vucomp = Vdc×tducomp×fsw×sign(Iu)
Vvcomp = Vdc×tdvcomp×fsw×sign(Iv) (101)
Vwcomp = Vdc×tdwcomp×fsw×sign(Iw)
ここで、tducomp、tdvcomp、tdwcompは、各相のデッドタイム補償量である。デッドタイム補償量tdcomp(tducomp、tdvcomp、tdwcomp)としては、デッドタイムtd(tdu、tdv、tdw)を設定するのが最適である。また、sign(i)=1(i>0のとき)、0(i=0のとき)、-1(i<0のとき)である。
例えば、U相に関しては、モータ電流が正ならば+Vdc×tducomp×fswを、モータ電流が負ならば-Vdc×tducomp×fswを、U相電圧指令値Vuに加算してデッドタイムによる電圧減少分を補う。このように、デッドタイム補償をすることで、デッドタイムによる影響をなくす手法が取られる。このデッドタイム補償は、制御アプリケーションから入力されるオン信号の時間Tonにモータ電流I(Iu、Iv、Iw)が流れる方向を考慮したデッドタイム補償量tdcomp(tducomp、tdvcomp、tdwcomp)を加算し、次のようにデッドタイム分を補償してもよい。
T’on ← Ton +tdcomp ×sign(I) (102)
なお、式(102)を用いたデッドタイム補償の詳細については、例えば特許文献1を参照されたい。
しかし、デッドタイムtdは、スイッチング素子にオン信号を入力してから実際にオンするまでの時間をton、オフ信号を入力して実際にオフするまでの時間をtoff、上下アームのスイッチング素子に制御アプリケーションから入力される駆動信号が同時にオフしている時間をデッドタイム時間tdeadとすると、
td = tdead + ton - toff
となる。これらtdead,ton,toffの時間はスイッチング素子、制御回路構成部品等のハードウェアの個々の特性により変動またはバラツクため、tdも変動またはバラツキを生じる。従って、デッドタイム補償電圧として、或る一定の仕様値を用いると、デッドタイム補償電圧とデッドタイム減少電圧との間に誤差が生じることがある。すなわち、コントローラ130で用いるパラメータと実際のパラメータに誤差が生じる。その結果、電圧指令値と実際のモータ印加電圧との間に出力電圧誤差が生じる。
上述したように、出力電圧誤差は、モータを制御する制御装置から見ると、出力電流の方向などに対して非線形なものである。そのため、出力電圧誤差は、出力電流を歪ませ、制御特性を劣化させ、その結果、トルクリプルが発生し、モータの騒音や振動も増加する。また、電力損失が増加する。
これを解決する方法の一つとして、デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwを同定し、同定結果をデッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompとして用いることで、出力電圧誤差をゼロもしくは許容範囲内にする技術が挙げられる。
この技術について詳しく説明する。上述したように、式(100)からわかるように、デッドタイム減少電圧の大きさはインバータ直流バス電圧、キャリア周波数、デッドタイムのみに依存する。
デッドタイムtdu、tdv、tdwと、デッドタイム補償量tducomp、tdvcomp、tdwcompとが、それぞれ一致していないと、その差であるデッドタイム誤差が発生する。デッドタイム誤差には、予測可能な変動分と予測不可能なバラツキ分が含まれる。予測可能な変動分として、各相モータ電流、スイッチング素子の駆動時両端電圧、および、温度から予測される変動分がある。予測不可能なバラツキ分として、スイッチング素子および制御回路構成部品等のハードウェアの個々の特性によるバラツキ分がある。
このように、デッドタイム誤差によって出力電圧誤差が生じる。これを解決するためには、各相モータ電流、スイッチング素子の駆動時両端電圧、および、温度と各相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVv、ΔVwとの関係を、同定器110が前もってメモリに保持しておく必要がある。その場合には、同定器110がメモリに格納されたこれらの関係を読みだして、実際のモータ電流、スイッチング素子の駆動時両端電圧、および、温度に基づいて、デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVv、ΔVwを同定することができる。これらの関係を前もってメモリに保持するためには、事前に、これらの関係を測定しておく必要がある。しかしながら、当該測定の手間は、ユーザにとって負担となる。なお、これらの関係をメモリに保持することによるデッドタイムの同定方法については、例えば特許文献3を参照されたい。
実際のモータ電流、スイッチング素子の駆動時両端電圧、および、温度から予測されるデッドタイム誤差の変動分を完全に排除したとしても、スイッチング素子および制御回路構成部品等のハードウェアの個々の特性により、デッドタイム誤差はバラツく。これを少しでも防止するため、従来は、例えばデッドタイムに関してはハードウェアとしてフォトカプラなどの高価な部品を使用する、あるいは、個々の電力変換器ごとに、各相モータ電流、スイッチング素子の駆動時両端電圧、および、温度と各相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVv、ΔVwとの関係を測定し、前もってメモリに保持する必要がある。当該測定は、電力変換器の個数だけ必要であり、ユーザにとってかなりの負担となる。
そこで、実施の形態1では、同定器110が、事前にデッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVv、ΔVwの測定を行わずに、同定を行う。同定方法については、以下に説明する。また、当該同定を行うことで、デッドタイム誤差の変動分、および、バラツキ分への対応が可能になる。その結果、ユーザにとっての負担が解消される。
なお、上記では、出力電圧誤差が生じる要因として、デッドタイム補償電圧とデッドタイム減少電圧との間に生じる誤差を例に挙げて説明した。これ以外の要因として、スイッチング素子のオン電圧による誤差がある。オン電圧による誤差とその補償法については、上記の非特許文献1などに記載されている。オン電圧を考慮しなければいけない場合は、非特許文献1などに記載された方法で補償すれば、出力電圧誤差をほぼゼロにすることができる。そこで、ここではオン電圧による誤差を考慮せずに説明する。
図3~図13を用いて、同定器110の動作について詳細に説明する。図3は、実施の形態1に係るモータ制御装置100の同定器110におけるモータパラメータおよびインバータパラメータの自動計測処理のフローチャートである。図4~図13については後述する。
図3の処理は、同定器110が、永久磁石同期モータ101のモータパラメータ、および、電力変換器109のインバータパラメータを求めるためのアプリケーションとして行うものである。図3の処理は、永久磁石同期モータ101の起動命令が与えられた場合に行うことができる。また、モータ制御装置100は、図3の処理で求められたモータパラメータおよびインバータパラメータを用いて、永久磁石同期モータ101の駆動を行うことができる。図3の処理によって同定されるモータパラメータは、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raであり、インバータパラメータは、三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1である。なお、インバータパラメータは、これに限定されず、例えば、d軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1でもよい。
同定器110は、図3に示す一連の処理を開始すると、まず、ステップS100とステップS101とで、dq軸電流を制御することで、回転子10を、予め設定された第1の位置まで回転させて固定する位置決め動作を行う。位置決め動作は、永久磁石同期モータ101の回転子10が静止した状態で、モータパラメータの同定とインバータパラメータの同定とに必要となる電圧指令値を取得するために行うものである。
位置決め動作について具体的に説明すると、まず、ステップS100において、同定器110は、回転子10の位置決めを行うために、永久磁石同期モータ101の回転座標系のdq軸に電流指令、および、回転座標系の基準位置に対する位置(d軸位相)θeを与える。与える電流指令として、界磁軸であるd軸電流指令値には予め設定された直流値Id_1を設定し、q軸電流指令値にはゼロであるIq_1(=0)を設定する。また、d軸位相としてθ_1を設定する。そして、ステップS102の電圧指令値取得処理の実行期間中は、回転子10が動かないように、同定器110は、これらの直流値Id_1、q軸電流指令値Iq_1(=0)、およびd軸位相θ_1を保持する。なお、このときの直流値Id_1およびq軸電流指令値Iq_1(=0)の設定は、同定器110が行うようにしているが、速度制御器106が行うようにしてもよい。また、d軸位相θ_1の設定は、同定器110が行うようにしているが、推定器105が行うようにしてもよい。
図4は、d軸位相θeと三相モータ電流Iu、IvおよびIwとの関係を示す図である。図4において、横軸がd軸位相θeを示し、縦軸が三相モータ電流Iu、IvおよびIwを示す。U相の電機子巻線4の位置を、d軸位相θeの基準位置(θe=0)としている。また、図4において、実線がU相モータ電流Iuを示し、破線がV相モータ電流Ivを示し、点線がW相モータ電流Iwを示す。図4に示されるように、三相モータ電流Iu、IvおよびIwは、互いに、120°ずつ位相がずれた正弦波となっている。
このとき、例えば、U相にIa、V相に-Ia/2、W相に-Ia/2の直流電流が流れるように、d軸電流指令値Id_1およびq軸電流指令値Iq_1(=0)を設定したと仮定する。この場合、基準位置であるθ_1=0の位置に回転子10を固定することになる。もちろん、回転子10を固定する位置は、特に、これに限定されない。
ここで、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)の6つの矢印で示した範囲内の位相においては、三相モータ電流Iu、IvおよびIwのうち、いずれのモータ電流もゼロとはならない。
ステップS100において同定器110は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)の6つの矢印で示した範囲内の位相になるように、d軸位相θ_1を設定する。
ステップS101において、d軸電流の収束が完了し、回転子10の位置決めが完了する。
次に、ステップS102において、同定器110は、電流制御器107からd軸電圧指令値Vd_1およびq軸電圧指令値Vq_1を取得し、三相/dq変換器104からdq座標上のd軸電流Id_1およびq軸電流Iq_1を取得する。なお、このとき、d軸電流Id_1およびq軸電流Iq_1の代わりに、速度制御器106からd軸電流指令値Id_1およびq軸電流指令値Iq_1を取得してもよい。
ステップS102におけるd軸電圧指令値Vd_1およびq軸電圧指令値Vq_1とd軸電流Id_1およびq軸電流Iq_1とのサンプリングが終了すると、同定器110の処理は、ステップS103に進む。
ステップS103では、同定器110は、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の同定を開始する。そして、ステップS104で、同定器110は、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよびデッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の演算を行う。
ここで、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の同定方法について、モータ電圧方程式および回転子10の位置決めをする際の「各相モータ電流とデッドタイム減少電圧の関係」を用いて詳しく説明する。
一般的に、永久磁石同期モータのモータ電圧方程式は、下記の式(1)によって与えられる。式(1)において、Raは電機子巻線4の電機子巻線抵抗、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、ωeは実回転角速度(電気角)、Ψaは永久磁石12による磁束鎖交数、pは微分演算子を表す。
Figure 0007321375000001
式(1)の左辺にある、dq座標上のd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqは、三相電圧Vu、VvおよびVwが三相/dq変換されたものである。
この三相電圧Vu、VvおよびVwは、三相電圧指令値Vu、VvおよびVwに、三相デッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompを加算し、三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwを引いたものである。
また、dq座標上のd軸デッドタイム補償電圧Vdcompおよびq軸デッドタイム補償電圧Vqcompは、三相デッドタイム補償電圧Vucomp、VvcompおよびVwcompが三相/dq変換されたものである。また、dq座標上のd軸デッドタイム減少電圧ΔVdおよびq軸デッドタイム減少電圧ΔVqは、三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwが三相/dq変換されたものである。
従って、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqは、dq座標上のd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqに、d軸デッドタイム補償電圧Vdcompおよびq軸デッドタイム補償電圧Vqcompを加算し、d軸デッドタイム減少電圧ΔVdおよびq軸デッドタイム減少電圧ΔVqを減算したものとなり、それぞれ、下記の式(2)および式(3)のように表すことができる。
Figure 0007321375000002
Figure 0007321375000003
1回目のサンプリング時のdq座標上の実際のモータ印加電圧をVd_1およびVq_1、デッドタイム補償電圧をΔVdcomp_1およびΔVqcomp_1、デッドタイム減少電圧をΔVd_1およびΔVq_1とすると、式(2)および式(3)を適用して、実際のモータ印加電圧Vd_1およびVq_1は、それぞれ、式(4)および式(5)のように表すことができる。
なお、dq座標上の実際のモータ印加電圧Vd_1およびVq_1は、1回目のサンプリング時に実際にモータ101に印加された三相電圧Vu_1、Vv_1およびVw_1が、三相/dq変換されたものである。また、dq座標上のd軸デッドタイム補償電圧Vdcomp_1およびq軸デッドタイム補償電圧Vqcomp_1は、1回目のサンプリング時の三相デッドタイム補償電圧Vucomp_1、Vvcomp_1およびVwcomp_1が三相/dq変換されたものである。
Figure 0007321375000004
Figure 0007321375000005
実施の形態1においては、モータパラメータおよびインバータパラメータを同定する処理の期間中、直流電流指令であるd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqが印加されて、永久磁石同期モータ101の回転子10が静止状態であるため、回転角速度(電気角)ωeはωe=0である。
従って、式(1)のd軸における電圧方程式は、下記の式(6)で表される。
Figure 0007321375000006
式(6)に式(4)を代入すると、下記の式(7)が得られる。
Figure 0007321375000007
また、式(1)のq軸における電圧方程式は、下記の式(8)で表される。
Figure 0007321375000008
式(8)に式(5)を代入すると、下記の式(9)が得られる。
Figure 0007321375000009
ここで、図2は、スイッチング素子の駆動時両端電圧および温度が一定のもとでの三相デッドタイム減少電圧とモータ電流Iu、IvおよびIwとの関係を示す図である。横軸がモータ電流Iu、IvおよびIwを示し、縦軸が三相デッドタイム減少電圧を示す。なお、三相のデッドタイム減少電圧の特性は基本的に同じであるため、図2では、三相のうち一相分だけを示している。
図2に示すように、モータ電流Iu、IvおよびIwが負の値のときのデッドタイム減少電圧は、モータ電流Iu、IvおよびIwが正の値のときのデッドタイム減少電圧と大きさが同じで、符号がマイナスの値となる。
三相デッドタイム減少電圧とモータ電流との関係は、図2に示されるように、モータ電流の大きさ(絶対値)が閾値Ith以上か未満かで特性が異なる。
モータ電流の大きさが閾値Ith未満のとき、デッドタイム減少電圧は単調増加である。一方、モータ電流の大きさが閾値Ith以上のとき、デッドタイム減少電圧はほぼ一定となる。ここで、モータ電流の値が閾値Ith以上の第1領域とモータ電流の値が閾値-Ith以下の第2領域とを飽和領域とし、モータ電流の値が閾値-Ithより大きく、閾値Ithより小さい第3領域を非飽和領域とする。なお、閾値Ithおよび閾値-Ithは、実験による測定などによって予め適宜決定される値である。
デッドタイム減少電圧とモータ電流との関係がこのようになる理由は、モータ電流の大きさが閾値Ith未満のとき、モータ電流の大きさに対しデッドタイムtdu、tdv、tdwは単調増加であり、一方、モータ電流の大きさが閾値Ith以上のとき、デッドタイムtdu、tdv、tdwは、ほぼ一定となることである。
なお、ここで、単調増加とは、横軸の値の増加に伴い、縦軸の値が連続して増加することである。このとき、増加率は一定でなくてもよい。図2の例では、単調増加は、モータ電流の値の増加に伴い、デッドタイム減少電圧が連続して増加することを意味している。以下の説明においても、「単調増加」という用語を、同様の意味として用いる。
実施の形態1では、ステップS100~102で回転子10の位置決めをする際の各相モータ電流が以下の条件1を満足することを前提とする。
条件1:各相モータ電流がそれぞれ或る値(いずれの値も0ではない)のとき、各相のデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)は同じである。
なお、この前提のもとでは、各相モータ電流はいずれの値も0でないため、位置決めをする際のd軸位相θ_1は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)の6つの矢印で示した範囲内にある。
条件1について、具体例を示して記す。回転子10を固定する際の各相モータ電流の値をIu_1、Iv_1およびIw_1とし、これらのモータ電流が条件1を満たすとき、デッドタイム減少電圧の大きさは同じであり、その大きさをΔVc(>0)とする。
各相モータ電流の間には、Iu_1+Iv_1+Iw_1=0の関係があり、かつ、いずれの値も0ではないため、Iu_1、Iv_1およびIw_1の3つの符号は、「2つは正、1つは負」もしくは「2つは負、1つは正」である。
ここでは、「2つは正、1つは負」の例として、「Iu_1>0、Iv_1>0、Iw_1<0」の場合を図5に示す。モータ電流Iu_1、Iv_1におけるデッドタイム減少電圧はΔVcであり、Iw_1におけるデッドタイム減少電圧は-ΔVcである。すなわち、三相のモータ電流の値が、それぞれ、Iu_1、Iv_1、および、Iw_1のとき、各相のデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)は、すべて、ΔVcとなる。モータ電流Iu_1、Iv_1およびIw_1は、飽和領域でも非飽和領域でもよい。図5は、回転子10を固定する際の各相モータ電流の値Iu_1(>0)、Iv_1(>0)およびIw_1(<0)における、各相のデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)が同じである、ことを示す図である。
このように、同定器110は、条件1を満たすという前提で、三相のモータ電流を、それぞれ、第1の値(Iu_1)、第2の値(Iv_1)、および、第3の値(Iw_1)に制御することで、モータ101の回転子10を第1の位置に停止させて、同定を行う。図5の例では、第1の値、第2の値、および、第3の値は、それぞれ、飽和領域内の値であっても、非飽和領域内の値であってもよい。但し、同定器110は、第1の値、第2の値、および、第3の値の3つの符号が、2つは正で1つは負、もしくは、2つは負で1つは正となるように、第1の値、第2の値、および、第3の値を設定する。
なお、「Iu_1>0、Iv_1>0、Iw_1<0」の例では、位置決めをする際のd軸位相θ_1は図4の(3)の矢印で示した範囲内にある。
また、「各相モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で三相とも一致する場合、飽和領域内の任意のモータ電流は条件1を満たす。
図6は、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で三相とも一致する場合、回転子10の位置決めをする際の各相モータ電流Iu_1、Iv_1およびIw_1が、飽和領域にあることを示す図である。図6において、横軸は三相モータ電流Iu、IvおよびIwを示し、縦軸は三相デッドタイム減少電圧を示す。また、図6において、実線71はU相の場合、破線72はV相の場合、点線73はW相の場合を示す。
図6の場合においては、各相モータ電流が、それぞれ、飽和領域内の任意の値(いずれの値も0ではない)のときに、各相のデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)が、ΔVcで、同じになる。そのため、同定器110は、第1の値、第2の値、および、第3の値を、飽和領域内の値にそれぞれ設定して、同定を行う。ただし、この場合においても、各相モータ電流の間には、Iu_1+Iv_1+Iw_1=0の関係がある。そのため、同定器110は、第1の値、第2の値、および、第3の値の3つの符号が、2つは正で1つは負、もしくは、2つは負で1つは正となるように、第1の値、第2の値、および、第3の値を飽和領域内の値にそれぞれ設定する。
なお、三相のデッドタイム減少電圧の大きさがすべて同じになる或る値または或る領域は、前もって分かっていない場合が多い。そのため、モータ電流制御の目標電流が分からずに、処理を進められないことがあり得る。しかしながら、図6の例においては、三相のデッドタイム減少電圧の大きさがすべて同じになる領域が、飽和領域であることが分かっている。飽和領域は、モータ電流の絶対値が閾値Ith以上の範囲であるため、広い範囲であり、特徴的な特性により定まる範囲である。従って、飽和領域が、モータ電流のどの領域であるかは、前もって分かっている場合が多い。そのため、三相のモータ電流を、飽和領域内に設定するという図6の例は、現実的で、実用に適している。
図7は、位置決めをする際のd軸位相θ_1が図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)の位相である場合の、モータ電流Iu_1、Iv_1およびIw_1の正負と、そのときの三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の値を示す表である。d軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1は、三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1が三相/dq変換されたものであり、下記の式(10)によって与えられる。図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)におけるd軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1の算出式は、下記の式(10)に、図7のΔVu_1、ΔVv_1、ΔVw_1を代入することにより求めることができ、それぞれ、図8に示す。図8は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、d軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1を算出するための算出式を示す表である。
Figure 0007321375000010
式(7)および式(9)に図8のΔVd_1およびΔVq_1を代入して、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raとデッドタイム減少電圧の大きさΔVcについて解いた結果を図9に示す。図9の算出式を用いて、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raとデッドタイム減少電圧の大きさΔVcとを同定することができる。図9は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)の位相における、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raとデッドタイム減少電圧の大きさΔVcとを同定するための算出式を示した表である。
さらに、図8のd軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1の算出式に図9のデッドタイム減少電圧の大きさΔVcを代入したものを、図10に示す。
具体的には、図10は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、d軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1を同定するための算出式を示した表である。
また、図7の三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の値に、図9のデッドタイム減少電圧の大きさΔVcを代入することにより、三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の算出式を求めることができる。
図11~図13に、三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の算出式を示す。具体的には、図11は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、U相デッドタイム減少電圧ΔVu_1を同定するための算出式を示した表である。図12は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、V相デッドタイム減少電圧ΔVv_1を同定するための算出式を示した表である。図13は、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)における、W相デッドタイム減少電圧ΔVw_1を同定するための算出式を示した表である。
ステップS104では、同定器110が、上述した計算方法により、d軸電圧指令値Vd_1およびq軸電圧指令値Vq_1とd軸電流Id_1およびq軸電流Iq_1と上記の式(1)のモータ電圧方程式とを用いて、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1を演算する。
ステップS105では、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の同定が完了すると、同定器110の処理は、ステップS106に進む。
ステップS106では、同定器110が、回転子10を停止させるために保持していたd軸電流指令値Id_1およびq軸電流指令値Iq_1の印加を終了する。
以上により、各相モータ電流(U相、V相、W相)がゼロでないとき、そのモータ電流における三相デッドタイム減少電圧(図5の点A、BおよびC。図6の点A、BおよびC)を同定することができる。
上記モータ電流以外の大きさにて三相デッドタイム減少電圧を求める必要がある場合も、条件1を満たしていれば、図3と同じ処理で、三相デッドタイム減少電圧を同定することができる。
なお、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raが既知の場合は、三相デッドタイム減少電圧の同定方法のみを適用すればよい。
(実施の形態1の効果)
以上のように、実施の形態1では、同定器110が、例えば図2に示すような三相デッドタイム減少電圧と各相モータ電流との関係を前もって保持していなくても、dq軸電圧指令値とdq軸電流とモータ電圧方程式とから、三相デッドタイム減少電圧を同定することができる。そのため、三相デッドタイム減少電圧と各相モータ電流との関係を前もって測定する必要はなく、測定の手間を省くことができる。なお、図2は、三相デッドタイム減少電圧とモータ電流との関係の一例を示す図である。図2において、横軸は各相モータ電流を示し、縦軸は三相デッドタイム減少電圧を示している。なお、図2では、三相のうちの一相分だけを示している。実施の形態1では、図2に示すような三相デッドタイム減少電圧と各相モータ電流との関係を前もって保持していなくてもよいため、ユーザの手間が削減できるだけでなく、製品コストおよび製品寸法が増加することを抑制できる。
また、実施の形態1では、永久磁石同期モータ101の出力電圧誤差および電機子巻線抵抗誤差がある場合でも、三相デッドタイム減少電圧と電機子巻線抵抗とを、同時に、精度よく同定することができる。これにより、永久磁石同期モータ101の動作の応答性の低下および脱調を回避し、安定した動作を実現できる。
また、同定の際に、上記の特許文献1に記載された技術においては、第1および第2のスイッチング周波数として、高い周波数と低い周波数とを選ぶ必要がある。そのため、それに伴うスイッチング損失、発熱、騒音などの問題がある。具体的には、高い周波数では、スイッチング損失が大きくなり、発熱が大きくなるという問題がある。また、低い周波数では、騒音の問題が顕著になる。また、2つのスイッチング周波数での処理が必要なため、1つのスイッチング周波数で処理を行う場合に比べて、処理時間に、より長い時間を費やすという問題もある。これに対して、実施の形態1では、d軸電流指令値Id_1を与える際に、スイッチング周波数を複数設定することはない。このように、実施の形態1では、スイッチング周波数を1つだけ選ぶため、スイッチング損失、発熱、および、騒音の問題を回避できる。また、同定に費やす処理時間を短くすることができる。
また、同定の際に、上記の特許文献1に記載された技術においては、交流モータを回転させないようにするため、2相間(U-V相間、V-W相間、W-U相間のいずれか)に直流電流を流す。さらに、そのときに取得した電流制御出力を用いて、オンディレイ補償値を演算する。この方法では、オンディレイ補償値を演算可能な、交流モータの回転子の停止位置は、2相間に直流電流を流す位置に限定され、任意の位置とはならないという問題がある。そのため、特許文献1の技術においては、3相間に直流電流を流す位置に交流モータの回転子を停止させなければいけない場合、オンディレイ補償値を演算することはできないという問題がある。これに対して、実施の形態1では、モータ電流が上記条件1を満たしていれば、永久磁石同期モータ101の回転子10を第1の位置に固定させて、三相デッドタイム減少電圧を同定することができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、上記の実施の形態1で説明した同定器110の同定方法とは別の同定方法について説明する。モータ制御装置100および永久磁石同期モータ101の基本的な構成および動作については、実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略し、実施の形態1を参照することとする。実施の形態2と実施の形態1との違いは、回転子10の位置決めをする際の「各相モータ電流とデッドタイム減少電圧の関係」、回転子10の位置決めをする際のd軸位相θe、および、同定器110の動作のみである。
上記の実施の形態1では、電流制御器107が生成したd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqと、三相/dq変換器104が生成したd軸電流Idおよびq軸電流Iqとの、サンプリングを1回のみ行うとして説明した。これに対し、実施の形態2では、回転子10を停止させる位置を2つの位置に段階的に変化させて、サンプリングを2回行う同定方法について説明する。
なお、回転子10を停止させる2つの位置は、d軸位相θeが、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相のいずれかとなる位置である。
図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相においては、三相モータ電流Iu、IvおよびIwのうち、一相のモータ電流はゼロとなり、残りの二相のモータ電流は、モータ電流の大きさ(絶対値)が同じで、符号が逆となる。
1回目のサンプリングでは、三相のうちの二相のモータ電流を第1の値Ib_1および第2の値-Ib_1にそれぞれ設定する。そして、2回目のサンプリングでは、同定器110は、三相のうちの二相のモータ電流を第4の値Ib_2および第5の値-Ib_2にそれぞれ設定して、同定を行う。
従って、実施の形態2では、同定器110は、1回目のサンプリングとして、永久磁石同期モータ101の三相のうちの一相のモータ電流を第1の値に制御し、残りの一相を第1の値と符号が逆の値である第2の値に制御することで、回転子10を第1の位置に停止させる。なお、ここでは、モータ電流を制御するとして説明しているが、実際には、dq軸電流を制御するようにしてもよい。
次に、同定器110は、回転子10を第1の位置に停止させた状態で、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqとd軸電流Idおよびq軸電流Iqとを取得して、それぞれ、第1のd軸電圧指令値Vd_1および第1のq軸電圧指令値Vq_1と第1のd軸電流Id_1および第1のq軸電流Iq_1とする。
次に、同定器110は、2回目のサンプリングとして、永久磁石同期モータ101の三相のうちの一相のモータ電流を第1の値とは大きさの異なる第4の値に制御し、残りの一相を第4の値と符号が逆の値である第5の値に制御することで、回転子10を第2の位置に停止させる。第2の位置は第1の位置と同じでもよいし、異なってもよい。次に、同定器110は、回転子10を第2の位置に停止させた状態で、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqとd軸電流Idおよびq軸電流Iqとを取得して、それぞれ、第2のd軸電圧指令値Vd_2および第2のq軸電圧指令値Vq_2と第2のd軸電流Id_2および第2のq軸電流Iq_2とする。
次に、同定器110は、第1および第2のdq軸電圧指令値と、第1および第2のdq軸電流と、上記の式(1)のモータ電圧方程式とを用いて、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raと三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1とを同定する。
以下、実施の形態2における同定器110の動作について詳細に説明する。図14は、実施の形態2に係るモータ制御装置100の同定器110におけるモータパラメータおよびインバータパラメータの自動計測処理のフローチャートである。図14の処理は、同定器110が永久磁石同期モータ101のモータパラメータおよび電力変換器109のインバータパラメータを求めるためのアプリケーションとして行うものである。図14に示される同定処理は、永久磁石同期モータ101の起動命令が与えられた場合に行うことができる。当該同定処理で求められたモータパラメータおよびインバータパラメータを用いて、永久磁石同期モータ101の駆動を行うことができる。この同定処理によって同定されるモータパラメータは電機子巻線4の電機子巻線抵抗Ra、インバータパラメータは三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1である。あるいは、インバータパラメータとして、デッドタイムtdu、tdv、tdwを同定してもよい。
同定器110は、図14に示す処理を開始すると、まず、ステップS200とステップS201とで、回転子10を予め設定された第1の位置まで回転させて固定する位置決め動作を行う。この動作は、永久磁石同期モータ101の回転子10が静止した状態で、モータパラメータの同定とインバータパラメータの同定とに必要となるdq軸電圧指令値を取得するためである。
この動作について具体的に説明すると、まず、ステップS200において、同定器110は、回転子10の位置決めを行うために、永久磁石同期モータ101の回転座標系の界磁軸であるdq軸にdq軸電流指令値、および、回転座標系の基準位置に対する位置(d軸位相θe)を与える。与えるdq軸電流指令値としては、d軸には予め設定されたd軸電流指令Id_1(=直流値)を設定し、q軸にはゼロであるq軸電流指令Iq_1(=0)を設定する。また、d軸位相としてθ_1を設定する。そして、電圧指令値取得処理の実行期間中は、回転子10が第1の位置から動かないように、これらのd軸電流指令値Id_1、q軸電流指令値Iq_1(=0)、およびd軸位相θ_1を保持する。なお、このときのd軸電流指令値Id_1およびq軸電流指令値Iq_1(=0)の設定は、同定器110が行うようにしているが、速度制御器106が行うようにしてもよい。また、d軸位相θ_1の設定は、同定器110が行うようにしているが、推定器105が行うようにしてもよい。
ここで、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相においては、三相モータ電流Iu、IvおよびIwのうち、一相のモータ電流はゼロとなり、残りの二相のモータ電流は、モータ電流の大きさ(絶対値)が同じで、符号が逆となる。
ステップS200において同定器110は、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相のいずれかになるように、d軸位相θ_1を設定する。
以上の処理によって、ステップS201において、d軸電流、q軸電流の収束が完了し、回転子10の位置決めが完了する。
次に、ステップS202において、同定器110は、電流制御器107からd軸電圧指令値Vd_1およびq軸電圧指令値Vq_1を取得し、三相/dq変換器104からd軸電流Id_1およびq軸電流Iq_1を取得する。なお、このとき、d軸電流Id_1およびq軸電流Iq_1の代わりに、速度制御器106からd軸電流指令値Id_1およびq軸電流指令値Iq_1を取得してもよい。
ステップS200~S202の処理で第1の位置決めおよびサンプリングが終了すると、同定器110は、ステップS203とステップS204とで、回転子10を予め設定された第2の位置まで回転させて固定する位置決め動作を行う。この動作は、永久磁石同期モータ101の回転子10が静止した状態で、モータパラメータの同定とインバータパラメータの同定とに必要となるdq軸電圧指令値を取得するためである。
具体的には、まず、ステップS203において、同定器110は、d軸電流指令値を第1の位置決めとは別の値に更新する。与える電流指令としては、d軸には予め設定されたd軸電流指令値Id_2(=直流値)を設定し、q軸にはゼロであるq軸電流指令値Iq_2(=0)を設定する。また、与えるd軸位相としてθ_2を設定する。d軸位相θ_2は、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相のいずれかである。
そして、dq軸電圧指令値取得処理の実行期間中は、回転子10が第2の位置から動かないように、同定器110は、これらのd軸電流指令値Id_2、q軸電流指令値Iq_2(=0)、およびd軸位相θ_2を保持する。なお、このときのd軸電流指令値Id_2およびq軸電流指令値Iq_2(=0)の設定は、同定器110が行うようにしているが、速度制御器106が行うようにしてもよい。また、d軸位相θ_2の設定は、同定器110が行うようにしているが、推定器105が行うようにしてもよい。
以上の処理によって、ステップS204において、d軸電流およびq軸電流の収束が完了し、回転子10の位置決めが完了する。
次に、ステップS205において、同定器110は、電流制御器107からd軸電圧指令値Vd_2およびq軸電圧指令値Vq_2を取得し、三相/dq変換器104からd軸電流Id_2およびq軸電流Iq_2を取得する。なお、このとき、dq軸電流Id_2およびIq_2の代わりに、速度制御器106からd軸電流指令値Id_2およびq軸電流指令値Iq_2を取得してもよい。
ステップS203~S205の処理で第2の位置決めおよびサンプリングが終了すると、同定器110の処理は、ステップS206に進む。
ステップS206において、同定器110は、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の同定を開始する。なお、当該同定においては、下記のように、同定器110は、ステップS202で取得した電圧指令値と検出電流、および、ステップS205で取得した電圧指令値と検出電流とに基づいて、同定を行う。具体的には、同定器110は、d軸電圧指令値Vd_1およびq軸電圧指令値Vq_1、d軸電流Id_1およびq軸電流Iq_1、d軸電圧指令値Vd_2およびq軸電圧指令値Vq_2、d軸電流Id_2およびq軸電流Iq_2を用いる。
そして、ステップS207で、同定器110は、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよびデッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1の演算を行う。
電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔV_1vおよびΔVw_1の同定方法についてモータ電圧方程式、および、回転子10の位置決めをする際の「各相モータ電流とデッドタイム減少電圧の関係」を用いて説明する。実施の形態2におけるモータ電圧方程式は、実施の形態1の上記の式(1)と同じであるため、上記の式(1)を参照する。
また、1回目のサンプリング時のdq座標上の実際のモータ印加電圧Vd_1およびVq_1は、dq座標上のd軸電圧指令値Vd_1およびq軸電圧指令値Vq_1に、d軸デッドタイム補償電圧Vdcompおよびq軸デッドタイム補償電圧Vqcompを加算し、d軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびq軸デッドタイム減少電圧ΔVq_1を減算したものとなる。このことは、実施の形態1と同じである。従って、上記の式(4)および式(5)が成り立つ。ここでは、式(4)および式(5)の再掲を省略し、上記の式(4)および式(5)を参照する。
2回目のサンプリング時のdq座標上のモータ印加電圧をVd_2およびVq_2とし、デッドタイム補償電圧をΔVdcomp_2およびΔVqcomp_2、デッドタイム減少電圧をΔVd_2およびΔVq_2とすると、1回目のサンプリング時の式(4)および式(5)と同様に、下記の式(11)および式(12)が成り立つ。
なお、dq座標上の実際のモータ印加電圧Vd_2およびVq_2は、2回目のサンプリング時の実際のモータ印加三相電圧Vu_2、Vv_2およびVw_2が三相/dq変換されたものである。また、dq座標上のd軸デッドタイム補償電圧Vdcomp_2およびq軸デッドタイム補償電圧Vqcomp_2は、2回目のサンプリング時の三相デッドタイム補償電圧Vucomp_2、Vvcomp_2およびVwcomp_2が三相/dq変換されたものである。
Figure 0007321375000011
Figure 0007321375000012
実施の形態2においては、1回目のサンプリングにおいて、d軸電流指令値Id_1およびq軸電流指令値Iq_1が印加され、2回目のサンプリングにおいて、d軸電流指令値Id_2およびq軸電流指令値Iq_2が印加される。1回目のサンプリングおよび2回目のサンプリングのいずれの場合も回転子10が静止状態であるため、回転角速度(電気角)ωeはωe=0である。
従って、1回目のサンプリング時、上記の式(1)のd軸における電圧方程式、q軸における電圧方程式は、それぞれ、実施の形態1と同じく、上記の式(7)および式(9)のように表される。ここでは、式(7)および式(9)の再掲を省略し、上記の式(7)および(9)を参照する。
また、2回目のサンプリング時、上記の式(1)のd軸における電圧方程式、q軸における電圧方程式は、1回目のサンプリング時と同様に、それぞれ、下記の式(13)および式(14)のように表される。
Figure 0007321375000013
Figure 0007321375000014
実施の形態2では、ステップS200~205で回転子10の第1と第2の位置決めをする際の各相モータ電流が以下の条件2を満たすことを前提とする。
条件2:下記の(i)~(iii)の3つを全て満たすこと。
(i):各相モータ電流のうち、一相のモータ電流はゼロとなり、残りの二相のモータ電流は、大きさ(絶対値)が同じで、符号が逆となる、或る値である。
(ii):この二相のモータ電流の大きさは、第1と第2の位置決め時で異なる。
(iii):この二相のモータ電流におけるデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)は、第1と第2の位置決め時で同じである。
なお、この前提のもとでは、一相のモータ電流はゼロとなるため、第1と第2の位置決めをする際のd軸位相θ_1、d軸位相θ_2は図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相いずれかになる。
条件2について、具体例を示して記す。回転子10の位置決めをする際の各相モータ電流の値を、第1の位置決めではIu_1、Iv_1およびIw_1、第2の位置決めではIu_2、Iv_2およびIw_2とする。
このモータ電流が条件2を満たすとき、モータ電流がゼロとならない相において、デッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)は、第1と第2の位置決め時で同じであり、その大きさをΔVb(>0)とする。
ここで、位置決めをする際、モータ電流がゼロとなる相をそれぞれ、第1の位置決めではV相、第2の位置決めではW相とする。
また、モータ電流の大きさ(絶対値)に関し、第1の位置決めのU相、W相はIb_1、第2の位置決めのU相、V相はIb_2とする。
その中で、
「Iu_1=Ib_1、Iv_1= 0、Iw_1=-Ib_1」
「Iu_2=Ib_2、Iv_2=-Ib_2、Iw_2=0」
の場合を図15に示す。
図15は、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が全領域で三相とも完全に一致はしてはいない場合を示す図である。図15は、第1の位置決め時のモータ電流Iu_1、Iv_1、および、第2の位置決め時のモータ電流Iu_2、Iw_2におけるデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)が同じであり、第1の位置決め時のモータ電流Iw_1、および、第2の位置決め時のモータ電流Iv_2がゼロであることを示している。図15において、横軸は三相モータ電流Iu、IvおよびIwを示し、縦軸は三相デッドタイム減少電圧を示す。また、図15において、実線81はU相の場合、破線82はV相の場合、別の破線83はW相の場合を示す。
なお、図15の場合、d軸位相θ_1、d軸位相θ_2は、それぞれ図4の(2)、(12)の符号で示した位相になる。
「各相モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で三相とも一致する場合、飽和領域の任意のモータ電流は条件2を満たす。
図16は、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が全領域で三相とも一致する場合を示す図である(全領域で一致する場合、当然飽和領域でも一致する)。図16は、第1の位置決め時のモータ電流Iu_1、Iv_1、および、第2の位置決め時のモータ電流Iu_2、Iw_2が飽和領域にあり、第1の位置決め時のモータ電流Iw_1、第2の位置決め時のモータ電流Iv_2がゼロであることを示している。
図16において、横軸は三相のモータ電流Iu、IvおよびIwを示し、縦軸は三相デッドタイム減少電圧を示す。また、図16においては、U相の場合、V相の場合、および、W相の場合が重なっているため、同一の実線91で三相の場合を示す。
次に、d軸位相θ_1、θ_2の位相の関係について説明する。
「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で一致する、という前提条件がない場合(例えば、図15の場合である。)、三相デッドタイム減少電圧を全て(U相、V相、W相)同定するためには、d軸位相θ_1とd軸位相θ_2とが互いに異なる(但し、d軸位相θ_1とd軸位相θ_2との位相差がπの場合を除く)必要がある。
なぜなら、d軸位相θ_1、θ_2が同じ位相、または、πだけずれている場合、三相デッドタイム減少電圧のうち二相しか求めることができない。例えば、θ_1=π/6、θ_2=π/6のとき、図17の通り、ΔVv_1=0、ΔVv_2=0となり、ゼロ以外のV相デッドタイム減少電圧を同定できない。図17は、第1の位置決めの際のd軸位相θ_1および第2の位置決めの際のd軸位相θ_2が、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)のときの、モータ電流の値と、そのときの三相デッドタイム減少電圧の値を示す表である。
しかし、図16のように「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で一致する場合は、d軸位相θ_1、θ_2が同じ位相であり、ΔVv_1=0、ΔVv_2=0となっても、V相デッドタイム減少電圧を同定できる。理由は、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で一致するという前提条件があるため、U相デッドタイム減少電圧もしくはW相デッドタイム減少電圧の同定値をV相デッドタイム減少電圧として流用すればいいからである。
よって、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で一致する場合は、d軸位相θ_1、θ_2が同じ位相であっても異なる位相であっても構わない。
なお、以下では、1回目のサンプリング時の三相のモータ電流をIu_1、Iv_1およびIw_1と呼び、そのときの三相デッドタイム減少電圧をΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1とする。dq軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1およびΔVq_1は、三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1およびΔVw_1が三相/dq変換されたものであり、上記の式(10)によって与えられる。また、2回目のサンプリング時の三相のモータ電流をIu_2、Iv_2およびIw_2と呼び、そのときの三相デッドタイム減少電圧をΔVu_2、ΔVv_2およびΔVw_2とする。dq軸デッドタイム減少電圧ΔVd_2およびΔVq_2は、三相デッドタイム減少電圧ΔVu_2、ΔVv_2およびΔVw_2が三相/dq変換されたものであり、上記の式(10)の添え字「_1」を「_2」に変えた下記の式(15)によって与えられる。
Figure 0007321375000015
図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相における、1回目および2回目のサンプリング時の三相モータ電流Iu_1,Iv_1、Iw_1、Iu_2、Iv_2、Iw_2と、三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1、ΔVw_1、ΔVu_2、ΔVv_2、ΔVw_2を図17に、dq軸デッドタイム減少電圧ΔVd_1、ΔVq_1、ΔVd_2、ΔVq_2を下記の式(16)、式(17)、式(18)および式(19)に示す。
Figure 0007321375000016
Figure 0007321375000017
Figure 0007321375000018
Figure 0007321375000019
式(16)を式(7)に、式(17)を式(13)に代入すると、式(20)および式(21)となる。
Figure 0007321375000020
Figure 0007321375000021
式(20)および式(21)を、RaおよびΔVbについて解いたものを式(22)および式(23)に示す。式(22)および式(23)は、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)における、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raとデッドタイム減少電圧の大きさΔVbとを算出するための算出式である。
Figure 0007321375000022
Figure 0007321375000023
式(22)および式(23)の算出式を用いることで、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raとデッドタイム減少電圧の大きさΔVbを同定することができる。
さらに、式(23)に示すΔVbの算出式を上記の式(16)および式(17)に代入することにより、式(24)および式(25)を得る。
Figure 0007321375000024
Figure 0007321375000025
また、ΔVq_1およびΔVq_2の値は式(18)および式(19)をそのまま用いることができる。
式(24)、式(25)、および、式(18)、式(19)は、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)における、dq軸デッドタイム減少電圧の値ΔVd_1、ΔVd_2とΔVq_1、ΔVq_2の算出式である。
また、図17の三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1、ΔVw_1、およびΔVu_2、ΔVv_2、ΔVw_2、の値に、式(23)に示すΔVbの算出式を代入したものを図18および図19に示す。図18は、第1の位置決めの際のd軸位相θ_1が、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)のときの、モータ電流の値と、そのときの三相デッドタイム減少電圧の値を示す表である。また、図19は、第2の位置決めの際のd軸位相θ_2が、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)のときの、モータ電流の値と、そのときの三相デッドタイム減少電圧の値を示す表である。
図18および図19は、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相における、1回目および2回目のサンプリング時の三相モータ電流Iu_1,Iv_1、Iw_1、Iu_2、Iv_2、Iw_2と三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1、ΔVw_1、およびΔVu_2、ΔVv_2、ΔVw_2の算出式を示している。図18および図19の算出式を用いることで三相デッドタイム減少電圧を同定することができる。
図14のステップS207では、同定器110は、上述した計算方法により、2回のサンプリングで取得したdq軸電圧指令値およびモータ電流を用いて、同定を行う。すなわち、同定器110は、dq軸電圧指令値Vd_1、Vq_1、Vd_2およびVq_2と、dq軸電流Id_1、Iq_1、Id_2およびIq_2とを用いる。さらに、同定器110は、式(22)に示すRaの算出式を用いて電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raを同定する。また、同定器110は、図17に示す算出式を用いて三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1、ΔVw_1、およびΔVu_2、ΔVv_2、ΔVw_2を演算する。
図14のステップS208において、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu_1、ΔVv_1、ΔVw_1、およびΔVu_2、ΔVv_2、ΔVw_2の同定が完了する。ステップS209においては、d軸電流指令値Id_2、q軸電流指令値Iq_2の印加を終了する。
以上により、各相モータ電流(U相、V相、W相)がゼロでないとき、そのモータ電流におけるデッドタイム減少電圧(図15の点A、B、CおよびD。図16の点A、B、CおよびD)を同定することができる。
上記の同定後、上記モータ電流以外の大きさにて三相デッドタイム減少電圧を求める必要がある場合の同定方法(以下、同定方法Aと呼ぶ)を記す。その場合、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raはすでに同定済みである。電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raが同定済みの場合、式(20)、式(21)のいずれか一方、すなわち1回のサンプリングで、ΔVbを算出することができる。このΔVbの算出式を式(16)または式(17)、および、図17のΔVbに代入することで、dq軸および三相のデッドタイム減少電圧を算出することができる。よって、1回の位置決めでdq軸および三相のデッドタイム減少電圧を同定することができる。
ここで、同定済みの電機子巻線抵抗Raを用いた、非飽和領域の三相デッドタイム減少電圧を同定する方法、すなわち、同定方法Aについて記す。
図16のように、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」は、モータ電流の全領域で、デッドタイム減少電圧の大きさが一致するため、当然非飽和領域でも一致する。この場合、非飽和領域では、条件2のうちの(iii)の「この二相モータ電流におけるデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)は、第1と第2の位置決め時で同じである。」が満たされない。なぜなら、非飽和領域のデッドタイム減少電圧は単調増加であるため、第1と第2の位置決め時のモータ電流におけるデッドタイム減少電圧の大きさ(絶対値)は、同じにならないからである。
条件2の(i)~(iii)を全てを満たさないので、図14に示した2回の位置決めおよびサンプリングを行う同定方法では、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび非飽和領域の三相デッドタイム減少電圧を同定することはできない。
しかし、図16のように、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」において、モータ電流が飽和領域のときに、デッドタイム減少電圧の大きさが一致するならば(全領域一致するため、当然飽和領域でも一致する)、次の方法で同定することができる。初めに図14に示した同定方法により電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび、および、飽和領域の三相デッドタイム減少電圧を同定する。その後に、同定済みのRaを用いて、上記の同定方法Aで、非飽和領域の三相のデッドタイム減少電圧を同定する。
(実施の形態2の効果)
実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
さらに、実施の形態2では、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の位相から2つ(または1つ)を選び、モータ電流を少なくとも2つの大きさに段階的に変化させることでサンプリングを2回行って、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raと三相デッドタイム減少電圧とを同定する方法について示した。図6もしくは図16のように、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が飽和領域で三相とも一致する場合には、実施の形態1で示したように1回のサンプリングで、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwの同定を行うことができる。しかしながら、図15に示すように、第1と第2の位置決めをする際の各相モータ電流が条件2を満たすが、条件1を満たさない場合がある。この場合には、実施の形態1で記した1回のサンプリングのみを行う同定方法では電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwの同定を行うことができない可能性がある。その場合には、実施の形態2で示した2回のサンプリングを行う同定方法を用いれば、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび三相デッドタイム減少電圧ΔVu、ΔVvおよびΔVwの同定を行うことができる。
図16のように、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が非飽和領域で一致する場合、実施の形態1で示した方法で、非飽和領域の三相のデッドタイム減少電圧を同定することはできない。しかし、図16のように、「モータ電流(U相、V相、W相)とデッドタイム減少電圧の関係」が非飽和領域だけでなく、飽和領域でも一致するならば、次の方法で同定することができる。初めに図14に示した同定方法により、少なくとも2回の位置決めで、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raおよび、および、飽和領域の三相デッドタイム減少電圧を同定する。その後に、同定済みのRaを用いて、上記の同定方法Aを用い、少なくとも1回の位置決めで、非飽和領域の三相のデッドタイム減少電圧を同定することができる。
なお、同定済みのRaを用いて、上記の同定方法Aを用い、少なくとも1回の位置決めで、飽和領域の三相のデッドタイム減少電圧を同定することも、もちろんできる。
(実施の形態1および実施の形態2の変形例)
上記の実施の形態2では、モータ電流を少なくとも2つの大きさに段階的に変化させ、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raと三相デッドタイム減少電圧とを同定する方法について示した。その際、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の符号で示した6つの位相における場合について説明した。ただし、この場合に限定されない。図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)の6つの矢印で示した範囲内の位相における場合においても、モータ電流を少なくとも2つの大きさに段階的に変化させ、電機子巻線4の電機子巻線抵抗Raと三相デッドタイム減少電圧とを同定するようにしてもよい。
また、実施の形態1で示した1回のサンプリングのみを行う同定方法を第1の同定方法とし、実施の形態2で示した2回のサンプリングを段階的に順次行う同定方法を第2の同定方法とし、実施の形態2で示した1回のサンプリングのみを行う同定方法を第3の同定方法とする。このとき、図4の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)および(11)の位相の場合は第1の同定方法を用い、図4の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)および(12)の位相の場合は第2の同定方法、もしくは、Raが同定済みの場合は第3の同定方法を用いるように予め設定しておいてもよい。その場合、同定器110は、回転子10の位置ごとに同定方法を設定したテーブルをメモリに格納しておき、回転子10の位置に応じて当該テーブルを参照して、第1の同定方法または第2の同定方法、または第3の同定方法の中から同定方法を選択して用いる。
実施の形態1および2では、電機子巻線4のU相の位置を、回転子10の基準位置、すなわち、d軸位相θeの基準位置(θe=0)として扱った。しかしながら、この場合に限定されない。例えば、基準位置をシフトさせた場合は、シフトさせた位相と同じ分だけ、図4、図7~13、および、図17~図19のθの位相をシフトさせればよい。
1 固定子、2 固定子鉄心、3 ティース、4 電機子巻線、10 回転子、11 回転子鉄心、12 永久磁石、20 スイッチング素子、21 スイッチング素子、22 接続点、23 ゲート、25 還流ダイオード、30 電源、31 コンデンサ、100 モータ制御装置、101 永久磁石同期モータ、102 電流センサ、102a 電流センサ、102b 電流センサ、102c 電流センサ、104 三相/dq変換器、105 推定器、106 速度制御器、107 電流制御器、108 dq/三相変換器、109 電力変換器、110 同定器、120 ベクトル制御器、130 コントローラ。

Claims (14)

  1. モータの三相の電機子巻線に流れるモータ電流を検出する電流検出部と、
    外部から入力される目標回転角速度と前記電流検出部が検出した前記モータ電流とに基づいて電圧指令値を生成して、前記モータの実回転角速度を制御するベクトル制御器と、
    前記ベクトル制御器で生成された前記電圧指令値に応じて、前記モータに電力を供給する電力変換器と、
    前記モータのモータパラメータと前記電力変換器のインバータパラメータとを同定する同定器と
    を備え、
    前記同定器は、
    前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を第1の値と第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの回転子を第1の位置に停止させ、前記回転子を前記第1の位置に停止させた状態で、前記ベクトル制御器が生成した前記電圧指令値と前記電流検出部が検出した前記モータ電流とを取得し、前記電圧指令値と前記モータ電流とに基づいて前記モータパラメータと前記インバータパラメータとを求めるものであり
    前記同定器は、
    1回目のサンプリング時に、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値と前記第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させ、前記回転子を前記第1の位置に停止させた状態で、前記ベクトル制御器が生成した前記電圧指令値と前記電流検出部が検出した前記モータ電流とを取得し、それぞれ、第1の電圧指令値および第1のモータ電流とし、
    2回目のサンプリング時に、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値および前記第2の値とは異なる第4の値および第5の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を第2の位置に停止させ、前記回転子を前記第2の位置に停止させた状態で、前記電圧指令値と前記モータ電流とを取得して、それぞれ、第2の電圧指令値および第2のモータ電流とし、
    前記第1および第2の電圧指令値と前記第1および第2のモータ電流とに基づいて前記モータパラメータと前記インバータパラメータとを求めるものであって、
    前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値と前記第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させて同定を行う方法を第1の同定方法とし、
    前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値と前記第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させ、その後、段階的に、前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値および前記第2の値とは異なる前記第4の値および前記第5の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第2の位置に停止させて同定を行う方法を第2の同定方法としたとき、
    前記同定器は、
    前記第1の同定方法および前記第2の同定方法の中から前記回転子の位置ごとに同定方法を予め設定しておき、前記回転子を停止させる位置に応じて前記同定方法を変更して同定を行う、
    モータ制御装置。
  2. 前記モータパラメータは、前記モータの前記電機子巻線の電機子巻線抵抗であり、
    前記インバータパラメータは、前記モータのデッドタイム減少電圧であり、
    前記同定器は、
    前記モータの実電圧と前記モータ電流と前記電機子巻線抵抗との関係を定義したモータ電圧情報を有し、
    前記三相のうちの少なくとも二相の前記モータ電流を前記第1の値と前記第2の値とにそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させ、前記回転子を前記第1の位置に停止させた状態で、前記ベクトル制御器が生成した前記電圧指令値と前記電流検出部が検出した前記モータ電流とを取得し、前記モータの前記実電圧が、前記電圧指令値から前記デッドタイム減少電圧を減算し、前記同定器が同定する前記デッドタイム減少電圧に相当するデッドタイム補償電圧を加算したものであるという関係を利用して、前記電圧指令値と前記モータ電流と前記モータ電圧情報とを用いて、前記電機子巻線抵抗と前記デッドタイム減少電圧とを求める、
    請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記回転子の前記第1の位置は、前記三相の前記モータ電流のいずれもゼロにならない位置である、
    請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記三相の前記モータ電流が、それぞれ、前記第1の値、前記第2の値、および、第3の値のときに、前記三相の前記デッドタイム減少電圧の大きさがすべて同じになる場合に、
    記同定器は、
    前記三相の前記モータ電流を、前記第1の値、前記第2の値、および、前記第3の値にそれぞれ制御することで前記モータの前記回転子を前記第1の位置に停止させるものであって
    前記同定器は、
    前記第1の値、前記第2の値、および、前記第3の値の符号のうち、2つは正で1つは負、もしくは、2つは負で1つは正となるように、前記第1の値、前記第2の値、および、前記第3の値を設定する、
    請求項3に記載のモータ制御装置。
  5. 前記モータ電流の値が正または負で、前記モータ電流の絶対値が閾値以上の領域を飽和領域としたとき、
    前記三相の前記モータ電流が、それぞれ、前記飽和領域内の前記第1の値、前記第2の値、および、前記第3の値のときに、前記三相の前記デッドタイム減少電圧の大きさがすべて同じになる場合に、
    記同定器は、
    前記第1の値と前記第2の値と前記第3の値の符号のうち、2つは正で1つは負、もしくは、2つは負で1つは正となるように、前記第1の値、前記第2の値、および、前記第3の値を、前記モータ電流の前記飽和領域内で設定する、
    請求項4に記載のモータ制御装置。
  6. 前記モータパラメータは、前記モータの前記電機子巻線の電機子巻線抵抗であり、
    前記インバータパラメータは、前記モータのデッドタイム減少電圧である、
    請求項に記載のモータ制御装置。
  7. 前記回転子の前記第1の位置および前記第2の位置は、前記三相の前記モータ電流のうち一相がゼロとなる位置である、
    請求項に記載のモータ制御装置。
  8. 下記の条件2が成り立つ場合、
    条件2:下記の(i)~(iii)の3つを全て満たすこと、
    (i):各相モータ電流のうち、一相のモータ電流はゼロとなり、残りの二相のモータ電流は、大きさが同じで、符号が逆である、
    (ii):前記残りの二相のモータ電流の前記大きさは、前記1回目のサンプリング時と前記2回目のサンプリング時とで互いに異なる、
    (iii):前記残りの二相のモータ電流における前記デッドタイム減少電圧の大きさは、前記1回目のサンプリング時と前記2回目のサンプリング時とで同じである、
    前記同定器は、
    前記三相の前記モータ電流のうち、一相の前記モータ電流がゼロで、残りの二相の前記モータ電流の絶対値の大きさが同じで、符号が逆となるように、
    前記第1の値および前記第4の値を、前記モータ電流が正の領域の異なる2点のそれぞれに設定し、前記第2の値および前記第5の値を、前記モータ電流が負の領域の異なる2点のそれぞれに設定して、前記電機子巻線抵抗と前記デッドタイム減少電圧とを同定する、
    請求項に記載のモータ制御装置。
  9. 前記1回目のサンプリング時の前記モータ電流のd軸位相と、前記2回目のサンプリング時の前記モータ電流のd軸位相とは互いに異なり、
    前記1回目のサンプリング時の前記モータ電流のd軸位相と前記2回目のサンプリング時の前記モータ電流のd軸位相との位相差はπでない、
    請求項に記載のモータ制御装置。
  10. 前記モータ電流の値が正または負で、前記モータ電流の絶対値が閾値以上の領域を飽和領域としたとき、前記モータ電流の前記飽和領域において、前記三相の前記デッドタイム減少電圧の値がすべて一致する場合に、
    前記同定器は、
    前記飽和領域のうち、前記モータ電流の値が正で、前記モータ電流の絶対値が閾値以上の領域を第1領域とし、前記モータ電流の値が負で、前記モータ電流の絶対値が閾値以上の領域を第2領域としたとき、
    前記三相の前記モータ電流のうち、一相の前記モータ電流がゼロで、残りの二相の前記モータ電流の絶対値の大きさが同じで、符号が逆となるように、前記第1の値を前記第1領域内で設定し、前記第2の値を前記第2領域内で設定し、
    前記三相の前記モータ電流のうち、一相の前記モータ電流がゼロで、残りの二相の前記モータ電流の絶対値の大きさが同じで、符号が逆となるように、前記第4の値を前記第1領域内で設定し、前記第5の値を前記第2領域内で設定して、
    前記電機子巻線抵抗と前記デッドタイム減少電圧とを同定する、
    請求項に記載のモータ制御装置。
  11. 前記1回目のサンプリング時の前記モータ電流のd軸位相と、前記2回目のサンプリング時の前記モータ電流のd軸位相とは、同じ位相あるいは異なる位相である、
    請求項10に記載のモータ制御装置。
  12. 前記同定器は、前記電機子巻線抵抗の同定後または前記電機子巻線抵抗が既知のとき、当該電機子巻線抵抗に基づいて、前記モータ電流の全領域のうちの少なくとも1つの値における前記デッドタイム減少電圧を同定する、
    請求項2~11のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  13. 前記モータの前記実電圧が、前記電圧指令値から前記デッドタイム減少電圧を減算し、前記同定器が同定する前記デッドタイム減少電圧に相当するデッドタイム補償電圧を加算したものであるという関係を利用して、前記電機子巻線抵抗と、前記電圧指令値と前記モータ電流と前記モータ電圧情報とを用いて、前記デッドタイム減少電圧を求める、
    請求項12に記載のモータ制御装置。
  14. 前記モータ電流の値が正または負で、前記モータ電流の絶対値が閾値未満の領域を非飽和領域としたとき、
    前記同定器は、
    前記1回目のサンプリングおよび前記2回目のサンプリングを行って前記電機子巻線抵抗を同定した後に、同定された前記電機子巻線抵抗に基づいて、前記非飽和領域の三相のデッドタイム減少電圧を同定する、
    請求項10~13のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
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